本件以外にテキストロンのスコーピオン事業など自社開発による新しい試みが最近目立ちますね。下に紹介している思索迅速化や仮想化は民間だからこそ導入できた発想でしょう。自動車や電子産業の影響もあるのかもしれません。
Sikorsky Talks To Customers About Potential Raider Applications
Oct 6, 2014
Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology
S-97レイダーは軽量戦術ヘリコプターの試作機で米陸軍の求める武装航空偵察ヘリコプターの要求に答えるもの。Sikorsky Aircraft
シコルスキーがヘリコプターを1939年のVS-300で完成させた。このたび同社は高速飛行とホバリング性能を進め、低速度での機動性も維持する回転翼機の定義を塗り替える機体を発表した。
- フロリダ州ウェストパームビーチの同社開発テストセンターで10月2日に公開されたS-97レイダー Raider は新型技術を盛り込んだ2番目の機体だ。最初のX2技術実証機は260ノットを2010年に実現。三番目はシコルスキー/ボーイング共同開発のSB.1デファイアント Defiantで2017年初飛行を目指す米陸軍向け共用多用途(JMR)ヘリコプターの実証機となる。
- レイダーはシコルスキーが開発した硬式同軸ローターによる複合ヘリコプター rigid coaxial-rotor compound helicopter で総重量6千ポンドのX2から30千ポンド級の次世代推力輸送中型機Future Vertical Lift Medium多用途回転翼機{シコルスキーUH-60ブラックホークの後継機として2035年ごろに登場する)にまで応用する技術の実用化で大きな一歩となる。
- レイダーはシコルスキーがX2で培った迅速な試作機製作 rapid-prototyping をJMRに応用できることを示すもの。開発費用は業界と陸軍が折半する。
- 「X2実証機の設計思想を引き継いでいます。試作を小規模チームで迅速に行い、業界で最良の技術で革新的なシステムを作り、量産化の道を開きます」と同社技術研究担当副社長マーク・ミラー Mark Miller は語る。
- シコルスキーはかねてからX2は発明ではなく、利用可能な技術を集結させた知的作業だと強調している。同社は硬式同軸ローター複合機を70年代にXH-59A実験機で試している。同機は高速260ノット超だが騒音が高く、振動も大きく燃料効率も悪い上に操縦が難しく、パイロット2名でエンジン4基を制御していた。
- X2ではフライバイワイヤ飛行制御、ローターハブの抗力削減、補助推進力の一体化、アクティブ振動制御、軽量かつ強固な複合材ブレイドを採用し、XH-59Aの弱点を克服した。その結果、パイロット一名でエンジン単発の同機はブラックホークの二倍の速度で飛行しつつ振動はほぼ同じになった。
- X2は同社が50百万ドルで自社開発し43ヶ月で初飛行させ250-ktの水平飛行速度の実現を17回のフライトテストで達成した。レイダーは2010年7月の開発開始から初飛行(12月)まで49ヶ月となる予定。試作用2機を200百万ドルで制作する。
- 2,600-shpジェネラル・エレクトリックYT706エンジンを搭載し機体総重量11,500-lb.のレイダーは直径34フィートの継ぎ目なしローターx2にブレイド4枚をそれぞれつける。同軸ローター採用でトルク打ち消し用のテイルローターは不要となる。その代わり、直径7フィートの可変ピッチプロペラを尾部で回転させ高速飛行に使うが、低速あるいはホバリング時では安全のため格納し騒音を低減する。
- レイダーの設計巡航速度は 220 kt. だが推進器により水平飛行しながら加減速、武器使用時の機首固定など新しい飛行モードが可能となる。レイダーのテストではこれらの実用度を試す。
- レイダーの開発が迅速に行えた背景には仮想設計環境virtual design environment があり、「実際の製作前に製作し、飛行も先に行えた」とミラーは言う。「施設内にはすべてのシステム機器をとりそろえ、実際の飛行前にすべての作動を確認できた」とクリス・ヴァン・ブイテン Chris Van Buiten技術革新担当副社長が言う。「地上にいながら飛行を一年前に実施し、問題点は先につぶすことができた」
- 鍵は高忠実度モデリングとシミュレーションhiigh-fidelity modeling and simulation tools だ。「リスクを減らすため予想される事項を先に解決し、障害を取り除いた」とミラーは言う。「想定外の事項は実質ゼロで組立工程を進められました」降着装置では運動モデリングの利用で取り付けは数日で完了したのは前例がないという。
- 「迅速試作とは物事を省略することではありません」とミラーは言う。「問題点をフライトテストに繰り越すと開発が何ヶ月も遅れるリスクになります。X2では限界性能を短期間で引き上げ、17回のテスト飛行で十分でした。飛行実施は費用がかさみ、なるべく早く飛行限界を引き上げるのが目的であり、欠陥を発見することはテストの目的ではありません」(ミラー)「飛行前や飛行中に問題点が見つかることがありますが、一年前に直面した問題に再度悩まされることはありません」(ヴァン・ブイテン)
- 同時に部品メーカー合計53社との協力関係を重視するのも同社の特徴だ。「各社から9割の部品部材が届き、シコルスキーは組み立て統合を行い、文書化を行いますが、これにより高品質を重視する価値観が迅速に実現できるのです」とヴァン・ブイテンは説明する。「取引先は大企業中小企業あり、仕事の進捗速度は異なりますが、納期どおりに部品を届けています。見ていて興奮しますね」
- ミラーも「多数の供給先のネットワークを維持しながら、強力なモデリングツールとインターフェイス制御で仮想設計は実現できるのです」とし、各社は共通のデザインモデルを参照して同時に作業をすすめているという。.
- レイダー1号機の地上テストは準備できたとヴァン・ブイテンは語る。「2号機の部品もすべてそろっており、胴体は完成しています。1号機の飛行に時間をかけてから2号機組み立てを完成っせて、変更点を取り入れます」 1号機のフライトテストは四段階でホバリング低速飛行から始める。その後性能限界を拡大しつつ推進器を使った特殊飛行も行う。
- 「X2を出発点とします」とミラーは言う。「新しい飛行性能でヘリコプターの実用度を大きく変えることになるでしょう」 ヘリコプター、固定翼機、ティルトローターのパイロットがそれぞれレイダーのシミュレーターを試し、フィードバックを与えている。
- レイダーは米陸軍の武装航空偵察Armed Aerial Scout (AAS) の要求内容に対応するが、同計画は予算問題で先行き不透明になっている。「レイダーは量産機ではありませんが生産モデルに限りなく近くなっています」(ミラー) 試作機は軍用仕様になっていないがシコルスキーは製造履歴を完全に残し、平行して軍用の量産化型機体の準備がすぐできるという。
- AAS構想が前に進まない中で、シコルスキーは顧客候補複数から実証内容で希望を聴取している。「2号機では前例のない実証をします。有望な顧客候補複数と何を試すかを話し合っているところです」(ミラー)
- シコルスキーは技術情報をボーイングにJMR開発用に提供している。仮想設計技術は「実用レベルで移転可能であり、迅速試作化により開発は迅速に進められるでしょう」とJMR技術実証を担当するダグ・シドラー Doug Shidler,は語る。「レイダーで試す内容はJMRで実現することになります」■
ラピッド・プロトタイピングは軽・重・コンピュータを含めた製造業の全般でブームになっていますね。
返信削除3Dプリンターの活用であるとか…。
カタカナでの表記もあると、その筋の人が記事を参照する可能性が上がるかもしれませんので、コメントしておきますね。
hamanakoさま、ご指摘ありがとうございます。当方としてはブログを翻訳、編集の練習の場としてもとらえているのですが、こだわりがありカナカナ語をなるべく使わずに意味を伝えようとしておりました。たしかにラピッド・プロトタイピングはすでにそのまま認知されているのですね。漢字にこだわる当方にはやや抵抗があるのですが。今後もよろしくご指摘くださいね。
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