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★主張: F-35をめぐる議論は新局面に入った



F-35が歴史に残る可能性はプロジェクトの失敗例としてだろうと見ていますが、一方で莫大な費用をかけてそれなりに当初の性能を実現しつつあるのも事実です。しかし、実用化してもステルスの優位性が維持できない、前提としてた運用コンセプトが使えない、など時代の変化に対してあまりにも遅すぎる登場になりそうですね。各国も同機には及び腰になっているのが確定発注数の少なさでわかりますね。F-35の失敗からもう一度空軍力のコンセプトを考えなおし、無人機にせよ有人機にせよ、もっとましな手段が近い将来に登場することを願わずにいられません。

Opinion: Joint Strike Fighter Debate Enters New Phase

Cost and counter-stealth will be key issues
Jan 15, 2015Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology

「防衛ビジネスの動向を追っていないと、F-35がトラブルを起こしていると思い込んでも仕方ない」とロッキード・マーティン社のコンサルタントが5年前に記した数週間後に当時の開発室長が更迭されている。後任者は公開されていた工程表が現実と3年から4年も乖離しているのを発見した。
  1. 現在はF-35のトラブルの大部分が解決されていると考えても無理は無い。2013年2月に仕切り直された日程表は2年たっても有効なままで、二年越しで計画変更がないのは同機開発で初の出来事。海兵隊は初期作戦能力獲得を今年中に実現しそうだ。昨年発生したエンジントラブルの原因究明も進行中と伝えられる。
  2. F-35が中核的性能パラメーターkey performance parameter (KPP) の要求水準を満たしているようにみえるが、それだけで成功とはいえない。開発コストと日程、調達、運用費用はKPPに入っていない。今のところKPPの各数値が安定しているが(安定しないと大変なことになる)そもそもKPPは開発の目標そのものではない。
  3. 運用側にとっては開発リスクが現実のものとなっている。オランダは当初の85機調達を37機にとどめる。韓国はF-15を60機導入予定だったが、その予算でF-35Aを40機調達する。米空軍は死活的なF-16改修を凍結し、即応体制に問題が発生している。F-35は機体診断システム、補給システムが不十分なため熟練整備員多数を必要とする。
  4. 今年はコスト面が重要視される。各国から受注は700機を超え、計画生産数を2020年以前に達成するには海外受注が頼りだが、確定受注は5%未満。そこで発注意向を確定させることが緊急課題だ。デンマークは今年中に決定の見込みで、英国の138機調達案が実現するのか、いつ実現するのかが大きく注目される。
  5. 各国は予算と日程をにらみつつブロック4A/4Bアップグレードの内容を知りたがっている。ブロック4A開発は来年に始まり、4Bは2024年に利用可能となるが、熟成化は2026年だろう。計画では核運用能力、ノルウェー製・トルコ製巡航ミサイル運用能力、英国向けにはブリムストーン、メテオ各ミサイル運用能力、米海軍向けにはAIM-9Xブロック3空対空ミサイル運用能力、海兵隊向けには「第五から第四」向け通信及び近接航空支援システムが含まれる。ただ、全て完全になる保証はなく、4A/4Bでも運用テストから修正が発生するだろう。利用者側は一定の妥協を覚悟したほうがいい。
  6. 2番目のリスクは運用面だ。ステルス対抗技術は机上の理論から現実のハードウェアに進化している。2013年にはロシアの55Zh6MEレーダー装備が登場しVHF方式アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)でネットワーク化し、高周波数レーダーを組み合わせたシステムとなった。赤外線による捜索救難装備でステルス機を探知したとの報告があり、中国からも55Zh6MEを模倣した装備が出てきた。ステルスが時代遅れとは言えなくてもF-35の運用上の優位性は消えつつあるのだろうか。
  7. 2015年は同様の傾向がもっとあらわれる。中国が建造中の新型055型駆逐艦は低帯域AESAを搭載する。ロシアのP-18レーダーのデジタル版が流通し、ステルス対抗は安価になってきた。
  8. 海兵隊は短距離離陸垂直着陸型F-35Bの活用方法を工夫して運用リスクを軽減しようとする。最新の運用コンセプトでは艦艇や陸上基地は敵の移動型ミサイルの有効範囲の外に配置し、燃料再補給・武装再搭載地点を目標の付近に置く。生き残りができるかはこの前線基地を敵が狙うより前に移動できるかにかかってくる。
  9. 海兵隊構想ではF-35が卓越した戦術戦闘機であることが前提だ。だがこれは戦略的なリスクにつながる。第三相殺戦略ではひとつ論文がでており、戦闘半径が600マイルしかない戦術機への投資を中止し、長距離爆撃機やUAVへ予算を振り向けるよう求めている。長距離打撃爆撃機開発が勢いを増す中で、この議論は重要度を上げてくるだろう。
  10. これまでF-35の開発リスクのため多大な費用をかけてきた。これからは運用リスクが中心に変わろうという中、戦略上のリスクが水平線上にあらわれてきたのだ。■


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