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日本の安全保障で宇宙空間利用はどこまで進んでいるか



日本の宇宙開発で安全保障への応用で制約がすでに撤廃されていますが、意外に全体像は理解しにくいですね。Defense Newsがうまくまとめてくれましたのでご一読ください。結構安上がりですが期待できそうですね

Japan Begins National Security Space Buildup

By Paul Kallender-Umezu 11:01 a.m. EDT April 12, 2015
TOKYO — 日本の宇宙開発戦略本部が今後10年間の戦略方針となる基本計画を今年1月に固めた。日本が宇宙政策を安全保障戦略に組み込むのは初めて。日米同盟で中国を封じ込めるねらいがある。
  1. 準天頂衛星Quasi-Zenith Satellite System (QZSS)をGPS補完用として整備し、宇宙状況認識space situational awareness (SSA)、海洋状況把握maritime domain awareness (MDA)の開発を重要視している。情報収集衛星 Information Gathering Satellite (IGS)の運用数は二倍にする。またミサイル早期警戒衛星を開発する。
  2. 「QZSS、SSA、MDAが日本の三大重要宇宙事業だ。宇宙配備弾道ミサイル早期警戒衛星も検討していく」と自民党今津寛衆議院議員が述べた。党の宇宙政策委員会の前座長で、現在は政務調査会で安全保障関連をまとめる今津代議士は宇宙での安全保障体制構築を主導。
  3. 平成27年度予算でQZSSは18.5%増の223億円で7機の製作が決まり、IGSには14%増の697億円が計上され、宇宙関連全体では18.5%増の3,245億円がついた。
  4. 今回の基本計画は従来の政策方針とは明白に異なる。中国を全世界の安全保障の撹乱要素とし、2007年に衛星攻撃兵器をテストし、その後もジャミングやレーザー妨害実験を行っていると指摘する。
  5. 安全保障上施策に宇宙を取り入れるのは2013年12月発表の国家安全保障戦略方針で方向が決まっており、安倍首相の提唱する「受身的防衛」から「事前対応型防衛」へ転換していた。
  6. 米国は日本の新方向性を強く支援している。昨年5月にはワシントンで日米の第二回総合宇宙関連政策対話があり、日米は安全保障での宇宙利用で協力を進め、特にSSAとMDAで中国の動向を監視する共通認識を確認。
  7. 「新方針は大きな変化」と語るのはジェイムズ・クレイ・モルツ James Clay Moltz 海軍研究大学院の教授で "Asia's Space Race: National Motivations, Regional Rivalries and International Risks."アジアの宇宙レース:各国の背景と地域内対立関係および国際政治上のリスク」の著者だ。「宇宙での軍事活動実施に向け方策を具体的に展開した初の公文書だ。米国の宇宙政策文書と比較しても詳細に踏み込んでわかりやすくまとめられている」
  8. 特筆すべきは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の事業内容に安全保障が組み込まれたことだ。JAXAは2012年改正で軍事目的の宇宙開発ができるようになったが、従来は研究開発機関の位置づけだった。
  9. JAXAの軍民両用プロジェクトでは次世代データ中継衛星を情報収集監視偵察(ISR)用途に投入する。防衛省が作成した赤外線ミサイルセンサーをJAXAの偵察衛星に搭載する。重量150キロ級の多用途衛星も開発中で、ミッションに応じ構成を変更する。超低高度試験衛星 Super Low Altitude Test Satellite (SLATS)も開発中で、地上操作で大気圏に突入・離脱が可能で鮮明な画像を撮影できる。
  10. JAXAを共同所管する文部科学省(MEXT)の宇宙開発利用課千原由幸課長は新方針を完全に支援している。「文科省、JAXAと防衛省の協力関係は強固になっています。JAXAと防衛省の科学技術協力合意が好例。高性能光学画像衛星にミサイルセンサーを搭載するのもその例で、協力を強化していきます」
  11. 一方で基本方針は今津代議士の構想から後退している。年間予算を早急に5,000億円規模に引き上げ、安全保障関連の事業を拡充し、IGS衛星数を倍増し、MDAを優先し、宇宙関連事業を国家安全保障会議の直轄にすべきと今津は提唱していた。
  12. 基本計画ではIGS衛星の整備目標数を明記せず、MDAは二年間かけて必要な規模を検討するとしている。ただし米国とはこの事業の推進で合意が形成済みだ。
  13. 変化の影響はSLATSのような公開型開発にも見られる。実現すれば軍事上も有益な技術提案が日本の諸研究機関から出ており、同一軌道で対衛星兵器に転用出来る技術などがあるが、提案側が民生利用の可能性を十分伝えきれず予算がついてこなかった。だが軍民双方に応用できる技術は日本の軍事宇宙利用の中核技術になる、とクリス・ヒューズChris Hughes(英国ウォーウィック大で日本軍事問題の専門家)は指摘。
  14. 「今回の計画改定は宇宙の軍事利用に道を開く。特筆すべきは国家安全保障を宇宙政策の根本に埋め込んだことで、これまでの民生用途限定を否定し、今後は順調に宇宙の軍事利用が進むだろう。目指している性能水準には本当にすごいものがあり、具体化している技術も多い。」■


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