2026年11月6日金曜日

「成層圏を活用せよ」―米陸軍が高高度気球など「成層圏システム群」の導入を進めている

 

米陸軍の「成層圏の活用」で「キラーバルーン」が選択肢に浮上

Killer balloons an option as US Army seeks

to ‘exploit the stratosphere’

By Hope Hodge Seck


2026年6月24日、グアム海軍基地内のオロテ飛行場で、米陸軍兵士たちが「ヴァリアント・シールド2026」演習の一環として高高度気球に空気を注入している。(オンディレイ・アブドゥラ=ロビンソン一等軍曹/米陸軍)

米陸軍の高高度気球が欧州、太平洋、中東に展開されるなど、実験活動が本格化しているが、ミサイル防衛担当当局者は水曜日、同軍がこの能力を最大限に活用すべく、あらゆる選択肢を検討していると述べた。

ジョセフ・ムロシュチク大佐(米陸軍宇宙・ミサイル防衛司令部 変革統合局-宇宙優位性(TID-SS)局長)は、水曜日に米国陸軍協会(AUSA)年次総会での記者団とのブリーフィングで、あらゆるサイズの高度気球を含む「成層圏システム群」の導入を推進すると述べた。

「これにより、宇宙に匹敵する能力を提供できるようになる。つまり、通常は『大気圏』と見なされる領域と『宇宙領域』との間の移行点を真に活用することになる」とムロシュチク大佐は述べた。

「この運用空間により、ペイロードの面で宇宙に匹敵する能力を発揮できる領域において、ある程度の持続性と広範囲のカバーが可能になるだけでなく、成層圏から得られる深いアクセスも活用できる……つまり、すでに目的地へと押し進めてくれる風を利用して、発射効果や、センシング・通信用のその他の種類のペイロード、さらには発射効果のポートフォリオの拡張を実現できるのだ。」

ウクライナが実施したと報じられているように、気球を射出装置として使用することは、センシング目的での使用よりも多くの課題を伴う可能性が高いが、ムロシュチク大佐は、あらゆる選択肢を排除しないとの姿勢を示した。

「物理的な破壊力を伴う可能性のあるものを含む機会や選択肢を控えるつもりはない」と同氏は述べた。「しかし現時点では、あらゆる種類のペイロードを用いて、全面的に実験を行っている。」

成層圏とは、大気の最下層である対流圏の上にある層のことだが陸軍はこの用語を用いて、地上から約6万~10万フィート(11~19マイル)の高さを指している。水曜日、ムロシュチク大佐はこの帯域を説明するために「宇宙沿岸域(space littorals)」という用語を用い、沿岸に最も近い浅瀬を指す海軍用語に言及した。

高高度気球は、軍事概念としては新しいものではない。よく知られているように、2023年には中国の気球が米国の空域に漂流し、国家安全保障上の警鐘を鳴らしたほか、それまで検出されずにいた過去の侵入事例が発覚した。

2023年2月1日、モンタナ州ビリングス上空を漂う中国の高高度監視気球。(ラリー・メイヤー/AP通信経由『ビリングス・ガゼット』)

2019年に『アーミー・ユニバーシティ・プレス』に掲載された記事では、宇宙作戦が注目を集める中、軍事用気球の可能性が称賛されていた。

「直感的に考えて、その高度を飛行する気球は、情報収集、監視・偵察、通信、ミサイル警報、精密航法および時刻同期といった任務を遂行できるだろう」とアンソニー・ティングル中佐は記している。「宇宙領域の状況がますます不安定になる中、気球は上空の能力不足に対する回復力と冗長性を提供してくれる。」

しかし、陸軍が現在、気球とその可能性に示している関心は、かつてないほど高い。

水曜日のブリーフィングで、米陸軍宇宙・ミサイル防衛司令部のジョン・ラファティ中将は、これらのシステムが試験および実証のために欧州、太平洋、モロッコに展開されたと述べた。

Breaking Defenseは今週、中東における気球の存在についてさらに報じ、太平洋でのより大規模な実証計画が中止された後、ドローン数十機からなる小規模な群れが試験のために同地域に展開されたと述べた当局者の話として伝えた。

陸軍第3マルチドメイン・タスクフォースのウェイド・ジャーマン大佐は今週初め、自身の部隊が気球の新たな運用概念を積極的に開発していると語った。

「『コンステレーション・アプローチ』と呼ばれる方式で運用している。最高級で極めて特殊な気球を数機、別々のペイロードやシステムを搭載して上空に展開するものだ」とジャーマン大佐は述べた。「別の場面では、安価で使い捨て可能、かつ迅速に展開できる気球を活用する。つまり、一度に数百機を打ち上げ、敵に複数のジレンマを突きつけることができる。」

ジャーマン大佐によると、陸軍は産業界と協力して最も有用な能力を開発しており、適切なペイロードだけでなく、適切な浮揚ガスや打ち上げ方法も決定しているという。

「これが、現場のパートナーと協力してリアルタイムのフィードバックを得て、これらを実現するための私たちの取り組み方です」と彼は述べた。

ムロシュチク大佐によると、陸軍は今後1年間にわたり、「成層圏を活用する」ため最善の方法を特定することを目的に気球実験を数回実施する計画だという。

ラファティ大佐は、実際に動作する気球を目の当たりにして可能性を「強く信じるようになった」と語った。

「太平洋やヨーロッパで実証されるたびに、その数は増え続け、支持もますます高まっている」と彼は述べた。「ですから、来年、このプログラムをさらに前進させるために何を行うかについて本当に期待に胸を膨らませている」■

2026年11月5日木曜日

中国との大規模戦闘となった場合に米特殊部隊に出番はあるのだろうか

 

大規模戦が勃発したら米特殊作戦部隊に出番はあるのか

What would special operations forces do in a really big war?


2万2000人を構える陸軍特殊作戦司令部は、大規模戦で小規模部隊が担当できる任務内容を想定している

A U.S. Green Beret assigned to 10th Special Forces Group (Airborne) covers his sector fire during a night raid training on a complex after fast roping from a CH-47 Chinook helicopter near Aviona, Greece, Mar. 12, 2024. Exercise Trojan Footprint provides NATO Allies and partner special operations forces an opportunity to enhance their skills, build interoperability and demonstrate the capability of ready and postured special operations forces within the European theater. (U.S. Army photo taken by Staff Sgt. Nathan Baker) 

2024年3月、ギリシャで夜間襲撃の訓練を行う第10特殊部隊グループ所属のグリーンベレー。陸軍写真(撮影:ネイサン・ベイカー曹長)。

陸軍兵士の10人に1人は特殊作戦任務に従事しているが、機動性の高い特殊部隊の指揮官たちは、従来型の大規模部隊同士の紛争で自部隊をどのように位置づけるべきかを検討している。

「当然ながら、陸軍の90%はUSASOC(米陸軍特殊作戦司令部)に所属していない」と、同司令部を率いるローレンス・「ギル」・ファーガソン中将は述べた。「したがって、我々の小規模な部隊は、連合軍にいわば『体格以上の活躍』をしているのだ。」

イラク戦争、とりわけアフガニスタン戦争は、特殊作戦部隊で特徴づけられた。9.11同時多発テロ後の「タスクフォース・ダガー」やその他の陸軍特殊部隊によるカブール襲撃から、陸軍特殊作戦ヘリコプターで輸送された海軍SEALsによるオサマ・ビン・ラディンの殺害まで、これらの戦争は特殊作戦部隊に依存していた。

しかし、中国やロシアのような敵との戦争は、過去20年間の小規模なチームによる作戦というより過去の師団規模の部隊による戦闘に近くなる可能性が高い。例えば、韓国に駐留する第2歩兵師団には1万7000人の兵士が所属している。12人のグリーンベレーからなるチームが、同師団が直面しそうな戦闘にどんな影響を与えられるだろうか?

ファーガソン中将と、第1特殊部隊司令部の司令官として陸軍のグリーンベレー部隊および関連部隊を直接指揮するジョセフ・ウォータム准将は、今週開催された米国陸軍協会の年次会議で大規模な戦争において特殊作戦要員がどのような役割を果たし得るかについて講演した。

両者によると、その答えは、偵察、心理作戦、戦場内での同盟軍の結集など、特殊作戦部隊が直接的な戦闘以外で持つ多くの技能にありそうだという。

「影響力といえば、欺瞞を思い浮かべるだろう。」

「『センサーから射手への連携』という言葉を耳にする。我々は、現場に展開するセンサーの一部なのだ」とウォータム准将は述べた。「我々は統合部隊の他の要素と連携し、支援を行うことができる。そして、パートナーとの連携やその他の能力を活用して、[戦場]の奥深くで状況に影響を与える能力を確実に持っている。特に心理作戦(PSYOP)能力や情報優位性を考えてみてほしい。あの[大規模な通常戦]の指揮官たちは、我々に歴史的に活動してきた多くの地域へ再び進出するよう求めている。『影響力』と言えば、『欺瞞』を思い浮かべるだろう。」

USASOCの2万2000人の兵士は、1万人の文民職員に支えられ、直接行動攻撃部隊と非従来型部隊の両方を構成している。「戦闘要員」には、第75レンジャー連隊の軽歩兵、12人編成のチームを派遣して現地の友好勢力と連携する特殊部隊グループ7個、そして第160特殊作戦航空連隊のヘリコプター部隊が含まれる。その影響力行使作戦には、心理作戦(PSYOP)大隊7個と民政Civil Affairs 大隊5個が含まれる。

ファーガソン中将は、大規模部隊が領土を制圧した後、次の段階へ進むという重要な局面である「定着」を目的とした大規模な戦争では、民政およびPSYOP部隊への需要が極めて高くなる可能性が高いと指摘した。

「我々の民政部隊は、いわゆる『戦果の定着』を支援し、軍団や師団の戦闘力を一部解放することで、師団や軍団が移動し、求められている任務を遂行できるようにする役割を果たせるだろう」とファーガソンは述べた。つまり、民政部隊は「受入国におけるパートナーや同盟国との連携を構築し、その能力の一部を我々に引き継ぐ」訓練を受けているという。彼らは、緊急サービスや第一対応部隊など、パートナーや同盟国と連携して体制を構築する。そここそが彼らの真価を発揮する場面であり、それによって[通常戦力の]指揮官の負担が軽減され、意思決定の余地と一定の戦闘力が確保されるのだ」

また、心理作戦(PSYOP)部隊は、敵指揮官を混乱させ、意思決定を遅らせるために虚偽の情報を流すことに長けていると彼は述べた。

Green Berets assigned to 1st Special Forces Group (Airborne) enter a building during close-quarters battle training at Joint Base Lewis-McChord, Washington, Sept. 16, 2026. The exercise replicated realistic operational conditions, allowing Soldiers to refine close-quarters tactics, communication, and team coordination in preparation for real-world missions. 1st SFG(A) maintains highly lethal, rapidly deployable forces to execute the full spectrum of special operations alongside allies, partners, and the joint force as the preferred partner and premier special operations entity in the U.S. Pacific Command area of responsibility. (U.S. Army photo by Staff Sgt. John Bae)

2026年9月16日、ワシントン州ルイス・マックコード合同基地にて、第1特殊部隊グループ所属のグリーンベレーが近接戦闘訓練を行っている。陸軍写真:ジョン・ベー上級曹長。

また、グリーンベレーは同盟国の指導者たちとの個人的な関係を通じて、一発の銃弾も発射せず、大規模部隊の指揮官を支援することができると彼は述べた。

「彼らは文化への理解が深く、言語面でも文化的な訓練を受けており、隊員はほぼ全キャリアを地理的戦闘地域内で過ごしています」とファーガソン中将は述べた。「我々の上級将校や下士官の多くは、各国の首脳から国防長官、そして長年にわたり要職に就いてきた高官たちまで、世代を超えた関係を築いています。もし[通常戦力の]指揮官がどこかに赴こうとする場合、我々の部隊の中に、その国の高官たちを知っている者がいる可能性はほぼ100%あり、彼らは現地でそうしたつながりを築くことができる。」

最前線での戦闘に関しては、ウォータム准将は、主に通常戦力によるイラン戦争において特殊作戦部隊がどのように活用されてきたかには言及しなかったが、任務に事欠くことはなかったと強調した。

「ここ12ヶ月だけでも――もちろん詳細は明かせませんが――国が推進した作戦において、陸軍特殊作戦部隊、ひいては特殊作戦部隊全体が主力を担い、陸軍特殊作戦部隊が作戦を実行できるよう、あらゆる能力、あらゆる統合能力が動員され、結集された事例がありました」とウォータム准将は述べた。「その対極にあるケースもあり、そのような場合は我々が第2、第3の作戦を支援することもある」■


マット・ホワイト

シニアエディター

マット・ホワイトは「Task & Purpose」のシニアエディターである。空軍およびアラスカ空軍州兵で8年間パラレスキュー隊員を務め、日刊紙や雑誌のジャーナリズム分野で10年以上の経験を持つ。


防衛装備品の調達は「規模」から「スピード」に変貌している―実戦での経験は戦闘の展開はこれまでの装備品の開発整備の進展ぶりを上回っている

 

論説:防衛競争は「規模」から「スピード」へ移行した

Opinion: The Defense Race Has Shifted From Scale To Speed


The Pentagon

写真提供:J. デビッド・エイキ/ゲッティ・イメージズ

戦闘の展開は防衛装備プログラムの進行より速くなっている。

大手防衛企業は、開発期間を最大50%短縮できるのを実証している。軍事技術がかつてないペースで進化する中、開発サイクルの短縮が戦略的優位性となってきた。

ウクライナ戦争は、戦闘において軍事技術がいかに急速に変化し得るかを示した。無人システムのソフトウェアは数日で更新され、低コストで消耗可能なドローンが戦場の経済構造を一変させ、新たな能力が登場するたびに、運用者は戦術を適応させている。にもかかわらず、米国の主要な防衛調達プログラムが初期作戦能力(IOC)を達成するまで平均で12年近くを要している。紛争のペースと調達プロセスのペースとの間に広がるギャップは、決定的な競争上の課題となっている。

何十年もの間、競争上の優位性は産業規模、製造能力や確実なプログラム実行力に依拠していた。これらの能力は今も不可欠だが、もはやそれだけでは不十分である。防衛企業はますます「スピード」――つまり、いかに迅速に学び、新技術を統合し、実用的な能力を提供できるか――で競争するようになっている。

経営幹部は、開発サイクルが長期化原因を、顧客要件の変化、規制、あるいはサプライチェーンの制約に求めている。確かにこうした圧力は存在する。しかし、遅延のかなりの部分は、エンジニアリング組織そのものに起因している。意思決定の遅さ、分断された運営モデル、そしてリスク低減を目的として設計された開発プロセスが、学習を鈍らせ、提供を遅らせている。

最も大きく進歩している企業は、エンジニアリングのスピードが単なる顧客要件の関数ではないことを実証している。それは組織としての能力だ。運営モデルの再設計、学習サイクルの加速、そして意思決定を技術チームに近いレベルで下すことで、業界に慢性的に見られるスケジュール遅延の多くは、経営陣のコントロール下にあることを実証している。

最大の障害は、個別の技術的な問題であることはめったにない。むしろ、遅延はエンジニアリングシステム全体に蓄積されていく。意思決定権が不明確であったり、組織が遅延よりもミスを重く罰したりするため、意思決定はしばしば、幾重ものレビューや承認の段階を経て上層部へと押し上げられている。本来は現場のすぐ近くで解決されるべき問題に対し、上級技術リーダーがボトルネックとなっている。

同時に、エンジニアリング、製造、サプライチェーン、プログラム管理の各部門は、しばしば別々の優先順位、スケジュール、データに基づいて運営されている。製造上の制約は遅れて表面化し、サプライヤーの問題は設計がほぼ完了した後に浮上し、エンジニアは技術的な作業を進める代わりに、組織の境界を越えた調整に過大な時間を費やしている。

学習サイクルも、本来必要な速度より遅いままである。デジタルエンジニアリングは製品開発を変革したが、仮想モデルでは依然として、統合上の問題、製造上の課題、あるいはソフトウェアとハードウェアの相互作用を完全に明らかにすることはできない。シミュレーションに依存している組織は、設計が成熟し、再設計がより時間がかかり、はるかに高額になる段階になって初めて、重大な問題に気づくことが多い。一方、最も迅速な組織は、ラピッドプロトタイピングを活用して、開発全体を通じて学習を加速させている。

その影響は、エンジニアリング組織の枠をはるかに超えている。米国防総省は、最も費用のかかる調達プログラムに2.4兆ドル近くを投資する計画だ。そして、開発期間が1年延びるごとにコストが増加し、脅威環境がますますダイナミックになる中で、運用能力の獲得が遅れてしまう。

ある大手防衛プライム契約業者は最近、主要プログラムが承認から最初の運用試験に至るまでに要する時間を検証した。プラットフォームの技術要件を変更することなく、同社は開発期間を約50%短縮できる余地を特定した。最も大きな効果をもたらす改善の多くは、エンジニアリング部門の管理範囲内にあった。

その中には、意思決定権限の明確化、サブシステムに対する責任の拡大、ハードウェア試験の加速、そしてプログラムごとに共通機能を再構築する代わりに再利用可能なソフトウェアやプログラム・スターター・キットを導入するなど、比較的単純な改善策もあった。一方、部門横断的なチームの同一拠点配置、製造およびサプライチェーンの専門知識を開発段階のより早い段階で取り入れること、統合や試験を開始する前にすべての要件が確定するのを待つのではなく、初期機能についてより早い段階で顧客と連携することなど、より広範な組織的変革を必要とする改善策もあった。

より広範な教訓として言えるのは、劇的な改善に企業全体の変革は必要ないということだ。最も早く進歩を遂げている企業は、通常、単一プログラムから着手し、開発サイクル時間ので測定可能な短縮を実証した上で、成功した実践手法を拡大している。

これらはいずれも、現代の防衛調達に内在する複雑性を排除するものではない。規制当局による監督、高度なシステム統合、さらに強靭なサプライチェーンは、今後も不可欠であり続ける。しかし、スピード面で優れた成果を上げている組織は、多くの経営幹部が想定しているよりもはるかに開発スケジュールが制御可能であることを実証している。

防衛分野における次の競争では、任務遂行能力を損なうことなくエンジニアリングサイクルを短縮できる企業が報われることになる。そうした組織は、能力をより迅速に提供できるだけでなく、顧客が防衛産業基盤に何を期待しているかを再定義する一助となるだろう。■

クリス・ジョーンズはベイン・アンド・カンパニーの航空宇宙・防衛プラクティスのリーダーであり、ビル・ラゼヴィッチは同社の製品・研究開発プラクティスを率いている。両名とも同社のパートナーである。

2026年11月4日水曜日

突如浮上してきた米中ロ首脳会談は新たなヤルタ体制への布石となるのか―米国が世界に指導力を今後も発揮できるのか懸念が生まれてくるだろう

 

米中ロ首脳会談は新たなヤルタ会談になるのか?

The Donald Trump-Vladimir Putin-Xi Jinping Summit: A New Yalta?


プーチン・習近平を交えた前例のない首脳会談は、ワシントンの外交的影響力を示すものとなるかもしれない。しかし、同時に、米国の力と信頼性の間に広がる溝を浮き彫りにしかねない。


ドナルド・トランプ大統領が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領および中国の習近平国家主席との前例のない3カ国首脳会談に前向きな姿勢を示している。この会談は、今年11月に深センで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)サミットの場外で行われる可能性もあるが、その意義はウクライナ戦争をはるかに超える。

報道によると、提案はモスクワ発で、プーチン大統領はトランプ大統領との関係改善を活かすことを狙っている。しかし、トランプ大統領は、こうした会合ではウクライナ問題より核軍縮に焦点を当てるべきだと示唆している。

とはいえ、このような首脳会談の意義は、当面の議題をはるかに超えて広がるだろう。国際関係におけるより広範な変容――すなわち、確立された機関、同盟、多国間枠組みを、大国間の直接的な取引に置き換えたいという誘惑が高まっていること――を反映する。

もっと根本的な疑問は、このアプローチが米国の力そのものについて何を明らかにしているかという点だ。ワシントンは国際秩序を形作る独自の能力を示しているのか、それとも、その力をこれほどまでに効果的なものにしてきた信頼性を徐々に損なっているのか。

トランプ・習近平・プーチン首脳会談で最大の恩恵を受けるのは誰か?

提案されている首脳会談は、ワシントンが最近モスクワに対し示している姿勢の変化という文脈で捉える必要がある。今月初め、トランプ大統領はロシア産ディーゼル燃料の輸入を認め、10月16日には 施行を免除し、 「リンジー・O・グラハム・ロシア・イラン制裁法」に基づき ロシアに対する新たな制裁や関税を一時停止した。法的には許容される措置ではあるが、共和党内からも批判を浴びたこれらの決定は、相応の譲歩を引き出さないまま、ロシアへの経済的圧力を弱めている。

一方、ウクライナは、こうした制限措置が衛星通信に影響を及ぼし、情報支援を妨げていると懸念を表明している。ワシントンはこれらの主張の一部を否定しているが、ロシアが民間施設へ攻撃を続ける中、この不確実性はウクライナが米国に依存している実情を浮き彫りにしている。こうした背景において、華々しい三カ国首脳会談は、物議を醸している米国とロシアの和解への注目をそらす役割も果たすかもしれない。

ドナルド・トランプにとって、首脳会談は、非効率的と見なす多国間機関よりも大国間の直接交渉を好む本人の姿勢や、確立された枠組みや伝統的な同盟関係よりも、海外指導者との個人的な関与や目に見える合意を優先する取引的な外交アプローチを反映するものとなるだろう。また、戦略的な計算の表れでもあるかもしれない。ウォルター・ラッセル・ミードが論じているように、ワシントンは、ロシアの北京への依存を制限し、エナジー市場を管理し、イスラム過激主義に対抗することにおいて、モスクワと共通の利益を見出している可能性がある。

この論理に加え、トランプが欧州の戦略的懸念に対して比較的無関心であることから、欧州の安全保障が、より広範な地政学的妥協における交渉材料となる可能性が高まっている。しかし、首脳会談がもたらす当面の利益は、主に政治的かつ象徴的なものとなるだろう。ロシアと中国の指導者を一堂に集めることは、米国の主要な競争相手と直接交渉できる「ディールメーカー」としての彼のイメージを強めることになる。

ウラジーミル・プーチンにとって、得られる利益はさらに大きくなる可能性がある。ワシントンの最近の決定によりモスクワへの圧力は緩和された一方で、ワシントンとキーウ間の緊張は高まっている。米国および中国の大統領と並んで首脳会談を行うことは、2022年のウクライナ侵攻後に孤立したロシアの国際的地位を正常化させることになるだろう。また、西側主導の秩序を、競合する大国と影響圏を軸とした秩序に置き換えたいプーチンの野望を前進させることにもなる。ウクライナをめぐる交渉がキーウの直接的な参加なしで進められれば、モスクワは自らの侵略行為をワシントンとモスクワ間の交渉材料に変えて、さらなる優位性を獲得することになるだろう。

もしこの首脳会談が、キーウの直接参加なしにウクライナをめぐる交渉への道を開くことになれば、モスクワはさらに重大な成果を収めることになる。すなわち、自らの軍事侵略をワシントンとモスクワ間の交渉材料へ変えることになる。

習近平の計算は異なる。このような会合を主催することは、中国が国際安全保障ガバナンスにおいて不可欠な役割を担う存在であることを強固にする。しかし、北京には慎重になる理由がある。習近平は、ウクライナの解体を正当化し、欧州連合との関係をに損なう解決案を支持することには消極的かもしれない。また、中国の犠牲を代償として交渉された米露の和解を歓迎する可能性も低いだろう。

したがって、3人の指導者全員が利益を得る立場にあるが、このサミットの広範な意義は、その象徴性にある。すなわち、数十年にわたり国際安全保障の枠組みを形成してきた機関や同盟の外で機能する、非公式な大国間の協調体制の台頭である。欧州にとって、これは不安定化要因となり得るほか、ロシアが国際的な正当性を回復しつつ、軍事的目標を追求できることを示唆する可能性がある。

核軍縮:真剣な目標か、それとも外交上の口実か?

トランプ大統領がサミットではウクライナ問題より核軍縮に焦点を当てるべきだと示唆したことは、ワシントンがモスクワに対してどのような譲歩をする用意があるかという点から世間の関心をそらす可能性がある。しかし、核軍備管理を単なる外交上のパフォーマンスとして一蹴すべきではない。世界は核競争の新たな時代に突入しているからだ。

トランプは第1期政権において、中国を排除した軍備管理協定に疑問を呈した。2019年にワシントンが中距離核戦力(INF)条約から脱退した理由の一つは、中国が同条約に参加していなかったことだったが、主な正当化理由は依然としてロシアによる条約違反であった。また、トランプ政権は中国をより広範な戦略的軍備管理交渉に引き入れようとしたが、成功しなかった。

それ以来、課題は深刻化している。新START条約は2026年2月失効し、米国とロシアの戦略核兵器を制限していた最後の拘束力ある二国間条約が終了した。ワシントンとモスクワで合わせて世界の核兵器の約86パーセントを保有している一方、中国の核兵器の拡大は、二国間であった均衡を三極間の競争へ変容させつつある。

しかし、三カ国間の軍備管理には大きな障害が立ちはだかっている。中国の核兵器保有数が米国やロシアの保有数よりはるかに少ない現状では、北京側に数量制限を受け入れる動機はほとんどない。一方、ワシントンは、主要な核競争相手2つと同時に対峙する可能性を考慮しなければならない。

欧州とインド太平洋地域も相互に関連し合っている。モスクワへの譲歩は、北京に対する米国の抑止力計算に影響を及ぼす可能性がある。一方、ロシアは戦略的優位性を確保するため核の威嚇を使い続けており、中国は核兵器の近代化と増強を進め、米国は核三本柱の近代化を進めている。

こうした情勢下でも、軍備管理が不可能になるわけではないが、信頼性のある合意には、継続的な交渉、検証メカニズム、相互の約束、そして戦略的な予測可能性が必要となる。個人間の外交で知られる3カ国の首脳による即興的な首脳会談では、意向表明は出ても、持続可能な合意の制度的基盤は築けないだろう。

核軍備管理は重要な戦略的目標である。問題は、派手な首脳会談が交渉のきっかけとなるのか、それとも根本的な戦略的課題を解決しないまま、政治的妥協の外交的口実を提供するに過ぎないのかという点だ。

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米・露・中による核合意が米欧関係に与える意味

核軍備管理プロセスの再開は欧州の安全保障に利益をもたらす可能性がある。SALTからSTARTに至るまで、米ソおよび米露間の合意は、戦略的競争を抑制し、核リスクを低減するのに寄与してきた。

危険が生じるのは、米国、ロシア、中国が、自国を世界的な核均衡の唯一の仲裁者と見なし始めた場合である。

何十年もの間、欧州における米国の拡大抑止は、核による保証だけにとどまらなかった。通常戦力の駐留、共同計画、情報共有、兵站支援、そして作戦上の統合が、ワシントンの公約に実質的な裏付けを与えてきた。したがって、欧州同盟国との有意義な協議なしに交渉された核合意は、NATOの核態勢を形式的には変更することなく、米国の安全保障保証に対する信頼を損なう可能性がある。

その影響は、ワシントンとパリ、ロンドンとの二国間関係にも波及するだろう。フランスの独立した核抑止力と、英国の主権を保ちつつも米国と緊密に統合された核関係は、それぞれ異なる課題に直面することになる。とはいえ、モスクワや北京との広範な妥協において、欧州の核に関する利益が交渉材料となれば、両関係とも試練にさらされる可能性がある。いずれの関係も自動的に崩壊するわけではないものの、政治的な打撃により、欧州が自律的な抑止体制を構築する動きが加速する恐れがある。

逆説的なことに、核リスクを軽減することを意図した取り組みが、大西洋両岸の分断を深め、欧州に大きな戦略的責任の追求を加速させる可能性がある。したがって、いかなる合意でも重要なのは、核兵器削減につながるかどうかだけでなく、欧州の安全保障が依存する同盟関係を弱めることなく、戦略的安定を強化できるかどうかである。

ヤルタ会議との類似性の限界

ヤルタ会議との象徴的な比較は避けがたい。1945年2月、フランクリン・デラノ・ローズベルト、ウィンストン・チャーチル、ヨシフ・スターリンは、戦争の最終段階と戦後の秩序を協議した。その後、ヤルタは、小国の全面的な参加なしに大国がそれらの未来を決定した象徴となった。関係国抜きでウクライナの将来や、欧州・台湾に影響を及ぼす安全保障上の取り決めを決定しようとする深センでの首脳会談も、同様の批判を招くだろう。

しかし、この類比には限界がある。1945年、ソ連軍は東ヨーロッパの大部分を占領しており、西側指導者は現地の軍事的現実を覆す手段をほとんど持っていなかった。ヤルタ会議が単独でヨーロッパを分割したわけではなく、それは数十年にわたり大陸の様相を形作ってきた戦略的状況を反映したものに過ぎなかった。今日、ウクライナは抵抗を続けており、欧州諸国は防衛能力の再構築を進めており、世界的な経済的相互依存関係が、排他的な影響圏の確立を複雑にしている。

したがって、現在浮上しつつあるのは、新たな「ヤルタ」というより、取引の多極化である。すなわち、大国は二国間や三国間の取引を追求しつつも、完全に制御できない軍事的、政治的、経済的現実による制約を受け続けている。

さらなる違いは、モスクワと北京の間の非対称性だ。1945年のソビエト連邦は、ナチス・ドイツ打倒への軍事的貢献によって戦後秩序に対する絶大な影響力を確保したが、今日のロシアは経済、産業、技術の面で中国への依存をますます高めている。その核兵器と軍事力は重要な戦略的自律性を維持しているものの、北京の包括的な世界的な力に及ばない。3カ国首脳サミットに見られる表向きの対等性は、この不均衡を覆い隠すだろう。

また、そのような会合からどのような具体的な合意が生まれるのかは不透明だ。それは、世界を再編する試みというより、大国外交を慎重に演出した見せ物に過ぎないかもしれない。危険なのは、ヤルタ会談の再現というより、大国が他国の同意なしに、その安全保障や主権を交渉できるとの原則が常態化してしまうことにある。

米国は比類なき能力を持つものの、外交的信頼度は低下している

トランプ・習近平・プーチンによる首脳会談の可能性は、米国の力に内在する根本的なパラドックスを浮き彫りにしている。米国は、世界的な同盟ネットワークに支えられ、比類なき軍事的、技術的、財政的、そして外交的能力を保持している。プーチンがトランプとの直接交渉を推し進めていることや、いかなる合意においても中国が重要な役割を果たすという事実は、ワシントンの中心的な役割を浮き彫りにしている。しかし、物質的な優位性だけではリーダーシップは保証されない。信頼できる公約、予測可能な意思決定、そしてパートナーの信頼も不可欠である。

多国間機関に対するトランプの長年にわたる懐疑的姿勢――そして、こうした機関に主要な紛争を解決する能力がないという認識――は、大国間の直接交渉を好む本人の姿勢を強め、その外交を形作っている。個人的な会談、劇的な発表、そして派手な合意は、力の誇示として目に見える形で示される。しかし、この傾向は戦略的な代償を隠してしまう可能性がある。すなわち、合意が威圧を助長したり、商業的な取引が敵対国への圧力を弱めたり、あるいは同盟国の利益を交渉の材料にするというワシントンの姿勢を露呈したりする恐れがあるのだ。

同盟国にとっての問題は、もはや単に米国が自国を守れるかどうかというだけでなく、政治情勢が変化したり、取引的な取り決めが魅力的に見えたりした際に、米国の公約が持続するのかという点にある。こうした疑念は欧州にとどまらない。アジアの同盟国は、自国の安全保障の保証を評価する中で、ワシントンがウクライナ問題をどう扱うかを注視しており、中東のパートナー国も米国の公約の持続性に疑問を抱いている。こうした認識は、敵対勢力の計算にも影響を及ぼす。抑止力は軍事力だけでなく政治的意志にも依存する。たとえ圧倒的な優位性を有していても、交渉の余地があるように公約が写る場合、抑止が失敗する可能性がある。

敵対国との二国間取引を優先させることで、ワシントンは自らの最大の戦略的優位性の一つ、すなわち世界的な影響力、作戦上の深み、そして正当性を提供する同盟ネットワークを損なうリスクを負っている。ロシアも中国も、これに匹敵するシステムを保有していない。これらのパートナーシップは、米国の力に対する制約ではなく、その主要な源泉の一つなのである。

深センで首脳会談が実現した場合の核心的な疑問は、トランプが単に劇的な外交パフォーマンス以上のもの――すなわち、欧州の安全保障上の利益を犠牲にする可能性を伴いながら、大国間の選択的な取引に基づく地政学的な再編――を追求しているのかどうかという点である。米国の問題は、力の欠如ではなく、力の「見せかけ」を「実効的な行使」と混同するリスクにある。同盟関係の基本となる信頼を顧みずに短期的な外交的突破口を追求することで、ワシントンは実質的に依然として無敵の地位を維持しつつも、その最大の戦略的優位性の一つである「パートナーからの信頼」を弱体化させる可能性がある。

深センからどんな宣言が発せられても、より深く、国際秩序を一変させることになるだろう。■

著者について:ツィポラ・フリード

ツィポラ・フリード は、ハドソン研究所の客員上級研究員であり、大西洋横断の安全保障、軍事戦略、防衛イノベーション、および新興技術の戦略的意味合いを研究の中心としている。彼女はフランス統合参謀本部副議長のシニアアドバイザーを務め、戦略的フォアサイト、ネットアセスメント、人工知能、ウォーゲーム、防衛イノベーションに関する業務を主導した。国立行政学院(ENA)を卒業し、パリ政治学院(Sciences Po)で政治学の修士号、国立東洋言語文明学院(INALCO)でロシア語・ロシア文明の学位を取得している。


一年超にわたる長期海上展開がこれからの米海軍の「新状態」になる―艦艇のみならず、乗員や整備補給能力へのしわ寄せが顕著になり、結局戦力低下につながるのではないでしょうか

 

1年にわたる艦艇展開が米海軍の「新常態」となるのか?

Are yearlong deployments the Navy’s new normal?


当局は日本を母港とする水兵の家族にそう伝えている。日本からは駆逐艦2隻が12か月・14か月の巡航を予定している。

米海軍の駆逐艦「ジョン・フィン」が1月に母港を出港した際、乗組員は3月には帰港できると予想していた。しかし、延長に次ぐ延長が重ねられ、家族には、14か月の展開を経て来年3月に帰還する見込みだと伝えられている。

同じくアーレイ・バーク級駆逐艦「マスティン」は今年、母港を変更し、2月にサンディエゴを出港して3月に横須賀に到着した。乗組員たちが艦を降りた際、「明日」にも再出動する準備をしておくよう告げられた。

「マスティン」は実際に4月に日本を出港し、8月に終了する予定だった展開に就いた。しかし現在、乗組員たちは2027年4月に帰還することになると伝えられていると、ある乗組員の配偶者が本誌に語った。

空母「エイブラハム・リンカン」の記録を更新した322日よりも1ヶ月以上も長いこれらのマラソン並の展開は、米軍艦艇にとって「新常態」となるかもしれない。先週、海軍当局者は横須賀に残る家族に対し、当面の間、国内・海外を問わず、すべての艦艇の展開および哨戒任務は10~12ヶ月間続くことになると伝えた。

この発言について問われた海軍の広報担当は本誌に対し、「作戦上の機密保持のため、将来の作戦や移動について言及しないことが米海軍の方針」と述べた。

しかし先月、海軍作戦部長ダリル・コードル大将は、「必要な海軍を拡大できる」まで、乗組員とその家族は「より長期の展開」を覚悟すべきと述べた。同軍の戦闘部隊は艦艇約290隻で構成されており、2年前の295隻から減少しているものの、10年前の約275隻からは増加している。

「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」の研究担当副所長キャサリン・クズミンスキーは、ここ数十年、海軍は概ね6~7ヶ月間の展開を維持してきたが、それは絶対的な方針ではないと述べた。しかし同氏は、「現在、その約束は破られている」と指摘した。

「もちろん、作戦上の必要性や要請次第ではあるが、軍人と家族は、進行中の作戦において課される要件に応えることには全面的に賛同していると思う」とクズミンスキーは述べた。「海軍がこの問題を緩和できる一つの方法は、実際に最初から長期化を公約し、軍人とその家族に対して明確に伝えることだ。」

リンカン艦上の乗員の苦境に関する最初の報道が浮上すると、他の軍種や過去の紛争に従軍した退役軍人の一部が、自分たちが経験したより長期の派遣についてすぐにネット上に投稿した。しかしクズミンスキーによれば、問題は派遣期間の長さそのものではなく、「当初の説明と実際の状況との間の不一致」にあるという。

その不一致は、横須賀を拠点とする数隻の「前方展開」型誘導ミサイル駆逐艦の一つであるジョン・フィンにおいて特に顕著である。他の海軍艦艇は通常、約6ヶ月間展開した後、1年間母港に戻る傾向があるのに対し、前方展開艦は通常、1回につき2~3ヶ月間出航し、その後2~3ヶ月間母港に戻って整備を行った上で、再び出航する。こうした展開は、同地域における艦艇の戦闘準備態勢を維持し、中国からの侵略を阻止し、「自由で開かれたインド太平洋」を維持することを目的としている。

昨年、ジョン・フィンは6月に同地域への「通常の」展開のため出港し、11月初旬に帰港した。しかし、その後の2か月の大半は、再出航に向けた慌ただしい準備に費やされた。

「実際に彼に会えたのは、合計たったの20日だけでした」と、同艦に乗船する水兵の配偶者は本誌に語った。

1月初旬、同艦は再び出航した。当初の予定では、45日から60日程度の展開となる見込みだった。同艦はインド洋に向かい、ヴェネズエラの石油タンカーへの臨検に関与した後、「エピック・フューリー」作戦が始まる直前にアラビア海へ移動するよう指示を受けた。

同艦はイランに対する初期攻撃の一翼を担ったと配偶者は述べ、「今も現地にいる」という。

今月初め、乗組員たちは2027年3月までは帰国できない可能性が高いと告げられた。

「基地に放置された車の中には、レッカー移動され、その後スクラップにされるようステッカーが貼られたものもある。だから、戻ってきても車がない乗組員もいるだろう」と、配偶者は語った。「彼らは冬に出動した。基地外に住む独身水兵の中には、家やアパートを1年以上も放置したままにしている者もいる。冬に出発した際、暖房を『常時稼働』モードのままにしておいたが、やがて夏がやってきた」。水兵たちは「帰国したら、持ち物がすべて台無しになっている」と分かっている。

家族にとっては、親の一人がいない状態が1年以上も続くことになり、長期派遣に向けた準備も何一つできていない。

「子供たちにとって本当に胸が張り裂けるような思いでした」と配偶者は語り、基地内では「メンタルヘルス支援はほぼ皆無」だと付け加えた。派遣期間は「駆逐艦として前代未聞」だと彼女は述べた。

フィン事例は極端だが、横須賀を拠点とする駆逐艦で決して珍しいことではない。

米国防総省のメディアサイト「DVIDS」に掲載された写真によると、「ラファエル・ペラルタ」は11月にフィリピン海、12月に南シナ海、そして1月8日に再びフィリピン海に姿を見せた。その後、帰港せず4月に中東へ向かい、現在も同地に留まっている。家族たちには、2027年4月までは帰港を見込まないよう伝えられている。

4月にインド太平洋海域で数時間にわたり動力と推進力を喪失した駆逐艦ヒギンズは、修理後に展開を継続し、現在インド洋で活動中。駆逐艦ミリウスは2月に日本を出港し、3月以来中東に滞在したままだ。

マスティンは2月に以前の母港サンディエゴを出港し、3月に日本に到着した。通常、乗組員には母港変更に伴い、特に海外転属の場合、家族の引越しや新居への定着を支援するため30日間の猶予が与えられており、家族の大半は艦船が到着するまで引越しを待っていた。しかし、「艦が着岸した瞬間、夫が艦から降りてきて、『明日出発する準備をしておかなければならない』と言った」と、マスティンの配偶者の一人が本誌に語った。

同艦は、ソナーの不具合により専門家を呼び寄せて修理する必要があったため、新しい母港に数週間留まったが、その間、乗組員たちはいつでも出航できる態勢を整えておく必要があったため、休暇は与えられなかったと、配偶者は語った。彼らは4月に出航し、8月に帰港した後、年末の休暇期間中に再び出航し、2月から始まる数ヶ月にわたる定期整備に入る予定だった。

しかし、8月になると、艦長は乗組員に「あと1ヶ月ほど」出航状態が続くと伝えたと、配偶者は語った。数週間前、乗組員は2027年4月まで帰還できないと告げられた。

この状況は、乗組員や家族にとってさらに苛立たしいものとなっている。というのも、同艦は展開期間のほぼ全期間をインド洋で「予備艦」として過ごしてきたからだ。

「彼らは封鎖線には入っておらず、いわば次番手として、ただそこで待機しているだけなんです」と彼女は語った。

この区別により、マスティンの乗組員は戦闘手当や給付金を受け取ることができない。

「彼らが忘れ去られていると感じているのは分かっています」と彼女は述べた。

ジョン・フィンの乗組員の配偶者は、リンカンの長期展開に関するメディアの報道を目にする一方で、同艦を支援している他の艦艇が「置き去りにされている」ことを知っているため、家族や乗組員にとって苛立たしい状況だと語った。

「長期展開なら私にも耐えられる」と彼女は言った。「問題なのは、これがいつ終わるのかという答えがないことだ。……なぜ艦艇を交代させないのか? それなら、なぜ私たちはそこにいるのか?なぜ前線展開中の艦艇より先に、本国の艦艇を帰還させているのですか?」

艦艇が交代されていない理由についての質問に対し、海軍の広報担当は、「国防総省は世界的な戦力管理について慎重かつ周到なアプローチをとっており、各戦域におけるリスクと当面の作戦上の要件とのバランスを絶えず図っている」と述べた。

クズミンスキーは、長期展開が常態化していくのであれば、海軍が水兵やその家族に対し、今後どのような状況になるかを率直に伝えることが重要だと述べた。

しかし、この状況は別の問題も浮き彫りにしている。海軍には、正式承認された文民の海軍長官がいない。「海軍長官とは、基本的に、事態の進捗状況について議会に対して説明責任を負う人物である」と彼女は述べた。

「これが『新常態』なのか? どのように対処しているのか? 水兵たちをどう備えさせるのか? 家族をどう備えさせるのか? 艦艇をどのように備えさせるのか?」海軍長官がいなければ、こうした重要な疑問に答えることは難しいと彼女は指摘した。■