2026年10月11日日曜日

韓国が公開した極超音速ブースト・グライド兵器の試射からわかること

 韓国の極超音速ブースト・グライド機の試射の初公開を見る

First Look At Hypersonic Boost-Glide Vehicle Just Tested By South Korea


朝鮮半島で不透明な極超音速軍拡競争が浮上してきた

The South Korean government has released images from its first successful test of a domestically developed unpowered hypersonic boost-glide vehicle.

大統領府

韓国政府は、国産超音速ブースト・グライド兵器の初となる成功した試験の画像を公開した。これには、飛行の最後に兵器が水面に衝突する様子を捉えた写真も含まれている。この種の兵器は、ますます激化する朝鮮半島における軍拡競争の中で、韓国に北朝鮮を脅かす新たな重要な手段になるだろう。韓国大統領府(一般に「チョンワデ」または「ブルーハウス」と呼ばれる)は、昨日の韓国語によるプレスリリースでこの試験を発表した。大統領府は李在明(イ・ジェミョン)大統領らが、韓国西海岸の忠清南道にある安興(アンフン)試験場の会議室から試験を見守る様子を収めた動画を公開した。安興での試験は、韓国国防開発庁(ADD)が管理している。試験の様子を捉えた一連の静止画はその後、大統領府のウェブサイトに掲載された。

昨日の試験中に、韓国の新型極超音速ブースト・グライド体(HGV)が水面に衝突する様子を捉えた3枚の写真。大統領府昨日の韓国による極超音速試験の終了時に、航空機に搭載されたと思われる電気光学式ビデオカメラを通じて捉えられた、衝突の別の角度からの映像。大統領府

静止画ギャラリーには、沿岸沖のプラットフォームに設置された車輪式運搬・建具・発射装置(TEL)から、正式名称がまだ公表されていないミサイルが発射される様子を捉えた写真も含まれている。写真の解像度が低いため、ミサイルやTELが韓国の既存設計のものか、あるいはそれを基にしたものかは判別が難しい。この点については後ほど改めて取り上げる。

試験の別の写真で、発射後のミサイルの様子が写っている。大統領府

前述の通り、極超音速ブースト・グライド体(BGV)が水面に衝突する写真も公開されている。一見したところ、このBGVは基部に安定用フィンを備えた円錐形の設計に見える。しかし、少なくとも1つのフィンは切り詰められているように見える。入手可能な画像を詳しく観察すると、実際には上部と下部が明確に区別されるくさび形の設計である可能性を示すさらなる兆候が見られるが、解像度が低いため、依然として明確には判断できない。円錐形のブースグライド体は、一般的に、比較的言えば、くさび形のものよりも設計が容易であるとされている。歴史的に見て、いかなる種類の極超音速ブースグライド体であれ、その開発において豊富な過去の経験を持つ国であっても、実用可能な運用兵器へと転換することは技術的に複雑で困難であることが証明されてきた。

昨日の極超音速ブースグライド体の試験の別のクローズアップ写真。片側に切り詰められたフィンと思われるものが写っている。The Blue House

「今回の試射は、極超音速飛行環境下における機体のコア技術――超高温耐熱材料の性能、誘導・制御能力、および低高度での不規則な飛行機動能力――を初めて検証するために実施された」と、大統領府は昨日の発表で述べた(韓国語原文の機械翻訳)。「HGV[極超音速ブースター・グライド機]は、目標高度まで上昇した後、正常に分離し、極超音速環境下で計画された飛行経路を何の問題もなく実行した。」

これらすべてを考慮すると、同機体が着水するまで無傷のままだった事実は注目に値する。本稿執筆時点では、韓国当局は、同機体が水面に衝突するまでにどの程度の距離を飛行したか、あるいはどの程度の最高速度に達したかなど、試験に関するより具体的な詳細を明らかにしていない。また、飛行の中間段階および終末段階で機体がどのように誘導されるかという点についても重要な疑問が残っており、これらの課題は今回の試験では解決されていないようだ。

無動力超音速ブースト・グライド機は、まず最適な高度と速度まで到達する必要がある。これは通常、十分な大きさのロケットブースターを用いて達成され、既存の弾道ミサイルの設計が起点として用いられることが多い。

ブースターから切り離されると、ブースト・グライド型飛行体は大気圏内で比較的浅い飛行経路に沿い飛行する。飛行体は、一般的にマッハ5以上と定義される極超音速で移動しながら、途中で、時には不規則に機動を行うことができる。

従来の弾道ミサイル、極超音速ブースト・グライド体、エアロミサイルまたは準弾道ミサイル、および空気呼吸式極超音速巡航ミサイルの軌道の違いを、ごく大まかに示した図。GAO

これらすべてが、この種の極超音速兵器を従来の弾道ミサイルと一線を画すものとしている。たとえ高度な機動能力を備えた弾道ミサイルであってもすべて、標的まで大まかに弧を描く軌道に従うからだ。極超音速ブース・グライド体(HGV)がもたらす速度、飛行軌道、機動性の組み合わせは、敵にとって課題を生み出す。探知や追跡が困難で、迎撃を試みることはなおさら難しく、防衛側が反応できる時間は全体的に短くなる。敵の防空網を突破し、急速に目標地へ到達できるこの能力により、これらの兵器は、極めて重要かつ時間的制約の厳しい標的への攻撃において特に魅力的となる。

「HGV[極超音速ブースター・グライド体]は、『戦場の情勢を一変させることのできる重要な戦略資産』である。その予測不可能な飛行軌道と圧倒的な速度により、有事の際に重要な戦略目標に対して奇襲攻撃を仕掛けることが可能となる」と、大統領府の発表は明示的に指摘している。

ヒョンム5号自体は、昨年末頃に就役したばかりであり、まだ比較的新しい開発品である。

韓国の新たな兵器開発に関して言えば、昨年末頃に実戦配備された「ヒョンム5」は、それ自体がこれまで、そして現在も主要な議論の的となっている。その大きさ(総重量35トン)にもかかわらず、公式には短距離型に分類されているが、これは主に、同様に巨大な弾頭(17,000ポンド)のサイズによるものとされている。過去の報道では、弾頭重量を軽減すれば、中距離まで飛行可能になる可能性が指摘されている。短距離弾道ミサイルは射程が190~620マイル(300~1,000キロメートル)のものと定義されており、一方、中距離弾道ミサイルは1,864~3,418マイル(3,000~5,500キロメートル)の範囲にある標的を攻撃できる。中距離弾道ミサイル(MRBM)は、これら2つのカテゴリーの中間に位置する。

2024年のパレードで見られた「ヒョンム5」の運搬・設置・発射装置。キム・ジェファン/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

巨大な単一弾頭を備えた「ヒョンム5」は、すでに韓国に、北朝鮮の深く埋設された、あるいはその他の方法で強固に防護された標的を脅威にさらすための重要な新たな手段をもたらしている。これは、本誌が以前報じたように、同国のより広範な「朝鮮半島大規模懲罰・報復(KMPR)」政策と直接合致するものである:

「『ヒョンム5』はKMPRの将来の柱として広く報じられてきたが、北朝鮮指導部が使用するような深く埋設されたバンカーを貫通するその特定の能力は、同時に『キルチェーン』の要素も果たし得ることを意味する。このように、北朝鮮の堅固な指揮統制施設やミサイル貯蔵区域を標的とすることで、北朝鮮の発射能力を無力化しようとする先制攻撃の一環として使用される可能性がある。」

飛行の終末段階で極めて高い速度に達するという特性により、極超音速ブースグライド体(HGV)は、前述の他の利点に加え、バンカー破壊能力も備えている。

さらに、この極超音速ブース・グライド体(BGV)の試験は、ここ数年、規模と範囲を拡大し続けている軍拡競争を反映している。韓国も、下の合成画像に見られる 空気呼吸式極超音速巡航ミサイルのほか、 新型の空対および 海対ミサイルを開発しており、後者は新型の水上戦闘艦や潜水艦に搭載される予定だ。

via X

実際の完成度や実用性については疑問が残るものの、北朝鮮は独自の新型ミサイル開発を次々と進めている。これには、ここ数週間に行われた、いわゆる新型極超音速設計とされるものの2回の試験発射も含まれる。朝鮮半島において、報復的なミサイル発射がまったく珍しいことではないとはいえ、韓国が昨日実施したような新興技術を用いた試験を、どれほど迅速に合理的に実施できるかには限界がある。

北朝鮮がここ数週間の間に試験発射したと主張する、2種類の新ハイパーソニックミサイルのうち1つの写真。北朝鮮国営メディア

9月21日に非武装地帯(DMZ)沿いで韓国軍兵士3名が負傷した事件以降、南北間の緊張は高まっている。韓国の合同参謀本部(JCS)および朝鮮半島の国連軍司令部(UNC)は、「休戦協定に違反して設置された北朝鮮地雷」が原因であると述べている。韓国当局は謝罪を要求し、何らかの対抗措置を講じる可能性を示唆しているが、李大統領は最近、事態を過小評価しようとしている。北朝鮮政府はこの非難を否定し、韓国が報復措置を講じようとした場合には「即座かつ強力な対抗措置」を講じると脅している。

実戦配備可能な極超音速ブースト・グライド体は、北朝鮮以外の地域における敵対勢力に対抗する韓国の能力も拡大させるだろう。平壌政権が韓国にとって最も差し迫った国家安全保障上の脅威であるとはいえ、中国とロシアも近年、韓国当局にとって 懸念の的となりつつある。

大統領府の発表によると、李大統領は昨日の極超音速試験の後、「我々は自らの力で国家安全保障を確保しなければならない」と述べた。「政府は今日の成功に安住することなく、極超音速滑空体が将来の安全保障を守る強固な戦略的資産として確立されるよう、技術をさらに推進しなければならない。」

韓国が新型の極超音速ブースト・グライド体(HGV)の試験を大々的に公開したことは、北朝鮮の最も防御の固い標的さえも攻撃する選択肢を広げ、地域内の他の場所へも軍事力を投射しようとする同国の取り組みを浮き彫りにしている。一方で、韓国がいつ実戦配備能力を確立できるかは、依然として不透明である。■

ジョセフ・トレヴィシック

副編集長

ジョセフはTWZの副編集長として、当サイトの経験豊富で献身的なチームの統括を支援するとともに、有益かつ影響力のある防衛・国家安全保障に関するコンテンツを執筆している。彼はその渦中であるワシントンD.C.エリアに住んでいる。

ディスカッション 72件のコメント

  • この狂気じみた話をここにも投稿する。つまり、今や我々はロシアから石油を買っているということか……。トランプがプーチンに買収されたロシアの工作員だというさらなる証拠が必要だったなら、これだ。長年にわたる制裁も、ウクライナへの支援も、すべて水の泡だ。

  • https://apnews.com/article/trump-russia-diesel-midterms-12bacc...

    • 彼は、わずか1ヶ月前に自分自身が署名した法律に違反している。彼は明らかにプーチンに買収されており、今なお彼を支持する者はこの国の裏切り者だ。「MAGA」は反逆行為だ。

  • 海洋生物に対して戦争を仕掛けるという伝統は、北朝鮮だけのものじゃないようだ。

  • なぜ彼らが軍拡競争に走る必要があるのか? 彼らには、戦争の準備を一切しておらず、兵器を大規模に増強しているわけでもない平和的な隣国がいる。このような行為は、隣国や、韓国の友人であり貿易相手国であるロシアを挑発するだけだ。

  • OT:ここでドップラーレーダーの読み方が得意な人はいますか?

  • これは回転しているのでしょうか?

    • weather.govには、ほとんど誰も知らないようなすごく便利な機能があります。高解像度のレーダーデータ(個々の地上観測所を選択可能)があり、タイムラプス機能も備わっているので、回転があれば確認できるはずです。遅延は5分です。

    • P.S. リンクが長いのは承知していますが、ジョージア州の地上観測所を選択しました...

  • みんなこの大騒ぎに巻き込まれているみたいですね。SKにとって、このような兵器に実用的な目的はあるのでしょうか?その設計は、実際には他の形態の攻撃を迎撃できる防空網を回避することだけを目的としていました。

  • 北朝鮮が唯一の重大な脅威と見なされており、彼らは通常兵器に対する防御手段をほとんど持っていな...

  • 話題外れ。誰かが怒って、ノーベル平和賞を授与されなかったからってキューバに侵攻しようとしている。

  • https://www.nytimes.com/live/2026/10/09/world/nobel-peace-prize-winner-2026

    • 「キューバの一片賞」に満足する準備ができている企業は山ほどある。

  • 確かに、彼らは円錐形のブースター・グライド機を「飛行」させたかもしれないが、果たしてそれが超音速だったのか? 超音速飛行中の追跡、超音速飛行中の撮影、そして超音速飛行後の着弾地点にたまたま正確に居合わせたというのは、少々怪しい話だ。

    • カメラは、構図を決めてシャッターを切り、フィルムを巻き戻して、また繰り返すといった1960年代のような仕組みではもう動いていません。カメラを高速でピントを捉えて追尾するように設定し、連続して写真を撮影すれば、高速で動く物体を捉えるのはそれほど難しくありません。

    • あるいは、単に高解像度の静止画を1枚選ぶだけでも……

  • では、韓国がプーチンに燃料を供給することと、トランプ大統領がプーチンから燃料を購入すること、どちらがより悪いのでしょうか?

  • 私が気になっているのは、極超音速ミサイルが崩壊することなく水中へ突入できるかどうか、そして爆発するまでにどれくらいの深さまで潜れるかということです。これは例えば、対潜兵器や魚雷、あるいは発射体そのものを、比較的浅い(??m)水深に迅速に展開する手段となり得るのだろうか……

    • それは疑わしい。水中突入による荷重は、空気中の荷重と比較して、おおよそ(水の密度/空気の密度)の比率、つまり約780倍に増加するはずだ。これには、空気から水中への急激な衝撃は考慮されておらず、ミサイルが水中に入る際に水を押し退けるために必要な巨大な加速度が…

  • 爆発の動画はないの?

  • 悲しいリコの声。

  • 高解像度の写真。

    • Openwebが関わると、一度もそうはいかないんだな。

  • ピートがTレベルをチェック中。

  • いいね。




GCAPで大きな進展―トリノにエンジニアリング施設が発足。一方でドイツの動きに英国が歓迎の兆候。カナダに次ぎオブザーバーなのか正式なパートナーかでも変わりますが、ニーズが多様化し製造管理が大変になりそうで心配です

 GCAPプログラムはパートナー国増に伴い「トレードオフ」に直面する

GCAP Program Faces ‘Trade-Offs’ If More Partner Nations Enter

gcap

GCAP航空機のコンセプト図。提供:Edgewing Ltd

イタリア・トリノ発――グローバル・コンバット・エア・プログラム(GCAP)の中核をなす戦闘機の開発を主導する合弁企業Edgewingは、プロジェクトに過度な遅れを生じさせず、追加の産業パートナーを受け入れることができると、CEOマルコ・ゾフは強調している。

同社が当地に初のエンジニアリング拠点を開設した際、ゾフCEOは、戦闘機協定への追加加盟国の受け入れについては、GCAP参加国であるイタリア、日本、英国の判断に委ねられていると述べた。ただし、加盟する場合、各政府は「トレードオフ」を受け入れる用意が必要となるだろう。

この発言は、ドイツがフランスとの次世代戦闘機開発プログラムを破綻させたことを受け、英国のアンディ・バーナム首相がフリードリヒ・メルツ独首相に対し、ドイツのGCAPプログラムへの参加に前向きな姿勢を示した翌日に発表されたものである。

「(追加パートナーについて)議論するためプロセスを止める必要はない」とゾフは述べた。「並行した議論は可能であり、各国政府が通常行うことだが、トレードオフの責任は彼ら(各国政府)にある」。

BAEシステムズとレオナルド両社の幹部は、GCAPプログラムが新たなパートナーを追加したいのであれば、その機会は失われつつあると警告している。その一因は、2027年末に予定されている「システム要件レビュー(SRR)」と呼ばれる重要な決定時点にある。その時点で、航空機の外形や形状は確定し、詳細設計が開始される。一部観測筋は、新たな産業パートナーを参画させるために既存の産業協定を再編することは、GCAPのすでに厳しいスケジュールに遅れをもたらす可能性があると指摘している。しかしゾフは、プログラムのスケジュールを遵守することが「関係者全員にとって優先事項」であると述べた。

「3カ国のいずれの国も――信じてほしい、本当に『いずれの国もだ――スケジュールの遅れを許容することはない」とゾフは付け加えた。

とはいえ、ドイツのGCAPへの関与は歓迎すべきことだと、レオナルドのロレンツォ・マリアーニCEOは本誌に語った。同氏は、長期的には「産業的に有益」だが、短期的には「混乱を招く」と述べた。ゾフと同様に、同氏も、長期リスクを軽減するため短期的なリスクを冒すかどうかは、各国政府次第であると示唆した。

これまでのところ、ドイツの参加の可能性に賛意を示したGCAP参加3カ国の首脳はバーナムただ一人である。ベルリンは、ローマと東京からも承認を得る必要がある。開会式で演説した在ローマ日本大使の小野光子は、このプログラムは「目標とするスケジュール」通りに「成果を上げなければならない」と述べた。「わが国の空軍および両国にとって、まさに必要なタイミングでこの最先端の能力が必要とされている」と語った。

また、ドイツがGCAP条約の署名国となる必要があるかどうかも不明確だ。昨年夏にカナダが行ったように、当面はプログラムの正式オブザーバーとなる必要があるかもしれない。オブザーバーとしての地位により、カナダ当局者はブリーフィングや機密データへのアクセス権を得ており、将来的な役割やプログラムの顧客としての参加について、十分な情報に基づいた決定を下すことが可能となっている。

この地に建設された新しいエンジニアリング施設は、かつてイタリアを代表する複葉戦闘機――冷戦時代のフィアットG.91対地攻撃機――や、パナビア・トルネードの主翼など、数多くの機種が生産されていた敷地にある。この施設では、イタリア、日本、英国のエンジニアたちが、3カ国共同開発の新型戦闘機に搭載されるシステムおよびサブシステムの開発に取り組むことになる。同機は2030年代半ばに就役する予定だ。

10月9日の施設開設は、今年約60億ユーロ(67億ドル)の契約を獲得したことを受け、プログラムのペースが加速していることを反映している。エッジウィングの英国本社は昨年からレディングで操業している。2番目のグローバル拠点となる名古屋は2027年初頭に開設される予定であり、3番目にして最後の拠点となるイングランドのウォートンは、同年の後半に開設される予定だ。

この新拠点には3カ国すべてのエンジニアが配置され、初期メンバーはエッジウィングの3つのパートナー企業であるBAEシステムズ、レオナルド、日本航空機産業振興株式会社から出向する人員で構成される。

エッジウィング・イタリアのマネージング・ディレクター、ジュゼッペ・ルポリは、この新施設がプログラムのエンジニアリング段階を支援し、レディングや他のグローバル拠点と緊密な連携を維持すると述べた。ルポリによると、トリノでの取り組みは当初、開発段階に全面的に集中されるが、プログラムが生産段階へと移行するにつれて、施設の役割も変化していくという。GCAPは現在、基本設計段階にある。システム要件検討(SRR)を経て、機体の平面形状が確定する。その後、詳細設計が開始され、「2030年代の初め」に初飛行が行われる予定だとゾフは述べた。

3カ国すべてに生産ラインが設置される予定だが、最終組立および飛行試験に関する決定は、まだ確定していない。■

トニー・オズボーン

ロンドンを拠点とするトニーは、欧州の防衛プログラムを担当している。2012年11月に『エイビエーション・ウィーク』に入社する前は、シェパード・メディア・グループに在籍し、『Rotorhub』誌および『Defence Helicopter』誌の副編集長を務めていた。

ハインライン「人形つかいども」私家版翻訳第23章 ― 誰も知らないはずの山小屋をナメクジが襲った理由をおれは傷ついた体で考え、メアリと街に戻る

 

第23章


メアリは夜明けごろ、身をよじり、うめき声を上げ始めた。おれはベッドに歩み寄り、彼女に手を置いた。

「よしよし、いい子だ。大丈夫だよ。サムがここにいるからね」

彼女は目を開いた。目には、一瞬、初めて寄生生物に取りつかれたときと同じ恐怖が宿っていた。だが、おれの姿を見ると、彼女はほっとして力を抜いた。

「サム! ああ、あなた、ものすごく恐ろしい夢を見たの」

「大丈夫だよ」と、おれは繰り返した。

「どうして手袋なんかしているの?」

彼女は自分の身体に巻かれた包帯に気づいた。愕然とした表情になり、言った。

「夢じゃなかったのね!」

「そうだよ、愛しい人。夢じゃなかった。でも、もう大丈夫だ。おれが殺した」

「殺したの?本当に死んだのね?」

「間違いない」

家の中には、そいつが死に際に放った悪臭が、まだ強烈に漂っていた。

「ああ……こっちへ来て、サム。ぎゅっと抱きしめて」

「肩を傷つけてしまうよ」

「抱きしめて!」

だから、おれはそうした。彼女は火傷など気にしていないようだったが、おれは傷に触れないよう気をつけた。やがて、彼女の震えは少しずつ弱まり、ほとんど完全に止まった。

「ごめんなさい、あなた。わたし、弱虫で女々しくなってしまって」

「おれが連れ戻されたときのひどい有様を見ていれば、そんなことは言わなかっただろうね」

「見たわよ。さあ、何があったのか話して。どうしても知りたいの。最後に覚えているのは、あなたがわたしを暖炉の中へ押し込もうとしていたところなの」

「いいかい、メアリ。おれにはどうしようもなかったんだ。そうするしかなかった――そいつを引き剝がせなかったんだ!」

彼女はおれの肩を揺さぶった。今度は彼女がおれを慰める番だった。

「わかっているわ、あなた。わかっている。そうしてくれてありがとう! 心の底から感謝しているわ。また、あなたにすべてを救ってもらったのね」

おれたちは二人とも少し泣いた。やがて、おれは鼻をかんでから話を続けた。

「呼んでも返事がなかった。それで居間に行ってみたら、そこにおまえがいたんだ」

「覚えているわ――ああ、あなた、わたし、必死に抵抗したのよ!」

おれは彼女を見つめた。

「わかっているよ。逃げようとしたんだろう。でも、どうやって? 一度ナメクジに取りつかれたら、それでおしまいだ。抵抗する方法なんかない」

「そうね、負けてしまった。でも、抵抗はしたわ」

この謎に答えはなかった。

どういうわけか、メアリは寄生生物の意志に自分の意志を対抗させた――そんなことは不可能なはずなのだ。おれにはわかっている。

確かに、彼女は最後には屈してしまったが、そのときおれは、自分よりもずっと頑強で強い人間と結婚したのだとわかった。美しい曲線を描く身体と、女性らしさのすべてを備えた彼女は精神的にも肉体的にもおれより強い人間だったのだ。

おれには、ひそかな予感があった。もしメアリが、ほんのわずかでもナメクジに抵抗できていなかったら、おれはあの闘いに負けていただろう。おれには、どうしてもできないことがあり、そのハンディキャップを背負っていたのだから。

「サム、明かりをつけるべきだったわね」と、彼女は話を続けた。「でも、ここで怖い目に遭うなんて、考えもしなかったの」

おれはうなずいた。ここは安全な場所だった。ベッドにもぐり込むときや、誰かの温かい腕に守られて身を寄せるときと同じように。

「パイレートがすぐにそばに来たの。手を伸ばしてあの子に触れるまで、あんなものがいるなんて気づかなかった。それからでは遅すぎたのね」

彼女は片腕で身体を支えながら起き上がった。

「パイレートはどこ? 無事なの? 呼んできて」

そこで、おれはパイレートのことを彼女に話さなければならなかった。

彼女は表情を変えずに話を聞き、うなずいた。それきり、二度とパイレートには触れなかった。

おれは話題を変えた。

「さて、目も覚めたことだし、朝食を作ってやらなくちゃな」

「行かないで!」

おれは立ち止まった。

「絶対に、わたしの目の届かないところへ行かないで」と、彼女は続けた。「どんな理由があってもよ。すぐに起きて、わたしが朝食を作るから」

「冗談じゃない。おまえはおとなしくベッドに寝ているんだ。いい子だからな」

「こっちへ来て、その手袋を脱いで。手を見せてちょうだい」

おれは手袋を脱がなかった。脱ぐことなど考えたくもなかったのだ。麻酔が切れて、痛みが戻ってきていた。

彼女はうなずき、厳しい表情で言った。

「やっぱりね。あなたのほうが、わたしよりひどい火傷を負っているわ」

結局、朝食を作ったのは彼女だった。

そのうえ、彼女はきちんと食べた。おれはコーヒーをポット一杯飲みたいだけだったのだが。

それでも、おれは彼女に水分をたっぷり取るよう強く言った。広範囲の火傷は、決して軽く考えてよいものではない。

やがて彼女は皿を脇へ押しやり、おれを見つめて言った。

「あなた、わたし、こんなことが起きたのを後悔していないわ。これでわかったから。今ならわかる。わたしたち、二人とも同じ経験をしたのね」

おれは謙虚にうなずいた。彼女が何を言いたいのか、わかっていた。

幸せを分かち合うだけでは、十分ではないのだ。

彼女は立ち上がって言った。

「さあ、もう行かなくちゃ」

「そうだな」と、おれは同意した。「もう行かなくちゃ。できるだけ早く、おまえを医者に診せたい」

「わたしが言ったのは、そういう意味じゃないわ」

「わかっているよ」

それ以上、話し合う必要はなかった。二人ともわかっていたのだ。音楽は終わった。今こそ、仕事に戻るときだった。

おれたちがここへ来るのに使ったガラクタ同然の乗り物は、まだおれの住居の着陸床に置かれたままで、レンタル料金を刻々と積み上げていた。

食器を焼却し、常設回路以外はすべての電源を切り、出発の準備を整えるのに、三分もかからなかった。

靴が見つからなかったが、どこに置いたかはメアリが覚えていた。

おれの手が使いものにならなかったので、運転はメアリが担当した。

飛び立ってから、彼女はおれのほうを向いて言った。

「まっすぐセクションの事務所へ行きましょう。そこで治療を受けて、何が起きているのか調べるの。あなた、手が痛くて耐えられないというわけではないわよね?」

「それでいい」と、おれは答えた。

手は痛んでいた。だが、あと一時間くらい待ったところで、痛みがこれ以上ひどくなるわけでもない。

おれは一刻も早く状況を知りたかった――そして、仕事に戻りたかった。

メアリにニュース画面をつけてくれと頼んだ。以前はニュースを聞くことをあれほど避けたがっていたおれが、今では新しいニュースを聞きたくてたまらなかった。

ところが、車の通信装置は、ほかの部分と同じくらいガラクタ同然だった。音声すら受信できない。

幸い、遠隔操縦回路はまだ正常に作動していた。そうでなければ、メアリは手動で交通の流れを縫って進まなければならなかっただろう。

しばらく前から、おれの頭を離れない疑問があった。おれはそれをメアリにぶつけた。

「ナメクジが、ただ面白半分に猫に取りつくなんてことはないよな?」

「そうでしょうね」

「だが、なぜだ? 筋が通らない。でも、筋が通っていなければならないんだ。あいつらの行動は、どれも筋が通っている。あいつらの立場から見れば、ぞっとするほど合理的なんだ」

「でも、今回のことにも理由はあったわ。あの方法で、人間を捕まえたのよ」

「ああ、それはわかっている。でも、どうやってそんな計画を立てたんだ?猫が人間を捕まえてくれるかもしれないという、そんな偶然に賭けて、自分から猫に取りつく余裕があるほど、あいつらの数が多いとは思えない。いや、それとも、そこまで数が多いのか?」

おれは、類人猿の背中にいたナメクジが、どれほどの速さで二匹に分裂したかを思い出した。飽和状態にまで侵略されたカンザスシティのことも思い出し、身震いした。

「どうしてわたしに聞くの? わたしには分析的に考える頭がないもの」

ある意味では、それは本当だった。メアリの頭が悪いわけではない。ただ、論理の段階を飛び越えて、直感で答えにたどり着くのだ。

おれは違う。論理を積み重ね、あれこれ考え抜かなければ答えが出ない。

「謙虚な女の子を気取るのはやめて、これを考えてみてくれ。まず、最初の疑問は『ナメクジはどこから来たのか?』だ。歩いてきたわけじゃない。別の宿主の背中に乗って、パイレートのところまで来たはずだ。では、その宿主は誰だ? おれは、オールド・ジョン――ヤギのジョンだと思う。パイレートが、ほかの人間をあそこまで近づけたとは思えない」

「オールド・ジョン?」

メアリは目を閉じ、それから開いた。

「何も感じないわ。わたし、彼とは親しくなかったから」

「それは問題じゃない。消去法で考えれば、彼しかいないと思う。ほかの人間が全員『裸の背中』命令に従っていたとき、オールド・ジョンは上着を着ていた……人を避けて暮らしているから、それが許されていたんだ。つまり、裸の背中作戦が始まる前から、彼はナメクジに取りつかれていたはずだ。だが、それでも先へ進めない。山奥に住む隠者を、なぜわざわざ狙う必要があったんだ?」

「あなたを捕まえるためよ」

「おれを?」

「あなたを取り戻すために」

その考えには、ある程度の筋が通っていた。

いったんあいつらの支配から逃れた宿主は、誰であろうと標的として記録されているのかもしれない。そうだとすれば、おれたちが救出した十数人の国会議員や、ほかの人々――メアリも含めて――は、特別な危険にさらされていることになる。

この点は分析班に報告しておこう。

いや、メアリは違う。彼女に取りつかれていたことを知っているナメクジは、もう死んでいるのだから。

一方で、あいつらは特におれを狙っているのかもしれなかった。

おれに何か特別なところがあるとすれば、何だ?

おれは秘密工作員だ。

それ以上に重要なのは、おれに乗っていたナメクジが、オールドマンについておれが知っていることを把握していたはずだという点だった。しかも、おれがオールドマンに接触できる立場にいることも知っていた。

おれを取り戻そうとする理由としては、それで十分だった。

おれには、オールドマンこそがあいつらの最大の敵なのだという、感情に根ざした確信があった。そして、ナメクジも、おれがそう考えていることを知っていたに違いない。あいつは、おれの頭の中を自由に使えたのだから。

そのナメクジは、オールドマン本人にも会っていた。話までしていたのだ。

待てよ。そのナメクジは死んでいる。

そう考えた途端、おれの理論は崩れ落ちた。

だが、次の瞬間には、また組み上がり始めた。

「メアリ、聞きたいんだが、おまえ、あの日の朝、おれと一緒に朝食を食べて以来、自分のアパートを使ったことはあるか?」

「ないわ。どうして?」

「これからも行くな。どんな用事があっても戻るな。あいつらに捕まっていたとき、おれはアパートに罠を仕掛けなければならないと思ったのを覚えているんだ」

「でも、仕掛けなかったんでしょう? それとも、仕掛けたの?」

「いや、仕掛けていない。だが、その後、誰かが罠を仕掛けた可能性はある。オールド・ジョンと同じようなものが、クモのように待ち伏せしているかもしれないんだ。きみや、おれが戻ってくるのをな」

おれは、ナメクジについてのマクルヴェインの理論を、メアリに説明した。「集団記憶」という考え方だ。

「最初に聞いたときは、科学者が大好きな夢物語を並べ立てているだけだと思った。だが、今はわからない。あらゆる事実を説明できる仮説は、これしか思いつかないんだ……そうでなければ、あいつらが、魚を捕るのに小川ではなく浴槽を使うような、ひどく愚かな連中だと考えなければならない。だが、そんなはずはない」

「ちょっと待って、あなた。マクルヴェイン博士の理論だと、一匹一匹のナメクジは、実際にはほかのすべてのナメクジでもある、ということなの? つまり、昨夜わたしに取りついたあれは、あなたに取りついていたナメクジと同じくらい、あなたに取りついていたものそのものだということ? ああ、だめ、わからなくなってきたわ。つまり……」

「大筋ではそういうことだ。離れている間は、それぞれが個体として存在している。だが、直接交信すると、記憶を統合する。そして、トゥイードルダムがトゥイードルディーとまったく同じものになる。

「もしそれが本当なら、昨夜のあいつは、おれから得た情報をすべて覚えていることになる。ただし、それには条件がある。あいつが、おれに取りついていたナメクジと直接交信していたか、あるいは、そのナメクジと直接交信した別のナメクジと交信していたか、または、何匹ものナメクジを経由して、おれに取りついていたナメクジと直接交信したものにつながっていたか、ということだ。もちろん、おれに取りついていたナメクジが、おまえに取りついていたナメクジから情報を得た後の話だが――あいつらの習性を考えれば、そうなっていたに決まっている。

「そうなっていたはずだ――最初の一匹の話だが……待てよ、ややこしくなってきた。ナメクジを三匹用意しよう。ジョー、モー、それから、ええと、ハーバートだ。ハーバートが昨夜のやつで、モーが……」

「個体じゃないのなら、どうして名前なんかつけるの?」

メアリが尋ねた。

「区別するため……いや、別に理由はない。とにかく、マクルヴェインが正しいとすれば、何十万匹、いや何百万匹ものナメクジが、おれたち二人のことを完全に把握しているんだ。名前も、顔も、何もかも知っている。おまえのアパートも、おれのアパートも、山小屋の場所も知っている。あいつらの名簿に、おれたちは載っているんだ」

「でも……」

彼女は眉をひそめた。

「それは嫌な考えね、サム。あいつらは、どうやってわたしたちが山小屋にいる時間を知ったの? あなたは誰にも行くことを話していなかったし、わたしだって知らなかったのよ。あいつらは、ただ現地に張り込んで待っていたのかしら? ええ、そうね、きっとそうしたのでしょうね」

「そうするしかなかったんだろう。そもそも、待つことがナメクジにとって何か意味を持つのかどうかもわからない。あいつらにとって、時間というものは、おれたちとはまったく違う意味を持っているのかもしれない」

「ヴェネリアンみたいに?」

彼女がそう言ったので、おれはうなずいた。

ヴェネリアンは、自分のひ孫のひ孫と「結婚」しておきながら、その子孫より若いということが十分にあり得る。もちろん、どんなふうに夏眠するかにもよるのだが。

「いずれにしても」と、おれは続けた。「このことは報告しなければ。背後に何があるのかについてのおれたちの推測も含めてな。あとは分析班の連中に検討してもらおう」

おれは、もし自分たちの推測が正しければ、オールドマンは特に警戒しなければならない、と続けるつもりだった。あいつらが狙っているのは、おれやメアリではなく、オールドマンなのだから。

だが、そのとき、おれの電話が鳴った。休暇に入ってから初めてだった。

おれが応答すると、通話装置の相手が話し始めるより先に、オールドマンの声が割り込んできた。

「直接、報告に来い」

「今、向かっています」と、おれは答えた。「三十分ほどで着きます」

「もっと早く来い。おまえはケイ・ファイブを使え。メアリにはエル・ワンから入るよう伝えろ。急げ」

オールドマンは電話を切った。

おれが、どうしてメアリも一緒にいるとわかったのか尋ねる間もなかった。

「聞こえた?」と、おれはメアリに尋ねた。

「ええ。わたしも回線につながっていたから」

「どうやら、いよいよ本番が始まるらしいな」

着陸するまで、おれは状況がどれほど劇的に変わってしまったのか、理解していなかった。

おれたちは「裸の背中」作戦には従っていた。だが、「日焼け」作戦については何も知らなかったのだ。

降り立つと、二人の警官が近づいてきて、おれたちを止めた。

「そこを動くな!」と、一人が命じた。「急な動きをするなよ」

態度と、抜き身の銃がなければ、警官だとはわからなかっただろう。二人は銃帯と靴、それに、ほとんど紐と変わらないような、ひどく小さなふんどしだけを身につけていた。

もう一度よく見ると、腰帯には警察のバッジが留められていた。

「さて」と、同じ警官が続けた。「ズボンを脱げ、兄弟」

おれの動きが遅いのが気に入らなかったらしい。彼は怒鳴った。

「さっさとしろ! 今日だけで、逃げようとして撃たれたやつが二人いる。おまえが三人目になってもおかしくないぞ」

「サム、言うとおりにして」と、メアリが静かに言った。

おれは従った。

おれの短パンは、下着が一体になったワンピース型だった。それを脱ぐと、靴と手袋だけを身につけた姿になった。まったく間抜けな格好だったが、短パンを脱ぐ際、電話と銃はうまく隠したままにしておくことができた。

警官は、おれに後ろを向かせた。

相棒が言った。

「こいつは問題なしだ。次はそっちだ」

おれが短パンをはき直そうとすると、最初の警官が止めた。

「おい! 面倒を起こしたいのか? そのまま脱いでいろ」

おれは理性的に答えた。

「身体検査は済んだでしょう。公然わいせつ罪で逮捕されたくはありませんからね」

彼は驚いた顔をし、それから大声で笑い、相棒のほうを向いた。

「聞いたか、スキー? こいつ、公然わいせつ罪で逮捕されるのが怖いんだとよ」

もう一人の警官は、辛抱強く説明した。

「いいか、田舎者。協力してもらわなきゃ困るんだ。規則は知っているだろう? 俺としては、おまえが毛皮のコートを着ていようが構わん。だが、公然わいせつ罪で捕まることはない。死体として運び出されることになるだけだ。自警団の連中は、俺たちよりずっと簡単に撃つからな」

彼はメアリに向き直った。

「では、お嬢さん。お願いしますよ」

メアリは何も言い返さず、短パンを脱ぎ始めた。

すると、二人目の警官が親切そうに言った。

「いや、そこまでする必要はありませんよ、お嬢さん。そういう作りの服ですからね。ただ、ゆっくり後ろを向いてください」

「ありがとう」

メアリは言われたとおりにした。

警官の言い分には一理あった。メアリの短い下着は、まるで身体に直接吹きつけて塗ったかのようにぴったりしていた。ホルターネックのトップスも、どう見てもメアリ自身以外には何も隠していなかった。

「その包帯はなんだ?」と、最初の警官が言った。「服の下には何も隠せそうにないがな」

おれは心の中で思った。

とんでもない。こいつは大きな間違いをしている。メアリは今、この包帯の下に少なくとも二丁の銃を隠し持っているはずだ。ハンドバッグに入っているものとは別に。それに、そのうち一丁は、こいつの銃よりも早く熱くなる準備ができているに違いない!

だが、口に出したのは別のことだった。

「彼女はひどい火傷を負っているんです。それがわからないんですか?」

警官は、おれが下手くそに巻いた包帯を疑わしげに見た。

おれは、少しでも包帯が多いほうがよい、という考えで処置をしていた。実際、彼女が最もひどい火傷を負った肩に巻いた包帯は、ナメクジを隠す目的だったなら、十分に隠せてしまうほど厚くなっていた。

「うーん……」と、彼は言った。「本当に火傷しているならな」

「もちろん火傷しています!」

おれは自分の判断力が失われていくのを感じた。おれは、妻のことになると理屈が通じなくなる、まさに典型的な頑固亭主だった。

自分でもわかっていた――そして、そういう自分が嫌いではなかった。

「ちくしょう、彼女の髪を見てください! あんな髪を、あんたをだますためだけに台無しにすると思いますか?」

最初の警官は、陰気な声で言った。

「そういうことをする連中もいる」

もう一人の、より辛抱強い警官が言った。

「カールの言うとおりだ。申し訳ないが、お嬢さん。その包帯を確認させてもらわなければならない」

おれは興奮して言った。

「そんなことをしていいはずがない! おれたちは医者のところへ向かっているんです。そんなことをしたら――」

「サム、手伝って。自分では外せないの」

メアリが言った。

おれは口を閉じ、大きな包帯の端をめくり始めた。怒りで手が震えていた。

やがて、年配の、親切そうな警官が口笛を吹いた。

「これで納得した。カール、おまえはどうだ?」

「俺もだ、スキー。なんてこった、お嬢さん。まるで誰かに丸焼きにされたみたいじゃないか。いったい何があったんだ?」

「サム、説明してあげて」

メアリに言われ、おれは事情を話した。

年配の警官は、最後にこう言った。

「お嬢さん、失礼な意味じゃないが、あんたは運がよかったほうだと思うよ。そうか、今度は猫か。犬については知っていた。馬もそうだ。だが、猫とはな……普通の猫が運び屋になれるとは思わなかった」

彼は曇った顔をした。

「うちにも猫がいるんだが、始末しなければならなくなった。子供たちは嫌がるだろうな」

「お気の毒に」と、メアリは言った。本当にそう思っていることが声から伝わってきた。

「誰にとっても、つらい時期ですね」

「よし、みなさん、もう行っていいですよ――」

「ちょっと待った」と、最初の警官が言った。「スキー、この女性がその背中の包帯をつけたまま街を歩いたら、誰かに焼き殺されるかもしれないぞ」

年配の警官は顎をかいた。

「それはそうだな」と、彼はメアリに言った。「あんたは、包帯を外したままでは耐えられないだろう。仕方ない、パトカーを一台、手配しよう」

彼らはそうしてくれた。ちょうど一台着陸してきたので、二人は呼び止めた。

おれは、借りていたガラクタ同然の乗り物の料金を支払った。それから、メアリの住居の入口まで、彼女と一緒に行った。

入口はホテルの中にあり、専用エレベーターを使うようになっていた。余計な説明を避けるため、おれも一緒に乗り込んだ。

メアリが、エレベーターの目立つ操作盤に表示されていない階で降りたあと、おれは上へ戻った。

彼女と一緒に中まで行きたい気持ちはあった。だが、オールドマンは、おれにケイ・ファイブから入るよう命じていた。だから、ケイ・ファイブへ向かうしかなかった。

短パンをはき直したいという気持ちもあった。

パトカーの中や、メアリが撃たれないよう警官たちに囲まれながらホテルの脇の入口まで急いで歩いたときには、そこまで気にならなかった。だが、エレベーターを降り、ズボンをはかずに世間の目にさらされるとなると、かなりの度胸が必要だった。

しかし、心配する必要はなかった。

目的地までの短い距離を歩いただけで、去年の冬とともに、社会の根本的な慣習の一つが消え去ってしまったことがわかった。

ほとんどの男は、警官たちと同じような細い紐を身につけていた。実際には、男性器を覆うための前掛けのようなものだった。

だが、ニュー・ブルックリンで靴以外は何も身につけていない男は、おれだけではなかった。

特に一人、よく覚えている男がいた。彼は街路の屋根を支える柱にもたれ、通り過ぎる人間を冷たい目で一人ひとり吟味していた。

身につけているものといえば、スリッパと「VIG」と記された腕章だけ。そして、脇にはオーウェンズ式暴徒鎮圧銃を抱えていた。

ケイ・ファイブに着くまでに、同じような男をさらに三人見かけた。おれは短パンを持ってきてよかったと思った。

女たちの中には裸の者もいれば、そうでない者もいた。だが、服を着ている女たちも、裸と大差なかった。細い紐のブラジャーに、透けて見えるプラスチック製のパンツ。ナメクジを隠せるものなど、何一つなかった。

おれが思うに、ほとんどの女性は服を着ていたほうが見栄えがよかっただろう。できれば、トーガのようなゆったりした衣服がよかった。

もし、これが長年にわたって説教師たちが心配していたことなのだとしたら、彼らは完全に見当違いをしていたことになる。こんなものでは、男たちの中にいる陽気な古い獣を呼び覚ますことなどできない。

全体として、陰鬱な光景だった。

それが最初の印象だった。だが、目的地に着く前に、その印象さえ薄れてしまった。

醜い身体は、醜いタクシーと同じだった。目は自動的にそれらを無視するようになる。

ほかの人々も同じらしかった。街を歩く人々は、まるで完全に無関心になってしまったかのようだった。

「裸の背中」作戦によって、すでに慣らされていたのかもしれない。

一つだけ、ずっと後になってからようやく意識したことがあった。

最初の一区画を歩き終えたころには、おれは自分が裸であることを忘れていたのだ。

自分の肌がむき出しになっていることを忘れたあとで、ようやくほかの人々の姿に気づくようになった。

どういうわけか、アメリカ社会は、慎み深さに関するタブーについて、根本的に間違っていたらしい。それも何世紀もの間ずっと。

真正面から向き合ってみれば、それは、窓に掛かったカーテンが風に揺れているだけなのに、幽霊だと思い込んでいたようなものだった。

それ自体には、何の意味もなかった。肯定的な意味も、否定的な意味もない。道徳的でも、不道徳でもない。

肌は肌だ。それがどうしたというのだ?

おれはすぐにオールドマンに会うことができた。

彼は顔を上げ、うなった。

「遅かったな」

おれは答えた。

「メアリはどこです?」

「医務室だ。治療を受けながら、報告書を口述している。手を見せろ」

「それは医者に見せますよ。どうも」と、おれは答えた。手袋を脱ぐ気はなかった。

「何が起きているんです?」

「ニュースくらい聞いていれば、何が起きているかくらいわかるだろうが」と、オールドマンは不機嫌そうに言った。