2021年9月28日火曜日

米軍は超小型原子炉開発をここまで進めている。背景に膨大な電力需要があるのだが、前方への原子炉配備には懸念の声もある。原子炉だけでは電力供給できないので、超小型でもシステムとしては大掛かりになるはず。

 

米国防総省が実用化を目指す超小型原子炉の開発状況をAPが伝えているので紹介します。


国防総省は高性能移動式超小型原子炉の試作型をアイダホ国立研究施設内に設置する。


国防総省は環境インパクト調査案へのパブリックコメント募集を開始した。超小型炉の出力は1-5メガワットだが、電力需要は今後増大する想定だ。


「安全、小型かつ移動可能な原子炉により需要増大に応えつつ、カーボンフリーのエナジー源はDoDの燃料ニーズを増加させないまま、遠隔地や過酷な環境下での作戦展開を可能とする」(国防総省)


環境インパクト原案ではジョー・バイデン大統領が1月27日に出した大統領命令で国家安全保障で気候変動を優先事項とするよう求めていることを超小型原子炉推進の理由としている。代替策として風力や太陽光があるが、設置場所、天候条件等で制約がありながら、需要に応えるため大量設置が必要となると原案は指摘している。


国防総省によれば米軍の年間の総電力使用量は30テラワット時で毎日10百万ガロン(37.9百万リットル)の燃料を消費している。各基地にディーゼル発電機を設置するのは運用上で制約を生む。また電動車両の増加により電力需要は今後拡大すると予測している。同省では無人機、レーダーなど新装備品がエナジー消費を増やすとも指摘する。30テラワット時とは小国の年間電力需要を上回る規模だ。


環境インパクト分析で各地の電力網依存を減らす必要を訴えているのは自然災害、サイバー攻撃、国内テロ活動や保全体制の不備で停電が長期化するリスクを回避するためだ。


アイダホ国立研究施設はエナジー省の890平方マイル(2,305平方キロ)におよぶ敷地内にあり、高地砂漠地帯で近隣都市アイダホフォールズから50マイル離れている。試作炉のテスト運転はすべてここで行われる。


国防総省は最終環境インパクト評価と開発の可否決定は2022年早々に行いたいとしている。承認されれば、アイダホで試験の準備をし、三年以内に超小型炉を製造・試験する。


超小型炉の設計は二案あり、ともに初期段階にあるため国防総省は詳細面を明らかにできないものの、ともに高温ガス冷却式で濃縮ウランを燃料の原子炉だという。


高温に耐える濃縮ウラン燃料により「設計が簡略化しながら安全性を担保できる」との記述が環境インパクト原案にある。


国防総省によれば超小型炉は搬送後3日以内に電力供給が可能となり、運転終了後7日以内で撤去し移動可能となる。■


US Military Eyes Prototype Mobile Nuclear Reactor in Idaho

24 Sep 2021

Associated Press | By Keith Ridler



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ヘッドラインニュース9月28日号(「統合抑止力」構想、B-1B、イスラエル政府専用機、F/A-18ブロックIII)

 

ヘッドラインニュース9月28日号

編集の都合上、最新ニュース以外も入ります。ご了承ください。★は後日、フル記事を掲載予定の注目記事です。


米国防戦略の新しい構想は「統合抑止力」

National Defense

 

「統合抑止力」とは米軍の軍事力以外の手段も使い、敵勢力による攻撃を防止する概念。中ロが核兵器体系の整備に注力しており、ペンタゴンは憂慮を深めている。核、サイバーの二分野で統合抑止力が効果を期待され、既存能力も活用して将来の武力衝突を回避する必要があるとの認識が生まれている。この概念を論述した文書は米議会に2022年初頭に提出する。

 

イスラエル版エアフォースワンの利用を拒む首相

The Times of Israel

 

ベネット首相はネタニヤフ前首相の肝いりで導入した導入されたばかりの専用機でのニューヨーク入りを望んでいない。同機(ボーイング767-300ER)には3億ドルが投じられており、予算浪費のイメージがついていることが理由。一度も稼働していない同機を売却する動きも政府内にある。これに対し、要人の安全な移動には同機は必要とする意見がある。

 

ブロックIII仕様のF/A-18の米海軍向け納入始まる

Naval News

 

ボーイングが米海軍向けブロックIII機材の引き渡しを開始した。米海軍は78機発注している。一部は新造機材で既存機の改修も含む。改修にはネットワーク機能、航続距離の延長、レーダー探知性の改良、コックピット改修、通信機能の向上がある。機体寿命は従来の6千時間が10千時間に延長される。またブロックIII仕様のIRSTで従来より遠距離から敵を探知しながら自機の位置は伝えない。ボーイングの受注規模は40億ドル。

 

 

B-1B第一期退役が完了

Air Force Magazine

空軍グローバルストライク軍団はB-1Bランサーの17機退役を完了し、これでB-1Bは45機体制となり、B-21レイダーの投入を待つ。アフガニスタンやイラク上空で酷使されてきた機材を先に退役させた。うち4機はテスト用、展示用あるいはデジタルツイン作成に使われるが、のこりはデイヴィスーモンタン基地(機体墓場)で保存される。残る機材について空軍は退役時期を明確に指名していないが、爆撃機ロードマップでは2031-2033年の完全退役を想定している。

 

 


2021年9月27日月曜日

中国J-20戦闘機は150機程度配備されており、開戦の第一次攻撃に投入されるシナリオ。日本にとっても対応を想定しておくべき相手だ。

  

Image: Chinese Internet.

 

国のステルス第五世代戦闘機成都J-20「威龍」が国境周辺部の戦略地帯に配備されつつあり、米側同盟国軍が注視している。人民解放軍空軍はパイロット養成を強化し、演習に投入しているが、重要なのは配備場所で、J-20は台湾海峡と東シナ海で運用されそうだ。

 

戦略

 

西側は将来の中国との戦闘シナリオ想定では同機が投入される場面を想定する必要に迫られる。J-20を米F-35やF-22と比較する分析が多いが、日本あるいは南朝鮮と中国の対戦シナリオがあり、まず北朝鮮が南朝鮮を攻撃し、その後中国が参戦するという朝鮮戦争を下敷きにしている。

 

別のシナリオもある。日中が島しょ部の領有をめぐり武力衝突するものだ。これと別に台湾侵攻では台湾へF-35を売却あるいはリースした場合の想定もある。各シナリオではステルス戦闘機が西側に配備されているのを前提としており、日本はF-35は147機導入するとしている。この規模は米国に次ぐもので、南朝鮮もF-35を60機導入するとしている。

 

J-20の特徴

 

日本や南朝鮮がF-35配備でJ-20に対抗できるのだろうか。J-20は相当の威力を有する。機体制御が優れ、ステルスで兵装は機体内部に搭載し、エイビオニクス、レーダーが高性能で標的捕捉機能も高水準だとDOD軍事力レポートは評している。J-20がF-35やF-22と比較されるのは中国が米第五世代戦闘機情報をサイバーで盗んだためでもある。

 

J-20は機外に燃料タンクx4を搭載し航続距離を延長できる。超音速飛行も可能なので中国は同機を空対空戦闘に投入するはずだ。また対地攻撃能力もあり、各種ミサイル、爆弾を搭載できる。

 

弱点

 

ただし、J-20には弱点がある。エンジンはロシア製でF-22やF-35が搭載するエンジンより推力が低い。またJ-20のエンジンからの排出は探知を容易にする。このため中国は今年初めに国産エンジン開発でこうした弱点を克服すると発表していた。

 

J-20 はこう運用される

 

想定される日本、南朝鮮との戦闘でJ-20はまずステルスモードで飛び敵レーダー施設を攻撃する。これで進入路を作り、中国は爆撃機、輸送機を送り込む。日本、南朝鮮との開戦確率が低いのは確かだが、戦略立案部門は有事の想定をしておくべきだ。

 

中国はJ-20を二個連隊で75機程度供用し、東方及び南方戦域に配備しているとみられる。つまり、台湾戦とあわせ東シナ海、南シナ海の島しょ部分の防衛に投入する想定だろう。これと別に75機が予備訓練部門に配備されるので、米、日、韓の戦闘機部隊にとって中国の航空戦力は相当のものとなる。このうち実戦経験を有するのは米軍のみで、米海軍F/A-18スーパーホーネットはシリアでSu-22を2017年に撃墜している。

 

となると将来の戦闘シナリオで日本や南朝鮮部隊は米軍のF-35あるいはF-22投入までJ-20を食い止められるのだろうか。日本と中国が武力衝突する可能性のほうが高い。戦略立案では各種の要素を考慮する必要がある。中国機のステルス性能により戦闘は困難となるはずで、中国が日本や南朝鮮の防空体制に穴をあければ、爆撃機等が進入してくるはずだ。このため、東シナ海上空で各国とも戦闘機による哨戒や訓練を怠れないのである。ここから偶発事故や誤解が生まれ、空中戦闘につながり、さらに本格戦闘につながる危険がある。

 

J-20は手ごわい相手となり、前方配備され、しかも後方に予備機も十分ある存在だ。日本や南朝鮮の戦闘機パイロットには実戦経験がないが、それは中国も同様だ。このことを考慮すると戦闘想定を考えるにあたって高リスクのシナリオが必要となる。J-20は第一撃能力で優れるものの、米、韓、台湾、日本の各国空軍は第二次攻撃への防空体制をどう展開するか決定する必要に迫られよう。■

 

China’s Stealth J-20 Stealth Fighter Has Arrived (And Ready for War?)

ByBrent M. Eastwood

 

Brent M. Eastwood, PhD, is the author of Humans, Machines, and Data: Future Trends in Warfare. He is an Emerging Threats expert and former U.S. Army Infantry officer.

In this article:China, Chinese Air Force, J-20, J-20 Mighty Dragon, J-20 Stealth Fighter, Military


2021年9月26日日曜日

ヘッドラインニュース9月26日号(B-52新エンジン、超小型原子炉、F-117、米空軍調達構想)

ヘッドラインニュース9月26日号

編集の都合上、最新ニュース以外も入ります。ご了承ください。★は後日、フル記事を掲載予定の注目記事です。


B-52換装エンジンはロールスロイスF130に

Alert 5など

ペンタゴンはB-52Hのエンジン換装選定結果を発表し、ロールスロイス北米事業部のF130ターボファンを採択したと発表。換装作業は数年以内に完了させ、B-52供用は2050年まで延長される。608基のエンジンと予備部品含め契約は26億ドル相当になる。F130とは同社の民生用BR700エンジンの軍事仕様名称で、ボーイング717、米軍のC-37,E-11A戦場上空通信中継機(BACN)で同エンジンが採用されており、整備保全やロジスティクスチェーンが簡単になる。

Credit: Rolls-Royce



移動型野戦原子炉のプロトタイプ★

Military.com

国防総省は移動型原子炉の環境インパクトに関し45日間のパブリックコメントを募集中。当面1-5メガワット出力の実現を目指し、将来は拡大する。実証炉をアイダホ州に設置する。小型原子炉は移動後三日で運転開始し、7日以内に移動をめざす。米軍の年間消費電力は30テラワットに相当し、小型炉はバイデン大統領の目指す環境対策と安全保障の両立に資するものとして開発を進めている。


F-117は「巡航ミサイル」役だった

Aviation Week

先日、カリフォーニアのフレズノ空港に退役したはずのF-117が2機到着した。州軍F-15の防空演習に参加し、アグレッサーを演じるとの観測もあったが、そもそも空対空能力がないF-117を投じるのは理屈に合わなかった。今回、F-117はステルス性能も利用し巡航ミサイルに見立てて演習に投入されていたことが分かった。


ケンドール空軍長官の考える機材更新優先事業★

Aviation Week

長官はシリコンバレー新興企業優遇を改め既存企業を重視する姿勢を示しながら、オープンエンド型のイノベーションを重視するとしている。空軍では高性能戦闘管理システム(ABMS)の開発が難航している。機材ではE-3、E-8の後継機選びが待ったなしでE-7が候補として急浮上している。その他MR-Xはローエンド新設計戦闘機でF-16後継機とするもの。またF-35の次期アップグレードも控える。中でも新エンジンの採用が注目される。

 

 

 

フランスに同情する国が皆無なのはなぜか。因果応報と冷たく突き放すヨーロッパ各国だが、AUKUSは単純にフランス設計では要求水準を満たせないと判断したのではないか。

 

French President Emmanuel Macron at the Elysee Palace in Paris, Sept. 20, 2021. AP / GONZALO FUENTES

 


  • フランスの強引な営業手法にいら立地を隠せない欧州諸国は多い。


フランスがAUKUSに怒りを隠せない。だがEU加盟国から同情の念はほとんど表明されていない。その理由としてフランスが武器輸出で荒っぽい手法を展開してきたのを他国が不快に感じていることがある。フランスは武器輸出は国家主権上で不可欠な要素と考えており、フェアプレイも重要だ。

サウジのジャーナリスト、ハマル・カショギがイスタンブールのサウジ領事館で2018年10月に殺害されると、エマニュエル。マクロン大統領の手元に極秘情報が届き、サウジアラビアがイエメンでフランス製武器をどう活用しているかの説明があった。半年後にドイツなどヨーロッパ諸国がサウジ向け武器販売を停止したが、マクロンはフランスに同じ措置を求めるのは「人気取り政治」と一蹴した。

「武器販売とカショギ殺害に何の関係があるのか。イエメンの事態とのつながりは理解できるとしてもカショギ氏殺害とは何ら関係がない」「『武器輸出停止』を叫ぶのは典型的な扇動政治で、カショギ事件は無関係だ」(マクロン)

イエメン内戦では130千名が死亡しており、16百万名以上が十分な食料を得られない状況だ。イエメンでサウジ主導の連合軍とフーシ戦闘員の戦いで国民が苦しむ中でフランスのサウジアラビア向け武器輸出は続いている。2018年のフランス武器輸出は50%増加した。

昨年にフランスの武器輸出は大幅減となった中でサウジアラビア向けが国内防衛産業の維持に大きく貢献した。サウジは704百万ユーロ相当のフランス製武器を購入し、最上位国となった。また、不振とは言うもののフランスの武器輸出は2016年比で44%増となり、武器輸出上位5か国の中で目立つ存在だった。

防衛産業を擁する国は輸出で維持しているのが大部分だ。その中でフランスは防衛産業幹部のみならず大統領含む政治家が積極的に輸出案件制約に駆け回っている。フランス防衛産業では国営、民間資本の関係なく、フランス政治家がセールスマンとなり他国の競合相手を蹴落とそうとなりふりかまわぬ動きを示している。米国等でも公職につくものが自国の武器輸出を売り込むことはあるが、フランスほどの熱の入れようは見られない。

フランスは自国をグローバル大国とみなし、だからこそ同盟他国を差し置いてまで強硬な売り込み交渉をしても許されると考えているのはあきらかだ。フローレンス・パルリ国防相は「武器輸出は国家主権によるビジネスモデルだ」とまで2018年に発言していたほどだ。

スイスの戦闘機選定の事例を見てみよう。2012年に同国はサーブ・グリペンの老朽化から次期戦闘機調達に動いた。スウェーデン製の同機は機体価格に見合った性能があり、ダッソー・ラファール揶揄路ファイター・タイフーンを破った経緯がある。だが土壇場で機密文書が表に出てグリペンの性能に疑義を思わせる内容のためメディアが大騒ぎとなった。不思議なのは文書は英語で書かれていたことでスイスの公用語ではない。今年スイスは新たにF-35の導入に傾いた。

当時のフランソワ・オランド大統領はその他政治家より堂々とフランス武器産業を支援していた。2013年のパリ航空ショーでオランドはダッソーアビアシオンのCEOセルジ・ダッソーが演台に上るのを助け、「国家がダッソーをこうやって助けるんだ」と漏らしていた。

このため自国政治家が強引な手段を用いない国は競合で不利な立場になった。フランスは周囲のEU加盟国から恨まれた。防衛装備品に関する限り、フランスの好意度はEUで低く、それには別の理由もあった。EU条約の抜け道を利用してフランス企業の成約を実現していたのだ。これは346条のことでEU加盟国政府は自国内企業からの調達を優先できるとあり、ただし、純然たる安全保障上の利害の絡む場合との限定がついている。各国は自国にとって都合の良い解釈をしている。

フランスもかなり自由な解釈をしている。欧州議会の調査部門は昨年10月に報告書を出し、「欧州委員会及びCJEU17で第346条TFEUで具体的な理由が必要であり、事例ごとに検討するとあるにもかかわらず、実際には加盟国多数が同条項をEU法規から武器類は自動的に適用外としてよいと解釈している」としていた。言い換えると加盟国は同条を利用して他の欧州企業の負担で自国防衛産業製品を採用していることになる。2019年に欧州議会から出た報告書では「加盟国は例外規定を厳密に適用すべきであり、とくに346条の濫用は避けるべきである」とあった。だが濫用は続いており、取り扱いを厳密にして対応する国は商戦に負けているのが現状だ。

こうしてみるとフランスがAUKUSに火が出る勢いで反発したのにもかかわらず、各国からの同情が皆無に近い理由がわかる。友人が傷つくのを見るのは誰でも忍びないが、その友人が自国利益を優先し、他者を足蹴にしても構わないのであれば、同情は生まれない。英米豪へ抗議でフランスが他国に支援してもらいたいのなら、自らの友人の取り扱いの仕方を再考するべきだ。防衛装備品輸出がその際に中心となる。■

きれいごとばかり表面に出てくる裏でドロドロした利害がうずめく、欧州とはなんと理解しにくい相手なんでしょうか。ヨーロッパに深入りするなとベンジャミン・フランクリンが遺訓を残したのもうなづけますね。


Why France Is Getting No Sympathy for Its Lost Sub Deal

Its European neighbors have long bristled at Paris’ self-dealing and aggressive sales tactics.

BY ELISABETH BRAW

SENIOR FELLOW, AEI

SEPTEMBER 21, 2021


2021年9月25日土曜日

クアッドサミット記念)クアッドの近未来をゲーム理論で予測した....現実にクアッドはインフォーマル組織として安全保障から経済、技術面の国際規範作りに発展する存在になる。クアッドの本質を理解することが必要でしょう。

 



Credit: AP | Getty Images



国が経済大国へ変貌し、国力、外交力、軍事力でその効果を享受している。オーストラリア、インド、日本、米国の四か国が対抗勢力を形成した。


「クアッド」の将来には大きな可能性があり、インド太平洋に限らず、政府にとどまらず企業トップさらに一般市民まで世界規模のバランスオブパワーを意識しはじめている。


そこで世界の経済大国のトップにはクアッドの次の展開を知りたい気持ちがあるはずだ。


高度なコンピュータアルゴリズムが答えとなるかもしれない。


今週、ジョー・バイデン大統領はインドのナレンドラ・モディ、スコット・モリソン、菅義偉の各首相を招き、初の対面でのクアッドサミットを開催する。


主題はCOVID-19、気候変動、テクノロジー、サイバースペースとならび「自由で開かれた太平洋」で「各国の絆を深め、実のある協力を進める」事とホワイトハウスは発表している。


クアッド関連で発表される声明文の通例に漏れず、中国への言及はない。だが中国をめぐる懸念がクアッドの根幹にある。習近平が2012年に主席就任してから各国で中国との深刻な利害対立が貿易や領土面で発生している。


オーストラリア、インド、日本、米国の「四か国安全保障対話」は以前は非公式なままで各国による海軍関連の協力を協議してきた。これがトップレベルの戦略協力関係に変貌し、技術、世界経済、安全保障、パンデミックの話題を扱う。


中国はクアッドとは自国のグローバル大国化を妨害する試みと批判している。


専門家には中国のこうした姿勢がクアッド加盟国を逆に接近させているとの見方がある。では次に何が来るのか、CNBCではこんな質問をしてみた。クアッドの将来像とは。さらにゲーム理論モデルを応用し、インド太平洋のクアッド四か国、中国、その他国の将来を予測した。


ゲーム理論は一般に知られていない。ひとことでいえば、科学を戦略に応用することだ。ゲーム理論ではモデルを組み、集団個人間の競合状況を試す。


コンピュータ処理能力が加わり、各人がモデル内でどう行動するか、その結果の予測が可能となった。


そこでゲーム理論を各関係者に応用し予測をしてみた。さらに貿易、投資まで含めグローバル規模でのアルゴリズムの信頼度を高めた。


とはいえゲーム論は魔法ではない。制約があるのは以下の通りだ。今回使ったモデル構築に携わった政策アナリストのうち二名は引き出された予測結果に同意していない。


ゲーム理論では今回使用したモデル自体はよく知られている。ブルース・ブエノ=デ=メスキータ(ニューヨーク大)とスタンフォード大のフーヴァー研究所が開発した手法はCIAが1980年代に1,200もの事案に使っている。


イエール大出版が1995年にCIA機密解除文書を刊行し、メスキータが勤めていたポリコンはCIA予測の的中度を90%と評価し、従来型予測をはるかに上回るとした。メスキータはその後フォーチュン500巨大企業クラスのクライエント向けにもっと高い的中度を実現できたと主張している。


カナリーグループのジョナサン・グレイディはメスキータの弟子で今回のゲーム理論モデルを作った。クアッド加盟国の将来について海洋安全保障を中心に予測した。


グレイディはメスキータと相談しながら政策専門家元政府関係者37名の意見を集めた。


今回準備したモデルでは「プレイヤー」が300名近くクアッド各国に分布する。中国及びその他10か国を含む。CNBCのクアッドプロジェクトはブエノ=デ=メスキータモデルとしては史上最大規模となり、CIA他政府機関で行った事例をはるかに上回る複雑なものである。以下、このモデルから引き出された予測と政治アナリストの意見をお伝えする。


海軍力比較(左人員、右艦艇数)-左より米国、中国、日本、インド、オーストラリア


クアッド予測の要旨


今後2年を念頭に以下三点の予測がモデルから出てきた。


オーストラリア、インド、日本、米国はインド太平洋の安全保障をさらに重視し、各国の連携が深まる。だが現状を上回るような強硬な動きは示さない。その例として南シナ海内で四か国の共同演習は行わないだろう。


習近平はクアッド加盟国指導部へ個別に圧力をかけ、連携にひびを入れようとするが、まともに対応する国はあらわれない。中国指導部には軍司令官も含めクアッドへ懐柔的な動きを取ろうとする動きが出るが、中国共産党トップの強硬派と衝突する。中国は海洋主権に関しクアッドに譲歩の姿勢は見せないだろう。


その他国にはクアッドの側に着く、あるいは安全保障の観点から接近してくる国が続出する。英国、カナダ、シンガポール、フランス、南朝鮮がその例だ。海軍演習の共同実施あるいはクアッドの安全保障観を公然と支持するだろう。その他国にはヴィエトナムのようにクアッドへの距離を縮める国もあらわれるだろう。


この結果におおむね賛同する専門家はクアッドの結束力はこれから増すとみている。


超党派調査機関CSISでアジア日本部門をまとめるマイケル・グリーンは「クアッドが常設機関となりアジアの構成要素となるとの結論は正しい」とし、「四か国でそれぞれ正しい政策が実現する」と述べている。


クアッド加盟国内の政治動向が良い方向に向かうとの根拠に習近平が主席となって以来の中国が各国に独断的な主張をしてきたことがある。


日本との領有権をめぐる紛糾が先鋭化したのは東シナ海で中国の軍事活動が高まったためである。中国がオーストラリア産品の輸入制限したのはオーストラリアがCovidで中国へ調査を求めてきたことへの対応だ。中国インドの部隊がヒマラヤで衝突し、インド側に20名の死者が出た。中国技術製品への反発があり、米中貿易戦争に収束の兆しがない。


クアッド各国は中国を意識した安全保障面の取り決めからサプライチェーンまですべてを構築する必要があると認識している。


日本の役割が中心となる


中国はクアッドとは米主導の動きと説明している。たしかにバイデン政権になって米国の指導力を増やす動きが出ている。だが実はクアッドは複雑な存在だ。加盟国には協調する理由がそれぞれあり、その理由が存在感を増している。


その例として日本を見てみよう。


中国の見方並びに米国内メディアのクアッド報道の大部分が日本の中心的役割を見過ごしており、安部晋三元首相がクアッドを創設し、維持してきた事実を忘れている。


日本は友好国確保に走ってきた。中でもインドを巻き込むのは経済面で意味がある。各国にはその他国にない特徴がある。日本の場合は資金力とノウハウ、インドは人口の成長である。ともに民主体制でもある。


「経済の観点から見れば、日本にとってインドは今後最も重要なパートナーとなる。人口は増えており、経済潜在力は莫大だ」と述べるのは政策研究大学院大学の道下徳成教授だ。


安全保障の観点で米国はバイデン政権はトランプ政権時代より協力的になっているが、「中国軍が地域内に展開する中で米軍は世界規模にひろがっている」と道下は指摘し、「そこで日米で仕事ができないなら、インドに注目し、友達に加えればよい」


中国の今後で意見が分かれる


今回のゲーム理論予測では中国の国内政治が専門家間で最大の関心を集めながら、意見も相違した。


「中国が最大の要素だ。同時に最大の不確定要素で全てに影響する」と語るのはObserver Research Foundation Americaのドゥルーバ・ジャイシャンカールだ。「中国国内で派閥分断が進めば頭の痛い事態が生まれる」


今回のモデルは中国がクアッドを受け入れる予測は出てこなかった。むしろその逆で、中国国内の指導体制の今後で別の見方が出ている。


モデルでは外交軍事部門で懐柔的態度が出ると予想しているが、共産党の政治局常設委員会は柔軟性を欠いたままクアッドに対応してくるとある。同委員会が党の指導層を構成する。


クアッドに関する限り中国国内に意見の分断はない。中国外務省はクアッドの進展に反対の姿勢を見せており、中国の発展こそアジアさらに世界にとって良いことと明確に示している。


「中国はアジア太平洋の経済成長のエンジンであるだけでなく、域内の平和安定の守護者である」と同省報道官Zhao Lijianが述べている。「中国の成長により世界平和を実現する力が増長するのであり、域内の繁栄発展が促進される」


北京の内側で何が進展しているのか見えてこない以上、今回のモデルの予測内容をそのまま受け入れられないとする専門家もいる。


「ホワイトハウスでは中国内部の人物像を把握していた」と話すのはジョージ・W・ブッシュ政権で国防会議事務局にいたマイケル・グリーンだ。「今は不透明になっている」


グリーンは習近平体制になってから中国内部で意見の応酬が減ったとみている。「間違った意見を出すのを恐れている」という。習近平は政治局常設委員会で確たる地位を占めており、中央軍事委員会では唯一の非軍人構成員だとグリーンは指摘する。「外相では習近平の大戦略に立ち入りできない」


たしかに中共内部の政治体制では中国軍が政治指導部と異なる場面が発生しているとラリー・ダイアモンド(フーヴァー研究所上席研究員)が解説している。だがこうした事態は各国にもある。だがらといって中国が「独立したパワープレイヤー」とは言えない。


「習近平の立場は強固で軟派では対抗は不可能だ」(ダイアモンド)


仮に習近平がクアッド懐柔派に動かされても、本人の政治状況から見て許すことはないはずだ。


「習近平は南シナ海軍事化の路線に走り、中国の偉大さを訴え、インド太平洋で覇権確立に向かい、台湾の獲得を公言しているので、いまさら中道的な発言はできない。すれば、権力の座を失うリスクがある」(ダイアモンド)


だが経済、貿易、領土で中国が直面している抵抗は、中国との貿易に依存する国からも出て、北京の指導者にとって驚きになっているようだ。


「オーストラリアが対抗姿勢を示したことに中国は驚いた。インドが国境線で明確に意見を述べていることも同様だ」とプリンストン大のヴィエトナム専門家ヅイ・トリンが述べている。


「中国共産党はタカ派姿勢を取ってきたことが裏目に出ていると感じているようで、各国からの挑戦に直面している。これは簡単に収まる事態ではない」



クアッド4か国の経済実績(GDP)



クアッドに同調する国


ゲーム理論モデルは合計15か国を対象とし、それぞれがクアッドの未来に影響を与えるとしている。一部にはクアッドと同じ姿勢を示し、あるいはもっと接近してくる国が出る予測が出ている。


英国、カナダ、シンガポールがクアッドと同じ方向で海洋安全保障に取り組む。フランス、南朝鮮はクアッドに接近するものの、完全に合意することはないだろう。ヴィエトナムは加盟こそしないが、クアッドに近づくとモデルは予測している。フィリピンはクアッドへの接近を示すはずだがロドリゴ・デュテルテ大統領は来年の総選挙後に中国寄りになりそうだ。


ゲーム理論モデル予測は8月に行われ、フランスがクアッドへ関心を低下させたのは確実だろう。オーストラリアがフランスから潜水艦調達する事業を破棄したことで「同地域へのフランスの姿勢は完全に一変した」とCSISのピエール・モルコスは解説している。その直前にフランスは駐米・豪大使の召還を発表していた。


「だからと言ってフランスがこの地域へのコミットメントをなくすわけではないが、米豪両国との協力は今後難しくなる。フランス当局の怒りを見れば」とモルコスは語る。本人は元フランス外交官だ。


とはいえアジア、ヨーロッパ双方でクアッドへ同調する国が出るとアナリスト陣は一様に見ている。CSISのグリーンは「韓国から聞こえてくる声、フィリピン軍、オランダからも同様だ」という。


専門家からは米国、英国、オーストラリアがあらたな安全保障上の連携関係AUKUSを発足させる前に意見をうかがった。


三か国は連携が中国に対抗するものとの見方は重要ではないと受け流している。


中国はこの動きを警戒し、「極度なまでの無責任ぶり」と呼んでいる。


「各国は古色蒼然たる冷戦時のゼロサムの考え、近視眼的地政学認識を捨て去り、域内各国人民の意思を尊重すべきであり、域内の平和安全発展に貢献すべきだ」と外務省報道官 Zhao Lijianは論評した。「これができないのであれば各国は予期しない結果に陥るだろう」


クアッドが中国の発展を妨げるための米国の試みの隠れ蓑という中国の主張は説得力を失いつつあり、クアッドの掲げる航行の自由やサイバーセキュリティ他へ支持が広がっているとモロコスは述べる。


「これまで米国は中国の台頭に対抗する動きは、域内の主導権を奪われるとの懸念からこうした動きに出ると言ってきました」モルコスはこう語る。「でも実際に多数国が加わっているのは中国の行動は国際社会では受け入れられないことを示している」


シンクタンク、オーストラリア戦略政策研究所のピーター・ジェニングスは中国が「強硬かつ強い主張の政策を展開しなかったら」こうした構想は現実になっていなかっただろうと語る。


クアッドは同盟関係ではない


クアッドは軍事同盟ではないと語る専門家がいる。

同盟とは議会立法部で批准され、軍事同盟は多層的な構造となる。そのため同盟は柔軟性に欠けるが、クアッドのようなインフォーマルな集団と異なる。


ロシアと台湾


今回のような非同盟関係の枠組みに先例がある。中国とロシアの関係だ。


中ロ両国に正式な同盟関係が存在しているわけではないが、国際問題で協調対応することが多い。


ゲーム理論モデルではロシアの安全保障室は中国にクアッドへの姿勢を軟化するのが望ましいとするものの、ロシア大統領ウラジミール・プーチンはその方向に向かわなかった。ロシア大統領さらにロシア指導部全体はシミュレーションの伸展とともにクアッドへの関心を失っていった。


Observer Research Foundation Americaのドゥルーバ・ジャイシャンカールはロシアが中国の立場から離れる事態が生まれるか懐疑的で、ロシアのほうが弱く、経済でも中国依存が高い。


そして台湾がある。インド太平洋で政治家、政治アナリストや中国ウォッチャーを悩ませるのが台湾で自治を貫いているが中国は自国の一部と主張する。スタンフォード大Freeman Spogli Institute for International Studiesのオリアナ・スカイラー・マストロのように中国が武力で台湾を奪回すると本気で心配する専門家は多い。


台湾は民主国家であるものの、北京は反乱地方とみなし、くりかえし軍用機を台湾防空識別圏へ送り込んでいる。今回のクアッドゲームではこの状況を詳しく精査していないが、台湾政体はクアッドとの関係でモデル化している。


台湾は政治状況の点ではクアッドに近い存在だが、ゲームの進行に合わせ立場を変え、柔軟性を発揮する様子を見せた。


ゲームでは台湾与党の民進党が中国に対し強く主張する姿勢を見せると予測したが、時間がたつと国内に立場を軟化させるものが現れた。


モデルではDPP首脳部の中でどこまで対中姿勢を強硬に保つかで意見の相違が現れた。なかでも蔡英文総統が、副総統賴清德Lai Ching-teより中国に対し軟化姿勢を示ストの予測が出た。


カマラ・ハリス


ホワイトハウスでは副大統領カマラ・ハリスがクアッドへの姿勢を先鋭化させ、「高度な信念とで他のホワイトハウス関係者を上回る」変化を示したとグレイディが語る。ホワイトハウス全体がインド太平洋安全保障に焦点を合わせる背景での予測だ。


ゲーム理論モデルを運転した後でハリスはシンガポール、ヴィエトナムを8月末に歴訪している。


ヴィエトナムと中国は南シナ海で領土主張をめぐり対立しているが、ハリスはハノイで米国とヴィエトナムは「北京に圧力をかけ国連海洋法条約の順守を求め、強硬かつ過剰な海洋領土主張に対抗する」方法を模索すべきと語っている。


中国外相王偉はハリス訪問後にヴィエトナム、シンガポール、さらにカンボジア、南朝鮮を歴訪している。


「副大統領は民主党内の伝統派と急進派をつなぐ存在になった」とジャイシャンカールは評し、「バイデン大統領の姿勢に近い立場になれば、民主党の外交方針を今後10年以上にわたり変える効果が生まれる」とした。


アフガニスタンと「アメリカ第一」


CNBCが意見を聞いたアナリスト多くが米国のアフガニスタン撤退でインド太平洋での米国の政治努力に悪影響は出ないと答えている。反対にバイデンは「アジア中心」というオバマ政権で言葉ばかりで実行が伴わなかった政策を実行に移していると評価している。


アジア各国の懸念事項は米国が本当にアジアにコミットしてくれるのかという点だろうとユーラシアグループのアリ・ウィンは解説する。


ウィンはバイデンの約束が2024年中間選挙後も有効なのか各国が懸念すると見ている。


ドナルド・トランプ政権の「米国第一」は多国間取り決めを関心の対象とせず、南朝鮮やドイツなどには無関心あるいは敵意を隠さなかった。


中国国営メディアは米国とトランプについて2019年に「傲慢かつ自分優先で気まぐれなパートナーはだれでもごめんだろう」と評していた。


クアッドの柔軟性のおかげでクアッド外の各国が特定の問題に限定し協力することが簡単になる。クアッド加盟国でも自由に課題を取捨選択し取り組むことさえ可能だ。


CSISのグリーンは「入る切るのスイッチではなく、明るさ調整可能スイッチのようなものだ。韓国でもニュージーランドでも英国も柔軟に対応できる。中国問題で困った状況になれば、次回の演習にフリゲート艦を派遣すればよい」


中国のクアッド加盟国との貿易収支(2019年)



クアッドとグローバル経済


クアッドで皮肉なのは加盟各国にとって中国が主要貿易国であることだ。中国は世界最大の輸出国であり最大の貿易取引国である。


中国が世界経済の中心位置にあることからインフォーマルな安全保障取り決めのクアッドの有効性にも限界が生まれる。ただし、クアッド(3月)、ホワイトハウス(先週)双方の最近の声明を見るとクアッドが経済分野での協調作業を目指していることが明白だとわかる。


クアッドが主張する「自由で開かれた、国際法に根差すの法の支配」では交易は安全保障同様に重要だ。航行の自由がクアッドで一貫して主張されている問題で貿易産品や漁業を妨害なく公海で展開することだ。


政策研究大学院大学の道下はクアッドは中国の貿易制裁で被害を受けた国の救済支援の仕組みを構築すべきと主張する。北京は政治面の兵器としてこの策を重視しており、実際にオーストラリア、日本、南朝鮮他に使ってきた。


中国は貿易面で相当の強みを世界各国に誇り、クアッド加盟国それぞれでも同様だ。


だがクアッド加盟国にはほかにない経済面の優位性がある。米国は世界最大で活発な経済を有する。日本は三番目の経済規模があり技術大国だ。インド経済は急成長中であり、ワクチン製造では強みを発揮した。オーストラリアの人口は25百万しかないが、中国とは貿易黒字を天然資源や農産品輸出で確保している。


オバマ、ブッシュ両政権に仕え現在はCSISで経済関連の副理事長のマシュー・グッドマンはクアッドが各国の経済面の優位性を「作戦化」するとみていた。つまり、半導体、バイオテク、人工知能といった将来のカギを握る技術を先に実用化することで、新技術で「基準、規則、標準」を設定することだ。


今年に入り、クアッドはホワイトハウスとともにインフラ、新技術、パンデミックからの経済回復で明確な姿勢を示している。


クアッドは経済に関する基準作りを目指している。G-7やAPECのような大規模な多国間組織で本来取り上げる課題だ。


「ここワシントンでみていると、バイデン政権がクアッドとG-7のふたつを中核組織としてグローバル規模での仕組みづくりを目指しているようだ」とグッドマンは語る。


ゲーム理論とは


ゲーム理論では計算と論理を使い対象人物が相手との関係でどう動くかを予測する。シナリオ(「ゲーム」)でそれぞれの対象(「プレイヤー」)の意思決定を予想するべくモデルを作る。


ゲーム理論では大統領選挙や株式市場の予想はできない。明確に定義した対象がからむ特定のシナリオの精査が目的で、企業間の合併交渉や高レベル外交交渉に応用できる。


モデルはこうして作った


今回の事例で使ったゲーム理論モデルはブルース・ブエノ=デ=メスキータ(ニューヨーク大教授)がスタンフォード大フーヴァー研究所が開発したものを使用した。


今回はクアッドの海洋安全保障を軸に米国、日本、インド、オーストラリアの関係に焦点をあてている。同じクアッドでもその他の面は予測対象外とした。


ブエノ=デ=メスキータの元で学んだジョナサン・グレイディ(カナリーグループ)がクアッド四か国以外に中国他10か国の専門家37名に直接面談した。


今回のクアッドプロジェクトではさきに「争点の規模」をクアッドの仮説結果20通りについて設定した。点数付けは極端に分布した。クアッドの終了が片方にあり、台湾防衛の保証をする積極策がその反対についた。


「プレイヤー」とは


政治専門家は主要15か国で中心となる「プレイヤー」300名を選出した。大部分は個人だが、一部に機関団体、報道機関を含む。モデルは各問題についていプレイヤーの行動を「点数化」し、以下の課題についてもプレイヤーを点数化した。


-クアッドの将来にどこまで影響力があるか


ジョー・バイデンが最高点で、その水準に匹敵するものは皆無だった。


-クアッド関連問題はどこまで重要なのか


例として、米国防会議でインド太平洋関連を調整するカート・キャンベルにとっては看過できないが、ジャネット・イエレン財務長官にクアッドはそこまでの重要事項ではない。


-クアッドに関しどこまで柔軟でいられるか


例としてインド首相ナレンドラ・モディは習近平主席より柔軟に対応できる。


今回のクアッドモデルは8月に完成した。計算回数は数千万回にわたり、プレイヤー間のやりとりを7回にわたり実行し結論を得た。グレイディはモデルを数回実行し一貫性を確認した。


ゲーム理論への批判


ゲーム理論を批判する向きがある。


ゲーム理論では競合状態にある各人は合理的に行動する前提としており、あるいは合理的と考える行動を取ることでそれぞれの目標を達成するものとしている。


ただし、批判派は人間とは究極では自分の意思で動くと指摘する。各人の行動を予測するとしても物理の法則通りに安全な選択をする保証はないとする。分子の動きが予測できるのは分子に自由意志がないためだ。


ゲーム理論モデルでは詳細面を省略する必要が出る。というのはすべてを数学モデルで再現できないためだ。「それがモデルの限界です」とコネチカット大経済学者のリチャード・ラングロイスは語る。


将来を考えると、「今想定できない別の要素が出てくるものだ」という。


こうした「質的」要素は数学モデルには反映されていない。


CNBCがこうした疑問を伝えると、ブエノ=デ=メスキータは質的要素が結果を左右する可能性を認めた。だが、本人はモデルにこだわり、成功率を90%だとした。「モデル使用の実績では質的要素の影響は10%以下だ」という。


ゲーム理論の最大の疑問点はモデルに使う情報だろう。


コンピュータ学では「ごみを入れ、ごみを出す」という言い方がある。つまり、コンピュータが正しい結果を出すのはデータ次第だということで、モデルでも結果は入力した情報次第だ。


今回のクアッドプロジェクトでは情報は世界最優秀の政策や安全保障専門家から集め、それぞれの予測はストレステストした。


「今回集めた人材は強力だ。今回以上の人材はなかなか入手できない」「だから良いインプットで良いアウトプットが得られたと思う」(グレイディ)


それでも中国の内部決定サークルの外から実情が理解できるのかという疑問を呈する向きがある。


投資家は経験から良い発想だからこそ予測に慎重となるものである。政治学、経済学、株式市場関係者はことごとく将来を予測するが、その言葉を信じても結局誤りに気付くだけだ。


予測はできても想定外の事態には対応できない。例としてクアッドモデルでは今回のオーストラリア潜水艦事案でのフランスの怒りは想定していない。このため少なくとも近い将来ではフランスがクアッドに協力することはあり得くなったようだ。


とはいえ、ゲーム理論によりクアッドについて議論のきっかけができた。


「議論対象の意味が分かっている人はいない。中核となるプレイヤーや、誰を関与させるべきなのか、本当に理解できていない」とジョナサン・バークシャー・ミラー日本国際問題研究所主任研究員が語る。ミラーはオタワのマクドナルド・ローリエ研究所でインド太平洋問題のとりまとめもしている。「議論にはまずこうした専門素養が必要だ」■



Quad Summit and China: Game theory predictions for the future of the Quad


Ted Kemp

Published Thursday, September 23, 2021 7:03 PM EDT

Updated Friday, September 24, 2021 11:16 PM EDT


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