2018年10月24日水曜日

米中の軍事緊張が高まる中で米海軍が台湾海峡通過航行を敢行した


日本ではあくまでも米中両国は「貿易戦争」をしているのであって、経済問題で対立しているとの報道にとどまっていますが、米国(おそらく中国でも)では軍事対立への道、すなわち新冷戦として現状を捉えているのですね。またもや日本は空気が読めない対応に終止してしまうのでしょうか。

US Navy warships just rocked the Taiwan Strait in rare move, turning up the pressure on China米海軍艦艇が台湾海峡で波を立て中国に圧力をかけた


US Navy guided-missile destroyers and guided-missile cruisersUS Navy guided-missile destroyers and guided-missile cruisers U.S. Navy photo by Lt.j.g. Caleb Swigart
  • 米海軍が10月22日中国の玄関口で威力を誇示すべく艦艇二隻に台湾海峡を通過させた
  • 海峡を通過した駆逐艦USSカーティス・ウィルバー、巡洋艦USSアンティータムに中国艦船が追尾した
  • あたかも両国で緊張が高まる中での事件のため、国際法の枠内とはいえ中国が怒りをおぼえることになりそうだ

海軍艦艇二隻が台湾海峡を通過したと台湾国防省が月曜日発表した。
アーレイ・バーク級駆逐艦USSカーティス・ウィルバー、タイコンデロガ級巡洋艦USSアンティータムの二隻が台湾海峡を同日に航行したと米太平洋艦隊もBusiness Insiderに認めた。米海軍では7月にもUSSマスティン、USSベンフォールドの駆逐艦二隻を航行させていた。
今回は「国際法に準拠した通常の台湾海峡航行」と太平洋艦隊広報官レイチェル・マクマー少尉がBusiness Insiderに語り、ミッションの目的は「自由かつ開かれたインド太平洋」の維持が米国の国是と示す点にあるとし、「米海軍は国際法の許す範囲で今後もいかなる地点で飛行・航行・作戦を展開する」と述べた。
今回の背景に米中両国の軍が緊張を高めていることがあり、貿易から領土主張に至るまで両国の対立が強まっている。
台湾周辺で米軍が活動すると台湾独立派が勇気づくと問題視する中国は同海域で軍事力を増強しており、空母と随行艦に台湾海峡を通過させ「包囲」演習として戦闘機、爆撃機、他を参加させた演習を通年で実施している。
北京政府は台湾をあくまでも分離した自国領土とみなしており、独立宣言の動きが台湾に出れば軍事行動を辞さないと脅かしてきた。
米海軍による中国への挑戦最新版は南シナ海でにらみ合いが続く中で実行され、スプラトリー諸島近くで航行の自由作戦を実行した米海軍艦艇に中国駆逐艦が衝突寸前の「危険な」接近をした事案も発生していた。その後、米空軍が爆撃機を東シナ海南シナ海上空に複数回通過飛行させており、中国は毎回「挑発的」と決めつけていた。

今回の米海軍による台湾海峡通過に中国も艦艇複数で追尾させたが、中国艦は安全な距離をたもったままだった。■

米海軍の次期攻撃型潜水艦はハンターキラー重視に復帰する

Navy’s New SSN(X) Attack Sub To Be Faster, More Lethal – And More Expenskaive 米海軍の時期攻撃型潜水艦SSN(X)は速力、威力が増し、価格も上昇

October 19, 2018 3:09 PM


シーウルフ級高速攻撃型潜水艦USSコネチカット (SSN 22) が氷を破って浮上している。2018年極地演習(ICEX) にて。. US Navy photo.


海軍が目指す次期高速攻撃型潜水艦は大洋での超大国間競争に復帰し、敵潜水艦の掃討を重視する。これは海軍の30年建艦計画から議会予算局(CBO)が読み取った内容だ。


海軍は新型潜水艦調達を2034年に始める予定だ。これまでのSSN(X)構想は現行のヴァージニア級の後継艦の位置づけだった。ヴァージニア級の最終形はヴァージニアペイロードモジュールVPMで垂直発射管でトマホーク等のミサイル発射本数をこれまでの12本から40本に増やしている他、音響含む技術上の進歩を取り入れているとCBOはまとめている。


ただし新しいSSN(X)構想はブロック7のヴァージニア級に代わり、魚雷搭載本数を増やし、VPMは搭載されない。VPMを初搭載したブロック5のヴァージニア級との比較では魚雷・トマホークが25本増えるとCBOは分析。


「具体的には海軍は次世代攻撃型潜水艦は水中速度を上げ、ステルス性を高め、同時にヴァージニア級を上回る魚雷本数を搭載すべきと考えている。全体としてシーウルフ級に近くなる」(CBO報告書)


冷戦後の世界でSSNは潜水艦ハンターの役割を引き続き期待されてきたが、情報収集偵察監視(ISR)ミッションの必要が高まり特殊部隊を発進回収する能力が重視されてきたとの報告もある。


「冷戦後の世界から大国同士の対決が起こりやすい戦略環境へ状況がシフトする中で対潜戦(ASW)をロシア、中国の潜水艦を相手に展開することが米海軍のSSN部隊に重要となってきた」(CBO)

シーウルフ級攻撃型潜水艦USSコネチカット(SSN-22) 2009年撮影。.US Navy Photo


新しいミッション構想では地上部隊を標的とする兵器運用は重視されず、CBOはSSN(X)はシーウルフ排水量9,100トンに近くなると見ている。この艦容だと建造費用は一隻55億ドルとCBOは見積もる。海軍の建造計画ではSSN(X)は一隻31億ドル近辺となっている。


これまで30年に渡る建造からヴァージニア級がSSN(X)の原型になると見られてきた。無人水中機(UUV)運用能力の追加でVPM能力を強化するはずでSSN(X)でもUUV発進能力の追加が噂されている。


「一から設計し直したほうがUUVの利用を一体で行える良い潜水艦につながるでしょう」と語るのはペンタゴンで潜水艦建造を取りまとめてきたマイケル・ジャベイリー中将だ。


新型SSN(X)が最初からUUV運用を取り込むのか不明だが、CBOの分析ではUUV運用は新型大口径次世代ペイロード用潜水艦が行う可能性があると言及している。これは次期戦略ミサイル原潜コロンビア級建造が最盛期をすぎる2036年に発注予定の艦だ。


2019年建艦計画では初めてコロンビア級のあとの新型潜水艦5隻の調達が盛り込まれている。海軍から新型艦の詳細発表はないが、艦容はコロンビア級に似てくるだろう。USNI NewsはSSGNのようなコロンビア級に続く建造計画を2017年11月に報じている。


A slide from a 2013 presentation from PEO Subs on the VPM. NAVSEA Graphic


「新型艦は現在SSGN(巡航ミサイル搭載潜水艦)が果たしている役目以外に別のミッションも実施するだろう」とCBOは予測している。
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SSN(X)が建造されても安価には実施できず、海軍の建艦計画は最初から妥当な費用を見込んだ形に修正すべきとCBOは見ている。355隻海軍の実現のためにも海軍は年間210億ドルの建艦予算が2048年まで必要としているが、CBOの海軍案分析では年間289億ドルがより正確な予測とある。SSN(X)建造は海軍とCBOの各予測の差額の40パーセントに相当する。


「289億ドルというと海軍が過去三十年間に得てきた建艦予算の平均より80パーセント多い数字だ」とCBOはまとめており、海軍の見積もりと比較している。


さらに海軍の建艦計画では今後30年で退役させる計画のスピードに合わないとCBOは指摘している。


「米海軍は2019年から2048年にかけて新規建造艦301隻の調達を計画しており、うち245隻が戦闘艦で56隻が支援艦だ。もし海軍が2019年計画で示した艦艇退役予定をそのまま実施すると、今後30年かけても355隻体制の実現は不可能だ」


アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦の供用期間を45年へ延長する案だと355隻体制が実現するが、CBOはその場合の艦艇構成は海軍にとって必ずしも希望通りにならないと指摘。
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「耐用年数延長により艦隊規模は2034年に355隻になるが一部艦級では不足も発生する」とCBOは解説している。■

2018年10月23日火曜日

ハリケーン襲来でF-22の10%が運用不能になった。21世紀の気候変動と軍事作戦体制の関係を考えよう



The Two Things Air Force F-22 Raptors Can't Defeat 米空軍F-22ラプターが勝てないふたつのこと

The weather and the fact that Washington does not have enough of them. 天候条件と配備機数が不足していることだ
October 20, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarJetsF-22


F-22ラプターは史上最強の戦闘機かもしれない。レーダー断面積はガラス玉程度で、緊急時にマッハ2.5で窮地を脱出できる。その速度では大気との摩擦でレーダー波吸収材が溶解する。だが今月に入り空軍はラプターの問題を見つけた。
フロリダ半島沿岸に位置するティンダル空軍基地はラプターパイロット養成の中心で29,000エーカーに広がる広大な施設に10月初めにF-22ラプター55機が325戦闘機航空団所属として配備されていた。これはラプターの三分の一の規模だ。空中戦闘の標的としてQF-16無人機、T-38超音速練習機があり、三菱重工Mu-2双発多用途機をAWACS乗員の訓練用にも使う。
10月9日にハリケーン・マイケルがカテゴリー4に成長し、風速は海抜14フィート地点で毎時130マイルから150マイルになった。ティンダル基地は海抜12フィートしかない。空軍は機体退避の余裕が数日間しかなかった。
ラプターの33機はオハイオ州のライトパターソン空軍基地に移動できた。基地人員及び家族の40千名はハリケーン直撃の前に避難して基地には若干の基幹要員が残った。
だが22機がハンガー内に残った。基地整備陣が直撃前に若干の機体を飛行可能に戻したが、うち一機が離陸中に作動不良となった他、部品不足のため他の機体から部品をとって飛行可能となった機体もあった。
ティンダル基地はハリケーン上陸地点となった。基地内に展示中だった機体重量14トンのF-15がひっくり返され、基地内住宅全棟が破壊された。トレーラーはマッチ箱のように破砕され、木々は寸断され金属屋根も無残に引き剥がされた。ティンダルの無人機用滑走路、フライトライン等は壊滅状態になった。

関連(翻訳はありません、あしからず、希望あればリクエストください)

Screenshot. U.S. Air Force

F-22、F-35の次に来る機体第六世代戦闘機の姿は

F-22やF-35など目じゃない、第六世代戦闘機は革命的な機体になる

F-22ラプターの唯一の問題はふさわしい相手戦闘機が存在しないこと

直後撮影の写真から第五格納庫の屋根が崩壊しドアが吹き飛び、その他小型格納庫でも窓が破砕していることがわかる。残骸下に少なくともF-22三機が見える。Mu-2とQF-16少なくとも5機がこの画像で見える

被害の実態は今後明らかになるが、直後の発表ではF-22のうち17機から19機が基地内にあったとしており、「全機無傷」で「飛行再開可能」とあった。では残る3機ないし5機が事前退避したのか基地内に残っていたのか不明だ。
マティス国防長官は報道陣に「修理可能か断言するのは時期尚早だが被害の直後評価は予想より良い」と語った。10月16日にはF-22の損傷は「心配していたほどではない」としハンガーがハリケーンに耐えたとした。ロッキード・マーティンが被害状況の調査中だ。
とはいえ、今回の損害はラプター生産が終了しているため気になるところで、同機生産再開が期待できない中で米空軍の作戦機材は120機しかなく、その他64機が予備機材、訓練用、試験用に確保されている。つまり、今回のハリケーンだけで現役機材の10%が運用できなくなったことになる。小規模のラプター部隊は運行費用が高い(毎時58千ドルでF-16の三倍)が、第5世代戦闘機は米軍としても最新の4.5世代戦闘機たるロシアSu-35や中国のステルス機J-20やJ-11Dへの対抗手段の中心として期待せざるをえないのだ。
飛行不能のラプターをティンダル基地から移動できなかったのは危機管理として失策だ。米第四世代ジェット戦闘機では飛行時間ごとにおよそ20人時間の整備が必要となるのが通常だ。ラプターでは40時間になる。しがたって機材多数を飛行可能状態に保ちたくても同時に基地要員多数が避難してしまえば兵站業務が困難になる。飛行不能機材を空輸あるいは地上輸送するためには数日に渡る準備や兵站装備も必要ですぐ実施できる仕事ではない。ハリケーン・マイケルの危険が現実になった時点で準備時間の余裕はなかった。
ただし今回の事案から貴重な教訓が得られ今後の計画立案の参考になる。例としてティンダル基地が沿岸にありハリケーン直撃を受けやすいことは既知の事実だ。以前のハリケーン・アルバート襲来時にはラプターをティンダルに配備してハンガー内に詰め込んでいた。国防総省では温暖化の影響を憂慮しており、不毛の地となった地域での紛争激化のみならず沿岸各地に点在する米軍基地への影響も心配のたねだ。
2016年度の調査報告では海面水位の上昇で海軍基地128箇所への影響が懸念されるとし、21世紀中に洪水の頻度は10倍になると結論づけている。基地四箇所が完全水没するという。ティンダル基地の経験から今後の計画立案では高価装備品のF-22他は過酷な天候条件が予想される地点に配備しない配慮が生まれることを期待したい。
また今回の事案からペンタゴンが作戦即応体制の維持に腐心している状態が浮き彫りにされた。ティンダルのラプター55機のうち数日前に飛行できたのは6割しかなかった。難易度の高いラプターは稼働率が59パーセントしかなく、F-15やF-16の70%、75%を下回る。
マティス長官は最低80パーセントを達成可能な目標として2019年8月までの実現を命じた。残念ながら短期間で数字を急改善すると長期的に装備の維持で悪影響が出かねない。
損傷を受けたF-22の修理は数年間かかり費用も数億ドル規模だろう。日本がF-2でほぼ20パーセント(18機)を2011年の大津波で損傷した例では7年間8億ドルで15機の復帰に成功した。ティンダル空軍基地の経験からペンタゴンが高額装備品の長期保存を最大にする策を考えつつ気候変動の影響とともに沿岸基地へ大損害をもたらす想定を十分考えることを望みたい。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.


MU-2が米空軍で供用忠? たしかに米国に同機は輸出されていますが、国内で用途配しになった三菱重厚の製品がまだ稼働中とは。米空軍に直接輸出された機体ではないはずで、おそらく委託業者の所有機と思いますが妙に興味を覚えてしまいます。

2018年10月22日月曜日

中国の水陸両用機AG600が初の離着水テストに成功

China-made large amphibious aircraft completes first water takeoff 中国開発の大型水陸両用機が初の水面離陸に成功

Source
Editor
Li Jiayao
Time
2018-10-20


AG600,が湖北省荊門市の貯水池で滑走中。AG600は荊門市で初の水面テイクオフに10月20日に成功した。 (Xinhua/Cheng Min)


国の国産開発大型水陸両用機AG600が10月20日午前、中国内陸部の湖北省荊門市Jingmenで初の離着水に成功した。
恐竜のニックネームが付くAG600は世界最大の水陸両用機だ。初飛行は2017年12月だった。
同日午前8時51分、機体は荊門の貯水池を離水し、14分後になめらかに着水した。
AG600は大型特殊用途民生機で森林消火や海上救難の用途を想定しており、中国の「大型機ファミリー」として大型輸送機Y-20、大型旅客機C919に次ぐ三番目の機体となる。
中国航空工業が開発し、国産開発ターボプロップエンジン4基を搭載した同機の機体サイズはボーイング737にほぼ等しい。最大離陸重量は53.5トンだ。
同機は陸上、水上の双方で運用可能で、機体下部はV字形となっており、耐波性を向上している。
森林火災に投入した場合は水12トンを一度に運び火災箇所に繰り返し向かうことができる。

海上救難任務では波高2メートルまでの離着水に耐える。海上捜索救難任務では50名を運ぶ。中国の海洋監視安全パトロール任務の支援も可能だ。■

なんでも大きいのが好きなのは米国と似ていますね。森林火災用などとは誰も信じておらず、南シナ海の人工島支援に投入されるのは時間の問題でしょう。2メートルの波までなら対応可能とありますが、US-2は公称3メートルまで対応できるので、性能が必ずしも優れいているわけではないようです。ただ南シナ海やインド洋での荒天状況が太平洋より少ないことは想像に難くないのでむしろペイロードと航続距離が気になります。しかしそんなに大きな貯水池なのでしょうか。てっきり沿岸の海面からのテスト飛行だと思っていました。


難航するKC-46事業で納入を急ぎたいボーイングに立ちふさがる技術問題はこれだ

KC-46は老朽化進むKC-135後継機として一日も早く稼働させたい機体なのですがいろいろな問題に直面して納期が遅れに遅れています。軍用機で好調なボーイングの脚を引っ張りかねない存在ですが、調達は固定価格制度ですので空軍は納期を除けば負担がない格好です。ただし、追加技術解決で発生した費用は日本が負担することになるのでしょうか。現在のところKC-46発注している外国は日本だけですよね。

 

The Air Force's struggling tanker program just hit another major setback 米空軍の難航する給油機更新事業があらたな難関に直面

Valerie Insinna,

Boeing's KC-46 aerial refueling tanker conducts receiver compatibility tests with a U.S. Air Force C-17 Globemaster III from Joint Base Lewis-McChord, in SeattleボーイングKC-46給油機がレシーバー互換性をC-17グローブマスターIIIと確認中。シアトルのルイス-マッコード共用基地上空。Christopher Okula/ U.S. Air Force/Handout via REUTERS/File Photo

KC-46一号機の初納入は今月中は無理になったと米空軍とメーカーのボーイングで共通認識していると空軍文民トップが認めた。
10月17日のブルームバーグとのインタビューで空軍長官ヘザー・ウィルソンが初納入という大きな出来事が再度延期になることを認めた。
空軍関係者とボーイング幹部が同日に未解決問題の解決方法を検討していた。問題が残るため空軍は同機の受領に踏み切れていない。
Defense Newsが新たに第一種不良事象二点がKC-46の問題一覧に加わり合計5点になったと伝えていた。第一種不良とは最も深刻な技術問題で解決方法がないものを指す。
US Air Force KC-46 Pegasus refueling tankerシアトルのボーイング・フィールドを離陸するKC-46Aペガサス, June 4, 2018. US Air Force

航空機動軍団司令官のメアリーアン・ミラー大将が9月18日に空軍は10月27日の初納入を期待刷ると述べていた。ただし、10月もほとんどすぎようとしているがいまだに確定の納入期日の発表はない。空軍は最低でもあと一ヶ月待たないとKC-46の初受領はできないようだ。
今月始めにボーイングCEOデニス・ムレンバーグはKC-46一号機は空軍に今年中に納入できると発言し、これまでの10月という表現を避けることでこっそりと納入予定を変更していた。
今週水曜日、ボーイング広報のケリー・カプランガムレンバーグ発言を繰り返し納入開始は今年末と述べていた。「ボーイングと空軍はKC-46納入時期を本日検討します。その結果に期待しております。本日の検討会は当社の目指す空軍との建設的な対話の一環として必要不可欠な新型給油機の納入を今年第四四半期中に実現させようというものです」
同機事業では遅延の連続がここ数年続いている。ボーイングは当初は完全な機体18機を2017年8月に納入予定だったが、その後繰り返し延期してきた。
ウィルソン長官はじめ空軍関係者は繰り返しボーイングが日程の見積もりがあまりにも楽観的すぎると批判してきた。空軍はボーイングと協議し、初納入予定を10月に一旦確定していた。
KC 46 PegasusKC-46ペガサスがA-10サンダーボルトIIに燃料1,500 ポンドを給油した。July 15, 2016.US Air Force
ブルームバーグのインタビューでウィルソン長官は最新の日程遅延の理由として連邦航空局FAAによるKC-46の追加型式認証が遅れていることをあげており、未解決問題だとはしていない。「これについて怒りの感情はない。当方はボーイング側とともに解決策の実現に向かっている」
ボーイングはFAA型式証明を9月に交付されているが、これも予定より数ヶ月遅れのことだった。同社は軍用型式証明の取得を空軍から待っており、軍用独自の装備品を対象に機体納入開始前の交付を受けたいとする。
米空軍は最低でも179機のKC-46を調達予定だが、最新の国防戦略を実現するには給油機飛行隊は最低14個の追加が必要としている。このことから給油機の総機数が二倍になる可能性が生まれている。
US Air Force KC-46 Pegasus refueling tankerワシントン州エヴァレットのプレインフィールドを離陸するKC-46ペガサス, September 25, 2015. U.S. Air Force photo/Jet Fabara
空軍は第一種不良点が未解決の機体を受領することは可能だが、関係者は及び腰だ。
未解決の第一種不良は次の五点。
  • 遠隔視認装置RVSの視野問題。ボーイングはソフトウェア改良で解決できると見ている。
  • KC-46のブームが被給油機の機体に損傷を与える問題。ボーイングと空軍はRVS問題が解決すればこれも解決できるとみる。
  • 機体中央に配置されたドローグが給油中に不意に外れる問題。ボーイングはこれもソフトウェア改良で解決可能と見る。
  • .飛行制御スティックが給油中に荷重を与えるが操作員には情報が表示されない問題。
  • 給油中にブームが極端に硬くなる問題。
空軍とボーイングからは上記のうち最後の二点については解決の方向性の発言はない。■

2018年10月21日日曜日

歴史に残る機体18 コンベアB-36ピースメイカー

歴史に残る機体18はコンベアB-36です。恐竜のような存在ですが、この時代によくここまでの機体を作ったなという感じですね。大きいことが良いこと、との考えの典型ですが、時代の先陣を切ったとのか、それとも早すぎたのか、失敗作かと評価が分かれそうです。

 

Meet the B-36 Peacemaker: The massive bomber that could fly from the US to Russia but never dropped a bomb in anger これがB-36ピースメイカーだ。米本土からロシアへ飛行可能な巨大爆撃機は実戦で一発も投下していない

Logan Nye,


B-36 Peacemaker Air Force bomberB-36 一機の運行にはこれだけの人員装備が必要だった. US Air Force

二次大戦中の設計で終戦直後に完成し13年間共用されつつ実戦に一回も投入されない機体があった。
見方次第だが抑止力の成功例という一方で、果たしてそのとおりなのかとの疑問も残る。
コンベアB-36ピースメイカーは巨大な機体で爆弾燃料を搭載しない状態で278千ポンド(126トン)、爆弾86千ポンド(4トン)と燃料満載で410千ポンド(186トン)になった。通常爆弾、核爆弾双方が使えた。
設計作業は1941年に始まり、当時の米国指導層は国内基地を発進しベルリンを爆撃後に本国へ戻れる機体を求めたのだ。
だがB-36試作機の完成は日本降伏の6日後で第二次大戦は終結していた。初飛行は1946年8月8日と終戦からほぼ一年後になった。
B-36 Peacemaker first flight bomber Air ForceB-36ピースメイカー. US Air Force


最終設計で翼幅は230フィート(70メートル)でプロペラエンジン6発式になった。プロペラは主翼後方に装着され機体を推進した。当時としては史上最大の機体になった。
384機が生産され、戦略爆撃抑止力の新時代を開き、敵に全面破壊の睨みを利かし、こちらに戦争を仕掛けることを断念させた。B-36は平時の空に飛ぶ機体となった。
同機は一発も実弾を投下していない。大型核爆弾を搭載してメイン州からレニングラードまで飛び無給油で本国に戻れる性能が理由だったのだろう。
ただし訓練や演習での爆弾投下はあり、事故で投棄したこともある。1950年2月に一機のB-36で核爆弾をブリティッシュ・コロンビア付近で投棄せざるを得ない事態が発生した。エンジン三基で火災が見つかったためだ。爆弾は不活性の訓練用だった。
1957年にはマーク17核爆弾をニューメキシコ州アルバカーキで誤投下した。核爆弾内の通常火薬が爆発したが核分裂物質は幸い点火されなかった。
もっとも異常な事態は飛行中の事故よりも計画済みの実験だった。1942年にマンハッタン計画の科学陣から核動力による航空機構想が生まれた。機内に原子炉を搭載し、燃料タンクを廃するのだ。
Convair_XB 36_main_landing_gear_detail_061128 F 1234S 028B-36初期機材の降着装置は一輪式だった. US Air Force


その後16年間にわたり陸軍、その後空軍は膨大な時間と資金をかけて構想を実際に実験した。1951年に試験用原子炉を搭載可能な唯一の機体としてB-36が選定され、コックピットは乗員保護のため改装された。
.NB-36と改称された機体は核動力爆撃機になった。テスト飛行は47回行われ、原子炉から動力を得たが、実際は通常燃料で飛行し科学者技術者が飛行中の原子炉稼働を実証したにとどまった。一方で通常型機材の技術が進歩し、核動力爆撃機の必要性が減り、開発は1958年で一旦終了した。
同機は短期に終わった「寄生戦闘機」構想の実証にも使われ、爆撃機からの援護戦闘機運用の可能性を試した。
巨大機が目標に向かえば敵のレーダーや戦闘機に見つかる。その場合に爆弾倉から戦闘機を発進させるのだ。戦闘機パイロットは敵と交戦し、母機に戻る構想だった。
B-36母機はその後標的に向かうはずだった。だが空中給油の実用化で構想は一気に陳腐化し、B-36のような巨大燃料タンクを備えた巨大機の必要性も薄くなった。小型爆撃機でも離陸後に敵防空網の外側で給油を受ければそのまま攻撃に移れる。
B 36aarrivalcarswell1948B-36初号機がテキサス州フォートワースのカーズウェル空軍基地に到着しB-29ストラトフォートレスと翼を並べた。 June 1948. US Air Force


B-36は一度も敵を攻撃していない。同様の事例はB-47ストラトジェットやB-58ハスラーでも見られ、ジェット機となった両機はB-36同様の任務を期待されていた。
各機は米国内基地を発進し大型爆弾を投下してから国内に戻る構想だった。各機とも核爆弾搭載仕様ながら一発も敵に投下していない。だからといって各機が失敗作だったとは言えない。
各機が担った戦略抑止効果は重要だったが通常爆撃任務には不向きな機材だった。その重要性から撃墜されては困る機材だったのである。実戦投入がためらわれる機材だったわけではなく、抑止任務に特化したあまり通常作戦に投入できない機体になっていたのである。
現代のB-1やB-2ステルス爆撃機では核抑止任務のみならず搭載能力、速力、ステルス性能を十分に搭載しイラク、アフガニスタンその他でもいかんなく爆撃能力を実施している。
米国が中国やロシア、北朝鮮と開戦となればB-36後継機というべき現在の各型を投入するはずだが核爆弾を搭載せず通常爆弾で性能を発揮させるだろう。B-1では核運用能力を廃止し国際条約に適合させている。
ということでB-36他同時期の各機の成功に乾杯したい。だが現在の爆撃機が先人の業績の上に生まれたことを忘れないでほしい。■


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