2020年3月22日日曜日

画期的な小型ターボジェットエンジンの登場で装備品の様相に変化が生まれる

巡航ミサイルのエンジンはもともと小型でしたが、さらに小型化を目指しているのですね。ただしスウォームに応用するにはもっと小型化が必要なのでしょう。小型化といえば日本の得意分野ですね。クレイトスはここに来て登場頻度が高くなってきました。

空軍は低コスト巡航ミサイル開発のため低コスト小型エンジンの開発を進めているが、同エンジンは広く応用されそうだ。

米空軍は画期的な小型・低コストのターボジェットエンジンのテストの成功を発表した。テストはグレイウルフGray Wolfと呼称される事業の一環で安価な巡航ミサイルの実現を狙う。

テストに成功したのはテクニカルディレクションズTechnical Directions Inc. (TDI)のTDI-J85エンジン。同社は無人機メーカー、クレイトスの事業部。空軍研究実験本部(AFRL)がグレイウルフに携わり、F-16ヴァイパーに同エンジンを搭載した写真を公開した。写真ではグリフォンエアロスペースのロゴが写っている。AFRLは2017年にグレイウルフ事業を発表し、ノースロップ・グラマンロッキード・マーティン両社にテスト機材の提供で契約交付していた。

「今回のテスト成功で同エンジンさらにウェポンシステム全体への信頼性が増進した」とAFRLがまとめた。「TDI-J85開発は巡航ミサイル開発と並行作業で難題だったがAFRL、TDI、ノースロップ・グラマンとの共同作業が大きな成果を示した」

USAF
TDI-J85を推進手段に導入したノースロップ・グラマンのテスト機材がF-16ヴァイパーの主翼下に搭載された。

TDI-J85は推力200ポンドで本体重量はわずか28ポンド。これに対しウィリアムズF107ターボファンエンジン(AGM-86B空中発射式巡航ミサイルALCM他トマホーク対地攻撃巡航ミサイルに採用)の推力は600ポンドで重量は67ポンドある。

TDI
TDI-J85エンジン


「TDI-J85エンジンは飛行中始動に成功したほか、高高度での作動も実証した。同エンジンは性能要求を満たし、燃料消費率も予測通りの実績を示した」「累計作動時間から設計耐久性へ信頼度が高まった」とAFRLは発表。

「エンジン設計では最終価格と整備性に主眼を置き大量生産を想定した。エンジン性能が実証された」「この大きさ、価格のエンジンでこの高度で作動に成功したのは初」(AFRL)

AFRLはTDI-J85の単価を発表していないが、上記F107では2014年時点で190千ドルだった。

TDIは小型ジェットエンジン技術の開発に注力しており、2013年に空軍予算150万ドルを交付され、「小型低コスト推進手段」の名称で開発を開始していた。契約は2016年まで継続され、その後グレイウルフ事業が立ち上げられた。

低コストで燃料消費率が高いエンジンが同事業の中核で空中発射式巡航ミサイルの全体コスト引き下げを目指す。最新の2021年度予算要求ではAGM-158A共用空対地スタンドオフミサイル(JASSM)とAGM-158BJASSM-射程拡大型(JASSM-ER)の概算単価は126.6万ドルで批判の的となっていた。

コスト削減以外に燃料消費効率が引き上がれば搭載燃料を増やさず長距離を飛翔でき、燃料搭載を減らした分だけペイロードを増やしても有効射程が犠牲にならない。

空軍は「250カイリ超の巡航性能」を有する低コスト巡航ミサイルの実証をめざす。この距離はJASSMの有効射程に近いが、JASSM-ERや今後登場するAGM-158DのJASSM-XR、AGM-86BALCM、トマホークの性能より短い。

エンジン改良は空中発射式巡航ミサイル以外にも可能だ。TDI-J85はその他の新世代装備、おとり、無人機に応用できる。

空軍が目指すグレイウルフの全体像ははっきりしない。2019年6月に空軍は当初想定していたネットワーク化大量投入小型装備への応用は断念しゴールデンホードGolden Hordeと呼ぶ別事業を立ち上げると発表した。

USAF
グレイウルフ事業の当初の説明資料

グレイウルフ事業が終了しても、画期的なTDI-J85が別事業に応用されるのは確実だ。TDIは米軍の別契約で低コストかつ低燃費エンジンの開発に取り掛かっている。

いずれにせよ、空軍が画期的な低コスト巡航ミサイル開発をめざしているのは確実で、その他装備の開発にも大きな影響が出そうだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

Air Force's Gray Wolf Program Tests Game-Changing Small Low-Cost Jet Engine
The Air Force funded the development of the engine as part of a project to develop low-cost cruise missiles, but it could have wider applications.
BY JOSEPH TREVITHICKMARCH 20, 2020


2020年3月21日土曜日

イスラエルのイラク原子炉空爆(1981年)から学べる点とは---イラン攻撃はあり得るのか

イラクがこの時点で脅威だったのは事実ですが、イスラエルの独断での行動が非難対象になったのはなんとも皮肉です。当時と違い現在は国連など相手にせず単独行動をとっても批判の量が減っていると思いませんか。さて、イラン攻撃が何度も話題に登るイスラエルですが、本当にテヘラン攻撃に踏み切る可能性はあるのでしょうか。マサダコンプレックスや大戦中の大量虐殺の記憶が生々しいイスラエルの人たちの思考方法は実に明確で、自信に満ちていますね


どの国も動かない中、イスラエルが作戦を実施し、核兵器製造用と思われたイラクの施設を空爆した。
イラクがサダム・フセイン独裁体制のもとで核兵器の入手を画策していることを1970年代末に国際社会は知るに至った。発電用の原子炉購入を隠れ蓑にしようとしていた。当時のイラクは領土拡張の野望と、「シオニストの本拠地」イスラエルへの敵意を隠す素振りもなかった。フセインは1968年にイラク大統領の座に上り詰める前20年にわたりバース党で戦闘や暗殺の現場に立っていた。
大統領に就任したフセインはイラクを核保有国にして、イスラエルが保有しているとされる核兵器に対抗せんとした。フランスと締結していた条約を利用し1975年にフランスから原子炉をチグリス川のほとりアル-ツワイタ研究施設に建造するため資材を購入することとした。ここは首都バグダッドからわずか12マイルしか離れていない。フランスは同時に濃縮兵器級ウラン72キロの売却も承認し、原子爆弾一個分の製造が可能となる量だった。専門家は原爆完成を1980年代初頭と見ており、イスラエル首都のテルアビブへ投下すれば10万名が死亡すると推定した。
世界はこの売却に警戒した。米国は英国と外交上の懸念を示し、国連の国際原子力エネルギー機関はイラクの核開発事業への査察を増やした。だが西側はアラブ世界の排除には気乗りせず、1973年の石油禁輸措置の記憶が新鮮だった。そうなるとフセインのめざす核武装でまっさきに脅威を受けるイスラエルは独自に対応が必要となった。その第一波が1979年4月でイスラエル情報機関モサドの工作員がフランスからイラクへ移動途中の炉心部をラ・セーヌ=シュル=メールで差し押さえた。工作員は倉庫を爆破し、炉心部品を損傷させた。イラク関係筋はフセインが怒り狂うのを恐れ、損傷した部品の受け取りに合意した。
このあと15ヶ月に渡りイラクやアラブ各国で主要原子力科学者がイスラエルにより暗殺され、イスラエル科学者もヨーロッパ訪問中に暗殺されている。そのやり口も喉を切り裂く、自動車事故を装う、流感のような疾病に急に罹患する、血液に毒を注射するなど各種で、イラクの研究活動は減速したがフセインは進展を強く求めた。原爆製造を聞かれ、「ラクダに乗ることしか知らない国民がどうやって原爆を作れるんだ」と大統領は白白とのべていた。一方でフランスには93%濃縮ウラン72ポンドの引き渡しを求め、実現するまでは支払いせず、石油輸出も差し止めると脅かした。フランスは契約履行に合意した。
イランイラク戦争勃発から9日後の1980年9月30日に第二波がきた。イスラエルはF-4Eファントム二機編隊でイラクを空爆し、建設途中の原子炉を標的とした。ファントムはロケット2発を発射し原子炉格納容器を損傷したものの、完全破壊に至らなかった。現場にいたフランス、イタリア建設要員は避難し、工事は止まった。
その後、イスラエル首相メナヘム・ベギンは次の選択肢を検討し、原子炉空爆もその一つだった。実施すれば大きな影響が出る懸念があり、さらにイスラエル-イラクを往復すると1,100マイルを超え、イラクがイランと戦闘中とはいえ、報復攻撃も十分ありえた。さらに重要なことにベギンはエジプト大統領アンワル・サダトが気がかりだった。1979年キャンプ・デイヴィッド和平条約である。攻撃実施はエジプトとの条約違反にはならないが、エジプトは1982年4月までにシナイ半島からのイスラエル撤退を求めており、その動きは予測不可能だった。

バビロン作戦
ベギンはリスクを秤にかけ、イラクが核武装したらイスラエルには耐えがたいので、先制攻撃は実施の価値があると判断した。急襲作戦が最良と見たのはイラクがイランとの地上戦継続で弱体化していると判断したためだ。原子炉運転の開始前のため、攻撃しても放射能汚染はバグダッドまで広がらないと考えた。1981年3月末にモサドが外国人作業員の帰国が始まったと報告してきた。また原子炉建造工事の再開も判明した。ベギン政権は外科的空爆の実施を5月はじめに設定した。暗号名はバビロン作戦に決まった。
モサドはフランスが濃縮ウラン全量をイラクに発送したのを把握した。遅れたが実行日は1981年6月7日日曜日の日没時間近くと決まった。日曜日にしたのは原子炉工事にあたる外国人作業員100-150名が現場を離れると判断したためだ。さらに日没時間を選んだのは万一撃墜パイロットが発生しても戦闘捜索救難チーム(CSAR)のCH-53ヘリコプターで夜通し捜索活動が展開できるからだった。午後3時にCH-53各機が待機位置につく。ヨルダン国境から100マイル西の地点だ。乗員にはミッション内容は告げられず、捜索隊は各国の領空に侵入してもよく、パイロットを救難するとだけ命令された。4時に、米国製F-16の8機編隊がシナイ砂漠地帯のエチオン航空基地を離陸した。370ガロンの燃料タンクを追加搭載して飛行距離を伸ばした。
機体重量を考慮しサイドワインダーミサイルは2本に減らし、ジャミング装置も取り外した。それでも離陸重量は設計仕様の2倍程度になった。空爆用にMK-84爆弾(2,000ポンド)2発を搭載し、爆撃工程は極力単純化した。爆撃隊援護にF-15の8機編隊が付き、イラクのレーダー妨害もこなした。またボーイング707指揮統制機がイスラエル上空を周回飛行し、イーグルが通信を中継した。
各機は途中でアラブ航空基地7箇所を迂回した。ヨルダンのF-5E、イラクのミラージュ4000、MiG-23、MiG-25による迎撃を考慮する必要があった。アル-ツワイタには対空火砲陣地やSAM-6が配備されていた。シナイ半島を離陸した攻撃隊はアカバ湾を東に横断し、サウジアラビア北部を通過し、ヨルダン国境付近でイスラエルは対空レーダーが有効でないと把握した地点を通った。イスラエルにはサウジアラビアが当日稼働させる米製空中早期警戒機は一機のみとの情報も入っており、警戒対象はペルシア湾とわかっていた。無線交信は予め設定した通過地点五箇所のみとし、交信も英単語のみとした。英語が航空界の共通語なので傍受されても民間航空の交信と理解されるだろうとした。
8名のF-16パイロットは集中訓練を受け選抜され、二組に編成された。
編隊は高度100フィートを360ノットで飛行し探知を逃れた。サウジアラビアを横切り、バグダッドへ進路変更した。攻撃は数分で終わった。F-16は二機ずつで、5,000フィートまで4秒で上昇し、急降下して原子炉側部に爆弾投下した。事前練習通りだった。一発目が命中すると建屋に穴が開き、2発目以降が原子炉を直撃した。16発のうち14発が原子炉を精密に攻撃した。空爆を目撃したフランス人作業員はイスラエルの精密攻撃は「驚くべきもの」と表現している。空爆で作業員8名が死亡し、1名はフランス人技術者だった。

「許しがたい近視眼的侵略行為」
攻撃は2分間で終わり、大型タムズI型原子炉が破壊された。小型のタムズII原子炉の精密装置と工事基盤が使えなくなった。イラクの対空陣地要員は空爆時に食事中でレーダーは切っていた。反応が遅れたためSAM-6は一発も発射されなかった。逆に対空火砲の巻き添えでイラク地上部隊に死者が出た。予想通りサウジのAWACSはペルシア湾を向いており、イスラエル部隊は探知されなかった。攻撃隊はエチオン基地に午後7時に帰投し、復路でも敵機との遭遇はなかった。この時のパイロットの一人イラン・ラモンはイスラエル初の宇宙飛行士になり、2003年2月のコロンビア宇宙シャトル事故で死亡している。
世界はイスラエルを一様に非難した。普段はイスラエルに心情的に近いレーガン政権も今回は非難の側に回った。米国連大使ジーン・カークパトリックは空爆を「ショッキング」と表現し、ソ連のアフガニスタン侵攻になぞらえた。フランスはイスラエルの行為を「受け入れがたい」とし、現場で生命を落とした自国技術者を英雄とたたえた。英国は「国際法の深刻な違反」と糾弾した。ニューヨーク・タイムズ社説はイスラエルの抜き打ち攻撃でフランス製原子炉をバグダッド近郊で破壊したのは「許しがたく近視眼的な侵攻」と決めつけた。国連安全保障理事会決議はイスラエルによる攻撃を全会一致で非難した。とはいえアラブ世界では抗議の声が高かったものの、イスラエルが報復攻撃を受けることはなかったし、国連決議もイスラエルを制裁しなかった。(米国が拒否権をちらつかせたためである)ロナルド・レーガン大統領は今回の事件に対していたずらっぽく、「血気盛んな坊やはいつまで立っても変わらない」とだけ述べた。
サダム・フセインは被害者面をして「平和愛好国すべてがアラブに援助を差し伸べており、ゆくゆくは核兵器を取得」し、イスラエルの攻撃的な傾向を打ち破りたいとした。同時に当日のアル-ツワイタでの防御のお粗末さへの批判をかわそうとイスラエル攻撃にフランスが関与していたと主張した。その数カ月後に、爆撃現場にあらわれ、ピストルを腰にイラク科学技術陣に「こんなことで怖気づいてたら、本当の撃ち合いに対応できない」と告げ、お説教はしたものの懲罰はしなかった。おそらくその理由として、原子炉を地下建設する案を自ら却下したことがあったのだろう。
国際世論は厳しかったがイスラエルは屈しなかった。「イスラエルに謝罪の理由がない」とベギンは空爆後の記者会見で述べた。ベギンは「イラクはイスラエルに三発でも四発でも原爆投下することに躊躇しないはず」と発言。3週間がたち、ベギン率いる強硬派リクード党は世論調査で圧倒的支持を得て、さらに数カ月後に米国がこっそりとF-16の販売再開を持ちかけてきた。米軍が1991年、2003年にイラク侵攻をしたが、イラクの核報復攻撃はまったく懸念されずにおわった。イスラエルによる果敢なアル-ツワイタ空爆のおかげだった。■

この記事は以下を再構成したものです。

How Israel Literally Blew up Saddam Hussein's Nuclear Weapons Program

A good thing too.
March 21, 2020  Topic: History  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: IsraelIDFIraqIraqi Nuclear ProgramNuclear Proliferation


(ほぼ)万能のSM-6が米海軍の主力ミサイルとなる

このたび自衛艦として就役した新型イージス艦「まや」もSM-6運用可能となっています。では、SM-6とはどんな存在なのでしょうか。以下をご参照ください。

新鋭のSM-6は各種ミサイルの最良の部分を応用し、あらゆる標的に対応可能だ。
米海軍は艦船戦闘力の増強がねらいの長期計画の実現をめざしている。
構想で大きな柱とされるミサイルがSM-6で、対空ミサイルからほぼすべての用途に投入可能となった。
米海軍は長年供用中のトマホーク巡航ミサイルの最新型を「ブロックV」とし、対艦弾頭、対地弾頭の二形式があると発表。▶トマホークはレイセオン製品でワシントンD.C.で論争の種となった。オバマ政権は主力対地攻撃手段として1980年代から供用中の同ミサイルの生産を中止し予算節約する案を提起した。▶だが議会は同案を否定し、単価100万ドルでトマホークを購入継続させた。
その裏で同じレイセオン製品で低知名度のSM-6が主役となる。海軍の水上艦潜水艦が搭載中の主要ミサイルは10型式あるが、海上、空中、さらに大気圏境界部分すべてに対応できるのはSM-6のみだ。
海軍は2026年にかけてSM-6を1,800本合計64億ドルで調達する。イージスレーダーシステム搭載艦に導入する。2019年末現在で米海軍のイージス艦は合計41隻ある。▶艦船攻撃、航空機迎撃に加え弾道ミサイル対応まで可能なミサイルはSM-6のみだ。改良を加えればSM-6で対地攻撃さらに潜水艦まで標的にできる。「一本のミサイルを一本の発射管から運用して各種効果を期待できる」と戦略国際研究所のミサイル専門家トーマス・カラコが述べる。▶SM-6はフランケンシュタインの怪物のような存在で、レイセオンが別のミサイルから流用した部品を搭載している。シーカーと炸薬弾頭は高性能中距離空対空ミサイルAMRAAMから、本体は旧型SM-2のまま使っている。
SM-6ブロックIは2013年に供用開始され、航空機・巡航ミサイルへの対応を任務とした。「その後に機能が追加され弾道ミサイルの最終段階迎撃手段となった」とカラコは解説している。
センサーを改良したのがブロックIAで、2016年の試射で水上目標に命中させ、対艦ミサイルになった。▶さらに進化する。「シーカー、弾頭部の改良で対地攻撃手段となる」(カラコ)▶戦略予算評価センターの海軍分野アナリスト、ブライアン・クラークによれば海軍は弾頭部分を魚雷に変え、ロケット本体から分離させれば対潜水艦型にもなる。この機構は冷戦時にASROCとして実現している。
そんなSM-6だが大幅改良しないと実行不可能な分野がある。
シーカーは大気中と宇宙空間で作動が異なる。大気との摩擦のためシーカーにカバーをつけている。このカバーをセンサーで探知不可能とするため、使える素材の種類は限られる。▶だが宇宙空間の標的は別だ。まず温度だ。大気との摩擦がないため、ミサイルのシーカーは真空の低温度で目標捕捉できる改良が必要だ。▶シーカー部分を開放型、閉鎖型の2型式にして閉鎖型のSM-2、SM-6を大気圏対応用に、開放型シーカーのSM-3を大気圏外対応に使い分けているのはこのためだ。SM-6を弾道ミサイル対応に大気圏外に投入するとSM-3と同等になる。▶基本形のSM-6でここまで対応させようとすると限界がある。改良型SM-6は宇宙空間を除きあらゆる場面に対応できる。
トマホーク論争が見出しを飾ったが、米海軍がハイテク戦に向け再整備する中でSM-6に注目が必要だ。■

この記事は以下を再構成したものです。

Meet the Navy's Latest Cruise Missile: The SM-6 Is a Crazy Hybrid

Here's what it is made of.
by David Axe 
March 20, 2020  Topic: Technology  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: NavyU.S. NavyMilitaryTechnologyWorldSM-6

2020年3月20日金曜日

C-17をミサイル運用機に転用する柔軟な思考はどこから生まれるのか

限られた資源の中でどうしたら戦力を最大化できるか、を考えると過去の延長線上に答えはなく、全く新しい発想が必要ですね。今回の事例は目的(兵装搭載量の少ないステルス戦闘機を補う兵力を最前線に実現する)から考えた結果で、この発想は「ブレイクスルー思考」につながります。ご関心の向きは日本企画計画学会のウェブサイトhttp://www.bttnet.com/jps/index.htm
をご参照ください。
国は将来戦への対応を模索している。そのひとつが輸送機に攻撃能力を付与する構想だ。
米空軍は「戦闘用途機材」の定義を見直し、弾薬多数を投入する方法を検討中だ。その中で輸送機を転用する案が浮上している。
空軍が「実験を企画中で上層部が重武装機構想の進捗で説明を受けた」とAir Force Magazineが2019年11月に伝えていた。
同構想は2016年に初めて検討された。「複数エンジン」搭載の重武装機は大量の「ネットワーク対応可能で半自律型兵器」を搭載し、他装備が把握した標的に発進させると空軍は構想を映像で発表していた。
ペンタゴンの戦略戦力整備室が重武装機構想を打ち出した。構想では「最古参機材をあらゆる種類の通常兵装の空中発射台に変える」とあった。アッシュ・カーター国防長官(当時)は「重武装機は大型空中弾倉の役目となり、第5世代機向けの前方センサーであり標的捕捉手段にもなる」と2016年に述べていた。
対象機にB-52を転用するとの見方が強かった。1960年代製のB-52は「旧式」かつ「エンジン複数」を搭載機材にあてはまるためだ。
重武装機構想の前に空軍はハイエンド戦を想定しB-52に長距離兵器の発射機能を想定したことがある。重武装機構想はB-52の運用概念の延長線上で同機のセンサー、通信機能、ハードポイント、兵装庫だけ手直しすればよい。
ただ記事では輸送機の改装でこの役目がこなせると指摘していた。だがC-17だと大幅改装をしないと兵装発射ができない。またC-17は電子対抗措置も脆弱だ。
「C-17は大規模作戦の開始時に高い需要となる」とマイク・ガンジンガー(ミッチェル航空宇宙研究所アナリスト)は述べる。「そのような機材を部隊展開用でなく攻撃に投入するのでは理屈に合わない」
だが空軍が重武装機取得に向かうことは理屈にあう。F-22やF-35が機内搭載できる兵装は少量だからだ。
F-22の標準装備は空対空ミサイル4本と1,000ポンド爆弾二発だ。F-35では空対空ミサイルはわずか2本で2,000ポンド爆弾二発を機内に搭載する。これに対し、ロシアや中国の戦闘機はステルスを気にしなければミサイル、爆弾を10発以上搭載できる。
米戦闘機部隊は敵勢力より少ない兵装で戦闘に臨むことになる。そこで重武装機が前線後方からミサイル多数を発射できれば、兵装量の不足を補う効果が生まれる。
重武装機構想発表の直後に米空軍の戦闘形式に詳しいブライアン・ラスリーは「奇抜だが全く新しい構想だ」とThe Daily Beastに述べた。「だが戦闘機が不足気味でしかも搭載兵装量が少ないところに敵が戦闘力を高めている中、ペンタゴンはなりふりかまわず新構想を試さざるを得ないと考えているのだろう。鈍足で非ステルスの大型爆撃機で高速ステルス戦闘機を支援するということか」
結局、爆撃機でなくてもよいのだ。■

この記事は以下を再構成しています。

Missile Plane: How the C-17 Cargo Plane Could Be Modified to Carry Deadly Weapons

It would be a powerful weapon.
by David Axe 
March 19, 2020  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: C-17Arsenal PlaneMilitaryTechnologyAir Force


2020年3月16日月曜日

Su-35が米軍の脅威となる理由、ロシア・中国だけではない



戦末期の米軍ジェット戦闘機はソ連機材各種に対し大きく優位だった。1988年登場のSu-27も例外でなく、F-15の相手にならなかった。だがSu-27最新版は真剣に対応すべき脅威だ。       
スホイSu-35SはSu-27の改良型第二弾で前身のSu-35M同様の単座双発高度操縦性を誇る機材だ。35S型は大型カナード翼がついて、ユーロファイターのように見える。NATO呼称「フランカーE」の同機は第4++世代機としてF-15イーグル、F-18、さらにF-35ライトニングIIも油断できない対決相手だ。
Su-35の武装にはGSh-30-1(30m自動機関砲、150発発射可能)以外にペイロード17,630ポンドまでを外部ポイント12箇所に搭載する。空対空、空対地、対レーダー、対艦の各種ミサイルや、TV誘導、レーザー誘導、衛星誘導の爆弾を搭載する。これに対し米空軍のF-22の主翼下強化ポイントは4箇所しかなく、内部兵装庫は3発しか搭載できない。
サトゥルンAL-41F1Sターボファン双発の推力でほぼ全機の第4世代機を上回る操縦性で危険を離脱できる。最高速度 1,550 mph、上昇限度59,050フィートで同機は重武装かつ高速力の機材だ。
ただし国防アナリストにはSu-35最新型はロシア第5世代機のスホイPAK FA(Su-57)の生産が軌道に乗るまでのつなぎに過ぎないとの見方がある。
ロシア空軍以外にも同機を運用する国があり、域内のパワーバランスの変更につながる。もともと同機は輸出仕様だったが、ロシア空軍が2009年にローンチカスタマーになった経緯がある。
中国人民解放軍空軍(PLAAF)、インドネシア空軍が同機を発注しており、うち中国は初期納入4機を2016年に、10機を2017年それぞれ受領し、24機まで増える。Jane'sは25億ドルの商談と見る。中ロ合意には支援機材、予備エンジンも含まれ今年中にすべて実施となる。
中国がSu-35初の海外導入国となり、米国の敵勢力に制裁対応する米議会措置の立法(CAATSA)で中国は制裁対象となった。それでもPLAAFはSu-35を2018年4月から部隊編入している。
昨秋にトルコも同型機36機の導入でロシアと最終商談に入った。この動きはトルコがF-35事業から除外されたためで、もとはといえばNATO加盟の同国がロシアからS-400防空ミサイル装備を購入したためだ。
その他導入希望国にはアルジェリア、エジプト、インド、アラブ首長国連邦がある。ロシア空軍ではつなぎ機材だとしてもSu-35は世界各地の空の優位を覆しかねない機体になる。■

この記事は以下から再構成しています

Russia's Su-35 Should be Seen as A Real Threat. Here's Why.

Can it take on the best in the U.S. Air Force?
March 14, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: RussiaSu-35Air ForceMilitaryNATO


2020年3月15日日曜日

戦闘機像に大きな転機がやってくる:忠実なるウィングマンの導入時期を決めたACC

ローバー次官補提唱のiPhone方式の計画的陳腐化が一番実現しやすいのが無人機の分野でしょう。F-35のように40年供用を前提としたビジネスモデルではとても対応できません。いよいよ有人戦闘機が終焉を迎えるのか、スカイボーグが急発展するのか、それとも筆者が支持する大型戦闘航空機の登場につながるのか、2020年代は大きな転換点になりそうです。

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F-16ブロック25/30の後継機が低コスト消耗品扱いの無人機になる可能性がある。その例がクレイトスXQ-58ヴァルキリーだ。Credit: Kratos

空軍は最先端技術に明るい民間専門家を招き、パイロットや隊員向けに技術革新の最新知識を普及させている。だが2月28日の航空戦シンポジウム会場にやってきたイーロン・マスクには別の考えがあった
スペースX、テスラを立ち上げてきた本人が空軍協会の会場に到着すると空軍の戦術航空戦力の中心とされてきた戦闘機に対し、「ジェット戦闘機の時代は終わった」と述べ、聴衆を挑発した。進行役のジョン・トンプソン中将は即座に話題を切り替えた。
その後、マスクはAviation Weekにツイッターで返答し、真意は戦闘機は今後も残るが、パイロットが搭乗する必要はないと言いたかったのだとした。「競争相手は無人戦闘航空機で、人員で遠隔操縦されても、自律運航能力で操縦性が補強できる」。
マスクの航空戦力に関する意見は多少加減して聞くべきだろう。本人の企業群は宇宙空間への進出、自動車産業、鉱物採掘にあたっている。マスク自身に航空業界での経歴はない。
空軍上位関係者にはマスクと異なる見解がある。ウィル・ローパー空軍次官補(調達、技術、兵站)は将来の空軍力に自律運航機材を多数配備し、有人機を補完させるべきと主張している。航空戦闘軍団(ACC)司令のジェイムズ・ホームズ大将は無人戦闘機材の編入を2025年から27年とはじめて日程表で示した。
当面は旧式化進むF-15C/DをボーイングF-15EXやロッキード・マーティンF-35Aで更改することに空軍は集中する。一方で空軍研究本部(AFRL)は低価格「消耗品」扱いの新型機材で実験を開始した。
第一弾がクレイトスXQ-58Aヴァルキリーで、2019年3月に初飛行した。空軍はXQ-58Aまたは類似機材に人工知能の「頭脳」を搭載し、いわゆる「スカイボーグ」として飛行させる予定で、飛行を重ねるたびに機体制御を学習させる。こうした機能はマスクの描く将来機材と近いが、直ちにF-15Cの代替になるには技術が早熟なためF-15EX導入の決定に至った。
ホームズ大将は次段階の機材が5ないし8年で登場すると述べる。この年数はXQ-58Aやスカイボーグのような機材の技術成熟期間と一致する。空軍はF-16ブロック25、30数百機の更新が必要となる。
「新型機として低コストかつ忠実に行動するウィングマンとして従来と全く異なる機材が登場する」(ホームズ大将)  
ホームズ大将はローパー次官補と2月に会見し、導入可能な価格かつ高性能機を3から5年間隔で小ロットで連続生産する方法づくりを打ち合わせた。空軍は広大な太平洋地区を念頭に基本要求性能(航続距離やペイロード等)の明確化に取り組んでいる。 
「戦闘機開発に応用してきた計算式はヨーロッパ環境ならまだ有効だ」とホームズは述べる。「だが太平洋では機能しない。距離感が違いすぎる。そのためNGAD他新規企画では、従来の戦闘機形態と異なる機材が出てくるはずだ」
航空戦シンポジウムの展示コーナーにヒントがあった。従来型機材のF-35やF-15に混じり新規コンセプトが展示されていた。ジェネラルアトミックス・エアロノーティカルシステムズ(GA-ASI)は「ディフェンダー」を公開し、プレデターCアヴェンジャーの改良型として空対空ミサイル、赤外線探査追尾センサーを搭載する。ディフェンダーの任務は支援機材の給油機や偵察機を敵から守ることで、爆撃機や戦闘機に敵地侵攻させることと同社は説明。 

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GA-ASIが提案するディフェンダーは空中給油機護衛用のジェット推進、ミサイル搭載の無人機。Credit: U.S. Air Force
クレイトスはXQ-58に引き続きとりくんでいる。AFRLは当初テストフライト用に5機分の予算を計上し、三回目の飛行で墜落したものの、テスト目標は三回目飛行で全数達成したと同社は述べている。AFRLはXQ-58の「任務遂行機材化」を加速中で、ペイロード増加で搭載兵装の強化を目指す。まず4月にF-35とF-22間の通信中継機能を実証する。
クレイトスはXQ-58の12機製造を開始しており、2021年第一四半期にラインオフする。各機は政府各機関の予算で各種実証に投入されるという。
XQ-58によりまったく新規の機種、「忠実なるウィングマン」が米国に生まれ、ヨーロッパでは「遠隔キャリア」となる。XQ-58やボーイングの空軍力チーム化システムAirpower Teaming System (ATS) で重要となるのが航続距離だ。両機種は無給油で3千カイリとF-35の約3倍の距離を飛べる。ATSと異なりXQ-58では着陸用の滑走路は不要で、パラシュートで回収する。
ACCが求めてきた次世代戦闘機の姿から見れば両機種は注目に足りない存在になるが、方法論そのものが変わりつつあるとホームズ大将は述べている。
「航空戦闘軍団は戦闘機ロードマップを作ってきた。30年後の戦闘機はどうあるべきか、と言った具合だ」「だが今は性能ロードマップで従来は戦闘機でこなしてきたミッションをどう実現するかを考えている」
空軍資材軍団(AFMC)も戦闘機の調達方法を抜本的に変えようとし、昨年10月に高性能機材事業実施室Advanced Aircraft Program Executive Officeを立ち上げた。次世代戦闘機の調達手順を再定義するのが目的だ。現代の戦闘機では開発に10年以上をかけ、数十年を要する事例もある。だが次世代戦闘機で空軍が望むのは数機種の少数生産で、開発サイクルも5年未満に抑えることだ。
配備期間も最小に抑える。供用期間が短く退役するからだ。この方法だと実施企業も開発段階で十分な利益を実現できる。現状では開発期間は赤字で配備中に利益を確保するのが通常だ。このため供用期間が短いと利益も十分出ない。
空軍はこの調達での契約形式を検討中とAFMC司令アーノルド・バンチ大将が述べている。
「業界はこの方式にどう対応するか検討中だ。各社経営陣がこの話題を口にしているが対応は各社別だ」とバンチ大将は言う。「各社が検討するのは、費用試算の方式であり、財務計画や、議会へどうはたらきかけるか だろう」■
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U.S. Air Force Plots Fleet Insertion Path For ‘Loyal Wingman’

Steve Trimble Lee Hudson March 06, 2020