2020年5月23日土曜日

米海軍が水上艦レーザーでUAV撃墜に成功

USN CAPTURE
ンアントニオ級揚陸艦USSポートランドが新型指向性エナジー兵器で小型無人機の撃墜に成功した。
米太平洋艦隊がレーザー兵器システム実証装置(LWSD) Mk2MoD0のテスト結果を5月22日に発表した。テストは5月16日に太平洋上の非公表地点で実施された。海軍は「システムレベルでの高出力半導体レーザー試射として初」としているが、同艦からレーザー発射が以前あったかは明らかにしていない。
「ポートランドでテスト運用した半導体レーザー兵器システム実証装置は今後の兵装システムに新しい道を開いた」とポートランド艦長キャリー・サンダース大佐が声明文を発表。「UAVを対象に半導体レーザー兵器システム実証装置を海上で作動させ貴重な情報が得られた」
SUNDIEGOLIVE.COM CAPTURE
USSポートランドに搭載されたレーザー兵器


LWSD Mk 2 Modはノースロップ・グラマンが開発し、半導体レーザー技術成熟化(SSL-TM)の一環で2019年末にサンディゴでポートランドに搭載された。
USN
USSポートランドがLWSD Mk 2 Mod 0を作動させた。2020年5月16日


LWSD Mk 2 Modの出力は150キロワットで無人機や小型舟艇多数の襲撃への防御手段となる。レーザーは同時に光学センサーやシーカーを無効にできる。フルモーションビデオカメラも搭載すれば標的の追尾と照準合わせ以外に監視にも使える。
海軍が開発中のレーザー装備にはSSL-TMも含み4種類の装備があり、今後高性能レーザー兵器の実現への踏石となる。アーレイ・バーク級駆逐艦USSデューイも海軍用光学眩惑攻撃装置(ODIN)と思われる装備が搭載している。
USN

米海軍は以前から作戦級レーザー兵器を艦艇に搭載している。USSポンスがAN/SEQ-3レーザー兵器システム(LaWS) を搭載し、2014年から2017年まで中東に展開した。ノースロップ・グラマンがLaWSおよび海上レーザー実証装置(MLD)を開発した。ともにLWSD Mk 2 Mod0(150キロワット)の開発に有益な情報を提供した。MLDは15キロワット級、AN/SEQ-3が30キロワット級だったので今回は大幅に出力増となった。
「新しい装備の性能向上により水上戦の様相が一変する」とポートランド艦長サンダース大佐が述べている。今回の成功で海軍のめざす指向性エナジー兵器開発の大胆な目標に一歩近づいた。■
この記事は以下を再構成したものです。

The Amphibious Warship USS Portland Has Shot Down A Drone With Its New High-Power Laser


2020年5月20日水曜日

中国の新型ステルス爆撃機H-20はいつ公表になるのか




テルス爆撃機の目標はレーダーに姿を見られないことだが、中国軍は次世代爆撃機の公表時期を念入りに検討しているといわれる。同機の登場を心待ちにしてきた軍事筋も今年11月まで待たされそうだ。

西安H-20の実機公開は今年の珠海航空ショーになりそうだ。ただしそれまでにコロナウィルスが制圧されるのが条件だ。今年秋に再度ウィルスが猛威をふるっていれば、公開は延期されるだろう。

「珠海航空ショーは中国の大国ぶりと疾病制御を顕示する場になる。外部世界に中国の防衛産業の健在ぶりを示すはずだ」と匿名筋がサウスチャイナ・モーニング・ポストに述べていた。

ハリウッド映画そっくりの手法で同機の一部が2019年の人民解放軍空軍の創立70周年パレードにあらわれていた。

今年の航空ショーで実機が登場すれば、その攻撃範囲に収まる各国、つまり日本、南朝鮮、オーストラリア、さらにグアムで緊張が高まるはずだ。

米国防総省(DoD)の予想は同機の航続距離は5,300マイル、亜音速飛行で極超音速ミサイル4発を搭載とある。
.
ICBM、潜水艦発射ミサイルとならび中国に「核三本柱」の一部となる。米国は常時抑止効果を実現しているが、中国もこのレベルに到達すれば域内の構図が変化するのは確実だろう。

毎年恒例の議会向け報告書でDoDは中国が三本柱の実現に近づいていると指摘していた。

「中国指導部は同機の公表で域内バランスが変化するか慎重に検討中で、特にCovid-19パンデミックで緊張が高まっている域内情勢を考慮している」と別の匿名筋がサウスチャイナ・モーニング・ポストに語っている。

ただし、上記議会向け報告書は機材や兵装があるだけでは核の三本柱は成立しないと指摘している。

「正しく機能させるためには訓練ほか多数の作業が必要だ」とインド太平洋地区の安全保障担当国防次官補ランドール・シュライバーが述べている。中国軍は「その方向に進んでおり、実用に耐える装備を三分野で整備中だ」という。

西安H-20が三本柱の一つになるのは確実としても、期待される性能の実現まで時間がかかりそうだ。エンジン問題のため速力は設計想定を達成できない。とはいえ、H-20が米F-35共用打撃戦闘機への対応手段となる可能性がある。米国と同盟国が次世代戦闘機多数を域内に配備すれば、中国としてもH-20の配備を急ぐ必要を感じるはずだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

May 5, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: H-20 BomberH-20Xian H-20MilitaryDefenseTechnology


2020年5月19日火曜日

米次期フリゲート艦FFG(X)で注目すべき5項目

海軍が次世代フリゲート艦にフィンカンティエリのFREMM設計案を採用したが、ほぼ新型艦のため初号艦就役は時間がかかそうだ。
4月30日付で交付された契約では10隻までフィンカンティエリのマリネットマリーン造船所(ウィスコンシン)で建造する。海軍は少なくとも20隻を調達する。以下の5点は予め知っておく価値がある。
1) 価格 
研究開発調達担当の海軍次官補ジェイムズ・グーツによれば初号艦は12.81億ドルで、設計費用と造船所の対応作業費用を含む。レイセオンのAN/SPY-6派生型レーダーやロッキード・マーティンのイージス戦闘システム等の装備品は政府調達で搭載する。12.81億ドルのうち造船所に流れるのは7.95億ドルとなる。
費用は2号艦から大幅に下がる。海軍の目標は2018年価格で8億ドル、高くても9.5億ドル止まりとする。グーツ次官補はさらに下がると見ており、20隻建造の場合で7.81億ドルの試算がある。
2) 工期 
次世代フリゲート艦FFG(X)の詳細設計作業がまもなく始まるとグーツ次官補は述べ、建造は2022年4月以降になる。一号艦は2026年引き渡し予定で2030年までに就役するが、初期作戦能力獲得は2032年となる。
10隻建造の契約は2035年に完了する。20隻建造の場合、マリネット造船所以外でも建造になるかは不明だ。
Sailors stand watch on the bridge of the Italian FREMM Alpino, the parent design for the U.S. Navy's new FFG(X), underway off the Eastern Seaboard in May 2018. (David B. Larter/Staff)
米海軍向けFFG(X)の原型となるFREMMのイタリア海軍アルピノのブリッジ。 May 2018. (David B. Larter/Staff)
3) 計画遅延の可能性
海軍は今回の建造計画をしっかり立てたとするが、最近の建造案件には芳しくない結果が多い。
フォード級空母の事例もあったため上院軍事委員会委員長のジム・インホフェ議員(共、オクラホマ)が初号艦の実績達成に注意を示した。海軍がFFG(X)のリスク低減策で採択したのはアーレイ・バーク級フライトIII建造で証明済みの装備品を採用したことで、イージス戦闘システムの最新版やAN/SPY-6レーダーの小型版が例だ。
「SPY-6など技術が成熟しているので安心している」とケイシー・モートン少将(無人艦艇・小戦闘艦担当事業主幹)が述べている。
初期段階から産業界を参画させて初号艦のリスクが低くなったとモートンは説明。「各企業が要求内容に詳しくなり、性能諸元を理解してもらえればいっしょにコスト削減できる。初号艦で問題が多数見つかることが多いので先手を打って行く」
4) 拡張性 
FREMM案の採択では新装備とくに大量に電気を消費する装備の後日搭載を重視したと海軍は説明している。
競合中にフィンカンティエリは発電容量の拡張はすぐ実施できると強調し、艦体に穴を開けずコンピュータやエンジン装置が交換できるとも説明した。
The Italian FREMM Alpino, the parent design for the U.S. Navy's new FFG(X), is shown pierside in Baltimore, Md. (David B. Larter/Staff)
イタリア海軍のFREMM艦アルピノ。ボルチモア寄港の際に撮影。 (David B. Larter/Staff)

フィンカンティエリの上席役員リック・ハント退役海軍中将で、同社は性能改修の余地を残しながらコスト面の要求水準も満足させる内容で入札したと報道陣に説明。「柔軟度を残し、装備品が利用可能になればすぐ搭載する余地を残し、将来ニーズに対応可能とする要求がありました」(ハント)
ジム・キルビー中将からは海軍がミサイル対ミサイル戦闘から移行する中で将来の発展余地が重要な要素との発言があった。「相手の脅威が急速に進展する状況を把握することが重要」といい、「将来の姿を今決めたくない。指向性エナジーほかの装備の搭載余地を確保するのが重要だ」「海軍のレーザー開発は広範囲に進展中で、一部艦艇にレーザーを搭載している。今後の装備品として必須となり、ミサイル発射装備は攻撃用にとっておき、局地防衛には長期間供用可能な装備品をあてる。
5) 他艦種への応用
海軍の調達トップはFFG(X)選定手順に満足し、他の艦種のモデルになると見ている
「FFG(X)は海軍の調達業務の進化形で、調達計画、要求内容、技術部門と造船部門が共同開発を詳細設計・建造要求提案前に行えた」(グーツ)「要求内容、調達計画、設計作業を統合して従来から6年程度を短縮できた。コスト、調達、技術の各面に焦点をあわせ最高の結果を得られるようにしたためだ。チーム統合でここまでの成果は海軍にこれまでなかったと思う。これからの建造でもモデルになる」
ただし、FFG(X)には開発済み技術や原設計があり、全くの新型艦の場合にも応用できるか不明だ。
「全員を早い段階でまとめたのが時間短縮になった」と語るのがブライアン・マグラスで、駆逐艦艦長を経てフェリーブリッジグループのコンサルタントだ。「新型艦で同じ作業を採用し革命的な技術や未実証技術さらに開発中の技術を取りまとめられるか疑問だ。全く事情が異なる」
FFG(X)は戦力性能面で海軍に大きな前進だが、革命的な艦でなく従来と違う方法が必要な艦ではないというのがマグラスの意見だ。■
この記事は以下を再構成したものです。

5 things you should know about the US Navy's new frigate


By: David B. Larter    May 5

2020年5月17日日曜日

歴史に残る機体(25)サンダーボルトP-47とA-10の意外な共通点




ともに被弾しても飛行可能で、近接航空支援で不可欠な機材だ。

サンダーボルトが嫌いな人はいない。
今日のA-10サンダーボルトIIはウォートホッグとも呼ばれ、米軍機材でおそらく最も人気の機体だろう。少なくとも米地上部隊に。逆に空軍上層部にサンダーボルトは頭痛の種だ。75年前にもサンダーボルトの名称の機体があり、これも人気の戦闘機だった。

両機種の類似点は皆無に近い。P-47サンダーボルトは第二次大戦機で欧州上空でルフトバフェと戦う高速高高度戦闘機として開発された。A-10サンダーボルトIIは低空飛行の対地攻撃機としてソ連戦車を葬るのが狙いだった。

共通面もある。ともに空力学的に洗練されていない。P-47には愛情込めて「ジャグ」(ジャガーノートの短縮形)がついたが、太い胴体を見ればこの名称に異論がないだろう。P-51マスタングが5トン、スピットファイヤが3トンに対し、ジャグは機体重量が7トンと空を飛ぶトラックだった。A-10はエンジン双発を尾翼上に配置し、巨大な機関砲を機首に搭載したのはニキビを想起させる。

さらに双方のサンダーボルトは出自が共通する。P-47はリパブリックエアクラフトが製造した。リパブリックは1965年にフェアチャイルドが買収し、フェアチャイルド・リパブリックになり、A-10を製造した。

サンダーボルト兄弟は大火力で知られる。.50口径機関銃8門を搭載したP-47は圧倒的効果を上げた。A-10の30ミリ機関砲では劣化ウラン弾でイラク戦車を第一次湾岸戦争で破砕した。

両機種とも多少の被弾なら平気だ。P-47の頑丈で大型かつ装甲付きのコックピットで「機体と星型エンジンが相当の被弾を吸収したままで帰還できた」とコーネリアス・ライアンが「遠すぎた橋」で記述している。「炎上するサンダーボルトで機外脱出より安全と胴体着陸させたパイロットもいる。胴体着陸で樹木を倒し、衝撃を吸収させ怪我なく脱出したパイロットもいた」

P-47は敵弾が命中しても平気だったが、A-10では楽しむ余裕さえある。対空ミサイルや火砲の集中を生き残る設計で西ヨーロッパへ侵攻するソ連戦車隊を狩るウォートホッグはF-15やF-16なら墜落する命中弾を浴びても平気だ。コックピットはチタンで囲まれ機関砲弾に耐えるし、飛行制御の油圧系統は冗長性があり、油圧系統が使用不能となれば機械的予備系統を使う。エンジンは上部に搭載し赤外線や熱追尾ミサイルの捕捉の可能性を下げる。主翼を片方失っても帰還できる設計には恐ろしさを感じるほどだ。

サンダーボルト2型式は対地攻撃機としての威力が共通評価だ。A-10は1日で戦車23両を破壊したことがある。P-47は枢軸軍の3千機を撃墜しているが上昇率は見劣りがしたし、低空操縦性も劣ったものの、大重量のジャグは急降下に入ればドイツ機をことごとく追尾できた。

だがジャグの真価は戦闘爆撃機としてヨーロッパで上げた戦果だった。爆弾や5インチ空対地ロケット弾を機関銃8門と併用したP-47はドイツ地上部隊を恐怖に陥れた。1944年6月のDデイから翌年5月のドイツ降伏までジャグは鉄道車両86千、機関車9千両、装甲戦闘車両6千両、トラック68千台を破壊した。

双方のサンダーボルトは地上では冴えない機体だ。P-47には航続距離、敏捷さでP-51の水準に至らなかった。米空軍は第二次大戦後にP-47を廃棄し、P-51を温存した。そこに朝鮮戦争が勃発し、F-86はじめとするジェット戦闘機が制空任務にあたり、マスタングは対地攻撃に投入された。だがP-51は頑丈な機体でなく水冷エンジンのため被弾すると墜落につながり、P-47なら生存可能な状況で多数を喪失した。

A-10の後継機はF-35ライトニングIIになりそうだ。だが機関砲弾一発の命中で主翼半分が損傷を受けるライトニングのパイロットになりたいですか。格好良く見える機体が優れているとは限らない。だが、サンダーボルトを雑に扱う者はいない。■

この記事は以下を再構成したものです。

May 16, 2020  Topic: History  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: P-47Air PowerA-10DefenseTechnologyMilitaryHistoryUSAFAir Force

Flying Tanks: How the P-47 Gave Birth to the Fearsome A-10

Now that's a legacy.

写真 Wikipedia



パンデミック後のPRC④ 中国はパンデミックを機会に世界トップの座をねらっているのか。(このままでは実現は無理だろう)

 中国はパンデミックを機会に米国を世界トップから駆逐するのか。

In this April 13, 2020, photo, a woman wearing a face mask drives her car by a Chinese flag placed on a street prior a curfew set up to help prevent the spread of the new coronavirus in Belgrade, Serbia.


中国への不信は拡大の一方だが、米国の無能ぶりも世界に露呈した。

ロナウィルスのパンデミックで中国の影響力が世界で強まり、逆に米国の存在感は減ると見る専門家が多い。
理由は明白だ。COVID-19感染者が米国に120万人超あり、4月18日現在で260万人超が失業中で失業率が20パーセント近くまで増える中、国際通貨基金予測で米経済は今年6パーセント縮小する。米国のパンデミック対応は無関心から不理屈なものへ変遷し、連邦・州双方の行政府は公衆衛生と経済活性化のバランスを取るのに苦労している。病院の医療従事者向け防護策提供に苦しむ現況には驚くばかりで国内の機能不全は悪化の一途だ。「グローバル規模の危機が発生しても、米国の指導力に各国が期待を示さないのは100年超の歴史で初めて」(ニューヨークタイムズ)との見方もある。
とはいえパンデミック後の米中間の戦略バランスでは次の二点を考察する必要がある。まず、中国が世界で米国に代わる主導的立場につこうとすると仮定しても、中国にその実力があるのだろうか。
中国では国内課題がコロナウィルス第一例の発生前から深刻になっていた。昨年の中国経済成長率は30年で最低だった。中国政府は国営企業支援を強化するが、各企業は民間企業より生産性が劣る。また経済活性化策で期待された「クレジットバズーカ」が2008年と違い今回は使えない。国の債務がGDP300%と大幅増のためだ。さらに、人口構成の暗い予測がある。昨年の出生率は歴史上最低で、労働力人口は2018年から2030年にかけ73百万人減る。またパンデミックで企業多数が生産拠点を国外に移しそうだ。
中国国内の政治地図も多難だ。台湾、香港の反抗的態度が収まらない。中国、台湾の経済統合があっても台湾の独立志向は強いままだ。台湾は中国の影から脱し新南方政策を希求している。さらにパンデミック対応から台湾に世界保健機関への正式加盟の資格があるとの意見が増えている。香港では犯罪者引き渡し法案への抗議、人民解放軍治安維持部隊による制圧、民主活動家で著名な15名の逮捕から「一国二制度」のもろさが露呈している。
対外面では中国を取り巻く民主国家インド、オーストラリア、日本、南朝鮮へ対抗が必要だ。中国は経済、軍事両面で各国より強大とはいうものの、各国が協調協力を強める中で、中国が各国から信頼を勝ち取るのは簡単ではない。さらに今の信頼水準では世界的な指導力が実現できない。ウィグル族の大量拘束、南シナ海の軍事化継続、フアーウェイ5G製品締め出し国への脅かしでパンデミック発生前から中国への信頼度は相当低下していた。国内パンデミックの制圧成功で自信を感じたのか、一ヶ月前から医療品や専門家チームを各国に派遣しはじめた。ただし、受入国から感謝の意思表示を強要したり、他国によるパンデミック対応を批判したりと逆効果も招いており、これは中国に伝統的に有効な各国向けでも例外ではない。
二番目に、中国が上述の困難を全て克服しても、そもそも米国に代わる座を希求するだろうか。答えはすぐに出ない。そのつもりなら国益上重要な対象に資源を振り向ける必要がある。The Economist は「中国には世界各地の危機に対応を迫られる第二次大戦後の米国と同じ立場に自らを据え付ける意図を示す兆候がない」とし、あくまでも経済力や技術力を既存秩序内で自国の影響力拡大に使う意図を中国は示している。トランプ大統領が資金供出を一時停止したWHOへの支援表明のように、中国は国連機関で影響力を増やしている。とくに一帯一路政策の実現を希求している。だが中国は新秩序で一貫したビジョンを示しておらず、現行秩序から恩恵を受けていることに加え、自身でも次の姿を明確にしていない。
パンデミックで中国が一気に世界のトップの座につく時代が来るわけではないとしても、米国との戦略バランスを中国が変えようとしないわけではない。とくに米国が政策転換しない場合これがあてはまる。中国への不信が強まっているが、米国の無能ぶりも露呈した。米国としては急ぎ同盟関係を補修し、WHO含む国際機関の改革で具体策を提示し、各国を取りまとめてきた定評を復活させるべきだ。同時に「超大国間競合」へ焦点をあわせるあまり、中国との協力の可能性を減らす、あるいは最悪の場合道を閉ざさないよう注意すべきだ。パンデミックでわかったのは脅威は国境を超え、戦略的ライバルでも協調対応しない限り単独で国益を守れないことだ。■
この記事は以下を再構成したものです。


MAY 5, 2020

2020年5月16日土曜日

USAFはアジア太平洋でこう戦う---沖縄演習で垣間見えた中国対抗戦略とは

Aviation Weekに注目の記事がありましたのでお伝えします。次期空軍参謀総長にPACAF司令官が横滑りするのはいよいよ対中国戦略の実施が現実になってきた証拠でしょうか。

refueling squadron in midair 
嘉手納基地のZZ記号を付けたF-15の2機が第909給油飛行隊のKC-135からウェストパック・ラムランナー演習で給油を受けている。
Credit: Sr. Airman Matthew Seefeldt/U.S. Air Force

空軍はこれからの航空戦に向け新しい対応策を検討中だが、その片鱗が嘉手納航空基地で見られたので紹介したい。
  • 基地防衛の試行
  • 攻撃下の補給活動とは
沖縄で1月に実施された演習はウェストパック・ラムランナー WestPac Rumrunner の名称で制空任務を想定した。ボーイングF-15Cの24機は嘉手納ABから100マイル東に進出し、「侵攻軍」の米海軍F/A-18E/F(岩国MCASより発進)を迎撃した。同時に特殊作戦部隊(SOF)所属の機材が沖縄へ侵入を試みた。
この設定から将来戦の片鱗が見える。嘉手納基地のF-15C4機は燃料と装備を普天間海兵隊基地で補給した。日本配備中のE-2Dが嘉手納のF-15C部隊を支援し、侵入を試みるF/A-18E/FおよびSOFに対応させた。空軍が進めるアジャイル戦闘展開 Agile Combat Employment(ACE)戦略構想を試す機会になった。さらに海軍のノースロップ・グラマンE-2D部隊と現地のMIM-104ペイトリオット部隊(陸軍)で防御側の戦闘統制を試した。
ウェストパック・ラムランナーではACEや統合全ドメイン指揮統制Joint All-Domain Command and Control (JADC2)のすべてを試していないが、中国東方に位置する第一列島線の各基地に大きな意味がある。
「アジャイル戦闘展開や基地防御の知見を演習から得たい」と太平洋空軍(PACAF)司令チャールズ・ブラウン大将がAviation Weekに2月に述べていた。PACAF隷下の航空部隊は新構想を試し、技術以外に考え方の変化も求められている。
「答えを全て得たわけではないが、フィードバックし実効性を試せる」「そのあとで『これを戦闘教義にどう反映し対応策を変えるべきか』を考える」(ブラウン)
PACAF内の各基地と補給線の防衛が課題だ。空軍首脳部が今年2月公表した予算要求では補給網が攻撃下にある想定で対応案を盛り込んだ。目標は補給再装填で重要拠点となる基地の破壊、弱体化を狙う敵の協調攻撃に対し十分な回復力を基地で実現することだ。
「ACEのカギは軽く、無駄を削り、敏捷さの実現」「補給活動に足を引っ張られては困る」(ブラウン)
新構想の細部は非公開だが、空軍上層部は遠隔地の飛行場に部隊を分散させること、基地防御体制の強化の模索を認めている。
ブラウンは指向性エナジー兵器含む新技術に加え、高性能運動性エナジー兵器たるTHAADやペイトリオットでも分散配備を狙う。ブラウンは次期参謀総長に内定しており、開発中の小型モジュラー核融合反応炉で高出力装備の電源を確保したいとする。
PACAFは貨物コンテナーに装備品を入れ、各地で事前配備したいとするが、受入国の承認を事前に取る必要がある。そこで人道援助用の補給物資の事前配備から始めたいとする。
refeuling aircraft 
演習では嘉手納基地のF-15Cが普天間海兵隊航空基地で燃料補給を受けた。 Credit: Staff Sgt. Benjamin Raughton/U.S. Air Force


「人道援助災害救難から始めて各地に展開したい」「この地域では台風、火山、地震が多く発生しており、ここから始めたい」
軽く、敏捷にとの要求からも変化が生まれる。補給活動への脅威を減らすため必要な補給物資の量を減らし、空輸回数を減らす。ここから兵装装備品の軽量化や効率のよい運用につながるが、現時点の焦点は補給活動を必要最小限に絞り、ソフトウェアで効率良い決定を下すことにあてられている。
輸送機の防御も重要だ。航空機動軍団は無防備だったボーイングKC-135、ロッキードC-130Hの防御能力に予算を計上し、警告装置や赤外線/無線誘導式ミサイル対抗装備を搭載する。別の防御策は輸送機がどこを離着陸しているか敵にわかりにくくすることだ。
「各機材に防御装備を搭載するのは重要だが、同時に運用地にも注目している」「ここからアジャイル戦闘展開構想が生まれた。一地点で機材を分散させるのではなく、各地の飛行場に分散させる。防御策も各地で必要となる」
高額装備のTHAADやペイトリオットも各地に移動させる必要がある。「軽量で贅肉のない装備がほしい。銃弾数に制限がなく、今までと異なる費用曲線の装備があれば、高額装備は弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速ミサイル迎撃に専念させられる。高出力マイクロ波や指向性エナジーで各地での柔軟対応へ道をひらく。この考えで意味のある検討が進んでいる。まだ先は長い」(ブラウン)
その第一歩が各地での演習で、ウェストパック・ラムランナーもその一環だ。嘉手納基地の第18航空団が防空効果を発揮した。第5空母航空団のF/A-18E/F「侵攻部隊」は沖縄周辺100マイルの防空圏内に一機も侵入できなかった。SOFチームは着陸地点に到達したが、第44戦闘飛行隊のF-15Cが即座に侵攻部隊の機材を「撃破」したと、同隊司令のライアン・キャリガン中佐が述べている。
沖縄のF-15C部隊にとり分散展開は新発想ではない。10年も前だが、嘉手納の飛行隊がアジャイルイーグル構想のさきがけ作成に関与し、輸送機・給油機を伴いF-15Cを迅速に各地に展開した。ここからラピッドラプター構想へ発展し、ハワイのヒッカムAFBのF-22に応用した。今回さらにACEに発展したわけだが、PACAF各部隊の考えはハブ中心の運用が色濃いため、実施は課題となっている。高エナジーレーザーで各地の飛行基地を飽和ミサイル攻撃から守る体制が実現するまで数年かかるが、無人機への対抗装備でレイセオンが空軍実験本部と共同で実験を開始した。
「標的にならないよう訓練で配慮している」「甘受できるリスクの上でし適正規模の支援パッケージを配備部隊に届ける方法を模索している。兵装搭載要員と給油要員の両方は連れて行かない。兵装搭載要員に給油方法を訓練している」(コリガン)■
この記事は以下を再構成したものです。

Okinawan Exercise Offers Glimpse Into Future USAF Air War Strategy

 


Steve Trimble May 08, 2020

2020年5月13日水曜日

コロナウィルス後のPRC③ 米上院が台湾支援の決議を全会一致で成立させました。

日本ではコロナウィルス(武漢ウィルスの方が本来ぴったりなのですが)を自然災害、通り魔被害と受け止めて、人災と取る向きは少数でましてや中国の責任を追及する動きは皆無ですね。欧米から見れば誠に奇異に映るでしょう。ましてや参議院で中国を非難する決議が全会一致で成立する可能性も皆無でしょう。日本が変なのか、米国が変なのか。いえ、おかしいのは中国共産党です。



上院は国務長官に「台湾に世界保健機関オブザーバー資格を再度与える戦略」を求める決議を5月12日全会一致で採択した。中国に痛い一撃となった。今回の上院決議では国務省に「台湾の公式非公式外交関係強化に関する定時報告を議会に」求めるつつWHOに台湾をオブザーバー出席させるとある。

コロナウィルス大量発生で中国政府と台湾の対立が加熱している。台湾当局は5月18日のWHOコロナウィルス予防会議へ出席を希望しているが、北京は台湾とは中国国内の反乱省にすぎず、外交権がないと主張している。▶台湾はオブザーバー資格で2009年から2017年まで「チャイニーズ・タイペイ」の名で参加していたが、5月の会合にはWHOは台湾を招く「権限がない」と説明している。▶米国や台湾には台湾が出したコロナウィルスへの警戒呼びかけをWHOが無視したのは中国の神経を逆なでしたくなかったためだとの批判が強い。▶台湾で1月21日のコロナウィルス上陸以来の死者はわずか7名だが、中国はほぼ同時期に4千名が死亡との報道がある。

「2017年から中国は台湾をWHOから締め出している」とジム・インホフェ上院議員(共、オクラホマ)が発言。「これは受け入れがたい。コロナウィルスのパンデミック状態で世界が対応する中、中国外交は弱いものいじめを一層強めている」▶議案はインホフェ初め21名の議員が発起人となり、対中強硬派のジョシュ・ホーリー(共、モンタナ)、進歩派の中核エド・マーキー(民、マサチューセッツ)、ボブ・メネンデス(民、ニュージャージー)の上院外交委員会の中心議員が名を連ねた。

マイク・ポンペイオ国務長官はウィルスは中国武漢が発生地で実験施設の事故を中国政府が隠蔽したと一環して主張している。▶5月11日に長官は「中国共産党はウィルスの発生地点、発生状況、ヒト感染の発生過程を情報統制しただけでなく、WHOを使い別の筋書きを広めた」と述べている。

ポンペイオの意図はトランプ政権としてWHOに代わる組織を米主導で作ることにある。▶今回の上院での全会一致採択はポンペイオによる批判を党派を超えて支持しているあらわれだが、ポンペイオの目指す方向を無条件で承諾しているわけでもない。

「中国は初期にウィルスの被害を隠蔽した行為への責任、さらにワクチンや治療方法の確立に必要な科学情報の流通を妨害したことへも責任がある」とクリス・マーフィー上院議員(民、コネチカット)がNational Interest インタビューに答えている。▶「WHO脱退が正しい対応と言えるか。WHOが中国の過大な影響力を受けているに不満としても、米国脱退は問題を悪化させるだけだ」「中国への不満に現政権は何ら対応していない」と述べた。

この記事は以下を再構成したものです。

May 12, 2020  Topic: Security  Blog Brand: Coronavirus  Tags: Tby Matthew Petti 


Matthew Petti is a national security reporter at the National Interest. Follow him on Twitter: @matthew_petti.