2009年6月6日土曜日

VH-71中止方針に異議高まる


Objections To VH-71 Cancellation Grow Louder

aviationweek.com 6月5日

ゲイツ長官が次期大統領専用ヘリコプターVH-71調達の中止を発表したことへ各方面から反対の声が高まっています。

【議会から】 直近で反対の声を出したのはモーリス・ヒンチー下院議員(民主 ニューヨーク州)で選挙区にはロッキード・マーティンのVH-71プロジェクト本部があるオウェゴがある。同議員の反対意見の主な点はペンタゴンが議会に相談せずに中止を決めたことにある。「憲法では明らかに連邦予算の支出を決定する権限と責任が議会には与えられております」とヒンチー議員は話す。国軍の最高司令官たる大統領およびホワイトハウス関係者が搭乗するヘリ機種の決定は議会が最終的に行うべきと同議員は主張する。産業界寄りのレキシントン研究所主催のテレビ会議でロスコー・バートレット下院議員(共和 メリーランド州)はゲイツ長官方針への批判として海軍による中止決定の法的根拠ならびに道徳的根拠に疑問を呈した。「国防長官が本計画を中止するのは長官の権限外の行為ではないか」と同議員が発言。「ペンタゴンとホワイトハウスとはパートナーですが、われわれを差し置いた今回の決定を遺憾に思います」
【イタリアから】一方、イタリアの国防相イグナシオ・ラ・ルッサはゲイツ長官への書簡で、同国の懸念はアグスタウェストランドが機体を供給しており、イタリアおよび英国内の雇用が危機に瀕することであり、大臣自身の「解決策」を教示している。また、アグスタウェストランドも広範な協力を惜しまず同計画の進行につながるための最良の選択肢を見つけることができるとも伝えている。同相はアメリカとの共同航空開発プロジェクトが多数あることとしてF-35JSFをレイとしているものの、報復は考えていない点を伝えている。VH-71がイタリアのシルビオ・ベルルスコーニ首相とオバマ大統領の初の首脳会談の議題に上る可能性がある。
【業界の見方】アグスタウェストランドと親会社のフィンメカニカは引き続きVH-71中止はオバマ政権の政治上の決断ととらえており、運用上あるいは予算上の問題からではないとの立場。代替案結局保安上は弱く、費用は高くつくと専門家は指摘している。

2009年6月5日金曜日

CSAR-Xは仕切りなおしへ


DOD To Get CSAR Requirements By September

aviationweek.com 6月4日

国防総省は戦闘捜索救難(CSAR)ヘリの要求性能水準を9月までに再作成する。調達責任者アシュトン・カーターは5月末に150億ドル規模のボーイングHH-47 CSAR-Xヘリコプター計画を中止とし、カーターは「国防長官は計画評価分析部長と統合参謀本部に対し、各軍と協力の上、CSAR-X要求性能水準の再評価を命令した。」とメモを配信した。
【中止に戸惑う空軍】 空軍の主張は長年にわたりこれまでのCSAR-X要求内容は徹底的な調査開発の結果であり、各軍部隊の共通ニーズを考慮の上、正しくまとめあげられたというもの。例を挙げると、空軍は代替案検討内容は電話帳の厚さになったと指摘している。
【ペンタゴンの考え方】 カーターの前任者ジョン・ヤングはCSAR-Xの空軍評価結果に対して疑問を呈しただけでなく、この任務に専用機がそもそも必要なのかという根本的な質問をしている。ヤングの要点はCSAR-X計画の前提に対する疑問だ。V-22オスプレイでCSAR任務が実施できるではないかとしている。同機はCSAR-Xコンペで価格が高いことと下降流が問題として対象から早期に外れていた。ヤングの見解はCSAR関係者の中に反論を引き起こしたが、これがペンタゴン上層部で反響を呼んでいるようで、CSAR-Xが調達リストから外れることになった。
【困るのは前線部隊】 CSAR運用部隊は現行機材の老朽化が進む中で各機の修理、改修を続けながら任務の要求にこたえることになるが、専用機は不要という考え方をペンタゴンから払拭したいと考えている。

コメント: オバマ政権の財政再建のしわ寄せが救難ヘリ開発にも及んできました。人員の救難を優先して実施するのは人命重視だけでなく、志気の維持に大きく作用しますから本来後回しにできないのですが。当面はHH-60等を使いまわすのでしょうが、前線は大変でしょうね。(写真 結局飛行する姿を見られなくなったHH-47)

ABL 空中発射化学レーザー実験の今後



ABL Laser Gets MDA Nod Thus Far

aviationweek.com 6月3日

ミサイル防衛庁(MDA)長官は空中搭載レーザー(ABL)のミッションシステムズの性能実績にこれまでのところ満足しているものの、搭載機体の 747-400Fに耐空性で問題が生じている。
米陸軍中将パトリック・オライリーはABLのレーザー発射試験で100キロメートル先を対象に大気中補正で実施した回数合計が12回となり、直近では先週末に行われていると明らかにした。大気中の分子を補正してレーザーの持つエネルギーが拡散されないようにすることがシステム機能の大きな鍵だという。この大気補正を100分の一秒単位で決定することがシステム上可能と同中将は語る。この結果が将来のABLシステムにも応用される。ABLの基本任務は打ち上げ後の加速段階にある弾道ミサイルの動力部にレーザー光を照射しミサイルを破壊することにある。オライリー中将はABLには「スリーストライク」の考え方で対処していると話す。一番にシステムをスカッドミサイルと同等の目標を対象に試験し、早くて今年9月になるが10月の可能性が高いという。これが失敗に終わると、年末に再度実施される。最後の予定は来年春で、仮に毎回失敗するとゲイツ国防長官に対してこれまで数十億ドルを支出してきた同計画の今後について相談しなくてはならなくなるだろう。ミサイル撃墜テストに先立ち、技術陣はABLの光学システムに手を加え、「第二世代」光学系装置として汚染への耐性がつよいものに換装するという。ただし、この計画の障害となりそうなのが使用している 747-400F母機の「調子が悪くなっている」ことだと中将は説明。同機の油圧系統とブレーキで問題が生じており、その理由の大きな部分は同機にレーザー装置を搭載する際に同機が地上待機となる時間が長かったことにある。「飛行開始直後の問題発生を経て同機は飛行可能状態に戻り現在は定期的に飛行しています」(ボーイングABL担当副社長 マイケル・リン)「先週も数回の飛行を実施しました。初期段階の問題は急速に解消しつつあることがわかりました。」 

2010 年度国防予算要求ではゲイツ長官はABLは研究プロジェクトとしてのみ維持し、今後の実戦配備の可能性を排除している。オライリー中将もこの方針に同意しており、化学レーザーシステムの実験を継続することで将来装備の実用化可能性に有益な結果をもたらすと考えている。

コメント: 要はYAL-1機は実用化にはほどとおいということですが、このような努力が次世代の新しいシステムを生む貴重なデータとなりますので、笑い飛ばすわけにはいきませんね。ミサイル発射、捕捉とともに瞬時にミサイルが破壊できるのであれば、中国や北朝鮮にとっては一番実用化されてほしくない技術であるのは確実です。

2009年6月4日木曜日

F-22を求める日本の動きはこれからか


Japanese F-22 Campaign Lives On


aviationweek.com 6月3日


【なぜ日本にF-22が必要か】日本の防衛関係者はF-22導入を断念しておらず、日米の実務者サイドは中国の戦闘機能力向上と巡航ミサイルの脅威に注意を喚起するとともに、将来は尖閣諸島近辺での石油ガス開発をめぐり、領有権を主張する各国との外交対立が武力衝突に発展する可能性も予測している。同地区への飛行距離が長いことと近隣に有効な航空基地が不足しているので航空自衛隊には固有の運用上のニーズが生じている。KC-767空中給油機とE-767空中早期警戒機で該当諸島のパトロールは可能なものの、日本と中国の間の広大な海洋上空に十分対応可能な速度、高度、ステルス性、攻撃精度、小型目標を捕捉可能なレーダー性能を持つ戦闘機を上空に配備する必要がある。小型目標の捕捉能力は巡航ミサイル対抗手段に必要で、精密攻撃能力は該当諸島が仮に敵勢力に占拠された際に必要だ。
【導入計画は】 日本側関係者は一貫して装備規模の拡大は否定しているのでより高性能な機体を導入する必要に迫られている。FーX計画でF-22クラスの高性能機合計20機から60機を購入するのが目標。その後のF-XXでF-35クラスの機体をもっと多く導入する目論見だ。ともに既存機体を差し替える予定。
【輸出禁止決議をどうするか】米国議会がF-22の外国売却を禁止している点が引き続き障害だ。ロッキード・マーティンが米空軍装備の外国向け販売をめざしたロビー活動はしていないと否定しているものの、議会内には米空軍にF-22に輸出可能なタイプの生産をすることで生産コストを下げる可能性を求める決議の動きがある。米国航空宇宙関係者は海外販売の可能性は不確実でF- 22生産ライン閉鎖の日程が未確定であることから考えられるいろいろなオプションとそのコスト効果について混乱が生じているという。「オプションのうわさがあがっていますが、輸出禁止方針を変更できるのは議会であり、今のところだれも60機の追加生産契約が有効になっているのか見えていません。補正予算での追加4機購入が確実でないとなると、ロッキード・マーティンもラインを完全に閉鎖するのか、生産再開を前提に製造停止するのか決めかねるでしょう。」 
【空軍も否定的」 米空軍高官も先週開催された空軍参謀総長ノーマン・シュワルツ大将との検討内容はきわめて否定的なものだったと語る。「187機を越える生産案はありません。空軍はゲイツ長官方針に反対できませんし、議会に対しても本件ではかん口令を受けています」(同高官) ロバート・ゲイツ国防長官は先月の公聴会で予算案作成期間中のいわゆるかん口令はオバマ大統領が2010年度予算要求を公開した段階で解除となっていると証言している。そのため、軍関係者は今では議会に対し意見を具申することが可能なはずだ。
【生産ラインの閉鎖」 上記空軍高官は本誌に対しF-22生産停止の費用は少なくとも400百万ドルで実際はもっと高くなると見ていると明らかにした。議会は年ベースでこれ以上の生産を続けても政治的なメリットはないと判断。「追加生産案が議会を通過する可能性は少ないと思います」(同高官)最近出たランド研究所の報告書では生産ライン閉鎖の方法次第で費用は250百万ドルから550百万ドルまで分かれるという。
【日本からの動きを待つ?】 ロッキード・マーティンとペンタゴンはF-22生産ライン停止協議をまだ始めていない。「F-22の対日販売の動きはまだありません。ゲイツ長官と国防総省はF-35の導入を押しています。しかし、今F-22が12機ラングレー基地から沖縄に展開中で航空自衛隊と共同飛行しています。もし日本がF-22を本当にほしいのであれば、自ら議論を提起すべきではないでしょうか。」(米空軍関係者)

2009年6月2日火曜日

グローバルホークが不時着


Global Hawk Emergency Prompts Hard Landing

aviationwek.com 6月1日

米空軍所属グローバルホーク無人航空機システム(UAS)が飛行中に緊急事態に遭遇し、エドワーズ空軍基地に5月28日不時着する事態になっていたことが空軍関係者から明らかになった。緊急事態は同日夜間に発生し機体は乾湖に着地したという。該当機はブロック20の機体で主翼を延長し、3,000ポンドのペイロードを搭載可能。空軍はこの型にゆくゆくはU-2が実施している高高度監視活動の実施を期待している。飛行は同機の離発着重量増加を目指した限界テストの一環と思われる。

ただ、事故発生のタイミングが悪い。アシュトン・カーター(新任ペンタゴン調達トップ)が国防調達委員会(DAB)の検討の一環としてグローバルホークを取り上げる予定の前夜に発生したのだ。米空軍関係者がカーターに対し同事件を説明したが、調査結果未着につき結論は伝えていないという。DABはブロック20/30のグローバルホークの初期作戦能力試験および評価方法を作成中。

2009年6月1日月曜日

北朝鮮が開戦に踏み切ったらどうなるか





North Korea's Annoyance Campaign

aviationweek.com 5月31日

ご注意 以下は昨日のエントリーの続きです。

北朝鮮が大規模な戦闘行為に突入する可能性は低いが小規模な行動は起こりうると米軍情報関係者は見る。

【北朝鮮のロジック】 一見すると支離滅裂な北朝鮮だが、同国が平和な状態を受け入れられないのだと考えると理解できる。完全な平和が実現すれば、同国は第3世界の一ヶ国にすぎず世界に対する影響力はなくなってしまう。かといって開戦に踏み切っても勝利の可能性はない。「北朝鮮は国際社会から無視されることは甘受できないのです。これまでは西側の反応をみて同国も行動してきました。ばかげた話ですが、同国の思考方法は合理的です。戦略論からは相手方の行動に対応するのではなく、こちらから行動を選択すべきなのは明らかなのですが。北朝鮮の次の行動を予測するのは困難ですが、予想はできます。合衆国が過剰反応することはむしろ危険です。」(朝鮮半島情勢を長年にわたり見てきた空軍関係者)

【警戒態勢引き上げ】 休戦状態を停止するという北朝鮮発表のあと米韓連合軍は警戒態勢を引き上げている。空軍の分析専門家は今後もミサイル発射実験、核実験の追加、核開発計画再開、ミサイル・核技術の輸出復活、サイバー攻撃ならびに非武装地帯での軍事衝突を予測。

【対艦ミサイルの脅威】 国際的に懸念が広がっているのは北朝鮮が対艦ミサイルの開発と試射に成功していることだ。西側情報筋がKN-01と呼称する同ミサイルはソ連時代のスティックスを原型としつつ、ロシア製のSS-N-25「スイッチブレイド」に類似している可能性がある。中距離射程で海面をすれすれに飛ぶ同ミサイルが本格生産に入り、相当数が配備となると侮りがたい脅威となるだろう。

【核実験の影響①】 あたかも戦争状態のような宣伝文句が流布しているが、国連安全保障理事会決議で北朝鮮船舶の臨検を認める可能性が出てくると、韓国が「核兵器輸送拡散対策」を支持する姿勢を示した。北朝鮮はこれを宣戦布告とみなすと警告。

【核実験の影響②ミサイル防衛の整備】 今回の核実験で日本と韓国はそれぞれ北朝鮮ミサイル迎撃の体制整備を早めると予測される。北朝鮮がミサイル搭載可能な弾頭兵器を実用化するにはまだ数年かかると見られるが、韓国はその間に弾道ミサイル防衛の初期段階を完了する必要がある。中国にはミサイル防衛が近隣諸国に広がるのは望ましくない。中国の核兵力は米ロの比較では小規模なので到達前に迎撃されるのは甘受しがたい。

【北朝鮮への情報収集活動】 「北朝鮮は当方のISR能力を考慮して多くの強化陣地や地下施設を整備してきました。」(第7空軍情報部長 ゴードン・イスラー大佐) 韓国ではISR機材各種を組み合わせて運用している。陸軍のRC-7、C-12/21ガードレイル、空軍のU-2が共通の飛行場から運用されている。「効果を挙げるために、各機種をネットワークで指揮命令管制を行う部門や個別顧客(戦場の各兵士まで含む)と接続して運用しています。ISRではデータの出展がどうというよりもデータの共有、融合が大切です。」(ジョセフ・ディヌオボ大佐 空軍ISRグループ司令)

では分析専門家は北朝鮮の何を見ているのか。

「長年にわたり北朝鮮の軍事演習を監視してきました。同国の補給活動を評価するのは大変困難です。燃料の備蓄がどれだけあるのか。大部分は地下に貯蔵されています。燃料消費量を推察するにも備蓄量が不明で、備蓄状態も不明では大変困難です。ただ、同国が資源不足に悩んでいる状態はわかっています。」(イスラー大佐)

【開戦シナリオ】 実現の可能性はないと見られているが、ある分析専門家の予想開戦シナリオはこうである。歩兵部隊が国内各所を移動して道路閉鎖、渋滞を避ける。ソウルを集中的に砲撃し、機甲部隊は当初は待機させる。補給能力の不足を埋めるため捕獲した敵軍車両と燃料を利用する。攻勢は7日から10日継続すると予想される。この中で米韓連合軍の最大の課題はソウルへの砲撃とミサイル攻撃をどれだけ阻止できるかである。資源不足と戦闘経験の欠如の中で、北朝鮮も目標を絞り込む必要があり、ソウルを攻撃する能力を誇示することが交渉材料となる。

空の戦闘について以下の追加情報がある。開戦となると米韓両空軍は一日あたり3,000回の出撃を行う予想で、北朝鮮の防空網の目標となってしまう。予想外に練度をあげており、非脆弱性も増している同国の防空体制に対して連合軍パイロットは反応時間の余裕のない事態に直面することも予想される。

北朝鮮が配備する旧式といわれるSA-5を例にとると、早期警戒レーダーが飛行目標の可能性あるものを捕捉し、SA-5の目標追跡レーダーに三次元目標の解を提供し、発射となる。この間に攻撃側のレーダー警報受信機は同機が捕捉あるいはロックオンされており、ミサイル発射が目前に迫っていることを警告する。「戦闘情報管制管理C4Iの進歩で電子戦能力を火器管制装置に直結したことで、ミサイルの目標追跡レーダーを稼動する時間が短くなりましたので、旧式ミサイルがいっそう脅威度をましているわけです。」(マイク・ケルツ准将 第7空軍副司令官) 

「開戦初日から二日目にかけて北朝鮮が発射する重砲は25万発にはなるでしょうから、長距離砲を隠蔽するトンネルを攻撃して火砲の威力を減らす必要があります。そこで、攻撃目標を組織的に個別選択して排除していくこと荷になります。」(ケルツ)

心強い話も聞いた。「非運動性兵器(爆発しないもの)を装備に加えているところです。情報戦や情報作戦というよりもネットワーク戦、サイバースペース攻撃というべきであり、信号情報の破壊となるでしょう。北朝鮮の継戦能力を破壊か無力化するには72時間から84時間あれば十分でしょう。」 (ケルツ准将)

【開戦は考えにくいが】 ではなぜ北朝鮮による全面攻撃は実現の可能性が低いと見られるのか。答えは北朝鮮には敗北したらおしまいであり、通常兵器戦闘になれば同国には勝ち目がないためだ。「北朝鮮は小規模武力衝突、兵器実験、プロパガンダで当方の神経を逆なでしてくるでしょう。しかし、本音は本当の戦争になる前に交渉を開始して軍事挑発はやめたいと考えているはずです。軍事力を使う気がないのは、使えば敗北して全部喪失してしまうからです。同国はこれまでも崖っぷちを歩いてきましたので今回もその中のひとつかもしれませんが、外部から見ていると北朝鮮政府は本当に衝動的な選択をしようとしているのか、実は裏にもっと重要な政策を実施しようとしているのか判断がつきかねるのが実態です。」(イスラー)

(写真 上から SA-5対空ミサイルKN-01 RC-12ガードレイル偵察機 SS-N-25スウィッチブレイドKN-01ミサイルの原型スティックス ぜんぜん似ていませんが。)

2009年5月31日日曜日

北朝鮮の軍事行動に備える米韓軍

U.S. Experts Weigh North Korean Capabilities

aviationweek.com 5月28日烏山空軍基地にて

北朝鮮関連の情報収集は一筋縄ではいかない。人的情報源がわずかであることに加え、険しい地形、地下施設の分布、また上空飛行ができないことがその要因であると米軍専門家は明かす。だが、米国は韓国と共同でこの困難な作業にあたっている。「情報収集は通常兵力の対峙の最後の防御です。開戦が現実のものとならないことを祈るばかりですが、毎日の準備は怠りません。警告時間の余裕がなく、厳しい状況ですので、第一に考えているのは相手側対象の識別と警報発令です。」(ゴードン・イスラー米空軍大佐 第7空軍情報部隊司令官)
【ソウル攻撃の可能性】 北朝鮮軍のソウル攻撃態勢は均衡がとれておらず、1950年に成功した攻撃で米軍・韓国軍を釜山まで追い詰めた経験を再現することは不可能と見られる。韓国軍と米軍の最大の課題はソウルへの砲撃、ミサイル攻撃の阻止にある。北朝鮮は特殊作戦部隊、戦術ミサイル(スカッド改良型)、大量破壊兵器(化学弾頭)と多岐の作戦能力の維持に努めているようだ。
【北朝鮮の装備近代化】「装備の近代化もすすんでいます。テポドン2の追跡誘導はいっそう正確になっており、射程距離も伸びてきました。」(ジョー・ディヌオボ大佐 在韓空軍情報収集偵察監視グループ司令官)「コンピュータ利用による指揮命令能力が向上し、防空網のネットワーク化を進めています。ただ、資源に乏しいため演習経験が不足しており、作戦目標も限定しています。その結果、ソウル攻撃能力を示すことで交渉材料としようとしているのです。」(同大佐)
【開戦のシナリオ】 米韓連合軍の防空体制のあらましが本誌に判明した。大規模攻撃が北から開始の場合は、韓米軍は一日あたり3,000回の出撃を実施し、「非常に能力の高い防空網」に対処する。「北朝鮮の軍事力の多くを目標とする」(マイク・ケルツ准将 第7空軍副司令官)ものだという。「相手側の配備には旧装備としてSA-2、SA-3、(長距離の)SA-5がありますが、コンピュータと光ファイバーで非常にうまく統合しています。今や予想可能な周波数をもらすこともありません」(同准将)「控えめにみても北朝鮮は開戦24時間から48時間以内に25万発の重火器を発射する可能性があります。長距離射程の砲兵陣地を構成するトンネル構造を攻撃し、発射回数を減らす必要があるのです。また、系統だって目標を判別し、攻撃することになるでしょう」(同准将)
【開戦には至らない?】 ただし、軍上層部は金成日政権には失敗が許されない状況であるために開戦に一気に踏み込み、結果通常戦で米韓連合軍に敗北するとは考えていない。毎回崖っぷち状況の繰り返しが続いているが、確かなことは誰にもわからない。本当に北朝鮮政府が衝動的な行動に出るのか、実は裏でもっと大きなゲームを進めているのか見極めようとしている状況だという。

コメント:これから数週間あるいは数ヶ月は目を話せない状況が続くでしょう。イラク、アフガニスタンとは異なり仮に軍事作戦展開となると米軍は相当の量の集中的な作戦を実施するでしょう。開戦とならないことを祈りますが、平和は期待するだけでは実現できません。力には力で対応する冷徹なアプローチが必要です。それにしても冷戦構造の名残りのような古めかしい状況がまだこの地域に残っているのは残念でなりませんが、一気に片付けるのがいいのかもしれません。

KC-767J IOCを獲得


ボーイング社ウェブサイトより

5月26日 セントルイス発 ボーイングは本日KC-767J空中給油機3機が初期作戦能力(IOC)を獲得し、航空自衛隊(JASDF)部隊に正式に配備となったと発表。「日本にとっても、当社の給油機事業にとっても記念すべき日になりました。JASDFの歴史上初めて空中給油能力が利用可能となり、同時に人員・貨物輸送能力も向上になります」(給油機事業担当副社長デイブ・ボーマン) 防衛省およびJASDF関係者はKC-767Jを4月に小牧基地での式典で「作戦実施可能状況」と認定していたが、それに先立ち同機は一年以上の技術評価を受けていた。発注合計4機のうち三号機は3月にウィチタ工場での改修後、JASDFに予定通り予算範囲内でフェリー飛行の後引渡しされている。一号機、二号機は2008年2月および3月に引渡し済み。残る4号機は代理店伊藤忠商事に12月に納品ののち、2010年第一四半期に防衛省へ引渡しの予定。現在ウィチタ工場改修センターで最終工程に入っている。767-200型をベースとしたKC-767には当社の発達型空中給油用ブームと遠隔空中給油操作システムII型が搭載されている。日本向けの機体は給油任務、輸送任務への切り替えが可能でいずれの場合も空中給油能力を発揮できる。ボーイングはイタリア空軍(ITAF)向けKC-767給油機2機の総合飛行試験を実施中であり、別の2機向けの機体改修も実施中。イタリア向け初号機の引渡しは今年中の予定。

DARPAはすごいことを考えています


Darpa Plans Triple-Target Missile Demo


aviationweek.com 5月22日



【モード切替が可能なミサイル】 DARPA(国防高等研究計画局)の2010年度予算要求には32.5億ドルで新型高速長距離空中発射兵器を開発し、対航空機、ミサイル、防衛網突破を目的とするものが計上されている。三つの目標に対応できるので、T3(Triple Target Terminator)と呼称され、戦闘機・爆撃機および無人機の外部あるいは内部搭載され、空対空、空対地の切り替えが可能で、一回の任務で対象とできる目標の範囲が広がることになる。2010年度はまず7百万ドルでT3計画を開始させ、推進動力、マルチ・モードのシーカー、データリンク、デジタル誘導制御、発展型弾頭の技術要素を求めることから始める。

【他にもこんな変なものがいっぱい】 その他の新規事業で2010年度から開始を目指すものは以下の通り。①自動空中給油: 高高度で無人機への宮中給油をプローブとドローグを装着したグローバル・ホークで実施する。②トランスフォーマー車両: 地上走行可能な航空機で、ハイブリッドの電気ダクトファン推進により、1から4名を二時間飛行させる ③潜水航空機: 飛行と潜行が可能な機体。そのほか企画中のものにサイレントトークがある。これは発声なく神経信号により特定の語彙を伝えるもの。「頭脳は単語固有の信号を形成し,声帯に電気インパルスを送っている」とDARPAは説明する。脳波計を使い、この「発声信号」を捕らえ、各信号を単語レベルで整理することを目指し、機密性のある意思疎通をめざすという。DARPAの狙いは第一段階として戦闘状況でよく使われる100語の特有の脳波パターンを把握すること。
コメント: やっぱりDARPAのプロジェクトには相当奇妙なものが入っていますが、これが情報操作なのかはわかりません。とまれ、創造力の維持発展のために技術的な挑戦をあえて進めているようです。「変なもの」と書きましたが、DARPAは懸命に実現を追及するのでしょうし、その中から本当に実用となるものが生まれるのでしょう。自動空中給油はその中でもまず早く実用化してもらいたいものです。

2009年5月30日土曜日

USAF 戦闘機の機数不足を既存機寿命延長で乗り切れるか

USAF F-15s May Get Service Life Extension

aviationweek.com 5月26日

米空軍はF-15C/D/E型の疲労試験を実施し、同機の耐用年数延長化(SLEP)が可能性を判断する。同機は約8千飛行時間の耐用性があると予想されており、マーク・シャックルフォード中将(調達副責任者)はSLEPでこれが12千時間になるという。

【F-16にもSLEP】  同時にF-16にもSLEPを実施し、同機の耐用は4千時間から8千時間に延長となる。旧式化しつつある第四世代戦闘機の耐用年数延長は空軍にメリットが大きいのはF-16・F-15部隊がF-22・F-35に入れ替わる際の機数不足が予測されているから。

【州軍の機体更新へ懸念】 本件は議会関係者にも切実な問題。ガブリエラ・ギフォーズ下院議員(民主 アリゾナ州)は州軍鉱区部隊のF-16・F-15が次期機体の手当て見込みなしに退役する予定であることを危惧している。F-35が実用化となるまでには空白が生じる。空軍は2010年度に戦闘機合計250機を退役させる計画。ギフォーズ他の議員は5月20日の下院軍事委員会空陸小委員会公聴会で空軍将官3名を州軍航空隊の現役機から新世代機への移行案について激しく追及。空軍側は四年に一度の国防体制見直しの後11月に移行案発表の見込みと回答した。

【深刻な州軍機材の不足】 同案の内容は州軍航空隊合計18飛行隊のうち2飛行隊にF-22を配備するもの。4飛行隊に性能改修型「ゴールデン・イーグル」を配備し、残る12飛行隊については未定。無人機が配備される可能性もあるし、飛行任務そのものが実施できない隊も出るかもしれない

2009年5月28日木曜日

北朝鮮の核実験データを待つアメリカ


U.S. Awaits North Korean Test Results


aviationweek.com 5月27日 

韓国 烏山基地発

北朝鮮による二回目の地下核実験ならびに一連のミサイル試射が今後のトラブルを引き起こすことは明らか、との立場を在韓米軍のトップは取っている。ただし、韓国への攻撃の可能性は小さいと見ている。

【黄海上で衝突?】 想定リストの上部には黄海上の衝突があり、韓国、北朝鮮、中国の漁業利権が絡み合っている。軍事アナリストはまもなくはじまる蟹漁が引火点と指摘。核兵器開発を進める北朝鮮の行動は現政権維持のための戦術的な意味合いが強いと見る向きがある。その他、大きなイベントとなる可能性があるのは弾道ミサイルの追加発射、ミサイル・核技術の輸出拡大、およびサイバー攻撃。

【まだ分析が出来ない】 合衆国は5月25日に起こった核実験の整理で手が回らないのが現状。確実な証拠はマグニチュード4.7の地震計記録しかない。2006年10月の実験時の記録は4.1。確実なデータは実験後4日以上たたないと入手できないが、放射能を帯びたチリが地下実験場から出て日本海上空を漂えばWC-135Wコンスタント・フェニックス機が大気標本を収集できる。同機は第55飛行大隊第45偵察飛行隊(ネブラスカ州オファット空軍基地)の所属。2006年実験の際は分析に3週間以上が必要であった。

【5月25日実験と今後の動向】 情報関係者の一人は今回の実験規模は「2キロトン以下で前回よりも大きいものの予想規模を下回る」と語るが、データ詳細がまだない現在では単なる推察に過ぎないことに注意。また同関係者は「実験は2006年と同じ地下施設で実施されています。実験継続に必要なプルトニウム貯蔵量は十分あると見ています。」と語る。ただ、今回の核爆弾原料がプルトニウムなのかウラニウムなのかはまだ不明。さらに弾道ミサイル発射テストが近々に実施される可能性について「活動は認められるものの、断言するのは困難」と同関係者は話した。

2009年5月27日水曜日

武器輸出を解禁する日本

Japan to Drop Arms Export Ban

aviationweek.com 5月26日

日本は武器三輸出原則を緩和し、最終的には西側防衛産業との統合プロセスが開始となるだろう。長年にわたる国内技術調達方針を変えて、武器開生産の共同開発を解禁する。一括禁止は1976年より続いており、その間に政府はアメリカと弾道ミサイル防衛開発を可能とした経緯はある。同原則は法律の定義がない政策方針であり、政府により変更は可能。テロ支援国家・人権軽視国家・輸出入管理の不十分な国家への武器輸出禁止は継続。武器輸出禁止の終了により日本国内の防衛産業はコスト削減と需要拡大を期待できると日経新聞記事は報じているが、政府筋の発表内容を基にしているのは明らか。

【F-Xへの波及】 次世代戦闘機がコスト低減と技術上の恩恵を受ける最初の例となろう。ゲイツ国防長官は日本政府に対し、ロッキード・マーティンF-35ライトニングの購入を求めていると報道されている。そこで、武器輸出禁止の解除は日本にF-35生産またはその他F-X候補機の生産がしやすくなることを意味する。マクダネル・ダグラスF-4ファントムの後継機として6機種を検討中の日本の購入予定は合計50機。ロッキード・マーティンのF-35およびF-22ラプター、ユーロファイター・タイフーン、ダッソー・ラファール、ボーイングF-15FX およびF/A-18E/Fスーパーホーネットである。米議会はこれより先にロッキード・ラプター輸出の可能性に道を閉ざしている。

【先制攻撃論】 それとは別に日本が平和主義色を薄め、自民党の内部に自衛隊による敵基地攻撃を自衛のため許す提言を出す動きがある。北朝鮮による第二回原子爆弾実験が5月25日にあり、防衛目的の攻撃を容認する政府決定が出やすくなってきた。ただし、この考え方はまだ全面支持されていない。

コメント: 日本国内報道では輸出禁止の「緩和」なのに本記事では「解禁」です。この差はなんでしょうか。記事を読む方は日本も武器輸出が可能となったと理解されるのではないでしょうか。あるいは政府の真意が英語記事と同じであれば国内向けには「温和な」表現しか使っていないことになります。緩和と解禁は同じではないかと思うのですが。

2009年5月25日月曜日

国防総省に巨額の非公表支出支出が見つかった

DOD Pays Billions For Unnamed Contractors
aviationweek.com 5月22日

ペンタゴンは2008年度の「その他支出」のうち総額27億ドルを超える規模を「非公表」の契約先に支出している。国防総省文書ではきわめてまれな事例が同省の契約データベース分析から判明した防衛関連アナリストの言では今回の取引は極秘事項扱いで情報関連とのこと、かつ議会の監督関係者には契約先名称および実施内容の情報が提供されているという。

【その他支出全体の規模】 同年度のその他支出全体はおおよそ70億ドルで、同年度の国防総省関連予算項目の中では8番目の規模となっている。「その他支出」がペンタゴンのトップ20支出項目に入ってきたのはこの10年間ではじめてのこと。非公表業務のうち、大部分の24億ドルがイラク関連の取引行為とされており、残りはアフガニスタン向けである。アナリストは両国関連で千を超える企業体がペンタゴンとの取引のために設立されているという。

【では内容は?】 今回の「非公表」契約先はその他支出の38パーセントを占めただけでなく、この不明企業が合計7,950の取引のうち85パーセントを占める規模であることに注意。文書中に記述が省かれたことに疑いの余地は少ない。契約先の名称が「非公表」ということは秘密のアクションがあったということとアナリストは見る。たとえば、衛星関連の調達を隠蔽することはよくあることらしい。契約先社名が黒塗りされたり、隠されている場合の大多数は契約自体が不成立の状態であることを意味する。具体的な契約内容を公表するよりも、コードを表示するだけの場合もある。しかしながら、ばらばらに表記されている表示内容を組み合わせても、衛星あるいはその関連との関係を示すものは出てこない。また、公表されている内容の中には軍事情報収集活動と重なるものもあるという。2008年度補正予算からペンタゴンは総額49億ドルを情報収集活動に支出済み。
コメント: 要はわからないということですが、相当な規模のプロジェクトが突然その他支出にもぐりこんできたということですね。これまではCIAはじめとするブラック支出がさりげなく、隠されてきたのですが、あまりにも唐突な規模と出現タイミングです。衛星でない情報関連となるとやはり何度も噂される超高速有人偵察機でしょうか。

2009年5月22日金曜日

イタリア陸軍向けICH-47F


Italian Army Signs Deal For CH-47F Chinooks

aviationweek.com 5月14日


アグスタウェストランドはイタリア陸軍向けICH-47Fチヌーク大型ヘリ16機受注分の一号機を2013年に納入する。契約は総額12.2億ドルで5月13日に調印された。契約内容には当初5年間のロジスティック支援および追加オプション購入4機を含む。当初契約は昨年秋に調印の予定であったが、予算不足により延期となっていた。このため、納入予定は一年間遅れることになった。

【配備計画】 チヌーク新造機は陸軍航空隊第一連隊(ローマ近郊ビテルボ)に配備される予定。ICF-47の導入はアフガニスタンでの作戦行動で既存ヘリが消耗しており急いで必要とされている。イタリアは同機を陸軍特殊作戦部隊用(現在派CH-47C+を使用中)にも使いたい意向だったが、この希望は「輸出妥当性」が理由に却下された。その中には空中給油用ブーム、低高度航法レーダーおよび改良型機体防衛装置として指向性赤外線妨害装置(DIRCM)ミサイル用のジャマーが含まれていた。F型の基本構成は特殊部隊用ではないが、イタリアはオプションを評価検討し、ICH-47FにDIRCM用にイタリアのエレットロニカとイスラエルのエルオプが共同開発中のジャマーを後日装備することにしている。

【生産体制】 アグスタウェストランドがICH-47Fの主要契約者となり、システム統合と最終組み立てを同社のベジアーテ工場で行う。ボーイングはフィラデルフィア工場から同機の胴体を供給する。アグスタウェストランドとボーイングはCH-47生産をめぐる提携関係の成立に時間がかかった。その内容は今回の契約内容を超えるもので、フィンメカニカの子会社がCH-47の生産販売で英国含むヨーロッパに加えてモロッコ、リビア、エジプトで権利を有する。

【中古機輸出】 アグスタウェストランドはさらにイタリア陸軍と交渉中で現役使用中のCH-47C+ヘリを改修修理の後、中古機市場へ販売する可能性を模索している。両者で合意が出来ていないのは各機の残存価値に関する点。イタリア陸軍でのCH-47Cの運用は21機までに減ったが、当初の調達合計は40機であった。チヌークの需要は国際的に高いことから、C型は運用機がすぐにでもほしい国や新造F型には手が出ない国から買い手が見つかるだろう。

【トルコも購入か】 トルコも最低10機のチヌーク購入に意欲を示している。同国政府の決定でCH-47Fを米国の海外軍事販売のチャンネルで購入することになれば、ボーイングが担当することになるが、商用契約を選べば、アグスタウェストランドが契約主体となる

コメント: ICHという呼称はイタリア向け機体という意味ではなくImproved Cargo Helicopterの略称です。

2009年5月17日日曜日

NASAの宇宙発電システムがピンチ

Aviationweek 5月11日号より

NASAのプルトニウム238のストックが枯渇している。核兵器製造の副産物として太陽光の利用が困難な範囲で活動する宇宙探査機の発電用に使っており、深宇宙探査の継続のために早急に生産再開が望まれると全国研究協議会は考える。オバマ政権の2010年度予算案でエネルギー省分には30百万ドルでアイダホ州およびテネシー州の原子炉を再稼動させ、宇宙機のラジオアイソトープ熱電発電機(RTGs)用の燃料を確保する案が含まれている。Pu-238は1980年代以降は各処理場で製造されておらず、NASAのロシア側供給先でも貯蔵量が減少している。NASAはすでにPu-238供給不足を織り込んでミッションの規模縮小を開始している。ただ、オバマ予算案の30百万ドルは頭金にすぎない。生産再開の費用は総額で150百万ドルを下らないとの見積もりがある。

2009年5月16日土曜日


Senators Push Panel For 15 More C-17s

aviationweek.com 5月13日


上院議員19名の連名で上院歳出委員会に対し2009年度緊急戦時追加予算案にC-17輸送機の追加発注を含めるように求める動きが出ている。同委員会は定数30名でイラク、アフガニスタンに加えて新型インフル対策として総額853億ドル内容の支出案を5月14日に採択する予定。書簡はバーバラ・ボクサー(民主 カリフォルニア州)とクリストファー・「キット」・ボンド(共和 モンタナ州)両上院議員が起草し、上院に対し追加分として15機のC-17調達に必要な予算を盛り込むよう求めている。C-17はボーイングのロングビーチ工場(カリフォルニア州)で組み立てられており、ボンド議員の選挙区。議会内のボーイング支持勢力は以前の生産中止の動きを何とか阻止してきたが、C-17関連で43州合計3万人の雇用があることを強調している。書簡では輸送需要の増加要因としているのはアフガニスタン国内の作戦の増加に加え、ドイツに新設されたアフリカ軍団に陸軍と海兵隊部隊が増強されること。

【国防長官は生産中止方針】 ゲイツ国防長官はC-17調達は205機で終了としたいと言明している。ゲイツ長官はC-17生産ラインの停止に必要な予算を2010年度予算に計上している

【下院予算にもC-17追加購入】 下院歳出委員会の戦時補正支出法案は総額943億ドルでその中には31億ドルでC-17を8機、C-130を11機調達する内容が盛り込まれている。

コメント: C-17の運用機数が大いに越したことはないのは利用者側の意見でしょう。一方、苦しい財政事情の中で国内を優先するオバマ政権(この内向き姿勢が大きな代償をともなうことになります)が予算捻出のためプロジェクトを整理する方針のため、政界で意見が分かれているのでしょう。一方、わがC-Xの開発が遅れると、C-17の購入あるいはリースというオプションが出てくるのでは。その意味でもC-17生産ラインが本当に終了となるのかここが正念場です。

2009年5月10日日曜日

米空軍2010年度予算の概要


USAF 2010 Request Lacks Major New Initiatives

aviationweek.com  5月7日

米空軍の2010年度予算概算要求総額1,605億ドルは毎回新規プロジェクトを加えてきた例年に比してさびしい内容。C-17およびF-22の生産終了で空軍予算案には新規プロジェクトはわずか二つとなり、439百万ドルでKC-135空中給油機の後継機種選定を再開することと、9.5百万ドルで共用垂直離陸輸送機計画(CVLSP)を開始することのみ。後者は空軍宇宙軍団が核兵器運送の支援およびアンドルース空軍基地で要人輸送任務の支援に使用中のUH-1Nヒューイの後継機。

【予算の全体構造】 2010年度要求額は前年度査定額の1、614億ドルを下回る。ただし、後者は補正予算分を含む。2010年度分には戦闘作戦の追加予算160億ドルを期待。空軍がブルートップラインと称する自由裁量予算総額は約20億ドルの増加で、インフレを考慮すると実質減額とパトリシア・ザロキーウィッツ空軍予算局長は説明。同局長によると今年の空軍予算は人員削減の動きが止まり、来年度は総員331,700名体制となることもあり「均衡がよくとれている」とのこと。

【F-22の将来は未決】 C-17生産ライン閉鎖費用として91百万ドル、F-22生産ラインの閉鎖には64百万ドルが必要としている。ただし、F-22生産設備を「使える」状態で保存するのか、生産を完全に停止するかは未決定。(同上予算局長) 

【ISR機】 概算要求が強調するのが情報収集・監視・偵察(ISR)用機の予算ならびに核兵器体系の維持管理予算。後者は空軍内部で核兵器取り扱いの不祥事が頻発したため。ISR向けにはセンサー開発も含め9億ドルが要求されているとのこと。

【CSAR-X先送り】 次期戦闘捜索救難ヘリ(CSAR-X)調達および次世代爆撃機提案競技は先送りとするとゲイツ国防長官が4月6日に発表ずみ。CSAR-Xの延期でH-60M合計2機とHH-60Gペイブホーク合計95機を追加購入する。

【輸送機】 空軍は共用貨物輸送機(JCA)開発の管理を陸軍から引き受けるが、詳細は未整理。また、C-27J輸送機合計8機を購入する。

2009年5月9日土曜日

ファンタムレイ:ボーイング自社開発UAV



Boeing Unveils Phantom Ray Combat UAS


Aviationweek.com May 8, 2009


無人戦闘航空機ファンタムレイPhantom Rayは中止となったX-45からボーイングが自社資金で開始した短期試作プロジェクト。2010年にホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ州)での初飛行をめざす。ファンタムレイはX-45を単純に復活させるものではない。同機は政府の要求水準に具体的を満足するために作られておらず、他社と競合するものでもない。また、政府による指導監督の対象でもない。ボーイングは飛行実証後に兵器搭載、電子戦、情報収集、偵察、また指向性エネルギー兵器運用含む同機の運用可能性を実証する予定。

【ボーイング戦闘航空機の将来】 2001年に共用打撃戦闘機提案協議をロッキード・マーティンに奪われ、2007年には海軍向けの無人戦闘機システム(UCAS)をノースロップ・グラマンのX-47の前に敗北を喫し、ボーイングは戦術航空機事業の戦略を構築に苦労してきた。セントルイスが戦闘機生産の拠点であり、現在は韓国・サウジアラビア・シンガポール向けにF-15E派生型、米海軍向けにF/A-18E/FスーパーホーネットとEA-18グラウラーを生産中。この先の将来は未定だ。

【ボーイングの目論見】 国防予算が伸び悩む中、ボーイングにとってはファンタムレイ他のプロジェクトで世代機開発に技術陣を従事させる。また、設計スタッフも予算削減で人員削減となっているため従来の方法にとらわれない方法で航空機開発に挑戦せざるを得ない状況だ。海軍は再度提案競技を開催する予定で、おそらくX-47の飛行試験が終了する2013年より後となると見られるが、空母運用の次世代無人ステルス機を開発となる。ボーイングのファンタムレイ開発はその際には大きく生かされるだろう。

【社内開発】 ファンタムレイプロジェクトはボーイング社内では「リブループロジェクトProject Reblue」の呼称で2007年にコンセプトがまとまったもの。本格的開始は2008年6月。今月までは社内でも少数の幹部とエンジニアを除きその存在が秘密となっていた。

【ファンタムワークス】 以前は先端航空機システムズと呼称されていたファンタムワークスが2月に再発足された。旧名称の復活により、試作機製作の伝統も復活するとしている。同部門はこれまで新規プロジェクトの実現、将来技術の先取りをめざしてきた。同社は試作機製作を続け、技術を成熟させることでペンタゴンが今後必要とするニーズにこたえようとする。

【無人機への挑戦】 ファンタムレイはロッキード・マーティンが2007年に発表したポールキャットPolecat 無人機(同社スカンクワークスによるステルス三角翼の技術実証機)と形状がかけ離れているとはいえない。ただ、ポールキャットは三回目の飛行試験で墜落している。両社とも大型無人機市場でのノースロップ・グラマンの優位性に挑戦しようとしており、プレデターとリーパーの開発元のジェネラルアトミックスに対しても同じである。

【X-45を利用】 ファンタムレイの原型X-45Cは合計3機が空軍向け地上配備無人機運用の実証用に発注されていた。完成した一機をファンタムレイとするほか、ボーイングは二号機となるはずだったX-45Cの機体を保管している。ただし、エンジンは売却済みであり、同機はエンジンなしの状態で工場内に残っている。来年初めまでにジェネラルエレクトリックF404-GE-102Dエンジンを装着する予定。X-45の経緯は複雑だ。空軍主導のX-45と海軍の共用無人機(J-CAS)が統合されたものの、長くは続かなかった。空軍の要求水準は敵の防空体制の制圧にありボーイング案がこれに近く、一方で海軍案は長距離情報収集ミッションを空母発進で行うものであり、ノースロップX-47がこの目的にあっていた。空軍は2006年に同計画への予算支出を停止し、共同開発は頓挫。2007年にノースロップが海軍向け実証機製作契約を獲得。空軍が煮え切らない態度を示す一方、国防総省はボーイングの開発作業を支持。

【自動空中給油機能】 また自動空中給油の開発が重要だ。海軍もノースロップX-47にこの機能を追加要求した。原型のX-45機には給油受入装置のスペースが機体左側に確保してあった。ボーイングは開発当初から空中給油機能を計画していた。

写真 。形状が似ているというロッキード・マーティンのPolecat無人機。。原型のX-45B

2009年5月7日木曜日

P-8Aポセイドンの開発状況



Australia To Help Upgrade P-8A Poseidon

Aviationweek.com 5月6日

【オーストラリア国防省の期待】 オーストラリアはボーイングP-8Aポセイドン海上哨戒機購入の第一歩としてアメリカとの協定に基づき同機の改修作業に参画する。先週発表のオーストラリアの国防白書では空軍所属のP-3Cオライオンの後継機として有人機合計8機(ポセイドンが想定)および最大7機の大型無人機(ノースロップ・グラマンRQ-4グローバルホークを想定)を導入する計画。P-8A改修の第一段階スパイラルワンに加わることで同機の情報を入手でき、オーストラリア産業界にも機会が生まれる。また、P-8A改修に同国の意見が反映される可能性が高まると期待。ただ、同国の負担金額は未発表。同国のP-3Cの退役は2018年の予定。

【2号機】 一方、米海軍向けP-8A二号機T-2はボーイングのレントン工場(ワシントン州)で完成に近づいており、隣接するボーイングフィールドへのフェリーフライトが予定されている。同機はミッションシステムの試験に供され、一号機T-1は4月25日に3時間31分の初飛行に成功しており、二号機とともに海軍のテストプログラムに2010年の第一四半期に加わる予定。T-1は現在ボーイングフィールドでシステム艤装中。

【海軍におけるテスト予定】 T-1がフライトテストを開始するのは9月ごろの予定で、その後三号機T-3も加わり、シアトルを数ヶ月間は拠点とする。これは海軍がボーイングのフライトテスト実施能力をより多く利用してからパタクセントリバー海軍航空基地(メリーランド州)で引渡しを受ける方針にしたため。T-3は兵装システムのテスト機材となり同機の胴体部分はスピリットエアロシステムズ(カンザス州ウィチタ)よりレントンに今月到着の予定。
【構造上の特色】 P-8Aは737-800の胴体部分・尾翼を補強したもの以外にストレッチ型-900の主翼を強化して使う。胴体下部に兵装庫がある。また主翼下部に兵装装着部分があり、主翼の先端はウィングレットではなく、熊手状に傾斜角がついている。

コメント:前段はオーストラリアのかかわり方についてですが、記事の後半の方が情報量が多くなっていますので、オリジナルの表題はふさわしくありません。Aviationweek電子版では記事がよく表題と中身がつりあっていないのでちょっと注意が必要ですね。それにしてもP-8Aは就役期間を通じて改良を重ねていくというのが基本設計思想のようです。わがP-1はどうなのでしょうか。

2009年5月2日土曜日

大統領専用ヘリVH-71は復活できるか


AgustaWestland Pitches VH-71 Compromise

Aviationweek.com 5月1日

ゲイツ国防長官により開発中止と機種選考の仕切りなおしの方向性が示されてしまった次期大統領専用ヘリVH-71についてメーカーのアグスタ・ウェストランドは反論を展開しており、端的に言えばここまで開発が進んでいるのにやり直しはないだろうというもの。第一期契約分のヘリをスクラップにするよりも同社はしかるべく型式証明を取れば機体寿命は10,000時間あり、仕様要求性能の1,500時間を超えていると主張する。ペンタゴンは同機の使用年数は5から10年しかなく配備するのは無駄と考えている。改装のもととなるAW101型はすでにメーカーの言う飛行時間の証明を受けている。さらに、同社によるとこれまでに33億ドルが費やされており、あと35億ドルあれば第一期契約分の機体計19機を納入できると反論する。この経費合計額は当初のVH-71予算案に近いもの。同社はさらに1.5型と呼ぶ性能向上型の構想を持っており、これが具体化すると当初の計画性能を実現できるが、総費用は130億ドルの当初予算以内になるという。同社は先行生産型としては第五号機のVH-71を英国ヨービル工場から納入したところだ。CEOであるジュセッペ・オルシは実施予算は当初の二倍となってしまったが、ヘリ機体に限ると予算超過規模はわずか8パーセントかつ遅延は6ヶ月に留まっていると語り、これは全部設計変更(大規模なものが50件、小規模なものは800件)によるものという。同社の第一期契約分のVH-71機体は予定の9機がすべて完成し、ロッキード・マーティンによる装備等の完成作業を待つ状態となっている。

コメント:おさらいしておくと、老朽化進むVH-3(S-61)の後継機として合計23機を購入しようという計画があり、アグスタ・ウェストランドのEH-101を原型とするVH-71「ケストレル」が採択されていたのですね。ロッキード・マーティンがインテグレーターとなるといっても機体は外国製というのはいろいろ波紋を呼んだ選択であったはずです。その後性能が思ったより出ない割には大幅に予算が膨らんで、という悪い話題しか聞こえてこなかったので、ゲイツ国防長官も大鉈を切ったのでしょう。メーカーとしては層ですか、と引き下がったのでは話にならないので、ここまできてキャンセルはないでしょうと構えているわけですね。4月現在の国防予算案に同機は計上されていないようです。