2012年7月15日日曜日

UAVの世界普及は時間の問題

No Longer Just a U.S. Toy, UAVs Go Global


aviationweek.com July 12, 2012

戦闘の様相に革命をもたらしたUAVが米国で共用されて15年、しかし多数国がUAVの生産、運用を開始しており、グローバルな存在になってきた。
  1. 今のところUAVを本格的に運用しているのは米国初めとする少数の同盟国に限られる。米国製UAVの購入を認められたのは英国、イタリア、トルコだけでその他国の購入要請は不承認となっている。
  2. ただ急速に変化しつつある。米企業ジェネラルアトミックスGeneral Atomicsは非武装型プレデターの海外販を今年中に成約する見込みで、ラテンアメリカ、中東を有望市場と見る。
  3. 同社の国際戦略営業開発責任者クリストファー・エイムズChristopher Ames(退役米海軍少将)は「各国からの引き合いは活発」とファーンボロ航空ショーで語った。
  4. ショーでは同社製品の実際の運用シーンをイラク、アフガニスタン事例、インド洋上での海賊追跡事例で示し、エイムズは運用実績を誇る。
  5. 乗員生命というリスクを減らす他、燃料経費や人件費を大幅に減らすのがUAVの利点と強調している。「同盟側の運用事例で運用効果を目の当たりにしています。現場での実感は営業文句よりも上を行っています。」
  6. ジェ ネラルアトミックス(本社サンディエゴ)はドローン技術開発でパイオニアで、最初にバルカン半島で1990年台に運用している。イスラエルは無人機を重視 しており、模型飛行機愛好会から専門技術者を採用してきた。それを見て米空軍初めとする各国の空軍も最初は懐疑的だったものだ。
  7. だが9.11(2001年)以後の戦闘状況がこれを変えた。イラク、アフガニスタン、パキスタン、イエメン、ソマリア他で米軍はUAVの投入を増やし、多様な機種を運用。中には地上兵員が運用する超小型機種もあれば24時間滞空できるものもある。
  8. オバマ政権下でアルカイダ要員の殺害に好んで利用される機会が増えており、長距離スパイ活動にも投入されている。
  9. アフガニスタン国内の戦闘状況が下火になることで米国の無人機利用頻度が減ると見られるが、世界規模では逆に増えるというのが業界の見方だ。
  10. これまでのところ米国政府はUAVの海外販売に相当の影響力を行使している。例えば英空軍はアフガニスタンで運用する自軍UAVのパイロットをネバダ州の米空軍基地に駐留させている。これはもう継続不可能と専門家が見ている。
  11. 「あ る程度UAVに関心を持つ空軍部隊なら中程度の継続飛行時間がある無人機に偵察能力に加え武装も検討するでしょう」と話すのはダグラス・バリー Douglas Barrieでロンドンの国際戦略研究所の主任研究員だ。バリーは以前は本誌の報道スタッフ。「機体はステルスか非ステルスかもしれません。UAVの普及 がいまはじまりつつあるのです」
  12. プ レデター、長距離のノースロップ・グラマン製グローバルホークや極秘ステルス機のロッキード・マーティンのセンティネルを運用する米国は他国を引き離して いるのは事実だ。この中でセンティネルはイラン上空のミッション中に墜落し捕獲されている。ただし、米国優位の差は縮まっていく。
  13. 今 年のファーンボロ航空ショーで各国の大手航空機メーカーが自社UAVモデルを展示している。英国のBAEシステムズBAE Systemsは長距離タラニスTaranis ステルスUAVの試作機をホーク練習機と第二次大戦時のスピットファイヤ戦闘機の横で展示していた。
  14. 「めざしているのは次世代に一気に移行することであり、現在運用中の各機を研究することが勉強になります」(BAEで将来の戦闘航空機システムを担当する国際営業開発責任者マーティン・ロウ・ウィルコックス)
  15. イスラエルは自国製非武装型ドローンを多くの国に販売しているが、その他にも参入を狙う国は多い。ロシアのノーボスティ通信によりロシアは国産武装型UAVの初飛行を2014年にも実施する計画があることが明らかになった。
  16. 中国も同様の機体開発に関心を持っていることが明らかになっており、ロシアと中国はともにイランに対して捕獲したセンティネルを入手したいと申し出ている。
  17. 国際的な需要が高まると共に競争も激化することから、米国企業各社はUAV技術普及を遅らせようとする米国政府の方針で商機を逃すと懸念している。
  18. ウィキリークスが暴露した外交公電によるとアラブ首長国連邦やサウジアラビア含む多数国から武装型UAV購入の希望があったが米側から拒否されている。
  19. ミサイル技術管理制度Missile Technology Control Regime (MTCR)は長距離精密兵器体系の拡散を防止するのが目的で、無人機輸出も制約される、というのが米政府の言い分だ。
  20. これに対し業界首脳陣はこれでは米国製UAVは商用衛星生産の事例と同じ運命になると警告している。衛星では輸出制限によりライバル国が台頭し米国の主導的立場が失わた。
  21. . 輸出版のプレデターはこの点を考慮しているとジェネラルアトミックスは説明する。ミサイル搭載用のハードポイントがないので、兵装追加ができない。同機の 海外販売単価は3から4百万ドルで通常型航空機より相当安価だとエイムズも強調する。「プレデター購入を希望する国はこれまでも多くありましたので、今回 はその道を開くことになります」
  22. 同 社以外の米国防衛産業メーカーも自社費用を投入して新型の高性能UAVを開発している。ボーイングはファントムアイの試作機のテスト飛行を開始している。 同機は高高度を飛行し数日間の滞空が可能だ。ロッキード・マーティンは空母運用の次世代UAV競作に向けた自社開発をしているという。.競作ではX- 47Bのメーカー、ノースロップも参入しそうだ。X-47Bは将来の艦載UAVに実現する初期性能を実証する米海軍のプログラムだ。
  23. 英国も海軍用の無人機の空母運用構想に関心を示しているが、BAEのロウ・ウィルコックスは成長が大きく望めるのは民用部門だという。
  24. 10年以内に無人機が日常的に欧州の上空で運用される日が来るという。法執行機関による監視活動、洋上監視他の任務を想定。
  25. 「無人航空機が頭上を飛行する構図をパイロットが操縦する飛行機と同様に一般大衆が受け入れるかどうかが試されるでしょう。現時点で技術はできていますが、法規制なかんずく社会規範上の課題と認識しています」

2012年7月14日土曜日

【特報】レーザー光線で無人機に動力供給、48時間連続飛行

Lockheed Boosts Small UAVs With Laser Power Beaming

aviationweek.com July 11, 2012

ロッキード・マーティンがレーザー光線による動力供給により無人機を48時間連続飛行させた。同社はこの技術でUAVで特別な地位を確立するだろう。
  1. 実験は風洞内で同社のストーカーUAVとレーザーモティーヴLaserMotiveの動力ビーム供給技術を組み合わせて実施した。
  2. ストーカーは電池動力で2時間の飛行が可能。ロッキードは2011年に同機を改造し、プロパン燃料電池とリチウム・ポリマー電池を搭載し8時間の飛行に成功している。
  3. 今回の室内動力送信飛行テストを48時間で終了したのは、「当初の目標時間を超えたため」と同社は説明。次の目標は屋外における実証だ。
  4. ロッキードはこれとは別に空軍研究所の小型無人再生可能エネルギー利用長時間航空機(Surge-V)プログラムにも参画しており、代替動力の利用を研究中。
  5. ストーカーは手動で発進する20ポンドのUAVでペイロードは4ポンド、高度25,000フィートまで上昇し、全天候で最高4時間まで飛行できる。これに比べこれまでの電池動力機は1.5時間が上限だった。
  6. 同社のねらいは小型UAVで一目置かれる存在となることで、このほかにもデザートホークIII、小型のナイトホークを生産中だが、ストーカーおよびSurve-Vにより販路を拡大したいと考える。
  7. ロッキードは超小型エイビオニクスメーカーのプロセラステクノロジーズProcerus Technologiesを1月に買収しており、同社のオートパイロット機能を小型UAVに搭載しようとしている。■

2012年7月11日水曜日

軍用輸送機の市場は新型機、既存機で混戦模様

Incumbents, Newcomers Battle For Airlifter Orders


aviationweek.com July 09, 2012

今 後二年間のうちに軍用貨物機の市場で大きな変化が生まれそうだ。新型機と既存機種が競い合うことになる。新規参入の中心がエアバスミリタリーA400Mと エンブラエルKC-390の二機種で、米国製機材が中心だった輸送機市場に参入しようとする。反対の局に位置するのが米国製各機で、ボーイングは後数機の C-17受注で生産ライン維持を図る。またロッキード・マーティンはC-130Jの販売拡大をねらうが、同時にパレット式の改修も進行中だ。
  1. エ アバスミリタリーは今年の商機に期待する。昨年度の販売不振をうけて同社は年末までに30機ほどの制約をねらう。そのうち20機以上はすでに予約済みだ。 エアバスミリタリーの貨物機市場予測は小型、中型機だけで今後30年間で1,250機規模とする。その中で同社はC295を108機、CN235を275 機販売している。
  2. アレーニア・アエマッキAlenia Aermacchiも今年の販売に期待する。オーストラリア向けC-27を10機受注したことで同機の生産は2015年まで維持できる。さらに受注を伸ばし2018年までの生産ライン稼動をめざす。
  3. C-27受注総数は89機で49機が引渡し済みだ。オーストラリア受注は5億ドル相当でC-27がC295を打ち破り採用されている。
  4. 輸送機市場のハイエンドでは新規受注は動きが鈍い。それでもエアバスミリタリーはA400Mの輸出に本腰を入れ始めた。同社は同機開発がこれまで不安定だったため手が回らなかったが、フランス空軍向け一号機の納入をいよいよ年末に予定し、販路拡大に乗り出す。
  5. エンブラエルはKC-390の海外販売を来年に強化するが、同機の初飛行は2014年の予定だ。同社は競合他機種のない国向けに2025年までに700機の需要があると見込む。
  6. 米 空軍のC-17は発注済224機のうち216機が納入済みで、ボーイングは年産15機の現在の生産数を10機にしつつ、価格上昇を回避する方法を実行中 だ。同機のロングビーチ工場(カリフォーニア州)の生産ラインを維持すべく、ボーイングは活発に海外販売活動を展開している。オーストラリア向けには5機 が納入済みで、6号機受注もまもなくと期待している。カタールにも2機納入済みであと2機のオプションが残っている。UAE向け6号機が6月に納入され た。英国は8機受領済みでカナダは4機、その他NATO加盟国向けに3機それぞれ引渡し済みだ。
  7. ロッ キード・マーティンはC-130J生産数を年間36機に引き上げており、24期で安定させる予定だという。米国政府発注のC-130J合計224機で 164機が納入済み。米空軍はC-130合計551機を運用中で、発注中機体には海兵隊向け空中給油機KC-130Jを47機、沿岸警備隊向け救難用 HC-130Jが6機含まれている。

コメント その中に日本のC-2がまだ入ってこないのは残念で仕方ありません。相当の重量増に苦しんでいるようですが、時間かけても熟成をしてもらいたいものです

2012年7月8日日曜日

MQ-4C BAMSは海上監視偵察行動の様相を大きく変える

U.S. Navy Starts Run-Up To First MQ-4C Flight
By Guy Norris
aviationweek.com July 02, 2012

米海軍はMQ-4Cトライトン(グローバルホーク派生型)の運用により海上パトロールの定義をまったく新しいものに変えようとしている。
  1. しかしながら、トライトンのロールアウト6月14日のわずか3日前に海上運航用のグローバルホーク実証機が原因不明の理由で墜落している中、今回の導入は通常の運用コンセプトの切り替えよりハードルは高いといえよう。
  2. 海 軍はMQ-4Cのお披露目をノースロップ・グラマンのパームデール工場(カリフォーニア州)で開催するに当たり上記実証機(広域海洋監視ブロック10実証 機(BAMS-D))の喪失が影を落とさないよう配慮していた。関係者によると事故機は米空軍向けRQ-4を改造した5機のうちの一機で、MQ-4Cとは 大幅に異なる機種だという。
  3. 実 証機が墜落したのはメリーランド州ドチェスター郡ブラッドワース島の無人地帯で、運用基地のパタクセントリバー海軍航空基地から東22マイル地点だった。 事故原因はまだ調査中だが、「数週間かけても突き止めますが、UAVの利点のひとつは機体の状況・状態のデータがすべて回収されていることです」とビル・ シャノン海軍少将(無人機・無人攻撃機開発責任者)は語る。
  4. シャノン少将によると事故発生は離陸10分後で機体は高度5万フィートの運航領域に向けてらせん状に上昇をしている状況だった。事故地点の画像を見ると事故機は比較的平坦な地形に墜落しており、ゆっくりと螺旋状に降下していたことが読み取れる。
  5. 事故原因調査には過去のグローバルホークの機体喪失事例の原因を参照している。機体の受信機に誤った信号を送った、ハードウェア取り付けがまちがっていた、燃料ノズルの弁の欠陥といろいろだ。
  6. そ の一方でMQ-4Cの初飛行の準備が進行中で、2012年内の実施をめざすとノースロップ・グラマンは明かす。ただし、同機の飛行テスト完了と初期作戦能 力獲得が2015年までに完了することは困難と見られる。「兵力を太平洋重視で再編成する今こそこの機体の能力が求められたときはありません。」(マー ク・ファーガソン海軍大将、海軍作戦副部長) UASを戦力増強の手段としてとらえて、ファーガソンは「BAMSで米海軍は非対称的な利点を利用できま す。長距離長時間監視活動が海上戦の様相を一変させます」
  7. MQ- 4はブロック10のBAMS-Dより大型で重量も増えており、長時間の海上情報収集、監視、偵察(ISR)任務に特化した設計となっている。ミッション飛 行半径は2,000海里で24時間一週間のうち80%を現場で滞空できる。トライトンはグローバルホークと外観上区す別できるのは機体下部に360度多機 能アクティブセンサー・アクティブ電子スキャンアレイ(MFAS AESA)のXバンドレーダーを格納するため球状になっていること、チタン合金のエンジ ン空気取り入れ口に凍結防止・除氷装置がついていることがある。主翼端部も形状を変えており、雹やバードストライクへの耐久性を上げている。
  8. 主 翼内部は洋上飛行でよく発生する突風に耐えるよう構造強化されており、機体前部も強化され、MFAS他のセンサー類搭載に対応している。機種のあごのフェ アリングは固定式でレイセオン製の目標自動追尾式電子光学・赤外線タレットシステムを装着。多スペクトラムシステムにはフルモーションのヴィデオがあり、 高解像度光学装置により艦船を上空から識別できるズーム機能がある。
  9. MFAS のねらいは海上での目標補足、追跡と識別で海洋捜索、逆合成開口inverse synthetic aperture (ISAR)および合成開口の各モードがある。MFASは現在ノースロップ・グラマンがガルフストリームII試験機によりテスト中であるが、技術が成熟す るのは今年の10月の予定だという。
  10. MQ-4Cにしかない装備として自動識別システムAutomatic Identification System (AIS)もあり、VHF通信により全世界の船舶運航状況を見ることができる。その
  11. 構成はAN/ZLQ-1電子支援装置および機首に取り付けたワイドバンドの衛星通信アンテナである。
  12. 同 機のテスト飛行はエドワーズ空軍基地で9回予定されており、その後実証機(SDD1)はパタクセントリバーに回航され、開発工程を完成させる。その後二号 機SDD2が一ヶ月遅れで続き、SDD1でセンサー類全部のテストをする。海軍の予定は合計68機のMQ-4Cを調達し、常時利用可能な部隊を22機体制 で維持することだ。 
  13. 正式な決定ではないが、MQ-4Cは世界各地に配備される見込みで、ハワイ、ディエゴガルシア島、日本、イタリア、ジャクソンビル海軍航空基地(フロリダ州)、ポイントマグー海軍航空基地(カリフォーニア州)となるだろう。

コ メント; 日本に必要なのはグローバルホークよりもトライトンということになるかもしれませんね。日本というのは厚木基地でしょうか。オスプレイで予想外 のアレルギー反応が出ているところ、本機がやってきたら(2016年ごろ?)テスト機としての事故実績を引っ張りだしてまた大騒ぎになるのでしょうか。い い加減にしてもらいたいものです。

2012年7月6日金曜日

F-35 オランダが導入を諦める可能性

Dutch Plans To Buy F-35 Fighter Jets In Doubt

aviationweek.com July 05, 2012

F-35をめぐりオランダの政局が揺れている。国家支出削減の折、同機開発費用の膨張に対応する余裕がない、というのが議会多数派の主張だ。
  1. 連立与党のうち、労働党は次回国会選挙の9月12日までに議会提案を提出し、同機の国際共同体性からオランダの脱退を求める構えだ。
  2. オランダは正式に2機を発注済だが、開発プロジェクトから脱退するかどうかはどう選挙の行方しだいであり、選挙後の新政府が決定する。
  3. オランダの旧政権は予算支出削減の不評から4月に総辞職していたが、EU基準に合致するためには同国は数十億ユーロの予算削減が必要であるのが現状だ。F-35向けには45億ユーロほどがすでに確保されている。
  4. 国会内では同機開発費用の上昇に歯止めがかからないことが批判の対象であり、国内雇用への寄与度が見えないことと将来の費用についても保証がないことが議論の中心だ。
  5. 「確実に毎年コストが上昇しているがほかはすべて不確実であり、内閣には本計画からの脱退を求めたい」と労働党議員Angelien Eijsink と発言。
  6. 同機に大しては日本および米空軍からもこれ以上のコスト上昇となれば発注数を減らすとの警告が出ているところだ。.
  7. 労働党、社会党、自由党、グリーン左派、動物愛護党がオランダ下院(定足数150)で過半数(78)を占めており、おしなべてF-35開発からの脱退を求めている。オランダはF-16後継機としてF-35を想定している。
  8. 仮にオランダがF-35導入を続けるとしても、当初想定した85機より少ない機数の購入となる可能性がある。

コメント ロッ キード・マーティンも私企業であり、コストをコントロールできなくなり、逆に受注数が減ればますます単価が高くなり、利益を上げられなくなるのであれば一 方的にF-35を全部自らキャンセルする可能性がないでしょうか。そうなれば喜ぶのはどの国か、もうお分かりですね。

2012年7月5日木曜日

米国のアジア太平洋重視戦略に中国はどう対応しているのか

China Counters U.S. Tilt Toward Asia

aviationweek.com July 02, 2012

2011 年末が米国の東アジアへの軸足移動が決定的になった時期だとしたら、2012年前半は中国が米国の動きをかわす様相を呈している時期といえよう。米国は控 えめな部隊展開だけで、各同盟国、中国に米国の同地域の権益の存在を実感させているのだが、中国は自国の地理条件と非対称的優位性を活用して米国の戦略に 対抗しようとしている。
  1. 米 国の戦略見直しはおよそ10年前に遡るもので、その時点で米国は中国が潜水艦、宇宙兵器、対艦ミサイル等を整備し、米兵力にA2/AD(接近拒否、領域排 除)戦略の実施で対抗しようとしていると分析していた。ただ、アジア各国にとっては2010年になって明らかになった韓国艦船撃沈後の北朝鮮支援、南シナ 海の対立する領土主張への国際仲裁の拒絶といった事例で中国の好戦的態度へ恐怖を感じることとなり、オバマ政権にアジアへの「バランス再編」をイラク、ア フガニスタンの兵力削減を受けて選択させることになったのである。
  2. ヒ ラリー・クリントン国務長官は2011年11月号のForeign Policyに投稿し、米国はアジア重視の見直しを迫られる転換点に達し、中国を脅威とする見方は排除しつつも、米国の「同盟条約国たる日本、韓国、オー ストラリア、フィリピン、タイ国がアジア太平洋への戦略的最重視の大きな支えだ」と論点を展開している。オバマ大統領のオーストラリア訪問(2011年 11月)でも米国はダーウィンに海兵隊2,500名を2016年までに駐留させ、海軍が沿岸戦闘艦二隻ないし四隻をシンガポールを拠点とすることが発表さ れている。米国、シンガポール両政府は艦船の母港化でなく定期的な寄港が内容だとしている。
  3. 2012 年1月には米国とフィリピン両政府が軍事同盟協力関係の復活を検討していることが明らかになった。おそらくその内容には米国の偵察機材の定期的な立ち寄り と約500名の兵員もフィリピン軍施設を利用すること、共同軍事演習の回数増加が入っているのだろう。ただし、先月末の時点でペンタゴン取材陣に対しサ ミュエル・ロックリア3世提督(米太平洋軍司令官)Adm. Samuel Locklear, 3rd, commander of U.S. Pacific Commandは「これ以上の米軍基地建設は想定していない」と発言している。
  4. 2011 年11月にペンタゴンからエアシーバトル局の創設が発表された。空軍-海軍間からはじまり米軍内の協力関係を深める役目を有する。ただし中国のA2/AD 能力増強への対抗策として国防総省が発表したと見られていた。その後国防予算の削減、兵力削減方針が発表され、米国はこれまでの「2大戦同時対応」想定の 戦略をもはや維持できないことが明らかになったものの、規模縮小は逆にアジアに展開できる兵力が増えると説明する関係者が現れた。
  5. そ こで2012年初めの中国の対応は同盟諸国に同時進行の軍事対立の実施能力を増強させて米国をくぎづけにすることにある。北朝鮮の4月の軍事パレードでは 大型新型ミサイルが16輪の輸送・起立・打ち上げ車両(TEL)に乗っているのが目撃されているように、明らかにこれは中国の三江湖北特殊車両 Sanjiang Hubei Special Vehicle Co.の製品であり、同社がミサイルを生産する中国航空宇宙産業科学(Casic)の傘下にあることが知られている。中国は直ちに車両販売を否定したが、 目撃されたTELは三江のWE51200型であり、ベラルーシのMAZの協力で開発された車両だ。MAZはロシアのICBM用にもTELを生産している。
  6. TEL の提供が北朝鮮のミサイル開発に中国が関与しているという見方を生んでいるが、TELが中国から提供された事自体が北朝鮮の核開発にこれまでとはちがう支 援を中国が与えていることを意味する。これは中国がかねてから北朝鮮の核開発へ反対姿勢を示したことと反しており、中国自体が核開発を中止させようとする 六カ国協議の理事国担っていることと矛盾する。実は中国は米国を標的とする北朝鮮の新型ミサイル開発を直接支援しているのではないか。北朝鮮ミサイルがイ ランに販売されれば、欧州各国も脅威を感じるだろう。
  7. 本 年4月以降の中国は地理条件を生かして米比軍事協力に対抗しようとしており、長らく南シナ海の領土を巡る対立には中立的立場を取ってきた米国の政策が一変 したことにより米比接近が実現したことが、南シナ海ほぼ全域を中国領土とする主張そのものへの対抗である。中国は2010年7月のアセアン・サミットでこ の主張を表明している。
  8. 米 国は退役ずみの3,200トンのハミルトン級沿岸警備隊カッター一隻をフィリピン海軍に2011年7月に供与しており、2013年までにさらに二隻が供与 される。2012年1月の時点では米比両国がいっそう広範な軍事協力を検討していることが明らかになっており、F-16戦闘機の販売、米国偵察機材・艦船 の定期展開も含まれている。フィリピンは中国海軍の戦略弾道ミサイル潜水艦のパトロール海域の末端部に位置している。
  9. 4 月8日にフィリピン当局が中国漁船複数をスカーボロー礁の中で取り調べをしている。同礁はフィリピン・ルソン島から138マイル、中国海南島から500マ イルの地点。フィリピンは早速受領したばかりのハミルトン級フリゲートを派遣して、取り調べ支援をしたが、結局検挙はしていない。4月10年に中国が漁業 保護局の艦船2隻を派遣し、フィリピン艦船の動きを封じた。この時点で今回の対立は外交的対立として認識され、フィリピンはフリゲートを小型海防艦に格下 げすることで緊張緩和をはかった。
  10. 同 時期に米比演習が4月14日に開始されたこともあり、両国の艦船にらみ合いが続いたが、中国が一時的漁業中止を宣言したものの、漁船は同地に残した。ま た、戦闘機編隊が同地上空を6月11日に飛行している。中国は海南島に新設した水平線超えレーダーを稼働し同地の動きを把握し、同時に中国沿岸警備部隊の 展開によりフィリピン政府、米政府に対抗する姿勢を示した。その後5月になった早々、中国海軍から5隻の部隊が出港し、その中の最大の艦船は071型 LPD揚陸艦であったため、中国がフィリピンが実効支配する同諸島の占拠に乗り出すのではとの観測が生まれた。米国はバージニア級原潜ノースカロライナを スービックベイに寄港させた。
  11. こ のスカーボロー礁をめぐる対立のさなか、中国からさらに米国戦略を試す動きがでた。ロシアと共同でこれまででも最大規模の海軍演習を4月21日から27日 に展開し、中国は海上艦船16隻と潜水艦2隻、ロシアから4隻が参加し、防空、対潜演習を実施した。sらに6月7日から14日にかけて中国空挺部隊・地上 部隊400名がロシア軍、タジキスタン軍に合流しピースミッション2012演習を上海協力機構(SCO)の元で実施した。当選をしたばかりのプーチン大統 領がSCO総会(北京)に参列した6月上旬だったが、中国との戦略的協力関係を誇示している。
  12. 6 月末にロシア、中国、イラン、シリアの合同演習として、9万人の兵員、戦車1.000両および中国艦船12隻をスエズ運河を通過させ、西側によるシリア軍 事介入を実現できなくするとの観測がでてきた。ロシア、中国の外交筋は即座にこの演習案そのものを否定したが、この観測自体が中国により米国の中東への働 きかけの効果が減少される可能性があることを意味している。

2012年7月3日火曜日

航空自衛隊 F-35 まず4機調達の販売契約まとまる

US, Japan Sign For First Four F-35s


aviationweek.com July 02, 2012

日本政府は合衆国政府と6月29日に正式合意し、ロッキード・マーティンF-35 戦闘機の最初の4機および装備品一式を600億円(7.6億ドル)で購入することになったと同社が発表。
  1. 今回の提案内容および合意内容は日本国内で署名され、通常離着陸型F-35 を単価102億円で合計4機購入するもので、これは日本が予算計上した99億円よりも高くなっている。
  2. その反面シミュレータ2セットおよびその他の価格は当初の205億円から191億円に下がっており、総額は600億円で変更がない。
  3. 今 回の合意書成立はロッキード・マーティンにはF-35生産工場での生産レート維持には朗報で、米国の発注数が削減されていることから同社はフォートワース 工場(テキサス州)の経済的運営に日本からの42機発注はその他国からの発注とあわせてのどから手がでるほど必要だ。2月に昨年12月に同機選定をした日 本だが、今年2月に価格上昇あるいは納期の遅れが発生する場合は導入を取り消す可能性を米側に表明していた。その理由にペンタゴンが今後5年間で179機 の発注を先送りにする決定をしていたことをあげていた。
  4. 日本の参画がこのまま続くことになったことで同社は次に韓国の60機発注を期待する。
  5. 同機の生産に参画している主要メーカーにはノースロップ・グラマン、英国のBAEシステムズ、エンジンメーカーのプラットアンドホイットニーがある。
  6. ロッ キードはF-35 開発を合衆国向けに共同開発パートナー8カ国、英国、オーストラリア、カナダ、イタリア、トルコ、オランダ、デンマーク、ノルウェーとすすめており、米国 の防衛装備史上最大の規模に膨れ上がっており、開発・調達あわせ3,960億ドルを今後20年間に支出する見込みだ。


コ メント これまでも主張しているようにF-35は日本の防空圏の確保に絶対必要な機体ではありませんし、このまま行くと同機開発配備は数十年にわたり、西 側の防衛体制そのものを危険にさらす可能性もあると思います。同機を選定した防衛省の判断、政治判断はこれから大いに非難される可能性もあります。F- 22を売ってもらえなかった理由も謙虚に考える必要がありますし、まさか北朝鮮を空中援護なしにF-35で先制攻撃するのでしょうか、作戦コンセプトが見 えてきませんね。それよりも1.「心神」実証機からの作戦用機材の開発、配備 2.ISRも含めた無人機運用体制の確立 が日本の空に必要ではないでしょ うか。

2012年7月1日日曜日

ロシアはシリア向け武器供給をいつまで続けるのか

Syria Getting More Russian Air Defenses, Helos

aviationweek.com June 27, 2012

ロシアから防空システム、再整備ずみヘリコプター、ジェット戦闘機等総額5億ドル近くの装備品が国際社会からの批判をものともせず今年中にシリアに引き渡される観測が出ている。
  1. これはモスクワの軍事シンクタンクCASTののレポートでアサド大統領の国内鎮圧にロシアが武器を供給しているとの非難をさらに加熱させるもの。また防空システムは国際武力介入の際に使用される可能性があり懸念を生じる。
  2. ロイターは同レポートを発表前に入手し、ロシアからシリアへの武器販売契約書が2005年から2007年にかけて存在していることを知った。
  3. 契約書締結は国内蜂起の発生を相当さかのぼるもので、ロシアはシリア向け債権134億ドルの7割を放棄しており、これまで債務不履行のためにシリア向け武器販売が滞っていた要因を取り除いている。
  4. またこのレポートによるとロシアはMiG-29戦闘機12機、Mi-25攻撃ヘリ数機を今年中にシリアに引き渡すという。さらにBuk-M2EやPantsir-S1の引渡しも今年中に実施し、地上部隊の防空能力を引き上げるという。
  5. MiG-29契約は総額6億ドルでオプション12機購入を含む。同レポートでは年内に12機引渡しを予測。同戦闘機には空対空、空対地ロケットを装備し、シリア上空に「飛行禁止地区」設定の際にも対抗できる。
  6. プーチン大統領はロシア製兵器は内戦に使えない性質のものと説明し、ラブロフ外相は過去に締結した契約により供給された装備は防御的なものと発言。
  7. これに対しクリントン国務長官はロシア側の発表内容でロシア製兵器が国内弾圧と無関係としていることは「明白な偽り」と発言。シリアの防空体制はほぼ全部がロシア製で、先日のトルコ空軍機撃墜以来あらためてその能力に関心が集まっている。
  8. フランスからはシリアの危機状況を終結させるためにも飛行禁止地区設定を検討中という。昨年のリビア危機でも同じように飛行禁止区域が設けられた。
  9. 「シリアの防空体制はリビアの上を行っている。」と同レポート著者のひとりルスラン・アリエフRuslan Aliyevは指摘している。
  10. 「一方でシリア防空体制は協力だが、多数のシステムで構成されており、津かこなせるだけの訓練をしているかは疑問だ。」(アリエフ)
  11. ロシアは契約内容でPantsir-1装甲ロケット装備36セットの引渡しの義務があり、このうち12セットが納入済みで残りも2013年までに移送される。 
  12. 今回のレポートではシリア国防関係者で亡命してきたものからの主張、ロシア製小火器の引渡しがアサド体制への反抗が強まってから特に増えているという主張には触れていない。 
  13. CASTはロシア国内国防産業との良好な関係を守っており、BMP-2戦闘車両に関しての両国間契約については触れていない。アマチュア撮影のビデオ映像で同車両がホムスほか各地で展開しているのが撮影されている。
  14. ロシアはアサド体制の強力な擁護者として知られ国連安全保障理事会の常任メンバーであり、拒否権をもつが、、シリア向け制裁には反対している。
  15. ただ今回のレポートではそのロシアもアサド政権との関係断絶が国益にかなうのとなれば武器輸出凍結に走る可能性を示している。
  16. 「シリア向けの武器協力関係はロシアには重要なものではない。貿易、防衛関係でも同じである。
  17. 「シリア向け武器輸出が停止となれば、国営武器商社Rosoboronexportはシリア発注の装備を第三国に振り向けるるかもしれない」
  18. ロシアはS-3000 およびイスカンダルミサイルの輸出を凍結した実績がある。その際は装備がイランが支援するヒズボラの手にわたる危惧をイスラエルが提示したのがきっかけ。
  19. Mi-25ヘリを搭載した貨物船は6月24日にロシアを再出港している。保険会社が保険引き受けを拒否したことで延期されていた。

2012年6月28日木曜日

SM-3最新型の弾道弾迎撃実験が成功

U.S. Downs Target Missile In High-stakes Test


aviationweek.com June 27, 2012

米軍のレイセオン製新型迎撃ミサイルが迎撃実験に成功。北朝鮮やイランのミサイル開発への有効な対策になりそうだ。

  1. 実験は6月26日夜半にハワイ沖合いで実施され、標的となったのは分離式中距離弾道弾だったとミサイル防衛庁が発表。模擬弾頭が実際に分離され攻撃シナリオを再現した形となった。
  2. 「ミサイル各部品は設計どおり作動し、きわめて正確に迎撃できた」と翌27日に同庁が声明文で発表。
  3. 使用されたのはレイセオンのスタンダードミサイル-3ブロックIBで、米海軍の最新のミサイル迎撃手段。
  4. 同ミサイルは2015年にルーマニア国内の陸上打ち上げ施設に展開される予定で、オバマ大統領のNATO東側地域をイランのミサイルから防衛する手段となる。
  5. レイセオン製ミサイルの迎撃実験成功はこれでわずか6週間のうちで二回目で2011年9月の初打ち上げでの失敗をカバーした形だ。
  6. MDAは今回の実験成功でオバマ大統領の欧州向け段階的適応型アプローチによるミサイル防衛の第二段階には重要な成果が生まれたと評価する。
  7. 今回のテストは通算28回の発射で23回目の迎撃成功となった。
  8. ハワイ標準時の26日午後11時15分、標的ミサイルがカウアイ島の太平洋ミサイル試射場から打ち上げられた。
  9. これに対しUSSレイク・エリーがハワイ沖合いでミサイルを発見、追跡捕捉し、搭載する第二世代イージスBMD兵器システムがSM-3ブロックIBミサイルを発射した。
  10. ミサイルは衝突時の運動エネルギーで目標を宇宙空間上で破壊し、いわゆる衝突破壊迎撃のパターンを実現した。
  11. SM-3は短距離から中距離弾道ミサイル迎撃に使用される。最新型ブロックIBには二色の赤外線シーカーを備え、推進力を正確に制御できる短いバーストが可能な機構がついている。これにより目標への接近が可能となる。


2012年6月24日日曜日

オスプレイ安全性に関し米側の説明は7月下旬に設定済み

U.S., Japanese defense officials to meet to discuss Osprey issues

USAF website Posted 6/22/2012


by Army Sgt. 1st Class Tyrone C. Marshall Jr.
American Forces Press Service

国防総省高官が7月22日に訪問する日本側代表団にMV-22およびCV-22オスプレイで最近発生した事故の背景説明をするとジョージ・リトル ペンタゴン報道官George Littleが本日発表した。
  1. 「これは国防総省が本件を真剣に捉えていることの現れであり、日本国政府からの照会への対応でもあります」
  2. 予 定では国防総省の軍民双方の高官の中にはマーク・リパート国防次官(アジア太平洋担当)Mark W. Lippert, the assistant secretary of defense for Asian and Pacific security affairsも同席するという。沖縄県知事が提起した懸念の解消もねらいだ。国防総省はMV-22のアジア太平洋地域への配備を進めている。
  3. MV-22はターボプロップ機の速度と航続距離を持ち、ヘリコプター同様の離着陸性能があり、戦闘装備の海兵隊員24名を運ぶ。従来型ヘリの2倍の速度でより長距離飛行が可能だ。CV-22は空軍の特殊部隊輸送用機種だ。
  4. MV-22オスプレイが4月22日にモロッコの演習場で墜落した事例がアフリカンライオン軍事演習で発生している。また、CV-22が6月13日にフロリダ州で墜落し、5名の搭乗員がけがをしている。
  5. 「今回の背景説明では6月13日の事故を中心に情報を開示すると共に原因究明の途中経過も報告します」と報道官は説明し、エグリン空軍基地の関係者も同席すると追加した。
  6. 一方で4月のMV-22事故の初期調査結果も紹介される。同報道官によると初期調査結果は機体の問題が原因ではないとのことで、オスプレイの安全運航実績と信頼性を強調している。
  7. 「累計飛行時間は14万時間になっており、このうち三分の二がこの2年間で実施されています。米空軍及び海兵隊はCV-22、MV-22の運用を世界各地で継続しており、米国内での人員輸送運用はもちろん、アフガニスタンでの戦闘任務にも投入されています」

2012年6月23日土曜日

ボーイングのファントム・アイは長期間耐空性能の実証をめざしています

Boeing Looks To Return Phantom Eye To Flight This Year

 

aviationweek.com June 22, 2012

ボーイングは液体水素を燃料とするファントム・アイ無人実証機の飛行を今年中に再開する。同機は6月1日の初飛行後の着陸で損傷している。
  1. 事故の原因調査と損傷評価は採取段階にあり、機首降着装置の不良が原因とされる見込みで設計に問題があったとする。
  2. 事故による損傷は機体構造上で現れているが、修復は比較的容易なようだ。降着装置の強化のため部品・構造上で改善策が講じられよう。
  3. 今回の事故原因が究明されれば、今年中の飛行再開に向かう。
  4. ファファントムアイはエドワーズ空軍基地(カリフォーニア州)で28分間の初飛行をし、高度4,000フィートに達した。今後は高度10,000フィートに達したあと、最終的に65,000フィートを目指す。同機は連続4日間の空中待機ができる設計。
  5. 実用型は10日間飛行待機をめざし、およそ2,500ポンドのペイロードを搭載した場合は7日間にこれが伸びる。翼巾は250フィートとなる。
  6. ボーイングにとってはグローバルホーク無人機ブロック30およびブルーデビル2飛行船が空軍の予算削減の影響を受けていることが好機となる。ファントムアイの飛行時間コストはグローバルホークよりも相当低いと同社は説明している。

royalさんのコメント

将来のスタンドオフ機材として有望な可能性を示す機材だ。核巡航ミサイル使用の危険性が高まる中で運用されればロシアや中国は核先制攻撃を実施するのが事実上不可能となるだろう


2012年6月17日日曜日

X-37B2号機が469日の軌道上飛行を完了し帰還

Second X-37B completes classified space mission
aviationweek.com  Ares, Posted by Guy Norris 12:13 PM on Jun 16, 2012

本日早朝に米空軍のX-37B軌道実験機の2号機(OTV-2)がヴァンデンバーグ空軍基地(カリフォーニア州)に着陸し、軌道上飛行469日の記録を樹立した。これは1号機OTV-1の飛行期間の二倍以上。
  1. 今 回のミッションの詳細は秘密扱いで、OTVの一回目の飛行と同じだ。同機の写真はまもなく公表されるとみられるが、空軍はボーイングX-37Bが「軌道上 実験』を完了したとだけ発表する秘密徹底ぶりで、短い声明文で同機の「帰還能力」により空軍は新技術のテストを低リスクで実施できるとしている。
  2. X- 37Bは全長29フィートで小さい主翼つき。ヴァンデンバーグ基地への着陸は6月16日午前5時48分(太平洋標準時)で、15ヶ月に及ぶミッションが完 了した。アトラス5でケイプカナベラル空軍基地(フロリダ州)より2011年3月5日に打ち上げられた。今回のの長期間飛行により当初の設計での軌道飛行 設定270日間が改良されたことが実証された。
  3. 打ち上げ前に米空軍からは今回のミッションは「OTV-1による軌道上飛行能力の実証結果の上に、さらにテストを実施し、技術要因を微調整する」としていたが、テストの内容、軌道上で何をしたのかは秘密扱いだ。
  4. 専 門家から長期間ミッションとなって加圧タイヤなどに影響が出るのではないかと懸念が出ていた。OTV-1ではタイアの一つが着陸時にはパンクしていたよう で、より長期間飛行となるミッションではガス抜けが起こっても当然と見られていた。ボーイング、空軍双方から同機の着陸時の状況については何も言及がな い。■
 
 
打ち上げ前のOTV(米空軍提供)

米海軍向け無人機MQ-4Cトライトン登場


Northrop Grumman Unveils U.S. Navy’s First MQ-4C Triton

By Guy Norris

aviationweek.com June 15, 2012

LOS ANGELES — 6月14日ノースロップ・グラマンのパームデール工場(カリフォーニア州)でMQ-4C広域海洋監視Broad Area Maritime Surveillance (BAMS) 無人機が米海軍により公開され、トライトンと命名された。
  1. 一方、BAMS実証用ブロック10で製造された5機のうち一機が6月11日にパタクセントリバー基地(メリーランド州)近郊で墜落喪失した原因まだ解明されていないと海軍は言及した。
  2. 今 回ロールアウトしたトライトンはグローバルホークの改良型で2機がテスト・開発用に製造される。MQ-4Cは68機が海軍用に調達される予定だ。「太平洋 に重点を移そうとする中で本機の性能は今までにまして必要なもの」と米海軍副作戦部長マーク・ファーガソン大将Adm. Mark Fergusonは発言している。
  3. 「BAMSは他にはない優位性を米海軍に提供する。長距離定時監視能力で海上戦闘の様相が変わるだろう」
  4. トライトンはボーイングP-8Aポセイドン(117機調達予定)と合同で運用される。現在230機が在籍するロッキード・マーティンP-3部隊は老朽化が進んでおり退役する。
  5. トライトンの初飛行は2012年末の予定で、エドワーズ空軍基地付近の立ち入り制限空域で9回のテスト飛行を行った後、パタクセントリバー海軍航空基地に移送され開発作業を完了する。初期作戦能力獲得は2015年12月の予定。■