2013年8月27日火曜日

速報 シリア内戦介入の準備に入った米英海軍艦艇の動き

U.S. and U.K. Move Ships Closer to Syria

By: USNI News Editor
from United States Naval Institute Monday, August 26, 2013
                                                 
USS Mahan (DDG-72) conducts a replenishment-at-sea in April 2013.


米海軍はイージス誘導ミサイル駆逐艦一隻を東地中海に追加派遣中で、国連がシリア政権による化学兵器使用を査察が進める中での兵力展開と複数の報道が伝えている。

  1. USSマハン (DDG-72) が現在同海域に派遣されているが、USSラメージ (DDG-61)に交代となる予定だった。これは米第六艦隊の弾道ミサイル防衛 (BMD) パトロールの一環。現時点で両艦はUSSバリー(DDG-52)およびUSSブレバリー (DDG-107) に合流して同海域に残ると見られる。上記四隻の駆逐艦は弾道ミサイル迎撃能力に加え、地上攻撃巡航ミサイル発射が可能。
  2. 「オバマ大統領から国防総省に対しすべての想定で準備をするよう命令があった。大統領が決定すればオプションのいずれでも実施する準備が整っている。」(チャック・ヘイゲル国防長官、日曜日に報道陣に答えて) ただし国防長官は具体的なオプション内容は言及していない。
  3. 土曜日に大統領は国家安全保障チームを召集し、シリア情勢を協議している。
  4. 米海軍艦艇に加え、英国海軍部隊も同海域で勢力を終結している。すでに栄海軍の原子力潜水艦一隻が同海域に展開中といわれ、軽ヘリコプター空母HMSイラストリアス(R06)、揚陸艦HMSブルワーク(L15)が地中海で演習中のほか、フリゲート艦2隻も同じく展開中だ。
  5. 各艦艇は「戦略的緊急部隊」を構成するとテレグラフ紙は報道。オバマ大統領はシリア内戦で化学兵器使用が認められれば米国の介入は決定的と宣言していた。化学兵器使用の報道が相次いだことで国連が事実確認のため査察チームを同国に派遣している。


2013年8月25日日曜日

アジア太平洋重視の米戦略の展開方法に疑問が出る中、各国は着実に軍備増強に向かっています。

Questions Surround U.S. Commitment To Asia-Pacific Pivot

By Michael Fabey
Source: Aerospace Daily & Defense Report

aviationweek.com August 23, 2013
Credit: U.S. Navy

地政学の観点からアジア太平洋重視で軍を配備する米国の戦略に疑問がでている。同様にアジアの観点から分析した結果があり、ともに米国がアジア太平洋でどこまでの軍事力を展開するかの疑問がでている。この疑問が表面化する一方、同地域のアメリカ同盟各国が軍事増強をしている。
  1. 関心のすべてが中国に集中しており、同国の意図と地域への影響が関心の的だが、実は中国は同地域で地政学的には最大の影響を与えられる国ではない、とシンクタンクProject 2049を主催するランドール・シュライバー Randal Shriverは議論を提示している。シュライバーはアーミテッジ国際研究所 Armitage International の共同創設者でもあり、戦略国際研究所Center for Strategic and International Studiesの上席研究員でもある。
  2. シュライバーは「問題は中国ではない。米国である。もし米国が役割を果たせないと、同地域全体が不安定化する」と発言。
  3. バラク・オバマ大統領がアジア太平洋への再バランスを重視する中、問題の核心はアジアを担当する意味で現地に飛び込む高官がいないことであり、現政権にも全力を尽くす熱意が感じられないと主張。構想を実現する裏付けも希薄だという。.
  4. シュライバーは2003年から2005年にかけ東アジア太平洋問題担当の国務副次官補。
  5. 5月にはシンガポールのアジア国際戦略研究所International Institute for Strategic Studies-Asia (IISS)のウィリアム・チュン William Choong (シャングリ・ラ対話上席研究員)から同様の懸念が出ており、米国の再バランス案は必要な軍事プレゼンスがともなわず米国の真意は疑問だとしている。全域で薄く展開して、大きな力を示すメリハリがないというのだ。
  6. 今回はチュンから「米国が支援しているとわかれば中国に対抗する誘惑に勝てなくなる国が出てくるだろう」と発言があった。
  7. 米国がアジア太平洋に本格的に再配備するかとは別に、米国の同盟各国、提携各国は確かに軍備増強に向かっている。
  8. オーストラリア、インド、インドネシア、日本、マレーシア、パキスタン、シンガポール、韓国、台湾、タイ国の合計で2013年から2018年にかけての軍事支出は合計1.4兆ドルとの予測があり、その前の5年間の実績が9,195億ドルだったので、55%増加することになる。これはAviation Week Intelligence Work (AWIN) によるデータ解析の結果。
  9. その中でも研究開発の支出が最大の成長を遂げる。66%増の614億ドルとなる見込み。
  10. 一方、装備調達は61%増で3,796億ドルとなる。なお、2008年から2012年にかけての実績は2,359億ドルだった。■

コメント アジア太平洋重視という大きな戦略はいいのですが、問題はその実施方法です。写真は米海軍が多額の予算をかけて実用化を目指すLCS(沿海戦闘艦)ですが、F-35と同様に遅延、期待に見合わないパフォーマンスで問題となっていますね。一部にはこれなら既存のフリゲート艦の建造再開をしたほうがいいとの意見もあるようですが、米海軍が思い切って役割を分担し、沿海防護は地域内各国に任せる、米海軍は空母戦闘群をともかく西太平洋に維持し、対潜能力は日本に任せる、という思考の切り替えをしないと「薄く、低い戦闘能力」の展開に終わってしまうのでは。あ、そうなると共同安全保障の実施は必至ですね。

2013年8月24日土曜日

明らかになったスホイT-50(PAK-FA)の飛行制御性能の革新性

Sukhoi T-50 Shows Flight-Control Innovations

By Bill Sweetman
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com August 19, 2013
Credit: Sukhoi

MAKSエアショーがモスクワ郊外のジューコフスキー空港で来週開催されるが、目玉はスホイ‘T-50PAK FA (Perspektivny Aviatsionny Kompleks Frontovoy Aviatsii—将来型戦術航空機システム)戦闘機の展示飛行だろう。
  1. T-50は二年前の同航空ショーで登場しているが、現在もテスト飛行中で性能限界を徐々に伸ばしている。最近のビデオを見ると高度を維持したままの水平回転や高迎え角で方向転換といった高機動飛行をしており、パリ航空ショーでSu-35Sが示した展示飛行と同様の飛行をしている。T-50試作機の5号機が今年末までに飛行を開始し、公試は2014年に開始予定とUnited Aircraft Corporation社長のミハイル・ポゴシヤンMikhail Pogosyanが伝えており、本生産開始は2015年という。
  2. ロシア大統領ウラジミール・プーチンRussian President Vladimir Putin は量産型の配備は2016年と発言している。ただし、搭載エンジンがまだ確定しておらず、ロシア空軍はソ連時代と同じくテスト用エンジンを稼動中の機体に搭載し、一方でエンジン含むシステム完成度を上げる方法をとっている。
  3. 搭載する機器、兵装は未公表だが、ここに来てスホイ設計局がT-50関連でステルス機の根幹にかかわるもの含む特許数件を取得したと判明している。
  4. また取得特許にはロッキード・マーティンF-22に類似した基本設計内容があるが、Su-27から10年近く経て再開したロシアの戦闘機設計には従来の欠点を改善しようと懸命な様子があらわれている。F-22の推力ベクトル制御 thrust-vector control (TVC) システムではロールあるいはヨーの制御は実現できない。なぜならエンジン二基の配列が接近しすぎているからだ。
  5. エンジン取り付け位置次第で兵倉庫の場所がなくなる。エンジンは空気取り入れ口付近、及びその下に取り付けるものである。曲がりくねった空気取り入れ口は全長が伸びて重量も増える。TVCが作動しないと失速後の姿勢取り戻しはむずかしくなり、固定フィンと方向蛇が大きくなる。
  6. T-50は機体主翼一体型の設計 blended wing-body design で、Su-27とは構造の中心部が“centroplane”(中心面)形状で共通している。ただし、Su-27より中心面が双発エンジンの間で深く、兵倉庫を確保しているのが違う。
  7. 飛行制御には可動面が14あり、うち12で飛行制御表面とエンジンノズルを可動させる。主翼前縁部のフラップは高迎え角で揚力を維持する役割があり、速度に応じ主翼形状を調整する。エルロンは低速飛行時、離着陸時のみで使用する。フラペロン flaperons は揚力を得るために使う。高速飛行時にはロール(横揺れ)防止をフラペロンと水平尾翼で行う。.
  8. 全面可動式垂直尾翼 all-moving vertical tails は短い固定式パイロンの上につけられており、パイロンの中に作動装置が入っており、エンジン空気取り入れ口部に冷却装置、熱交換装置が取り付けられている。パイロンの役目には垂直尾翼用の旋回軸のベアリングアームを長く確保することがあり、荷重を減らし、ベアリングと機体構造を軽量化できる。超音速域ではT-50`は飛行方向安定`性に欠けるので垂直尾翼によるアクティブ制御を用いる。この理由は同機の全面可動式尾翼はF-22の固定式フィンおよび可動式方向蛇より小さいためだ。同機の垂直尾翼はエアブレーキのかわりとなり、縦ゆれを最小限におさえつつ抗力を増す際に対称的に可動する。.
  9. 中心面の上に大きな可動式前縁部があることで、巡航飛行中に生ずる同部分からの揚力を最適化できるが、実は一番大切な機能はTVCが作動しない場合の機体制御回復であり、失速後の高迎え角を想定している。このため大きく下方に方向転換し、重心前面の主翼胴体一体部の投影面積を減らすことでこれを実現する。
  10. エンジン二基は大きく離れて配置してあり、兵倉庫の空間を確保するとともにロール・ヨーのベクトル制御を実現。エンジン中心の延長線は外側に広がる配置で仮にエンジン一基が作動不良になっても推力が不均衡になる悪影響を抑えている。作動中エンジンの推力ベクトルを機体質量の中心に近いところへ配置できるからだ。
  11. Su-27/30/35ファミリーにはTVCが装着されているが、各エンジンのノズルベクトルは一方向にしか機能しないにもかかわらず、ベクトル軸は外回りに回転する。そのためノズルの対称運動により縦ゆれピッチの力が発生し、各ノズルが均等かつ反対方向のヨー力を発生させる。仮に‘Su-35の「鐘」機動のようにハイアルファ減速のあとに180度方向転換をするような場合は、横揺れはフラペロンとエルロンで消す。T-50の空気取り入れ口は設計上で妥協している。確かに曲がっているが、曲線はエンジン全体を覆わず(F-22、F-35、ユーロファイタータイフーンはこれを実現)、そのためボーイング F/A-18E/Fスーパーホーネットと同様の‘放射状ブロッカーを搭載している。
  12. F-22の空気取り入れ口と異なり、T-50では可動部分が途中にあり、各ダクトに開閉口がついている。この結果、超音速飛行時にショックパターンが複数発生し、ロシア側はこれによりマッハ2飛行が効率よく行えると考えている。同時に貝形状の網状スクリーンが空気取り入れ口についており、分離スロットとあわせて異物のエンジン取り込みを防ぐ構造になっているのはSu-27ファミリーと同様。
  13. 機体構造設計での大きな課題は機体中央部全体で兵倉庫をタンデム配置する空間の確保だった。ロッキード・マーティンのF-22やF-35では兵倉庫は主翼より前の部分に配置となっている。一方でT-50の中央線構造は奥行きがとれず、ピーク時の主翼変形に耐える設計は困難が伴う。そこでT-50では中央面部分の構造を堅固にし、縦方向の支柱を二本ナセル外縁部と主翼中央面接合部に入れてある。この支柱を翼端におよぶ翼桁でつなぐ。(特許申請図面では翼桁が八本になっている) その結果、機体中央面にかかる曲げ荷重を分散させて中央線にかかるピーク荷重を減らすことができた。
  14. T-50の目標最高飛行速度はマッハ2程度と見られる。当初の目標はマッハ2.35だったが、その後2.1に下方修正され、また下がっているが、Su-35Sではマッハ2.25だ。この差の原因はT-50で複合材料をSu-35S以上に使用していることだ。Su-35Sでは重量がかさむチタンを大量に使用している。
  15. T-50が現在搭載するエンジンはイズデリエ117で、2011年時点の設計者取材ではSu-35Sが使用する117Sよりも高性能としていた。117SエンジンはAL-31エンジンの発展形といわれるが、117の推力重量比は10.1としている。
  16. ただし、サトゥルン社Saturnの常務イリア・フョードロフIlya Fyodorovは記者会見の席上で同社がT-50向け後継エンジンを開発中であることを認め(イズデリエ30型といわれる)、2020年に完成すると117エンジンの性能を書き換えるという。MAKS航空ショーで同機の搭載兵器の詳細があきらかになるかもしれないが、当初は現在利用可能な兵装を搭載するようだ。Tactical Missiles Corporation社の専務取締役ボリス・オブノソフ Boris Obnosov iは取材に答えて、T-50の兵装をいくつか明らかにし、既存のKh-35UE対艦ミサイル、Kh-38ME空対地兵器、RW-MD(R-73Eの改良型短距離空対空ミサイルで大型シーカーを搭載し飛行距離を30%拡大しているという)があるという。新型Kh-58UShKE長距離(射程245Km)というマッハ4級の対レーダーミサイルの開発は大きな意味を持ってくるだろう。同ミサイルは当初はMiG-25BMフォックスバットE用に開発されていた。
  17. ただしオブノソフはこれらは2014年と本人が見る就役開始時の装備品であると念を押している。T-50の機体内兵倉庫が搭載する兵器の情報が不足している。ただし、同機の兵倉庫は四つある模様で、空気取り入れ口外側のふたつにはRW-MDを一発ずつ搭載する。エンジンの間にあるタンデム配置兵倉庫は各二発搭載できるが、前方の兵倉庫が縦方向に余裕があり、Kh-58UShKEのような大型兵器を搭載し、後方の兵倉庫にR-77ファミリーの空対空ミサイルを格納するのだろう。

なお、同機の高機動飛行の様子は AviationWeek.com/video でご覧いただけます。


2013年8月22日木曜日

グローバルホークがふたつの難関に直面中

Global Hawk Variants Face Airspace Showstoppers

By Bill Sweetman
Source: Aerospace Daily & Defense Report
aviationweek.com August 21, 2013

ノースロップ・グラマンがグローバルホーク/トライトン無人機で技術課題二点に直面している。

ひとつが米海軍がITT Exelisの作業中止を命じたことで、同社はMQ-4Cトライトン洋上監視型UAV向けの感知・回避型レーダー開発に従事していた。ノースロップ・グラマンによればこのレーダーは同機に必須の装備だという。同機が洋上運用を前提とし他の手段によるレーダー監視をあてにできないためだという。

また同社は今回のレーダー問題は機体への統合問題がかぎだという。ITT Exelisの空中感知回避レーダーairborne sense-and-avoid (ABSAA) radar はKuバンドを使い、自立型のアクティブ電子スキャンアレイでサブアレイを使い220度の探知が可能。

同社は海軍および業界提携先と共同で「広範なオプション」によりMQ-4Cの安全かつ自律運航を実現しようとしてる。

もうひとつがユーロホークだ。ノースロップ・グラマンはユーロホーク計画の延命にも懸命で、ドイツ政府が5月にキャンセルしたのは600百万ユーロ(800百万ドル)という巨額をかけても自国内の空域で民間機と並んでの運航は難しいと見たためであり、型式証明が交付される見込みが薄いと見たためでもある。「課題は滞空性能であり、システムではない。需要はまだあるので、解決方法としてのユーロホークは有効。ここで断念すべきではないでしょう」と同社副社長は語る。

 ユーロホークはグローバルホーク派生型としてEADS Cassidian製の情報収集パッケージを搭載している。■

2013年8月21日水曜日

韓国F-X3はF-15SE採用が濃厚に

   

South Korea Looks Ready To Order 60 Boeing F-15SEs

By Bradley Perrett perrett@aviationweek.com
aviationweek.com August 19, 2013
Credit: Boeing
韓国のF-Xフェイズ3選定でボーイングF-15SEサイレントイーグル60機を発注する見込みが濃厚で、実現すれば同機生産ラインが延命するとともにこれ以降の競合に弾みをつけそうだ。
  1. 韓国国防調達計画庁Defense Acquisition Program Agency によればEADS提案を却下したもよう。同社は提示価格を下げるべく、以前の合意内容を一方的に変更してきたのが理由だという。現地報道によれば同社はユーロファイター・タイフーン単座型を当初の45機を54機に複座型15機を6機にして提示したという。
  2. また現地報道によれば三番手のロッキード・マーティンF-35ライトニングも除外されたとし、提示価格が8.3兆ウォン(75億ドル)という予算を上回ったためだという。ただしロッキードはこの報道に反論している。「韓国政府から結果通知は未着であり、F-X選定は複数の段階をへて決定されるものであり、当社は米国政府と連携してF-35の採用を期待する」
  3. F-15SEはF-15の発展型でレーダー断面積の縮小が特徴だが、生産を実現するためには韓国の発注が必要だ。F-Xフェーズ3で受注できないと84 機受注したサウジアラビア向けF-15SAの最終号機が2019年で引渡しとなり生産ラインは閉鎖になる。これに対しF-Xフェーズ3で受注に成功すればラインは2021年まで延長となり、初飛行から実に49年間のライン稼動になる。
  4. ボーイング案には有利な点がある。同機は韓国で採用済みで、競合他社よりも安価であることが長所となり、これは国会による制約を受ける調達庁が予算額を超過する選択肢を検討する余地がない現状を鑑みると大きな強みだ。先回の選定では提案すべてを却下したのは各案が予算想定を超過していたため。そこで再提案を集めたわけだが、ロッキード・マーティンはF-35のそもそもの高価格があり、米国政府による海外軍事装備品販売制度を使わざるを得なかった。
  5. F-15でもうひとつ有利なのは同機の主要部材がすでに韓国航空宇宙工業 Korea Aerospace Industriesにより生産中であることがあげられる。したがって調達庁がめざす現地生産比率を引き上げても、競合案よりも価格引き上げ率が高くならないことになる。
  6. 現在供用中のF-15Kはシンガポール向けF-15SGと同じく2012年までに完了している。サウジアラビア向けF-15SAの引渡し開始は2015年以降の予定で、ボーイングはF-15S70 機をF-15SA仕様に改装する。韓国が導入したF-15K61機はF-Xフェイズ1および2の一環で、うち1機を墜落喪失している。
  7. F-15SEは傾斜つき尾翼が特徴で機体内部に爆弾あるいは空対空ミサイル4発を搭載する。これは一体型燃料タンクをオプションで機体側部に取り付けることにより実現した。BAE製の新型電子戦闘システムを採用したことで燃料搭載スペースが増え、機体表面にはレーダー波吸収材料が施される。F-15Kが以前のF-Xで採用された時点で機械式スキャンレーダーが搭載されていたが、その後レイセオンAPG-63(v3)アクティブ電子スキャン方式アンテナを採用したレーダーを搭載している。その搭載一号となったシンガポール向けに続き、韓国も同レーダーが利用可能になることになる
  8. ボーイング受注の可能性濃厚な理由として同社と韓国国内航空産業メーカー各社との産業協力の実態が大きく作用しているとの見方がある。受注成功すれば同社にとっては大きな成功となり、F-15の生き残り可能性も広がるとし、同機の航続距離、ペイロード搭載量はF-35を大きく上回るもの、とアナリストHoward Rubel は見ている。■



2013年8月13日火曜日

英国によるF-35飛行中隊は2018年に誕生か

U.K. Prepares For Major JSF Procurement Decisions

By Tony Osborne
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com August 05, 2013

英国防省がF-35による最初の戦闘機中隊編成の最終決定段階に入った。.
    1. 74百万ポンド(114百万ドル)のどんでん返しでF-35C艦載型へ変更を2010年にしたあとで2012年には短距離離陸垂直着陸型F-35Bへ再度変更した同国は「メインゲート4」と呼ばれる調達契約上の大きな通過点に向かいつつあり、英国初の飛行中隊の機材購入のみならず実際の運用への移行を始めようとしている。調達契約ではF-35Bを14機の発注となろう。
    2. 英国防装備支援部門でライトニングIIプロジェクトチームを率いるリック・トンプソン准将Royal Navy Commo. Rick Thompsonによると第一号中隊の編成は2018年になるという。その時点でクイーンエリザベス級空母の一号艦の公試が開始されているはずだが陸上運用能力の獲得が同年末になるという。
    3. 当初英国が同機開発に参加した時点では138機を購入するとしていたが、現在は48機の確約をしているにすぎない。メインゲート5の決定は2017年ごろの予定で残りの機体導入を承認する。トンプソン准将によると2015年の戦略国防安全保障見直しまでいかなる決定もされないという。この見直しで英国が購入するJSFの機数が決まるという。ただし同准将は英国が48機を超える調達の予定があるかについては言及していない。
    4. JSFを空母運用想定しているとはいえ、中心的な役割は英国空軍(RAF)がとることが増えている。ノーフォーク州のマーハム空軍基地が同機の運用拠点と位置づけられている。第17飛行中隊がライトニング運用評価部隊として再編成され、2015年にエドワーズ空軍基地(カリフォーニア州)に誕生する。そして有名な第617飛行中隊ダムバスターズが最初の運用部隊となる。両隊には英海軍とRAFから人員を派遣する。第二番目の運用部隊が英海軍の中隊番号をつけられる予定。
    5. 英国が受領済みのF-35Bは三機で、すべて英米合同海兵隊訓練部隊としてエグリン空軍基地(フロリダ州)で運用中だ。英海軍、RAFから一人づつのパイロットが教官としての訓練を受けている。整備要員20名もエグリンで訓練中だ。機体は英国所有であるが、米海兵隊とRAFのパイロットが交互に操縦することが米国防総省と英国防省の取り決めで実現している。
    6. 英軍機材は2014年にエドワーズ空軍基地に移動し作戦運用テストおよび評価を受ける。同基地にはすでに英軍関係者がおり、受入れ準備中。2014年第三4半期にパイロット訓練を海兵隊のボーフォート基地(サウスカロライナ州)で開始する。
    7. 最初に搭載する兵装としてレイセオン製ペイブウェィIVおよびMBDA製 AIM-132Asraam 空対空ミサイルを機外に装備する。英国による選択型精密射程兵器Selected Precision Effects at Range (Spear) に近い関係者によるとライトニングIIは最高24発のSpear IIIミサイルを搭載可能であるという。同ミサイルはパナヴィア製トーネードGR4が搭載する現有のブリムストンの後継モデルである。レイセオンはペイブウェィIVをJSF対応にする改修を作業中だ。
    8. 関係者が指摘するのはJSFにより「国際間連携が高まる」といい連合軍として各国の装備を有事の際には融通して使用できるのだという。
    9. 英国にとって要注意なのは同機の運用支援面だ。これについてトンプソン准将は英国の目標は空軍向け海軍向けに同等の支援体制を確立することで、ロッキード・マーティンのインターネットによる自動ロジスティックグローバルサポートソリューションAutonomic Logistics Global Support Solutionを利用するのだという。
    10. この海空両用での支援体制の前例にはハリアーGR9を共用運航ハリアーJoint Force Harrier (JFH) として英海軍とRAFが共同運用したことがあり、ライトニングIIの空母運用で参考にするもようだ。なお建造中の新空母はライトニングII運用を最初から前提にしている。■


2013年8月12日月曜日

予算強制削減によりF-35取り止めになる可能性---有力シンクタンクの見方

Think Tanks: Cancelling F-35 Among SCMR Options

By Bill Sweetman
Source: Aerospace Daily & Defense Report

aviationweek.com August 05, 2013
Credit: Lockheed Martin

もしペンタゴンが現有部隊構造を維持しつつ、即応体制の切り下げなしかつ民間人職員規模を維持して強制予算削減の目標額を達成しようとすれば、F-35共用打撃戦闘機計画は破棄を迫られるだろうとワシントンの大手シンクタンク各社の代表が見ている。同時にB-1B爆撃機部隊はいずれの場合でも退役を迫られる。

  1. この分析をしたのは戦略予算評価センター、戦略国際研究センターCenter for Strategic and Budgetary Assessments、戦略国際研究センターCenter for Strategic and International Studies,、新アメリカ安全保障センターCenter for a New American Security 、アメリカンエンタープライズ研究所 American Enterprise Instituteで、今年に入って画期的な合同予算検討に携わっている。
  2. この分析によると実際にペンタゴンがF-35開発取りやめの選択をする可能性は少ないとし、作戦上の優位性を自ら失い、かつ産業基盤への影響を与えるリスクがその理由。なお、F-35はこのたび発表された戦略選択肢・管理検討過程Strategic Choices and Management Review (SCMR)で公表された二つの話題のひとつ。米空軍が求める長距離打撃構想の新型爆撃機も取りやめになるという。さらにこのアプローチでは「アジア重視」戦略構想を支えきれない、という。というのは大規模陸上兵力を維持することになるからだという。
  3. 反面、CSBAのパネルではペンタゴン高官による背景説明を全員が受けた結果、SCMRの選択肢ではB-1B爆撃機の退役に全員が賛成した。同機はB-52より航続距離、兵装搭載量のいずれも下回り、生存性が大きく優れているわけでもない。
  4. 各シンクタンクの専門家はSCMRを三つの点で批判している。まず議会は代償案を今後10年間で500億ドル規模で承認すべきとし、ペンタゴンの管理経費を400億ドル削減する決議をすべしという。「ただし法案通過の可能性は少ない」と見る。次にSCMRはペンタゴンの文民雇用の削減提案を出し切れていない。各軍司令官からは即応体制の縮小には強い反対意見が出ており、政治家層も1970年代末80年代初頭の「空っぽの部隊」の再現を恐れている。この点はアナリスト陣も同意見だが、強制削減が求める水準の削減を実現しようとするとここも避けて通れない領域だ。共同検討に参加した一人は「戦車師団25個がフルダ渓谷を通過するのを警戒するべき時代はもはや存在しない」といっている。■

2013年8月11日日曜日

F-35機体価格は着実に下がるのか ロッキードは信頼出来るのか

New F-35 Cost Target Slips Toward Goal

By Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology


aviationweek.com August 05, 2013


ペンタゴンとロッキード・マーティンがF-35の生産ロット最新分で交渉妥結し、同機では初めて機体価格が100百万ドルを割る可能性が出てきた。ただし、ここにはエンジンおよび後日改装は含まれていない。


  1. 繰り返すが、機体のみの価格であり、F135エンジンや後日装備分を加算するとはるかにこれより高くなる。一方、ペンタゴンは同機の本格生産対応ができるかを検討しようとしており、その場合は生産ピーク時点で機体単価を80から90百万ドルにする目標だという。
  2. 今回合意されたのは低率初期生産LRIP-6で36機、LRIP-7での35機分。
  3. ただし契約総額および単価の数字は契約締結までは公表しないとロッキード・マーティンが発表している。
  4. ただし同社によると各型式の機体単価は以前のロットから約4%下がっているという。LRIP-5の価格目標値が新規のLRIP-6および7での根拠となる。
  5. 米空軍向け通常離着陸型F-35AはLRIP-6で単価100.8百万ドルと算定されており、LRIP-7では96.8百万ドルになるとみられる。
  6. ただし上記価格にはエンジンは含まれていない。政府調達契約はプラット・アンド・ホイットニーと別個契約でF135エンジンを購入するもの。プラットからは価格の発表がないが、国防関係者によればF-35A向けエンジンの価格は大体14百万ドルで、F-35Bは38百万ドルだという。プラットとペンタゴンはLRIP-6のエンジンで引き続き交渉中だ。
  7. ただしテスト結果で必要となる改修費用の後日発生分はコストに含まれていない。5月時点でペンタゴンが出した試算ではLRIP-6および7の機体では7.4百万ドル相当の改修が必要になる。政府とロッキード・マーティンはすでに判明している改修費用の分割で合意ずみ。今後発生する問題改修は政府が全額負担する。
  8. エンジン価格も含み、この改修費用も加算するとLRIP-6におけるF-35Aは118.5百万ドル、LRIP-7で114.5百万ドルになる。
  9. だがロッキード・マーティンがこの目標を生産現場で達成できるかは不明だ。3月時点で関係者からLRIP-4で約7%の目標超過があったと明らかになっている。ただし、合意内容にあるリスク負担項目により今回の新規2ロットでは政府は免責となっている。ロッキード・マーティンがペンタゴンとで大規模な契約を成立させたのはマリリン・ヒューソン Marillyn Hewson CEO体制で初めてのこと。
  10. 前CEOのクリストファー・クバシックChristopher Kubasik はLRIP-5交渉に一年を要したが、ヒューソンは対照的に交渉では協調的なようだ。
  11. 今回のLRIP-6および7は価格が目標値を上回った際はロッキード・マーティンが全責任を取る形の際のはつの契約形態だ。なお、LRIP-6には米空軍向けA型18機、米海兵隊向けB型6機、海軍向けC型7機が含まれており、イタリア向けA型3機とオーストラリア向け2機もある。LRIP 7ではA型(19機)B(6機)C型(4機)の米国向けに加えイタリア向けA型3機、ノルウェー向けA型2機、英国向けB型1機となる。■

A400M引渡しがついに実現

                           

French Air Force Takes Delivery Of First A400M

By Anthony Osborne
aviationweek.com August 02, 2013
Credit: Airbus Military

フランス空軍がエアバスミリタリーA400M初号機を正式受領した。
  1. 大幅に遅れた引渡しがついに実現し、A400Mの歴史のひとつの転換点となった。フランス国防調達庁DGAが7月31日に同機の軍用運航許可がOccar(共同軍用装備整備協力機構)から出たことで翌8月1日の引渡しを認めたもの。DGAからは軍用型式証明が7月24日に交付されていた。
  2. フランス空軍向け一号機MSN7は8月2日にオルレアン・ビシー基地Orleans-Bricy air baseに回航された。同基地がA400M部隊の基地となる。エアバスミリタリーによると一号機は乗員訓練用に使用される。
  3. 同社は一号機を7月12日に納入し、革命記念日の記念飛行に間に合わせようとしたが、結局記念飛行にはテスト機材MSN3を代わりに投入した。引渡しの公式式典は今夏おわってから同社のセビリア工場(スペイン)で開催する。なお、同社はA400Mの重要機能である空中給油、戦術飛行能力など運用能力を徐々に引き上げていくべく作業中だ。このため5機のテスト用機材を投入している。
  4. 月内に二号機MSN8を受領予定で、MSN9はトルコ空軍に今年内に引き渡される。MSN10はフランス向けの機体になる。■


2013年8月1日木曜日

F-35JSF 海外販売に期待せざるを得ないロッキードの事情

Lockheed Martin Counts On Global F-35 Buys To Ease Sequestration Pain

By Michael Fabey, Bill Sweetman
Source: Aerospace Daily & Defense Report

aviationweek.com July 25, 2013
Credit: Lockheed Martin

米国防予算が強制支出削減の影響を受ける中、ロッキード・マーティンは海外販売でF-35事業の安定化を図ろうとしている。
  1. 同社CEO兼社長マリリン・ヒューソン Marillyn Hewson は「F-35への影響を考えると海外での営業機会で補完されると見ており、営業体制を強化しています。今後5年で受注の5割は海外からとなるでしょう。そこで海外顧客が動き出すまで、あるいは国防総省の考え方がわかるまでは静観しますが、その後は柔軟に対応します」
  2. 2014年度予算案は強制支出削減前のもので、ペンタゴンは今後5年間でF-35各型合計300機以上を発注する予定だ。海外向けは複数年度発注となる見込みで、ヒューソンの見立てが実現するのはオーストラリア、英国、日本その他が現状案をそのまま変えない場合および韓国向け商談が成立した場合だ。
  3. ペンタゴンは「強制支出削減をどう考慮すべきか明確な立場を示していない」とヒューソンは7月23日のウォールストリートの投資アナリスト陣向け四半期営業電話報告の中で発言している。「観測は多数ありましたが、今後どうなるか見込みを立てるつもりはありません」
  4. 「ペンタゴンとは密接に連絡しています。それぞれちがうシナリオを見ていますが、ひとつだけ言えるのはF-35を各自が支持してくれていますので今後が楽しみです」
  5. 一方でF-35の低率初期生産第6および第7ロット交渉は今夏末に終了見込みだ。同ロットには海外向け発注分の生産が入っている。同社CFO兼執行副社長ブルース・タナーは「交渉中の生産量は強制支出削減の影響は皆無で交渉は早期に終了すると見ています。ケンドール(副長官)は生産量の維持を声高に主張しています」
  6. これに対しクレディスイスから質問が出ている。「お二人の発言どおりなら問題は生産量ではないでしょう。総収益こそ重要であるはずで、収益は一機ずつの単価からでなく別の分野から確保するのでは」
  7. タナーは「まさしく言って貰えた」と答えている。



オリジナル版読者コメント

SlowMan


F-35は韓国向けにはサイレントイーグルに負けたとの現地報道内容があり、すでにペンタゴンの描く5年間300機輸出案のうち60機で穴があくことになる。韓国での失敗がカナダやデンマークにも飛び火するだろう。JSF管理室にとって救いなのはシンガポールがB型12機導入を決定したことだが、シンガポールもB型が運用可能となるまでF-15SGをつなぎに導入する可能性がある。なぜならシンガポールは韓国ほどの外的脅威にされされていないから。そうなるとF-35が致命的な死のスパイラルに向かう可能性は高いといわざるを得ない。

alexandre


JSFは交代する対象の各機を上回る性能をひとつも上回っていない。
F-14の制空性能には達していない。
F-18のかわりにはならない。F-35は単発機だ。
ハリアーの戦場実績は有していない。
A-10のかわりに砲弾を発射するのは高価すぎる
海軍向けにはF-22を海軍版に改装し、JSFは海兵隊専用にすればよかったと思う。