2013年9月20日金曜日

米海軍の次期無人艦載機UCLASSはローエンド性能機になってしまうのか

Pentagon Altered UCLASS Requirements for Counterterrorism Mission

By: USNI News Editor                        
USNI website, Thursday, August 29, 2013
                                                 
Chief of Naval Operations (CNO) Adm. Jonathan Greenert, left, and Secretary of the Navy (SECNAV) Ray Mabus observe an X-47B Unmanned Combat Air System (UCAS) demonstrator make an arrested landing on July 10, 2013. US Navy Photo

ペンタゴンが米海軍の次期無人機の要求性能について当初の海上から数千マイル離れた地点を攻撃するというものから、テロリスト狩りに軸足を動かしていると判明した。

無人空母発進監視攻撃機 Unmanned Carrier-Launched Surveillance and Strike (UCLASS) の開発はペンタゴンの合同要求性能管理協議会 Joint Requirements Oversight Council (JROC) の担当で、コストダウンとともに無人機によるテロ対策ミッションを海外基地を利用せずに実現しようとしている。

UCLASSは当初空母艦載航空団に編入して有人戦闘攻撃機と共同で防護硬い目標の攻撃に投入する構想でF-35Cと同等のペイロードを想定していた。同時にステルス性を生かし長距離飛行による情報収集・偵察・監視(ISR)任務に投入し、空中給油で飛行時間を延長する構想あった。

ところがこのたび入手した資料によるとUCLASSの現時点での概念設計は当初想定した兵装を一部は搭載するものの、ステルス性は低くなり防衛体制の整った空域内の作戦はできないものになっていることが判明した。

UCLASSの誕生は共用無人戦闘航空機システム(J-UCAS)が取りやめになったことで実現したもの。J-UCASは米空軍、海軍が共同で開発するはずだった。
Distances in the Pacific Ocean. CSBA Illustration.



新構想で海軍は空母搭載型UAVを開発し、長距離誘導ミサイルの脅威にさらされる空母群に新たな作戦意義を与えることになっていた。一方、空軍は長距離爆撃機開発を継続する。

「UCASはISR能力に加え兵装投下機能を持つはずだったが、同時に長時間滞空し、敵防空網を突破するISR機となるはずだった」と元米海軍作戦部長、現ノースロップ・グラマン取締役のゲアリー・ラフヘッド提督 Adm. Gary Roughead は本誌取材に答えている。
.
そこでノースロップ・グラマンはX-47Bを製作し、基本性能試験に投入した。

「無尾翼の無人機を空母に無事着艦させる技術実証が目的だった」とボブ・ワーク元海軍次官(現新アメリカ安全保障研究所CEO)Bob Work が本誌取材に答えている。
.
ノースロップ・グラマンはテスト機を2008年にロールアウトし、2011年に初飛行させている。今年7月に同機は USS H.W.ブッシュ (CVN-77) への完全自動着艦に成功している。

このUCAS-D初飛行の年にUCLASS構想がペンタゴン内部で変質を開始している。

2011年に国防長官官房Office of the Secretary of Defense (OSD)がJROCと共同でUCLASS開発を牛耳るようになった。UCLASS予算はOSD経由で海軍予算に組み入れられた、とワークは証言。「OSDが予算を握り要求性能に口を出すことになった」

OSDの横槍で構想内容は対テロ作戦遂行に中心が移り、強固な防空体制への進入構想と離れていく。

対テロ作戦は現在は空軍のMQ-1プレデターやMQ-9リーパー無人機が実施しており、主眼は捜索追跡および「高価値」のテロリストの抹殺で、米国の対テロ作戦の重要な要素になっている。実際にテロリスト集団指導者数名が殺害されている。

 
MQ-9 Reaper UAV. US Air Force Photo

ただし合衆国がこういった作戦を実施するにあたっては緊急性とともに外国政府の承認が前提となっている。

「海外基地からの作戦実施には海外政府は好きなだけ制約を加えてきます。政策上の制約条件という意味です」とチャールズ・ダンラップ空軍少将Maj. Gen. Charles Dunlapが本誌取材で発言している。「制約は公海からの運用ならずっと少なくなります」

複数筋からホワイトハウスが対テロ作戦飛行の実施に空母を利用すれば海外基地を使う必要がなくなると関心を有していることがわかった。

空軍スポークスウーマンのケイティ・ホーグ中佐 Lt. Col. Catie Hauge は本誌取材に対してホワイトハウスからUCLASS性能要求水準になんらの指示はないとし、ホワイトハウス安全保障スタッフスポークスウーマンのケイトリン・ヘイデンCaitlin Hayden はコメントを拒否。

ワークによるとOSDが取り仕切るようになってから「きわめて健全な討議」がUCLASS要求性能内容をめぐりかわされたという。「一方は『すでに800機もの無人機があり、制空権が確保された空域で作戦実施できる』と発言していた。」

「ただ不足しているのはステルス機による敵地進入能力だ。そこで、もう一方は『対テロ作戦と非正規戦ミッションは当分続き、陸上基地発進だけでは頼りない』と発言していた」

「この私が退官する際も議論はまだ決着していなかった。」ワークが公務を退いたのは去る5月のこと。「統合参謀本部の関心はシステムの下部レベルであったが、これを強硬に推進していた。これに対し海軍は交渉に柔軟な態度で『少なくともその分野での実施能力を上げる必要はある』としていたと思う」

本誌問い合わせに海軍とOSDからそれぞれ文書の回答があり、そこにはUCLASSミッションに対テロ作戦が含まれる、と書いてある。

ワークは対テロ作戦に中心をおくことには同意しかねるという。「空母は100億ドルの浮かぶ資産で60億ドル相当の航空機を搭載しているんです。アフリカ沿岸に空母を移動させてテロリストを捜索させるなんてことはおかしいでしょう」

オバマ大統領が署名した予算統制法 Budget Control Act では国防総省の一律1割予算削減が決まり、2013年早々から実施されている。政権側、議会側からそれぞれ既存プログラムの見直しがかかっているが、一番の焦点は各プログラムの必要額だ。

8月初めにペンタゴンで無人機作戦およびISRを担当するダイク・ウェザリントンDyke Weatherington からUCLASSの要求性能見直しでは予算制約が大きな要因となっていると発言。国防総省は「終了しきれないプログラムを開始する余裕はないし、結果を示しきれないプログラムを開始する余裕もない」という。
ただしUCLASSの機数はごく少数にするというのが当初の23億ドル相当のプログラムの内容であった。
 
An illustration from the 2008 CSBA  paper: Range, Persistence, Stealth and Networking: The Case for a Carrier-Based Unmanned Combat Air System by Thomas P. Ehrhard and Robert O. Work


「当初は空母に分遣隊機能を付与することとしており、各空母が任務に順番について西太平洋であれ中東地区であれ、一定の能力を提供する予定だった」

これに対しウィネフェルド提督が提唱したのが最大限の利用可能機で空母周辺の周回飛行を実現することで、これでは当初のUCLASS費用積算の根拠が変わってしまう。

与えられた予算で何回の周回飛行が実現できるかがUCLASSの最大の優先事項だ、とウィネフェルド提督は書いているという。

改定指導内容に照らしあわせ、JROCは国防長官官房の費用分析計画評価室に3月31日までに代替手段の比較検討をすませるよう提言し、審議会がUCLASSの要求性能として提示したものを反映するよう求めたとの報道もある。

新しい基本性能の指標key performance parameters (KPPs),として機体単価(研究開発費、運用費、維持費を除く)は150百万ドルを超えな
いものとした。
 
Proposed operational ranges of UCLASS. US Naval Institute Illustration


周回飛行がまず想定されるが、その他のKPPには攻撃ミッションの飛行半径2,000海里が含まれる。

海軍は単価150百万ドルで最低2機の購入を期待する。

今回の方針変換で当初の目標だったUCLASSを有人機と同等の戦力として一体化させる内容が薄まる。現在の案はUCLASSを空母から発進させるが、有人機が飛行しない時間に限るというものだという。
.
「UCLASSを通常の航空作戦が終了してから発進させ、次のサイクルが始まるまでのギャップを埋める存在にできる」と海軍作戦部長の下で無人機システムの要求性能を取りまとめるクリス・コーナティ大佐  Capt. Chris Corgnati は語る。

ワークは空母航空部隊関係者の中には有人機と無人機の統合には口を重くする傾向が強いという。

それではUCLASSを当初のUCAS構想のレベルまでどれだけ近づけることができるのかはいたってペンタゴンが海軍が9月以降に発表する提案依頼書(RFP)をどのように系統付けられるか次第だろう。

「RFPはそもそも性能内容を定義づけるもの。今のRFPがどうなっているか不明だが、予算強制削減の影響は避けられないだろう」とワークは言う。

UCLASS製作に関心を示す四社、ロッキード・マーティン、ボーイング、ジェネラルアトミックス、ノースロップ・グラマンはそれぞれ新構想を元に独自の新しい視点を模索する必要がある。

「RFPは性能を伸ばしていくことが最低限必要だ。すべてはコストの問題になる。ローエンドのシステムに当然向かうことになる。でもこれでは実戦部隊が求めるものでなくなりますね』(ワーク)

海軍はUCLASSを2020年までに配備する予定。.■


2013年9月19日木曜日

A-10が予算削減のためモスボール保存になりそう

DoD BuzzがA-10が予算削減のあおりで現役を退くことになりそうと伝えています。

Air Force Mourns Likely Passing of A-10 Warthog

By Richard Sisk Wednesday, September 18th, 2013 4:46 pm

NATIONAL HARBOR, Md. —A-10ワートホグ(イボイノシシ)近接支援・戦車キラー機で自身も操縦経験があるスタンリー・クラーク中将が悲しげに同機部隊がモスボール保存になりそうだと語った。

  1. これは空軍協会による航空宇宙会議の席上のことで、聴衆から「A-10を救えないのか」との質問が出た.
  2. クラーク中将は州軍航空部隊の司令官であり、この質問に婉曲に対応した。同中将はA-10サンダーボルトの操縦を心からほれ込んでいたと答えた上で、搭載するGAU-8 Avenger30ミリ回転機関砲は「地上部隊にとって大切なもの」と表現した。
  3. ただし、米空軍は「単一ミッションしかこなせない機種は削減する方向で検討中」とし、予算強制削減のもと、「予算がまわってこない。A-10存続のオプションはない」
  4. 空軍は「第五世代機の配備を念頭においており」A-10はステルス性能もなく飛行速度も遅い。
  5. 「2023年の空軍をめざしており」A-10は未来の空軍に残る場所がないという。
  6. 空軍参謀長マーク・ウェルシュ大将も自身がA-10飛行時間が1,000時間あり、同機への愛着を口にしている。「醜いやつですが愛着があります」
  7. しかし、同大将も空軍が一兆ドルの予算削減を今後10年で実現する必要があると説明。その予算環境ではウォートホグの維持はできなくなると発言。
  8. A-10はフェアチャイルド・リパブリックが1970年代に開発し、第一次湾岸戦争ではイラク戦車900両以上を破壊し、その後のイラク、アフガニスタン戦役でh近接航空支援の中心だった。
  9. ウェルシュ大将はA-10がまな板の上におかれているのは「単一ミッション機材であることが大きい」とし、いっそう厳しさを増す作戦空域では生き残りが難しいことを理由に挙げる。
  10. 「予算節約の方策はすべて検討しており、近代化改修・機体再生化もその対象だ。複合ミッション機材でそこそこにミッションをこなせるのであればいいが、単一ミッション機はまず削減の対象に上げられるだろう」

この記事に対するオリジナルの読者コメント


  • 実現の可能性はないだろうが、陸軍が同機を運用したらよいと思う。4ないし5飛行隊を陸軍が維持するのだ。パイロットを見つけるのはそんなに難しくないはず。ウォートホグパイロットで同機に愛着を持つものは多い。ただし陸軍が固定翼機を運用すると空軍には面白くないだろうし、陸軍が空軍パイロットを横取りしたらもっと怒り狂うだろう。
  • A-10退役は最低の軍事選択肢。愚かとしかいいようがない。
  • 今回の愚行は1962年のバーミューダ三軍会議までさかのぼり、東南アジアでのミッションを小分けした結果、恐ろしい事態が発生している。F-100で近接航空支援をした。さらに1967年のAX構想につながっている。米空軍がA-10生産を中止したのは固定翼機による近接航空支援が不要と考えたのではなく、他軍にその役割を与えたくなかったからだ。陸軍が開発したグラマンOV-1モホークがどうなったかを見ればわかる。A-10の開発元フェアチャイルドでは同機が陸軍の元だったら4,000機は販売できるとのジョークがあったほどだ。
  • イスラエルに販売すればよい。対戦車攻撃機が必要で、戦闘が発生するのは確実だから。   
  • 今回節約してもあとで血の代償になりかえってくる。大統領以下指導部に失望   
  • ではウォートホグにかわってどの機種が地上支援、戦車攻撃をするのか。F-35が全部できるとは思えない。
  • これでは米空軍の死亡と同じだ。
  • 空軍はすでにC-17生産を終了させ(緊急兵力輸送力の不足となろう)、陸軍のC-27Jを中止させ、今度はA-10タンクバスターか。こうなれば過去の決定を覆し、陸軍に地上攻撃用ガンシップとなる固定翼機を運用させるべきではないか。
  • 同機は近接航空支援用途では最高の機材だ。空軍は地上部隊を犠牲にして予算を節約するつもりなのか。30mm 機関砲だけで敵は震え上がる。空軍上層部はこれを手放すというのは軍人としての思考方法を放棄しているのか。

2013年9月18日水曜日

120時間連続飛行可能なUAVは偵察監視活動を変える可能性があります

どうしても戦闘機の話題が読者の関心をしめているようですが、このブログの本来目指しているISR機材関連、無人機の話題も日本には必要と考え、あえて掲載していきます。今回もその流れで超長時間飛行機材をご紹介します。無人機では大きく遅れを取っていることが明白な日本にとってまずこれまでの遅れをとりもどすためには大きく目を開く必要がありますね。

Aurora’s Orion MALE UAV Aims For 120-hr. Flight

By Graham Warwick
Source: Aerospace Daily & Defense Report

September 17, 2013
Credit: Aurora Flight Sciences
.
オーロラフライトサイエンス Aurora Flight Science の新型無人機オライオン Orion が高度20,000 ft.ペイロード1,000-lb.120時間連続飛行という目標への最初の一歩を踏み出した。
  1. オライオンはプレデターと同等のペイロードを搭載し連続監視飛行を行うことができるようになる。現行のUAVは24時間ミッションが主なので、離発着回数を減らし、操縦制御する人員の負担と運用コストを下げることが可能となる。
  2. オライオンは8月24日に「西部のテスト施設」から初飛行したが、これはカリフォーニア州チャイナレイクのことと思われる。エンジンはAustro Engine のAE300で燃料効率が高いターボディーゼル2基で飛行時間は3.5時間に及んだ。高度は8,000 ft. で約60ノットだったと同社のUAS事業部の副社長トム・クランシー Tom Clancy が明らかにした。
  3. 国防総省内で同機の管轄が幾度も変わっている。オーロラ側は現在の管轄先を明かすことを拒んでいるが、Aviation Weekは米空軍のビッグサファリ計画室 Big Safari program office と理解しており、特殊用途機体の改修、調達をしている部門だ。
  4. 同社が開発を開始した2006年当時は陸軍予算で水素動力の「高高度長時間滞空機」 “high-altitude, long-loiter” (HALL) となるUAVを完成させる予定だった。2008年になり同社から空軍研究所に対し中高度版のオライオン案が通常エンジン動力として自主的に提案されている。これが共用技術コンセプト実証 joint concept technology demonstration(JCTD) の中高度グローバル情報収集監視偵機・通信中継機(Magic)となり契約が成立している。
  5. HALL設計案から複合材料製の主翼、尾翼を使ったオライオンはオーロラのゴールデントライアングル(ミシシッピ州)工場を2010年11月にロールアウトして、2011年8月に初飛行の予定だった。「案件の進展は予算計上の進度に左右されました」とクランシーは明かす。「ただし目標水準は最初に設定されたままです。120時間連続自律飛行のUAVでペイロード 1,000 lb. 高度20,000 ft.です」
  6. 技術上の目標はMagicの内容に準じている。「低価格を離着陸回数削減で実現し、自律性で訓練費用を下げ、オープンアーキテクチャアでアップグレード費用を最小限にするまたはミッションシステムを強化させることです」とクランシーは説明する。「プラグアンドプレイをめざしており、ミッション装備の変更も比較的容易になります」
  7. 初飛行時に機内にはミッションシステムはまったく搭載していなかったが、120時間連続飛行実証(2014年中ごろ)の際には搭載予定で、「情報収集機材複数となろう」という。オーロラからはMagic実証で三機の生産が提案されたが、現在は「二機以上になるかはお話できない」という。.
  8. また同機のシステムを作戦に投入する予定があるかについてもコメントがなかった。オライオンの主翼は長く複合材製の一枚構造で抗力を押さえ、軽量に仕上がっている。このふたつが中高度での長距離飛行を可能としている。もうひとつの鍵は燃料消費効率が高いターボディーゼルエンジンでジェット燃料を使う。
  9. 100時間超の長時間飛行を狙う機材は他にふたつあり、エアロヴァイロンメントAeroVironment’のグローバルオブザーバー Global Observer とボーイングのファントムアイ Phantom Eye はともに水素燃料を用い、高高度飛行設計だ。二機種ともに数回の飛行をしただけで買手がない状態だ。.
  10. 長時間飛行には高度の信頼性も必要となり、オライオンのシステムアーキテクチャアは同社の有人飛行可能なセントー無人機と同様の自律性と冗長性がもたせてある。「中には三重になっているものもあり、他は二重です。長時間飛行のためにはひとつも故障が許されませんからね」とクランシーは語る。■

2013年9月13日金曜日

ボーイング・サーブがグリペンをT-X候補として提案か

Boeing And Saab To Propose Gripen For T-X

By Bill Sweetman william.sweetman@aviationweek.com
Source: AWIN First


aviationweek.com September 11, 2013

ボーイングとサーブから米空軍の次期練習機T-X候補として両社が共同してJAS 39グリペンを提案するとの発表が近日中にある模様。両社は有力な候補案のロッキード・マーティン韓国航空宇宙工業共同提案のT-50よりもコスト競争力があると見ている。

T-Xは350機を調達しノースロップ・グラマンT-38を更新する内容だが、予算削減の影響で実施先送りとなっていたものだが、2015年度予算案で再スタートとなる見込み。

両社が参入すると競合にも影響が出そうだ。ノースロップ・グラマンはBAEシステムズと共同でホーク練習機を提案し、アレニアジェネラルダイナミクスと共同でM-346を提案している。
.
ボーイングは新型機を提案するとしていた。しかし、サーブとの連携が現実的になったのはスウェーデン政府が新型JAS 39E(単座型)の開発をスイス向けに開始したため。スイス発注は単座型のみだが、これを複座型にしたF型は延長線上の機体になる。

T-50との比較ではJAS 39Fがわずかばかり大型で強力だが、同時により新しい設計でコックピットのワイドスクリーンはF-35に似ており、ディスプレイはヘルメットと一体化されている。取得価格はC/D型より安くなり、保守点検のしやすさ、運航コスト低減の設計だ。スイス空軍高官によると飛行時間単位のコストはタイフーンやラファールの半分程度だという。

正式にはT-Xの要求仕様内容はまだ発表とならないが、サーブ・ボーイング両社の動きから見てT-50で通用する要求内容ならグリペンでも通用すると判断している様子だ。業界筋によればT-Xグリペンはアグレッサー教導隊機材としても最適だという。あるいはF-22やF-35の訓練相手にもなる。米空軍はすでにF-38をF-22訓練用に配属している。さらに米空軍上層部に近い筋からは安価な選択肢として州空軍のF-15/F-16部隊の機材更新用になるのでは、との声も出ている。

ボーイングからはサーブとの契約についてその存在を確認も否定もしないとの声明が出ている。■


2013年9月12日木曜日

MDAがミサイル迎撃実戦テストに成功

MDA Goes Two For Two In First Operational Test Event

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First

US Navy Photo


aviationweek.com September 10, 2013

米ミサイル防衛庁(MDA)が中距離弾道ミサイル二発の迎撃にそれぞれ成功した。小規模の攻撃をシミュレートした発射テストで、太平洋上クウェゼリン環礁で9月10日に実施された。
  1. 今回のテストは以前から米国のミサイル防衛網の実効性確認の機会として計画されており、ペンタゴン関係者はシリア攻撃で検討が進む中とは無関係と強調している。
  2. 今回のテストでは最終段階高高度地域防衛Terminal High-Altitude Area Defense (Thaad)システムおよびイージス装備の駆逐艦USSディケイターから発射のSM-3ブロックiAが迎撃した。
  3. 前方配備のAN/TPY-2レーダーおよび上空機材おそらく国防支援計画および宇宙配備赤外線システムの各衛星が脅威対象を探知し、追跡データを指揮命令システムに送信した。
  4. このうちAN/TPY-2が目標を捕捉したが、発射に必要な解は発射プラットフォームで独自のレーダーで求めたもの。すなわちThaadターミナルモードのAN/TPY-2とイージスのSPY-1レーダーである。.
  5. Thaadの二発目が発射されているが、これはイージスが目標迎撃に失敗した場合に備えてのこと。ただし、これは不要だった。イージスSM-3ブロックIAは昨年10月のテストで迎撃に失敗している。ジェイムズ・シリング海軍中将 Vice Adm. James Syring は8月に問題解決策はすでに織り込み済みと発言したものの、不良原.
  6. 今回の目標の一つはロッキード・マーティンの性能拡大型中距離弾道ミサイルExtended Medium-Range Ballistic Missile (EMRBM)で今回が初の発射となった。EMRBMはこの数年で急いで開発され、同規模の敵ミサイルをシミュレートするもの。C-17輸送機から投下されてから点火し飛行を開始している。今回のテストでは順調に飛行したことがデータで確認されている。MDAは同社から合計5基のEMRBM購入を契約している。
  7. 今回のテスト終了後にMDAから声明文が出ており、「テストでイージスの弾道ミサイル防衛(BMD)、最終段階高高度地域防衛(THAAD)で構成する層状防衛が機能することが実証された」としている。
  8. 今回は実戦テストだったので、操作には陸軍海軍の兵員があたり、「運用方針や戦術の内容向上に役立つ貴重な機会となり、同時に航空ミサイル統合防衛作戦の執行でいっそう自信がついた」とMDAは評価している。■

2013年9月11日水曜日

F-35の経済運用で協力を模索する英・ノルウェー

Norway And U.K. To Collaborate On F-35 Operations

By Anthony Osborne tony.osborne@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com September 06, 2013
Credit: LOCKHEED MARTIN

英、ノルウェー両国はF-35共用打撃戦闘機の運用で協力拡大を模索している。.
  1. 両国担当大臣がロンドンで5日合意書に署名し、機体整備、パイロット訓練、技術員養成で協力関係を検討することになった。
  2. 両国で資材、技術を共有してF-35を運用することでシナジー効果を狙う。
  3. さらにそれぞれの自国産業に共同事業を奨励して機体の維持管理を進めたいと考えている。たとえばノルウェーは国営企業 AIM Norway にF135エンジンの保守点検を担当させる。
  4. 「ノルウェー、英国にとって共通の機種を運用するのは60年ぶりのことで、当然新しい協力関係が生まれるでしょう。」(ノルウェー国務大臣エリク・トルスハウグEirik-Owre Thorshaug)英国はJSF導入の全体計画を決めきっていないが、協力関係の模索には関心が高い。
  5. 英国防筋はF-35最初の飛行隊となる14機の調達を年末までに決定する予定だ。同国はすでにF-35A型3機の引渡しを受けているが、発注済のB型は2018年にならないと納入されない。同型で空母打撃航空能力を構成する方針だ。
  6. 一方、ノルウェーが発注したF-35は2017年に引渡し開始となる。同時に完全に作戦能力を有する初のF-35となる予定だが、初期作戦能力の獲得は2019年になる。■


コメント なるほどあまりに高額になり、かつ今後の防衛力では依存せざるを得ない同機を単独で維持管理するよりも共同運用したほうが安上がり、という計算がすでにはたらいているようですね。日本はというとこの発想はないのですが、FACOの機能がこれから注目されるでしょう。とりあえずはシンガポールでしょうか。

2013年9月10日火曜日

シリア空爆後に今から備えるイスラエルは超現実主義国家

Israel Deploys New Iron Dome Batteries

By Alon Ben David
Source: AWIN First
September 04, 2013
Credit: Rafael

シリア攻撃の決断になかなか踏み切れない米国に痺れを切らし、イスラエルは攻撃実施後に備えようとしている。イスラエル空軍 (IAF) は高度警戒態勢に入っており、第六番目のアイアンドーム Iron Dome システム部隊を展開済みで、さらに第七番目も準備中だ。
  1. 「イスラエル軍はいつもどおり任務を継続する」とネタニヤフ首相 Prime Minister Benjamin Netanyahu は高らかに宣言したが、同時に追加予備役1,000名の召集を準備させている。
  2. IAFは第六番目のアイアンドーム部隊の引渡しをラファエルRafael から受け、各部隊を北部、中部、南部の国内に展開中。第七番目の部隊も米国がシリア攻撃の準備が完了するまでには納入されよう。アロー2 Arrow 2 弾道弾迎撃ミサイルも警戒態勢に置かれており、ペイトリオットMM-104地対空部隊も同様だ。
  3. シリアのアサド大統領Syrian President Bashar al-Assad はスカッドミサイル備蓄の半分を内戦で消費済みだが、さらにスカッドB/C/D合計500発を保有していると見られる。その射程は型の順に300,500、700キロメートルだ。ただし、液体燃料式のスカッドでは燃料注入に長時間が必要で、発射する前に存在が捕捉されてしまう。そこでイスラエルが懸念するのはシリア陸軍が多数保有する固体燃料式M600ミサイルのほうだ。これはイランのファター-110ミサイルのクローンで500-kg弾頭を300Km範囲で命中させることが可能でイスラエルの人口集中地区がほぼ全部含まれる他、戦略拠点も狙われる。そのほか 302 mm ロケットも 150 kmの射程があり、すべて化学兵器の弾頭を搭載できる。
  4. アローはもともとスカッドミサイルへの対抗手段として開発されているが、アイアンドームは短距離ロケット弾を想定している。さらに中間空域の防衛手段としてデイビッズスリングDavid’s Sling (別名 魔法の杖 Magic Wand )があり中距離ミサイルM600迎撃を想定しているがまだ開発中だ。イスラエルが保有するペイトリオットPAC-2が当面この間のギャップを埋める。「ある程度なら弾道ミサイルの脅威にも対抗可能だ」とアミール某中佐(氏名は非公開)はペイトリオット部隊指揮官として本誌取材に答えている。
  5. シリアの防空能力が一貫して弱体化しつつあるとはいえ、イスラエルは依然として強力な脅威とみなしており、イスラエル北部のラマット・デイビッド空軍基地 Ramat David Air Force Base ではサイレンが二時間おきに鳴り、戦闘機がスクランブルしておりイスラエル国境に向かうシリア戦闘機が探知されていることを示す。「敵を過小評価してはいけない」と同基地のF-16C/D部隊指揮官G中佐は語る。「好運に頼るわけに行かないのであり、わが国に向かう機体があれば現場に飛び領空侵犯が発生しないことを確実にしなくては」
  6. 前回のシリア空軍との交戦は1982年と1986年に発生しており、IAFが完全勝利している。IAFの航空管制部隊司令官アサフ中佐は「すべての動きを把握し、特に今回は警戒している。相手は現在も飛行を実施している。相手は作戦能力を維持しており、わがほうはこれを深刻に受け止めている」という。
  7. 近年になりシリアはロシアから高性能防空装備を受け取っており、SA-17(Grizzly/Buk) や SA- 22 (Greyhound/Pantsyr)をIAFは警戒しているようだ。2013年にIAFがシリア国内を数回空爆したとの報道が流れてからは防空装備はIAFにとって難題にならなくなった。このこともありイスラエルの判断はアサド大統領はあえてイスラエルを刺激してこないと見ている。
  8. 「イスラエルがその気になればシリアは全部失うことがアサドにはわかっている」とイスラエル国防筋の上席関係者が本誌に語っている。「わが国を攻撃すれば自殺行為とわかっている」 それでもIDFはこの二週間で各種のシミュレーションシナリオを試しており、米国による攻撃への報復としてシリアの息がかかった機関が代理攻撃としてシリアあるいはレバノン国内からロケット発射をしてくる、というもの。「それには即座かつ容赦なく対応する」とネタニヤフ首相は繰り返し警告している。
  9. イスラエル指導部は米国がシリア攻撃に踏み切るべきかに関しあいまいな態度をとっている。ひとつには化学兵器の使用という「レッドライン」を超えたシリアへは決定的な力の行使を希望しつつ、他方で米国のシリア介入で内戦の方向が変わるのを望んでいない。イスラエル指導部はアサド大統領を仇敵と見つつも内戦の反対勢力を見るとむしろ望ましくない結果につながることも恐れている。
  10. 9月のユダヤ休日を迎えようとする中で、イスラエル国民はガスマスクを手に入れようと行列を作り、国民防衛配給所に集まっている。米国による攻撃を受けたアサド大統領が化学兵器をイスラエルに発射するとの恐れから民間人多数が個人防護キットの入手に走っており、軍支給の同キットにはガスマスク一個とアトロピン注射器(神経ガス対策)が入っている。
  11. 指導層から繰り返し発せられるメッセージも国民の不安感情を鎮めることはできていない。イスラエル国民の多くがアサド大統領が化学兵器使用を自国民に使うのを躊躇しないのであれば、イスラエルにも躊躇せず使用してくるはずと考えている。■