2015年5月8日金曜日

ホルムズ海峡・拿捕事件>商船解放、米海軍護衛体制は解除

本件はこれで一件落着でしょうか。イラン革命防衛隊=宗教指導層にとってはイランの実力を西側に示したという威信高揚の意味があったのではないでしょうか。原油価格がやや高くなったのはこの事件の影響と見ていますが、このあとで下落すればホルムズ海峡にどれだけ世界がピリピリしているかがわかりますね。

Iran Releases Maersk Tigris

By: Sam LaGrone
May 7, 2015 10:34 AM

An undated image of M/V Maersk Tigris
An undated image of M/V Maersk Tigris

イラン政府は貨物船M/Vマースク・ティグリスを解放した。同船はイラン革命防衛隊海軍(IRGCN)がホルムズ海峡で4月28日に拿捕していた。イラン政府とマースク海運が5月7日に発表。

  1. 同船は現在バンダルアバスから移動中と国防総省関係者がUSNI Newsに述べた。
  2. イランがマーシャル船籍の同船を拿捕したのはマースク社とイラン民間企業間で10百万ドル超の貨物紛失をめぐる十年近くにわたる係争事件が理由と説明。.
  3. イラン港湾海運機構とマースク海運は合意に達し、同船を解放することになったとイラン国営IRNA通信が報道した。
  4. マースクからは「今回の解放はイラン当局との対話と問題の貨物をめぐる事情説明書を提示した結果」との声明が発表された。「今後も対話継続し貨物問題の完全解決を目指す」
  5. I拿捕した時点でイランと米国間には核問題をめぐり微妙な状況が存在した。
  6. マースク・ティグリス拿捕発生後、またIRGCNが別の米国船籍MVマースク・ケンジントンの妨害の試みに失敗しており、米海軍は米国および英国船籍の船舶をホルムズ海峡通過で護衛していた。米海軍は護衛を今週初めに取りやめた。
  7. 拿捕には政治的理由がないとイランはいうが、IRGCNによる捕獲では周囲を取り囲んだのが国際航路上であり、船首に向け発砲しており異様な行為だ。
  8. 「債権者が請求権を行使して船舶を差し押さえることはよくある。船舶が停泊中に発生する例があり、船主側が警備員を配備して航行できるようにすることが多い。」と海事法弁護士ブルース・ポールセンがUSNI Newsに解説している。
  9. 「警備員を置かない場合は乗組員を帰還させ貨物を降ろし、船舶は港湾に引き止め、訴訟あるいは競売にかける。船舶差し押さえ事例はたくさん扱っているが、今回のような拿捕の例はいままでなかった」.
  10. IRGCNは正規外軍部隊とは別の組織であるが、イラン中央組織と近く、イスラム信仰の防護を任務としている。 ■

2015年5月7日木曜日

韓国へのTHAADミサイル迎撃システム配備は焦眉の急


今日の韓国は日本から見ていて不安になる状況です。AIIB問題でも躊躇なく中国の主張を受け入れ参加を表明しました。とくに国際政治に国民感情を持ち込んだことで一層混乱をしているように写ります。文中にあるようにミサイル防衛装備の主目的が韓国国内の米軍基地の防護にあるのは明らかですが、だからといって国民を防衛しない新ミサイル防衛装備を受け付けないとすれば、米軍の抑止力効果を減じることに自ら手を貸すことになり、北朝鮮・中国の利に叶うことになるのがわからないのでしょうか。 

Save Our Seoul: South Korea Needs THAAD ASAP For Missile Defense

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on May 06, 2015 at 4:00 AM
WASHINGTON: 現在の北朝鮮に米国を核攻撃する能力はない。しかし年少の独裁者金正恩 Kim Jong-unの手元には約1千発の弾道ミサイルがあり、韓国はもちろん日本へも核攻撃が可能だ。一斉発射された場合、朝鮮半島内のミサイル防衛は「悲痛なほど能力不足」を露呈するとペンタゴンの戦略専門家ヴァン・ジャクソン Van Jackson は述べている。このシナリオでは陸軍のペイトリオットと海軍のイージス艦では韓国内の米軍基地の防衛は不可能であり、同盟各国の都市部については言うまでもない。
  1. 北朝鮮で軍備増強が続く中で「ますます危機的状況に近づいており、この流れを止められるものはいない」とジャクソンは見る。
  2. そのため韓国内でミサイル防衛体制を整備する必要があるとジャクソンは言う。ジョエル・ウィット Joel Wit (国務省で朝鮮問題調整官をつとめた)とジョン・シリング John Schiling (Aerospace Corporationで科学主任)が 38 Northのプレス向け朝食会でジャクソンに加わった。解決策として第一段階はTHAAD部隊を展開し、ペイトリオットより長距離で有効なレーダーや迎撃手段を持ち込むこと。長期的にはこの三名の専門家はレーザー兵器やレイルガンも威力を発揮する可能性があるが、あくまでも隙間的な使い方であり、まだ実用の域に達していないと指摘した。
  3. THAAD配備の可能性を言うだけで韓国では物議を醸しており、中国の威嚇があることをジャクソンも認める。しかし、ソウルで「韓国のダボス会議」と称されるAsan Plenumから帰国したばかりのジャクソン(新しいアメリカの安全保障を考えるセンター上席研究員)によるとTHAADをめぐる政治力学は変わりつつあるという
  4. 「韓国はTHAADの受け入れに六か月前より前向き」とジャクソンは言う。これは米国外交が実を結んだのではなく、(実際に米国はまだ配備の提案もしていない)、中国があまりにも高圧的な態度を示したためだ。中国は露骨にTHAAD配備させないよう韓国に働きかけており、反動で韓国は以前より同ミサイル配備を受け入れやすくなっている。
  5. とはいうもののジャクソンも「大きなきっかけがないと韓国もTHAAD配備を申し出てこないだろう」とみており、例として北による第四回核実験を想定している。北朝鮮の挑発的な動きは予測がつかず、その分だけ大きなきっかけになるかもしれない。
  6. だが北朝鮮と中国はTHAAD配備を挑発的な動きととらえないか。地域内軍拡を引き起こし中国やロシアが米国製ミサイル防衛を打ち負かす新兵器の開発にすすむのではないか、との質問が会場から出た。
  7. 「その事態はすでに発生している」とジャクソンは中国やロシアが極超音速兵器の研究をしている事実を指摘した。両国の軍事装備への投資の前提は西側との軍事衝突発生だ。韓国でミサイル防衛を強化してもこの前提への影響は僅少だろう。
  8. ただシリングは中国と朝鮮半島を舞台にした軍拡になれば、米国と韓国には勝ち目がないという。「中国は北朝鮮に低性能ミサイル部品を大量かつ迅速に搬送するでしょう。THAADやペイトリオット増備のペースを上回るはずです」 また北朝鮮は闇市場から旧式ロシア技術を輸入していることもあり、「第二砲兵隊(ミサイル部隊)増強に走るか、その双方を実施するだろう」
  9. 中国は米国によるミサイル防衛を不安定要素と見ている。Asan Plenumの席上で中国側参加者はTHAADは攻撃手段で脅威とみており、北朝鮮国内を飛び越え中国領土まで射程に収めることを問題していたとジャクソンは言う。技術的には正しいが、議論がずれている。THAADのレーダーや迎撃ミサイルは飛来するミサイルへの対応策であり、地上攻撃やスパイ活動はできない。
  10. 「THAADで中国をのぞき見することはできない」とジャクソンは言い、「中国はXバンドレーダーで今までは不可能だった監視活動ができるといわんばかりだ」
  11. THAAD迎撃ミサイルは理論的には中国機も目標にできる。ミサイル防衛システムは防空用途にも使えるのが普通だが、仮に軍事休戦ライン上から発射しても、中国の領土奥深くへ到達できない。
  12. “The impression I have, the impression that many of the South Koreans shared, the impression that the Chinese gave, was that pressuring South Korea to not allow the deployment of THAAD had nothing to do with military operations,” Jackson said. Instead, he said, the Chinese were worried about the political significance of THAAD as barometer of US-South Korean relations: “The deployment of THAAD is an indicator that the alliance is still functioning.”
  13. THAADが米韓関係のバロメータになることを中国が心配しているという。「THAAD配備になれば同盟関係が今も健在ということになる」 ウィットも「米韓同盟の強化につながる要素を中国が支持するはずがない」という。
  14. それでも中国は北朝鮮の軍備増強を問題視している。ジャクソンは会議で中国側参加者と話してみて、「北朝鮮による核ミサイル開発を非常に問題視している」ことがわかったという。ただし中国側は米国が外交的解決に専念すべしと考えており、軍事抑止力ましてや先制攻撃に出ないことを期待している。
  15. ただし北朝鮮向け外交で成果が少なすぎるという欲求不満が数十年に渡り続いている。北朝鮮外務省には交渉の権限がわずかしかなく、軍部には外部との折衝の経験も能力も不足しているとウィットは指摘する。ウィットは北朝鮮との交渉経験が豊かだ。
  16. 一方で危機的状況はゆっくりながら増大している。「最近は進展がないことには驚かされるほどだ」とシリングは共著者ヘンリー・カンと「北朝鮮の核兵器運搬システム」“The Future of North Korean Nuclear Delivery Systems.”の中で著している。北朝鮮のミサイル技術改良は近い関係だったイランやパキスタンと切り離されて久しい。
  17. そこで北朝鮮の兵器体系は旧ソ連の技術に依存している。保有ミサイルのほとんどが1960年代のスカッドを発展させたものだ。ノドン(「スーパースカッド」)は韓国全土と日本の大部分を射程に収めている。本体サイズが小さく洞穴などに隠して空爆を生き延びる事が可能だ。現時点でも核兵器を搭載できる可能性がある。
  18. だが北朝鮮が開発中の兵器はもっと強力だ。
  • テポドンとして知られる銀河Unhaは4回の打ち上げで成功は一回のみだが、全世界に核兵器を落とす可能性がある。ただ液体燃料搭載に数日かかり、発射前に警戒が可能。北朝鮮のミサイルは液体燃料式が大部分で発射直前に燃料を搭載する必要がある。米国の固体燃料式ミサイルではサイロの中に数年間保管できる。
  • ムスダンはソ連時代の潜水艦発射型ミサイルをトラック搭載ミサイルに改良したもので推定射程距離は1,500ないし2,000マイルとグアムを狙うことが可能とシリングは見ているが、試射は一度もない。
  • KN-08は次世代ミサイルとしてテポドンとムスダンの最良の部分を利用していると言われる。その開発意図は移動発射台搭載用に小型化しながら射程5,625マイルを実現し、米国西海岸を射程に収めることだ。ただしKN-08の試射は実現していない。実際に大陸間弾道弾をテストする空間的余裕は北朝鮮国内には存在しない。実施するとすれば海洋に向けて飛ばし、待機する艦船がデータを集めるしか方法がない。
  • また北朝鮮が潜水艦発射型ミサイルの入手に走っているとの報道がある。ただし水中発射を成功させるのは困難で北朝鮮の潜水艦には航続距離の点で限界があり、米国を攻撃できる地点までの航行は無理だ。

  1. 短期的には未検証かつ信頼性の低いミサイルが極少数の米国に届くかもしれない。それでも核弾頭が付いているとしたら十分に米国を混乱させることに成功するだろう。ただしその程度の脅威だと現時点の米防衛体制が想定範囲内にあることは確かだ。
  2. 対照的に韓国のミサイル防衛を制圧することは今でも十分に可能で、今後悪化する一方だ。この流れを覆す新しいミサイル防衛のモデルは成立するだろうか。この質問への専門家の見解を明日以降の記事で紹介する。■

2015年5月6日水曜日

★オスプレイ>日本向け売却案の概要、17機で総額30億ドル



Pentagon Notifies Congress of Potential $3 Billion V-22 Osprey Sale to Japan

By: Sam LaGrone
May 5, 2015 5:33 PM
Japanese ship Shimokita operates U.S Marine V-22 Osprey aircraft near San Diego Calif. in 2013. US Navy Photo
サンディエゴ沖合で米海兵隊V-22を運用する海上自衛隊輸送艦しもきた、2013年 US Navy Photo

米議会へ日本向けV-22(ベル=ボーイング製)ティルトローター17機の販売(支援装備含み総額30億ドル)を5月5日に通知したと国防安全保障協力庁(DSCA)から発表が出た。

  1. DSCA(ディスカ)声明文では自衛隊地上部隊の活動範囲が広がり、米軍との共同作戦が一層強まると解説している。
  2. 「日本は輸送能力を強化して防衛、特殊作戦の用途への対応向上を目指している。今回提示のV-22BブロックCオスプレイ機の売却で陸上自衛隊の災害人道救援活動および揚陸作戦能力が大幅に強化される」(声明文)
  3. 「今回の売却で同盟国日本にも相応の負担を求めるとともに米軍との相互運用能力が高まる。日本にとって同機の部隊編入は容易に実施可能」(同上)
  4. 売却案には暗視ゴーグル、レーダー各種、予備部品、訓練機材が一式に含まれる。
  5. 日本がオスプレイ調達の検討に入ったのは2013年のことで中期防衛計画の改定で米海兵隊をモデルとした揚陸強襲能力の拡充を求める一環とFlight Globalが1月に報じていた。.
  6. 日本が二隻建造するいずも級ヘリコプター空母の一号艦が就役した。V-22の母艦としては理想的だ。米海兵隊はひゅうが級DDHで2013年にV-22運用試験を行っている。
  7. 有償軍事援助では国内向け調達と異なる手続きが必要となる。.米議会が売却案を承認し、日本側が販売条件を受け入れてはじめて企業側が最終的な販売条件を認め納期を決定する、というのが国務省による説明だ。
  8. ベル=ボーイング関係者はUSNI Newsの照会に対してコメントを出していない。■


2015年5月5日火曜日

難民流入に困るヨーロッパの対策は漁船の破壊か




Europe Weighs Bombing Migrant Boats

By Tom Kington5:10 p.m. EDT May 2, 2015

635660006467741120-470973252(Photo: Dan Kitwood/Getty)
ROME —ヨーロッパ指導層の間で異例の軍事作戦を実施すべきか慎重な検討が続いている。不法移民が乗り込む前に小舟艇を攻撃する案だ。.
検討はリビアの密輸業者が700名もの移民を地中海で溺死させたことがきっかけだ。
4月18日に発生したこの悲劇で密輸業者取締りの機運がヨーロッパ各国で高まった。昨年だけで17万人がリビアからイタリアに送られ、戦争と貧困を逃れヨーロッパを新天地にしようと押し寄せている。
漁船が過積載で転覆する事件は多発しており、ゴムボートも海上で空気が抜けることがある。今年だけで溺死した犠牲者は1,600名にのぼりっており、昨年の死亡3,400名を超えるのは必至だ。
世論に押されたEUは海上捜索救難活動の強化策を打ち出し、「違法業者が使用する舟艇の捕獲・破壊活動を体系的に行う」としている。
EU首脳部は4月23日緊急会合を開き、密輸業者排除の方法を検討する点で合意した。あるいは英国のデイビッド・キャメロン首相がいうように、「ギャング壊滅」に向かうかもしれないが、イタリアのマテオ・レンツィ首相は「小舟艇の捕獲・破壊」を述べている。
イタリア国防相ロベルタ・ピノッティ Roberta Pinotti は「密輸業者がどこにボートを置いているか把握しているし、集結地点もわかっている」とし、「そこに軍事作戦を展開すべきだ」
イタリア国防筋によればイタリアは無人機でリビアで人身密輸業者を監視しており、活動状況を把握しているという。リビアではNATO空爆でカダフィが2011年に権力を失って以降無政府状態になっている。
英仏両国は国連安全保障委員会決議をもってリビア領海内で行動を開始したいとするが、EU外相フェデリカ・モゲニ Federica Mogherini が4月28日に国連本部を訪問して打診している。
外部筋によれば小舟艇攻撃のタイミングがリスキーだという。業者が地元漁船を調達し、移民を乗せるまでに実施する必要があるのだ。
国連事務総長潘 基文 Ban Ki-moon が早速異議を唱えた。攻撃案は「妥当性を欠く」というのだ。「漁業収入はリビアに重要だ」とし、「漁船を攻撃すれば同国民の経済に広範な影響が出る」
ただ総長もリビア内戦終結の政治的解決策に「ほかに選択肢がなく」密輸業者を一掃する方法がないことを認める。
ただイタリア空軍トップをつとめたレオナルド・トリカリコ退役大将は軍事攻撃作戦を強く支持しており、UAVから発射する兵器で小舟艇を攻撃するのは「簡単」だという。「イタリアにはリビア情報は豊富にある」
イタリアのリビア国内情報源は石油と貿易上のつながりによるもの。
イタリアが運用するUAVは偵察用だけだが、トリカリコによればイタリア空軍は武装無人機の運用訓練を行っており、作戦実施の場合は米国から借り上げればよいという。
付随的被害を回避するため、精密誘導不活性弾薬の使用を同大将は提言する。これだとボートに正確に穴をあけても爆発させることはない。

ただしこれに対して別の意見を表明するイタリア軍の退役司令官もいる。密輸業者からボートを取り上げるのは実効性がないというのだ。
「どこまで事前に作戦を立ててもあくまでも外国領土内で軍事力を使うことになるのです」とヴィンチェンツォ・カンポリーニ退役大将 retired Gen. Vincenzo Camporini (前参謀本部長、現在はIAI副社長)は言う。
「さらに精密誘導兵器を民間に向けて使用するには地上で誰かが誘導しないといけませんが、実施は考えにくいですね。人間の盾の問題もあります。さらに米国がUAVを貸与してくれるとは思えません」
カンポリーニによれば唯一の解決策はリビア政府の実効支配の回復だという。「ただし部族レベルで分裂している現状からこれは考えにくく、リビアが第二のソマリアになるかもしれない」という。
「軍事的には効果があるとはいえ、空爆は政治上は全くの愚策」だという。■


2015年5月4日月曜日

米印防衛協力>スコーピオン最初の購入国はインドになりそう ただし商談は高難易度


日米にとってインドは重要な安全保障のパートナーになりそうですが、うーん、インドの官僚制度としたたかな態度に米側も相当苦労している様子ですね。US-2輸出でも日本は相当覚悟するべきではないでしょうか。スコーピオンに関心を示していた亡国とはインドだったのですね。

Carter to offer Scorpion to India under joint development plan

Rahul Bedi, New Delhi and James Hardy, London - IHS Jane's Defence Weekly
30 April 2015

  
Industry sources in India say the US may offer the Textron
アシュトン・カーター国防長官は6月にインドを2日間訪問し、二国間戦略防衛協力のレベルを引き上げるとインド国防関係者がIHS Jane'sに明らかにした
  1. カーター長官は10か年の米印防衛枠組み協定に調印し、防衛貿易技術協力構想Defence Trade and Technology Initiative (DTTI)の早期実施でも合意形成し、二国間共同開発・生産をインドで進める。
  2. DTTIはカーターが国防副長官時代から進めてきたもので、米国はテクストロン・エアランドのスコーピオン軽攻撃偵察情報収集機をインドに提示するものとみられる。同機はインド空軍採用を目指し開発中。
  3. インド空軍司令官アルプ・ラハ Arup Raha 自身がスコーピオンに関心を示したといわれ、複座の同機は中間ジェット練習機(IJT)としても使える。インド空軍(IAF)でIJT機種が不足しているのはヒンドゥスタン・エアロノーティクス・リミテッド(HAL)のシターラ機開発が2005年から進んでいないため。
  4. 2014年のファンボロ航空ショーでテクストロン関係者からIHA Jane’sにスコーピオンの機体単価は20百万ドル未満、一時間当たり飛行費用は3千ドルとの説明があった。あわせて海外向けに2千機の販売目標があると述べていた。ただインドへの販売可能性についてはコメントを避けていた。
  5. バラク・オバマ大統領は1月のインド訪問の際に防衛枠組み合意を共同軍事演習や相互運用性の実現、情報の共有、対テロ対策、海洋監視協力で引き上げると認めていた。
  6. あわせて両国の軍部、防衛関係者高級レベルの相互訪問の頻度を引き上げる。
  7. 駐インド米国大使リチャード・ラフル・ヴァーマ Richard Rahul Vermaによれば両国は77項目のフォローアップをしているという。各項目はオバマ訪印を機にまとめられたもの。「再構成あるいは新規の30項目と別に30項目の対話をしている」というが、詳細は語らなかった。
  8. 関係者によればカーター訪印時にはDTTI枠組みで米国が約束した先行事例4項目の技術内容の進捗を検討するという。
  9. その対象のひとつはエアロヴァイロンメントRQ-11レイヴン無人機の共同開発、共同生産で、ロッキード・マーティンC-130J-30輸送機も対象だという。.
  10. 残る二つは機動性電気ハイブリッド動力mobile electric hybrid power systems (MEHPS)と核・生物・化学戦対応の戦闘服だという。
  11. 今年に入り作業部会がふたつ結成されており、航空機エンジン開発と電磁航空機発進システム(EMALS)が題材で長官訪問の機会に進捗を点検する
  12. カーターからはインド側に総額25億ドルの装備調達契約の早期締結を求める方向で、ボーイングAH-64Eアパッチ22機、ボーイングCH-47Fチヌーク15機がその内容。調達交渉は2013年末にすでに終わっている。.
  13. ボーイングは6月末までは両機種の価格据え置きを認めているがその後は無理との連絡がIAFに入っているとみられる。業界筋によればボーイングが価格据え置きで商談を維持するのはこれで9回目だという。
  14. インドの防衛調達手順Defense Procurement Procedure (DPP)では交渉集結案件で価格改定が発生した場合は入札やり直しとなる。■

2015年5月3日日曜日

★LRS-B事業に適格なのはどちら? 米空軍の選定を前にふたつの主張



LRS-Bは先日のCBSA報告(「米空軍の主力機が大型機に統一される日が来る?」)が次世代の主力戦闘用航空機になるとみる重要な機種ですが、依然として秘密のベールの中で空軍は選定の作業を進めている模様です。以下ご紹介の応援文はそれぞれバイアスが露骨で笑えますが、事実がそれぞれ盛り込まれているのも事実です。であれば三社連合で最良のLRS-Bを実現すればいいのではないかと思えますが、選定は真剣にやってもらわないといけません。選定結果いかんで業界を去る企業が出そうというのがこれまでなかった事態ですが、さぞかし空軍関係者も胃が痛いのではないでしょうか。

Differing Views On Who Will Build The Long-Range Strike Bomber

May 1, 2015 Rupa Haria | AviationWeek.com


米空軍はステルス次期爆撃機長距離打撃爆撃機(LRS-B)の開発生産で主契約企業を今年中に選定する。ボーイングはロッキード・マーティンと組みB-2で実績を有するノースロップ・グラマンに対抗するが、勝者はどちらになるだろうか。
Aviation Week & Space Technologyはその行方を占う二つの見方を紹介する。まずローレン・トンプソン(レキシントン研究所最高業務責任理事)はボーイングとロッキード・マーティンが空軍の爆撃機・攻撃機の95%を提供している事実から両社連合が最良の選択だと主張。一方、ロバート・ハッファ(前ノースロップ・グラマン解析センター長)は空軍の要求水準からみてノースロップ・グラマンが圧倒的に有利な立場だという。

Opinion: The Boeing-Lockheed Team Is The Most Qualified

Apr 30, 2015 Loren Thompson | Aviation Week & Space Technology
米空軍は長距離打撃爆撃機の要求性能で事実上何も公表していないが、契約獲得を目指す二大勢力もともに提案内容について沈黙を保っている。外部からどちらの内容が優れているのか知る由もないが、どちらが有利なのかの評価は可能だ。
では選定の任に当たる関係者だとして、爆撃機の設計ではなく爆撃機開発チームを選ぶとして考えてみよう。選択はボーイングが主導し、ロッキード・マーティンが加わる連合とノースロップ・グラマンが率いる事業体の一騎打ちだ。これまでの実績、現在の技術水準、財務能力や業績からどちらが的確だといえるだろうか。
経験値が違う .
過去三十年間でボーイングとロッキード・マーティンは空軍向け爆撃機・攻撃機の95%を提供している。例としてF-15,F-16,F-22やF-35があり、B-1爆撃機もここに加わる。両社の納入実績は1980年以降で3,000機に上る。現在も両社は固定翼機で最大の納入実績を維持しており、2014年だけで戦闘機、輸送機、偵察機を計300機以上納入している。
対照的にノースロップ・グラマンの実績は小規模だ。この数年で同社は年間10機程度の固定翼機を納入しており、ターボプロップ機とグローバルホーク無人機(UAS)が中心だ。同社の軍事用途需要での役割はボーイングまたはロッキード・マーティン向け機体の一次組み立てが中心だ。
現在の実施能力では
ボーイングはセントルイスに戦闘機製造ラインを運営し、大型軍用機はP-8Aポセイドンのようにシアトル周辺で製造している。同社はあわせて民間商用機で世界最大規模のメーカーでもある。ロッキード・マーティンは第五世代戦闘機の量産ラインを有する唯一のメーカーである。同社のフォートワース工場は三軍向けF-35戦闘機を生産中で、その背景にはボーイングがロッキードと共同で作ったF-22の経験がある。
現状で多くの事業を展開していることで、ボーイング、ロッキード両社には技術陣多数があり、世界規模のサプライチェーンと整備ネットワークもある。ロッキード・マーティンは業界唯一の低視認性機材生産能力があり、業界の中でもソフトウェア応用技術は群を抜いている。ボーイングには複合材を使った大型機の生産では業界一の技術を有している。
ノースロップ・グラマンには以上のどれもない。パームデール工場(カリフォーニア)はUAS製造や既存機の改修にあたり、一次組み立て構造品を出荷している。同社は完成機を大量に生産していないので、サプライチェーンやコスト管理でも業界他社よりも見劣りがする。またリスク管理でも不足が目立つ。ロッキードはスカンクワークスでこの点一歩先を行っている。      
財務力はどうか
ボーイング、ロッキード・マーティンの2014年売り上げ総額は1,360億ドル。ノースロップ・グラマンは240億ドルで4年連続の減収。これだけ規模が離れるとボーイング=ロッキード・マーティンのほうが空軍の計画変更への対応に圧倒的に有利だ。空中給油機事業では空軍の度重なる要求変更にボーイングはKC-46で対応したが、ノースロップ・グラマンは撤退している。その理由は利益確保が難しいためとしていた。
実績の違い
ノースロップ・グラマンはB-2爆撃機生産の実績を強調するが、実は同機は大量の既成技術を使っており、その維持管理が大変である事実は無視している。(飛行4時間ごとにステルス性維持のため18時間の作業が必要) またB-2生産ではボーイングが最大規模の事業量を提供したことにも言及していない。ボーイングは1万人を雇用し、同機の主翼、機体後部、こう着装置、燃料系統、兵装運用部分を製造した。ボーイングはその後ロッキード・マーティンと組み第五世代戦闘機第一弾F-22を製造している。
長距離打撃爆撃機はB-2をすべての点で凌駕する性能となるだろう。要求性能の実現には成熟技術を中心に対応し、ボーイングやロッキード・マーティンには他機種の製造工程から開発製造段階に流用できる基盤がすでにある。これに対してノースロップ・グラマンはF-35のような本格ステルス機のソフトウェアを自社開発しておらず、大型機の複合材利用でも製造上のノウハウがなく各方面で相当の遅れを取り戻す必要がある。
こうしてみると結論は明らかだ。が新型爆撃機の製造で的確なのはボーイング=ロッキード・マーティンでノースロップ・グラマンの選定した場合はリスクがはるかに高くなる。
ローレン・トンプソンはレキシントン研究所の最高業務責任者である。同研究所はボーイングとロッキード・マーティンから運営費用を受け取っている。


Opinion: Stealth And Integration Experience Point To Northrop Grumman LRS-B Advantage

Apr 30, 2015 Robert Haffa | Aviation Week & Space Technology
:
ステルス長距離打撃爆撃機(LRS-B)の主契約企業の米空軍による選定時期が近づいている。同機は時と場所を問わず我が国の軍事力の行使を確実にするため必須の装備だ。表面だけ見て専門家はボーイングとロッキード・マーティンの連合とノースロップ・グラマンの一騎打ちと表現しているが、空軍の要求内容を詳しく見つつ各チームの能力水準を見れば、ノースロップ・グラマンがLRS-B製造に圧倒的に有利であることがわかる。以下説明する。
真剣に専念できるのはどちらか.
F-35やKC-46給油機の調達で不手際があったことで空軍は新型爆撃機では終始一貫して集中配慮し、必要な資材を投入する責任ある対応ができる業者の選定を求めている。しかるにボーイング/ロッキード・マーティンは空軍の他機種事業で手がいっぱいだ。ボーイングは給油機案件で予想外の負担を迫られており、ロッキード・マーティンはF-35で大きく遅れを発生させておきながら性能は想定以下だ。そうなると両社にとってLRS-Bの優先順位は低くなり、量産段階に入るKC-46とF-35のほうが利益を出しているはずだ。
実績が裏付ける。空軍がF-22の追加調達を求めたところ、F-35の売り上げ減を恐れたロッキード・マーティンはF-22推進の立場を急にひっこめている。同様にLRS-BのためにロッキードがF-35を断念したり、ボーイングがKC-46生産ペースを落とすことはありえない。むしろLRS-Bをトラブル続く事業のしりぬぐいにするのではないか。これに対しノースロップ・グラマンはLRS-Bに専念し、納期予算どおりの納入が可能な体制になっている。
関連した経験則が必要だ.
空軍の調達責任者は議会に対して新型爆撃機の機体単価は2010年の貨幣価値で550百万ドル上限のままの想定と証言しており、提案競争でも据え置きとなるだろう。ノースロップ・グラマンはステルス長距離爆撃機で開発、製造、維持の経験を有する唯一の企業である。B-2では機体維持費用の削減を実現している。維持費用はウェポンシステムとしてのライフサイクルコストの8割を占めるほどだが、B-2では同程度の大きさの空軍他機種より安くなっている。反対にボーイングとロッキード・マーティンはそれぞれ大型民間機や戦闘機生産の実績を強調しているが、高性能爆撃機を製造し維持することは複雑な作業であり、一貫して責任ある体制と技術力が必要とされる。そこで実績が重要となる。B-2の生産は民間機を給油機に改造するよりはるかに複雑な工程だが、それでもボーイングはKC-46の納入に10年以上かけているがまだ実現できていない。
ステルス関連サブシステムの実績があるのはどちらか
空軍の考えるステルスとは技術と戦術の組み合わせに、サブシステム各種を加えて低視認性を実現するものだ。ノースロップはステルス用のサブシステム多数で信頼の実績がある。ロッキードもF-22およびF-35のステルスレーダーでノースロップを頼りにしたほどで、ステルス通信リンクでも同様で、F-35では別に通信航法システム、赤外線センサー、ステルス空気取り入れ口含む機体中央部もノースロップが供給している。国防総省はLRS-B無人機型も推進するが、ノースロップ・グラマンの無人機空軍向けグローバルホークや海軍向けX-47Bでの経験が有利な要素だ。
ノースロップ・グラマンが有利な理由
空軍はLRS-Bの就役を時間内予算内に実現できる契約企業を求めている。ボーイングとロッキードが連合したのは単独ではこれが実現できないからだ。ボーイングにはステルスの実績がなく、ロッキードはF-35で大幅な遅延を招いている。
全方位ステルス性能では設計がすべてだが、ボーイングが主契約企業になってどのように協力企業の設計を承認するつもりなのか。ステルス戦闘機で設計実績のあるロッキードが経験値をわざわざ提供して自らの優位性を譲ったうえで「第六世代」戦闘機競争でボーイングを有利にするはずがない。
ステルス爆撃機製造の経験が欠如していること、ボーイング/ロッキード共同事業の経営リスクならびに両社が空軍の他機種事業に経営資源を投入せざるを得ないことから両社に次世代の長距離打撃爆撃機製造を任せるのは賢明な選択とはいいがたい。ノースロップ・グラマンなら経験、実績、専念の上経済的に新型ステルス爆撃機を開発・製造・配備・維持できる事業をまとめることが可能だ。そのため同社が受注に成功するのは明らかだ。
ロバート・ハッファは退役米空軍大佐でノースロップ・グラマン解析センター長を務めた。



2015年5月2日土曜日

中・露共同海軍演習>地中海で初の実施へ・今月


嫌われっ子がつるむようなもんですかね。ただし世界秩序は西側が勝手に作ったものだから従う必要はないという認識では一致しているので性質が悪いですね。地中海で演習を展開するのも露骨なメッセージですね。

Chinese and Russian Navies to Conduct First Ever Mediterranean Surface Exercises in May

By: Sam LaGrone
April 30, 2015 3:35 PM


ロシア海軍艦艇6隻、中国海軍艦艇3隻が5月に地中海で合流して水上戦演習を行い、実弾発射もすると中国国防省が4月29日発表した。
  1. 共同海上演習2015-Iは両国海軍による初の地中海での訓練となり、両国軍部が協力を深化させている証だ。
  2. 「演習の目的は二国間で実用的な協力を進め強化することにあり、両国海軍部隊が海での脅威によりよく対応できるようにすること」と同省報道官上級大佐Gen Yanshengが29日発表した。「今回の共同演習は特定の第三国を想定せず現実の地域情勢とも無関係だと強調したい」.
  3. 昨年11月のロシア国防大臣セルゲイ・ショイグと中国の国防相常万全Chang Wanquan の北京会談の後で演習案は発表されている。
  4. 会談直後にショイグは米国による太平洋地区再重視政策へ両国が懸念していると述べた。
130806-N-IU636-034 PEARL HARBOR (Sept. 6, 2013) The Chinese People's Liberation Army-Navy Jiangkai-class frigate Linyi (FFG 547) arrives at Joint Base Pearl Harbor-Hickam. This port visit is part of the U.S. Navy's ongoing effort to maximize opportunities for developing relationships with foreign navies as a tool to build trust, encourage multilateral cooperation, enhance transparency, and avoid miscalculation in the Pacific. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Johans Chavarro/Released)
江凱II型フリゲートのLinyi 臨沂 (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Johans Chavarro/Released)

  1. 中国からはタイプ54AJiangkai江凱II型フリゲートのLinyi 臨沂、 Weifang濰坊 および給油艦Weishanhu微山湖がアデン湾での商船護送任務から演習に参加する。ロシアが派遣する艦艇名は不明。
  2. 「演習項目には海上護衛、海上補給、護衛行動、航行安全を確保する共同作戦ならびに実弾発射訓練がある」(Geng大佐)
  3. 両国は太平洋でも共同演習を今年も実施している。
  4. クリミア半島を併合してから西側との関係が怪しくなったロシアは昨年は海上武装力の誇示を多数行い、従来までよりも遠隔地に海軍艦艇を派遣している。誘導ミサイル巡洋艦モスクワを南シナ海に送り、実弾演習を実施した。
  5. 同様に中国も従来の地域内水域を超えて活動を展開しており、ソマリア付近での海賊対策に加えイラン海軍と共同訓練を実施した。
  6. 中ロ両国は2012年から定期的な演習を実施し、黄海と東シナ海を演習海域としている。■

新ガイドラインが目指す方向性を分野別に展望 日本防衛はまず日本が主体的に取り組むべし



新ガイドラインは日本国民にも国境線と利益線の違いをちゃんと理解することを求めているようです。いろいろな可能性がこれから現実化するでしょうが、南シナ海での海上自衛隊のパトロールがすでに実施の検討に入っているようです。また宇宙・ISR機能の重視がこれから本当に必要になりますね。本ブログの趣旨にも合致します。

Inside the New U.S.-Japan Defense Guidelines

By: Kyle Mizokami
April 29, 2015 10:50 AM

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今週月曜日に日米両国が同盟関係をこれまでの50年から大きく変容させる合意に到達した。いわゆる「2+2」安全保障高級事務レベル協議 Security Consultative Committee (SCC) に米国務長官、国防長官、日本の外務、防衛両大臣が参加し防衛、安全保障でより緊密な関係を実現することとなった。

  1. SCCが合意したいわゆる日米防衛協力ガイドラインは1960年締結の日米安全保障条約を補完する。目標はいっそう緊密で切れ目のない協力関係を二国間で実現することで安全保障問題では 弾道ミサイル防衛から相互物資補給支援やサイバー戦まで含む。
  2. 両国のメリットはなにか。米国には自衛隊が米国資産の防御でき、米側と密接に共同作業できるようになるのが一義的な恩恵となる。日本にとっては自衛隊に課してきた制約を解き放ち、安部首相のいう普通の国の安全保障体制の中で軍事力を行使できるようになることだ。
  3. 日本の現行憲法は米国法律家が第二次大戦直後の環境下で起草して、軍事力整備および武力行使を厳格に制限する第九条が特徴だ。
  4. 憲法の足かせが長く日米同盟に影を落としてきた。戦闘任務で自衛隊は米軍部隊に海外では合流できず、日本の権益が危うくなっても同様だった。新ガイドライン以前に日本部隊は米軍部隊や米国領土の防衛に就くことはできなかった。ただし例外として日本から1,000カイリ以内なら米艦船の護衛はできる。

日本防衛

  1. 日米同盟の礎は両国が力を合わせて日本の防衛にあたることだ。新ガイドラインでは日本が攻撃を受けた場合、まず日本が主体的に自国防衛にあたるとし、周辺海域や空域も対象に海空からの侵入に備えるとしている。化学・生物・核(CBRN)兵器攻撃も含む。米国は日本を支援し補完的な役割を果たす想定だ。
  2. 新ガイドラインは攻撃任務は米軍部隊が実施すると暗示している。「米国は日本防衛に資する方法で地域環境を形成すべく行動し、平和と安全を回復させる」としている。これは戦闘状態の終結につながる攻撃的な行動であり、自衛隊では憲法上実施不可能な活動だ。

「政府全体」レベルの二国間協力

  1. 新ガイドラインでは「政府全体」のアプローチとして民生、軍事両面で連携を求めている。新たに同盟調整メカニズム Alliance Coordination Mechanism として両国部隊間での調整手順を合理化し強化することを提唱している。同メカニズムで情報・諜報の共有が進み、両国による緊急対応策の策定や二国間演習が円滑に行われる。
  2. これとは別に新しく二国間計画立案メカニズム Bilateral Planning Mechanism で共同作戦の調整立案を図る。自衛隊から米軍に連絡員を派遣し、米軍も逆に日本へ派遣する。
  3. 日米両国は情報収集監視偵察(ISR)分野での協力も強化し、無人・有人偵察機からの情報の共有と保護に務める。日本が将来配備するRQ-4グローバルホークや米側のRC-135偵察機が集めた情報が対象となる。「二国間ISR活動」で「連続した監視」を日本および地域への脅威対象を相手に行うことも合意された。

弾道ミサイル防衛

  1. 北朝鮮の核兵器貯蔵量の推定が見直されたが、中国も相当の核・通常兵器搭載の弾道ミサイルを多数保有していることが日米で共同作業を強化する背景だ。
  2. 日本は日本国内の弾道ミサイル防衛を主要任務とするが、米国が支援を提供する。BMD関連のデータを二国間でリアルタイムで共有し、弾道ミサイルの発射を早期探知する。新ガイドラインは相互運用にも言及している。
  3. 両国は早期警戒能力を整備し、想定脅威を探知にあたるネットワークを拡充する。米国製AN/TPY-2Xバンド監視レーダー2基が日本国内で稼働中だが、今後は日本南部に拡充し、琉球諸島への配備も想定される。

相互防衛

  1. これまでの日米同盟では自衛隊が米軍や米国領土の防衛にあたれないのが不満のたねだった。日本も普遍的な自国防衛権を主張し、他国防衛は不可としてきた憲法の解釈変更に取り組んでいる。
  2. 報道によれば新ガイドラインで日本部隊は米国を標的とした弾道ミサイルを撃ち落とすことが許されるというが現実はそんなに簡単ではない。
  3. 新ガイドラインでは相互防衛が認められる。「自衛隊と米軍部隊は相互防御をそれぞれの資産assetsを対象に適宜行い、日本防衛に資する活動を協力的におこなう」とある。非常に曖昧な表現であるが、「資産」とは実質的にすべてで、米海軍艦艇から米国の都市まで広く含まれる。
  4. 新ガイドラインを厳格に解釈すれば自衛隊がアメリカの国土を防衛できる場合は日本防衛から派生する事態に限定される。つまり米国が北朝鮮と一対一で対戦し日本が巻き込まれないと自衛隊の弾道ミサイル防衛は手出しができない。

日本国外での協力体制

  1. 従来の日米同盟の実施範囲は日本国領土に限定されてきた。新ガイドラインで両国は世界を視野に入れる。「同盟は日本の平和と安全保障に重大な影響を及ぼしかねない事態に対応していく。そのような事態は地理条件の制限を受けない」
  2. シナリオの一つに朝鮮半島からの非戦闘員の退避作戦がある。韓国国内に日本国民が常時33千名おり、観光旅行の繁忙期には100千名まで増える。安倍首相はくりかえし日本政府は有事の際に邦人退避をさせると言明している。
  3. 日本政府関係者は有事の邦人退避に韓国政府の支援は期待できないと結論づけており、韓国も主権の観点から自国内への自衛隊の展開は認められないとしている。そうなると米艦船、航空機を使う邦人避難が日本韓国双方の選択肢になるだろう。

その他分野

  1. 兵站補給:両国間の協力は補給活動にも広がる。新ガイドラインにより両国は相互に補給支援活動を現地で提供する。補給、整備、輸送、設営、医療活動が含まれる。日本は同様の合意をオーストラリアと2010年に締結している。
  2. 日米の防衛装備品では相当の共通化が進んでおり、水上艦向けGE製ガスタービンエンジンからF-35戦闘機に及ぶ。新しい兵站補給支援での合意で両国は共通化を利用し補給や整備で援助しあう。
  3. 海上作戦: 新ガイドラインではISR、訓練、演習を海洋関連の協力活動として特記している。新ガイドラインは海上作戦での協力を強調し、両国は「密接に協力し合い国際法に則り海洋秩序を維持する。航行の自由も含む」としている。最後の部分は南シナ海の主張を力で実現しようとする中国への間接的な言及であり、海上自衛隊が南シナ海で活動を展開する想定を示しているのだろう。実際に今年1月に第7艦隊司令官ロバート・トーマス大将がこの方向性を支持している。
  4. 宇宙空間: 日米同盟は宇宙空間にも展開される。目的は 「責任ある平和的かつ安全な宇宙の利用」だ。両国は情報を共有しつつ宇宙空間の脅威対象に対応し、宇宙配備の海洋監視で協力し、さらに「宇宙システムズの能力向上と弾力性の強化につとめる」
  5. 具体的には両国は「宇宙配備の早期警戒体制、ISR」で情報共有を進め、「衛星の配置、航行、時間調整」でも同様とし、「気象観測や指揮命令統制通信」も共有し、「作戦遂行上不可欠な位置づけの宇宙システムズの回復力を確実にする」としている。
  6. サイバー空間:新ガイドラインで日米両国はサイバー空間でも脅威対象と脆弱性について情報共有をする。両国は共同で重要インフラの防護にあたる。民間業界と協力し秘匿情報の保全をめざす。そのため訓練や教育を共有する。
  7. サイバー攻撃も他の攻撃と同様に日本が主体的に自衛隊で防衛をし、米軍が支援に回るのは共通だ。

結語

  1. 日米の合意内容の大部分は同盟関係の進化に伴う漸進的変化だ。日本にとっての意味が大きい。相互に自国防衛をうたう中で日本も一定の条件で防衛支援を提供できるようになる。米国が提供するリソースの規模と引き受けるリスクの大きさを考えればこれでやっと公平になる。
  2. 同盟関係の新しい可能性が開く。共同作戦立案、共同作戦や国家戦略レベルでの情報交換などだ。新ガイドラインが日本国憲法が定める武力行使の範囲をめぐり緊張を招くことはあるが違反にならないのはほぼ間違いない。安倍首相は最終的に第9条を廃止したいと思っているかもしれないが、新ガイドラインでとりあえずその可能性は先送りとなろう。■


2015年5月1日金曜日

★拿捕事件>米海軍護衛でホルムズ海峡通過へ(米国船籍に限る)



今回の騒動の背景は一応法的な問題のようですが、ホルムズ海峡の海上通航をいつでも妨害できることが今回立証されたわけなので今後要注意です。またその任務にあたるイラン部隊が宗教的な影響を直接受ける組織であることにも要注意です。原油価格はまだ大きく高くなっていないようですがわかりません。

U.S. Navy Ships Will Accompany American Merchant Ships Through Strait of Hormuz to Prevent IRGCN Harassment

By: Sam LaGrone
April 30, 2015 4:59 PM
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4月28日にM/Vマースク・ティグリスが拿捕されたことを受け、米海軍艦船は米国船籍商船を護衛しホルムズ海峡を通過させることとし、イランイスラム革命防衛隊海軍(IRGCN)の妨害に備えていることが米国防省関係者からUSNI Newsに30日明らかになった。
  1. 米海軍中央司令部(NAVCENT)は「必要と判断する艦船を投入する」と述べており、「IRGCNの妨害活動ならびに航路妨害を未然に防止する」という。
  2. NAVCENTが同海峡とペルシア湾内で護衛任務に投入できる艦船はサイクロン級警備艇5隻とアーレー・バーク級誘導ミサイル駆逐艦4隻、掃海艦USSデバステイター(MCM-6))、誘導ミサイル巡洋艦USSノーマンディー (CG-60)があるとUSNI Newsは理解している。
  3. 28日以降、米海軍艦船はイランの港湾都市バンダル・アバス近くに停泊中のマースク・ティグリスを監視している。
  4. イラン裁判所からデンマーク海運会社へ法的請求が発出されたのが拿捕の理由とイランの港湾海運機構 Ports and Maritime Organizaiton が発表している。
  5. ニューヨーク・タイムズは30日に「同船が停船を求められたのはイランからUAE向けに2005年に搬送されたコンテナー10個分で紛糾があるためとマースク社が言っている」と報じている。
  6. 28日の拿捕事件の前に24日にはM/Vマースク・ケンジントンにIRGCNパトロール艇4隻が妨害行為を行っている。
  7. イランの主張では拿捕は法的問題が唯一の理由としているが、専門家の中にはそのまま受け止めていない向きがある。
  8. 「イランがマースク・ティグリスを拿捕したのは自国民に対する示威の意味と外国に対しては核交渉が西側と進行中だが同国の軍部、海上部隊は決して態度を軟化させていないと示す意味があるのだろう。またその気になればいつでも海上交通を妨害できる能力があると示したいのだろう」とエリック・ワーサイム Eric Wertheim(U.S. Naval Institute’s Combat Fleets of the World 著者)がUSNI Newsに29日に語っている。
  9. IRGCNはイラン海軍とは別個の組織でイスラム階層構造と密接につながっている。.またホルムズ海峡、ペルシア湾の沿岸警備を2007年以降担当している。■