2016年6月13日月曜日

★★歴史に残る機体シリーズ① B-58ハスラーは冷戦時代の偉大な失敗作



冷戦時代の各機には独特のカラーがありますが、中でもB-58は異彩を放つ存在で就役時間が短かったのは結局同機の存在価値が消滅したためでしょうね。莫大な費用は無駄になったのでしょうか。無駄と言えば無駄ですが、世界が大戦の惨禍に合わなかったのはウェポンシステムとしての抑止力が機能していたからこそで、それだけの予算を投じて今日の世界があるわけで、同機も一翼を担っていたのですね。今日の世界は核戦力への適正な予算配分が減っているためシステムの有効性が減っており、より危険になっているともいえるでしょう。

The B-58 Hustler: America's Cold War Nuclear Bomber Blunder

She was a work of art—but was nearly obsolete from the start.
June 10, 2016

  1. 奇想天外な機体が数々登場した当時でもB-58ハスラーほど視覚面で目立つ機体はなかった。デルタ主翼、巨大なエンジン、さらに驚くべきその性能により同機は神話の域に達し、パイロットは限界を超えた速度で文字通りその主翼を引き裂いたこともあった。
  2. というのはうそだがB-58は操縦が難しい機体だった。驚異の技術を有しながらハスラーの事故率は恐ろしく高く、保守コストも同様で、ミッション性能はすぐに陳腐化してしまった。わずか十年しか就役せず戦略爆撃機開発の手詰まりを象徴する機体になった。
  3. ハスラーはB-47ストラトジェットの直系の後継機となった中型爆撃機だ。中型爆撃機の任務は海外基地を発進してソ連を攻撃することだったが、ハスラーが就役するまでに中型と大型爆撃機の違いは縮まっており。空中給油が登場し前線航空基地の安全性に米空軍が懸念をいだき、さらに同盟各国が戦略核兵器の国内配備に懸念したことでB-58は米国内からの運用しかできなくなった。
  4. メーカーのコンヴェアーはB-36ピースメーカーで爆撃機事業に参入していた。巨大かつ低速のB-36は1950年代の長距離戦略爆撃機として水爆を搭載し米核抑止力の中心となっていた。だがMiG-15はじめソ連の迎撃戦闘機の出現で一気に時代遅れになり、同じ課題が新型ジェット爆撃機たるB-47やB-52にも残った。
  5. ハスラーはピースメーカーと類似性がまったくない。大型エンジン四基をデルタ翼に取り付けたB-58はマッハ2で飛行し核兵器と燃料タンクを胴体下に運んだ。米国内基地から離陸し、KC-135タンカーの支援を受けてソ連領空に高速高高度で侵入しつつ、ソ連迎撃機をかわし、核兵器を投下する作戦構想だった。初飛行は1956年で作戦運用開始は1960年だった。合計116機が調達されたが機体単価はB-52ストラトフォートレスとほぼ同額だった。
  6. 初期のデルタ翼機としてハスラーも空飛ぶ怪物だった。着陸、離陸時に失速傾向があり、スピンも多々あったためパイロットは制御方法を必死に体得した。ハスラーの飛行特性には独特の特徴がありパイロットの経験能力との調和が欠けていた。保守管理には専用工具が必要で非常に高価な作業になった。
  7. このため事故率は驚くほど高く116機中26機が事故喪失となり、10年間で26パーセントを喪失した。黎明期のジェット機事故率は総じて高かったが、ハスラーの事故率は突出しており、機体単価が高いことが痛かった。もしB-58退役に踏み切っていなかったら、全機が数年のうちに消耗してたはずと述べた専門家もいたほどだ。
  8. B-36やB-47同様にB-58も実戦で一発も爆弾投下をしていない。ハスラーはヴィエトナム戦に投入されず核任務に専念したが、B-52は北ヴィエトナムを爆撃している。B-58も理屈の上では通常爆弾を運用できたが、高速かつ低空では機体制御が難しく正確な爆弾投下は困難だったはずだ。
  9. 米空軍は高性能の侵攻爆撃機が必要としながらB-58に高い評価を与えなかった。カーティス・ルメイ将軍はB-58の欠点を列挙することでB-70ヴァルキリーの正当性を訴えている。ただしB-52の後継機を狙ったB-70もB-58同様の運命をたどった。当時の国防長官は高高度SAMとミサイル搭載迎撃機の出現で爆撃機は時代遅れと主張したのだ。
  10. ロバート・マクナマラ長官は1965年にB-58全機退役の命令を発出し、退役が完了したのは1970年だった。供用期間は10年たらずになった。B-58を民間ジェット機に転用する案もあったが予想どおり立ち消えになっている。任務はB-52が引き継ぎ、低空侵攻はハスラーより効果的にこなせた。中型爆撃機による通常爆弾投下任務は戦闘爆撃機が引き継ぎ、FB-111アードヴァーク(同機も長い苦闘の歴史あり)から多用途戦闘機としてF-15、F-16さらにゆくゆくはF-35が引き継ぐ。精密誘導兵器の出現で爆弾搭載量が爆撃機の性能を支配する時代は終わった。
  11. B-58の存在はむしろポピュラーカルチャーの世界で鮮明だ。未来的な形態と危険な印象がアーティストや映画製作者を刺激してきた。中でもB-58編隊(作品中では『ヴィンディケーター』)がモスクワ爆撃に投入される1964年の映画Fail-Safe(「未知への飛行」)が最も有名だ。モスクワ攻撃を誤って命令された編隊はソ連領空へ侵入しモスクワを核攻撃する。米大統領はニューヨーク攻撃を命令する。
  12. B-58は第二次大戦後の戦略爆撃手段として空軍が構築した業績の一部だ。第二次大戦ではB-17、B-24、B-29が大きな攻撃手段となった。この経験から空軍上層部は戦争に勝つためには戦略爆撃を長期間継続する必要があると思いつく。SAMが出現し、ヴィエトナムの大失敗が重なり、さらに当時の指導層が引退したことでB-58のような爆撃機への支持にひびが入った。
  13. だがICBMなら爆撃機よりさらに高速かつ高高度を飛翔し、ソ連防空網は無効となる。さらに潜水艦発射方式の弾道ミサイルは核抑止力を安全に維持し、弱体な爆撃機を連続パトロール飛行させる必要がない。これに対して各種ミッションを柔軟にこなしながら残存性がある機体はB-52ぐらいしかない。

Robert Farley, a frequent contributor to the National Interest, is author ofThe Battleship Book. He serves as a senior lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money, Information Dissemination and theDiplomat.


2016年6月12日日曜日

「衛星へのサイバー攻撃は戦闘行為」 下院情報特別委員会


中国の動きを念頭に米側は情報収集衛星、軍事通信衛星など軍の活動を支える軌道上のアセットの防御を真剣に考えざるを得ない立場に追い込まれています。そこで下院有力議員から宇宙での敵対行為について見解が示されたということでしょうか。

Cyber Attack On Satellite Could Be Act Of War: HPSCI Ranking

By COLIN CLARK on June 10, 2016 at 4:43 PM
CAPITOL HILL: 米衛星へのサイバー攻撃は戦争行為とみなすべきとの発言が米下院常設情報特別委員会の民主党筆頭議員アダム・シフから出た。
  1. この発言を当然と思う向きもある一方で軍事衛星、情報衛星がサイバーで妨害されるだけで戦闘行為の要件が成立するのかは以前から議論されてきた。「森で木が倒れる現場に誰も居なくて木が倒れる音が聞こえるのだろうか」 軍と情報機関の高官の面々がサイバー問題への回答に極めて慎重なのは諜報活動と攻撃行為の間に線を引くことが大変困難なためだ。
  2. 「我が国の探知警報システム(スパイ衛星群)に対する行為は挑発行為と受け止める。好戦的な行為でないとしても外国が不可逆的な行為を始めた場合で、周波数妨害はその例」とシフ議員は声明文を発表した。
  3. 対応策は複雑とシフ議員は空軍協会主催の朝食会前に報道陣に語った。まず誰が攻撃をしかけたのか特定せねばならない。次に実行犯の情報をどこまで公表するかを決める。その際はどこまでの情報を安全に公表できるかで変わってくるとシフ議員は述べた。条件がすべて合えば、米側は敵国の衛星の一つを標的にする。あるいは地上基地を狙う。あるいは別目標を設定する。すべてにおいて十分な配慮が求められる。
  4. 「当然ながらこちら側の情報衛星にも防衛措置を搭載するなど自衛策が可能だ。だが問題は実施した場合に国際的にはどう受け止められるかだ。防御機能を搭載した衛星は軌道上の兵器に変わるといえるからだ」
  5. また「報復の応酬が続けば敵味方双方が高い代償を払うことになる」と同議員は発言。
  6. 宇宙戦の課題でも一番難しいのが攻撃の定義だ。攻撃と断定するには標的として狙われたうえ攻撃手段が法的な条件を満たすことが必要だ。宇宙空間で敵の動きを抑える対策は極秘情報であり、シフ議員も明らかせず代わりに以下発言をしている。
  7. 「宇宙装備について詳しく述べることはできないが、攻撃方法は多数ある。運動エネルギーで地上からの攻撃も可能だ。妨害もできる。作動不能にすることもできる。サイバーでの攻撃も可能で、宇宙空間で別の機体からの攻撃も可能だ。そこでこちらのこれからの宇宙システムの回復力を確保し、既存システムで回復力が不足するものについては防衛策、サイバー攻撃への護りを確保していく」
  8. システムが攻撃を受けても回復力を発揮できれば大きな違いが生まれる。今後この話題はもっとお伝えすることができよう。■

★★★★米海兵隊>F-35Bの遅れから旧型ホーネットを「墓場」から呼び戻す事態へ





US Marine Corps recovering 'boneyard' Hornets to plug capability gap


Gareth Jennings, Cecil Field, Florida - IHS Jane's Defence Weekly

10 June 2016

米海兵隊(USMC)はボーイングF/A-18Cホーネットをデイヴィス-モンタン空軍基地(アリゾナ)の退役機体保管場「墓場」から回収し、ロッキード・マーティンF-35B共用打撃戦闘機の就役の遅れに対応するとボーイングが6月10日に明らかにした。
Boeing is to reconstitute 30 legacy F/A-18C Hornet aircraft into the F/A-18C+ standard to help the US Marine Corps plug a capability gap resulting from the delayed introduction into service of the F-35B Joint Strike Fighter. (US Navy)(US Navy)
ボーイングはUSMCから契約を交付され、旧型ホーネット30機を同基地の第309航空宇宙保守再生部隊から回収し、JSFへの移行時で一時的に不足する機数と能力の穴を埋めるという。
回収機はF/A-18C+仕様となる。


2016年6月11日土曜日

★米空軍はハイローミックスを再構築すべき段階にきている





Why America’s Air Force Needs to Revive the High-Low Mix

June 9, 2016

米空軍の構造問題は深刻だ。一方で戦闘機爆撃機無人機の装備近代化で航空優勢を今後も確保しようとしているが、第四世代機は高脅威環境では残存は期待できない。統合防空体制の出現で米空軍は航空優勢確立方法で再考を迫られている。
  1. F-35A戦闘機の一義的な任務は高性能ステルス性能や優秀な電子装備とデータ共有機能を生かせり高脅威度の環境を想定し、後に続く第四世代機に「ドアを開けてやる」ことだ。だが米国による航空優勢が脅かされる中でF-22再生産案が浮上してきた。目標を捕捉し敵防空網を突破するのがB-21爆撃機の要求性能の中心だ。空軍は無人機で統合防空網をどう克服するか熟考している。
  2. その反面、空軍の大部分の時間は海軍、海兵隊と並び深刻な脅威度がない環境での作戦展開た。各種機材が、対テロ作戦、対ゲリラ戦、平定作戦で飛行時間の大部分は支障なく上空待機をしている。
  3. ハイエンドの脅威環境に対応できるならローエンド脅威にも対応できることに疑問の余地がないだろう。ISIS相手の地上戦で近接航空支援に一番活躍している機体はB-1爆撃機だ。長距離飛行、高速であらゆる兵装を搭載でき、長時間滞空できるB-1が冷戦時代の任務内容を再定義されたのだ。
  4. だがハイエンド部隊をローエンド戦に投入するのはフェラーリを所有しながら子供のサッカー練習の送り迎えに使うようなものだ。これは21世紀の空軍の戦力整備にもあてはまる。F-35Aを空軍は1,763機整備する方針だが、接近阻止領域拒否の動きが欧州、中東、アジアで広がれば各機はハイエンド作戦中心の投入となり、抑止効果が期待されるようになる。ローエンド戦では一部のF-35が指揮統制の中継機の役割を果たすだろう。
  5. 第五世代機でハイエンド脅威に対応し、第四世代機の改修で大規模武力衝突勃発に備えつつ空軍は予算投入と性能整備の焦点を世界各地発生するはずの低難易度紛争への対応にあてるべきだ。特に航空優勢が比較的容易に確立できる環境での運用維持 (O&S) 費用を下げることだ。
  6. この要求にこたえる機材は既に存在しており、生産中のものもある。たとえば軽航空支援(LAS)機としてアフガニスタン空軍に頑丈で柔軟に運用でき抵コストの機材を供与しISRに加え対地攻撃も行う構想がある。A-29スーパーツカーノが現在8機同国内で運用されており上々の効果をあげている。レバノンが導入に傾いており、ナイジェリアもボコハラム戦で同機の投入を検討している。米空軍も独自にLAS導入を検討したことがあり、各国向けの訓練支援にあてようとした。低強度紛争で米軍や各国軍を支援する費用を下げる効果が期待できるので空軍は独自によるA-29導入を再考すべきだろう。
  7. 同様の議論が低コスト長時間投入可能な無人機部隊の調達で、MQ-9リーパーを補完することに可能だ。リーパーは現地戦闘指揮官の求めでISRに酷使されている。空軍はオーロラフライトサイエンシズのオライオン超長時間飛行無人機を導入しO&Sコストや人件費が削減できないか検討している。空軍が高脅威環境に対応でに走る中で低コストのISR用無人機は一層必要とされるはずである。
  8. ハイ・ローミックスの戦力整備は冷戦時代で意味があったが、紛争の形態が多用化し予算が厳しい今日では解決策としての効果が増えている。ハイエンドは専用機材としてF-22、F-35やB-21で構成する。だがローエンドは最小限のコストでミッションが求める要求を実現する方法で対応するのである。■

This story originally appeared in the Lexington Institute’s LexNext blog



2016年6月10日金曜日

★デンマークがF-35A導入決定>心配なカナダの動向



読者の皆様はすでにお気づきと思いますが、米空軍海軍ともに次世代の戦闘機構想作りを始めており、(空軍はF-22再生産という足かせが発生しない限り) 各軍とも新型機材導入の予算確保のためF-35の大量導入は見直しになる可能性があります。購入機数が削減されればメーカー側はさらに機体単価を引き上げ、量産効果があるとはいっても今後の上昇は避けられないと見ます。そのしわよせが海外各国に向かいますが、各国とも調達規模を縮小することで対応するでしょう。そうなると近未来の西側各国の空軍兵力は縮小に向かうのではないでしょうか。ロシア、中国が旧式を大半としつつ大量の機材を運用する中で西側各国は今後数十年不自由な運用を迫られてしまいます。これがF-35がもたらすネガティブな影響と見ますがいかがでしょうか。

Denmark F-35 Buy Goes Official

Aaron Mehta, Defense News11:51 a.m. EDT June 9, 2016
F-35A in flight(Photo: Lockheed Martin)
WASHINGTON — デンマークはF-16後継機にF-35A共用打撃戦闘機の導入を正式に決定した。27機を調達する。
  1. これで遅れていた同国の戦闘機更新が前に進む。経済不況でデンマークは決定を先送りしていた。ただし当初の48機から調達規模は縮小している。
  2. 決定は予測通りとなった。5月にF-35Aの27機調達を総額200億デンマーク・クローネ(30億ドル)で進める提言が出ていた。だが競合他社は価格問題でF-35導入がとん挫すると期待していた。
  1. この結果、ロッキード・マーティンはユーロファイター・タイフーンおよびボーイングF/A-18スーパーホーネットに競り勝ったことになる。なお、デンマークはF-35事業の産業基盤パートナーになっている。
  2. デンマーク政府がF-35選択に傾いたと見るや、ボーイングは即座に同機の単価、維持費用を低く見積もっていると非難した。このためデンマーク議会が再度検討を始めたが決定を覆すことにつながらなかった。
  1. かねてからアナリストはデンマークがF-35選択に落ち着くと見る向きがあり、その理由に同国が産業協力で参画していることを挙げていた。
  2. デンマーク最大の防衛産業企業テルマTermaは複合材の機体構成部品をレーダー電子部品を各国向けF-35に製造している。
  3. 同社社長兼CEOのJens Maaløeは今回の選定結果に満足しているとの声明文を発表した。
  4. 「当社は同機事業と並行して成長しており、今回の結果に大きく喜び、産業協力が新段階に進むと見ております。一つ確かなのは協力が新分野に進み、F-35で『最良の価値』が実現することです」「国際間の軍用機事業で供給業者となるためには全力で献身的に取り組むことが必要ですが、すでにこの方向に進んで10年となり、今後も精進していく所存です」
  5. ロッキードの広報担当マイケル・レインも声明文を発表し同社は「デンマーク政府の信頼と信用を得たことを名誉に感じ、同国政府がF-35ライトニングII導入を承認したことをうれしく思います」
  6. レインは同時に同社が「デンマーク産業界とともにF-35生産と維持に努力します。F-35がもたらす長期経済効果はデンマークに今後数十年にわたり恩恵をもたらすでしょう」とも発表。
  7. F-35開発を統括するクリス・ボグデン米空軍中将も歓迎する声明文を発表した。
  8. 「共同開発室は導入可能な価格で信頼性のあり、維持管理が可能な次世代戦闘機を同盟各国並びに米軍各軍へ導入することが使命としている。同機は将来の共同作戦の要であり、デンマークの国家安全保障上の要求を満足させ得る機材である」
  9. デンマークの決定でF-35は海外同盟各国の導入選定で不動の立場になった。ただし、カナダのジャスティン・トリュドー首相が前政権による導入決定を覆すと公言しているため雲行きは怪しくなっている。
  10. トリュドー首相は今週もF-35について「期待通り機能しない機体」と非難し、カナダ政府は暫定的にF/A-18の導入に向かっているようだ。■


2016年6月9日木曜日

★米海軍の考える2030年代以降の航空優勢確保の手段としてのNGAD構想



米海軍の方が空軍より複雑思考なのでしょうか。この記事は何度見ても理解が大変です。機体に依存しないとは機体開発あり機の開発を脱却して攻撃等の目標が達成できれば機種を問わないという発想? でもスーパーホーネットは早晩設計寿命の時間数に達するはず。であれば高速大型の機種は必要ですよね。これに比べれば先日お伝えした空軍の構想の方がはるかにわかりやすいのですが。

 The U.S. Navy's Plan to Dominate the Sky in the 2030s (And Beyond)

June 6, 2016

米海軍がボーイングF/A-18E/FスーパーホーネットおよびEA-18Gグラウラー電子攻撃機に替わる将来の機材で正式にAoA代替策検討を開始した。
  1. 次世代航空制圧機(NGAD)構想は最近までF/A-XXと呼ばれ、超大国同士の対決の時代が復活し脅威が増大する中で対応できる機材開発を目指す。だがこれまでのペンタゴンのやり方と異なりNGADは単一機材でなく各種システムのファミリー構成になる可能性がある。
  2. 「AOAは2016年5月16日に正式に開始されて約18か月が期間です」と海軍N98航空戦部門の広報官カーラ・インリン大尉が本誌に語った。「海軍は考えられる選択肢をすべて検討し、性能、威力、価格、残存性のバランスを求めます。解決策はシステムのファミリー構成で多方面の機能を追い求めるものとなり、これまでの単一機材と異なるはずです」
  3. NGADは最終的に各種の機材になり、兵装や投入技術も多様となるだろうが、中心はF/A-18 各型の退役後に生まれる性能ギャップを埋めることにある。
  4. 「 F/A-18E/Fや EA-18Gが耐用年数の終わりに到達した際の必要な性能内容をAoAチームが検討しています」(インリン大尉)
  5. 「F/A-18E/FとEA-18Gは空母打撃群(CSG)や統合作戦を支援しており、艦隊防空、航空優勢確保、攻撃まで幅広い任務についています。検討では脅威が変化してもCSGの威力効果を維持できる性能を定義づけます」
  6. 今後の脅威では新型機として中国の成都J-20、J-31、新型防空装備ではロシアのS-400やS-500がある。
  7. 問題は敵の個別機材やミサイルだけではない。ロシアと中国はそれぞれネットワークで自軍を結び、全体最適化を目指しているとマイク・ダラー少将(海軍の無人機システム、攻撃兵器システム開発の責任者)は海軍連盟主催の5月シンポジウムで語っている。さらに海軍機だけが脅威を受けるわけではない。ロシア、中国には超距離対艦巡航ミサイル、弾道ミサイルがあり、特に中国のDF-26が空母に脅威となっている。
  8. そこで米海軍はNGADをシステムファミリー構想で実現し、各種の脅威に打ち勝ち、空母の兵力投射能力を維持することを目指している。
  9. ただし現時点で海軍はNGADファミリーがどんな新技術を採用するかは断言しておらず広く検討して最も有効なイノベーションの採用を目指すとだけ述べている。
  10. 「AoAチームは既存技術に加えこれから出現する技術でも産業界や開発技術の専門家と検討しています。ONR(海軍研究機構)、DARPA(国防高等研究プロジェクト庁)、その他軍の研究施設などが加わり最適案を見つけ2030年代にF/A-18E/FやEA-18Gが退役した後のギャップをどう埋めるかを考えています。焦点を当てるのは次世代の推進方式、高性能データリンク、通信装置、兵装、有人機と無人機の協調運航等です」(インリン大尉)
  11. 空軍や海兵隊と異なり海軍はステルス機を熱心に推進してこなかった。前海軍作戦部長のジョナサン・グリナート大将は「ステルスは過大評価されている」とまで公言していほどだ。だがNGADではステルス技術も検討する。「ステルスも考慮しますが、必須条件ではないでしょう。AoAでステルスをどこまで重視するかはまだ見えていません」(インリン大尉)
  12. 海軍と共同してペンタゴンの次世代制空戦闘機案件にかかかわる空軍関係者によるとNGADでは防御性と安全性が中心の狙いのようで、空軍の侵攻制空機構想(PCA)と異なるとのコメントが出ている。PCAの前にこれも混乱を招きやすい次世代制空戦闘機という表現があったが海軍、空軍で別個に推進している。空軍の狙いは強力な防空体制に侵入し、敵防空装備を破壊し、航空優勢を確保することにある。
  13. 米海軍も空軍同様にNGADの仕様を有人機、無人機あるいはその両方とするのか決めかねている。
  14. 「AoAチームがそれぞれのコンセプトの内容を吟味しますが、コンセプトからどんな形が生まれるのかはまだわかりません」とインリン大尉は述べ、海軍はそもそもNGADが新型機になるのかも決めていないという。「AoAチームが検討で答えを出してくれるでしょう。何らかの機体が必要になるとしてもまだ未定です」
  15. 初期作戦能力の樹立を2030年代中頃と海軍は想定するが、NGAD開発は比較的早くスタートしたいという。
  16. 「分析が終わり次第、最終報告書が生まれ検討内容を列挙し、提言を述べるはずです。検討が十分と判断されれば提言に基づいて海軍は開発を始めるはずです。この流れは分析開始から六か月以内に始まります」(インリン大尉)
  17. 海軍と空軍はロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機の苦痛に満ちた経験から次の機体を共同開発することに辟易となりながら、実際には協力しあっている。
  18. 「海軍は今後もAoAで空軍と協力していきます。海軍のAoAチームは検討内容を公開し将来の共同作戦の実現を目指し、両軍の知識ベースをうまく活用してきます。モデリングとシミュレーションの共同実施もその一つで同じ脅威対象を想定し、共同作戦態勢を強調していきます」(インリン大尉)
  19. だがNGADの予算を海軍はどこから捻出するのだろうか。答えは出ていない。■


★スウェーデンが米国と防衛協力を強化する理由はロシアにあり



スウェーデンと言えば独自に開発した優秀な装備で中立を力をもって維持している国と理解していましたが、ロシアの動きに呼応して自らの政策を大胆に検討しなおしているようです。中国といいロシアといい自分勝手な行いが自らを孤立化させている現象が東西で見られるのは興味深いことですね。


Sweden, US Agree to Closer Defense Collaboration

Aaron Mehta, Defense News 2:03 p.m. EDT June 8, 2016

Swedish Submarine(Photo: Andreas Rentz/Getty Images)

WASHINGTON — スウェーデンと米国が国防協力の推進をうたう意向書に署名した背景にはロシアの動きに神経をとがらせる北欧諸国の問題意識がある。
合意書は拘束力がなく各論での課題はほとんど出ていないが、Defense News TVの独占インタビューでスウェーデン国防相ペーター・フルトクビストPeter Hultqvistは文言よりも米国との防衛関係の現実の方が重要だとの認識を示した。
関連ニュース フィンランド、スウェーデンが共同防衛体制を検討中
「スウェーデンにとって極めて重要な声明であり、大西洋を挟んだ連携がスウェーデンのみならずヨーロッパ全体で重要だと示すもの」とフルトクビスト国防相は述べている。「これまで米国とこのような仕組みはなかった。両国は多くの点で合意は見てきたがこのような総括的な傘はなかった」
フルトクビスト国防相は今回の声明文の背景にロシアとの安全保障関係であることを堂々と述べた。その事実が文書に反映され、8日に米国防長官アシュ・カーターとの署名に臨んだ。
「安全保障の課題はこれまでにまして深刻かつ複雑化している」と合意声明文の冒頭は述べている。「地域内勢力は隣国相手に公然と力を試しており、その他各国や国際機関ならびに我が国自体の安全はテロ活動や過激な暴力集団により影響をますます受けている」
今回の文書が取り上げた主要分野は次の七つ。
  • 両国間で「対話と情報共有」を進め、「北欧における安全保障の環境のよりよい理解」に焦点をあてること
  • 両国の軍組織間で対話を増やすこと
  • 演習や訓練を通じ相互作戦態勢を深める一方で「演習訓練が政治的なシグナルを送る」と認識すること
  • 二国間、多国間で幕僚レベルの演習を開発すること
  • 現時点の戦闘に対応する戦力を整備し中心を「航空戦と水中戦の装備協力ならびに関連センサー技術、兵装、機材」に置くこと
  • 将来の戦闘に対応できる戦力を整備し中心を航空戦力、水中戦ならびにサイバー戦に置くこと
  • 現状の多国間協力体制を国連やNATO通じさらに強化すること
インタビューでフルトクビスト国防相は情報共有を特に強調し、情報機関のみならず二国間で解析の課程での共有が重要だと述べた。米国との共同演習の回数が増えていること自体が「力強い安全保障の声明文」だと発言している。
技術についてフルトクビスト国防相は将来の二国間協力では自信をもって「進めていく」と答えたが、スウェーデンが開発を進めている新型センサーについて明言を避けた。


2016年6月8日水曜日

★NATOの冷戦時の第三次世界大戦シナリオが明らかになった



今から見れば狂気の世界ですが、当時は本当にソ連侵攻のシナリオが現実的に見られていたのですね。ロシアが再びこのような姿勢をとることがないよう祈るばかりです。なぜならNATOも拡大したとはいえこれだけの体制の復活はおそらく不可能でしょうから。

 Revealed: How NATO Planned to Win World War Three in Europe

June 6, 2016

北大西洋条約機構NATOはソ連の西欧侵攻を実現させないため1949年に結成された。第二次大戦が終結し、ソ連はポーランド、ハンガリー、チェコスロバキア、ルーマニア、ブルガリア、東ドイツの東欧各地に駐留軍を送った。NATOはチャーチルが述べた「鉄のカーテン」への対抗策だった。
  1. 米および西欧はスターリンのソ連と開戦となれば欧州が主舞台になるのは当然と見ていた。ただし核兵器の配備により東西は直接対決を避け、変わりに代理戦争が各地で発生した。ソ連による西欧侵攻は最大級のリスクがありながら最大級の成果も生むと見られていた。
  2. そこでNATOの戦略ミッションは同盟の瓦解を軍事力で防止することにあった。このため目標が四つ想定された。航空優勢の確保、北米への航路確保、西ドイツの領土保全および核兵器投入の予防だった。
  3. 1988年になるとNATOの西欧防衛方針は前方配備になり、ソ連ワルシャワ機構軍を極力ドイツ国境の内側で食い止めることが主眼とされた。領土奥深い部分での防衛は第二次大戦での東部戦線の経験から有効とされたが実施されていれば西ドイツの住民全員と戦後40年の復興繁栄の結果が犠牲になっていただろう。
  4. NATOには統合戦の構想はなく、ただ「戦線を維持する」ことでソ連、ワルシャワ条約軍を消耗させる構想だけだったようだ。西ドイツ陸軍は戦術レベルで柔軟行動を許された。米国はエアランド戦闘 AirLand Battle 構想として地上兵力と航空部隊を一体運用して敵を同時に攻撃し最前線から後方まで攻撃するつもりだった。
  5. 海上ではNATO海軍部隊の主任務は北米との海上交通路を維持することにあり、米国カナダから増援部隊を無事輸送することだった。NATOの哨戒機、艦船、潜水艦はソ連潜水艦の探知に全力を挙げ、グリーンランド、アイスランド、英国を結ぶ線よりの南下は阻止する体制だった。
  6. 米海軍はノルウェー海に空母戦闘群を二個ないし三個送り別個に戦艦中心の水上戦闘集団一個を派遣しソ連北方艦隊の海軍基地、航空基地を攻撃する想定だった。ソ連本土の攻撃で西側護送船団への攻撃を分散させつつ、海軍、空軍基地を攻撃し補給路も遮断する構想だった。同時にソ連の弾道ミサイル潜水艦を母港から切り離し標的にする考えだった。
  7. NATO海軍部隊はソ連、ポーランド、東ドイツの海軍部隊をバルト海内部に閉じ込め、デンマークや西ドイツへの侵攻を食い止める構想で、西ドイツ海軍はハンブルグ北方でポーランド揚陸部隊の侵攻に警戒する想定だった。
  8. 空ではNATO空軍部隊に複数の役割が期待されていた。米空軍のF-15、F-16、英空軍のトーネードADV、ドイツのF-4ファントムで航空優勢を確保する一方、英軍と独軍のトーネードIDS低空攻撃爆撃機が東ドイツとポーランドのの航空基地を爆撃しポーランドでも同じことを実施する構想だった。米空軍F-111戦闘爆撃機をはじめとする攻撃機材は阻止攻撃、橋梁、司令部、補給処等を破壊し少しでもワルシャワ条約軍の進撃を遅らせ、その後米A-10ウォートホグ、ドイツのアルファジェット、英空軍ハリヤーの各機が前線航空支援でNATO地上軍の窮地を救うはずだった。
  9. それでも決着をつけるの地上戦のはずだった。NATOの航空優勢へソ連が考えた対抗策は航空基地の制圧だった。
  10. 技術面ではNATO地上軍が優位だったが、当時導入された戦闘システムの一部は今日でも稼働中だ。1988年時点で在欧米陸軍の第七軍は「ビッグファイブ」装備を展開していた。M1エイブラムズ主力戦車、M2ブラッドレー歩兵戦闘車両、AH-64アパッチ攻撃ヘリコプター、UH-60ブラックホーク輸送ヘリ、ペイトリオット防空ミサイルでそれぞれ陸軍のエアランド戦闘構想の一部だった。西ドイツは二代目の主力戦車レオパルトIIの配備を始めており、オランダも採用し、マーダー歩兵戦闘車両も登場していた。同時に英陸軍はチャレンジャー戦車、ウォリアー歩兵戦闘車両によりライン河の防衛体制を強化していた。
  11. 北方陸軍集団NORTHAGは西ドイツの北半分を担当して北ドイツ平野の防衛が任務だった。地形の性格上、攻撃側に有利だった。NAOTHAGにはルール地方への近道ルートの防衛も重い任務で重要な工業地帯や当時の首都ボンさらにアントワープやロッテルダムという増援部隊の受入れに必須の港湾につながるルートだった。
  12. そこでNATO部隊はドイツ、英国、オランダ、ベルギーの二個ないし四個戦闘師団が別個に展開し指揮統制は全体レベルでのみ可能だった。有事には英国、オランダ、ベルギーが増派部隊を迅速に送り込む想定とはいえ、同陸軍集団の部隊の大半は防御地点から遠く離れた配置で相当前からの警報がないと展開は無理だった。
  13. 中央陸軍集団CENTAGは西ドイツ南半分の防衛を任務とし、米軍とドイツ軍を中心にカナダ機械化旅団が補強した。ドイツの二個軍団はそれぞれ戦車師団、戦闘車両師団、山岳師団で構成し、防衛線の死守が任務とされ米陸軍の軍団二個は機械化歩兵師団二個あるいは三個で構成した。CENTAGには国境とライン河までの120マイルと一番狭い地帯の防衛を担当した。
  14. 数の上では劣勢だったがCENTAGには切り札があった。米独軍の戦闘態勢は装甲機械化歩兵部隊が中心で戦車を大量に投入するソ連ワルシャワ機構軍との対決に特化していた。西ドイツ陸軍は高度に訓練され、指揮統制、装備の面でも、申し分がなかった。欧州駐留米陸軍には追加大隊があり、火力を約1割追加できた。また各軍団には装甲騎兵連隊で国境線を突破することができた。
  15. CENTAGには地形の利点もあった。ドイツ北方地方と違い、ドイツ南部には丘陵地、山岳地帯に繋がる渓谷もあり防衛側には有利だった。有名なフルダ渓谷も一部でホフ峡谷やシェブ進入路といった知名度は低いが重要地点もあった。
  16. はるか北にはノルウェーがソ連と国境を接し、防衛には不利と見られてきた。だがノルウェーの地形は攻撃側には持続が困難でソ連地上部隊には陸戦隊ならびに空中機動部隊の支援が必要だった。NATOは国際混成ACE機動部隊をノルウェー防衛に派遣する構想で、米海兵隊もノルウェー国内に旅団装備一式を事前配備していた。
  17. NATOはヨーロッパ各地で敵の降下、ヘリコプターによる強襲や特殊部隊の攻撃を想定し小規模ながら機動力ある攻撃で背後のNATO施設や重要拠点が占拠されるのを恐れた。ライン河等の橋梁、司令部、補給処、装備事前集積所などだ。
  18. そこで背後の防衛用に12個旅団規模の西ドイツ予備兵力をあてた。ボンの防衛には落下傘部隊三個が急行する体制だった。NATOの各空軍基地の保安体制は極めて高く米空軍は独自に大規模守備隊を配置し、英空軍も基地を防衛していた。
  19. 通常兵力でワルシャワ条約軍を阻止できない場合はNATOには戦術核兵器各種があり、核機雷から自由落下爆弾、地上発射巡航ミサイル、パーシングIIミサイルまで選択可能だった。核装備は豊富だったがいったん使用すれば核報復を招くのは必至で報復の輪を止めるのは至難の業だっただろう。戦術核が戦略核の使用に繋がっていれば、人類文明は終焉を迎えていたかもしれない。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boringand the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blogJapan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.



★日米が防衛装備品市場を相互開放へ ミサイル防衛他への波及効果を予想



本件はほとんど国内報道されていませんが、武器輸出三原則の変更、前向きになった日本の姿勢に対して米国内の保護主義条項がハードルになっていたわけですが、この合意でそれも適用除外にするという大きな意義があるのですね。ただし潜水艦案件で明らかになったように「売ってやる」姿勢では諸外国のマーケットに参入するのはほぼ不可能で、ここは必死に販路を開拓してきた民間企業のDNAを投入する必要があるでしょうね。とはいえ当面は中核部品や特殊分野のパーツの輸出が主になるのではないでしょうか。iPhoneと同様ですか。

US, Japan Sign Arms Trade Pact: Missile Defense Co-Production & More

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 07, 2016 at 12:41 PM

Navy cruiser Lake Erie launches SM-3 IB missile 575519537757ad8b1368733557
SM-3 IB ミサイルを発射する米海軍巡洋艦USSレイクエリー。同ミサイルは日本との共同生産。

日米が両国間で武器貿易を開放した。乗り気ではなかった日本が合意に踏み切ったのは中国の恐怖が日本を第二次大戦後の平和絶対主義から変貌させたことの証だ。アシュ・カーター国防長官と中谷元防衛相がシャングリラ対話に合わせて相互防衛装備調達Reciprocal Defense Procurement(RDP)合意に6月3日署名した。カーター長官は「包括的かつ原理原則に基づく安全保障ネットワーク」で日本のような従来からの同盟国とシンガポールのような新規に加わった協力国を結ぶ構想を提唱している。
今回の調印で日本はアジアで初めてRDPに加盟した。23カ国がすでに加わっており、イスラエル、エジプト、スウェーデン、NATO加盟国の多くがあるが、各国製の防衛装備品はバイアメリカ法やその他貿易保護措置から適用除外となる。このクラブ加盟は安倍晋三首相にとって大きな一歩で、日本を「普通の」国家にして他国と軍事作戦ならびに装備品生産を共同で行える方向を目指す一環だ。わずか二年前までは国内産業に武器製品の海外販売を禁じてきた日本にRDP加盟は大きな成果だ。
「貿易統計を見ると航空宇宙の民生用では日本は主要サプライヤーになっている。でも防衛用途を見るとゼロだ」とTeal Groupアナリストのジョエル・ジョンソンは指摘する。RDPで大きく変わる可能性が出てきた。RDPとはとどのつまり「日本企業を米国国民と同等の待遇を与え、貴国は米国企業を日本国民と同等の待遇を与えること」とジョンソンは説明する。「バイアメリカ条項の適用は繊維製品、靴を除き免除されます」
だからと言って米側が日本の防衛装備を導入することは期待できない。たとえば三菱重工のそうりゅう型潜水艦や川崎重工のP-1哨戒機、新明和工業のUS-2水上機などだ。保護主義の色彩の強い施策は別にしても米軍の要求内容は時として独特で他国装備品がそのまま選定されることは少ない。インドはUS-2の導入に踏み切りそうだが、オーストラリアへの潜水艦売り込みはフランスに敗れている。
逆に日本はすでに米国と同等の装備品をライセンスあるいは共同生産の形で生産している。富士重工のUH-1Jヒューイ、F-16をもとにしたF-2戦闘機などがある。戦略予算評価センターのブライアン・クラークは「日本は中核分野となる潜水艦戦などで米技術を導入し、電子戦、ステルス、攻撃兵器もその例ですが、その逆は発生していません」
だが今回の合意で日本製ハイテク部品の米製兵器への採用が容易になると期待される。
クラークは「外国から装備品を完成形で買うことは米国ではまれですが、外国製の部品やミッションシステムとしての武器、センサー、ジャマーポッド等では米国製より性能がすぐれているものがあります。これまでRDPは外国メーカーからの部品購入の促進に使われており、システムとしての完成は米企業がもっぱら行ってきました」と述べる。
では日本から何を期待できるだろうか。「カメラのようは光学製品はずっと優秀です」とジョンソンは話す。電子製品でも強い。すでにペイトリオットミサイルの一部は日本製であり、スタンダードミサイルSM-3の最新版アップグレードも共同開発している。ともにミサイル防衛関連で北朝鮮を脅威と受け止める日本にはミサイル防衛技術の向上は望ましい方向だ。
ただし攻撃兵器の部品となるといまだに根強い平和絶対主義により微妙な問題になるだろう。特に日本製部品を採用した米国装備が第三国に輸出されれば問題になりかねない。「日本は戦闘が進行中となるとアレルギー反応を示します」とジョンソンは説明。
「日本は事態を整理する意味で荒っぽい修正をしてくるでしょう。日本国内の方が米国より負担感は大きいかもしれません。米国は相互調達方式に慣れています」とジョンソンは説明したが、日本は武器輸出を開始したばかりだ。「今回の措置で日本企業は米軍への装備品売り込みが可能になりましたが、日本はどのハードウェアを販売対象にするかを選択するでしょうし、販売条件も慎重に検討するはずですが、果たして買い手にとって受け入れ可能な内容になるのか疑問ですね」■



★★★米空軍が想定する2030年以降の主力戦闘機の姿は現在の延長線上にない模様



F-XあらためPCAですか。空軍は思考が早いですね。問題はその実施で、KC-46Aのようにメーカーに責任だけ押し付けるやり方でも望ましい方向は実現しないでしょう。発注元とメーカーが一体になり真剣に考えないと実現は無理です。さらに空軍の思考は先に行っており、次期主力戦闘機(戦闘機になるのか不明)は相当今の姿と変わりそうですね。新概念が実現すればF-22生産再開の意味がなくなれば、F-35も就役すれば即老朽化となり相当苦しくなるでしょうね。
Visit Warrior

Air Force Envisions Future Fighter Jet for 2030s

DAVE MAJUMDAR
12:59 AM

米空軍が次世代戦闘機のコンセプト作りを開始し新型コンピュータ技術、兵装、電子戦装備、感知機能の採用を検討中。新型機は2030年代以降に現れる予想の脅威内容に対応する。.
  1. 空軍は2030年代より先の航空優勢確立に必要なのは侵攻制空機能(Penetrating Counterair PCA)だと見ている。現行のロッキード・マーティンF-22ラプターとF-35共用打撃戦闘機では将来対応ができないことが次第にはっきりしてきた。
  2. 「F-22とF-35ですべてことが足りるなら、それ以上は不要だし、調達もいらなくなる」と次世代航空優勢の実現に携わる空軍幹部は語る。「現実は違う」
  3. 同高官は現空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が五月にF-22生産再開に前向きな姿勢を示したことに空軍上層部の大部分が理解に苦しんでいると付け加えた。ラプター生産再開が極めて困難かつ高費用につくだけでなく、搭載するエイビオニクスが陳腐化しており、生産設備工具治具類の再整備以外に、F-22では2030年代以降の世界で戦力を示し残存性が期待できない。「どうして参謀長があの発言をしたのかわからない」と別の関係者も感想を述べている。「魔がさしたのでしょうか」
  4. いずれにせよ、ラプターが再生産される可能性は極めて低い。下院軍事委員会のシーパワー兵力投射小委員会委員長ランディ・フォーブス議員(共 ヴァージニア)がどれだけがんばっても状況に変わりはない。逆に空軍はもっと広く総合的に検討して航空優勢の確保方法を模索するべきだろう。機体案も複数とし、電子戦を重視し、データリンクや新兵器の採用も当然考慮される。だが空軍が新しい機材が必要としてもこれまでの機体中心の思考方法から解放されなければならない。

  1. 「空軍が考える2030年代の戦力構造予想では敵対勢力と戦い勝利をおさめることはできない」と空軍の2030年想定の航空優勢確保案は述べている。「2030年の厳しい環境で航空優勢を確保し、実現するためには性能と能力を多角的に検討する必要がある。重要なのは作戦環境が迅速に変化していくことでこれにより空軍はこれまで通りの方法で直線的な装備調達開発大日程を続ける余裕はなくなることだ」
  2. 想定する脅威内容では統合ネットワーク化された空対空、地対空、宇宙空間、サイバー空間で戦術機が今後も減少し老朽化が進む前提で2030年以降の世界では米空軍が航空優勢を確立できなくなる可能性を憂慮している。脅威の一部として高性能機材があり、スホイPAK-FAや成都J-20、さらに新型センサー類や新兵器体系がある。「ほぼ互角の国力を持つ相手がこれら装備を保有する一方で、高性能装備が世界各国に拡散していることが問題だ」と報告書は指摘している。
  3. さらに新規脅威内容でこれまで当たり前だった米国の優位性が揺らぐ可能性がある。「わが方の宇宙空間での優位性を覆す強力な脅威能力の登場、サイバー空間での脅威が質量ともに増大すること、極超音速兵器、低視認性巡航ミサイル、高性能通常弾頭付き弾道ミサイルなど空の脅威の変化」を列挙している。「新しい種類の脅威がいつ、どこで出現するかは不明だが、確実なのは航空優勢を確保する中で2030年までに出現するこれら脅威対象への対策が必要になることだ」
  4. そこで脅威の高まりに対して空軍はあらゆる点で問題解決を迫られ、基地の強化、空中給油機の更新、「クラウドによるセンサーネットワーク」(空軍情報部長だったデイヴ・デプチュラ中将は「コンバットクラウド」と呼んでいる)まで各種あるが、新型機材も必要となる。「この戦略により航空優勢を確立し統合運用を支援するため空軍は各種能力ファミリーの開発が必要であり、航空、宇宙、サイバーの各空間で有効な能力が必要だ。単一能力ですべて解決するのは不可能だ。よってこのファミリー構成の中にはスタンドオフ、スタンドイン両面の戦力、統合ネットワーク化によるミッション効果の確保を実現する方法が求められる」と文書はまとめている。
  5. ペンタゴンはスタンドオフ・アーセナル機とノースロップ・グラマンB-21長距離打撃爆撃機の開発を進めており、それぞれ航空優勢の確保維持に役立つと期待される。空軍は新規の電子戦能力開発も求められており(空軍はこれまでこれを否定してきた)、ステルスだけでは次世代脅威に対抗できないとわかってきた。「個別の兵装開発活動は機体開発活動と連動させる」と文書は説明している。「長距離で高性能の兵器はAS2030で想定する各種能力ファミリーの全体効果を引き上げる存在だ」
  6. 空軍の航空優勢確立構想の中心的存在は侵攻制空能力だろう。これは新型機材の投入を意味するが空軍は「第六世代」や「次世代」機の表現は避けている。「『次世代』機に焦点を合わせた考え方は捨てる必要がある。このような考え方はえてして開始済みの事業で技術制約をさらに引き上げる結果に終わることが多い」
  7. にもかかわらず、文書ではPCAがどんな姿になるかのヒントがそれとなく示されている。「PCA能力の開発では航続距離、ペイロード、残存性、攻撃力、機体価格、維持管理の最適解を模索する。PCA能力は当然のこととして目標捕捉、交戦の要素も含まれれると同時にネットワークの中継点の役割も大きく、敵陣を突破したセンサーからのデータを中継し、スタンドオフ、スタンドイン兵装の投入を選択する。この一環で空軍は正式にAoAを2017年に行いPCA能力を定義づけるべきだ。機動性のある調達を心がけて適正能力を必要な時期までに実現することを目標に、AoAには迅速開発や試作品製作の選択肢も含めるのが望ましく、脅威内容より先に対応すべきだ」と文書はまとめている。「上記F2TA能力に加えPCAの侵攻突破のうりょいうがあれば航空空間から運動性、非運動性両面の効果をスタンドインで実現することが可能になる」.
  8. 空軍はAoA代替策検討を2017年に実施しPCA(旧称次世代航空優勢戦闘機、F-X)のあるべき姿を決定する。空軍関係者各位から聞いたところではPCAがF-22の延長形にになる可能性は低いようだ。だが議会にはそうあってほしいと願う向きが一部に残っている。

Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.