2017年11月7日火曜日

米空軍OA-X比較検証の行方---第二段階は実戦投入テスト


そもそも米空軍が目指すOA-XはISISやタリバン等の戦闘員対策以外の各種任務まで想定するなら機体は多様なミッションに耐える余地の大きいスコーピオンかなと思いますが、A-29が実績で一馬身以上先に行っており、どうなるかわかりません。スコーピオンはなかなか空軍の高性能指向では理解が難しいのかもしれませんね。


Air Force Nears Decision-Which Light Attack Plane Goes to Combat

米空軍の軽攻撃機選定が近づく-次段階は実戦テスト

Firing laser-guided rockets at enemy ground locations, dropping precision-guided bombs from thousands of feet up in the air and coordinating closely with ground-attack

レーザー誘導ロケット弾を地上標的に発射し、精密誘導爆弾を低空で投下しながら対地攻撃を連携しながら行う


Scout Warrior - Nov 4, 11:30 AM
By Kris Osborn


米空軍が想定する軽攻撃機構想ではテロ集団戦闘員相手の戦闘で米空軍が航空優勢を確保している前提で多用なシナリオが想定され、機体操縦性を確保しつつ近接航空支援や精密地上攻撃能力が求められる。
Scout Warrorは米空軍関係者から軽攻撃機実証のシナリオ詳細を知ることができた。評価は現在作業中だ。
-基本的対地攻撃---レーザー誘導爆弾、非誘導ロケット弾等の命中率、正確度を試す
-近接航空支援(CAS)---敵目標を捕捉、確定、追尾し照準をあわせて標的想定への攻撃を供用現場攻撃統制官(JTAC)と通信をしながら実施する能力を評価する
-昼間地上強襲部隊 (GAF) ---機体の航続時間、距離、地上部隊との交信能力を秘匿性のある/ない戦術通信で行えるか評価する
-救難隊護衛(RESCORT)----ヘリコプターとの共同作業でのパイロット負担を評価し、対象地区の更新情報を受信できるかを評価しつつレーザー誘導兵装の運用を確認
-夜間CAS----標的の探知、確定、追尾、照準、攻撃にあたりパイロット負担を評価
OA-X軽攻撃機は抵コスト民生技術応用で戦闘にそのまま投入な機体の想定で各種任務を航空優勢が確保されているか低難易度環境での実施が期待される。
一部報道で空軍が民間企業の既成機種の完成度に好印象を受けているとあるが、空軍からはまだコメントが出ていない。
上層部向けに分析比較結果がまもなく手渡され次の段階に進む決定に役立てられると空軍報道官シャロン・エヴァンス大佐がScout Warriorに語ってくれた。
高性能だが運用も高価な戦闘機のミッション時間を節約するのが狙いでISIS向きなど対地攻撃にF-15やF-22を投入する必要を減らす。
実験第一週には空軍パイロットが各機を操縦し基本対地攻撃ミッションをテキストロンエイビエーションのAT-6ウルヴァリンターボプロップ機、シエラネヴァダエンブラエルのA-29スーパーツカーノで行った。
また空軍パイロットはテキストロンエイビエーションのスコーピオンジェットとエアトラクターL3のAT-802Lロングスォード両機で慣熟飛行を行った。
うち一機がISIS戦での実証に送られるとアーノルド・バンチ中将Lt. Gen. Arnold Bunch.(国防次官補付空軍調達担当)は今年早々にScount Warriorに語っていた。
軽攻撃機構想は戦闘状況にすぐ投入可能な機体をめざし、低コストでミッション効果を上げる能力を求めた議会有力議員に呼応したもので空軍上層部も本件に関心を示し実験場ホローマン空軍基地を訪れている。
軽攻撃機は地上近く上空で待機し米軍部隊近くの敵を迅速に変化し続ける戦闘状況の中で攻撃する能力を想定しており、対戦闘員のみならず対等の戦力を有する相手との交戦でも有益となるはずだ。戦闘構想では米空軍が技術的にも進んだ相当の戦力を有する敵との対戦想定でステルス機や第五世代戦闘機が航空優勢を確保している前提だ。
以下有力な各機を見てみよう。
A-29 スーパーツカーノ
米国が訓練したアフガン空軍がタリバンをA-29スーパーツカーノで攻撃を加えている。
A-29はターボプロップ機で20mm機関砲を機体下に搭載し毎分650発を発射し、主翼下に12.7mm機関銃、7.62mmのM134ミニガンを最高4基搭載し毎分3000発の発射が可能。
スーパーツカーノは70mmロケット弾やAIM-9L空対空ミサイル、対地攻撃用にはAGM-65マーヴェリック他精密誘導爆弾を運用できる。またレーザー測距機とレーザー誘導兵器も搭載可能だ。
スーパーツカーノは高い操縦性を誇り、高温過酷環境でも運用可能だ。全長11.38メーターで自重5,400キログラム、戦闘行動半径は300カイリまでで最高速度367mphだ。
テキストロン・スコーピオン
自社制作の同機は高性能精密攻撃兵器システムのロケット弾およびAGM-114Fヘルファイヤの発射をしている。誘導にはまず地上配備のレーザー照準器を使ってから機内のL-3WESCAM製MX-15Diセンサーに切り替える。
テキストロンは高性能版スコーピオンにガーミン製エイビオニクスを搭載する。同社の情報シートではG3000エイビオニクスの名を上げており、大型高精度ディスプレイにHDタッチスクリーン制御画面をつけており、パイロット席から多様なミッションを実施できる。後席に追加航法装置をつけ多様なミッションを行いつつ機体を軽量化している。
スコーピオンでは今後主翼に後退角をつけ水平尾翼を改良して高速性能を実現するほか、降着装置を簡略化し次世代ヘッドアップディスプレイも導入すると同社は解説している。
ホーカービーチクラフトAT-6
AT-6は多用途軽攻撃機で、A-10Cのミッションコンピュータを使い、CMCエスターライン製グラスコックピット、フライトマネジメントすステムにL3 WESCAMのMX-Ha15Di マルチセンサー装置を搭載しIRセンサー、レーザー照準技術を搭載している。■

2017年11月6日月曜日

韓国KF-Xの開発状況、装備品国産開発を狙う


どうも韓国の国産戦闘機開発事業では機体サイズが今後の発展性の脚を引っ張りそうですね。また技術を大量に海外導入する計算がそのままうまく行くか注目ですね。日本ほどではないとしても相当高価な機体になりそうです。ともかくプロジェクトが今後どう進展するか見守りましょう。


Aviation Week & Space Technology

South Korea Tackles Challenging Systems Development In KF-X

Indigenous systems development intensifies KF-X challenge
KF-Xで技術国産化の難題に挑戦する韓国

Oct 26, 2017Bradley Perrett and Kim Minseok | Aviation Week & Space Technology

新規参入国にとって戦闘機開発は海外メーカーが機内装備を提供しても難易度が高い。そのため複雑装備の国内開発は避けることが多い。
  • だが韓国は韓国航空宇宙工業(KAI)のKF-X国産戦闘機でこれに果敢に挑戦している。成功するため技術陣は戦闘機以外の技術、ときには航空業界以外の技術も応用する必要がある。利用可能な外部技術があれば自ら挑戦するのを避けている。
  • 注目されるのが国産レーダー開発でアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)を作ろうとする。その他の国産装備で予定されるものにフライトコントロールコンピュータ、油圧系、電子戦装備等がある。韓国技術陣は今は主導的立場をとっている。ただし海外企業多数が参画しているため今後もそのままでいられるか不明だ。
  • 2015年までに国防省の野心的な技術促進部門がKF-X立ち上げを提唱し、当時は海外の先進装備を導入した機材を第一段とし、国内産業は同事業通じ技術的に追いついてから国産装備を後日開発する予定だった。
  • だが米国が技術統合に協力しないと明らかになると韓国は国産化をめざした。だが欧州やイスラエル製の装備より国産開発の方がなぜ望ましいのか説明がない。
  • それはともかく韓国は国防開発庁 Agency for Defense Development (ADD)を発足し難易度の高い事業で韓国民間企業を支援することとした。ハンファHanwhaとLIG Nex1が筆頭だ。KAIは主契約企業として当然深く関与している。
  • ハンファの国防電子事業部門ハンファシステムズがADDと共同で戦闘機用レーダーを開発したのには驚かされた。LIG Nex1はこの分野で知見が豊かだ。事実同社はKF-Xレーダーのコンセプトモデルを本年のソウル航空宇宙防衛展示会(10月16日-22日)に出展したばかりだ。
  • ハンファシステムズは戦闘機の目標捕ポッド開発中でADDの支援を多数得ていることは疑いない。韓国は同種装備は未体験であるものの海軍用赤外線センサー技術がある。課題は小型化だと関係者が認識している。ADDは偵察用ポッド開発の知見がある。
  • ポッドにするのはロッキード・マーティンF-35で機内搭載したのと対照的で装備統合作業の難易度を考慮したことと機内に余裕がないためだろう。ポッド使用のため予定されるステルス版KF-Xで低レーダー反射効果は地対空運用で期待できない。兵装庫にも大型装備は搭載できないだろう。
  • これに対して電子戦(EW)装備はLIG Nex1が開発中で機内装備となる。ALQ-200EWポッドの技術を流用する。同ポッドは韓国でF-16とF-4で実用化している。
  • 同社はフライトコントロールコンピュータ、電波高度計、フライトデータレコーダーも供給する。これらは大韓航空のMUAV偵察無人機用に開発したものを流用する。
  • KF-Xとつながりが一番大きい既存事業がT-50練習機および軽攻撃機の開発事例だ。T-50では通常の油圧3,000 psi (21,000 kPa)を採用したが、KAIは 5,000 psiを採用し重量軽減と小型化を図りたかったが、3,000 psi前提にした技術内容と試験機器があることから結局3,000 psiに落ち着いた。スペインの油圧技術専門会社CESAが開発を助けている。同社は拘束フックの設計も支援している。
  • 比較するとKF-Xは大型で搭載機器も多く、レーダーの容量はT-50より増える。LIG Nex1の消費電力は50%以上増えている。
  • ヘッドアップディスプレイ(HUD)はBAEシステムズのライセンスを得てLIG Nex1が製造する。ただし設計には他のエイビオニクスとの整合性を配慮する必要がある。BAEはT-50でもHUDを提供したが内容はこれより低かった。
  • KAIはHeroux-Devtek、ハンファ両社に降着装置開発をさせることとした。作業の大部分は知見豊かな前者(カナダ企業)が行うだろうが、公式発表はまだない。
  • KF-XのエンジンはジェネラルエレクトリックF414だ。ハンファの推進器事業部ハンファテックウィンがパーツ製造とともに統合化作業と装着にあたる。ここでも海外メーカーが大きな役割を演じることは最初から認められている。■

★中国空母への日本の対抗策は潜水艦だ



潜水艦を抑止力ととらえ、中国にはせいぜい高価な兵器を整備させ作戦上使えなくさせれば旧ソ連のように防衛力が破綻するかもしれませんね。要は日本が中国の上を行く戦略をとればいいのです。相手は数の威力や大きければいいと考えているきらいがありますからね。そうなると潜水艦の整備も重要ですが、それを支援する体制中心に海自が組織されていくかもしれません。沈黙の部隊の隊員の皆さんには頭が上がりませんね。


Here Is How Japan Plans on Killing China's Aircraft Carriers

日本は中国空母をこうして攻撃する

November 5, 2017


  1. 中国が空母を複数運用する日が近づく中、近隣国や米国は対応策を準備しているはずだ。特に中国の伝統ライバルと言ってよい日本で顕著だ。ただ日本には経済効果が高く有効な手段がすでにある。潜水艦部隊だ。
  2. 中国が旧ウクライナ空母を改修し遼寧として就役させたのは2012年のことだ。だが同艦の戦闘能力は限定的で建造中の国産空母の練習用に使っている可能性が高い。国産一番艦は今春進水ずみで、人民解放軍海軍(PLAN)での供用は2020年になりそうだ。国防分野に造詣が深い編集者デイヴィッド・マジュンダーは同艦は遼寧と比較しても大きく変わった点はないと述べている。とくにスキージャンプ式発艦方式が継承されているのが大きい。だが国産二番艦では技術が大幅に進歩し、蒸気カタパルトや最終的に電磁式カタパルトの搭載も予想される。マジュンダーは中国人軍事アナリスト発言を引用し「002号艦は遼寧(001)は001Aと全く異なり、米海軍空母に似た艦容になる」という。
  3. 中国空母は最終的に6隻になると見られ、兵力投射能力が大幅に伸びる。日本含む各国も対抗を迫られる。北京は敵空母打撃群への攻撃手段を開発中で対艦弾道ミサイルのDF-21D「空母キラー」には制御可能再突入体(MARV)があり発射後に飛翔経路を変更し空母の移動分を補正できる。
  4. 理論上では日本も対艦弾道ミサイル(ASBM)の開発能力があり、中国空母に対抗できる。(米国の場合はINF条約により陸上版の配備はできない)だがこれは誤った方法になる。中国がASBM開発に進むのは国内国防産業にミサイル技術の蓄積があるためだ。対照的に日本に攻撃手段の技術蓄積が少ないのは平和憲法のためだ。
  5. 日本の技術水準は高くその気になればミサイルを容易に開発できるはずだ。宇宙打ち上げの実績とミサイル防衛装備でも経験の蓄積がある。とはいえ今からASBM開発に向かっても一定の開発期間が必要でかつ非常に高価になる。中国のDF-21D開発支出は不明だが一番近い比較対象が米パーシングIIミサイルだ。MARV対応の弾道ミサイルのパーシングは冷戦末期に登場し、中国のDF-21D開発の契機となった。INF条約でパーシングは全廃されたが、政府会計検査院(GAO)の算定では247発製造で26億ドルだった。2017年ドル換算では58億ドルに相当する。
  6. ただしこれはミサイル本体価格で空母のような移動目標を攻撃するには「システムのシステム」あるいはキルチェーンとよばれる支援装備が必要だ。ロバート・ファーレイが指摘しているがDF-21Dは「通信装備で各種高性能センサーを統合して情報を発射部隊に伝える」必要があり、言い換えればASBMにはリアルタイム情報がないと移動目標に対応できない。ハリー・カジアニスは「水平線越えレーダー、衛星追跡能力、無人航空機で洋上目標への誘導が必要」と指摘する。日本が中国と同じ方法を採用すればすべての費用が上積みされる。
  7. さらに中国の空母キラーの実力は不明だ。判明している範囲では中国は移動目標に対し一回も試射していない。システムのシステムを整備してもDF-21Dは敵対抗策に脆弱であり、米国は同ミサイルを徹底的に排除する構想だという。仮に対抗策が全部失敗しても空母打撃群には相当のミサイル防衛手段があり最後の手段として有効性を証明するだろう。
  8. そこで日本は中国を模倣するのではなく日本独自の優位性を最大限活用する戦略を模索すればよい。競争戦略構想は実業界で生まれ冷戦末期にペンタゴンが採択した、比較優位性を把握したうえで敵の弱点を探し出す考えだ。中国の接近阻止領域拒否が例で中国の地理条件を活用しながらアクセスを求める米国を狙っている。
  9. 日本にミサイル開発の知見はないが、潜水艦で優秀性を示している。そうりゅう級潜水艦は疑いなく世界最高水準のディーゼル電気推進艦で、ここまで高性能でない潜水艦でさえ空母に脅威となる。ロシアの低性能潜水艦に言及し米関係者は「小型潜水艦一隻が主力艦へ脅威を及ぼす」と述べている。潜水艦は第二次大戦中に空母8隻を沈めている。
  10. 潜水艦は費用対効果も優れる。高価といわれるそうりゅう級でも単価5億ドルほどに過ぎない。パーシングII弾道ミサイルの予算で日本は潜水艦11隻を整備できる。さらに中国の弱点は対潜戦(ASW)能力だ。近年は強化の動きもあるが中心は沿海部での探知能力向上にあてており洋上での能力は依然低い。このため日本が中国の将来の空母群に対応するには潜水艦が、もっとも費用対効果が高いといえよう。■
Zachary Keck (@ZacharyKeck) is a former managing editor of The National Interest.
Image: The Kokuryu submarine of the Japanese Maritime Self-Defense Force (JMSDF) bursts to the surface during a fleet review at Sagami Bay, off Yokosuka, south of Tokyo October 15, 2015. REUTERS/Thomas Peter​


中国の新型超高度飛行無人機により中国軍に有利な状況が生まれる


 まだ今回の成果はペイロードもほとんどない超小型機なのですが今後どのように技術が進展するかわからず、一方で中国が米い衛星群を狙い撃ちする体制に入ろうとしていることを想起すると自軍の情報インフラは守れると感じているようですね。


America Is No Match for China's New Space Drones

中国の半宇宙無人機に米国は追いつけるか


November 4, 2017

中国開発した高高度無人機で有利な軍事的状態が生まれそうだ。
  • 「半宇宙」の海抜12.5マイル上空で運航可能な新型無人機は防空体制の上を飛行し、レーダー探知も逃れたまま情報収集が可能。
  • 高高度運用は困難な課題だ。無人機には「死のゾーン」と呼ばれ揚力を得るのが困難で極低温で電子装置に過酷な環境。
  • 米軍RQ-4グローバルホークが最高高度を飛ぶがそれでも60千フィートにすぎない。中国無人機はこれを上回る82千フィート飛行に成功。
  • 内蒙古省の研究施設で無人機二機が気象観測風船につけられそれぞれ高度30千フィート、82千フィートへ上昇した。コウモリほどの大きさで重量はサッカーボール程度の無人機は電磁パルスのパチンコで時速60マイルで射出。
  • 各無人機は60マイル先の目標に向け自動的に飛行経路を調整しデータを地上局に送ってきた。機体が小さいため飛行中もレーダー追跡は困難。
  • 無人機にはセンサー類がつき、地形図作成デバイスや電磁信号探知機は地上部隊の正確な把握に使える。ただし無人機にはカメラはついておらずアンテナ不要のため空力学特性を犠牲にしない。
  • 主翼と胴体は一体化されており無尾翼形状のため空気の薄い大気圏上層部で浮力を稼げる。さらにエンジンがつかないモデルもありグライダーのように滑空。
  • 「研究目標はこのような無人機を100機単位で発進させることでミツバチのイメージだ」とYang Yanchu教授(中国科学院)が South China Morning Postに語っている。
  • 先進的な軍組織は衛星への依存をますます高めており、情報収集のみならず通信やミサイル誘導までは範囲は広がっているため戦時には最初に狙われる存在になる。防御は困難だ。このため宇宙に近い高度に機体があり情報収集やデータ中継ができれば衛星の代替手段となり価値は計り知れない。
  • だが宇宙空間に近い高度での運用能力はどの国にもなかった。一般の航空機はここまでの高度は飛べず、衛星には低すぎる。
  • 中国はこの分野で新技術を真剣に開発しており、中国科学院が宇宙近接空間科学実験事業として推進中。
  • 今年6月には中国は太陽光動力無人機を65千フィート上空で飛行させた。翼幅130フィートの大型機で彩虹Caihong-T4の目標は最低限の制御で数か月間滞空。
  • これに対しNASAが有する世界記録はヘリオス試作機で太陽光で97千フィートまで上昇。
  • だが試作機や現行の高高度無人機が数百万ドルかかるところを中国の最新高高度無人機の運航は数百元しかからない。
  • これだけ安価でもステルス高高度飛行無人機なら中国が今後宇宙に近い空間で一歩有利になりそうだ。■
Eugene K. Chow writes on foreign policy and military affairs. His work has been published in The Week, Huffington Post, and The Diplomat.
Image: U.S. Air Force

2017年11月5日日曜日

速報 リヤドへ弾道ミサイル攻撃、ペイトリオット迎撃成功



イエメン内戦にサウジアラビア等が介入している様子に日本で関心を持つ向きがどのくらいいるのかわかりませんが、状況はどんどんかわっているようです。弾道ミサイル戦争の様相を帯びてきました。CNNが以下伝えています。

 

Saudi Arabia intercepts ballistic missile over capital

サウジアラビア首都を狙った弾道ミサイル迎撃に成功


  • 11月4日、サウジアラビア首都空港を標的に弾道ミサイル一発がイエメンから発射された。フーシ勢力が支配するイエメン国防省が発表。
  • ミサイルはリヤド北東上空で迎撃されたとサウジ国防省が発表。
  • ミサイル発射は現地時間8:07 p.mで、ペイトリオットミサイル防衛システムが迎撃に成功しミサイルは無人地帯に落下したと連合軍は発表。負傷者は発生していないとのこと。
  • 発射されたのはイエメン開発の長距離ミサイルのブルカンBurqan2Hだという。
  • リヤドのキングハリッド国際空港では何の影響も受けていないと空港当局がツイッターで伝えている。
  • 同日にはイエメン首都サナアが夜間空爆を受けた。
  • イエメンではイランの支援を受けたフーシ反乱勢力が2015年に同国を占拠したためサウジアラビア主導の連合軍が介入している。.
  • サウジ首都のリヤドがミサイル攻撃の標的になったのは今回が初めてだ。
  • イエメン内戦はイランの代理戦争の色彩が強い。サウジ主導連合軍が支援する正当政府は政権の座を追われ現在はアデンに本拠を置く。
  • 国際連合人権高等弁務官事務所はイエメンの死傷者は合計13,829名でうち死亡は5,110名と集計している。
  • サナア空襲では8月に集合住宅二棟を破壊したがサウジ主導連合軍は「意図的ではない事故だ」としていたがその前にはホテルを倒壊させている。
  • フーシ勢力はイエメンを攻撃する国の首都を標的にすると弾道ミサイル投入を公言しており、今回のミサイル攻撃はイエメン一般市民を狙った攻撃の報復だとし、今後もサウジ都市を狙うとする。
By Tim Lister, Ammar Albadran, Hakim Al-Masmari, Sarah El Sirgany and Eric Levenson, CNN
Updated 2348 GMT (0748 HKT) November 4, 2017CNN's Bijan Hosseini contributed to this report.

トランプ大統領は日韓中でこれだけ使い分けが必要だ


本日から大きな外交ショーが始まりますが、日本ではともすれば日本ではトランプ大統領の動静ばかりに注目しがちで大きな文脈を見逃すことが多くメディアでもピント外れな論評が出そうで不安ですね。大事なのは本質であり、宿泊日数が長い短いとという外形ではないはずですが。


Trump Trip: Listen to Japan, Talk to South Korea and Dictate to China

トランプ歴訪にあたり日本には耳を傾け、韓国へは話しかけ、中国には指図せよ
U.S. President Donald Trump talks with reporters accompanied by First Lady Melania Trump as they depart the White House for a trip to Asia, in Washington D.C., U.S. November 3, 2017. REUTERS/Carlos Barria

November 3, 2017


  1. 地政学者はものごとを複雑にするのがお好きなようだがドナルド・トランプのアジア初公式訪問は実に単純だ。今回5カ国を歴訪するが最初の三カ国が最重要で、日本には耳を傾け、韓国とは意見を交換し中国には指図すればよい。
  2. 特に最初の訪問先選択が絶妙だ。米指導者がアジア歴訪を北京から始めた時代が去ったのは幸いというべきだ。
  3. 「ジャパンパッシング」がここ数年続いており日本首相は米大統領に北朝鮮問題で断固たる決心で政策実施を求めてきたが傲慢で注意散漫かつ怠慢なる米指導者が助言を無視したことで米国民の今日の不安が生まれた。今こそワシントンンは成績不振記録の更新を終了すべきだ。
  4. トランプは安倍晋三首相と良好な関係を構築しており、首相の言い分に普通に耳を傾けられるはずだ。また安倍首相の要請で北朝鮮工作員により1977年に新潟から拉致された横田めぐみさんの両親と面会するのは健全な印だ。金正日は2002年に小泉純一郎首相との会談で日本人13名の拉致を認め、横田さんもその一人だった。少女含む多数の誘拐は金政権のグロテスクな一面であり、歴代の日本首相が繰り返し米側に伝えてきたように北朝鮮が大量破壊兵器を保有する事態は看過できないことを思い起こさせてくれる
  5. したがって日本ではトランプは耳を傾けるだけでよい。
  6. 韓国では文在寅に話しかけるべきだ。5月に就任した「進歩派」の韓国大統領は北朝鮮を援助、貿易、投資で支援しようとしている。これでは金正恩はもっと強力な兵器を開発しかねない。今のところトランプは文の「太陽政策」あるいは金一族支配体制の「関与」の実行は思いとどまらせているが最終的ではない。文は機会あれば北へ架け橋を作ろうとするだろう。
  7. 今のところ金正恩は文提案を拒絶しているが、いつ方向転換し韓国と手をつながないとも限らない。他方でトランプ大統領は北朝鮮の「協力」申し出をはねつけてでも米政策を支持するほうが理に適うと文大統領に納得させる必要がある。
  8. また文大統領と対中関係を話す必要がある。かれこれ一年以上にわたり北京が醜い動きを展開しまずTHAAD装備展開をやめさせようとし、次に実際に懲罰を下してきた。中国が警告を無視してTHAAD配備に進んだ韓国に激怒しているのはレーダーが中国国内も探知するためもある。
  9. 中韓外相がこの問題を棚上げする共同声明を10月31日に出しており、文が中国に密約し火消しを図ったとの観測がある。いずれにせよカーネギー精華グローパル政策研究所Carnegie Tsinghua Center for Global PolicyのTong Zhaoは共同声明は米韓同盟を弱体化させようという中国のたくらみだとCNNに解説していた。トランプは親中姿勢を一貫して隠さない文の口から再確認を得る必要がある。
  10. その後で耳を傾けてから米国が防衛してくれるのかとの韓国の不安を解くべきだ。ここ数年、韓国政治家多数が米国が大国の地位を守れるのか不安に感じている。定期的にB-1を朝鮮半島上空に飛行させるのは韓国と日本へのメッセージである。
  11. そこでソウルではトランプは話す聞く双方が必要だ。
  12. 北京ではトランプは話すことに集中すべきだ。中国外交筋が好む言い回しで「結び目は作った本人がほどく必要がある」というのがあるが、北朝鮮へ二世代あるいは三世代にわたり支援し核兵器、弾道ミサイルの完成まで実現させたのは中国だ。でぶっちょ三世と呼ばれる体重300ポンドの指導者から恐ろしい手段を除去できるかは中国次第だ。
  13. 習近平は結び目をほどける。閉幕したばかりの中国共産党第19回大会で地位を強固にした習に言い訳はできない。
  14. 中国に相当の影響力を行使させる必要がある。中国は昨年北朝鮮の対外貿易の92.5%を占め北朝鮮の原油需要の90%を破格条件で提供している。北朝鮮の食糧需要では三分の一以上おそらく45%を中国が供給しているのが注目されるのは今年のかんばつが2001年以来の深刻だからだ。航空燃料では中国が100%供給する事態が数年続いている。
  15. このように中国は北朝鮮に多様な提供をしているが、最重要なのが北朝鮮高官に米韓また国際社会からの安全でいられるとの意識を与えていることだ。
  16. 中国と言えども金正恩の考え方を変えさせることは不可能かもしれないが、中国は北朝鮮兵器や金正恩本人を支持し続けられないと伝えることができるはずだ。
  17. 中国観測筋は金正恩が中国の意向に逆らったが特に大きな影響は出ていないと述べるが、最近の出来事で別の結果が出ている。金正恩はミサイル開発を加速化していたが、9月15日を境に発射していない。
  18. では党大会から静かになっている状況をどう利用すべきか。北京が平壌に中国政治上最重要行事のため挑発行為を差し控えるよう告げたのか。あるいは北朝鮮も中国を怒らせる事態は避けようとしたのか。いずれにせよ挑発行為がないことから中国が真剣になれば北朝鮮を制御できることを証明している。
  19. 金正恩が党大会に熱烈な祝辞を送ったのは中国が北朝鮮を制御できる別の証拠なのか北朝鮮が自らの立場をわきまえている証だろう。
  20. 歴代米政権は中朝による欺瞞否定戦術に翻弄されてきた。トランプは中国に対して圧倒的に強い経済財政力を行使することでだまされることを避けられるはずだ。
  21. トランプは習近平に結び目をほどけ、しかも今すぐに行えと伝えるべきだ。■
Gordon G. Chang is the author of The Coming Collapse of China. Follow him on Twitter @GordonGChang.
Image: U.S. President Donald Trump talks with reporters accompanied by First Lady Melania Trump as they depart the White House for a trip to Asia, in Washington D.C., U.S. November 3, 2017. REUTERS/Carlos Barria​

スコーピオンのサウジアラビア売込みは成功するのか、ドバイ航空ショーに注目


以前から中東某国からの引き合いがあると豪語してきたテキストロンですがまだ成約への道は遠いようです。米空軍の軽攻撃機実証では芳しくない評価だったようですが何が問題だったのでしょうか。


Saudi Arabia Puts Textron's Scorpion Light Attack Jet Through Its Paces 

サウジアラビアがテキストロンのスコーピオン軽攻撃機に関心を示す

Could the Kingdom be the adaptable jet's first customer? 

同王国がスコーピオン初の採用国になるのか



TEXTRON AIRLAND
BY JOSEPH TREVITHICKNOVEMBER 3, 2017

  1. サウジアラビアがテキストロン・エアランドのスコーピオン軽攻撃機の評価を開始した模様だ。ただし残虐なイエメン介入をやめる兆候がない同国へ反感が広まる中で商談は難航しそうだし、破談の可能性もある。
  2. 飛行経路追跡ウェブサイトで王立サウジ空軍のキングファイサル航空基地を2017年11月に離陸するスコーピオン実証機民間登録番号N532TXを発見した。FlightGlobalが砂漠上空を飛ぶ同機がを先に確認しており、テキストロンが今年のドバイ航空ショーに出展するとの観測がある。ショーは11月12日開幕する。
  3. 「スコーピオンの性能は(サウジの)要求にぴったりです」とテキストロンCEOスコット・ドネリーScott Donnellyが2017年7月に報道陣に語っていた。商談は「まだ初期段階」と述べ、正式商談ではないと強調していた。
  4. だがサウジはスコーピオンにぴったりな販売先と言える。ドナルド・トランプ大統領が同国を2017年5月公式訪問し両国は1100億ドル相当の武器売却で合意していた。
USAF
スコーピオン試作機N532TX
  1. うち20億ドルが「軽量近接航空支援」機材の想定だった。内容は不明だし、サウジが何機調達する想定かわからない。
  2. 販売提案はいわゆる「意向書」の形で「将来の防衛能力整備の可能性」に関心を表明した同盟国への米政府の対応だ。案件は最終ではなく最後には議会および国務省の承認が必要がある。
  3. テキストロンがスコーピオンのサウジ売り込みに力を入れているのは間違いない。同社は2012年に同機開発を開始し2013年12月に試作機を初飛行させたがまだ顧客がない。
  4. 米空軍は軽攻撃機(OA-X)候補各機の実証を2017年8月30日に終了した。ただし、空軍は同機が第二段階実証に進むのに必要な性能を有していないと明確に述べている。ただし第二段階はまだ実現していない。
  5. テキストロンが自社資金で始めた同機事業は運用経費、保守点検経費ともに低水準にすべく複合材や民生既成部品を多用し「プラグアンドプレイ」のモジュラー構造のため必要に応じエイビオニクス他を将来の高性能化に対応して搭載できる。エンジンは既成品のハネウェルTFE731ターボファン双発で民間ビジネスジェットと共通だ。
  6. スコーピオンは競合機より大型で重量も大きい。テキストロン自身のAT-6ウルバリン、知名度が高いエンブラエルのスーパーツカーノはみな単発ターボプロップ機だ。その他に農薬散布機を原型にした競合機もある。
  7. スコーピオンには比較的大型のミッションベイがあり、偵察カメラ、レーダー妨害装置、他の搭載が可能。実証では引き込み式センサータレットを機首下に搭載し電子光学赤外線フルモーションビデオカメラ数台を付けていた。
  8. 主翼下パイロン6箇所に各種兵装の搭載が可能だ。精密誘導爆弾、ミサイル、ガンポッドだ。2017年6月にはテキストロンはGBU-12/Bレーザー誘導爆弾、高性能精密攻撃兵器システムII(APKWSII)の70mmレーザー誘導度ロケット弾を実弾発射している。さらにGBU-39/B小口径爆弾(SDB)、共用直接攻撃弾(JDAM)、複合モード対応可能のブリムストーンミサイル、GBU-53/B(SDBII)の搭載も検討中だ。
TEXTRON AIRLAND
APKWS IIレーザー誘導ロケット弾を発射するスコーピオン試作機
  1. サウジに導入する場合は目標捕捉センサー一式と精密誘導兵器の組み合わせが理想的で、イエメン作戦に低経費で投入できる。イエメンではイラン支援を受けたフーシ反乱勢力等と戦っている。現在はF-15Sイーグルおよびユーロファイター・タイフーンの他可変翼式のパナヴィア・トーネードを投入して戦闘員を攻撃している。
  2. AT-6やスーパーツカーノと言った小型機と違い、スコーピオンは自機防御装備も搭載可能なのでイエメンの対空火砲に対し残存性が高い。実際のフーシの防空装備の性能は不明だが、旧イエメン軍のSA-2地対空ミサイルを入手している可能性がある。また携帯型防空装備(MANPADS)が相当数行き渡っている。
  3. サウジ軍はイエメン介入をはじめた2015年以降に十数機の固定翼機回転翼機を喪失している。直近ではタイフーン一機が10月に墜落しており、フーシが撃墜を主張しサウジ側が否定するのはいつも通りだ。サウジはモロッコ、バーレーン、UAEの軍用機にも被害が出ていると認める。
  4. 対地捜索レーダーを搭載すればスコーピオンなら低空低速国境パトロ―ル飛行にも最適で小舟艇や無人機の侵入に対応できる。現在は気象レーダーしか搭載していないがレオナルドのグリフォやEltaのEL/M-2032といった軍用パルスドップラーレーダーを搭載すれば理想的だろう
  5. サウジ側は同機の能力追加を評価するのではないか。フーシは国境を越えて活動を展開している。連合国側艦船に対艦ミサイルやバウ発物をつんだ遠隔操縦ボートで攻撃したほか紅海とアデン湾をむすぶマンデブ海峡で機雷敷設もしている。自殺攻撃無人機で防空装備の攻撃も狙ってくるだろう。
  6. スコーピオンに精密攻撃可能なAPKWSIIロケット弾と自動機関銃ポッドを搭載すればコストで効果的でかつ柔軟に脅威対象を対処できる。軽攻撃機部隊はサウジ空軍の高性能機の負担を軽減し本来の任務であるイラン警戒に投入できる。
  7. だがサウジとテキストロンの商談ではイエメン情勢が大きく影響し政治面に左右されそうだ。サウジが意図的に医療施設や民間インフラを国際法の保護を無視して攻撃したようだ。このためイエメンでは飢餓と伝染病の蔓延が発生した。
  8. このため米議会の共和民主両党議員はサウジ主導の軍事作戦の支援を快く思わない傾向が強まっている。米軍は空中給油、補給活動、情報共有を提供している。11月には下院議員数名がこの問題を取り上げアルカイダテロリストまたは「関連勢力」とは無関係の相手に対する米軍の関与を終了させようとしている。この定義だとフーシが対象外となる可能性がある。
  9. 下院版の国防予算案にも同様の条項が入っている。上院版にないため今後両院で最終形への調整が必要だ。
  10. このためサウジ作戦への米支援には政治面の要素が大きく作用し、スコーピオン導入も例外ではない。トランプ政権はオバマ大統領が課したサウジアラビアへの軍事装備提供の制限を撤廃しており、サウジの期待する内容には十分こたえられるようだ。
  11. サルマン・ビン・アブラジズ・アル・サウド国王King Salman bin Abdulaziz Al Saudが2017年10月にモスクワ訪問に踏み切り各種装備導入で合意を取り付けている。米国が躊躇するのならクレムリンにかわりにするだけだ。
  12. 双発練習機ヤコブレフYak-130がスコーピオンの競争相手になりそうだ。サウジ-ロシア間では航空機は具体的な想定はないようだが、クレムリンには以前からの米国の中東同盟国に高性能機材を売り込む絶好の機会がやってきたわけでUAEにはすでにSu-35SフランカーE十数機の販売が進行中だ。
  13. サウジアラビア向けのテスト飛行とは関係なく、テキストロンはドバイ航空ショーで重要な発表をしそうだ。■

2017年11月4日土曜日

★新しい日本の防衛力整備>日米合同運用部隊が生まれたらこうなる



今回の総選挙が国内の何とか学園が争点ではなく、日本に期待される国際的な役割を本当に日本が果たす意思があるのかを試されていたことのですね。自分の議席を守ることにきゅうきゅうとして平気で主張を変える人も現れたようですが、日本の安全は国境線ではなく利益線にあることは明らかです。どこまでの視野と構想力を持っているのか政党別に潜在能力を試されたのです。


Japan's Military Provides America with New Strategic Options

日本の軍事力が新しい戦略選択肢を米国に提供する

Japanese Prime Minister Shinzo Abe reviews Japanese Self-Defence Forces' (SDF) troops during the annual SDF ceremony at Asaka Base, Japan
November 1, 2017


選挙大勝で安倍晋三首相と自民党はいよいよ日本国憲法第九条の改正に向かうと見る専門家が多いが改正は以前ほどの重要度は失ったと見られ、中国、北朝鮮の動きで安倍首相に従前の制約を緩和する作用をもたらし選挙勝利にもつながった。第九条に手をかけなくても日本が手に入れた兵力放射能力は日本の外交政策を支える手段となり、同時に同盟各国にも裨益することで域内安定度が高まっている。米軍規模が望ましい水準以下になっている現状からすれば日本の軍事力強化は日米両国に望ましい効果が生まれる。

憲法第九条をめぐる変遷
今日の日本は世界第七位の軍事支出国で、イージス搭載水上艦、高性能通常型潜水艦、ヘリコプター駆逐艦(米式にいえば両用艦)、F-35があるが日本では軍事力となるとまず憲法に触れるのが通常だ。70年前に制定された第九条が以下定めている。

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない

 第二次大戦敗退直後に起草されたこの内容は将来の帝国主義的野望を未然に防ぐ目的があった。当時憲法改正にあたった芦田均は再武装化に含みを持たせる文言を最終案とした。1950年に第九条の解釈を見直し「警察予備隊」創設に動いた。続いて再度の見直しで保安隊となり、三回目の見直しで自衛隊(SDF)が発足した。陸海空部隊は第九条をそのまま解釈すれば憲法違反と言われても仕方がない存在だ。安倍首相は2014年に第四回目の解釈変更を明示、集団的安全保障を限定的ながら導入した。日本の防衛装備の進展を追う向きはこの点を見逃しがちで世界有数の実力を有する自衛隊のこの先を見通せないままだ。
 解釈変更の背景には日本を取り巻く安全保障環境の変化とともに日本自身の防衛力整備の加速化がある。周辺国の動きがSDFを伸ばしているともいえる。2005年の防衛大綱では中国を潜在脅威と表現したが、これは1976年以降初めての記述だった。2016年のスクランブル回数は4年で3百パーセント増(851回→1168回)で中国機の動向に呼応したものだ。2013年度防衛白書では中国とともに北朝鮮DPRKの動向にも懸念を表明しとくにDPRKのミサイル核開発を日本自身の安全への脅威としていた。
 自衛隊予算の変化そのものがDPRKと中国への対応のあらわれだ。2011年度予算での最優先事項は「効果的な抑止力と対応」とされ最上位優先事項の抑止効果は「情報収集、哨戒、監視の各行動」「遠隔島しょ部での各種状況の対処」「サイバー攻撃への対処」だった。これが2012年度には「近隣海洋部及ぶ上空の安全確保」「遠隔島しょ部への攻撃への対処」「サイバー攻撃への対処」にかわり、2017年度では再び「日本周辺の海域空域の安全」になり、「遠隔島しょ部への攻撃」に対処し同時に弾道ミサイル攻撃へも対処するとした。SDF予算は2012年以降毎年増額されている。こうした変化で大規模かつ近代的戦力を整備する親密な同盟国が米国に生まれている。日本政府の国際面の関心事項は米国と相似し、そのひとつに「安定、透明性、予測可能性を実現する国際環境」の希求がある。

日米合同軍事作戦で生まれる効果とは
 このような同盟国があることは国益実現のため展開できる兵力に限界がある米軍には頼りになる。「米国の財政が限定される中で同盟国・協力国に一層多くを求めるようになっている」とデレク・レヴァーソンDerek ReveronExporting Securityで述べている。あるべき規模より小さいのが米海軍で拡大の可能性はないのに需要は高まるばかりでアジア太平洋でこの傾向が強い。その解決策が海上自衛隊(JMSDF)との共同運用で、艦艇数を増やさずに兵力投射需要を実現できる。両国の方向性が合致すれば効果があがる。米海軍はJSMDF艦船115隻からの恩恵を受ける。
 共同作戦運航により兵力投射効果が上がるだけでなく域内抑止効果も引き上がる。両国合同部隊はプレゼンスもさることながら中国やDPRKへの対応力も上がる。たとえばJMSDFの新鋭ヘリコプター駆逐艦、いずもおよびかがの両艦はワスプ級強襲揚陸艦に相当し、日本はF-35Bを未導入だが、両艦は同機運用が可能なはずだ。そこで海兵隊のF-35Bを搭載すれば自衛隊は第九条に従い防衛任務に専念しつつ海兵隊は兵力投射手段が新たに手に入る。抑止効果を考えれば中国あるいはDPRKが攻撃してくればただちに両国の対応を招くことになる。自衛艦を攻撃すれば米海兵隊装備・人員の喪失につながりかねない。他方でF-35に攻撃を仕掛ければJMSDFが海兵隊機材の防御に動く。補完の抑止力シナリオでは米空母の護衛実施をJMSDFに増やす、また自衛艦を米海軍の航行の自由作戦に参加させることがある。いずれにせよ抑止効果と戦力規模が増えるだけでなくDPRKや中国の挑発行為は強力な軍事力を有する日米両国の即座対応につながるリスク要因となる。

日本の軍事力増強のもたらす意味
 安倍政権にはSDF増強を続けながら効果的な軍事スタンスを取るのであれば大きな課題が二点残る。まず、日本国民の支持を取り付ける必要がある。憲法解釈の変更や安全保障法案では相当の反対が見られた。安倍政権に批判的な向きからは2014年、2017年つまり再解釈と憲法改正方針の発表から日本国民が大胆な軍事力重視の姿勢は支持していないと見る向きがある。それでも中国とDPRKが一向に行動を収束する気配がないことからここにきて反対姿勢は減ってきたようだ。2014年と2017年を比較するとデモ参加者は減っている。また各種調査では憲法改正の支持は反対を上回っており、ある調査では93パーセントがDPRKを脅威とみなしている。安倍首相が今回選挙に大勝したことで日本国民は大胆な政策を受け入れやすくなっているといえよう。
 二番目は日本が軍事行動を増強した際に近隣国が示す反応だ。日韓関係が緊張する可能性があり、韓国が第二次大戦にまでさかのぼる日本の行いを繰り返し抗議していることを考えると日本の軍国化として非難しそうだ。だがここでもDPRKの動向ですべて吹っ飛ぶ可能性はある。安倍首相が2015年に慰安婦問題で正式謝罪したことで日韓両国は相互訪問を再開し、DPRK向け制裁措置強化や日米韓三カ国協力体制の話もある。韓国が中国の抗議の中で米国THAAD装備導入に動いたことで共通基盤づくりにつながるかもしれない。日本はここではシステムパートナーの地位を確立している。日韓間に確かに緊張があるが、DPRKや中国の脅威を両国がともに受けていることから対立どころではないはずだ。

結語
 安倍政権がSDFの能力拡大に努めた結果、第九条の再解釈を進める動きと所属党の選挙大勝とともに、日米両国にアジア太平洋地区の安定と抑止効果を軍事行動を通じて引き上げる好機がやってきた。両国の合同戦力は数の上でも抑止効果でも中国やDPRKの行動に単独対応する場合より効果的に対処できる。憲法改正がなくても両国の軍組織は目的を共有する限り中国やDPRKに対応する場合で共同行動の制約はない。合同部隊を節度を持って運用すれば望ましい域内秩序を守りつつ日本の防衛大綱が言う「安定、透明性、予測可能性のある国際環境」の促進維持が可能となるはずだ。■
Jonathan W. Kuntz is an active duty major in the U.S. Air Force, a fighter pilot and student at the U.S. Naval War College. These represent my own views and do not represent the official views of the Department of Defense.
Image: Reuters