2017年12月3日日曜日

中国が北朝鮮侵攻する日が来るのか



 

Would China Invade North Korea?

中国は北朝鮮に侵攻するのか

December 1, 2017


鮮半島で軍事行動が論じられる中、話題に出てこない国は中国だ。中華人民共和国は予測不可能で悪名高い隣国と880マイルにわたり国境線で接しており、強大な軍部隊で国境の安全はなにがあっても確保する姿勢だ。軍事行動が現実になるとすれば北京の選択肢、軍事力行使の選択肢はなんだろうか。
  1. 北朝鮮は中国にはありがたい存在でもあり面倒な存在でもある。朝鮮民主人民共和国は米国等に公然と敵意を示す独立国だ。同国の兵力は中国の抑止力となる。このため中朝国境の南に構える政権は米勢力圏にことごとく反発し自国防衛体制を整えている。
  2. 状況は完ぺきとはいいがたい。北朝鮮はずっと中国の属国だったが両国のつながりはここにきて悪化している。火のつくような平壌の反米論調と核兵器開発が米国を挑発し、米中間の大きな争点になっている。北朝鮮の目に余る国際規範違反は中国政府の忍耐力を試している。
  3. 中国が北朝鮮への介入準備に入ったとのうわさが絶えない。北政権崩壊後か北が中国に深刻な脅威になった場合を想定している。その準備内容は北京政府以外には知りようがないが、シナリオは紹介できる。一つ確かなことがある。中国が北朝鮮に入った時点で金正恩あるいは後継者はそのまま残ることはできない。
  4. 可能性があるシナリオは北政権崩壊後に中国が北朝鮮に進軍することだ。軍事クーデターやシリアのような反乱の勃発でも現政権は転覆される。しかも急速に。これが発生すると、国内食糧配給が止まり、難民が国外脱出を試みるだろう。韓国との国境は要塞化されており、ロシア国境は遠く、中国国境越えが一番楽だ。
  5. 中国政府は国内治安維持に強迫観念を持ち、難民が数百万単位で中国北部に入るのは許容できない。中国の観点では難民は北朝鮮国境を超えない方がいい。政権崩壊の場合は人民解放軍(PLA)の北方軍区の三個軍団が南進する。選択肢として北朝鮮を緩衝地帯にしても、政治経済上の不安定さを解決できない。PLAが南進するのであれば、平壌まで一気に進軍して傀儡政権を樹立し、一定の安定度を確立しようとするだろう。
  6. 最も可能性が高いシナリオが全面侵攻で現行の北政権を転覆することだ。朝鮮人民軍(KPA)には装甲機械化歩兵師団、砲兵隊が16軍区に展開しているが、中朝国境に配備しているのはうち2個だけだ。KPAのほぼ7割は平壌と元山より南の地域に集中し、韓国への侵攻に備えている。
  7. 中国の北方軍区に78、79、80の各地上軍団がある。米陸軍兵団に相当し、混成旅団18個を特殊作戦旅団、航空旅団、砲兵旅団、工兵旅団が各3支援する。これでPLA軍は紙の上では米陸軍戦闘師団5-6個に相当する戦力となる。さらに中国空軍の航空攻撃師団2個の支援があり、PLA三個軍団は迅速に渡河しKPAの背後から南方へ進軍する。
  8. KPAはどこまで抵抗するだろうか。状況次第だ。平壌政権がその時点で健在なら中国部隊は相当の抵抗にあうかもしれない。燃料不足で北朝鮮の残りの14軍団は移動がままならず、中国軍を迎え撃つことができない。政権が崩壊すればKPAは指導者のいない飢えた集団になるが武装していることは変わりない。中国はKPA首脳部と良好な関係作りにつとめ中国軍進駐に抵抗することなく秩序維持を求めるはずだ。
  9. PLAが戦時に機能するかは予見できない。中国の大規模軍事行動は1979年の対ベトナム戦が最後だ。古めかしく効果が低い戦術を使った中国地上軍は戦場で鍛えられたベトナム軍の前に大損害を被り、最高司令官鄧小平がこのような代償の高い戦いは繰り返さないぞと誓ったほどだ。となるとPLAが確実に任務実行できると確信できて初めて中国は攻撃命令を出すだろう。
  10. ただし今日のPLAは当時とは比べようのない野獣になっている。PLAには戦闘経験豊かな米陸軍の技術水準はないが、KPAよりは上のはずだ。習近平は繰り返し「戦闘可能態勢」を求めており、戦闘以外に汚職追放にも言及しているが高機動機械化戦への備えが平壌への進軍で効果を見せるだろう。
  11. 中国軍の進撃で最大の危険は米韓連合軍も同時に北に進軍することだ。北から、南から進軍する部隊間で衝突が発生する可能性は極めて現実的だろう。
  12. 平壌政権の全面崩壊を防ぐべく中国がすぐにも進軍する可能性は低い。経済、政治、軍事上の対価が国境地帯の軍部隊を使った進軍の代償より多い。少なくとも今は。ただし計算条件が変われば躊躇せず隣国に介入してくるだろう。ただし中国、韓国あるいは他国がその際の結果を想定し準備しているかは別の問題だ。■
Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009, he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.


記録 アルゼンチン潜水艦からの最後の交信内容



尻切れトンボの内容ですがご容赦ください。捜索はまだ続いており、艦体は発見されていません。爆発がなぜ起こったのか解明が必要です。スノーケルから海水が入るとは荒天だったので安定する潜航のまま航行中に大波をかぶったのでしょうか。乗員の冥福を祈ります。


Water Entered Missing Argentine Sub Through Snorkel Before Detected Explosion 海中爆発音の探知前に消息不明アルゼンチン潜水艦のスノーケルから海水侵入していた

ARA San Juan

 By: Ben Werner
November 29, 2017 4:53 PM


アルゼンチン海軍本部が行方不明の潜水艦ARA サンフアンの最後の交信記録を発表した。同国政府の要望に対応し各国が救難部隊を派遣中。

11月15日午前12時30分ごろ、サンフアン艦長よりスノーケルから海水が艦内に入ったと海軍本部に衛星電話で連絡してきた。海水で前方区画のバッテリーがショートし、スパークで火災か煙が充満したとのアルゼンチン海軍発表を国内ニュース専門局が伝えている。CNNがこの発表文を英語翻訳している。「海水が空気取り入れ口から第三バッテリー部門に入り回路ショートを発生させバッテリー設置場所から火災が発生。艦首外側バッテリーが使用不能となり、現在は回路が分断状態で潜航中。乗組員に関し報告事項なし。連絡を続ける」

艦長は不良バッテリーを分離したと報告しており、サンファンは後部バッテリーで潜航を続けたとアルゼンチン海軍は伝えている。サンファンはドイツ製TR-1700型潜水艦でディーゼル電気推進式だ。潜航時はバッテリーで推進する。

11月15日午前6時:艦長は衛星通話と同じ内容を電文で伝えてきた。これはアルゼンチン海軍の標準規則によるもの。

午前7時30分: アルゼンチン海軍が同艦最後の通信を受信し艦長からサンファンは引き続き同じ針路で航行中と伝えてきた。

午前10時31分: サンファンの推定位置とほぼ同じ地点で海中爆発音が検知された。一週間後に捜索活動はこの地点を集中的に扱ったが、米海軍他各国の対潜専門家は爆発は非原子力あるが異常事態としてアルゼンチン海軍に通知した。アルゼンチン海軍は米連絡あるまで水中爆発は承知していなかったと述べている。

11月18日:救難活動支援の要請にこたえ米海軍が水中捜索救難チームを派遣し各国に加わる。米海軍は編成されたばかりの第一無人水中機部隊(ハワイ真珠湾基地)がブルーフィン-12D深海無人水中機(UUV)一基とアイヴァー580UUV3基を搬送した。P-8Aポセイドンも捜索に加わった。■


追記 アルゼンチン海軍は11月30日に捜索を打ち切った。557千平方マイルの海域を捜索したがなにも見つけられなかった。



2017年12月2日土曜日

新型電子戦機J-16Dは全方位航空優勢を目指す中国の動きの象徴だ


 


China's New J-16D Aircraft Might Have a Terrifying New Military Capability 

中国の新型J-16Dの強力な能力は要注意

November 30, 2017

海軍のEA-18Gグラウラー電子攻撃機はジャミング任務に特化した数少ない機材のひとつでジャミングに加え友軍機に向けられるミサイルを誘導するレーダーの破壊も行うはずだ。このミッションはSEAD(敵防空網制圧)と呼ばれる。今日の空軍作戦で味方の損耗を防げるかはSEADの成否にかかっているといってよい。
  1. グラウラーはF-18スーパーホーネット戦闘機から派生し、以前の電子戦機より高速で操縦性、兵装も強化しており、援護する友軍機の速度に追随でき敵防空網に従来より接近できる
  2. 中国空軍は海外の役に立つ考えを堂々とコピーしておきながら「中国の特性」を加味したと述べることが多い。そのため自分たちもグラウラーを作っても不思議ではない。
  3. 問題の機体は複座の瀋陽J-16 Red Eagle 攻撃戦闘機で、これもロシアのスホイSu-30MKKフランカーのコピーだ。ロシア原型からエイビオニクスが改良されアクティブ電子スキャンアレイレーダー(AESA)の搭載が特徴だ。中国は信頼性高いジェットエンジン国産化に依然苦労しているが、電子製品では成功しており、民生技術を流用しているのだろう。
  4. J-16DのDは電子の頭文字で初飛行は2015年12月18日だった。
  5. J-16Dは30mm機関砲、赤外線センサーを外し、ドッグファイトは想定外だ。かわりにアンテナ多数と機体一体型電子戦アレイがついた。レドームは高性能AESAレーダー搭載を想定しているのだろう。重要なのは翼端に付いた電子戦用ポッドでEA-18GグラウラーのALQ-218電子支援ポッドと類似している。レーダー周波数を解明し、発信源をつきとめるのが役割だ。この情報をジャミングにも使い、攻撃にも役立てる。
  6. PLAAFは新型機説明会を開かないので、わかっているのはこれですべてである。次は役割を推測してみよう。
  7. J-16Dはジャミングと対レーダー攻撃を想定して機体を準備し、ジャミングポッド二三個を主翼と機体下に取付け、ジャミングポッド自体にもAESA技術を導入しているだろう。
  8. ハードポイント12個が残り武装搭載に使える。中国には対レーダーミサイル(ARM)が三種あり、かなりの距離から 敵レーダーをホーミングできるはずだ。CM-103ミサイルは射程62マイルで176ポンド弾頭で艦艇・地上レーダーを破壊する。ロシアKh-31Pを国産化したミサイルはYJ-91と呼ぶ。さらにPL-12空対空ミサイルからLD-10ARMミサイルが生まれた。J-16Dは他の兵装も搭載し戦闘に臨むだろう。
  9. 中国は他の戦闘爆撃機でも電子戦装備を搭載しており、国産複座のJH-7Flying Leopardは240機ほどがPLA空軍および海軍で運用中だ。同機の最高速度はマッハ1.75で長距離運用が可能で兵装20千ポンドを搭載し、対レーダーミサイルも含む。原型のJH-7と改良型JH-7Aがジャミングポッドを搭載する写真が出回っている。ただし、同機の電子戦能力は専用機より劣るだろう。
  10. ジャミング支援には別の機材もある。大型で鈍足だがY-8GX、Y-9GX輸送機に戦術ジャマー他電子戦装備を搭載しており、HD-6電子戦機はH-6爆撃機が原型だ。山東Xianglong “Soaring Dragon” 無人機にも戦術ジャミング能力がつく可能性がある。
  11. 艦載版のJ-16Dの可能性もある。J-15 Flying Shark 戦闘機が001型空母二隻に搭載されているが、これもフランカーの流れをくむ機体で複座型に改装したJ-15SDと同様の発展は可能に思える。ただしJ-15のペイロードが低いのが制約だ。これは中国空母のスキージャンプ式発艦による制約でもある。いずれにせよJ-16Dがどこまでどこまで発展するかは見えない。.
  12. 接近阻止領域拒否戦略でミサイルを利用している中国は敵の防空網にどう対処するだろうか。もちろんSEAD機は台湾作戦や可能性は低いが日本との交戦に投入されるはずだ。ただし電子戦機の主な想定対象は米海軍水上艦艇で、SM-2、SM-6、シースパロウ対空ミサイルが飛び交う環境である。米、日、韓の稼働中各国に加えまもなくオーストラリア海軍もイージス戦闘システムを稼働させる。
  13. 例を挙げよう。中国記事ではJH-7をYJ-91対レーダーミサイルと電子戦装備で武装すればイージス艦も「悪夢」に落とせるとしている。もちろんレーダージャミングのボタンを押すだけで勝利は手に入らないが、攻撃側がミサイル、航空機で飽和攻撃をかければ防御能力を圧倒するはずだ。
  14. 中国側は海外の戦役事例に関心はないようだ。ただし、太平洋の軍事バランスを変えるのが同国の狙いだ。J-16Dのような機体は人民解放軍が特殊用途機の整備に力を入れて、あらゆる局面で優勢な航空戦力の実現をめざす証だ。まさしくこれは米軍の目指す方向と同じである。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Su-30SM1戦闘機が登場、スホイ優勢の構図は崩れそうもないですね


 


Russia's New Sukhoi Su-30SM1 Fighter: Could It Crush America's Best Fighters?

ロシアの新型スホイSu-30SM1戦闘機は米国の最強戦闘機に勝てるのか。
November 28, 2017

シアがスホイSu-30SMフランカーHの開発を完了し、エイビオニクスと兵装類を改良している。
  1. Su-30SM1と呼称され、シリア作戦の戦訓を盛り込んでいるとロシア紙イズベスチアが伝えている。
  2. 記事によれば合同航空機企業傘下のイルクートがSu-30SM1を生産中ですでに数機が完成しているという。ただし国防産業筋はThe National Interest にイルクーツク工場内に一機しかないと述べている。
  3. Su-30SM1は兵装搭載装備を見直して精密誘導兵器のKAB-250やХ-59МК2対地攻撃ミサイルを搭載とイズベスチア記事は述べている。KAB-250はロシア版の小口径爆弾(250ポンド)でGPS/GLONASS補正付き完成誘導あるいはレーザー誘導式だ。 Х-59МК2 はX-59対艦ミサイルを対地攻撃用にしたものだが、対艦能力を維持しているか不明だ。
  4. イズベスチア記事はエイビオニクスの改良に触れているが、詳細は不明。おそらく、センサー装備、通信機器が以前は弱点だったので改良されたのだろう。
  5. Su-30SMで改良が進むこと自体が驚きだ。ロシア空軍はシリア作戦で多くの戦訓を学んでいるはずでSu-35フランカーEやSu-34フルバック爆撃機に生かされている。
  6. 今年中にSu-30SMは17機が納入予定でSu-35SやSu-34とロシア空軍の主力機となり、さらにSu-57PAK-SAが加わりそうだ。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @Davemajumdar.
Image: Reuters.

2017年12月1日金曜日

速報 北朝鮮新型ICBMファソン-15の性能予想


The New Hwasong-15 ICBM: A Significant Improvement That May be Ready as Early as 2018

新型ICBMファソン-15は相当の改良点が加わり2018年に実戦化されそうだ

NOVEMBER 30, 2017

朝鮮公開の映像画像を見るとファソン-15は以前のファソン-14の改良型とのちがいがわかる。ファソン-15はファソン-14から相当大型化され計算値では新型ミサイルは大型核兵器を米本土まで到達する能力がある。ファソン-15のサイズならおとりなど対抗装備で米国の国家ミサイル防衛(NMD)を無効にできるだろう。ファソン-15の性能・信頼性を確かめるにはまだ発射テスト数回が必要だが、防護の仕組みができていれば大気圏再突入の過酷な条件に弾頭部も耐えられるだろう。
ファソン-15は二段式液体燃料ICBMで、写真を見ると第一段にはエンジン二基がついており外観はファソン-14と似ている。ファソン-15はソ連時代開発のRD-251と酷似していることから推力は80トン程度の可能性がある。ミサイル質量が40トンから50トンと見られるので妥当な規模だ。二段目の構造がよくわからないが、大きさからみてファソン-14ちり50パーセント増の推進剤を搭載していだろう。合わせると控えめにみてもファソン-15の運搬能力はペイロード1トンでも米本土各地に到達可能なようだ。北朝鮮の核弾頭が700キロを下回る重量なのは確実で、もっと軽い可能性もある。
今回のミサイルには新型制御機構がついており以前より操作が簡単かつ効果的になった。スカッドを原型としたミサイルはジェット弁でブースト段階の制御を行っていた。ファソン-12、-14は小型エンジン四基を主推力室に平行に取付け制御していた。北朝鮮技術陣はファソン-15の主エンジンを回転台座に乗せ各エンジンの方向を変えて排気ガスで制御する仕組みを実現した。
二段目がよくわからない。可能性が高いのはソ連R-27ミサイルの小型エンジン四基を使っていることだろう。この事から二段目の出力が低いことが想像されるが、米本土を狙うミサイルであることに変わりない。あるいは第二段用に新型エンジンを搭載しているかもしれない。それによりファソン-15は高性能となっている可能性がある。
もうひとつ重要な改良点がある。ペイロードを宇宙空間で速度位置調整できるようになり、ミサイルの精度が相当上がっている。またおとりの投入も可能だろう。ミサイルの推力重量比から見て弾頭部に対抗装置を搭載できるはずだが、今回の発射時に搭載されていたか不明だ。
ファソン-15で北朝鮮の米国攻撃能力が大きく向上されたと言える。通常軌道によるテストが最低でも一二回必要なはずだ。今後のテスト発射で信頼性が判明し、大気圏再突入時の性能も試すはずだ。ただし、低信頼性でいいのであれば今後半年以内に二三回のテストで十分で金正恩はファソン-15を実戦配備したと宣言できるだろう。■

70年使ってきたボフォース40mm砲を最後に使うAC-130

The USAF Is Rebuilding World War II-Era 40mm Shells for its AC-130U Gunship

米空軍が第二次大戦時と同じ40mm砲弾をAC-130Uガンシップ用に再生産させる

The service is the last user of the Bofors cannon in the US military and has had to go hunting for more ammunition. 

空軍がボフォース砲最後のユーザーになり砲弾探しに苦労する

CLEMENS VASTERS VIA WIKIMEDIA
BY JOSEPH TREVITHICKNOVEMBER 29, 2017


空軍が第二次大戦中の40mm機関砲の砲弾数万発を調達する。AC-130UスプーキーII用だ。同装備は兵站上の悪夢になり空軍は使用停止の予定だったが、旧式とは言えあまりにも効果があり引き続き稼働させている。
  1. 2017年11月、米空軍は第780試験装備飛行隊(フロリダ州エグリン空軍基地)が改良版40mm高性能弾PGU-9D/Bのテストを開始したと発表。新型弾は信管を変え安全度を増した。真鍮製薬きょうには製造年が1944年のものもある。
  2. 空軍は旧式弾およそ80千発を新仕様に転換する予定だ。780飛行隊が作業工程を開発した。空軍特殊軍団(AFSOC)がAC-130ガンシップ全機を運用しており、U型以外に新しいAC-130WスティンガーIIと開発中AC-130Jゴーストライダーも含む。
  3. この事からAC-130Uと搭載する40mmボフォース砲の有益さが分かる。空軍公式記録によれば第四特殊作戦飛行隊配属の四機だけで2013年11月から2014年6月にかけ4,000戦闘時間投入され機体と乗員はのべ1,175日も戦闘地区を飛んだ。
  4. 2017年10月に第四飛行隊のAC-130Uの一機コールサイン・スプーキー43の乗員が空軍殊勲賞を2016年のアフガニスタンでのミッションを理由に授与された。同機は特殊部隊を三方向から待ち伏せ攻撃してきた戦闘員集団を蹴散らし、40mm砲や105mm榴弾砲の威力を上げようと友軍に危険なほど接近飛行した。
  5. 現時点でスプーキーIIは米軍で同装備を使う唯一の機材で、PGU-9弾に加え、爆発焼夷弾、装甲貫徹弾を織り交ぜて運用している。
  6. 米軍は原設計スウェーデンの同装備を第二次大戦中に対空火砲に採用した。クライスラーがライセンス生産で60千門を供給し、対空火砲として1970年代末まで使われていた。
  7. だが1969年に空軍は全く別の用途で同装備を調達した。AC-130A、AC-119K両ガンシップがラオスのホーチミン街道の南北を飛び北ベトナムから南ベトナムへ移動する人員、兵器、物資の移動をくいとめようとしていた。
  8. 北ベトナムは街道を確保し防空装備まで準備し、37mm、57mm砲を設置した。このため低空低速飛行の輸送機には特に脅威になる。
  9. 20mmヴァルカン砲二門を40mm砲に取換えたAC-130は高高度で敵防空兵力から自由に飛びながら地上のトラックや人員を狙った。間に合わせの兵装が効果抜群だったのでC-130Eも強力な兵装に変えられた。
  10. その後E型で40mmボフォース砲はさらに大きな105mm榴弾砲に変更され、AC-130H、AC-130Uに継承された。空軍はH型を2015年に全廃しこの兵装を搭載するのはU型だけになって今日に至っている。
  11. 空軍は2007年に実験でスプーキーIIの40mm砲と25mmGAU-12/U回転砲のかわりに30mm二門を搭載したがテストは予期通りの成果を生まず、精度が落ちる弊害が生まれ機体は元の使用に戻された。
  12. 30mm砲はAC-130Wで採用されAC-130Jでも同様だ。当War Zoneでは同装備で依然として精度と信頼性の問題が残ると2017年10月に指摘している。
  13. ボフォース砲も供用開始から70年、ガンシップ搭載から50年たち保守管理が大変になってきた。ボフォースは現在英BAEシステムズの事業部で、今も40mm砲を製造するが現モデルは以前と違う砲弾を使う。
  14. 旧式弾の確保が一層難しくなっており、空軍は既存余剰弾の再生産を決めたのはこのためだが、弾薬の確保だけが問題ではない。砲身は永久に使えるわけではなく長年の酷使で照準精度が落ち使用に危険が感じられるほどになった。2013年までに空軍は砲身を単価130万ドルで特注調達せざるを得なくなった。
  15. その前年にAFSOCはギリシアにチームを送り2005年に第一線を退いた余剰装備の買い付けを試みた。その結果、140門近くの砲身他骨董品を安価に購入し、装備を維持し、節約効果14百万ドルを生んだ。
  16. この状況は長く続かなかった。2015年に空軍はAC-130Uの退役を開始した。今後は廃棄機材からの回収が、新型AC-130Jが初期作戦能力を獲得する2018年まで続くことになる。
  17. スプーキーIIの用途廃止で同機の長い活躍に幕が下りるとともにボフォース砲も75年にわたる米軍での供用を終えることになる。■

Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

米空軍が次期電子戦機材と戦術の検討を開始


Air Force Eyes Next-Gen Electronic Warfare 次世代電子戦機の検討に入った米空軍


An EC-130H Compass Call taxis Dec. 5, 2016 at an undisclosed location in Southwest Asia. The Compass Call employs a crew of roughly a dozen Airmen working together to jam Da’esh communications. (U.S. Air Force photo/Senior Airman Andrew Park)EC-130Hコンパスコールが非公表の南西アジア基地でタキシ―中。コンパスコールはISISの通信妨害などに投入されている。 (U.S. Air Force photo/Senior Airman Andrew Park)
POSTED BY: ORIANA PAWLYK NOVEMBER 28, 2017

空軍は電子戦で優勢を確保できる作戦構想の検討を始める。空軍将官が11月28日に述べた。
  1. 「次代の能力協同チームenterprise capability collaboration teamによる作業を開始しており、これをECCTと呼んでいる」と空軍参謀次長スティーブン・ウィルソン大将 Gen. Stephen Wilson が述べた。
  2. ウィルソン対象によればECCTがまず手掛けたのが航空優勢2030構想で二番目が多面的指揮統制機能だという。
  3. 「三番目に電子戦に目を向ける」とし、ワシントンDCで開催されたAssociation of Old Crows年次総会で電子戦部隊関係者の拍手を浴びた。
  4. ECCTチームは物的・非物的両面で解決策を模索し、将来の戦闘における能力不足を理解したうえで解決策を模索すべく技術面を強化する。
  5. 「この課題は長い間先送りされており、一年から15か月でチームに作業させる」(ウィルソン)
  6. ウィルソン大将の発表に先立ち航空戦闘軍団司令官マイク・ホームズ大将Gen. Mike HolmesがEWでECCT方式を活用すると先週発言していた。
  7. 空軍は電子戦能力とともに電子攻撃機材の更新を目指している。
  8. 今年9月、空軍はL3に現行のコンパスコールEC-130H機材の更新契約を更新している。
  9. 「社内解析と空軍との協議を経て、L3はガルフストリーム550空中早期警戒機を機材に使うことにした」と空軍広報アン・ステファネックAnn Stefanek は「新コンパスコールはEC-Xと呼んでいます」と述べている。
  10. EC-XはC-130改造機の後継機となる。L3テクノロジーズ(旧L3コミュニケーションズ)が単独で機体の改造並びに整備を行い、BAEシステムズがミッション装備を搭載する。
  11. ハードウェアが改良されたとしても新型EC-Xは厳しい空域で残存可能なのだろうか。ウィルソン大将は空軍が将来を見越した広範な検討をしているとしながら詳細は述べなかった。
  12. 「将来を見越して万全の機能がほしい」と航空優勢が確保できている、できていない双方の環境に言及した。
  13. 新規装備を迅速に導入して脅威に十分対応するのが空軍の課題だろう。
  14. 「古くて新しい課題である。よりよく効率的に進める点では変わらない。だが新しい課題は多方面での実効性をもとめることだ」
  15. ECCTの検討でサイバーが重要になるのかについては「まだ決まっていない」とだけウィルソンは言う。■

2017年11月30日木曜日

★★北朝鮮対応には選択肢は予防戦争しかない


9月からの沈黙を破り北朝鮮が大きな動きに出てきました。今回の新型ミサイルは本命つまり米国本土攻撃用のICBMでしょう。事態がここまでになると西側も選択肢がどんどん減っていくのは必至で今決着をつけるか、先送りしてリスクを抱え込むのかの二者択一になりそうです。トランプ大統領はお得意の取引に持ち込みたいのでしょうが、相手が悪すぎますし、韓国の動きも不穏です。状況は悪い方向に向かっています。


North Korea: Why War Is the Only Option Now

北朝鮮問題:開戦しか選択肢が残されていない理由
November 29, 2017

北朝鮮の核脅威対処で選択肢は
  1. 朝鮮はあくまでも核兵器開発を進める姿勢で開発の凍結や放棄は外交交渉で期待できない。北朝鮮は(意図的にせよ偶発的にせよ)米国や同盟国への核攻撃能力を今後も拡充していく中で米国の選択肢は 1)抑止効果により北朝鮮の核攻撃を抑える 2)予防戦争により現政権とWMD開発を同時に除去し北朝鮮の核攻撃能力を排除する のいずれかだろう。
  2. 抑止力で核攻撃を意図的に行う北朝鮮の意欲が削がれる効果が期待できるものの、北朝鮮が誤って核攻撃に踏み切る可能性は排除できない。予防戦争なら意図的、偶発的ともに将来の核攻撃の可能性を排除できる。だが金政権排除目的で開戦すれば北朝鮮は韓国や日本の核攻撃に踏み切るのは必至だろう。抑止力を優先すれば米国は将来の偶発的戦争のリスクより現時点の戦争回避を優先する賭けになる。これは賢い賭けなのか愚かしい賭けなのか。
  3. では予防戦争、抑止それぞれの場合で韓国、日本、米国の民間人死傷者数で比較してみよう。ここでは1)死亡者数に比例した経済その他費用、2)軍での死亡者数は民間に比すればはるかに小さくなる の二点を考慮しよう。筆者はこのままだと北朝鮮は今後30年間にわたり脅威となり、2048年に核戦争のリスクはゼロになると見る。
  4. 予想死亡者数はそれぞれ開戦の時期や開戦の可能性で変動する。ではそれぞれの要素を見てみよう。
北朝鮮核兵力による被害リスク
  1. 際安全保障科学研究所のディヴィッド・オルブライトの議会証言をもとに北朝鮮の2018年時点の核兵器保有量を25発で各25キロトンと想定し、毎年4発追加していくとする。北朝鮮が熱核爆発兵器とミサイル技術を実用化ずみなので、米国に向け発射可能な250キロトン弾頭付きミサイルが現実になると見ている。
  2. 目標別の使い分けについて 1)20キロトン兵器は韓国、日本に半々の比率で向けられる 2)250キロトン兵器は韓国、日本、米国に1-1-2の比率で向けられる 3)(機構上の不良、誘導精度、ミサイル防衛を想定し)目標地で爆発の可能性は50%の想定 とした。この仮定では核弾頭の違いはない想定とし、攻撃の成功率は不明だが予想死亡者数に影響は出るが抑止・予防戦争の選択に影響はない。
  3. 死亡者数の算定にはウェブサイトNukeMapを利用した。便宜上弾頭の威力は同じと仮定した。日本では東京、京都で、韓国ではソウル、釜山で同じ威力の爆発が起こったと仮定した。米国ではロサンジェルス、サンフランシスコ、シカゴ、ワシントンDC、ニューヨークを仮定した。韓国、日本、米国で重みはつけない。20キロトン爆弾一発で112千名、250キロトン一発で546千名が死亡するとの計算が出ている。
  4. 2018年に戦争となれば日韓米市民140万名が死亡する。(25キロトン爆弾25発*成功率50%*一回112千名)で一年たつたびに死亡者数は1.1百万名ずつ増える。(追加250キロトン4発 *成功率50%*一回546千名)と以下毎年規模は拡大し、2048年には34.2百万名になる。
偶発核戦争のリスク
  1. 戦中の米ソは今から思えば冷静だったが両国で偶発核戦争の引き金を引く一歩寸前になったことは何度もあった。危機一髪の事態には早期警戒で軍の誤解、機械の故障やヒューマンエラーもあった。
  2. 指揮官の誤認:キューバミサイル危機でソ連は核魚雷搭載の潜水艦4個戦隊を派遣した。潜水艦が米海軍の包囲網に到達し、緊張が高まる中、潜水艦艦長の一人が空母USSランドルフはじめ米海軍の攻撃を受けていると誤解し「死ぬ前に連中を道ずれにしよう」と核魚雷を発射しようとした。発射すれば米空母が撃沈され米ソ全面戦争突入、この場合は核の応酬となるのは必至だった。幸い戦隊参謀が同乗しており、艦長を説得し発射を食い止めた。
  3. 技術不良:米ソ緊張の高まった1983年にソ連の早期警戒システムが米先制攻撃を探知した。ただちに検証したが信頼性最高度と確認された。当直士官の責任で警戒警報を出し、上官に伝えるのが責務だった。ソ連の核兵器操作手順では米ミサイル到達前に反撃開始することになっていた。幸いにも当夜の当直士官は科学知識もあり探知結果を疑わしく見て、報告義務と警報を発しない選択に直面し、最終的に手順を無視し上司にシステムの動作不良を伝えた。もしその時に警報が出ていればソ連が手順通りに米国に向けて攻撃を開始していた可能性はある。
  4. ヒューマンエラー:1979年にソ連核攻撃の訓練用テープがかNORAD早期警戒システムで再生された。幸いにも(またもや)ソ連ミサイルの飛翔時間に相当する時間でNORADは元データ検証し、米ミサイルの発射可否を待つことができた。結果として米軍は偶発で報復攻撃を回避できた。
  5. 核戦争寸前の事態を信頼性工学の評価手法で検討した論文によれば米ソが冷戦期に偶発核戦争になっていた可能性は年間2%だった。この2%には上記事例は入っておらずきわめて現実的な数字に見える。
  6. では冷戦時の推定は北朝鮮にあてはまるのか。筆者は北朝鮮との偶発核戦争の確率は米ソの場合より高いとみている。抑止力の賭けのコストとして試算してみた。米朝間の偶発的核戦争の確率は年2%になった。今後30年間に軍事対立が発生する可能性は25%になった。
抑止か予防戦争のどちらを選択すべきか
  1. 国が予防戦争で北朝鮮の核脅威に対処すれば2018年の開戦は100%確実だ。(予防戦争を実施するなら早い方がよいのは明らかだ) この戦争で北朝鮮は25キロトン核弾頭25発を韓国、日本の都市に発射し、140万人が死亡する想定だ。
  2. これは極めて悲観的な見積もりだ。予防戦では米核攻撃を北朝鮮の指揮命令機能や核兵器関連施設に向け実施し北朝鮮の核攻撃実施能力を奪うのが狙いだ。さらに米国はミサイル防衛機能で韓国、日本を守るはずだ。ただし、米攻撃でも北朝鮮の核運用能力に影響はない仮定とした。米攻撃で北朝鮮の核運用能力を100%壊滅できると信じるのは早計過ぎ、実際は米攻撃で北朝鮮の核脅威をある程度減らすだけに終わる可能性が高い。
  3. 抑止力に賭ける選択をすれば、偶発核戦争で1)年間2%発生率で750万人が死ぬ、あるいは 2)発生率25%で440万人が死ぬ 事態が生まれるだろう。
  4. 抑止力に賭けた場合の推定死亡者数はこれで極端なまで楽観的に見積もった数字だ。まず、核弾頭が予定通り爆発する確率は不変とした。ただし、北朝鮮が技術改良で核爆発を米国で成功する確率は高くなっておかしくない。次に北朝鮮が威力を250キロトンまで上げると推定しているが、水爆として完成させれば威力はもっと高くなる。将来に偶発核戦争が勃発すればここでの想定被害以上になってもおかしくない。
  5. 他方でミサイル防衛も進歩するはずだ。筆者は米ミサイル防衛能力の強化を強く支持するものだが、ミサイル防衛は万能ではない。(抑止効果支持派はミサイル防衛が完璧と信じる傾向がある) だがミサイル防衛を信じると抑止論も強化されるのは事実だ。
  6. 抑止に賭けるのは予防戦闘よりずっと危険ということだ。
結論
  1. 朝鮮の核脅威に対し抑止を選択すれば賭けとなり現在は比較的弱体な北朝鮮との開戦を回避できても偶発核戦争の可能性を将来に残すだけだ。抑止の選択は北朝鮮の野望があってもキューバ危機の再来はないと信じること、北朝鮮の早期警戒機能にヒューマンエラーはあり得ないと信じること、北朝鮮の指揮命令機能は規程より本能を優先するので米攻撃の兆候に対処できると信じるのと同じだ。言い換えれば、抑止効果への賭けは毎回幸運に恵まれると信じるようなものだ。言うまでもなく常時幸運が必要な賭けは無謀で馬鹿げている。
  2. オバマ政権の北朝鮮政策は無力さを残しただけだったが、結局これが現実の世界だ。米国の政策目標は強力になるばかりの北朝鮮との偶発核戦争の過大リスクを下げることにある。この実現には予防戦争しかない。北朝鮮の核脅威への賢明かつ合理的な対応が予防戦争だ。■

Kevin R. James is a Research Fellow in the Systemic Risk Centre at the London School of Economics (@kevinrogerjames).