2018年5月6日日曜日

★★F-22生産再開研究の米空軍検討内容が明らかになった

虫が良すぎる、とはこのことでしょう。今回の提案はロッキードから出てきたものですが、米空軍が積極的に動いているわけではなく、実現すればおこぼれにあずかろう、ぐらいの気持ちではないですか。しかし総理官邸あたりで勘違いしてこの構想に色気を出せば本当に実現してしまうかもしれません。筆者としては一気に第六世代機を時間かけても国内開発してもらいたいと考えるのですが。その間はF-15を追加発注してもいいと思いますよ。皆さんはいかがお考えでしょうか。



Here’s The F-22 Production Restart Study The USAF Has Kept Secret For Over A Year

これが米空軍が一年間以上秘密にしていたF-22生産再開検討の内容だ

We finally see the study that was oddly classified on arrival and it has new relevance based on Japan's desire for a new stealth fighter. 

完成直後に封印されていた検討内容をついに目にすることができた。日本が新型ステルス戦闘機を模索する中で意味がある内容だ。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR


F-22生産をわずか187機で終了させのは国防調達上で大きく物議を生んだ決断で熱い議論を引き起こした。今日ではUSAF将官含みこの決断は近視眼的過ぎたと信じる向きが多く、そもそもどうしてこの決定が生まれたのかを本誌はいまだに真実を追い求めている。だがF-22の追加機数が必要との声の前に2016年初頭に米議会が動きUSAFに生産再開の検討を求めるに至った。作業は2016年末に完成し、考察内容の一部はオープンに議論されたものの報告書自体は機密扱いにされていた。今までは。
空軍は37千ドルを投じて検討作業を完了させたが、本誌は情報の自由法により同報告書写しを入手した。内容はほぼ原文のままだが分析は深くなく2011年のRAND検討内容を基にした結論となっている。今回その本文を煮詰めて要点と知見にまとめてみた。
RANDによる2011年考察をもとに空軍はF-22を194機追加生産をした場合で費用試算と想定を行っている。
  • 経常外の初期コストは2016年ドル価値で98.69億ドルで2018年価値では100億ドルに相当する。
  • ここに含まれるのは生産施設の再整備に約2.28億ドル、部品・材料の再確保に12.18億ドル、57.68億ドルが主要サブシステムの再設計、11.56億ドルがその他「再開コスト」、14.98億ドルが「追加政府関連費用」とある。
  • 「再設計」が必要なサブシステム4つとはAN/APG-77低被探知 (LPI) レーダー、F119エンジンでともに現在生産が終了している。さらにソフトウェア一式に加え記述を省かれているものがあり、生産再開時に問題が見つかった際の対応なのだろう。
  • 電子戦装備、通信、航法、敵味方識別も交換あるいは他装備で代替が必要だ。
  • 2011年当時のRAND検討内容では一機当たり費用を2.66億ドルと試算していたが、これは75機調達の想定だった。
  • 空軍は194機調達した場合の単価を2.16億ドルと見ている。
  • 最終号機の完成時点では2.06億ドルに下がる可能性がある。
  • 空軍が最初の100機を調達すると単価は大きく下がり始める。
  • 調達総費用は400-420億ドルで事業経費合計は503億ドルとなる。
空軍はF-22関連の生産施設は約95パーセントが稼働可能な状態にあるとしているが、実際には生産施設は物理的に存在しないかF-35のような別の事業にロッキード・マーティンが使用している。2011年報告書の後で空軍は「主要生産設備」をシエラ陸軍補給処(カリフォーニア州)で保管し、補給部品製造の必要が生まれた際に備えている。
F119エンジンのメーカーだったプラットアンドホイットニーも軸足を共用打撃戦闘機用のF135エンジンに移している。ただしF135の原型はある程度までF119である。
空軍からは生産再開すればF-35用予算が犠牲になると繰り返し懸念が出ている。ただし、報告書では共用打撃戦闘機用の部品やサプライチェーンやインフラの流用を新規製造分のF-22支援に使えば費用軽減効果が生れるのに空軍は考慮していないと指摘している。
空軍は同時にF-22輸出仕様の開発は「技術的に可能」とし、費用負担を肩代わりさせれば単価はさらに下がると見ている。これに対し報告書では別の空軍内部検討(2010年)を引用しこの場合の経費合計を提示している。空軍はF-22全型式の輸出認可を得る課題に再度触れている。報告書では輸出を差し止めた関係米政府機関名の記述があるが空軍の事前検閲で見えなくなっている。
報告書にある経常外生産再開経費100億ドルとはいかにも高額に写る。だがB-21レイダーステルス爆撃機の半額程度だ。さらに報告書では機体単価について100機生産した後に下がり、最終号機は2.06億ドルになるとある。だがF-35のようにその他の大型国防事業の例では生産量が増えた場合にもっと大幅に単価が下がっており、報告書は整合性が弱い。
研究費用は含めず開発費用は含めた機体単価を見ると実際に生産されたF-22の最終60機は平均1.37億ドルで同時期に平行生産されていたF-35A単価に近かった。当時の空軍参謀長マイケル・モスレー大将はロバート・ゲイツ国防長官のF-22生産中止を承服できず失職したが以下述べている。 
「なにも一千機必要だったわけではなく、いまでも必要ではない。だが適正規模が必要だ。...納入最終機は87百万ドルだった...さらに複数年度契約が成立していれば85百万ドルまで下がっていただろう...85百万ドルでこれだけの性能の機体はほかにない」
そうなると生産再開でさらなる価格引き下げ効果が期待できそうで、報告書の見方と異なる。F-22が新型戦闘機でこれから生産に入る機体ではなくすでに完成した機体であることを考慮すべきだ。ただし報告書は別の言い方をしている。
またウェポンシステム各種の費用でもいろいろな計算で導入不可能と思える水準になっており要注意だ。実際にはF-22の支出実績は700億ドルでうち300億ドルが研究開発含む経常外支出だった。実際には300億ドルでF-22のようなシステムを開発しておきながら少数機しか作らないのは財務上割が合わない。
現時点でF-22生産再開に巨額予算を投じることに合理性はない。それだけの予算はUSAFが目指す「侵攻型制空」機材構想や高性能無人戦闘航空機に投入すべきだ。
だが別の国が、たとえば日本が生産再開の経常外費用負担に応じれば、ペンタゴンもこんなにうれしい話はないはずだ。
日本がF-22同様の第五世代戦闘機の設計開発をラプター生産再開費用より安く達成できるとは信じがたい。さらに日本は機体を5年程度で入手できるのであり数十年待つ必要がない。これだけの事業であり、リスク分散のためにもイスラエルやオーストラリアからもF-22新規生産機材で飛行隊編成の希望が出るはずだ。
だが報告書ではF-22に投じる予算はF-35事業から拠出すると何度も強調しており、海外国内問わず同機調達再開の可能性は低いと言わざるを得ない。■
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2018年5月5日土曜日

2060年までの供用を目指す米海兵隊のオスプレイ改修策とは。米海軍向けCOD用オスプレイの開発状況

真っ先に導入した海兵隊でもオスプレイの稼働率が低いのは驚きですね。整備、補給体制含め運用に違いがあるのでしょう。それだけに後から導入する米海軍は有利かも知れません。日本も陸自が少数機導入するのは運用に習熟する意味があるはずで後年度に導入規模を増やす布石なのでしょう。オスプレイの性能が今後どこまで拡大できるのかが見ものですが、ベルは新型ティルトローターも開発中です。


Marine Corps to Fly Osprey to 2060 - Preps Aircraft for Future Wars 

米海兵隊はオスプレイを2060年まで供用すべく機体改良で将来の戦場に備える

By Kris Osborn - Warrior Maven
海兵隊はMV-22オスプレイでセンサー改修と兵装追加の大規模改修と稼働率向上で機材の運用範囲を広げつつ稼働供用期間を2060年まで延長する。
「MV-22Bオスプレイは少なくとも今後40年使い続ける予定」と海兵隊航空部門広報官サラ・バーンズ大尉がWarior Mavenに語ってくれた。
原型機登場から20年経過したオスプレイは前例のない形で実戦配備、ミッション範囲や作戦投入が拡大している。
海兵隊も同機の改修と稼働率向上で苦労してきたことを認めている。この課題に輪をかけたのが2007年以来強まっている戦闘部隊司令からの同機への要請だと海兵隊関係者は指摘。
「整備訓練課程の内容、習熟化、標準化のペースが要求水準に見合っていなかった。現時点の整備要員の充足度では要求通りの作業ができない。現在のV-22稼働維持の仕組みでは機体の稼働率の維持向上が不可能だ。大幅に手直しが必要だ」と海兵隊は2018年度航空戦力運用案で述べている。「補給処での整備では要望に応えられない」
シナリオでは海兵隊は共通仕様即応率近代化Common Configuration, Readiness and Modernization (CC-RAM)構想を実施するとあり、バーンズ大尉によれば「全体でのミッション実行率を最低75パーセントにするのが目的」という。
海兵隊によればオスプレイ近代化改修構想は輸送力、速力、多様な運用能力を生かしながら性能を向上させることだという。ロケット弾、ミサイル他の武装でエスコートミッションを敵地内や高度脅威環境で実施可能にすることも含まれる。
その他センサーの高性能化、ナビゲーション、接続のデジタル化、高速化、ホバリング能力の強化、貨物取扱ではペイロード強化、次世代エイビオニクス、ミサイル小火器への防御力強化が改修内容だ。
2018年版の航空戦力運用案ではCC-RAMの対象にV-22の75機を想定し、マルチスペクトラムセンサー、コンピューター、赤外線運用技術、発電機、降着装置制御の改良をめざす。
オスプレイ近代化改修で海兵隊は戦闘統制システムとしてデジタル相互運用(DI)の搭載を進めている。ここにデータリンク、相互無線交信、イリジウム用アンテナを含み戦闘関連情報やC4ISR情報をリアルタイムで海兵隊部隊間で飛行中、ミッション中に共有する。
さらにオスプレイは給油機ミッションでも開発が進んでいる。海兵隊は主力機F/A-18やF-35Cへの給油を狙う。またCH-53E/KやAV-8B、他のV-22への空中給油も可能となる。
「空中給油能力は2019年にシステムとして利用可能となる。海兵隊の運用する機材すべてに給油可能でおよそ1万ポンドを移送可能」と2018年度の海兵隊航空戦力運用案が述べている。
オスプレイはティルトローター構造のためヘリコプター同様にホバリングモードで接近偵察したり、部隊や装備を垂直着陸で移動できる。航空機モードに切り替えれば固定翼機並みの速度で飛行できる。燃料満載で450カイリ飛行可能と海兵隊は説明。最大速度は280ノットで海兵隊員数名と機内搭載車両一両を輸送できる。
オスプレイが搭載可能な海兵隊機内搭載車両
Marine Corps Photo By: Pfc. Alvin Pujols

海兵隊はV-22近代化では進行中の次世代垂直輸送機事業で開発された新技術も導入すると明かしている。おそらく新型軽量複合材他化各種兵装、C4ISR装備や標的技術が含まれるのだろう。
また急速に進む人口知能技術もV-22改修で採用されるだろう。アルゴリズム改良でセンサーのデータや標的情報、航法情報を飛行中に活用することになるだろう。
こうした改良でオスプレイの実効力が今後も維持できる見込みだが、課題がないわけではない。海兵隊では補給処へのサプライチェーンが必要時に機能できるか、さらに今後長きにわたり維持できるのかが懸念されている。また新型機導入の前に既存機種の改修がどこまで可能かも問題だ。
そこで興味を引くのが空軍のB-52と陸軍のチヌークの事例で、大規模改修で機体はともにこれまで数十年間にわたり戦力を維持してきた。空軍はB-52を2050年代まで、陸軍はチヌークを2060年代まで100年間飛ばす予定になっている。
共通するのは機体の補強で長期供用を可能としていることだ。オスプレイはB-52やチヌークより新しい機体だが同様の対応が必要だろう。ここにバーンズ大尉がCC-RAMで「共通仕様」を強調する理由があり、既存機体でも新技術を都度導入できるようにする。この方法はDoDの調達事業全体で実行されており、システムを共通標準で設計し近代化が効率よく進むよう考慮している。
だが既存機体の近代化にも限界があることは広く知られており、どうしても新型機が必要となる。このため陸軍は将来型垂直輸送機事業を強く進めているのであり、ティルトローターも新世代に進化しようとしている。さらに新型機は新装備やC4ISR技術、センサー、自衛システム、エイビオニクスの搭載で有利だ。機体そのものがレーダー反射を減らす特性を発揮することが期待されている。
海軍のオスプレイ
並行して米海軍はCVM-22Bオスプレイの実現を急いでおり、数年内に姿を現す。重要な空母輸送任務 (COD) に供用中のC-2の退役が迫ってきたことからオスプレイの重要性が一段と増している。
海軍仕様のオスプレイは追加燃料タンクにより航続距離を1,150マイルへ増やす。これ以外に無線装備を一新し水平線越し通信が可能となり、機内案内放送も追加される。
海軍版オスプレイの供用開始は2020年代初頭の見込みでVIP輸送や人道救難ミッション含む現在C-2が行うミッションすべてを引き継ぎ、空母へ糧食、交換部品、装備を補給する。

海軍版オスプレイはC-2以上のミッションをこなす。ヘリコプターとしてあるいはティルトローターとして空母着艦すればC-2の着艦手順より簡単だ。発艦にカタパルトは不要でティルトローター機の性能余裕は大きくなる。■

2018年5月4日金曜日

ジブチで発生したレーザー照射による飛行妨害で米国が中国に正式に抗議

中国のジブチ基地から強力なレーザー光線が照射されパイロットの視力に障害が発生したという事案ですが、外交ルートで米国が抗議したということは尋常ではありません。中国も公式説明を求められますが、共産党の軍隊である解放軍はおそらく政府省庁の外交部にはろくな情報も与えないので事件は解明できないでしょう。こうした透明性の欠如が中国の大きな問題です。

 

US warns China after lasers injure American pilots in Africa

BY ELLEN MITCHELL - 05/03/18 01:51 PM EDT 394

国が中国に公式警告文を送付した。ジブチの中国軍基地が米軍機にレーザーで妨害を加えたためで米パイロット二名が軽傷を負ったとペンタゴンが説明。
国防総省広報官デイナ・ホワイトが5月3日報道陣に「非常に真剣な事件数件」がここ数週間にわたり発生しているが中国の関与は確実と米国が見ていると語った。
「軽傷二件が発生しています。わが方の航空要員に深刻な脅威になっています。中国政府へ外交経路で通告しました。また中国側による調査の実施を求めています」
米政府は一連の事件のため航空要員にジブチ国内の特定空域での飛行に注意を喚起している。
「うち一件ではC-130乗員が眼球に軽微な損傷をうけ、軍事用レーザー照射を浴びたのが原因で、照射は近隣の中国基地からだったと報告している」(ホワイト報道官)
同様の事例は「二件以上10件以下あり、いずれも高出力レーザーでパイロットの集中力を妨害している。いずれも以前から発生していたが、ここ数週間で急に頻度が増えている」という。
「米国は懸念せざるを得ない....深刻な事態であり非常に深刻に受け止めている」
ペンタゴンはジブチのキャンプ・レモニエにおよそ4千名を駐留させており、アフリカでゆいいつの恒久的米軍基地となっている。米軍はソマリア、イエメン空爆を同基地から発進させている。
一方で初の海外軍事拠点となった中国基地はキャンプ・レモニエから数マイル北に位置する。
先月は海兵隊AV-8Bハリアーがジブチ・アンボウリ国際空港で墜落しておりパイロットは機外脱出した。その数時間後に同じく海兵隊のCH-53スーパースタリオンヘリコプターが着陸時に機体を損傷している。

両件ともジブチ沿岸で毎年開催されるアリゲーター・ダガー揚陸作戦演習で発生しており、事故原因は調査中だ。■

2018年5月3日木曜日

P-8のテコ入れで対潜哨戒機市場の優位性を狙うボーイングにP-1は対抗できるのか

実績がないから日本製の防衛装備は海外販売できないといわれます。でもP-8も新型機ですよね。要は性能と比べたコスト優位性が決め手なのでしょう。何千機も製造している旅客機を原型にしたポセイドンに勝負するのはなかなか大変ですね。採用国が生まれ、実際に稼働するまでP-1は孤高の存在ですが、あきらめず頑張ってもらいたいものです。


Boeing plans affordability changes for new wave of P-8 orders

販売増を見越してP-8の価格競争力強化を狙うボーイング

03 MAY, 2018
SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
BY: STEPHEN TRIMBLE
SEATTLE

ボーイングはP-8ポセイドンの通算100号機をワシントン州レントンで組み立て中で、さらに数十機の新規受注を見込み、機体設計と製造工程の見直しで製造費を狙う。
「あと100機製造となるのでは」と対潜哨戒機P-8の原型737-800A事業の副主幹カール・ラングは言う。
これまでの引渡し実績はテスト用8機と作戦仕様84機のP-8Aが米海軍に、インド海軍向け8機、オーストラリア空軍仕様が7機となっている。
ノルウェー、英国もそれぞれ導入を決めている。米海軍は最低でも111機分の調達予算を確保しているが、すでに117機導入が認められている。
ボーイングは各国の追加受注を期待しており、P-8A納入が200機を超えれば75機以上が米国外の発注となるとラングは見ている。
国外の対潜哨戒機には各種機材が混在している。ロッキードP-3C、ブレゲー・アトランティーク、イリューシンIl-38が稼働中だ。
ボーイングがP-8ポセイドン開発を開始したのは14年前でその後競合機種が姿を現している。川崎重工は四発P-1を新規開発し納入を開始。同機にはP-3Cの影響が強い。Saabはボンバルディア・グローバル6000を原型にソードフィッシュをUAE向けに開発中だ。エアバスはA321neoをフランス・ドイツ両国向けに開発すると先月発表した。
レントン工場でのボーイングの課題はP-8の競争力維持だがハードルは高くなってきた。現時点で旅客型737NGの最終号機は2019年の引渡し予定で、その後レントン工場では新型エンジンに換装し大幅に改修した737 Maxへ生産切り替えが終わるまで米海軍向けだけとなる。同社はP-8生産に全力を注入するという。
ただし最盛期に月産40機納入した同工場の費用効率で低下が避けられない。P-8は月産わずか1.5機なのだ。
そこでP-8Aの競争力維持のためボーイングは同機の生産コスト見直しを進めている。レントンでは同機の「将来型生産システム」開発が進んでいる。
その狙いは機体設計と生産システムの見直しでP-8生産コストを引き下げつつ737NG生産の縮小でコスト上昇を防止することとラングは言う。■

2018年5月2日水曜日

★F-22生産早期終了の裏側に新型爆撃機実現に注力する米空軍の決断があった

F-22の話題がここにきてでてきていますが、戦闘機命の米空軍主流派に対して新しい潮流を当時のゲイツ国防長官が断行したことが分かります。というか、F-22よりも新型爆撃機がどうしても必要だったのですね。以来戦闘機派の不満がくすぶるなかで今回降ってわいたような日本の資金負担によるF-22生産再開が実現すれば米空軍にはまさしく濡れ手に粟でしょう。ゲイツ長官の決断が本当に愚かであったのかは歴史が証明するでしょう。


Retired General Says F-22 Production Was Killed So That A New Bomber Could Live F-22生産中止は新型爆撃機実現のためだったと当時の空軍トップが回顧

Other revelations include the Next Generation Bomber was to be armed with air-to-air missiles and the B-21 is indeed one part of a family of systems.その他判明したこととして次世代爆撃機構想には空宅空ミサイルでの武装の想定があったこと、B-21が各種システムのファミリー構成の一部であることなど。



USAF
BY TYLER ROGOWAYAPRIL 28, 2018




空軍参謀長を務めたノートン・シュワーツ退役大将がこのたび刊行された回顧録でF-22生産を必要機数の半分以下で終了させたのは当時の国防長官ロバート・ゲイツの愚かな決断で理由は新型ステルス爆撃機の生産を承認したことと指摘している。
Air Force Magazineが同大将の新著“Journey: Memoirs of an Air Force Chief of Staff”内の問題個所を最初に伝え、F-22生産継続をめぐる戦いの展開の詳細とともに次世代爆撃機開発再開の議論の流れにも触れている。
USAF
ノートン・シュワーツが空軍のトップになったが戦闘機以外のパイロットの就任は1982年初のことだった


舞台裏ではシュワーツの前任者マイク・モスレー大将は「なんとしてもF-22の381機調達の原則を絶対断念しなかった」と同書にある。だがこの決意はモスレーの更迭に繋がり、同時に空軍長官マイク・ウィンも職を失った。この後制服組は新型爆撃機の重要性を悟り、F-22と爆撃機の両方をゲイツに納得させるのは困難と考えるようになった。ゲイツは高価格装備でもイラクやアフガニスタンで役に立たないものは意味がないと頑なに反対の姿勢だった。
シュワーツはF-22生産機数を削減した場合は国防長官に受け入れられるかを知るべく、外部評価を行わせ243機のF-22が空軍が勝利を収める際の最小必要数との結果を得る。だが、ゲイツはこの規模も却下した。
LOCKHEED MARTIN


このことからシュワーツ他はF-22生産をめぐる論争を断念してしまう。ワシントンDCの力の哲学に従いシュワーツ大将も結局ボスにはいかに間違った判断とは言え逆らえず、ラプターの運命が決まったのだ。
新型爆撃機が調達面で最高の優先事項となりそのためしわ寄せが他の装備に生まれたと言えシュワーツはじめ空軍将官は爆撃機の実現に注力せざるを得なくなった。だがそれでも当時の状況下で文民トップに新型ステルス爆撃機の必要性を訴える必要があった。ゲイツは次世代爆撃機(NGB)構想を葬った前歴があったからだ。ただしシュワーツはその決断には「合理性」があったと認める。
Air Force Magazineは以下述べている:
「NGBは『機体が大きくなりすぎ』て実施可能なミッションは広範となり要求性能も多岐にわたった。自衛用に空対空ミサイル運用も想定され、シュワーツが明らかにしたようにそうした要求内容は「必要不可欠な内容ばかりではなかった」。当時はNGBでは「コストは重要でない」とされながらゲイツの世界観にあわず、「そのため中止させた」というのだ。
議会と報道陣に対しNGB開発中止の説明をしたゲイツはB-2の機体単価があまりにも高くなり調達取りやめとなった事例に触れたが、これは話が全く逆だった。132機調達計画のB-2を20機にしたため単価が膨張したのであり、研究開発コスト全額を六分の一になった機数で負担したためだ。
実態は一部は真実である。機体単価に研究開発コスト全額は含まないが、B-2の単価が膨張したのは事実だ。にもかかわらず、ヘリコプターと輸送機パイロット出身のシュワーツにとって爆撃機は「疑問の余地のない必要装備」で将来の大統領が「作戦実施とともに抑止効果でも」使う装備と映ったのだ。そこでゲイツ長官に爆撃機は妥当な価格かつ次世代爆撃機関連の開発リスクをくりかえさずにに実現すべきと進言していた。その一つとして要求性能を固定化し、既存サブシステム他部品の流用でコストを抑え、その他ジャミング機材を同時に飛ばすことで「各種システムのシステム」を実現することがある。
Air Force Magazine記事の末尾は同大将の所感を再度引用している。
最終的にゲイツが折れ、「空軍としてもそのような機体を一定の原則のもと配備できるはず」との主張が本人を説得したようだ。シュワーツはドンレーとともに「ゲイツ説得に成功し」B-21ではこれまで見たことのない原則で後継者にその実現を託すこととした。また機体には既製品のセンサー、ジャマー他装備品の搭載を極力進めコストダウンをシステムのシステムとして実現することになった。
この展開にはいろいろな理由で興味をそそられる。まずF-22生産中止ではゲイツに責任があるとこれまで広く信じられており、近視眼的決断が批判のためで米国に準じる実力を有する敵対勢力の対応を楽にしてしまった。特に中国のステルス戦闘機開発の動きを軽視したことがゲイツの最大の誤りとも言われる。
DOD
元国防長官ロバート・ゲイツ


その他にも在任中に北朝鮮やロシアの動きを予見できなかった。イラク、アフガニスタンに焦点を当てすぎたのは理解できることだが、このためローエンド敵対勢力を唯一の脅威ととらえ米国の国防体制をこれに合わせたため影響がその後に残った。当時でも議論の種となった考え方だが今日そのツケを支払わされていると言える。
言い換えれば、ゲイツが選ぶ馬券は買いたくないものだ。
Air Force Magazineも同じ考えで以下述べている。
ゲイツは自身の回顧録“Duty”でF-22はアフガニスタンやイラクの戦闘員相手では役立たずの冷戦の遺物と述べ、中国のステルス戦闘機は2020年代までは実戦化されないと見ていたため、躊躇なくF-22を切り捨てたと主張。事実はF-22はシリア作戦で不可欠な存在となり、中国はステルス戦闘機の初部隊を2017年に編成している。ゲイツ以降の航空戦闘軍団の歴代司令官は口をそろえてF-22が需要に対して少なすぎると不平を述べている。
F-22生産をめぐる物語の先にUSAF爆撃機開発の一端を目にする貴重な機会があり、B-21レイダーの誕生がある。次世代爆撃機構想は当時も現在も厳重な機密情報のままだが、今回その一端が明らかになり、自衛用空対空兵器の搭載が当時真剣に考えられていたことが浮き彫りになった。
B-21ではNGBよりはるかに容易にこの機能が実現するかもしれない。と言うのは既存装備の導入が極力推奨されているからで、おそらくF-35で実現した機能が応用されそうだ。空軍はひそかに超長距離空対空ミサイルを開発中であり、B-21が搭載して戦闘投入された場合、敵標的捕捉はネットワーク接続されたステルス戦闘機に任せればよい。
ノートン将軍の指摘でこれまで解明できなかった点が見えてきた。B-21とは大規模な秘密機材の系統の一部で敵大国への奥地侵攻能力が新型爆撃機と並行して開発が進んでいる。おそらくここにすでに存在が知られている戦略偵察機で非公式にRQ-180と呼ばれる機体が加わり、敵地上空に滞空しながら探知されず標的情報や電子偵察情報をリアルタイムで提供しB-21の侵入経路決定や攻撃に活用するのだろう。
NORTHROP GRUMMAN/THE DRIVE
B-21レイダー
戦術無人戦闘航空機はセンサー機としてさらに電子攻撃機としても活用され、動的攻撃機にもなるシステムファミリーの一部の位置づけだろう。B-21を支援し敵地深部への攻撃ミッションを達成させる。新型ステルス巡航ミサイルがそこに加わり、弾頭は通常型になるのはほぼ確実となる。これはLRSOとして現在開発中のものだ。そうなると現時点のB-21は照明を落とした舞台で目立つ主役で暗闇の中では数々の機関が同機を主役の座につけようと懸命に動いていると考えてはどうだろうか。
アシュトン・カーター前国防長官がそうした存在を一度ならずとほのめかしていた。B-21がエドワーズAFBに到着する日が遠からず生まれるが同機が各システムで構成するファミリーの一部として同基地でテストを「プログラムのプログラム」の傘の下で受けるのは確実と思われる。こうした装備がすでに知らないうちに稼働している可能性があるがB-21が初期作戦能力を獲得する2020年代中頃にはその存在がおのずと明らかになるだろう。
USAF
C-130を操縦するノートン・シュワーツ.


B-21に必要な各種システムファミリーが実現されれば、B-2の前例から問題視されているB-21の機体単価も比較的低く維持できるはずだ。闇の予算を利用した下位装備品の開発が進めば、そうした装備は公式にはB-21とは無関係とされているため「安価な」B-21の生産が可能となる。USAFが爆撃機の中心的機能を分散化しつつ予算執行も分散化させることで同機は戦場でも議会の場でも残存性を高めるはずだ。

シュワーツ大将の回顧録全文に目を通し、これまで知られていなかった細かい情報が見つかることに期待したい。その節は読者各位に全体像をお伝えしたと考えている。■

2018年5月1日火曜日

★シリアでEC-130への電子攻撃に成功したロシアの戦力整備に危惧を深める米側

内容が内容なだけに開示できない情報が多いのですが、ロシアが着実にEW能力を高めているのは確かなようです。今回はEC-130が相手でしたが、もっと大事な装備も今後対EW対策に力を配分する必要があり、もっとこわいのはEW能力がISISなど非正規戦闘員レベルまで拡散することです。シリアが各国の戦闘モデルの試験場になっていることはあきらかですね。



Russia Widens EW War, ‘Disabling’ EC-130s In Syria ロシアがEW戦能力を拡充し、シリアで米軍EC-130の「機能不全」を発生させている



EC-130コンパスコール電子戦機
By COLIN CLARKon April 24, 2018 at 6:39 PM


EC-130コンパスコースは米軍の電子戦装備の主力の一つだが、シリア付近を飛行した同機が逆に電子攻撃を受け「最も過酷なEW環境で」作動できなくなる事態が発生していたことが空軍特殊作戦軍団司令官の口から明らかになった。
「目下のところシリアでは最も過酷なEW環境になっており、敵の活動が目立つ。敵はこちらを毎日のように試しており、通信を妨害したりEC-130の機能を止めている」とレイモンド・トーマス大将が2千名を超える情報関連専門家を前に語った。
言うまでもない理由でEC-130に向けられた攻撃の内容は不明だが、ロシアがEW手段でシリア内戦でこちらの専門家も「すごい」と言うだけの結果を生んでいることはわかっている。またシリア軍が用いる装備の大部分もロシアが供与している。
「ロシア側はEW機材をこの20年で一新した」と退役陸軍大佐ロリ・モー・バックアウトがEW専門家として開設している。ロシアはジョージア攻撃の後でEW能力不足を痛感し強化を図ったのだという。「ロシアはジョージア侵攻後に巨額の予算を投入しました。その結果、攻撃能力、各種周波数でのジャミングが遠距離からも可能となりました」
今回のEC-130へのEW攻撃ではロシアのEW攻撃で可能性があるのは機内の位置航法計時(PNT)機能や通信機器を妨害することで操縦を困難にさせ、乗員は地図参照しながら目視他での操縦を迫られたのだろう。
「EC-130の問題はジャミングを行う間に乗員はほかの仕事をほとんど行えないことです」と指摘し、攻撃に脆弱だというのだ。「ロシアはPNTや通信を狙ってきたのでしょう」としロシアは「こちらの弱い点を熟知している」のだという。

米軍には解決を迫られる課題が他にもあると著名国防コンサルタントのローレン・トンプソンが指摘する。「南西アジアの敵相手に時間をたくさん使いましたが、相手は技術的には遅れており、その間にこちらは戦術電子戦の進歩に乗り遅れてしまったのです」という。バックアウトもトンプソンの指摘にはもっともな点があると認める。■