2018年8月12日日曜日

★F-117はなぜ今も米西部で飛行しているのか



The Air Force retired its F-117 Nighthawks, but they are still mysteriously flying over Nevada — and may be the key to the US' next-generation aircraft F-117ナイトホークは米空軍で退役したはずなのに今も秘密のうちに飛行している。次世代機開発のカギになっているのか

David Cenciotti,

F-117 Nighthawk stealth aircraft1999年4月4日、ドイツ・ボン南西部のスパンダレム航空基地にて。 Reuters
  • 2008年に第一線を退いたF-117ナイトホークステルス機がまだ飛行しているのは謎だ
  • 旧式ステルス機の同機は各種テスト開発用途に投じられているのだろう
  • 新型レーダーあるいは赤外線捜索追尾装置の開発の他、新型SAM装備、新型RAM機体塗装、さらに第六世代戦闘機あるいは新世代のAEW機材開発が関係しているのだろう


こ数年にわたりF-117ナイトホークジェット機がネヴァダ上空を飛行しているとお伝えしてきた。同機は公式には2008年に退役になったがミッションは続いている。
2014年に入り映像画像がオンライン上に出回り、米空軍も同機が「タイプ1000」保存機としてトノパ・テスト施設(TTR)に保管されている事実を認めた。この分類は実戦に呼び戻されるまで保守管理の対象となる機材のことだ。米国は同機は現在の想定でも十分使い勝手があると見ており、その後も飛行ミッションに投入しているのだろう。ミッションのねらいは乗員(複数筋によれば米空軍隊員ではなくロッキード・マーティン社員だという)の習熟度維持と機体の飛行可能性の維持にあるといわれる。ネヴァダ砂漠の環境はステルス機の維持管理に理想的とされ乾燥気候のため機体腐食の可能性が低い。このためTTRを舞台に同機が活動をしているのだろう。
だがこれで謎がすべて解けたとはいいがたい。
2016年7月に本誌は二機のF-117が編隊飛行する画像を公開した。撮影箇所は距離の離れた丘陵地でトノパ演習場の端だった。画像分析した読者はさらに二機のF-117が滑走路にあり、うち一機は通信アンテナらしきものを機体上部に立てているのがわかったはずだ。もう一機のナイトホークにはそのようなアンテナはなかった。新型アンテナなのか。何のためなのか。遠隔操縦F-117なのか。如何せん画像の解像度が低くなんとも断言できなかった。
One of the interesting photographs taken by The Aviationist’s contributor “Sammamishman” at the end of July 2016. One of the aircraft seems to show a slightly different antenna/shape: just a visual effect caused by the distance?Aviationist’常連の “Sammamishman” が2016年7月末に撮影した写真では駐機中の一機に別のアンテナがついているようにも見えるが、遠距離からの視覚効果にすぎないのか。The Aviationist


昨年米空軍から発表があり同型機は完全に廃止するとあった。「2017年国家防衛予算認可法に準拠し、空軍は毎年四機のF-117を廃棄し最終的に全機を処分する」とオリアナ・ポーリクが昨年伝えており、今年は一機、その後は毎年四機のF-117が姿を消すとあった。
2017年11月13日、F-117の一機がトレーラーに乗り高速95号線を移動する様子が目撃された。場所はクリーチAFB(ネヴァダ南部)だった。この目撃は2017年末までに一機のF-117を処分するとの発表と符合していた。2018年からは毎年4機を処分するという内容だ。言い換えればトレーラーに乗せられていた機材は飛行機の墓場への移送途中だったのだろう。だが翌日の11月14日に、別のF-117がネヴァダ州レイチェル北方で目視され、チェイス機はグルームレイク所属の複座型F-16だった(おそらく同機はその後スターウォーズキャニオンを飛行したのと同じ機体だろう)。
一気に2018年7月26日に話を飛ばす。Youtubeユーザーの"pdgls"がF-117二機がまたもやトノパ試射場上空を飛ぶ映像を投稿した。
映像ではF-117二機がナイト(NightまたはKnight--第9戦闘機隊コールサイン)17、19として離陸している。試射場上空でブラックジェットの特徴がよく見える。
ただし交信記録に興味をそそられる。
以前の目撃事例と違い、今回は視覚聴覚の両面から興味深い詳細情報が見られる。離陸後のF-1172機編隊はシエラ98と呼ばれるKC-135給油機(フェアチャイルド空軍基地所属)から給油を受けている。F-117がストラトタンカーから給油を受けるのは通常ではない。その後編隊を説いている。ナイト17はテストミッションへナイト19はトノパ試射場へ戻っている。注意したいのは17が途中でコールサインを変更してダガー17になっている。ダガーはステルス機部隊で知名度の高いコールサインだ。410試験飛行隊が使っており、ロッキードと空軍がグルームレイクで使うコールサインだ。
The War Zoneのタイラー・ロゴウェイも同時に指摘している。
「コールサイン変更の前にブルーバード、ブロンドガールの名前が呼ばれており、なんらかの管制部隊の名称なのだろう。その後F-117が『ラムロッド』RAMRODとチェックのあとテストを開始している。ラムロッドがF-117に『スピン』開始を告げており、通常は飛行経路パターンの開始を意味するが、このバイアは暗号付きのテストカードの実施の指示が聞こえる」
ラムロッドというのは何らかのセンサー装備のことだろう。可能性が高いのはDYCOMSレーダー断面積測定施設のことでエリア51にあり飛行中の機体のレーダー特性を各種角度で測定する地上センサーのことだ。また別の可能性としてラムロッドが飛行中に同様の特性測定を行う機材なのかもしれない」
ダガー/ナイト17が何らかの地上レーダー関連施設と共同作業している間にナイト19は別の任務として低空接近を繰り返しILSローカライザーアプローチで探知アンドゴー他を実施している。通常任務につかない機材がよく行う一連のパターンだ。
ADS-B記録からはKC-135ストラトタンカーの支援内容の中身がわかる。同機#58-0086は前日(7月25日)もEAAエアヴェンチャー・オシュコシュで飛行しており、ワシントン州フェアチャイルドAFBを出発し6時間超のミッションに投入されている。同時間帯にシエラ98が別の機材にも給油しているかは不明だ。保存中の機材二機には通常ミッションとはいえ相当の支援であったことは間違いない。
The KC-135 supported Night 17 and 18. It did not broadcast its GPS position and was not geolocated via MLAT. The only detail gathered from its transponder is the serial 58-0086.
ナイト17,18を支援したKC-135はGPS位置情報を発せずMLATによる表示に出てこない。トランスポンダーから判明したのは機体番号58-0086のみだ。@CivMilAir


言うまでもなくF-117のフライトは謎のままだ。ナイト19が基本パターンの飛行をしていることから機体の飛行状態の維持が目的なのだろう。一方ナイト17は複雑な飛行を始めるに当たりコールサインをダガー17に変更していることからブラックジェットで何らかの別の作業が進行中のようだ。The Aviationistで度々お伝えしているようにレーダー探知されにくい機体としては「レガシー」といわれるF-117だが今でも各種テスト開発業務に投入できるのだ。新型レーダー、赤外線探知追尾装備、新型SAM地対空ミサイル、新世代AEW早期警戒機の開発等だ。ステルスUCAVの研究支援も可能性があり、以前指摘があったように一部機材が無人機に改造されているのかもしれない。さらにナイトホークがアグレッサーとして実際の演習やシミュレーションに投入されている可能性も排除できない。これがレッドフラッグと関連しているかはわからないが大規模LVC(ライブ仮想構造)のシナリオでは実機を仮想機材と一緒に運用する。
読者の皆さんはどう思われるだろうか。■

シアトルの盗難旅客機にF-15C編隊がアフターバナー全開で迎撃していた

F-15Cs break sound barrier to intercept stolen airliner out of Seattle airport in bizarre incidentF-15C編隊が盗難旅客機を超音速で迎撃したシアトルの奇妙な事件

Tom Demerly,


F-15CF-15C US Air Force
  • シアトル-タコマ空港を離陸した盗難旅客機をF-15C二機で迎撃する事件が8月10日に発生。
  • フェイスブック利用者の報告によるとソニックブームがイートンヴィル上空で聞こえたという。
  • 空港整備員がダッシュ8双発ターボプロップ機を盗み出したが機体墜落で死亡。


妙な事件がシアトル-タコマ国際空港(ワシントン州)で発生し、アラスカエアラインズ/ホライゾンエアボンバルディアダッシュ8双発ターボプロップコミューター機が男性一名により離陸したあとタコマ南西のケトロン島に墜落した。機内に乗客は乗っていなかった。男は墜落で死亡し報道では唯一の犠牲者とされる。
同機への対応としてオレゴン州軍航空隊のF-15Cイーグル二機がポートランド国際空港から緊急出動した。同編隊は旅客機に向かう途中で「音の壁」を破ったとの報告がツイッターや現地報道で多数見られる。フェイスブックではソニックブームがイートンヴィル上空で聞かれたとある。
View image on TwitterView image on Twitter
Rock 41 and Rock 42 scrambling out of PDX this evening
航空写真家ラッセル・ヒルがスクランブル発進するイーグル二機を撮影しており、アフターバーナー全開だったのがわかる。同編隊には対抗手段としてフレア発射の許可が出ており、ダッシュ8の飛行進路を変えさせ着陸させようとしていた。赤外線フレアを発射するのは通常は熱追尾ミサイルへの囮となる熱源をつくるためだ。
ツイッターで投稿された映像や報道記事を見るとダッシュ8は曲技飛行を行い海上に突っ込んだようだ。
別の映像ではF-15C編隊がダッシュ8のそばを飛行している。現地放送局WMURチャンネル9の記者は「F-15が盗難機を人口集中地上空から郊外に移動させようとした」と述べている。
Some dude stole a plane from #Seatac (Allegedly), did a loop-the-loop, ALMOST crashed into #ChambersBay, then crossed in front of our party, chased by fighter jets and subsequently crashed. Weird times.
今回の事件は「ハイジャック」扱いとされていない。乗客が一人も乗っていなかったためだ。代わりに遭難機事件の扱いだ。
無線交信記録を見るとダッシュ8を盗んだのはパイロットではなくシミュレーター訓練しかしていないようだ。犯人は航空管制官と交信し、管制官は着陸させようとしていた。

この事件で付近の空域は一時的に閉鎖されたがその後飛行を再開している。シアトル-タコマ空港では大幅なフライト遅延が続いた。■

2018年8月11日土曜日

米空軍はステルス過信を捨てることができるのか

今回ご紹介する退役空軍大将のエッセイが意外な波紋を呼んでいるのは米空軍内部でステルス万能、スタンドオフ兵器絶対の思想があまりにも強いためでしょう。予算状況は厳しく米空軍はどんどん機材を整理していきますが、このエッセイを見れば各種機材の超呂を活かした作戦展開のためにはやみくもな機材の用途廃止はおかしいこと、ステルスは切り込み隊であり、F-15等のレガシー機材が攻撃の柱になって航空優勢が確保できることがわかります。では北朝鮮を攻撃する場合はどうなる(どうなっていた)でしょうか。


Defeating modern air defenses is achievable with smart strategies, not only stealth and standoff高度防空体制の撃破は賢い戦略で可能、ステルスやスタンドオフは万能ではない

Senior Airman Klynne Pearl Serrano/Air National Guard)


2019年度国防予算認可法案で議会は空軍に有人版JSTARS新型機の調達を断念し、かわりに大型宇宙配備装備の高性能戦闘管理システム(ABMS)を調達したいとする空軍の言い分を認めた。ABMSは定義もできておらず、経費も配備予定も未定だ。一方で空軍の意向に反して議会は17機残る旧型JSTARSのE-8C廃止を認めなかった。各機は広範囲地区の偵察や小型移動車両の追跡の他戦闘管理に投入されている。
だが今回の決定でもっと大きな意味があるのは空軍内部で高度統合防空網(IADS)の突破で考え方が明らかに変化していることだ。航空戦闘軍団司令官はJSTARS新型機調達中止を支持し、同機が高性能防空体制の厳しい空域では運用不可能なことが理由だという。
ただしこの考え方は古典的空軍戦術を無視しており、「厳しい」空域を「厳しくない」空域に変えるためには圧倒的兵力を投入すれば、空海陸の各部隊に敵空軍力の脅威を感じさせずに運用が可能なはずだ。こうした敵防空体制の制圧破壊は「ロールバック」と呼ばれ敵側装備が近代化されており耐えられない損耗が生まれる予測に反して、これまで数々の効果を上げてきた。
ただし今や空軍の立案部門ではロシア、中国の防空体制は相当整備されており、新型ステルス戦闘機や長距離巡航ミサイルでないと対応できないと見ているようだ。そのためJSTARS、AWACS、RC-135リヴェットジョイント、MC-130コンパスコール、B-2含む既存機種では相当の損失を覚悟したうえでないと投入できないと見ている。航空作戦の新指針では各部隊は一貫して厳しい防空体制の下で作戦展開するとあり、ロールバック戦略はみられず、制空権を短期間で確保しその後維持する構想は見えない。
ではこれまでの高度IADS相手の航空作戦を概観し、ロールバック戦略で総合的かつ永続可能な航空優勢の確保が可能であるか検証してみよう。その典型が砂漠の嵐作戦だ。
バグダッド並びにイラク各地の軍事施設はフランス製KARI防空ネットワークで防衛体制を整えていた。当時の防衛「専門家」からイラク攻撃に踏みきれば15から20%の損耗率を覚悟すべきとの意見があった。実態はどうだったか。イラクIADSを相手にロールバックを行ったが昼夜通した攻撃でイラク上空の航空優勢を3日で確保し、損耗率は1%未満だった。同様のロールバックはイラクの自由作戦(2003年)でも成功を収めている。
1982年6月にイスラエル空軍はシリア・ベカー渓谷でソ連供与のIADSへ対処を迫られた。予想ではイスラエルのF-15、F-16で相当の損耗が発生すると見られたが、イスラエル空軍はUSAFのロールバック戦術を採用し、敵脅威を排除しながら味方損耗は2日でゼロという戦績を上げ、その後の航空優勢を維持した。
損耗予想が過剰になる傾向があるのは予想モデルが現実と乖離しているため実際には対抗策、おとり、攻撃側の戦力規模、現場で優れた決断をする優秀な乗員が状況の変化に応じ戦術を切り替えるのが通例だ。
確かにステルス戦闘機・爆撃機やスタンドオフ兵器が今後の航空作戦の鍵をにぎる。だがステルスやスタンドオフ兵器だけに依存していては効果的なロールバックができない。それは砂漠の嵐作戦、イラクの自由作戦、べカー渓谷の戦闘事例から明らかだ。さらにステルス機材やスタンドオフ兵器で数量は多数確保できない。だが敵防空網をロールバックできれば非ステルス機や支援機も敵の抵抗が時として見られても自由に行動できる。厳しいと思われた空域が厳しくない空域になるのだ。
USAFには時代を見通した指導者がこれまで現れており、過去の戦闘事例から学び、IADSの限界をつく戦術を採用し、紙の上の損耗率試算と実際の戦闘との違いを理解し維持可能な戦力を整備し、迅速なロールバックで永続的に航空優勢を確保する意味を理解できる人員のことだ。今日の米空軍もこれまでの米空軍がしてきたのと同じ仕事が可能となる。すなわち迅速かつ決定的に航空優勢を確保し維持することだ。
マイケル・ロー大将は米空軍参謀次長のほか航空戦闘軍団の司令官も経験している。

2018年8月6日月曜日

★イスラエル空軍はF-15新規追加調達を前向きに検討中

Aviation Week & Space Technology

Why The Israelis Want A Larger, More Modern F-15 Fleet イスラエルがF-15の増備拡充を必要とする理由



イスラエルはフライバイワイヤ技術を搭載した高性能F-15の追加導入を検討中だ。Credit: Tech. Sgt. Kevin J. Gruenwald/U.S. Air Force


Jul 31, 2018Arie Egozi | Aviation Week & Space Technology
スラエル空軍が将来に向けた装備向上に取り組み、イランが支援するシリア、さらにイラン自体にも対移行しようとしている。このためまずボーイングF-15機材の性能向上を最優先する。
今年初めにイスラエルがシリアの原子炉攻撃に踏み切ったと公表した。これは北朝鮮支援で建設されたもので核兵器用燃料を製造していた可能性がある。
この攻撃ではシリア探知網を無効にした。シリアにはイスラエル軍に対抗できる空軍力はないが、イランはイスラエルから1,000マイルも先にある。
このためイスラエル空軍には両方面で別の機種が必要で遠距離でも重装備で爆撃しつつ、早期警戒網を突破する必要がある。 
2016年からイスラエルはF15Iラーム改修に取り組んでおり、レイセオン製APG-82(V)1アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)を選定したが旧式APG-70レーダーの換装ははじまっていない。改修には機体構造強化や新装備搭載もある。
改修の実施決定は二年前で、その時点でロッキード・マーティンF-35導入も決まっていた。イスラエル筋によれば空軍は40年先を展望しているという。「F-15には優位性が多々あるが、イスラエル製装備をF-35に搭載すれば性能がさらに上がる」
イスラエルにとってF-15は攻撃力の屋台骨だ。このため同機の追加調達を検討中だ。
F-15生産ラインはカタール発注により2020年まで維持が決まっている。
イスラエル空軍がF-15追加調達に動けば米国で2016年に承認された海外軍事装備金融のしくみを使うことになりそうだ。2019年から10年にわたり380億ドルを供与することになっており、以前の10年の310億ドルをうわまわる規模だ。 
並行してイスラエルは米州軍航空隊が使ってきたF-15D9機の再生改修に取り組んでいる。この機材はオレゴン州クラマスフォールズの173戦闘機隊で供用されていた。
機材はイスラエルに寄贈されたもので「非常に高性能な仕様に」改修されると消息筋が語っている。
イスラエルのF-15Dバズは以前から改修を受けており、制空、対地攻撃、偵察、指揮統制用の中継用と多用途戦闘機として長距離攻撃ミッションの支援に投入されている。
イスラエル空軍は新規製造F-15を調達してからF-35調達の75機原案を変更すべきか検討するようだ。
イスラエル筋によれば米国防総省との間で高性能版F-15の20機から25機調達の可否を協議中だという。
協議対象のF-15の型式について詳細は不明だが、筋によればカタールが調達するF-15イーグル2040Cに近く、ミサイル搭載本数の増加がねらいのひとつだ。
また特殊通信ポッドを搭載し、データを僚機と安全に交換できる。また2040Cにはレイセオン製AN/APG-63(V)3 AESAレーダーや長距離赤外線探知追尾装備も搭載する。
商談が成立すれば米空軍向けT-X練習機や米海軍のMQ-25艦載給油UAVの受注をともに失ってもボーイングの生産ラインは2020年代なかばまで維持できるとキャピタルアルファパートナーズのバイロン・キャランは見る。「海軍とクウェートの発注でF/A-18生産は2020年代はじめまで維持でき、ボーイングはカタール向けF-15納入を2022年末に完了する」とキャランは書き「ボーイングはF/A-18でチャンスがあるがカナダ、ベルギー、スイス、フィンランド、スペインそれぞれで成約する可能性は低い。また米空軍向けに新規高性能版F-15販売が成立する可能性も高いとは思えない」としている。

ボーイングが画策する戦闘機売込みは成功のチャンスが低いとあれば同社が有人戦闘機ビジネスから撤退する可能性も出てきますね。米空軍が食指を動かさないとしても航空自衛隊はどうでしょうか。ミサイルトラックになる新型イーグルはそれなりに魅力があると思うのですが。

2018年8月5日日曜日

US-2にギリシアが関心示す

Japan, Greece discuss defence trade co-operation 日本がギリシアと防衛輸出協力を協議

Jon Grevatt - IHS Jane's Defence Industry

03 August 2018
  
Source: Japanese Maritime Self-Defence Force

本とギリシアが防衛装備の交易・技術で協力をめざし協議を始めた。日本製装備のギリシア向け輸出が焦点のひとつだ。
防衛装備庁担当官がJane'sに8月2日、両国が「防衛装備技術の協力の見解を実務レベルで交換した」と述べた。
7月末の日本国内報道ではギリシアが新明和工業のUS-2水陸両用捜索救難機へ関心を表明したとある。
Nikkei Asian Review 記事では日本としては同国と同機輸出の協議を開始したいとある。記事ではギリシアは「数十機」のUS-2に水タンクを装着し消火活動に投入したいとある。
ただし防衛装備庁広報官によれば両国で特定の機材や技術に関する協議はまだはじまっておらず、日本政府にはUS-2の対ギリシア輸出の「具体案はない」という。
日本はインド、インドネシアとUS-2輸出の協議をしている。タイも関心を示している。
このうち規模が最大になりそうなのがインド海軍向けで12機を16億ドルで購入する意向が出ている。日本はインドと同機販売について数年間協議中だが、インドの調達ルールが複雑なこと、インドが求める技術移転が原因で成立が遅れている。

Jane'sではインド海軍はUS-2完成機を二機輸入し、残る10機はインド国内でライセンス生産する構想があるとお伝えしている。■

ロシアはもはや米国にとって最大の脅威ではない、一位はもちろんあの国

これまで何度もお伝えしているように強力な国防力の源泉は経済力です。ロシアはもともと経済力が劣りこれからも先行きが不安です。これに対して中国はどうか。このため現在は中国経済への風当たりが強くなっているのでしょう。もちろんグローバル化で中国を弱体化させれば西側にも影響は必至ですが、それも覚悟の上なのでしょう。

 

Russia's weakened military now surpassed by China's — and it leaves a trail of paper tigers ロシア軍事力の衰退、中国に追い抜かれたロシアは張子の虎なのか



Su-57 Putin T-50Associated Press
  • ロシアは軍事大国として君臨しサイバー、電子戦、核非核戦力で脅威ではあるものの今や最強の立場ではない。
  • 米国防文書は中国を主要脅威ととらえるのには十分は理由がある。
  • 中国は真の意味で革新的な兵器装備を整備し大量生産に必要な経済力を有している。
  • ロシアも強力な兵器コンセプトを生み出したものの経済不振で生産に移せない状況だ。




シアはソ連時代を含め常に巨大な軍事力を保持し第二次大戦後は米国の主要対抗国になったが国民の福祉より核兵器含む装備整備を優先させたものの結局米国を凌駕することはなかった。
ロシアはサイバー戦能力、通常戦兵力、恐るべき核兵器、電子戦で世界有数の水準を整備しつつある。
とはいえ米国の最大の軍事脅威はロシアだと言い切る向きは皆無だ。それは中国だからだ。
ドナルド・トランプ大統領の下で米国は国家安全保障を新規制定したが中国とロシアを主要脅威とし、テロ活動や気候変動より上位に掲げている。中国を先に記述し、随所にその名前が出ている。

ロシア衰退の原因は経済不況だ。


T-14 Armata Russia T-14アルマータは構想はいいが実現に程遠い。 Reuters

ロシアの脅威は数量に頼るものだ。ロシアが2014年に不法にもクリミア半島を併合したが、周辺国に対する横暴な動きは長きにわたっている。
ロシアが新型核兵器で米ミサイル防衛をかいくぐる策に出ている、というが新しい技術進歩ではない。米国では1970年代のミニットマンIII核ミサイルで同様にロシア防衛網を回避する能力を実現していた。
東欧周辺に配備中のロシア装備はNATOを凌駕する有効距離があるが、通常戦ではロシアは苦戦に追いやられそうでウラジミール・プーチン大統領の選択はハイブリッド戦であり、他国の情報網に入り込み陰謀を進める外交努力にある。
ではロシア軍事装備に真の意味で技術革新が見られるのだろうか。ロシアはSu-57を登場させ、米F-35やF-22に対抗するステルス戦闘機とされるが、資金不足で12機しか発注できていない。同様にT-14アルマータ戦車はNATO戦車を撃破すると豪語したものの本格生産に入っていない。
T-14、Su-57ともに原油価格が下がり、米国による制裁措置が重なり経済不振が続くため犠牲になっていると言える。
中国はロシア製装備を購入あるいはリバースエンジニアリングし自国軍事力整備の基礎を作ったが今やハイエンド戦分野ではロシアをしのぐ存在だ
米国の独壇場だったステルス戦闘機に初めて挑戦した他国はロシアではなく中国の成都J-20だった。またソフトウェアやコンピュータ分野でも急進展を示しており、量子コンピュータ、人口知能がその一例だ。
プーチンがクリミヤ併合でロシアの地図を塗り替えたように北京は南シナ海で軍事拠点を整備し一層強固な主張を繰り広げている。
中国は新型ミサイルも整備し米海軍の負担を強めようとしている。中国はソ連時代の空母を導入し訓練艦としたが、三隻以上の空母を建造し兵力投射能力を実現しようとしている。半面でロシアは一隻しかない空母もタグボートの力を借りないと航行できず2022年まで使えない状況だ。中国はみかけだけだが米国との技術競争に打ち勝つ印象を与えている。
ロシアではなく中国が米軍の標的だ。人口でロシアの10倍の規模で米国から世界一位の経済規模を奪おうという中国に対してロシアの軍事力が話題になることは少ない。

ロシアは西側民主体制のゆさぶりとともに衛星国家群への働きかけをつよめるだろうが、半面で中国は米国と対等に対抗できる軍事力を全方位で整備しようとしているのだ。■

2018年7月29日日曜日

★イスラエルがボーイングから大量機材購入へ。F-15新型含む

Israel looks at massive military aircraft purchase from US firm Boeing イスラエルが大規模軍用機調達をボーイングから画策

$11 billion deal, to be paid from US military aid, would replace outdated transport helicopters and refueling planes, add a squadron of stealthier F-15s to Air Force arsenal 

110億ドルを米軍事援助制度で利用し、旧式輸送ヘリ、給油機の更改をめざしさらにステルス型F-15一個飛行隊の導入を目指す

By TOI STAFF26 July 2018, 3:48 pm  5


An Israeli Air Force F-15 takes off during the Blue Flag air exercise at the Ovda air force base, north of the Israeli city of Eilat, on November 8, 2017. (Jack Guez/AFP)
イスラエル空軍のF-15がエイラートのオブダ空軍基地を離陸しブルーフラッグ演習に参加する。November 8, 2017. (Jack Guez/AFP)


イスラエル空軍がこれまでで最大規模の110億ドル相当の調達交渉をボーイングと進めている。
内容は性能向上型F-15一個飛行隊分、輸送ヘリコプター一個飛行隊、給油機を含むとイスラエル現地紙ハヨムが伝えている。
調達には米軍事援助予算を使い、2020年代に新型機導入を目指す。
軍関係者によればイスラエルのヤスール輸送ヘリコプター(シコースキーCH-53シースタリオン)および空中給油機は老朽化が進んでおり、機材更新に高優先順位がついている。
空軍はボーイング機材の導入を希望していると記事は紹介。ボーイングには767旅客機を改装した給油機があり、信頼性は証明済みで納入も迅速に可能だ。ボーイングのヘリコプター製品にはCH-47チヌーク、V-22オスプレイがあり幅広い性能をヘリコプター部隊で実現できる。
実現すればイスラエルはF-15調達を20年ぶりに再会することになる。
検討中のF-15はIAすなわち「イスラエル向け高性能版」と呼称されレーダー波吸着剤や機内内部への兵装搭載などステルス性能がある程度まで実現する。
案件は未成立だがイスラエル空軍の最終提言内容が参謀総長ガディ・エイセンコット中将、国防省に届けば安全保障関連内閣会議で最終決定が下るはずだ。■
F-15はここにきて急に息を吹き返してきましたね。やはりコストパフォーマンスが高い、それだけ第五世代戦闘機が魅力がないということでしょうか。ここでいうイスラエル用機材は以前話題に出たF-15SEサイレントイーグルの焼き直しのように聞こえますね。KC-767はここでまた受注成功すればボーイングはKC-46と並行して二機種を新造することになりますが大丈夫なのでしょうか。日本はKC-46導入を早々に決めていましたね。