2019年3月4日月曜日

インド-パキスタンは平穏化の様子、米政府がF-16投入の事実をパキスタンに確認へ

このまま両国が落ち着けばいいのですが、偶発的な事件はすぐにでも発生しそうです。パキスタンがどんな説明をするか見ものですが、契約を守れない国家は米国から相手にされなくなるでしょうね。

Washington wants to know if Pakistan used U.S.-built jets to down Indian warplane パキスタンが米製機材でインド軍用機を撃墜したか米国が実態調査へ


United States Air Force [Public domain], via Wikimedia Commons

政府はパキスタンが米国製F-16でインド軍用機を撃墜したのかを突き止めるとの意向を3月3日示し、米国との合意事項の違反の有無を確認する。核武装したインド、パキスタン両国は緊張緩和に向かっているようだ
両国は空軍機を作戦投入し、2月27日にはインド側一機がカシミールで撃墜され世界を驚かせ、戦火拡大の恐れが広がった。
パキスタン軍報道官はパキスタンがF-16を投入したとのインド発表を同日中に否定した。
パキスタンは勾留したインドパイロットを3月1日に返還し、「平和のジェスチャ」と大々的に宣伝し、緊張緩和の姿勢を示したが両軍は警戒態勢を解いていない。
管理線(LoC)が事実上の両国国境となっているカシミールではこの24時間は比較的平穏だったがインド治安維持部隊によれば戦闘員対策としての作戦は続いており二名の戦闘員を殺害したという。
在イスラマバードの米大使館からはパキスタンがF-16でインド機を撃墜したとの報告に注目し、米国からの軍事装備品販売合意でパキスタンに機材仕様の条件を定めている内容に違反している可能性を精査するとの発表が3月3日に出た。
「より多くの情報を集めているところで、防衛装備品の誤用についてはすべての状況をチェックする」と米大使館が発表。
パキスタンはF-16をドッグファイトに投入していないとするが、MiG-21を撃墜した機材の種類についての説明はない。同国は中国設計のJF-17を国内生産している。
パキスタンは長く米製軍事装備品を導入しており、とくに米主導の対テロ戦でパキスタンが中核的強力国の扱いを受けた2001年以降はその傾向が強い。
その一環でロッキード・マーティンF-16を数次にわたり購入したが、その後米国との関係が悪化し2016年をもってワシントンからの補助は打ち切られた。
パキスタンを制約する「エンドユーザー合意事項」の内容は正確には不明だ。「米政府は今回の事案の性質を鑑みていかなる論評も確認もしない」と米大使館は述べている。
2月28日にはインド政府が記者団に空対空ミサイルとするものの一部を公開し、発射可能なのはF-16のみとし、全日にパキスタンが同機を投入した証拠だとした。
一方でパキスタン軍広報はインド側標的を「ロックし」パキスタン軍の攻撃能力を誇示したが被害を発生させないよう空き地を攻撃したと報道陣に水曜日発表した。
パキスタン側は同日の作戦はインドが前日に領空侵犯したことへの報復とし、インドはバラコット市街地北部の森林を空爆していた。
インドは戦闘員訓練施設を攻撃したと述べていたがパキスタンはそのような施設そのものが存在しないと否定している。ロイターは現地調査したが現地民も否定していた。
今回の軍事衝突でパキスタン7名、インド4名が死亡したが、3月3日はカシミールは比較的平穏だ。同地方は英国からの1947年独立以降三度にわたり両国間の衝突の原因となってきた。
インドが実効支配する側のカシミールでは部隊が日曜日に戦闘員二名を射殺したが部隊にも一名の犠牲者が発生し、この二週間で25名が死亡している。14.最新の作戦はカシミールでパキスタン領内に本拠地を置く戦闘員集団が自爆攻撃でインド治安部隊40名を殺害した2月14日の事件が契機だった。■
Additional reporting by Abu Arqam Naqash in MUZAFFARABAD; Writing by Krishna N. Das and Drazen Jorgic; Editing by Christopher Cushing and Susan Fenton

★KC-46の受領を米空軍が停止中---その理由とは

製造工程で異物が残ったまま、なんて昔のデトロイトのクルマ製造ラインの逸話みたいです。もちろん見つかったのはコーラの瓶ではないはずですが。これでボーイングはさらに自社費用による解決が必要となり、経費がふくらむため日本向け機材の価格は当然高くなるでしょうが工程が安定し品質が良くなった機体が日本にやってくればそれはそれで良い結果と言えるのかも知れません。

US Air Force suspends KC-46 tanker deliveries

米空軍はKC-46受領を中止中

By: Valerie Insinna


製造中の KC-46 (2019年1月24日撮影)、ワシントン州エヴァレットで。,(Valerie Insinna/Staff)

ーイングKC-46給油機の米空軍向け納入が一時停止している。異物混入問題を空軍が調査しているためと3月1日に空軍調達部門が説明している。
ウィル・ローパー調達技術補給担当次官補は報道陣に同機受領の再開は時間がかかると説明している。
「担当部門からのデータでKC-46生産ラインで異物が見つかっている。どこまで被害が広がり生産ラインに影響が出るかはまだわからない」.
「製造工程や社内のしくみや管理に行きつく。このままではボーイングに行きDD250再承認が必要となる」とし、機材受領の国防総省用語に触れた。
ローパー次官補は機体内部に工具や異物が残ったままとの懸念から空軍は同機の飛行をほぼ一週間にわたり停止中と報道陣に述べ、安全上の懸念を示した。この問題はSeattle Timesが最初に報じた。
ただし空軍の現地視察チームの初期報告は肯定的で2機の納入は2月28日夜にも了承されるとローパー次官補は述べた。
3月1日にローパーはその時点で国防契約管理庁(DCMA)や航空機動軍団他関係者には今後の対応について話していないとしながら検討の結果で納入を遅らせることになったと述べている。
Seattle Times紙が入手したメモでは異物の数々について触れている。FODの略号で作業員が機内に工具を置き忘れた事例、生産ライン上で見つかった8件、空軍納入後に発見された事例2件があるという。
.ローパーはボーイングのエヴァレット工場(ワシントン州)でのFOD管理が低下している証拠があるとは言っていないものの空軍は根本原因の解消に取り組み問題の全体像の把握につとめているとする。
「FOD問題の過去事例をひもとくと深刻化したケースも有る。逆に取るに足らない問題に終止した例もある」とし、「今回は根本原因がまだはっきりしない。まだ確実でないなら安全を考え慎重にすすむべきだ。このため十分解明するまで機体受領を止めている」
「解決方法は詳しく説明できないが、機体受領を進めるべきでない理由は明確だ」
空軍とDCMAは製造工程の改良について13点をボーイングに求める意向で、本日中に改善策を決定すると3月1日にローパー次官補は述べた。改善費用はボーイングが負担し実行に責任を果たすが、同社は納入済み機体の点検を申し出ている。
ボーイングはKC-46の初納入を1月に完了し、今まで6機がマッコーネル空軍基地(カンザス州)とアルタス空軍基地(オクラホマ州)で受領している。しかし技術問題で事業進捗が遅れ初号機の納入は予定の二年近く後だった。
「問題はコストではありません。今回はこちらには追加経費は派生しない。訓練不足が問題だ。パイロット、オペレータの訓練が必要だ」(ローバー)

ボーイング広報は空軍と協力し給油機納入を予定通り進めたいとのコメントが出ている。■

F-35誕生の背景と今後の展望 

Jointとは三軍共通の意味なので当ブログでは一環して共用と訳しています。同じ発想でF-111が以前ありましたが構想どおりにならず、F-35でなぜ再び同じ道をたどるのかわからなかったわけです。(逆に海軍用機材に空軍が目をつけたF-4、構想だけに終わりましたがF-15を海軍用に改造する話もあり、共通機材の概念が間違っているわけではないようです)西側防衛をこの機体に任せていいのか、というのが当ブログの一環した疑問点です。みなさんはどう思いますか。ヤコブレフの基礎研究をうまくロッキードが利用したというのは本当かも知れませんね。

The Crazy Story of How the Stealth F-35 Fighter Was Born ステルスF-35誕生の不思議な経緯

Development and procurement of roughly 2,400 F-35s through 2037 is now estimated cost over $400 billion, roughly eight times the annual defense spending of Russia. 約2,400機のF-35の開発調達が2037年まで続き、総額4,000億ドル事業となる試算があり、これはロシア国防予算の8年分に相当する。
February 24, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35Yak-38RussiaStealth FighterU.S. Air Force

2019年に初の完全戦闘対応F-35ライトニングがブロックIIIFソフトウェアを搭載し就役する。構想から27年、350機超が引き渡された後での達成だ。ペンタゴン官僚組織の中で構想が生まれた直後から人類史上最高額の兵器体系になるまでの経緯をたどってみよう。
1980年代にペンタゴンは第4世代機の後継機はステルスと決めた。空軍の高性能戦術戦闘機競作から航空優勢戦闘機として十分な能力を有するF-22ラプターが生まれたが、海軍・海兵隊は独自のステルス機を求め、空軍は単発F-16多任務戦闘機を大量供用中だったが、ラプターは高額すぎ後継機になり得なかった。
こうして1992年に海軍と空軍はそれぞれのCALFとJASTを共用打撃戦闘機事業に統一した。目標は安価かつ単発で攻撃に主眼を置くステルス戦闘機として三軍で共用しコストを節約しつつ米同盟国へも輸出を目指すというものだった。この点でF-22と異なる機体をめざした。さらにJSFでは最先端デジタル技術と素材技術で効率を引き上げるねらいもあった。
三軍が使用する共通設計のため要求内容は当初から重荷となった。たとえば海軍向け「C」型は空母運用のため主翼が大型で降着装置が強化される。海兵隊はハリアー後継機のジャンプジェットを求め小型揚陸空母から運用可能な垂直離着陸能力VTOLを必要とした。
だがVTOL能力により機体は大型となりハリアーやYak-38のようなそれ以前のVTOL機は速度、ペイロード、航続距離いずれも通常型より劣っていた。さらにJSFとして共通性を求めるあまりその他のJSF各型も抗力を生むずんぐり形になってしまった。
ここでF-35の源をたどる物語はエリツィン時代のロシアへ奇怪な寄り道をする。ソ連崩壊で資金不足となったヤコヴレフは共同開発からYak-141ジャンプジェットの開発資金の確保に必死だった。同機はリフトファンを別個に設けながら超音速を狙っていた。1991年にロッキードはYak-141の3機と貴重なテストデータを総額4億ドル程度で入手した。
1996年にペンタゴンはボーイングロッキードにそれぞれ7.5億ドルで試作機を2機ずつ製作させ5年後にテスト飛行させた。ボーイングのXF-32は不格好でずんぐりとしたデルタ翼機で排気口を傾けて偏向推力を確保し垂直飛行を目指した。一方X-35はYak-141同様にリフトファンを用いながらリフトファンの回転軸は別に確保する技術的に複雑ながら高度な内容だった。
2001年、空軍はJSF選定で完成度が高いとしてF-35を採択すると発表した。国防総省は開発費用として調達が期待される各国、オーストラリア、カナダ、イスラエル、イタリア、日本、オランダ、ノルウェイ、韓国、トルコ、英国からも資金を確保した。F-35事業協力国には莫大な部品製造や整備作業の一部が与えられ、国産ミサイル統合等の特権が与えられた。
だが「完全新型」機の設計は簡単な部分でペンタゴンはライトニングに未完成かつ最先端技術を採用しようとしていた。モジュラーパネルにレーダー吸収素材を焼き込み機体表面としたのは一つの進歩だった。
新技術にヘルメット装着画像表示システム、オープン・アーキテクチャのミッションコンピュータでアップグレード対応を可能としたもの、高性能防御装置と多面的センサー(分散型開口システム)の組み合わせ、ステルス性のあるデータリンクで機体とセンサーデータをネットワークで結ぶこと、低探知性のAPG-81レーダーがある。地上では複座練習型を作らずフライトシミュレーターを使い、補給活動では整備記録を蓄積し予備部品調達を迅速にする狙いもあった。
新技術は実証ずみの基本設計に取り入れるのが妥当である。だがペンタゴはF-35のエイビオニクス、ソフトウェア、機体を並行開発させようとした。つまり「基本型」のF-35はなく、つねに進化していくことになる。このため一つの部門の遅延が他部門にも影響し新型技術の取り入れが遅れるとコストも超過した。
ライトニングの機体重量は2千ポンドも増え航続距離が犠牲になった。とくにF-35Bでこの影響が顕著となった。このため再設計で重量を削ろうとしたため構造問題がF-35B初期生産機材で見つかっている。
米会計検査院は早くも2006年に警鐘を鳴らし始めた。2009年になると費用超過の大きさからロバート・ゲイツ国防長官(当時)の厳しい目にさらされF-35事業の仕切り直しを図り事業中止の可能性も話題に登った。だがライトニングは中止できないほど大きな事業になっており、予算と開発力を他の事業から奪い取っていた。ゲイツはハイエンド機材のF-22を当初の500機生産から180機で終了させている。
F-35開発日程が5年程度遅れる中でペンタゴンは追加予算で旧型機の供用期間延長を図る必要に迫られた。一方で省内の試験評価部門は数百にのぼる不具合点を見つけ、酸素供給装置の不良、機関砲の射撃方向のずれ、突然のコンピュータ終了などだった。カナダがまずF-35発注を取り消した。
海兵隊が2015年に「初期作戦能力」を認定し、空軍が2016年にこれに続いたが要求性能を水増ししていた。海軍のF-35Cは2019年にIOC獲得の予定。
低率初期生産で機体価格は200百万ドルになった機体には重要な性能がついておらず、テスト機材として活用されてきた。こうした機体を実戦にまわすと高額の性能改修が必要となる。
では三型式運用で費用節約はどうなったか。実は三型式の共有部品は2割程度しかない。
2013年にF-35は再び批判にさらされた。航続距離が足りず速力も劣り、上昇限度が低く、操縦性、機内兵装搭載量がいずれも旧型機水準に達しないというのだ。F-35支持派はライトニングのステルス性能、長距離センサー能力、ミサイル発射性能に比べればこうした点は取るに足らないとした。理屈の上ではF-35パイロットは長距離で敵探知し短距離での空中戦闘を回避できる。
2,400機ものF-35を開発調達すると2037年までに推定4,000億ドルとなり、ロシア国防予算の8年分に相当する。2070年まで運用すれば1.1兆ドルが別に必要となるとの試算もある。
不良、遅延、低稼働率が更に加わったF-35だが2018年は一定の進歩を示した。F-35Aの機体単価は89百万ドルに下がり、イスラエルのF-35Iと海兵隊F-35Bが戦闘デビューした。ライトニングは空戦演習で強い性能を発揮している。ベルギーとシンガポールがF-35導入を決め、さらにギリシャ、インド、ポーランド、ルーマニア、スペインでの採用が期待視される。F-35Bジャンプジェットはイタリア、英国の空母でも供用中で、日本が空母航空戦力を再構築するきっかけになった。
同機を好きか嫌いかは別としても辛い開発過程から参考になる教訓や反面教師の側面もあるのは確かで、F-35がいまやしっかりとその存在を示しているのは確かだ。同機が成功するか、あるいはペンタゴンが求める航空戦の新しい姿の実現に失敗するかが数十年にわたり厳しく問われていくだろう。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Image: Wikimedia

2019年3月3日日曜日

中国がSu-57を検討して出した結論とは....異様な中国のステルス戦闘機運用思想

米ロが似通った設計思想を持っているのに対し中国が異質なのか、そもそも戦闘シナリオが違うのか、米空軍が機種を絞り込もうとする中で、中国はむしろ特化した機体をたくさん揃える傾向があると思います。Su-57は中国からすれば魅力がないのでしょうか。

China Is Studying Russia's Deadly Su-57 Stealth Fighter: Here's Why They Think 中国がロシアのSu-57を研究してわかったこと

February 26, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaRussiaMilitaryTechnologyWorldSu-57J-20F-22F-35
国人専門家はロシアのSu-57ステルス戦闘機に複雑な見方をしていると中国国営メディアが伝えている。Su-57には欠点も多いが「ユニークな」機体というのがWang Yongqingの結論だと環球時報にある。
WangはJ-31を開発した瀋陽航空設計研究所の主任設計者だ。中国海軍が同機の採用を検討中と伝えられる。
トラブル続きのSu-57を詳しく検討したWangは中国にも参考となるはずの教訓を見逃しているようだ。
Su-57が大量にロシアで供用される可能性はないようだが、同機の設計に欠陥があったわけではなく、むしろ非常に洗練されよく考慮されている。一番の問題は同機に機関銃が搭載されているが中国のJ-20は搭載していないことだ。
.だが機関銃問題はWangには重要でないようだ。
「中国観測筋はSu-57の性能を低く見ているが、軍用機設計者のひとりにはSu-57はとてもユニークに映るようだ」と環球時報の2019年1月24日付けが伝えている。
Su-57は大型双発戦闘機で大型主翼があり、2010年に初飛行した。ロシア空軍は10機ほどを取得しテストしてきた。スホイはSu-57全機を手作業で生産したといわれるが、出来具合がいかにも雑だ。
Su-57には戦闘装備がないといわれる。2機はシリアに2018年2月に展開したが、ロシアは根拠を示さずに空爆に投入したと発表している。
クレムリンは2018年8月に生産型機材10機ほどを発注し、2019年に初の実戦飛行隊の編成を目指した。だが国防予算が減少する中で同機の大量調達はしないとの決定が出た。
ロシア政府はSu-57の調達削減方針を正当化してきた。「Su-57は現時点出世界最高の機体ですよ」とユーリ・ボリソフは2018年テレビで語っている。「そのため同機の量産を急ぐのは理にかないません」
人民解放軍空軍はJ-20ステルス戦闘機で遥かに高い成功を実現してきた。2011年初飛行し、2018年初頭にPLAAFは同機初の飛行部隊が作戦可能となったと宣言している。
中国は少なくとも三種類のステルス軍用機を開発しており、戦闘爆撃機、爆撃機、そしてJ-31があり、後者は中国空母への搭載になる可能性がある。
PLAは米国に次ぐ世界第二位のステルス機運用をめざするがWangはSu-57開発から学ぶところがあるという。
.Su-57の性能は全体としては「まったく悪いものではない」とのWang発言を環球時報が引用している。
Wangの分析ではSu-57は「革新的空力特性の機体設計で推力偏向制御が可能なSu-57では超音速巡航飛行能力があるところが重要で操縦性もずばぬけている」とある。
Su-57の設計を検討しWangはロシアと米F-22、F-35ステルス戦闘機の作戦思想を比較している。
「米側の次世代航空戦闘の概念では視界外戦闘を重視していますが、その場合にミサイルは相当の距離を飛翔するわけでSu-57では操縦性を極限まで高めて回避する必要があります」「ロシア戦闘機は特殊レーダーを搭載しミサイルの飛来方向を正確に探知します」
「超射程ミサイルは別にすると最終的な対決は近接距離で発生するでしょう。そうなるとステルスや極限までの操縦性は意味を失います」と環球時報は伝えている。Su-57には30ミリ機関砲を近接戦に備え搭載する。
Wangの評価から米・露・中のステルス戦闘機での方向性が見えてくる。Su-57設計がF-22やF-35との近接航空戦を想定するのに対し、米戦闘機両型も機関銃を搭載していることに要注意だ。米空軍はステルス機も超接近戦に備える必要があると考えている。
対照的に中国のJ-20には機銃がなく、中国がステルス機の作戦想定を全く違う形にしているのはあきらかだ。「USAFや業界はJ-20は機敏な操縦性を想定せず速度とステルスを前面に押し出した機体と見ている。陸上目標あるいは給油機やISR機材への奇襲攻撃を想定しているのだろう」とAir Force誌は結論を出していた。
.言い換えればJ-20は防空網を高速突破してミサイルを発射する機材だ。近接航空戦闘は想定していないのがあきらかだ。
「空力特性上の成約とミサイルの運用条件を考えると将来の戦闘でも銃は不可欠だろう」とスチュアート・ニコルス少佐は1998年に空軍大学校で論文を書いていた。
「機銃は単純ながら運用維持が楽だ」とし、「敵の電子対抗手段やフレアでミサイルの性能は下がるが機銃は無関係だ。追う一つ銃の大きな特徴は搭載レーダーの機能と独立していることで、レーダーが敵の対抗措置に脆弱であることが重要だ」
.Su-57,F-22、F-35を比較することでWangは中国のステルス戦闘機部隊に有益な知識を得たと主張する。おそらくその中心は設計思想こそ違うがロシア、米国ともにステルス戦闘機に機銃を搭載していることだ。■
David Axe serves as the new Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring  and Machete Squad.

Image: Creative Commons.

お知らせ ターミナル1がお引越し

いつもこのターミナル2をごらんいただきありがとうございます。

さて、この度民間航空宇宙開発等を扱うターミナル1(以下T1)を移転することにしました。

あたらしいURLは
https://aviationspacet1.blogspot.com/
です。

T1は2008年から開設していますが、掲載記事が見にくくなっておりますのでこの度移転を決めました。

これまでの記事はそのまま残し、3月中は新旧サイトで同時掲載、4月kら新サイトのみに記事配信の予定です。

T1にもご愛顧をお願いします。

ご参考 現行のターミナル1URLは
https://wind.ap.teacup.com/aviationbusiness/

です。

オーストラリア>空軍力の整備と防錆装備輸出への期待

アジア太平洋時代に日本もオーストラリアとの連携を強めていますが、意外に同国の実態は知られていない気がします。防衛産業の積極輸出を目指す点では日豪は共通していますが、方法論や仕組みづくりは微妙に違うようですね。


Australia formulates its path to military modernization and industrial growth オーストラリアは軍事装備近代化と産業発展をこう進める


By: Mike Yeo

2015年2月の航空ショーでオーストラリア空軍のF/A-18Aホーネットがフレアを投下した。(Scott Barbour/Getty Images)



国に最も忠実な同盟国といってよいオーストラリはアジア太平洋の要衝で空軍力の再整備と国内防衛産業の振興を通じてグローバル競争力実現を近未来に実現したいとする。

オーストラリアは世界と隔離されているように見えるが、アジア貿易への依存から地域内安全保障に多大な支出をしてきた。
.
同国軍は多国籍軍の一員としてアフガニスタン、イラクに展開し、イスラム国との戦いも支援してきた。国内政界には米国との同盟を重視し法の支配を世界規模で維持すべしとの意見が強い。南部ヴィクトリア州で隔年開催の航空ショーが今月末に始まるが、同国はロッキード・マーティンF-35Aの初号機を受領して空軍装備近代化に向かう中で陸軍海軍とのネットワーク化を目指している。

第5世代機の導入

ジェリコプランPlan Jerichoとして王立オーストラリア空軍RAAFは統合ネットワーク化された空軍力を情報化時代に恥じない形で届ける組織への変革を模索している。その中核がデータや状況把握の増強を図りつつ新鋭機供用を開始することだ。F-35Aの72機がF/A-18A/Bホーネットの後継機として主力戦闘機となる。これを支えるのが24機あるボーイングF/A-18FスーパーホーネットとEA-18Gグラウラー(11機)電子攻撃機だ。

F/A-18A/Bは順次退役を始めており、2022年頃に完全退役する。カナダが25機購入し、うち18機を稼働させ残りは部品取り用にする。

オーストラリアはロッキード・マーティンAP-3Cオライオン対潜哨戒機の後継機としてボーイングP-8Aポセイドンとノースロップ・グラマンMQ-4Cトライトン高高度長時間飛行UAVを海上の状況把握ミッションに投入する。

P-8Aが先行し、発注15機のうち7機が引き渡し済みだ。トライトンは6機発注で2023年から引き渡しが始まる。

P-8Aは国連の北朝鮮制裁にも投入されており、昨年12月に沖縄から運航を開始した。

ジェリコプランで輸送機部隊との接続実証試験を開始し、業界と協力しRAAFのロッキード・マーティンC-130Jスーパーハーキュリーズ部隊にワイドバンド衛星通信装置と主翼に落下式増槽を追加し、今後ライトニングAT電子光学照準ポッドも追加され戦術能力を引き上げる。


A Boeing-made Australian E-7A Wedgetail airborne early warning and control aircraft in 2014. (Melina Young/Royal Australian Air Force via Getty Images)
オーストラリアが運用するボーイングE-7Aウェッジテイル早期警戒統制機。 (Melina Young/Royal Australian Air Force via Getty Images)


装備調達での展望

オーストラリアの防衛白書2016年版に将来の調達計画の片鱗が伺え高速救難機材や特殊作戦用ヘリコプターが予定されている。

後者についてRAAFのボーイングC-17戦略輸送機への搭載が条件で白書では『特殊部隊の兵力投入・撤収により偵察行動から対テロ作戦、人質奪回作戦と多様な条件に投入する」想定だ。C-17で三機ないし四機の輸送が可能な小型機にする想定だ。

白書ではRAAFの初等練習機の更新を2022年開始としている。空軍はBAEシステムズのホーク127を初等練習機兼戦闘機として供用中だ。
ホークは2026年頃まで供用可能と見られる。

RAAF参謀総長のレオ・デイヴィス空軍中将Air Marshal Leo Daviesは次期練習戦闘機で選択肢を複数検討中で、ホークの供用期間延長も含むと昨年の取材でDefense Newsに述べていた。

同国は海軍艦艇から無人機を運用する構想も検討中だ。海軍はシーベルS-100カムコプターで実証試験を行い今後導入するパトロール艇やフリゲートに搭載する無人機の調達も検討中だ。

防衛産業への期待

現時点のオーストラリア政権は国内産業育成に高い優先順位をつけており、現地産業界の参画にむけて努力してきた。

F-35生産事業でオーストラリア企業が垂直尾翼、兵装庫、機体表面パネルの製造で実入りの良い仕事を獲得している。

さらにF-35運用の維持に絡むオーストラリア企業は多い。この内BAEシステムズオーストラリアが南太平洋地区の機体補給修理場に指名されたほか四社がティア1部品65点のうち64点で地域内補給整備業務を請け負う。
.
英国はボーイングE-7ウェッジテイルを空中早期警戒機に昨年選定したが、オーストラリアは同機を供用中だ。国防産業相スティーブン・チオボには英国との共同開発や企業提携の機会と写る。「オーストラリア産業界にはウェッジテイル取得と運用に関与する企業200社超があり防衛輸出案件として大きな効果が期待できる」

オーストラリア政府も防衛装備輸出を重要視しており、昨年発表の輸出戦略構想で輸出実績につながる企画、指導、評価の仕組みを提唱した。

また2018年-19年に14百万ドルを追加計上し防衛装備輸出を支援するとし、国防省内に輸出を専門に扱う組織を創設し戦略の実施を目指す。目標は2028年までに世界の防衛装備輸出トップ10カ国になることだ。■

2019年3月2日土曜日

戦力強化型ストライカー装甲車をヨーロッパに派遣しロシアへの抑止効果を狙う米陸軍

設計に拡張性があるのが利点のようですね。大量調達(ストライカーは4,500両近く生産)のメリットでしょうか。


Pentagon to Send Up-Gunned, Drone-Killing Strykers to Europe to Deter Russia

火力強化し無人機攻撃も可能なストライカー戦闘車両をヨーロッパへ送りロシアへの抑止効果を期待するペンタゴン
The US Army is arming its Stryker vehicle with attack drones, lasers, up-gunned cannons and anti-aircraft missiles
米陸軍はストライカーで無人機攻撃能力、レーザー、火力を強化し対空ミサイルの搭載もめざす




陸軍は米陸軍はストライカーで無人機攻撃能力、レーザー、砲塔を強化し対空ミサイルまでの搭載を2020年までに実現し、ヨーロッパに展開しロシアの「侵攻」を食い止めるべく国境防備体制を図りたいとする。

ロシアの脅威を前に米国は機動性と前方配備を重視した多機能装甲車両のヨーロッパ派遣を決定し、新型対空兵器を搭載させ「威力を増した」ストライカーが中心となる。

でたばかりのRAND報告書がこれまでロシアの脅威と動機について解説しており注目される。「ロシアの欧州における敵対行動」と題された報告書ではロシアの動向について説得力ある指摘が見つかる。

「2016年のロシア国内エリート層向け調査では82.3%が『現在の領土を拡張すること』がロシア国益につながると応え、2012年の43パーセント、2008年の64パーセントから増えている」

報告書の著者ラファエル・コーヘンとアンドリュー・レイディンは同時にロシアが「パラノイア」あるいはNATOの脅威を国境地帯で感じていると指摘。

「ロシアは一貫して脆弱に感じ防衛のあまり強硬な態度を時として示してきた....ロシア国境付近の小国が友好国として見られることは少ないのは敵勢力の前方基地になるとの恐れからだ」とし、プリンストン大教授スティーヴン・コトキンの見解を紹介している。

報告書にはロシアの関心地域の詳細が盛り込まれており、注目を集めるバルト海地区のみならず東ヨーロッパのスラブ語圏も含むとある。

この戦略構図を考慮すれば通常型のストライカーではヨーロッパ派遣に不十分な理由がわかる。派遣対象の車両には新型短距離防空兵器(SHORAD)としてヘルファイア、スティンガー、ジャヴェリンの各ミサイルでロシアを意識した防空能力を強化する。

中国あるいはロシアのヘリコプターや無人機がロケット、ミサイル、小火器で武装しており、SHORADはこの排除のため構想された。

これまでのストライカーに防空能力が欠けていたのでこれで解決する。またSHORAD兵器の搭載で無人機、ヘリコプター、低空飛行機、さらにミサイルも攻撃可能となる。陸軍の兵器開発部門では冷戦時に米軍はソ連脅威に直面し地上発射型対空兵器が当然ながら高優先順位を与えられていたがその後の15年は対戦闘員作戦に重心が移り能力が萎縮していたのだとする。

これによりSHORAD事業により30mm機関砲、攻撃型無人機、レーザー兵器を搭載し装甲戦闘車両を「大国間」対決想定に合う装備にする。
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陸軍上層部によればSHORAD対応ストライカー試作車が今年製造され、その後144両を生産する。

現在のストライカーにM2 50口径機関銃が搭載されているが、新型30mm機関砲は射程が二倍で火力も強力になる。

ジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズの兵器開発部門ではストライカーに搭載する小型センサー兼攻撃用無人機のテストを続けている。砲塔部分から垂直発射する小型無人機はシュライク2の名称で敵標的を探知、捕捉、追尾する。ビデオデータリンクを介し攻撃用ミサイルと協同して探知した標的を攻撃する。この技術でセンサーと攻撃の連携機能が生まれ「ハンター・キラー」になるとGDは説明。

同時に陸軍開発部門はストライカーで移動式高エネルギーレーザー兵器の運用が重要になると見ており、5kw級レーザーのテストで無人機に命中させている。レーザー兵器にはKuバンド追尾レーダーを用い自律的に標的を捕捉しその他センサー装備が戦闘中に破損しても対応可能とする。レーザーにより静かな防御攻撃が実現し、敵に位置を知らせずに戦闘任務を展開できる戦術面の優位性がストライカーに実現するという。

装甲車両の支援対象の歩兵部隊には近接航空支援の敵脅威に対抗する為移動式防空装備が必要となる。ここでストライカーのSHORADが真価を発揮する。歩兵隊がスティンガーを携帯してもストライカーが発射するヘルファイアやスティンガーの威力には及ばない。機械化部隊の大規模交戦では前方配備の歩兵隊に装甲車両の支援が必要となる。

SHORADで移動式防空力をリアルタイムで実現するのが目的だ。大型で固定式の地上発射ミサイルでは困難な任務となる。
例えばペイトリオットミサイルは中距離弾道ミサイルの迎撃に適しており、移動式とはいえペイトリオットでは敵ヘリコプターや無人機から歩兵部隊を守る能力は不足している。

「展開力」「移動力」「遠征派遣能力」を試される事態が米陸軍の目指すストライカー投入戦略の根幹だ。その意味でウェストポイントの近代戦研究所が発表した論文が注目される。ロシアは広範囲に整備した鉄道網があり兵力展開を迅速に行えるとある。ストライカー旅団は時速60マイルで移動できロシアの展開に対抗できる。この能力を数年前にDragoon Rideで示しており、ストライカー部隊は東ヨーロッパで護送任務を展開しながらNATO同盟軍との共同作戦体制を誇示している。■

-- Kris Osborn is a Senior Fellow at The Lexington Institute - HERE
Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has a Masters in Comparative Literature from Columbia University.