2019年5月7日火曜日

★やはり国産で第六世代ステルス戦闘機づくりをめざすF-3の野心的な技術目標:15年で実現できれば航空業界へのインパクトは大きい



コメントは下にあります。

Forget F-22 and F-35s: Japan Is Going Big Time (As in a 6th Generation Fighter) F-22やF-35なんか目じゃない 日本が考える第六世代戦闘機の壮大な構想

May 5, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanF-22F-3F-35MilitaryTechnologyStealth


本の中期防衛体制検討に第六世代戦闘機の三菱F-3を国産設計で開発すると静かに記述がある。
2019年2月時点で防衛省はその意向を明白にJane’s述べていた。F-3の性能要求は2020年度予算に盛り込まれ、開発は2021年正式開始、初飛行を2030年となるという。
その後、日本のテレビ放送で高推力エンジンXF-9-1ターボファンと開発中のアクティブ電子スキャンアレイレーダーの映像が流れた。開発費用を5兆円つまり450億ドル程度との試算が紹介され、一機あたり価格は200億円超とあった。
ステルス戦闘機を求める日本の紆余曲折
2016年に日本は技術上の大きな成果を上げた。先進技術実証機 (ATD) X-2心神の初飛行だ。2007年の開発開始から350百万ドルを投じ、セラミック・シリコンカーバイド複合材や推力偏向ターボファン等の技術を盛り込み優秀な機体制御性能とスーパークルーズの実現を目指した。心神のレーダー断面積は「カブトムシ」程度といわれる。
だがATDは技術実証機であり、戦闘機の試作機ではなかった。日本政府は400億ドル近くを投じたが開発を止めて海外機体メーカーに情報提示を求めた。
F-22機体にF-35の高性能エイビオニクスを搭載するハイブリッド案に訴求力があったが機体単価が215百万ドルと高くなる。日本はXF-23「ブラックウィドウ」ステルス戦闘機開発の実績のあるノースロップ・グラマンやテンペスト・ステルス戦闘機を開発中の英国のBAeにも同様に情報提供を期待した。だがいずれの選択肢も第5世代戦闘機に近い機体となり、第六世代機にならない見込みが出てきた。
高性能軍用航空産業では熟練技術者の退職や工場閉鎖更で技術が旧式化し一旦中断すると再開が極度に困難になる。今ステルス戦闘機開発を開始しないと将来の実施は不可能となり、長く米国の防衛企業に依存してきた装備品国産化の夢は消える。
F-35 と F-3の比較
日本がF-35AとF-35Bあわせて105機の追加調達方針を発表した時点でF-3実現の目はなくなったと見た専門家が多かった。さらに調達を迅速かつ安価に実現すべく日本は国内生産でなく米国内組立機の導入に切り替えた。
F-35は空対空戦も可能だがそもそもF-22ラプターの本領たる航空優勢戦闘機の設計ではないし、F-22も生産終了している。
航空自衛隊は対地攻撃能力を強化しようとしているが、領空侵犯に対応する航空哨戒が主任務であることにかわりない。2018年に航空自衛隊のスクランブル発進回数は一日三回近くになり、ロシアや中国機の接近に対応した。PLA空軍は機数で日本に6対1で優位で、最新鋭戦闘機のJ-11DやJ-20は日本の質的優位性も脅かす存在だ。
防空戦闘機に望ましい性能は長距離長時間飛行、高速性能で敵より先に武器を運用すること、優れた操縦性能で視界内戦闘のドッグファイトに勝つことだ。機齢40年になるF-15JはF-35を上回る性能を発揮できる。
とはいうもののF-35のステルス性の象徴たるレーダー断面積の小ささや強力なネットワーク型センサーはF-15より生存性を高くしてくれる。だが日本はステルスであり空対空戦で負けない機材を求めている。
Jane’sが日本関係者にF-3で優勢事項の上位5つを尋ねると、まず口を開いたのは「将来の航空優勢性能」だった。
その他の事項にはアップグレードの余地があること、国産技術の搭載、そして価格がある。日本は輸出による経済効果を期待し、2014年の武器輸出緩和の効果を活かしたいとする。だが日本製軍用ハードウェアは極めて高価で輸出は成功していない。ステルス戦闘機は需要こそ高いが入手は困難な状態が続き、輸出で成約したのはF-35だけだ。
F-3はどんな機体になるのか
確かなのはF-3が双発戦闘機で機内に6発搭載することだ。構想図数点が異なることから最終案の選定はまだのようだ。だがF-3では搭載をねらう技術が他にもある。
2019年にIHIでXF-9-1低バイパス比ターボファンのテストが始まった。このエンジンは11-12トンのドライ推力、15-16.5トンガウェット推力(アフターバーナー使用時)で摂氏1,800度までの耐熱性があるといわれる。F-22もF119ターボファン双発だがドライ推力が13トン、ウェット推力17.5トンで、XF-9はF119より50センチ短く直径も30センチ小さい分だけ機内兵装搭載量を増やせそうだ。
防衛省は三次元偏向推力ノズルを求めており、エンジン推力方向を最大20度まで全方向に変える。これでレーダー断面積を犠牲にせずにF-22やSu-35に並ぶ操縦性能を有する戦闘機を実現でき、ミサイル回避や視界内空戦で優位に立てる。
XF-9は180キロワットもの大容量発電が可能で指向性エナジー兵器としてレーザーや高周波兵器の電源に活用でき、弾道ミサイルが日本に向かう際にミサイルの電子回路を使用不能にできる。
またF-3の機体表面を「一体型」レーダーアンテナに変え、複合材のスマートスキン・センサーとして使う研究をしており、電磁ESMセンサーのテストを実施しており、敵機探知とともに自機の出す無線周波数を最小限にする技術を試した。
コックピットではF-35式のヘルメット搭載ディスプレイを採用し、大型液晶ディスプレイを組み合わせる。人工知能のマンマシンインターフェイスを使う技術も開発中でデータフローを状況に応じ最適化しパイロットの負担軽減を図る。
高速データリンク研究もあり、ネットワーク型センサーで標的データの共有を目指す。数の上で優勢な敵特にJ-20ステルス戦闘機や今後登場するH-20ステルス爆撃機への対応を重視する。
X-2が搭載した技術も採用する。F-3ではEMPに耐える光ファイバーのフライバイワイヤ・エイビオニクスを搭載し、「自己修復型」飛行システムとし機体表面が損傷した場合は自動的に探知補整する。
防衛省は技術移転や支援をロッキードボーイング、BAeに求め、事業の早期実現を期するが主導権は国内企業に握らせる。
以上述べた性能は多分に第六世代機の想定(有人操縦を自動操縦に切り替える機能のみ言及がない)で実に興味深い。しかしながら各技術を統合して飛行機材に盛り込むのは相当難しい課題で、生産量の確保が経済原則上理にかなう。米F-35で数度に及ぶ遅延と経費超過が生まれた理由は新技術多数の統合が原因だった。今後15年を費やし目標達成をめざす日本側技術陣には挑戦しがいが生まれそうだ。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.


これだけの内容が5兆円で実現するのであれば安いとも言えます。ただし戦闘機だけあれば防空体制ができるというものでもなく、センサー、ネットワーク、さらに機体維持のシステムを構築するといくらになるのでしょう。これだけの機体が15年程度で実現するのは結構なことですが、第六世代機を買える、使える国はそんなにあるわけでもなく、生産数を確保すべく輸出するとしても輸出先はそんなにありませんし、逆に輸出先に米国も対象になれば面白いことになりますね。さて、ここまでの内容だとどうやって米国がプロジェクトを潰しにかかるか、国内で財務省がどこまでいちゃもんをつけるか、「平和勢力」がどこまで妨害してくる見ものですね。

潜水艦USSジミー・カーターの秘密


A Spy Submarine Like No Other: Come Aboard the USS Jimmy Carter 他に例のないスパイ潜水艦USSジミー・カーターの内幕

March 22, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: SubmarineMilitaryTechnologyWorldSeawolf ClassRussia

2013年1月20日、シーウルフ級攻撃型潜水艦USSジミー・カーターが母港ワシントン州バンゴーを出港し二ヶ月未満で修理のためハワイ州パール・ハーバーに入港した。
すべて謎のままだ。同艦がどこにいたのか、乗員150名がなにをしていのか知る由もない。シーウルフ級は米軍で最も秘匿性が高い装備の一つだ。「サイレントサービス」関連情報は見つけるのが難しい。
ジミー・カーターが何らかのミッションについていたのはあきらかで同艦公式記録ではミッション7とあいまいな記述があるだけだ。「広範囲におよぶ極度に緊張する環境で外部支援のないまま任務を遂行し、今回の任務でUSSジミー・カーターは国家安全保障の目標追求で優秀な実績を再び残した」とある。
公式記述ではわからないが、ミッション7で同艦は大統領感状を得ている。「類まれな英雄的行動を武装敵勢力を前に示した」事が理由と海軍は説明。
シーウルフ級最終艦となったジミー・カーターは独特の存在だ。建造に当たりペンタゴンは特殊モジュール(全長100フィート、2,500トン)を追加した。ここに水中無人機、SEALs等を搭載する。
砂時計の形の同モジュールから特殊訓練を受けた要員が出て海底通信回線を見つけ盗聴装置をとりつける。同艦はペンタゴンのステルス・スパイ艦になった。
ミッション7で大統領感状を受けたことからわかるのはなにか。これは海軍十字章に匹敵し、「極度に困難かつ危険な」任務を達成した証とされる。だが海軍長官は同年中の同艦の活動についてありきたりな描写しかしていない。
秘密のベールに包まれた海中研究開発分遣隊の隊員を乗せたジミー・カーターは「極度に厳しい内容の単独潜水艦作戦を成功裏に実施し国家安全保障上死活的な意味のある成果を遂げた」というのが当時の作戦遂行の表現だ。分遣隊と同艦乗員は「難易度高く複雑な任務を数々の困難を克服して成功させた」とある。
報告書には写真二枚が添付されている。艦長ブライアン・エルコウィッツ中佐が他の士官と感状を手にする様子、同感状の三角旗の写真だ。海軍は各自の顔を黒塗りした。
War Is Boringは情報公開法により今回の文書を入手した。各水上艦、潜水艦、飛行隊、司令部は年次作戦記録のワシントンDCの海軍歴史伝統本部への提出が義務づけられている。ただし内容は個別具体的である必要はない。ジミー・カーターの記録は同艦が秘密に包まれていることをあらためて示している。
海軍は潜水艦について語りたがらずシーウルフ級ではさらに口が堅い。当初は最大の水中戦力艦として建造予定だったが、冷戦終結でソ連のハイテク潜水艦の脅威が消えたと見て建造を大幅縮小した。
30隻建造予定が3隻になり、全長350フィートを超え、潜水時9,100トンのシーウルフ級は単価は30億ドルと史上最高の建造費となった。
海軍はUSSシーウルフ、コネチカット、ジミー・カーターの三艦で潜水艦開発戦隊5を編成した。同隊の簡素なウェブサイトでは新型海中聴音装置や遠隔操作水中機のテストにあたるとだけ記述している。
同隊は北極海での潜水艦戦術開発も担当する。各艦は魚雷発射管8本を維持しハープーン対艦ミサイルやトマホーク巡航ミサイルも発射可能だ。
同隊ウェブサイトでは情報収集任務の記述はない。名称こそ実験とあるが、海軍がこうしたエリート部隊を特殊任務にあてるのは普通のことだ。伝説の域に達したSEALのチームシックスは正式名称は海軍特殊戦開発集団だ。大統領を世界各地に送り届ける海兵隊のヘリコプター飛行隊1は略称をHMX-1とし、やはり「実験」が出自とわかる。
ジミー・カーターのスパイ艦としての実情を知らせるものとして海軍は同艦就航のわずか4ヶ月前に同様に秘密に覆われたUSSパーチェイを退役させていた。パーチェイほど多く受勲した艦はないと海軍は述べ、大統領感状は9回受けている。
1974年にスタージョン級攻撃型潜水艦として完工したパーチェイはソ連通信の盗聴用に改装され、1978年から79年にかけオホーツク海の海底ケーブルを盗聴し、アイヴィボールの作戦名がついた。
「海軍はNSAの助けを借りパーチェイをオホーツクに派遣し録音ポッド二号機を設置し盗聴地点を増やした」とシェリー・ソンタグとストファー・ドリュー共著のBlind Man’s Bluff: The Untold Story of American Submarine Espionage にある。「同艦は誰も言ったことのない危険な海域に派遣された」
オホーツク海での成功で交通量がもっと多い、つまり危険度が高いバレンツ海でのミッションが続いた。ソ連対潜部隊から逃れるべくパーチェイは氷の下から水路に向かった。
1991年に海軍はパーチェイを大修理し新設の潜水艦開発戦隊5に編入した。
同書刊行の段階でジミー・カーターは完成前だったがソンタグ=ドリューは同艦中央部の延長部分はパーチェイと同様の装備を載せるためと説明していた。海軍とNSAが装備を改良したのは間違いない。
ジェネラル・ダイナミクスのエレクトリック・ボート事業部で同艦が建造中の2001年にNSA長官のマイケル・ヘイデン中将はウォール・ストリート・ジャーナルが海底ケーブル盗聴任務をあげたのを一笑した。「ここにすわって推論が間違いと説得するつもりはない」とし、ジミー・カーターの任務内容についてコメントを避けた。
二年後にジャーナル紙が同艦に海底盗聴任務が考えられると再び報道した。同艦はその後10年以上任務をこなしているが同艦の作戦関連の情報はこれ以外に出ていない。
あと10年、あるいはもっと長く待たないと事実は確認できないのか。その場合でも海軍発表よりソンタグ=ドリューの著作物のような資料がないとジミー・カーターの実態、あるいはミッション7の詳細はわからないのではないか。■
This first appeared in WarIsBoring back in early 2016.

2019年5月6日月曜日

日米関係はここまで成熟している:駐日大使の米国内むけに背景説明、トランプ大統領の訪日近づく


Trump Heading to Tokyo to Talk Cybersecurity, Regional Threats

トランプは5月首脳会談でサイバーセキュリティ、域内脅威について協議する

May 3, 2019 2:49 PM


ナルド・トランプ大統領は今月末に東京ヘ飛び停滞する北朝鮮非核化問題、サイバーセキュリティでの共同対策に加え二国間貿易問題を安倍晋三首相と話す。

ウィリアム・ハガティ駐日大使は先週ワシントンDCのハドソン研究所で、金正恩がロシア大統領ウラジミール・プーティンと初の首脳会談に望んだのは「制裁が効果を上げている証拠」と発言した。さらに北朝鮮は他国に援助の手を求めており制裁効果の軽減化を目指しているとも述べた。

非核化が停滞しているが、北朝鮮は依然として日本には現実の脅威だ。ハガティ大使は赴任した2年前に日本の学童が朝鮮半島からの攻撃想定で訓練していたと述べた。北朝鮮は北海道上空を通過する弾道ミサイル発射の他核実験を行っている。

日本は在日米軍の存在をありがたがっており、福島原子力発電所の事故で米軍が支援した際にも同じ感想が聞かれた。

大使は米日間に中国を含む地域内安全保障問題で「相違点は皆無に近い」と述べた。

6月に大阪でのG-20経済サミットに先立ち安倍首相は習近平主席を東京で迎える。中国は一帯一路インフラ整備をアジア、アフリカで進める中で日本の参加を促しているが日本は応じていない。

トランプも大阪サミットに参加する。
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今月後半の首脳会談でトランプと安倍は域内安全保障で広範な議題を対象とし中国による尖閣諸島への圧力を始めとする東シナ海問題のほか朝鮮半島非核化問題も取り上げる。

米日両国は域内で軍事、経済両面で「最強のプレゼンス」とハガティ大使は述べた。

質疑応答でハガティ大使は米国による航海の自由作戦(FONOPs) による紛糾海域通航は安全保障問題であり同時に経済問題でもあると述べ、自由な交易のため必要な行為だとした。

「わがほうが日本にいるのは日本を防衛するためだ」とし、米日双方でまとまったばかりの安全保障・外交協議に触れ、尖閣諸島に関する中国の主張を斥けた。

ハガティ大使は米側の国防長官代行と国務長官、日本の防衛相・外相から出た声明文に盛り込まれた一節に「一定の状況において」日本がサイバー攻撃を受ければ安全保障条約の適用になると記されたと紹介した。

「この声明を待っていた」と大使は述べ、「日本はわが国を助けて」サイバー事案捜査を行ったと紹介。

米軍の前方配備の本拠地としてハガティ大使は「日本は長年に渡り発展を遂げ、大統領は一層の日本のコミットメントを求めるだろう」とし、防衛予算の増額で自衛隊の装備近代化を進めることを期待するとした。さらに米国は対外軍事装備品販売制度を改訂し同盟国に導入しやすくしたとも述べた。

日本から見れば米軍との共同作戦体制を向上させる装備品の購入となり、米国防技術へのアクセスが許されることになる。

米軍関係者の日本国内での行動に関連し沖縄での米軍プレゼンスでくりかえし質問が大使に向けられた。

「同盟関係への支援には大きなものがある」が「米国のプレゼンスが政治面で摩擦を生むことがある」とし、2月の沖縄住民投票結果に触れ、基地移転へは反対意見が多数であった。

安倍政権は海兵隊基地の辺野古移転を進める姿勢こそあるが沖縄からの米軍撤収を求める声はない。ハガティ大使からは大使館と米軍はともに日本側と協力し「問題の緩和」に向け努力していると、基地外での軍関係者の行動に触れた。在日米軍50千名の大部分が沖縄に集中している。

貿易問題で意見の相違はあるが、二国の関係は「世界で最も親密な同盟だ」と大使は述べた。■

戦闘機搭載ポッドの実現に近づいてきたレーザー兵器の最新テスト結果

本ブログではエネルギーの代わりにエナジーを訳語として採用しています。先回のレイセオン製に続きロッキードもレーザーで大きな存在感を示しています。



The Air Force Just Shot Down Multiple Missiles With A Laser Destined For Fighter Aircraft

米空軍がレーザーでミサイル複数撃破に成功。戦闘機へ搭載予定

The service wants this game-changing capability to be hanging off the wings of fighter jets by the early 2020s.

2020年代初頭にも戦闘機主翼下に戦闘を一変させる装備を導入する


空軍からレーザーで空中発射ミサイル数発の撃破に成功したと発表が出た。今回は地上配備型を投入したが戦闘機等に搭載し空中での脅威排除が期待されている。空軍発表では装備をポッドにおさめ2021年に飛行テストし、2020年代中に実戦配備したいとある。
空軍実験本部(AFRL) は2019年4月23日に米陸軍ホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ)で契約企業ロッキード・マーティンと今回の試射を行ったと発表。ロッキード・マーティンは指向性エナジー兵器開発契約を2017年に交付され、自機防衛高出力エナジーレーザー実証事業Self-Protect High Energy Laser Demonstrator (SHiELD)の高性能技術実証Advanced Technology Demonstration (ATD) にあたってきた。この内レーザー部分は次世代小型化レーザー発展事業Laser Advancements for Next-generation Compact Environments (LANCE)としてSHiELDの一部として進められてきた。戦闘機に搭載可能なポッドにすべておさめる装備は同じSHiELDでもSHiELDタレット研究航空効果SHiELD Turret Research in Aero Effects (STRAFE) と、レーザーポッド研究開発 Laser Pod Research & Development (LPRD) として別事業扱いされてきた。
「テスト成功は大きな一歩で指向性エナジー装備と防御策がこれで先に進みます」とAFRL所長空軍少将ウィリアム・クーリーは声明文を発表。「敵ミサイルを光速で撃破する技術で厳しい空域でも航空作戦の展開が可能となります」
ただしテスト内容に不明な点が多い。まず基本条件が不明でレーザー操作員がミサイルの飛来方向等を事前に知っていたのか、高度や飛来のタイミング、天候条件は把握していたのかわからない。空軍は投入したミサイルの種類を明らかにしておらず現実的な脅威対象を模したのだろうか。とはいえレーザーで目標捕捉、追尾、交戦、破壊の一連の作業ができたのはSHiELD開発で大きな一歩だろう。
空軍が複数目標に対応できる装備を導入するということは低出力段階は完了したことになる。2016年時点では空軍は高出力テスト第二段階で代替レーザー発射装置の運用は想定していなかった。ただし大日程が変更となった可能性はある。
空軍は 飛来する空対空ミサイルをSHiELDで撃破したいとする。同時に地対空ミサイル対応も高リスク防空体制の内部での作戦実施には必要だ。空軍は同装備を大型で低速飛行の戦闘機材や支援機材にも応用できるとし、爆撃機、給油機、輸送機のほか高性能レーダー他センサーを用いるミサイルの技術進歩にも対応出来ると見ている。

LOCKHEED MARTIN
An artist's conception of a future fight jet shooting down a threat with a laser.

今回のテストがSHiELDの全体テスト工程でどの部分に相当するかも全く不明だ。AFRLがテストを三段階にわけていたとする2016年の資料を The War Zoneは情報公開法で入手した。
入手資料には検閲部分も多いものの第一段階で低出力地上テスト、低出力飛行テストを代替レーザー装置でおこなうとあり、現在がこの段階と思われる。下に地上発射テストに関する資料を掲載した。ただし空軍は第一段階の飛行テストの詳細説明すべてを検閲で消した。

USAF VIA FOIA

地上テストは予定通りの進展だが、代替レーザー装置による飛行テストはまだ先なのかもしれない。ロッキードと空軍がテストに使う機材も不明だが、同社は改造ダッソー・ファルコン10ビジネスジェットにターレットレーザーを搭載し空中適応型空中視覚ビーム制御Aero-Adaptive, Aero-Optic Beam Control (ABC)に使っていた。
AFRLはABCを国防高等研究プロジェクト庁 (DARPA)とともに進め、この実験で高度焦点合わせ安定化技術の有効性を確認している。AFRLによればこれまでの指向性エナジー兵器開発事業はABCのようにSHiELDにも継承されており、ビーム焦点を自動安定化させる制御能力が必要とされるとしている。
SHiELDでは出力変調であらゆる条件で敵装備を無力化させる効果の実現が必要だ。レーザーの有効範囲と出力はその他指向性エナジー兵器と同様に大気状態に大きく依存し、雲や煙でビームが分断されてしまう。
それを念頭に、SHiELDの第一段階ではレーザー以外に「飛行中にポッドでのビーム制御、出力確保、冷却、システム制御」が重要とロッキード・マーティンの契約内容にあるが、LPRDポッドやSTRAFEタレットの製造メーカーは不明だ。

USAF VIA FOIA

空軍では現時点の主な課題はロッキード・マーティンが代替レーザー装置をどこまで小型化しポッドに収めることだとする。
半導体レーザー技術は大きく進展を示している。ロッキード・マーティンがSHiELD契約交付を受けた2017年当時では同社は60キロワットレーザーを米陸軍の地上配備テスト用に納入していた。同年に陸軍のAH-64アパッチ・ガンシップヘリコプターがレイセオン製の半導体レーザーポッドで目標をホワイトサンズで破壊に成功した。米海軍も独自にレーザー兵器を艦載用に開発し、各軍でのレーザー兵器テストは広く行われている。
さらに空軍はSHiELDの成功にむけ動いている。ポッド搭載レーザー防御装備が軍用機に導入されれば革命的な出来事になる。高温燃焼式のフレアやレーダー波撹乱用のチャフは搭載量が限られるが、レーザー兵器は事実上無限に使えると言って良い。.
とはいえSHiELDに限界がないわけではない。タレット式レーザーでは一度に一つの標的に対応するだけだが大気状況による効果減少リスクがある。今後登場するレーザーミサイル防御システムは機体防御装備の一環としてその他の手段と併用されるはずだ。電子戦ジャマー、曳航式おとり、直撃迎撃体が想定されている。
ではSHiELDや派生装備は視界内空戦で攻撃手段に使えないのか。あるいは対地攻撃にはどうか。防御用ポッドで発射するレーザー兵器は今後の攻撃用装備の基礎にもなりそうだ。
2018年10月、高出力エナジーレーザーや高出力高周波指向性エナジー兵器で「空中からの精密攻撃」ミッションや防御任務をSHiELDと別の提案をAFRLが公募した。また空軍特殊作戦軍団 (AFSOC) は攻撃用レーザーをAC-130ゴーストライダー・ガンシップに2022年までに導入するとしていたが、この日程は先送りになったようだ。

全て予定通りなら空軍はあと二年もすればポッド式 SHiELDシステムの試作型を戦闘機で実証する。今回のホワイトサンズでの最新テストを見ると事業は予定通り進展しており、戦場のあり方を一変しそうな技術が実用化に近づいているようだ。■

2019年5月5日日曜日

レイセオンの指向性エナジー装備が無人機複数の撃破に成功

Raytheon Directed-Energy Weapons Down Drones in Air Force Demonstration レイセオンの指向性エナジー兵器が空軍向け実証で無人機撃墜に成功

Raytheon's mobile high energy laser looks out into a wide-open sky. The company's advanced high power microwave and high energy laser engaged and defeated dozens of unmanned aerial system targets in a recent U.S. Air Force demonstration. (Photo: Raytheon)
レイセオンの移動式高出力レーザーが空を監視している。同社の高出力高周波及び高出力レーザーが十数機の無人機を標的にし空軍の実証で撃墜に成功した。 (Photo: Raytheon)
イセオンが開発の高性能高出力マイクロフェーブ(HPM)および移動式高エナジーレーザー(HEL)装備が無人機複数の撃墜に成功した。
撃墜したのはDJIファントム4クワッドコプターほか固定翼式、その他クワッドコプターでホワイトサンズ・ミサイル試射場で空軍の実証実験として行われたとレイセオン広報が伝えている。
「長年の研究開発を経て高出力エナジー装備が実用化に近づいており、実戦で人員や重要施設の防衛に役立てる」とレイセオンの高度ミサイル防衛装備担当副社長トーマス・ブッシングが報道発表で語った。
発表資料ではHPM、HELの各システムが投入され「無人航空装備数十機」を撃破したとある。
レイセオンの複合目標捕捉システムと組み合わせHELは非可視光線で無人機を撃墜したと広報資料が述べている。
システムを組み合わせ無人機の探知、識別、追尾、交戦が可能でポラリスMRZR全地形装甲車両に搭載できるという。
レイセオンのHPMシステムは「高周波エナジーで無人機の誘導装置を妨害する」と資料にある。.
「大出力高周波を操作し目標にビームを当て小型無人機の大群を即座に打破出来る。電源供給が続く限りHPMで文字通り無限の防御が可能となる」
「無人機対策には多様な解決手段が必要です」とレイセオン電子戦システムズ副社長ステファン・バウアーが述べる。「HEL、HPMにより重要インフラ、輸送隊や人員の防御が第一線で実現できます」
今回の空軍向け実証で指向性エナジーはHELとHPMのみだったという。
2017年にロッキード・マーティンが同様の技術をテストしていた。同社は高性能テスト用高エナジー装備ATHENAと称し、試作型で翼幅10.8フィートのアウトロー無人機5機を撃墜した。
無人機対策技術は民生用軍用双方で活発化しており今後も成長が期待される。
空軍からは戦術高出力高周波実戦レスポンダーTHORで小型無人機数機を光速で排除したとの発表があったばかりだ。また非致死性THORの開発も進んでいる。■
-- Oriana Pawlyk can be reached at oriana.pawlyk@military.com. Follow her on Twitter at @Oriana0214.

コメント 指向性エナジー兵器での進展がすごいようで、ロッキードも別個レーザーの空軍機への応用につながる技術を実証中です。この記事は別途ご紹介します。なお、本ブログではエネルギーというかわりに今後はエナジーを用いますのでご了承ください。無人機対策は一層重要になっており、オリンピックを来年開催する日本でもこうした技術に関心が高いはずです。

機密解除 1960年代末から中国上空をスパイしたマッハ3無人機D-21



What a Secret: The U.S. Used Super Fast Mach 3 Drones to Spy on China's Nuclear Weapons

Between 1969 and 1971, the U.S. National Reconnaissance Office deployed super-fast spy drones over China in an abortive attempt to spy on Beijing's nuclear program.
March 25, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: D-21D-21 DroneChinaMilitaryNuclear WeaponsTechnology

1969年から1971年まで米国家偵察局(NRO)が超高速スパイ無人機を中国上空に飛ばし核開発の状況を探っていた。


2019年3月21日NROが50年前の記録文書を機密解除し「タグボード」無人機の開発、運用、稼働終了の様子がわかった。


タグボードとはロッキード制作のD-21無人機で、当時の技術で強引に作った機体だった。


チタン製の12トン翼幅19フィートのD-21は特殊型のA-12の上部に搭載し運用する構想だった。A-12はCIA運用のSR-71だ。A-12をブースターとして高度80千フィートまで上昇しマッハ3.3でD-21を分離した。


D-21はラムジェットに点火しマッハ3で3千マイルを飛翔した。重量300ポンドのHucon HR335カメラを機体下部に搭載し幅16マイル長さ3,900マイルに及ぶ範囲で5,600枚を撮影した。


無人機は事前プログラムずみ経路を飛び、発射機に乗る操作員が監視し無線交信で経路を維持した。最終ウェイポイントに到達するとD-21はフィルムを収めたカプセルを放出し自爆した。


フィルムはパラシュート降下し特殊仕様JC-130輸送機が空中で回収する段取りで、これに失敗したときは海軍艦艇が洋上でカプセルを回収することとした。


1960年代末の軍と各種情報機関はD-21で戦略目標を衛星より正確にしかも人命を危険にさらさずに偵察できると期待した。


「タグボード無人機でほかで得られない技術効果が実現し画像偵察分野の要求を満たし、米国にとって敵対的あるいは敵対する可能性のある標的を偵察できる」と統合参謀本部が1969年にまとめていた。「有人機による中国含む問題地域上空の飛行には政治的に微妙な問題があり、衛星による情報収集に限界があることからタグボードの作戦能力を開発し有人機運用では危険な状況が触発される地域で国益にかなう情報収集にあたらせる」


だが同機は複雑で高価な装備だった。A-12母機を2機、無人機を20機そろえて2019年価格で440百万ドルだった。1966年7月に発生した事故でA-12とD-21の組み合わせは頓挫した。NROはD-21にロケットブースターを追加し、軽量化したB-52Hに搭載した。
1969年にD-21は投入可能になった。中国は1964年に原子爆弾第一号を起爆させた。ワシントンには中国南部の核施設への関心が高まった。当時の衛星では充分な偵察ができなかった。「中国南部の高優先度施設の93パーセントが二ヶ月にわたりまったく把握できなかった」と上記統合参謀本部メモにある。


統合参謀本部は中国レーダーでD-21の接近は探知可能と見ていた。だがSA-2対空ミサイル装備は「タグボード無人機の脅威とならないと考えられる」とした。


NROは中国上空にD-21を四回飛ばした。だがすべて「不成功」と判定した。三番目は1971年3月4日に発進させ同事業の成果の代表だ。同機は偵察に成功したがフィルムの入ったカプセル射出に失敗した。


「パラシュートが一部予定通り作動せずJC-130で回収できなかった」とNROは国防総省に報告した。「弁の作動異常でパラシュート部分の冷却が適度に行われなかった可能性が高い。その結果、加熱状態が一時間続きパラシュートの張力が低下したのだろう」


「主パラシュートのキャノピーがペイロードを水面におろしたが、海軍艦艇が回収に失敗しペイロードは海に沈んだ」


NROは3月20日に再度D-21を飛ばしたが、これも失敗に終わった。1971年中頃にNROは空中偵察活動を終了し、衛星による情報収集に絞ることを決定した。「衛星による活動の改善に集中すべきと確信し、空気取り入れ式機材の運用は止めるべきと考える」とNRO長官ジョン・マクルーカスが1971年にメモをまとめた。


マクルーカス長官は新型スパイ衛星は軌道上に長く滞空できると述べ、コロナ、ギャンビット、ヘキサゴンの各スパイ衛星は181日を軌道飛行した。この傾向から1974年までに279日まで伸びると予測した。


危険かつ信頼性に欠ける無人機は戦略上空偵察に不要になったとNROは結論を出した。だがマクルーカス長官は無人機がいつの日か復活すると予測し別ミッションに投入されるとした。「無人機に兵装を搭載させる任務を開発すべきだ」


残存するD-21は米国内の博物館数カ所に展示されており、中国は自爆したD-21一機を回収し北京で展示している。■


David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels   War Fix , War Is Boring  and Machete Squad .