米軍は超大型原子力空母の次の姿を調査研究二案件で模索している。
ともにさらに大型の原子力空母を求める声で共通している。だがペンタゴンがこれまでの流れを否定し、通常型で小型の「軽空母」へ向かう可能性もある。
2020年初頭に海軍は航空母艦の要求性能について正式検討を開始し、フォード級超大型空母5隻の後継艦の姿を模索しはじめた。フォードは就役ずみで、第五号最終建造艦の就役は2032年ごろになる。
これが「次世代空母2030タスクフォース」による検討で、これとつながるのが国防長官官房が行っている空母検討作業で、2020年夏にまとまる。海軍が内部検討結果を公表するかは不明だ。
双方の作業から海軍の長期建造計画、議会による歳出へ提言が行われ、今後の軍事力構造が形成される。
海軍の予算環境に不確実性が増しており、直近でも艦艇建造計画の最新版の発表を遅らせざるをえなかったほどだ。
海軍の選択肢としては①単価130億ドルでフォード級建造を継続する ②新型艦を開発し、単価40億ドルとする ③アメリカ級強襲揚陸艦を追加建造し軽空母として配備する、の三つと言ってよい。
現有の超大型空母11隻で退役艦が発生しても後継艦建造しない選択肢もあるが、この可能性は最も低い。議会から空母12隻体制の堅持を求めらており、海軍は11隻運用での猶予を何度も要請している。
予算が伸び悩んでいるのも検討に影響を与えそうだ。現在の艦艇数294隻を2030年代のうちに355隻に拡大する構想に海軍が後ろ向きなのも当然と言える。
海軍上層部は艦隊規模拡大に巨額予算が必要なこと、無人艦艇技術が進展してることを指摘している。海軍の試算では有人艦艇60隻を追加すると2049年まで毎年250億ドルが必要となる。この金額は海軍のこれまでの支出規模のほぼ二倍に相当する。
小型無人艦艇は有人艦艇より安価だが現状の枠組みでは無人艦は「戦闘部隊」艦艇に計上できない。
「355隻体制が実現できるか。現状の財政状況から見れば305から310隻しか適正に人員配備、装備搭載、保守管理し、稼働させられない」とロバート・バーク大将(海軍作戦副部長)が2019年10月に述べていた。
予算面で悲観的な見方が続き、海軍の2021年度予算要求では戦闘艦艇建造は8隻予定と、これまでより減っている。
だが海軍長官代行トーマス・モドリーは小型有人無人艦艇を急いで調達し艦隊規模は435隻に拡大できると主張しており、さらに想定予算内で実現都まで言い切っている。モドリーの大胆な構想がいつ消えてもおかしくない。本人は代行で上院が次期長官を正式承認すれば退くからだ。
結果として海軍の第一線艦艇はより現実的に355隻未満となる可能性が高い。問題はこの中に空母が何隻となり、その戦力はどうなるかだ。
2065年ごろにニミッツ級、フォード級あわせて12隻を運用するためにはフォード級建造は10隻以上が必要というのが現在の計画だ。
ここに疑問をぶつけるのがマーク・エスパー国防長官だ。「ゼロか12隻かと二者択一議論になっている。まず、本当にそうだろうか。空母は極めて重要だ。米国の国力を示威する手段だ。抑止効果も高い。大きな戦力となる」
エスパー長官が言おうとしているのは、戦力編成に小型軽空母を加えることだ。海軍にはワスプ級、アメリカ級の強襲揚陸艦10隻があり、F-35Bを搭載し軽空母として機能している。
軽空母は確かに安価だが超大型空母の戦力には及ばない。小型空母で搭載できるF-35は多くても20機だろう。これに対して超大型空母では軽く40機搭載できる。
軽空母で一日に実施可能なソーティーは40どまりと海兵隊が試算している。新型フォード級超大型空母では160となる。.
原子力推進超大型空母なら通常型強襲揚陸艦で不可能な長期間運用が可能だし、電子戦機材や給油機も運用できるが、軽空母では大型機は搭載できない。
そうなると解決策として超大型空母は微減とし、強襲揚陸艦の建造を増やし、軽空母としてF-35搭載数を増やしながら運用する選択肢が浮上する。
「強襲揚陸艦で正規空母のかわりにならないが、工夫して補完的に使える」と海兵隊はまとめている。■
この記事は以下を再構成したものです。
What Comes After the Nuclear-Powered Aircraft Carrier?
March 7, 2020 Topic: Security Blog Brand: The Buzz Tags: F-35Aircraft CarrierMilitaryTechnologyWorld


