2020年5月5日火曜日

南朝鮮陸軍の実力で北朝鮮侵攻を食い止められるか


たしかに韓国陸軍は同国の存続を守っていますが、現政権があまりにも親北的なため軍にも悪影響が出ていないか他人事ながら心配です。軍関係者が政権よりまともならよいのですが、当の軍が北による射撃事案を人的エラーとして軽く扱ったのを見ると心配になります。

まとめ:ROKが防御を崩さず勝利する可能性が高い。北朝鮮軍は旧式装備の上、栄養不足だ

去70年間にわたり大韓民国陸軍(ROK陸軍)は単なる警察隊から世界有数の戦力を整備し技術的にも最先端をゆく部隊に進化した。この驚愕の進化は1950年から53年の北朝鮮による侵攻がもたらした。以後北朝鮮は再侵攻を一環して狙う脅威のままだ。

ROK陸軍は朝鮮半島の南半分へ進駐した米軍が1945年に創設した。「国家保安連隊」9個が軽装備歩兵部隊として25千名態勢で生まれた。米ソ関係悪化を受け規模は50千名に増強された。

1950年6月の北朝鮮による侵攻で創設されたばかりのROK陸軍は準備不足を露呈した。対戦車砲の欠如は明らかで朝鮮人民軍の第105戦車旅団がT-34/85戦車、SU-76自走砲およそ120両を展開してきた。ROK側の第二次大戦時標準による小規模装甲部隊では対抗できず釜山までの撤退を余儀なくされた。

それから3年間に渡り米国がROK陸軍を近代的な基準に引き上げるべく懸命に訓練し、装備を提供したが防衛の任には不十分なままだった。だがその効果もあり、戦争終結後の数年で韓国駐留米陸軍部隊は2個師団に、その後1個師団に縮小できた。

1960年代、70年代を通じROK陸軍は高度の警戒態勢を解かず、北朝鮮の侵攻に備え、軍事的挑発は国境地帯で数回発生したものの、相当規模の部隊をベトナム戦に派遣し、対ゲリラ戦で勇猛果敢さの定評を得た。ベトナム戦には合計31万2千853名が参戦し、戦死者4,687名・負傷者5千名を数えた。

南朝鮮が大規模な陸上部隊を維持してきたのは160マイルにおよぶ軍事境界線防御に必要なこと、朝鮮人民軍も兵力規模を重視する構成になっていることが理由だ。このため世界各地に展開する米陸軍が47.5万名なのにROK陸軍は56万名体制という特異な状況が生まれた。

今日のROK陸軍は41師団15個旅団で11軍団を編成している。戦車2,360両、戦闘車両・装甲兵員輸送車2,400両、野砲5,180門を備える。さらに各部隊は概ね米軍式に編成されており、3個師団に独立した火砲、工兵隊、通信隊がつき軍団を構成する。ROK首都防衛司令部が別にある。

ROK陸軍は技術面で北朝鮮に優位性を保っており、装甲車両では世界トップクラスの装備を供用する。K-2ブラックパンサー戦車、K-21歩兵先頭車両、K-9サンダー自走迫撃砲が機械化部隊の中心装備だ。にもかかわらず、部隊は防御作戦を中心に訓練され、装甲師団を常備軍として保有せず、4個装甲旅団が反攻作戦の先鋒となる。ROK陸軍の中心は歩兵師団で6個師団が機械化師団、16個歩兵師団が常備軍として存在する。さらに機械化旅団2個が米第2歩兵師団の一部となる。

米陸軍と同様にROK陸軍も特殊作戦部隊を重視する。第707「白虎」特殊任務大隊は米デルタフォースと類似した存在だ。特殊部隊4個旅団と特殊強襲6個連隊が通常部隊を支援する。別の特殊部隊旅団3個は陸上、海上、空中からの侵入を専門とし北朝鮮工作員を殲滅する。常に侵攻の脅威にさらされてきた同国では常備軍と別に「郷土」防衛師団12個が分散配置され後方の守りとして北朝鮮特殊部隊や工作員に対応する。

ROK陸軍は大規模かつ強力な地上軍で国境地帯で北朝鮮侵攻部隊に対応できる。このため北朝鮮は長距離火砲を国境地帯に配備し、軽歩兵と敵地侵入部隊、さらに化学放射能部隊を整備し、南の技術優位に対抗しようとしてきた。この70年間の戦闘をROK陸軍が抑止してきたのは事実で、平時の陸軍部隊として成功の証と言える。■

この記事は以下を再構成したものです。

by Kyle MizokamiMay 2, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaKim Jong-unNuclearWarMilitaryMissileTechnology

Here's how each side's forces stack up.

ソ連上空のU-2撃墜から60年で明かされる当時の情報

U2Credit: Lockheed Martin Skunk Works

ソ連スヴェルドロフスク上空でU-2(フランシス・ゲイリー・パワーズ操縦)が撃墜され60年になったが、事件を取り巻く興味深い事実7つを紹介したい。
1. 撃墜の瞬間
1960年5月1日午前10時ごろ、CIAのパイロット、フランシス・ゲイリー・パワーズは高度7万フィートでロッキードU-2Cのコックピットに座りソ連の工業都市スベルドロスク上空を飛行中だった。南部のICBM基地があるチュラタムから開始してソ連の秘密都市数カ所のスパイ飛行は半分完了していた。共産革命前のスベルドロスクはエカテリンブルグと呼ばれ(今日この名に戻っている)ニコラス二世暗殺の舞台となった。だが1960年の当日はソ連の主要工業都市のひとつだった。CIAはU-2Cでソ連上空偵察飛行を開始して4年目だったが、スヴェルドロスク上空飛行は今回が初めてだった。
高高度を飛ぶパワーズに地上のソ連防空軍がしつように乗機を狙っていると知る由もなかった。SA-2地対空ミサイル部隊が機体をロックしていた。ミサイルの一発はパワーズ機を迎撃しようとしたMiG-19を撃墜したが、別の一発がパワーズ機の水平尾翼を吹き飛ばしたため、U-2Cは高高度操縦が困難になった。機密解除のCIA文書ではロッキードでU-2を設計したクラレンス・「ケリー」・ジョンソンも同席し1962年に身柄を解放されたパワーズに事情聴取しており、本人はその瞬間で機体制御ができなくなったと語っている。

everything was orange

2. スパイ機の領空侵犯にフルシチョフが猛烈に抗議
ソ連内部で墜落した米パイロットを捕獲し混乱が生まれた。ソ連のニキータ・フルシチョフ首相は国連安全保障理事会に米国に対する措置を求めたが、米政府は偽装情報を公開し、Aviation Weekが律儀に報道している。米政府の嘘はフルシチョフの開いた記者会見ですぐに露呈した。ソ連がU-2の残骸から回収したスパイ装備を公開したのだ。
Spy plane intrusion
Source: Aviation Week Archives

3. キャリフォーニア州バーバンクのスカンクワークスではジョンソンの部下たちがU-2Cがソ連の防空装備で高度7万フィート飛行中に撃墜できたとは信じられなかった。CIAはアイゼンハワー大統領にソ連防空体制でU-2を喪失するリスクは低いと伝えていた。ジョンソンのU-2記録を見ると当時の政治の混乱ぶりが伺える。
Project logbook image

  1. ロッキードのCEOロバート・グロスはソ連がU-2を高度7万フィートで撃墜できたと信じようとしなかった。パワーズがソ連での拘束を18ヶ月後に解かれ帰国するまで真実は不明だった。当時のロッキードはマッハ3飛行可能なA-12シグナスをCIA用に開発中で、高度と速度で迎撃から逃れるのは可能としていた。U-2撃墜直後のロッキードの考え方がグロスが英国の関係者向けにしたためた書簡に示されている。
 CEO's letter
5. 墜落するU-2からの高高度脱出
ソ連のSA-2地対空ミサイルはスヴェルドロフスク上空高度70,500フィートの機体後方で炸裂した。パワーズは遠心力で体がキャノピーに押し付けられたため射出座席を作動できなかった。そこでキャノピーを吹き飛ばし自爆装置を作動させてから脱出しようとした。高度34千フィートで爆発物をセットする前にシートベルトを外したが、コックピットが半分飛ばされ、自身の酸素ホースでつながっていた。自爆スイッチに手が届かず、ホースが破れ、パワーズは機体から放り出された。パラシュートが自動的に開く15,000フィートまで降下した。U-2パイロット用ハンドブックもCIAが2012年に機密解除されており、「高高度脱出は、緊急時を除き、推薦できない」とある。コックピット火災や「制御不能」の事態が緊急事態とされていた。ミサイルが高高度でU-2を撃墜する事態は当時は想定外だった。
Pilot HandbookCredit: CIA

6. 最後の望みとしての自爆装置
CIA編集のU-2飛行ハンドブックでは「自爆装置」として機体脱出前にパワーズが作動させるはずの爆発物の言及がある。説明では2.5ポンドの高性能火薬とあり、「機体の緊急時破壊用」とある。別のCIA報告書も2013年に機密解除となり、パワーズ事案の詳細説明がある。それによれば「仮にパワーズが爆発物の作動に成功していても、機体の破壊は不可能だったろう。爆発物は小型でカメラの破壊用だった」とある。
CIACredit: CIA

7. 高高度で低視認性
パワーズ機がミサイルで撃墜される前、ソ連は3年に渡りスパイ機の迎撃を試みていた。MiG-19やMiG-21がレーダー操作員に誘導され、機関銃やミサイルの有効射程まで接近するべく、エンジン出力最大でのズーム上昇で対応しようとした。だがソ連戦闘機は大気が薄い高高度では十分な操縦性を発揮できず、迎撃できずに帰還するのが常だった。U-2パイロットはMiGを視認することもあり、当初は重量軽減のため無塗装機体だったため目立ち、脆弱だった。このため以後のU-2では銀色の機体に青黒色の塗装が施された。■


この記事は以下を再構成したものです。

Seven Artifacts Surrounding The 1960 U-2 Shootdown

May 01, 2020


2020年5月4日月曜日

米海軍が新型フリゲート艦にフィンカンティエリ案を採択

米海軍が注力していた沿海域戦闘艦LCSが使えないと判断し、再びフリゲートが復活するわけです。フリゲートと言っても今回の原型FREMMは7000トン近くですので、米海軍向け装備を搭載すればそれ以上になることは容易に想像できます。バーク級駆逐艦がローエンド任務もこなさぜるを得ない現状を打破したいと米海軍は考えているのでしょう。そうなると20隻超の建造規模になりそうですね。


フィンカンティエリのFFG(X)設計構想図。FREMMを原型とする。

海軍は新型誘導ミサイルフリゲート艦契約をフィンカンティエリに交付し、7.95億ドルで建造させる。ここ10年で初の大規模建艦事業になると発表した。
フィンカンティエリは競合4社を制した。建造はウィスコンシンのマリネットマリン造船所で行い、フランス、イタリア海軍が供用中のFREMM多任務フリゲート艦を原型にする。
2020年度予算で詳細設計建造契約による一隻を建造し、オプションで最大9隻を建造する。オプションも含めると55.8億ドルとなる。
「海軍が目指す誘導ミサイルフリゲート艦 (FFG(X))は将来の海軍戦力の重要な存在だ」と海軍作戦部長マイク・ギルデイ大将が声明を発表している。「FFG(X)は小型水上戦闘艦構想より威力、残存性を増しつつ、国家防衛戦略構想を実現していく。今後の分散海洋作戦の実施効率が高まるのは間違いなく、外洋でも沿海部でも戦闘を展開できる」
「要求内容の統括部門、調達部門、建造部門の各チームが尽力し重要な海軍の決断が本日まとまったことを誇らしく思う」と研究開発調達部門の副長官ジェイムズ・ギューが声明文を発表した。「政府部門が産業界と緊急性と規律性をもって作業し、今回の契約交付も予定の3ヶ月前に実現した。チームがコスト、調達、技術に集中し高性能次世代フリゲート艦として納税者に最大効果を実現した」
米海軍は今回のフリゲート艦案件を将来の艦艇調達のモデルととらえた。FFG要求性能評価チーム(RET) に調達、資源提供部門、予算部門さらに運用部門代表、技術陣、建造部門等の業界代表が参加し性能と建造費をバランスさせた。従来方式より6年節約できたと海軍は説明。
海軍上層部は新型フリゲートの必要を2017年に痛感し、沿海域戦闘艦(LCS)では将来ニーズに対し小さすぎると判断した。RETの作業をもとに海軍は性能要求を2017年10月にまとめ、5社が構想設計を16ヶ月にわたり展開した。要求水準の実現が可能と確信できた2019年2月に海軍は性能開発要求書類を承認し、詳細設計及び建造契約の提案を同年6月に求めた。
同時に政府支給装備(GFE)でリスク低減を進め、供用中の水上艦装備を流用する。エンタープライズ対空警戒レーダー(EASR)、イージス戦闘システムベイスライン10、Mk 41垂直発射装備、通信装備、防御装備が例で、生産中かつ性能が実証されている。艦艇の設計・建造を加速するだけでなくコスト効果も生まれ、整備・訓練で共通性が発揮される。
海軍無人小型戦闘艦の計画主管ケイシー・モートン少将は「積極対応とともにリスク低減に過去の教訓を採用した。建造開始時には困難がつきものだが、今回はうまくできたと思う」と記者団に述べている。
ギュー副長官は「コスト、調達、技術面に焦点を当てつづけ、第一線部隊、納税者双方に最良の価値を提供することに専念した」と述べている。建造工程の改善で建造単価を下げる可能性も選定基準の一部とし、「大幅なコスト削減効果が期待できる」と述べた。
またGFEのコスト低減効果が期待できるとし、EASRはSPY-6対空対ミサイル防衛レーダーとしてレイセオンが開発したフライトIIIアーレイ・バーク級駆逐艦向け装備を原型とする。ギュー副長官はレイセオンの生産ラインにも両形式の製造で知見を深める効果が生まれると述べた。
「目標は戦闘装備用のソフトウェア、ハードウェアの共用化だ。これでコスト面以外に、訓練、整備、維持面で効果が生まれる」(ギュー)とし、将来の能力向上が期待する。
詳細設計段階がまもなく始まり、建造は2022年4月以降からとなる。初号艦は艦名がないが、2026年までに納入され、初期作戦能力を2030年までに獲得する。初号艦の建造費は12.81億ドルでうち7.95億ドルが詳細設計および建造費用で残額はGFEにあてられる。
以後の建造で支出額は低くなる。2号艦から20号艦までは2018年価格で単価8億ドル、同じく2018年価格で9.5億ドル以下を保つのが目標だ。
ギュー副長官は10隻建造後の調達は未確定と説明した。20隻建造が前提だが、海軍はこのフリゲート艦があれば駆逐艦部隊はハイエンドに専念できると考えている。第一期10隻の建造が決まるのは2025年度予定で、海軍は残る10隻もフィンカンティエリに発注するか、別企業に建造させ建造規模を拡大する選択肢もある。
今回の競合ではフィンカンティエリ以外に、オストラルUSA(インディペンデンス級LCSの建造元)、ジェネラル・ダイナミクスのバスアイアンワークス=ナバンティア(スペイン海軍向けF100級フリゲートの建造元)、ハンティントン・インガルス工業があり、海軍はコストとコスト以外の要素をバランスした最大効果を求めた。設計原案と設計の完成度を均等評価し、性能・能力面で国家防衛戦略ほかの要求に合致させた。ロッキード・マーティンはフリーダム級LCSをフィンカンティエリのウィスコンシン施設で建造したが、今回は途中で辞退した。
海軍が年間3ないし4隻建造に向かえば、別の造船所が加わる可能性が増える。
バスアイアンワークスはズムワルト級駆逐艦の建造が終了段階にあるが、アーレイ・バーク級駆逐艦も建造中で発注量は十分確保している。インガルスもDDG建造の残りを担当しており、揚陸艦艇も建造している。そこでオーストラルUSAだが、LCS建造が末期にあり、スピアヘッド級遠征高速輸送艦(EPF)も同様だ。同社はEPFを病院船として売り込んでいるが、海軍は共用補助艦艇CHAMPの設計を決めかねている。
バスアイアンワークスは「当社のFFG(X)チームにはレイセオン、ナバンティアほかがあり、群を抜く内容の構想設計をまとめ、最良の内容で入札した。海軍から然るべき説明を待っている。米海軍の期待にはリンドン・B・ジョンソン(DDG 1002)ほか11隻のアーレイ・バーク級駆逐艦の建造で答えていきたい。DDG-51の設計は実証済みで進化をつづけ、一層強力な戦力を提供していく。当社はじめとする企業チームが各艦を納期通りに引きわたすとともに各艦の整備、性能向上を担当していきたい」との声明文を出している。
水上艦隊でのフリゲート艦の役割がはっきりした。海軍作戦副部長ジム・キルビー中将(海軍作戦能力担当のOPNAV N9)はFEMMが原型の設計には脅威内容の変化に呼応する性能改修の余地が十分あり、技術成熟化を待ってから装備品を搭載すると報道陣に語った。
フリゲート艦は有人ヘリコプター一機、無人機を各一機の格納が求めらていると同中将は説明。今後登場する有人無人の垂直離着陸機の運用にも必要な余裕があるという。現行艦艇は垂直ミサイル発射管を装備するが、フリゲート艦ではレーザー兵器用の電源ならびに搭載余裕があり、VLS発射管を攻撃に転用できるとも述べた。
「このフリゲート艦は小型水上戦闘艦艇の分類だが、小型艦と大型水上戦闘艦の中間におさまり、多用な任務をこなせる」(キルビー)とし、「米海軍で一番の働き手となり、分散海上作戦を支援するだろう。同艦に大きく期待しているし、打撃群やその司令官にここまでの柔軟な選択肢を提供する艦は他にない」という。■
この記事は以下を再構成したものです

April 30, 2020 5:09 PM • Updated: April 30, 2020 7:21 PM

2020年5月3日日曜日

F-35ではドッグファイトに勝てないのか


ッグファイトはもう発生しないといわれていた。1967年5月20日、北ベトナム上空で米空軍F-4Cの8機編隊がMiG-17戦闘機15機編隊を見つけた。

霧とMiGの低空飛行のためF-4編隊は接近されるまで敵機を発見できなかった。▶F-4編隊は降下を開始しスパロー、サイドワインダーミサイル24発を発射したが、撃墜できたMiGは4機のみだった。北ベトナム空軍機は鋭い旋回の「ワゴンホィール」で各機が前を飛ぶ僚機を見張る体制に入った。▶F-4は敏捷なMiGに追随しようとしたが、北ベトナムのパイロットはF-4を機関砲で攻撃し、同機は炎上し乗員2名は射出脱出した。▶「MiG-17の旋回性能に驚いた」とF-4乗員が後日回想している。「この目で見るまでは信じられなかった」▶だが米空軍はこの問題を真剣にとらえず、当時最新鋭のF-4は接近距離でのドッグファイトはしないと見ていた。逆に遠距離で敵機をスパロー等空対空ミサイルで撃破する想定だった。▶米機が次々とベトナム上空で撃墜されはじめるとこの想定の欠陥と危険が表面に出た。

2015年1月、空軍はF-35Aと機齢25年のF-16Dで模擬空戦を行った。低速と鈍重なためF-35では旋回中のF-16を撃破するのが困難と公式テスト報告にある。▶だが空軍は心配に及ばないと述べた。「F-35の技術は敵機を長距離で撃破する狙いで開発されており、視野内の『ドッグファイト』は不要だ」

どこかで聞いた言い分だ。▶空軍が長距離航空戦を重視したことがベトナムでの大損害につながった。F-35が待ち構える敵の防空体制に突入すれば同じく大損害を被るのは容易に想像できる。

空中戦の最初の40年間では機関銃が攻撃手段だった。1946年に米海軍が熱追尾式ロケットの開発をはじめ、サイドワインダーとして初の空対空ミサイルが生まれた。▶その12年後に米国は初の実戦用サイドワインダーを台湾空軍のF-86に供与した。台湾海峡上空の空中戦でF-86が共産中国のMiG-17を撃墜し空中戦の様相は決定的な変化を遂げたように見えた。その後、各種新型ミサイルが研究開発され各地に姿を表した。▶空軍、海軍、海兵隊はミサイル時代の到来を信じ、新型機から機関銃を廃止した。F-4Cもそのひとつだ。

新型ミサイル技術に教導原理の変更が加わった。ペンタゴンは将来の戦闘ではジェット戦闘機は高高度、高速度でソ連の長距離爆撃機を標的とし、原爆投下前に敵を掃討するとしていた。▶当時の米戦闘機は強力な推力はあっても機敏な操縦性はなかった。「戦術戦闘機では核爆撃機侵入の阻止が大目的であり、操縦性能は二の次だ」と1968年にブルース・ホロウェイ大将は述べていた。▶だが米国の次の戦闘はソ連との最終対決ではなく、北ベトナム空軍と戦った。

米作戦立案部門は直線翼戦闘機の時代からハイテク戦を想定していた。だが実際に発生したのは低速、低高度でのドッグファイトだった。想定してきた技術、戦術では北ベトナムのMiGに対応できない事に空軍、海軍がともに気づいた。▶1965年から1968年にかけ、ベトナムで米戦闘機はレーダー誘導ミサイル合計321発を発射したが命中したのは8パーセント未満と2005年の空軍分析にある。▶海軍は命中率のあまりの低さに驚いた。「空中戦実績が東南アジアで想定を下回ったのは設計想定が高高度交戦で低操縦性の重爆撃機相手を想定したため」と結論づけた。▶MiG-17は警告装置が皆無に近いのにミサイルを回避し、操縦性の高さを生かして逆に米機の後方にまわった。▶ペンタゴンはスパロー、サイドワインダー両ミサイルの改良とともにF-4ではE型から機関銃を追加した。パイロットは旋回飛行訓練を受け、撃墜被撃墜比率で改善が見られた。だが本当に米国に必要なのは新型戦闘機で高高度、高速度、長距離戦でのみ優位性が発揮できる機体ではなかった。

つまりドッグファイトできる戦闘機が米国に必要だった。

「推力重量比を大きく向上させ、低主翼荷重により高速度と上昇率を向上させつつ加速性と旋回性能を各飛行速度域で発揮できること」をホロウェイは新型戦闘機で必要な性能として1968年に提起した。▶「高性能のエイビオニクスと武装で今後登場する敵機を打ち破る性能が必要だ。手段はミサイルと機関銃双方でよい」(ホロウェイ)

そこから生まれたのが双発のF-15で1972年に登場し、48年後の今も空軍で最多機数を誇る制空戦闘機だ。小型で単発のF-16が続いて登場した。これも高高度、低高度、高速で旋回性能にすぐれミサイル、機関銃ともに備える。▶F-15、F-16の設計では都合のよい空想のシナリオに対応させなかった。両機種は不確実な状況で敵側が優秀な性能を持つ想定、つまり現実の世界を意識して最適化を施した。▶この考え方はロシア戦闘機の進化とともに重要性をました。MiG-17のあとに高速のMiG-21が、さらに操縦性が高いMiG-29、Su-27が登場した。今日のSu-35は速力、旋回性でF-15を上回り兵装搭載量も大きい。

航空戦での米国の優位性は減る一方だ。ペンタゴンには空中戦で勝てる戦闘機が一層必要となってきた。

だが新型F-35はF-15との旋回戦でも「大幅に劣る」と2015年1月の模擬空戦のパイロットが評価している。空軍はF-35はステルスなので敵機が長距離で探知できなず問題ではないとの主張だ。言い換えれば、空軍はF-35の性能で優位に立てると考えている。

部分的には正しい。F-35のステルス性能が一定の効果を示すだろう。ミサイルは常に命中するだろう。ロシアがSu-35を各国に輸出しないかもしれない。F-35の長所を無効にするハイテク技術を有する国家との戦闘を米国は回避できるかもしれない。▶だが米政府の楽観的な想定が少しでも外れたらどうなるか。F-35がドッグファイトを回避できなくなったらどうなるか。さらに相手が高性能のスホイ、MiGあるいは中国機ならどうなるか。相手の旋回性能に追随できない機体を戦闘に送ればどうなるか。

接近戦が想定外の機体を接近戦に投入した実績が空軍にある。F-4乗員は政府の交戦想定の代償を払わされ自由を喪失し、あるいは生命を絶たれたのである。■

この記事は以下を再構成したものです。

Could it still win?
by David Axe 
April 24, 2020  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35Stealth FighterDefenseAmericaU.S. Air ForceMilitary

David Axe is defense editor of The National Interest. He is the author of the graphic novels War Fix, War Is Boring and Machete Squad.
Image: DoD.

民生需要後退で国防事業への依存度を高めるボーイング


シアトルで生産中のP-8 ポセイドン哨戒機。 Boeing photo.


ーイング経営陣は業績維持を防衛部門に期待せざるを得なくなっている。民生機事業はCOVID-19の打撃を受けたままだ。

民間航空輸送は前年比95%減となり、同社CEOデイヴ・キャルホーンは各アナリストとの電話会議で第1四半期業績を語っていた。エアライン業界は大幅な業務縮小で機材は地上待機のまま、新規機材発注は先送りされ、機材受領も延期され支払いが遅れたり止まっている。

世界的な経済減速によりボーイングの第1四半期売上は169億ドル、13.5億ドル赤字に転落。前年同期の売上は229億ドルで23.5億ドルの黒字。

「政府向け防衛宇宙事業が今後の業績安定に重要な要素になっています」「政府向け事業は2019年の収益で45パーセントを占めるまでになりました。今年以降の比重が増えるのは明らかです」(キャルホーン)

 以前から737 Max 旅客機の飛行再開が決まらずボーイングの財務環境は厳しく、 737 Max 生産は1月から停止したままだ。

2021会計年度は国防総省事業が同社の防衛部門を後押しし、防衛部門の売上が民生部門を上回る規模に拡大するとキャルホーンは見ている。

直近の業績に貢献が期待される事業に海軍向けMQ-25Aスティングレー無人艦載給油機、海軍向け超大型無人海中機(XLUUV)、空軍向けT-7レッドホーク練習機、同じく空軍向けMH-139グレイウルフヘリコプター(UH-1ヒューイの後継機)がある。

米海軍はMQ-25給油機4機の製造契約をボーイングに2018年に8億ドルで交付した。海軍は同型機を72機配備する。

同年に空軍はT-7レッドホーク練習機製造で92億ドル契約を交付し、グレイウルフヘリコプターでも24億ドルの契約を交付した。各事業でボーイングは他社より低金額を提示したのは、他事業でキャッシュフローを確保し交付前に開発構想を固めることができたためだ。この戦略を打ち立てたデニス・ミュイレンバーグは昨年12月にCEOの座を退いた。

2019年2月には海軍から43百万ドルでオーカXLUUV4隻建造の契約を交付されている。設計はエコーボイジャー無人ディーゼル電気推進潜水艇が原型で、エコーは全長51フィートで母艦から発進し6,500カイリを自律運行できる。

2年前は民生機事業が同社の主力だった。ジェット旅客機事業でキャッシュを確保し研究開発に投入することで他社に差を付けてきたが、国防総省契約がないと売上が安定しなくなるまでになった。

民生機部門の減速で同社の研究開発力にどんな影響が生まれるかは不明だ。ボーイングは16万名の従業員の10%を削減する。また配当支払いを中止するほか、不要不急の支出は見直す。

「研究開発や設備投資を削減、あるいは先送りする」のはコスト削減策の一環とキャルホーンは説明した。ただし、将来に大きな意味がある重要事項や技術には支出を続けるという。■

この記事は以下を再構成したものです。

In Role Reversal, Boeing's Defense Programs Prop Up Commercial Business



April 30, 2020 11:47 AM

2020年5月2日土曜日

米海軍にイラン小舟艇攻撃許可が下りた

US Navy photo

ランがペルシア湾で敵対行動、挑発行動をとった場合に米海軍は迎撃ミサイル、攻撃型無人機、艦上機関砲、電子戦兵器、さらにレーザーで撃破する。
イランの脅威に対し攻撃、あるいは防御する許可を米海軍に与えたとトランプ大統領はツイッターで明らかにしており、ペンタゴン上層部もこれを裏付けるコメントを出した。
ペルシア湾でのイランによる脅威をペンタゴンは真剣に受け止めている。小舟艇での襲撃や機雷が展開中の部隊や民間商船の通航で障害になっている。とくに狭いホルムズ海峡で問題で、原油タンカーほかグローバル通商活動の懸念となっている。
参謀副議長ジョン・ハイテン大将ならびに国防副長官デイビッド・ノーキストは大統領メッセージを支持して記者団と会見し、現地米軍指揮官に必要に応じイランの小舟艇や兵器の破壊を実行する「権限」を与えていると述べた。今回のメッセージの意図は部分的にせよ米国がCOVID 19で危機的状況にあるのを利用しないようイランへ警告を与えつつ、米軍は必要なら「いつでも開戦できる」状態だと伝えることにある。
だがこうした状況から次の疑問が出てくる。「米海軍はイラン部隊をどうやって迅速に撃破するのか」
「敵意があると判明すれば、こちらは相手を撃滅する手段もとる。湾内で発生すれば圧倒的兵力で対応し、防衛措置をとる。指揮官には敵対行動、敵意に対応する権限を与えたとハイテン大将は記者団に語った。
あくまでもイランが挑発してきた、あるいは脅威となった場合に限り米海軍艦艇は攻撃に移るということだ。
これを念頭にハイテン、ノーキスト両名は記者の質問に答え、トランプ大統領のメッセージに沿い、米海軍は必要な対応を取ると述べた。「現地展開中の部隊の指揮官には実施能力を与えている」(ハイテン)
巡洋艦、駆逐艦の5インチ砲が12キロメートル以内で威力を発揮する。さらに、揚陸艦、空母、沿海部戦闘艦に50口径機関銃から57ミリ「小舟艇撃破」兵器まで各種火砲や迎撃手段がある。
海軍艦艇には近接兵器システム(CIWS)、別名ファランクス機関銃があり、毎分4,500発を発射できる。もともと対航空機、ミサイル、ヘリコプター用に開発されたが近年の改修で「1B」仕様となり近接距離での水上艦艇撃破にも対応可能となった。CIWSはレーダー、火器管制・指揮命令系統と接続され、艦艇が攻撃を受ければ即座に対応できる。CIWSは海軍艦艇の防御の「最後の一線」とよく言われるが、その他にもローリングエアフレームミサイルやシーラムも使える。
ノーキスト副長官は「防御用」兵器の使用を海軍指揮官に認めているとコメントしている。「各艦には防御の権利があり、実際の稼働では細心の注意で防御することになる」
さらに高性能版シースパローミサイル・ブロック2を搭載する艦が多い。これはシーカー性能を引き上げ、海面すれすれを飛ぶ対艦巡航ミサイルへ対応可能としたものだ。また最新版の防御手段には電子戦(EW)や低価格精密レーザー光線があり、接近してくる攻撃手段に対抗する。レーザー、EWともに船舶で混み合う海域では有害な破片を多数発生させないので有効だ。
イランには大量の弾道ミサイルがあり、防御も多層構造で対応する。米海軍水上部隊にはイランからの攻撃の探知追尾が十分可能だろう。いうまでもなく、海軍艦船には各種攻撃手段も搭載され、迅速かつ精密な攻撃を展開できる。
最後に、攻撃、防御の海上戦はスタンドオフ距離での想定だ。標的をまず探知しないと撃破できない。このため、海軍や空軍の無人機が水平線の先で脅威の探知に動員されている。駆逐艦には海軍統合火器管制対空装備(NIFC-CA)が導入されており、ホークアイ早期警戒機やF-35のセンサー情報がネットワーク化された兵装に入り、水平線の先にある脅威にピンポイント対応できる。高性能レーダーや通信技術を利用し、脅威対象のデータが艦上の指揮官に送られると、SM-6迎撃ミサイルで安全なスタンドオフ距離で敵を撃破する。NIFC-CAを使えば、攻撃を受ける前にイラン小舟艇の大群を撃破できる。
こうした戦闘構想・戦術を支えるのが海軍の兵器開発部門で艦載指揮統制システムやISRネットワーキングシステムを迅速に実現してきた。ライブ映像などのセンサーデータの受信処理量を拡張し、無人機やその他ネットワーク装備のヘリコプター、哨戒機、水上艦艇、潜水艦に対応する。急進展するAIやコンピュータ処理の自動化により、こうした処理が更に高速化され、受信したセンサー情報の処理が数秒で完了する可能性が出てきた。■
この記事は以下を再構成したものです。
Kris Osborn


金正恩死亡で中国はどう動くのかを予測!



「金正恩が急死すれば、中国政府にも青天の霹靂であり、先の展望が見えにくくなる点で他国と変わりがない」
 編集部注:金正恩の死亡後の予想を模索したシンポジウムから以下をまとめた。
正恩が突然死亡すれば、中国政府にとっても晴天の霹靂であり、その後の予測に困難を感じる点で他国と変わらない。
中国は北朝鮮との関係が他国より緊密とはいえ、他国の観測に反し実は親密な関係ではない。実際に平壌と北京の関係は非連続ながら退潮の一途だった。▶毛沢東と金日成は親密な同志とはいえ、関係は良好とは言えなかった。毛や鄧小平以後の中国指導部が金正日に温かい態度を示したことはなく、金正日も中国が南朝鮮と1992年に国交樹立したのをうらんでいた。▶習近平はこの路線を踏襲して金正恩に接し、難しい局面が何度もあった。金一族三代目が叔父の張成沢を処刑し異父兄の金正男を中国の親密な関係を疑い暗殺した。これで中国は対北朝鮮に冷たくなり、北朝鮮内部の動向をつかめなくなった。▶さらに金正日の時代から核とミサイル開発を加速化させ国連決議に違反した北朝鮮に中国も外交圧力を強め、前例のない規模の経済制裁を課した
トランプ大統領の対北朝鮮外交を受け習が金正恩と接触を増やし、中朝両国の緊張は緩和しているが、金は対中関係を強化するよりも米中両国を対決させる意向を秘めているようだ。
中国はこのバランスの上に金との関係は「唇と歯のように密接」と繰り返し教条的説明をしているが、実は両国の不信は強い。▶金は単独で状況打破を狙い、中国と通じる疑いのある上層部の孤立化を狙っている。▶中国も北朝鮮内部の動向をつかみきれていないのだろう。金正恩が死亡しても状況は直ぐに改善されない。▶中国指導部はあらゆる手段をつかい状況把握に努め、北朝鮮国内の中国権益の保全に走るはずだ。▶中国は後継者選びに影響力を及ぼせないだろうし、後継者との良好な実務的関係樹立にやっきとなるはずだ。▶朝鮮労働党と軍部が指名する後継者候補に妹の金与日が浮上しているが、中国指導部は北朝鮮国内の混乱に神経をすり減らされないとは思わないはずで、権力継承が混乱なく進展するためなら手段を選ばないだろう。
金正恩の後継者との関係強化で中国は米国よりも緊密な関係をめざすのはまちがいないが、だからといって米国が不利な立場になるわけではない。▶中国指導部も北朝鮮の非核化という目標を共有しており、北朝鮮の経済改革も支持する点で変わりない。このため、中国は金正恩の継承者との関係ではこの双方での進展を模索するはずだ。■
この記事は以下を再構成しました。
May 1, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: Korea Watch  Tags: North KoreaKim Jong-unKim Jong-un DeadKim Yo-jong
Paul Heer is a Distinguished Fellow at the Center for the National Interest dealing with Chinese and East Asian issues. He served as National Intelligence Officer for East Asia from 2007 to 2015.  He has since served as Robert E. Wilhelm Research Fellow at the Massachusetts Institute of Technology’s Center for International Studies and as Adjunct Professor at George Washington University’s Elliott School of International Affairs.  He is the author of Mr. X and the Pacific:  George F. Kennan and American Policy in East Asia (Cornell University Press, 2018).