2021年5月1日土曜日

F-35は失敗作?それとも画期的な新技術を満載した高性能機?簡単に結論づける前に事実を見てみよう。少なくともF-35の教訓は次期機材に活かされるべきだ。

 

(Lockheed Martin)

ラブル続きのロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機に再び失敗作のラベルを貼る動きが強まっている。まず財務上のトラブルがあり、さらに技術問題のため開発が「戦略的一時停止状態」に入っており、さらに機体への信頼性が欠如していると空軍高官が公然と発言しており、同機事業がここまで厳しい状況に直面したことはない。

これだけの逆風の中で、F-35事業は調達の失敗例と片付ける向きまで現れている。つまるところ、同機はあまりにも問題が山積みしており、本格生産に入れない状態なのに数百機が納入済みだが、実戦対応が完了しておらず、米空軍も同機の運用維持ができるのか自信が持てない状況だ。

F-35の真価とは。コンセプトと現実の対立

F-35は概念段階を脱しており、重要機材として期待が高まる存在だ。概念だけなら失敗、成功と簡単に区分できるが、現実の機体はそこまで簡単に区分できず、新技術も動員して原設計をどこまで実現できるかが勝負だ。これまでの従来と一線を画す機体には困難が付きまとうのが普通だった。F-35以上の費用が発生した機体は皆無だが、費用だけで期待される性能は否定できない。はっきりさせよう。F-35事業を肯定するわけではないし、同機を空軍の優先リスト最上位にいつまでもおいておくわけにはいかないと考える。同機に期待できる性能を客観的に見るだけだ。

概念設計としてはF-35は「合格」の区分に入るが、実現に向けた作業は「不合格」だ。ただこうした分類をしても議論のためにならない。F-35がもたらす画期的性能を見れば、ここまで投入してきた予算を生かして望ましい機能の実現を図る方法が見えてくるはずだ。あるいはその逆か。F-35の調達で得た教訓は次の戦闘機(あるいは別の形の機体か)の場合に活かされるべきだ。

数兆ドルを投じてきたことにつながる感情論とは別に、開発遅延で味わった苦しみとは別に、同機の本来あるべき姿を見つめ、今後数年で実現する機能に集中したい。失敗は確かにこれまであったが、だからと言って今後も未解決問題のまま留まるとは限らない。

会計の視点でF-35は恐怖の物語だろうが、運用側は大成功例ととらえている。

不可能を求めた出発点

X-35共用打撃戦闘機の実証機材 (U.S. Air Force photo)

 

その後JSFになった初期研究は判明している限りで1993年に始まっており、米国は短距離離陸垂直着陸可能な戦闘機を模索していた。

ペンタゴンは別の戦闘機開発事業に着目して仮説を立てた。単独機種が老朽化した各機種の代わりになれば、調達コストが節約でき、整備・訓練が合理化でき、補給支援の悩みが解消し、多数を展開することで、将来対応が容易になるのでは。実はこの想定にそもそも問題が潜んでいたのである。

世界初の実用ステルス機F-117ナイトホークを制作したロッキード・マーティンは初の実用ステルス戦闘機F-22ラプターも完成させ、共用打撃戦闘機選定でボーイング案を破り契約を勝ち取ったのは、ステルス機分野での知見とならび技術実証成果の好印象によるところが大きい。

現在は米国の三軍さらに海外の求める要求にこたえるのがF-35最大のセールスポイントになっているが、あたかも1990年代末にケネディ大統領が10年以内に月に有人飛行を実施すると公約したのと似ていた。問題は実現の方法が誰にもわからなかったことだ。

2000年時点で、『ステルス性があり、垂直離着陸可能かつ超音速飛行可能な機体の製造は可能だ』と言おうものなら業界の大半はそれは不可能、と答えていただろう」2000年から2013年までロッキードで同機事業を担当したトム・バーベッジがニューヨークタイムズに語っている。「当時の常識ではこれだけの機能を単一機体に盛り込むのは無理とされていた」

(Lockheed Martin)

 

超音速ステルス戦闘機でホバリングで強襲揚陸艦運用が可能な機体というと常軌を逸していたが、予算がつくと不可能が実現可能に見えてしまった。

不可能とされた機能の実現は多大な費用を必要とした

 

各軍の広範囲ニーズを一機で対応し、既存5機種に代わる機体を実現すべく、ロッキード・マーティンは新型機を三型式にすることとした。

F-35Aがこの中で従来型の多任務戦闘機に一番近い存在で、整備された滑走路で広く運用可能とする想定だった。二番目の海兵隊用F-35Bには方向転換可能なジェット排気ノズルと格納式ファンを搭載し、ホバリング揚力を実現し、強襲揚陸艦へ垂直着艦可能とした。あるいは未整備の間に合わせ施設での運用も想定した。最後に航空母艦運用を想定したF-35Cでは主翼面積を増やし着艦速度を低下させ、艦載機として過酷な運用に耐える仕様とした。

三型式で可能な限り共通化を図り、運用環境が違うが部品、生産、訓練、整備をなるべく同じにしようとした。即座に実現は困難だと判明した。

「三軍の要求を一つにまとめたF-35だが、多くの点で必要水準に達せず各軍が望まない機体になってしまった」(戦略国際研究所の航空宇宙専門家トッド・ハリソン)

ロッキード・マーティン設計陣は一番単純なF-35Aから作業を開始した。次にF-35Bに移り、計作業が始まると機体中央部にファンを内蔵する必要があり、設F-35Aを流用できないと判明した。B型には18カ月62億ドルが余分に必要となった。

(Lockheed Martin)

 

F-35開発で予想を裏切る進展が生まれたのはこれが初めてだったが、その後も同様の事態が発生している。一言でいえば、計画の甘さが原因とはいえ、F-35では前人未到の戦闘機開発をめざし、ロッキード・マーティンにはJSFを予算通り実現しても見返りがなかった。

並列開発という矛盾に満ちた用語

ロッキード・マーティンが要求実現に苦労することは米政府にも最初から分かっていた。ステルス機はF-117から最新のB-21レイダーまですべて機体価格と性能のバランスに苦しんでいるが、F-35の場合はバスケットに卵を多く乗せすぎた感があり、事態は急拡大した。ロシアのSu-35、中国のJ-10といった高性能第四世代戦闘機の供用が始まっているのに、米国のステルス戦闘機は開発中のままという事態が2000年に発生した。米国は困った事態になった。ドッグファイトの王者F-22はわずか186機製造で打ち切りとなり、F-35が唯一の新型戦闘機事業になった。そのため、同機にはいかなる機材より優秀となり、その座を数十年維持できることが求められた。しかも、即座にこの目標に向けスタートする必要があった。

この実現のためペンタゴンは「並列開発」、またの名を並行開発が最良の方策と考えた。並行開発では設計が固まった時点で生産開始し、テストで解決すべき問題が見つかれば完成ずみ機体に変更を加える。紙の上では新型高性能戦闘機の配備、パイロットや整備員の養成、戦術開発に有益で機材が成熟化してスムーズに部隊配備につながるように思えた。だが現実にはテスト完了前に機体製造が始まっており、完成済み機体の改修に巨額予算を投じることになった。

その後続々と問題が浮上した。2017年までに初期完成分のF-35A108機を放棄すべきか空軍も真剣に検討したほどで、214億ドルで調達した各機の改修が高額になるためだった。2020年末までにロッキード・マーティンが再び生産を停止したのは解決すべき問題が多くなりすぎたためだった。

こうした事態での支出が増えただけでなく別の財務上の問題が現れた。機体運用コストが法外な水準になったことである。非ステルス機ながら高性能を誇るF-15EXの時間当たり経費は28千ドルなのに対し、F-35では44千ドルになった。しかもF-35の稼働率はF-15EXの三分の一にも満たない。いいかえれば、F-35は開発で法外な金食い虫となったが、運用でも同様ということだ。このため空軍も安上がりな別機種との混合運用案を検討している。

f-35 failure(Lockheed Martin)

空軍参謀総長チャールズ・Q・ブラウンJr.大将もF-35について「同機の稼働を減らしたい」と発言しているほどだ。「通勤にフェラーリはいらないだろう。日曜に乗ればいい。『ハイエンド』戦闘機はローエンド戦闘に投入すべきではない。性能は必要な時に使いたい」

やはりF-35は失敗作なのか

いや、結論を急いではいけない。この記事をここまで読んだ方なら大事なのは実際に同機を操縦する戦士たちの声だとおわかりのはずだ。

規律ある支出の事業だとF-35事業は米空軍が擁護し、ロッキード・マーティン社員にも守られていると耳にすることがあろうが、性能に限れば同機を賞賛する声が多数あるのも事実だ。

「ウィングマンは新米のF-35乗りで訓練飛行を7回か8回こなしただけだった」と388作戦集団司令のジョシュア・ウッド大佐がレッドフラッグ演習での出来事を語っている。「そいつが高性能第四世代機に乗る3千時間の飛行経験のパイロットに無線交信してきたんだ。『方向を変えないと死ぬぞ。危険がすぐそこまで来ているぞ』とのたまうのだ」

ウッド大佐によれば、この「新品」パイロットはわずか一時間で3機撃墜の成果を上げた。

こうしたエピソードが同機をめぐる悪いニュースほどに伝わってこない理由がある。まず、悪いニュースは売れるし、読者も高額の値札が付く米国装備品の失敗に食指を動かされがちで、戦術面での業績達成は注目を集めない。二番目はやや微妙だ。戦闘機というと映画「トップガン」の世界を思いがちだが、F-35はそのような想定で運用できないのだ。

F-35共用打撃戦闘機はF-15より速力が劣り、退役ずみのF-14の運用高度に達せず、F/A-18より搭載兵装量が低く、かつ機敏な飛行性能ではF-16の比ではない。戦闘機の機能で思いつく分野すべてでF-35には旧型機をしのぐ性能がない。ただし、ステルス以外にも同機の優れた性能が実は存在する。

データ融合こそF-35最大の武器f-35 failure(Lockheed Martin)

F-35は音速を超えた速力で飛行し、防空体制の整った空域に進入しペイロードを投下し、ヘリコプター空母に着艦できるが、これらは同機を特別の機材にする理由の一部にすぎない。最重要な機能として多くの専門家が言及するのは敵探知を逃れ兵装を投下するためのステルスよりも、情報を吸い上げ処理しパイロットに適切な情報として提供する能力だ。

戦闘機パイロットも元をただせば普通の人間と変わりないが、機内でこなす仕事は想像を超えた困難の連続だ。体力の限界以外に強い精神力と集中力が必要なのだ。

第四世代機でさえパイロットは20を超えるダイアル、数値に集中を迫られ、水平線、周囲の空域に目を凝らして敵機をさがし、ミサイルの接近がないか警戒するの作業を同時に行う。

f-35 failure運転中にラジオに気を取られ事故を起こすドライバーもいるのに、これだけの計器類を操作しながら敵機がこちらに向け攻撃してくる状況を想像してもらいたい。 (Cockpit of an F-111 Aardvark, courtesy of the U.S. Air Force)

 

こうしたダイアル、センサー、画面にデータが次々と流れる。上空の状況も含め頭にすべてが入るかはパイロットの読み取り能力に左右され、ときには二種類のセンサーがそれぞれ食い違う情報を示すこともある。ドッグファイトとなればこうした計器にかまう暇はない。

F-35では信じられないほど高価な特注ヘルメット、強力な機内コンピュータを使い情報すべてを処理し、追加し、さらに別の機体、地上部隊、衛星、海軍艦艇からのデータを取り入れる。コンピューターが情報を抽出し分類し、再構築してわかりやすい形でパイロットの目の前に提示してくれる。計器多数を扱い、敵機を目視でさがすかわりに、視界内に重要情報がすべて提示されるしくみをF-35パイロットが利用できる。敵機の情報、友軍部隊の状況、ミッション目的など一目で理解できるが、機内の高性能コンピューターはこれ以外の仕事もこなしてくれる。

F-35のデータ融合機能でパイロットが得る状況認識の程度はこれまでの機材では実現できなかったものだ。データ共有で効果は複合的に増大する。F-35単機から第四世代各機の戦闘効果を増やす効果が生まれるのは、戦闘空域の状況情報を中継することによる。この結果としてF-35を「空のクォーターバック」と呼ぶパイロットは多い。戦闘を一変する性能だ。F-35では標的情報をリアルタイムで地上に伝え、地上兵器で敵を撃破することも可能だ。

F-35のデータ融合機能はステルス性能ほどには注目されていないようだが、ステルスは50年前生まれたコンセプトなのに対し、データ融合は未来の象徴だ。

F-35は今後どうなるのかf-35 failure(Lockheed Martin)

米空軍が「第五世代マイナス」機を調達しF-35よりステルス性が劣るものの低価格機体で、激甚戦闘空域でF-16より高い性能を発揮できる機体を求める可能性があるようだ。しかし、これでF-35の役目がなくなるわけではない。

米軍並びに同盟国の航空戦力の中心になると目されたF-35は高すぎる期待の犠牲でもあり、膨大な米国防予算でさえ正常に扱えなくなってきた。米国標識をつけたF-352千機も飛び回る事態にはならないかもしれないが、だからと言って失敗作と簡単に片づけられない。

ロッキード・マーティンが2019年に批判の的になったのは、日本に対しF-35F-22の性能を兼ね備えたステルス戦闘機を低コストで実現可能と述べたためで、F-35事業の財務無責任状態を自ら認識してしまったためだ。ただし、この言いぶりには別の解釈も可能だ。なんでも最初は高いが、次回から安くなる。時間がたてば、高性能技術も普通の存在になり、価格も低下する。さらに新しい技術が登場してくる。次のステルス戦闘機はコストは下がりながら高性能を発揮するはずだ。軍事技術や戦闘の世界ではこれは普通のことだ。

次に登場する戦闘機はF-35開発で生じた高い代償を伴う教訓を生かすはずだ。教訓にはエイビオニクス、機密通信ネットワーク、厳しい空域での運用が含まれる。このような得難い情報がF-35調達の14年間で生じた財務負担をうわまわるだろうか。答えは否である。F-35には画期的な技術が盛り込まれているが、機能は別で費用対効果の目安となる。

F-35を空論から生まれた機体と見れば、失敗作と決めつけたくなるのは理解できる。だがF-35はそもそも現実に作戦投入するための機体だ。この戦闘機は米国の第一線部隊を有利にすべく生まれた機体であり、実際に同機を操縦するパイロットに尋ねれば、この役目のために生まれた機体だと答えるだろう。

F-35は調達失敗作なのか、戦術面での成功事例なのだろうか。答えは簡単ではない。共に正しい。

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How the F-35 flies the line between failure and success

Alex Hollings | April 28, 2021

  

核兵器の意義を考える。冷戦時に日本が核武装していたら世界は大きく変わっていた。米国の核の傘の下にとどまり、核兵器保有を断念した(させられた)日本の決断は妥当だったと言える。

 

 

 

ここがポイント:米国が日本の核武装を認めなかったことが長期的に良好な結果を生んだといえるが、日本が核武装していれば北京政府はパニック状態になっていたはずだ。

 

戦時の米国は選択的核兵器拡散を認め、ソ連によるヨーロッパ侵攻への抑止効果を狙った。ロシア側も英仏両国の脅威を現実に感じていた。

 

米国は同じ戦略をアジアでは採用しなかった。米国には日本の核武装を支持する理由がなかった。逆に日本が核兵器に野心を見せると毎回米国が抑え込んでいた。

 

この方針は熟考の結果で、日本が核武装すれば世界規模の核拡散につながるためだった。しかし東アジアの力のバランスが望ましくない方向に動いていたら、日本の核武装が理にかなっていたはずで、これが世界の核兵器拡散に大きな意味を持ちかねなかった。

 

第二次大戦の遺産

 

第二次大戦中に日本も核兵器開発を模索していた。ただしドイツに匹敵する進展はなく、米国には及びもつかなかった。占領初期に研究基盤は米国が破棄し、日本に核兵器開発を許す意思がないことは明白だった。真珠湾の前例が米国に重くのしかかり、日本が強力な兵器を保有し再び奇襲攻撃を実施するのは受容できないというのが一般の受け止め方だった。米国が英仏両国に核開発を容認したのは両国が第二次大戦で同じ戦勝国だったからであり、なんといっても日本は侵略国家であり、敗戦国だった。

 

一方で唯一の核攻撃被害国として日本の国内政治は核武装に否定的だった。とはいえ、1960年代の日本政府が核兵器開発を積極的に検討していた事実があり、佐藤栄作首相は日本に核兵器がないと中国に対抗できないとまで発言した。米側はこれを問題視した。ジョンソン政権は日本に不拡散条約加入を求め、当時はこれで日本の核武装構想は封印された恰好になっていた。

 

日米両国での核兵器に関する意思決定

 

ではどうしたらワシントンの方針が変わり、日本にどんな影響が生まれていただろうか。中ソ対立が米国の懸念材料だった。日本の核武装で中国がソ連に再接近すれば、東アジアで共産勢力が強固になっていたかもしれない。だが二大社会主義国が仲たがいしていなければ、日本の核抑止力構想の魅力が高まっていただろう。

 

日本国憲法は攻撃兵器保有を禁じており、各装備に防衛的性質があるのか言葉遊びが延々と続いている。例えば航空母艦は「ヘリコプター護衛艦」と呼ぶ。日米当局が憲法による禁止事項の回避策を見出しているのは明らかだ。日本経済の成熟度を見れば、核兵器開発の方針が決まれば自衛隊の核武装は短期間で実現していただろう。

 

核兵器運搬手段として日本は中距離弾道ミサイルを開発、あるいは米国から導入していたはずだ。アジア中心部を標的に収めても米本土には到達できない。さらに米国がポラリスあるいはトライデントSLBM技術を供与し、原子力潜水艦建造も並行して進めていれば実用化に道が開いたはずだ。長距離爆撃機となると飛躍しすぎになるが、F-15なら戦術核攻撃任務はこなせていただろう。

 

日本核武装はこんな影響を及ぼしていたはず

 

日本核武装による最大の影響は北京に現れ、中国側は大パニックに陥っていただろう。中国は核武装で米、ソ、日本の三か国に抑止効果を発揮できるようになった。ただ日本については通常兵器に限定した武装であり、国内に平和主義の政治風潮があることから、核兵器による抑止効果は不要となった。とはいえ、日本が核兵器保有により米国から独立した政治力を持つと中国は懸念したはずだ。日本が米国の核抑止力に依存している限り、米国が有利となる。日本の核兵器は覇権を求める動きを再開させ、中国は最終的にロシアに再接近、あるいは自国の核抑止力強化に向かっていたはずだ。

 

日本の核武装は域内で警戒を招いていたはずだ。ソウルも米国に安全保障で依存する中で、当面は「苦笑いで我慢する」態度を取りつつ、長期的に自国の核開発に向かっていたはずだ。同様に日本の核武装で米国は台湾の核武装志向を押さえるのに苦労していたはずだ。遅れてはならないとインドも核武装に走り、同国の場合は政治制約もなく進展していたのではないか。

 

さらに日本が核武装していたら、実際に日本が世界規模の核不拡散の進展に果たした役割は果たせなかったはずだ。世界唯一の被爆国として日本は世界各地の反核の動きに重みを示していた。こうした動きも日本が退場していれば大きく制約を受け、世界各地の核兵器拡散防止は支障をきたしていたはずだ。

 

長期的には日本の核兵器開発を認めないワシントンの決断が効果を奏している。中国はロシアからさらに離反し、日本は米国依存を保ち、域内とともに世界規模の非拡散体制が効果を上げている。しかし、米国が中ソ関係を読み間違え、日本政府の一部が強硬な態度に走っていれば、全く別の状況が生まれていたはずで、日本のみならず世界各地で核武装が実現していただろう。■

 

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What if Japan Became a Nuclear Weapons Powerhouse in the Cold War?

April 30, 2021  Topic: Nuclear Weapons  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: Nuclear WeaponsJapanChinaJapanese MilitaryMilitaryDefense

by Robert Farley 

 

Robert Farley, a frequent contributor to the National Interest, is author of The Battleship Book. He serves as a Senior Lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and the Diplomat.

 

This article first appeared in 2016.

Image: Reuters


2021年4月30日金曜日

新空軍長官に元国防次官フランク・ケンドールを指名したバイデン政権。オバマ政権時の懐かしい人物が再びスポットライトを浴びる。空軍次官には非白人女性ジョーンズを指名。議会は難なく承認するのでは。

  

 

英国向けF-35の引き渡し式典(2012年)でフォートワース(テキサス州)で招待客に祝辞を述べるフランク・ケンドール(調達、技術、補給活動担当国防次官、当時)。(Tom Pennington/Getty Images) 

 

 

イデン政権は空軍長官にフランク・ケンドールFrank Kendall、空軍次官にジーナ・オーティス・ジョーンズGina Ortiz Jonesを正式指名した。

 

4月27日午後にホワイトハウスが発表し、同日朝にDefense Newsが先に報じていた。

 

ケンドールはオバマ政権で国防総省の調達最高責任者を2012年から2016年にかけて務めた。調達、技術、補給活動担当の国防次官として調達活動の機動性確保のため “Better Buying Power” を提唱した。

 

ケンドールは国防総省内で数々のポストを歴任しており、2010年から2012年には主席次官代理だった。また国防産業でも1990年代にレイセオンで技術部門副社長だった。

 

陸軍で軍歴を有する人権派弁護士のケンドールは選挙運動中のバイデンチームで早くから国防問題の顧問となり、国防総省あるいは軍の長官ポストの噂が出ていた。

 

ケンドールは陸軍出身だが、ペンタゴンで空軍向け及び航空宇宙関連の兵装調達トップ歴が長い。ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機には鋭い批判をすることで知られ、「調達の悪例」とまで呼んだ。

 

ジョーンズはペンタゴンでは新参者だが、その他政府組織で広い経験を有する。空軍では2003年から2006年にかけ情報官としてイラクに派遣された。2008年には国防情報局へ顧問として移動している。その後、米国通商代表部に勤務した。

 

ジョーンズは2018年2020年連続して下院議員に立候補し、テキサス23選挙区で民主党候補となったがともに共和党候補に敗れている。

 

ジョーンズはフィリピン系米国人で「聞くな、話すな」の軍方針の元で同性愛者として勤務する困難な日々を過ごした。任命が確定すれば、初の非白人女性空軍次官となる。

 

両名は厳しい局面に立たされている空軍を指導することになる。空軍参謀総長C・Q・ブラウン大将は空軍の変革をめざい、高性能機材を投入するロシアや中国の脅威に対抗しようとする。ただし、本人も変革は意味のなくなった事業や既存機種の削減があってこそ実現できると見ている。

 

米空軍は議会に自らのメッセージを伝えるのに苦労してきた。ケンドール=ジョーンズ両名は空軍の戦略的意義を議員に伝えるのを助ける役目を果たしそうだ。

 

新人事の公表を受け、下院軍事委員会委員長アダム・スミス議員(民、ワシントン)は両名の指名を支持する旨の声明を発表した。

 

「フランク・ケンドールこそ公僕として空軍を率いるのが適任の人物で、空軍に多くの将来の脅威に対し模索を続けているところだ。40年に及ぶ国防、安全保障での経験に加え、オバマ政権時の調達業務への献身ぶりから、これ以上の逸材は見つからない」

 

スミス委員長はジョーンズが空軍勤務時の経験を評価し、今回の指名はバイデン政権が米国民の多様性を反映する形に国防総省を構築する動きの一環と述べた。

 

上院の軍事委員会院長ジャック・リード議員(民、ロードアイランド)もケンドール指名を支持すると述べている。両名は1971年のウェストポイント陸士卒でもある。

 

「フランクの指導力は実証済みで有効だ。本人には技量、経験、誠実さ、トップ文官として空軍を率いる性質が備わっている」との声明文を発表した。■


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Biden to nominate Frank Kendall as Air Force secretary

By: Valerie Insinna and Joe Gould

Aaron Mehta in Washington contributed to this story.

 

コメント F-35に批判的な空軍長官が誕生するとロッキードには逆風ですね。これまで大きすぎてつぶせないとまで言われてきたライトニングIIですが、空軍内部にも見切りをつける動きが顕著になっています。それにしてもバイデン政権はまるでオバマ政権の延長の様相を明確にしてきましたね。