2021年7月5日月曜日

空軍参謀次長に聞く。米空軍の近未来構想。F-22、A-10の行方。NGADの設計運用構想。次期機種の設計も並行して進めるスパイラル方式。F-16後継機種など。

 



S・クリントン・ハイノート中将


空軍参謀次長にして戦略、統合、要求性能を取り仕切るS・クリントン・ハイノート中将は「空軍の未来学者」とよく呼ばれる。空軍の戦略方針立案ならびにマルチドメイン作戦構想とあわせ、作戦要求内容から装備品の統合を進める構想の責任者である。今年4月にAir Force Magazine編集部のエイミー・マクロー、トビアス・ネージェル、ジョン・A・ターパクが中将とzoomでインタビューした。

空軍参謀総長チャールズ・Q・ブラウンジュニアが最近になり空軍の長期機材運用計画にF-22ラプターは入っていないと公表している。第五世代の同機が姿を消しても第四世代機は長く供用するとある。なぜなのか。

空軍士官学校でYF-22とYF-23比較の論文を書いた。1991年当時は上級学生だったので年月が経つのは早い。30年になる。F-22に導入した技術も30年前のものだ。機体は今も高性能のままだが、実用化した新しい制空用途の技術をF-22から[次世代制空機材のシステムファミリー] へどうつなぐべきか検討する好機が来たといえる。F-22へ投資を続けるのは、NGADが中長期的に戦力化されるまでのつなぎとして必要だからだ。そうなると[F-22退役までの] 時間は10年から15年というところだろう。

NGADは前調達トップのウィル・ローパー博士が述べたように供用期間30年の想定ではなく、10年ないし11年12年使えればよい機体になるのか。

その通りだ。そう考えている。興味深い分析があり、供用期間の最適長についてのもので、まだ答えは出していないが、この質問は実に興味ぶかいものがある。なぜならこれまでは一定の期間供用する前提で機体を作り、その後ティンカー[オクラホマ州の空軍基地]に送る、あるいはヒル[ ユタ州の空軍基地] へ送り分解し再生していた。だがもしこれ以外のモデルが生まれればどうなるか。つまり、耐用年数を食いつぶすまで飛行させ、常時新型機を登場させていったらどうなるか。空軍でこうした考え方を定着させようとしている。

NGADに関し、迅速な開発をめざし、配備も迅速にし、配備が始まる時点で次期機材も半分完成させるということでいいのか。

次期機材の設計が始まる。

ということはNGADの次の機材も設計がはじまっているということなのか。

肯定も否定もできない。ただNGADの開発サイクルが始まっており、想定しているはある機種の開発、統合、配備をする間に次の機種の設計を進めることだ。航空機メーカー各社には設計段階で参入の機会が生まれることになり、選定によりその後参画できなくなる企業が生まれる。これを現在複数の事業を通じて実現する。

そうなるとサイクルは5年あるいは10年になるのか。

答えは出ていない。適正レベルを確立しようとしているところだ。そのため、ある機種を配備しつつソフトウェアや武装装備を同時に進展させるためにはプラグアンドプレイ方式になっていくのではないか。機体の成熟化が進む間に性能改修も企画し、同時に次期機種の設計を進める。その間に最新ソフトウェアを搭載でき、センサー技術を新型機に導入できるので、大幅な機能向上が実現する。5年おきか8年おきになりそうだ。

ではNGADの実戦化はいつか。

イベント中心に進めていく。現在の想定では2030年ごろというところだ。

空軍は旧型機の退役が必要と議会に訴えている。将来構想がこれにより左右されるはず。議会に正しい方向だと納得させられるか。

議員にはNGADの進展ぶりの一部を見てもらっている。視察した議員は一様に強い印象を受けている。事業の実現に向け仕事は多いが、現状を見て、実際に機体を飛ばす空軍隊員から話を聞いて、実際の方向性を理解してもらえる。ペンタゴンの高官向けに同じ企画をしている。実際に大きな効果が出ている。百聞は一見にしかず、ということだ。 

機体の廃止について各議員と話している。議会側全体として前向きになってきたと実感している。

F-22性能向上予算を認めない圧力は懸念ではないのか。今後10年15年後に実行が難しくならないか。

懸念があるのは確かだが、F-22を維持し新型機までのつなぎとする方針は重要だ。ここにリスクを冒す余裕はない。機材更新には日程上の余裕が少ない。そのため、F-22へ予算投入を続ける。同機に限界があることを承知の上でも装備の近代化が必要で、NGADの実用化まで活用したい。

Q. A-10は「プラスワン」と呼んでおり、2030年代まで供用するとある。両機種を同時に用途廃止すればリスクが生まれるのでは

機種ごとに廃止案は異なる。F-22では一部機能がNGADとは全く異なる。NGADは無人機、有人機混合となる。そのため単純な機種交代となならない。A-10を廃止する段階で、同機のような低生存性の近接航空支援機をまた作ることはしない。また、共同運用部隊が生まれつつある中でA-10廃止の時点で近接航空支援が全く同じ形になっているかわからない。おそらく、もっと分散型戦力になるのではないか。陸軍は火力を重視し、機動性はそこまで重要でないとしている。であれば近接航空支援も違う形になるはずだ。ミッションの内容も変わる。問題はA-10が現在担当している環境でこうした新機能をどう活用するかだ。対テロ戦でも新コンセプトの開発や性能が必要となる。その時間軸で見ると新しい構想の機体が必要となり、A-10廃止を進めるべきだ。

参謀総長が口にしているF-16後継機となる「完全新型機」構想はどうなるのか。A-10にも関係するのか。 

今後の戦闘で必要となるミッションに本土防衛ミッションがある。そこではハイレベルの生存性は必要とされないはずで、NGADとは異なる。そうなるとステルス性能も設計上で必須とならないが、ここで関係するのは、今後の時間経過とともに進化する設計をどうやって実現し、政府の力をどう活用するかということだ。

最近になり海軍は空母艦載機として有人無人機を半々にするとしている。2030年には6対4になているかもしれない。ではUSAFの考える比率はどうなるか。

第六世代機の構成を考えると有人、無人機の組み合わせが大きな意味を持つのは確実だ。自律運航機材に向買うのは確実で、有人機にぴったりくっついて飛ぶ無人機もありうるし、大量に投入される可能性がある。その好例がセンサー機能で多様な機材をネットワークでつなぎ対象地区を念入りに走査し戦闘クラウドでデータを相関させ、融合させ、活用する。これを演習で実行しておりその効果は極めて高いことがわかっている。またこの技術を同盟国友好国と共有し、大規模にセンサーのグリッドを実現し、敵の妨害を受けなくする。これで共同部隊は生存性を高める。また回復力を高める効果も生まれる。

実験の一つとして今週だったと思うが、無人機をロケット補助で発進し、パラシュート回収するビデオを公開した。この方式なら滑走路がない場所から発進回収か可能となり、価格と性能面で航空戦力に新しい局面が生まれる。滑走路がない場所でも航空戦力が実現するわけだ。この意味は大きい。将来の戦闘での生存力を考えると必要な技術で、中国のA2AD体制からミサイルが大量にわが方の航空基地に降る事態ではなおさらだ。■


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Q&A: Future Force

By Amy McCullough, Tobias Naegele and John A. Tirpak

June 30, 2021




実戦体験が1979年以降皆無のPLAは勝利できるのか。一方で米軍の実戦体験も戦闘員相手の戦闘で、中国相手となれば未知数。演習からの学びが重要になる。

  

 

1979年以降の人民解放軍には実戦事例がなく、その実力に疑問が呈されている。これに対し、長期作戦のイラク、アフガニスタンはじめ各地で米軍は世界で最も高い実戦体験を有している。とはいえ、低強度戦での体験が主であり、中国相手のハイテク戦には応用できないとの意見もある。

 

「実戦を経験した古参兵も数年で退役するため、戦闘の実体験を有する者が皆無となる」

 

中国軍に実戦経験は皆無に近いとシンクタンクRANDのティモシー・ヒースが論述している。だが経験の欠如があるからと言って大勢に影響はさほど出ないとも述べている。

 

「今日の中国軍にハイテク兵器が次々に加わっているが、装備品を使いこなす能力があるか不明だ。疑わしく思える理由がある」

 

人民解放軍が実戦投入されたのは1979年が最後で、「歴戦を経たヴィエトナム軍が大規模な中国侵攻部隊を撃滅した」とヒースは述べている。

 

当時のヴィエトナム軍は米軍等の敗退直後の戦力を維持する状態だった。中国軍は中国共産党による粛清を受け骨抜きの状態だった。

 

「PLAは有効性がないと判明していた人海戦術など旧戦術に戻り、実戦部隊は地図が読めず、砲兵隊は距離測定に慣れておらず射撃が不正確だった」(ヒース)

 

「この際の敗退のイメージがPLAに今も残っている」とし、「中国上層部が面倒な形の武力衝突には目をつぶっていたため、PLA隊員は実態と反する形の戦いに動員された」

 

「軍に残るごくわずかな実戦経験者があと数年で退役すれば、軍内部に実戦を知るものが皆無となる」

 

だからと言って中国が大規模戦闘で勝利を収めるのが不可能なわけではない。「勝利」の意味が重要で、大量の人員喪失や経済、環境、政治面の混乱の発生が戦争の結果どうしても生まれる。

 

「勝利」とは単純に以下を意味する。一方が短時間で戦略上の目標を達成し、他方に同じ結果を獲得させないことだ。ヒースは歴史を俯瞰し戦闘結果を左右するのは演習で得る知見だとする。

 

第二次大戦初期の米軍はこの知見が欠如していたが、訓練教育さらに物資、戦意、仕組み整備を通じ、初期の敗退事例を克服していった。その例が北アフリカの1943年におけるカセリーヌ峠で米軍部隊が被った被害だ。

 

対照的に1991年のイラク軍は1980年以来8年にわたりイランと対戦し経験が豊かだった。しかし、装備、戦闘方針、仕組み整備は不十分なままだった。米主導の多国籍軍は実戦経験は劣っていたがイラク軍を圧倒できたのは、優れた装備品、訓練、戦闘対応能力を冷戦時から引き継いだことが大きい。冷戦時には両陣営で銃火をかわすことはまれだったが、十分な準備を行う時間があったからだ。

 

今日の米軍にはいかなる国より豊かな実戦経験がある。この背景に長期にわたるイラク、アフガニスタン他での米主導の作戦展開がある。だが、経験値は低強度戦で得たものであり、中国相手のハイテク戦に通用するのか疑問を呈する向きがある。

 

「中国軍が相手の戦闘では米軍部隊は高密度戦闘に巻き込まれる公算が高い。これは両陣営で未体験分野だ」「初回の衝突時の勝利はどちらに転んでもおかしくない。適正な準備と立案があり、理想的な環境なら、中国が初戦で有利になってもおかしくない」(ヒース)

 

「だが初回の衝突で戦闘は終結しないだろう」「米軍部隊は実戦から学び戦闘効率を引き上げる強みを活かすはずだ。カセリーヌ峠で敗退したもののドイツ軍を撃破した事例のように」

 

「中国が指揮統制、訓練、統合、その他での劣勢を克服しようと展開してきた努力が実を結ぶかは戦闘が長引けば判明するはずだ。長期戦になれば結果を決めるのは将官による指揮ぶりを超えた、経済力、政治力、国民の結束などの要素に移る」とヒースは述べている。■

 

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China's Military is Inexperienced. Could That Cost It in a War?

by David Axe 

July 2, 2021  Topic: Military History  

 

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

 


2021年7月4日日曜日

米海軍が電磁レイルガン開発を中止し、予算を有望な別事業に流用する。技術課題が解決できないとの判断。

 


 

Firing of electromagnetic railgun Naval Surface Warfare Center, Dahlgren, Va.

海軍水上戦センターで高速撮影ビデオが捉えた電磁レイルガンの発射の瞬間。January 31, 2008. (U.S. Navy/John Williams)



磁レイルガンの開発資金を極超音速ミサイル他ハイテク兵器開発に流用すると米海軍が発表した。


「厳しい財務事情、戦闘装備の統合に向けた課題、その他兵器体系の技術成熟度を考慮し、海軍は電磁レイルガン(EMRG)の研究開発を一時中止することとした」との声明を海軍が発表した。


レイルガン開発は2005年に開始され、火薬を使わず電磁場で砲弾をマッハ7、最大射程100カイリまで発射するはずだった。


しかし、開発開始から15年経過しても実用化に至っていない。2018年に海軍関係者は500百万ドル規模の実験で実用化のめどがついたと説明していた。



レイルガンはこうして高価ながら実用化不可能な装備品の仲間入りすることになり、未来型戦闘システム、コマンチヘリコプター、次世代巡洋艦に加わる。


レイルガン開発中止の兆しは先月に見られ、ホワイトハウスがまとめた2022年度予算案では海軍は火砲発射型誘導弾の予算を取り下げていた。これは実験用レイルガン用に開発を目指していた1メートル長の発射体だ。


「EMRGの開発停止は全省レベルの見直しの一環で、資源を優先事業に振り向ける。指向性エナジー、極超音速ミサイル、電磁兵器の開発を急ぐ」(海軍発表文)


ただし、レイルガン開発の難題は予算だけではない。2018年に当時の海軍作戦部長ジョン・リチャードソン大将は想定射程が実現できていない現況を議会で明らかにしていた。「実用化には各種技術が絡む。中でも砲身が制約で、工法、素材が大出力に耐える必要があり、発射に伴い熱や圧力が発生する」


これ以外に、大電力をどう確保するかの課題も未解決だった。三隻しかないズムワルト級駆逐艦のみ必要な電力を確保できるとされていた。■


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The Navy Finally Pulls the Plug on the Railgun

2 Jul 2021

Military.com | By Konstantin Toropin


2021年7月3日土曜日

中国が建造中の003型空母はフォード級に匹敵する大きさ。蒸気カタパルトを飛ばし一気に電磁カタパルト方式を採用しても米海軍の長年の運用実績の知見の厚みは一夜には得られない。

 


 

Chinese Type-003 carrier compared to the US Navy's Ford Class



海で建造中の新型航空母艦は中国海軍力の急拡大ぶりの最大の象徴だ。供用中二隻よりはるかに大型で、かつ全く異なる艦となる。そのため、米海軍の最新鋭フォード級と直接比較したほうがよい。


世界の主要海軍では空母が戦略上で高い優先調達装備になっている。運用歴が長い英海軍、フランス海軍、インド海軍はそれぞれ新型艦の建造調達を目指している。日本、南朝鮮他もクラブ入りをめざしている。だが、中国の整備ぶりが突出している。中国海軍PLANはロシア艦を原型とし二隻を供用中だが、三番艦003型で空母運用の次の段階へ進む。


空母技術で長年世界に君臨してきた米海軍も最新の超大型空母フォード級の導入を急いでいる。初号艦USSジェラルド・R・フォード (CVN-76)は2017年就役し、技術面で調整が必要となっているが、いまだに世界最大かつ最新鋭の空母のままだ。


これに対し003型は大きさで米空母に近く、「超大型空母」の分類に入れてもよいだろう。最新の商用衛星画像を見ると、同艦の大きさが推定できフォード級と比較できる。


画像から全長320メートルとフォード級より13メートル短いに過ぎない。とはいえ、両艦を並べるとこの差に大きな意味がないように見える。


ただし、中国艦の飛行甲板は米空母より狭いものの、先行001型002型空母にほぼ等しい。この理由として乾ドックの幅など支援施設要因があるのだろう。あるいは単純に中国当局は現行空母と同じ幅で十分と考えたのかもしれない。


だが現有空母二隻との大きな違いは航空機発艦方式だ。新型艦はCATOBAR(カタパルト補助発艦・拘束回収方式)であり、先行艦はSTOBAR(短距離発艦・拘束機体回収方式)だ。フォード級同様に003型は電磁航空機発艦システム(EMALS)を採用しているとみられる。これにより発艦機数を増やす効果が生まれる。これは最新技術であるが、信頼性が劣るとの評価がフォード級で判明したと伝えらている。ただし、改良が続いている。新技術のため課題もあるが、中国側も同じ事象に直面しているとは考えにくい。中国としては蒸気カタパルトの実用化技術習得を飛ばしEMALSへ一気に向かうのは合理的選択だろう。


003型にはカタパルト3基があり、2基を艦首側、一基を側部に搭載する。フォード級並びに蒸気カタパルト式のその他米空母は4基となっている。


カタパルトは現在供用中の中国空母二艦にはないが、新型空母はこれで新型艦載機の運用が可能となる。新型固定翼の空中早期警戒統制機 (AEW&C)のKJ-600が搭載されそうだ。同機は外観も任務もE-2D高性能版ホークアイに酷似している。その他予想される艦載機にはFC-31ステルス戦闘機の空母運用型がある。最近同機の実寸大モックアップが武漢の試験施設に登場している。同機はF-35CライトニングIIに近い存在だ。エンジンは双発で機内兵装庫は大きくなっているようだ。ただし同機の運用開始は数年先との予測で、003型就役開始時点ではJ-15フランカーをカタパルト運用可能に改装した機材を搭載するだろう。


フォード級は航空機移動用にエレベーター(リフト)を三基備える。ニミッツ級では四基だった。EMALS導入でニミッツ級を上回るソーティ生成回数が可能となる。だが中国艦では二基しかない。ともに長方形で右舷側に搭載される。大型のアイランド艦橋が中間に位置するためだろう。フォード級のアイランドは艦尾側に配置されている。前方エレベーターはカタパルトに近い位置にある。ジェット爆風の遮蔽版はエレベーター横にある。この位置関係だと発艦時には前方エレベーターは利用できないだろう。


ただし、紙の上では同艦はリフトが減って、デッキで利用可能な面積が増えるはずだ。だが、格納庫から機材を移動する距離が長くなる代償を考えると賢明な策とは思えない。ソ連時代の先例が影響しているようだ。003型のリフト2基配備はアドミラル・クズネツォフと同じだ。


003型のアイラインドが艦上に設置されたのは数日前のことだ。先行空母より短いように見えるが、大型フェイズドアレイレーダーを搭載するはずでフォード級と同じだ。


まとめると、003型は全体寸法こそやや小さく、カタパルト数、エレベーター数も少ないため、ソーティー生成数も低くなる。米空母はこれまでの運用から進化してきた。中国艦はこれに対し、空母運用の知見が少ないこともあり、手堅い設計になっている。003型が大型艦で高い戦力になるのはまちがいない。だがソ連時代の設計思想の影響を受けている側面もあり、総合的な効果に疑問も残る。


もちろん、003型のほかの部分ではまだわからないこともある。フォード級でも同様だ。だが、最終的には戦闘威力で評価すべきで、運用する乗員や運用方針が大きく影響する。PLANには米海軍が有する経験の厚みが欠如しているものの、PLANも空母運用を開始し10年近く経っており、経験の蓄積は急速に実現できる。またそのために大規模な予算投入をしているのは明らかだ。■


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China's New Super Carrier: How It Compares To The US Navy's Ford Class

H I Sutton  02 Jul 2021

 

H I Sutton writes about the secretive and under-reported submarines, seeking out unusual and interesting vessels and technologies involved in fighting beneath the waves. Submarines, capabilities, naval special forces underwater vehicles and the changing world of underwater warfare and seabed warfare. To do this he combines the latest Open Source Intelligence (OSINT) with the traditional art and science of defense analysis. He occasionally writes non-fiction books on these topics and draws analysis-based illustrations to bring the subject to life. In addition, H I Sutton is a naval history buff and data geek. His personal website about these topics is Covert Shores (www.hisutton.com)


2021年7月2日金曜日

スイスがF-35Aを36機調達と決定。旧式ホーネットに代替する。これでF-35導入国は計15か国になった。

 

Senior Airman Kristine Legate/U./S. Air Force)


 

ッキード・マーティンのF-35共用打撃戦闘機が65億ドル規模のスイスの次期戦闘機選定で採用され、ユーロファイターダッソーボーイングに打ち勝った。

 

スイスはF-35A通常方式離着陸型を36機調達し、供用中のホーネット部隊と交代させる。

 

同時にペイトリオットミサイル防衛装備5基をレイセオン・テクノロジーズから導入する。フランスのユーロサムのSAMP/Tは選定に敗れた。

 

ロッキードに大きな成果となり、同社のヨーロッパでのF-35商戦には追い風となり、ユーロファイターのタイフーンには打撃となった。ダッソーのラファール、ボーイングのF/A-18E/Fスーパーホーネットも敗退した。

 

スイス連邦評議会は今回の選定結果発表でF-35の最高水準の性能と価格の妥当性に触れた。ロッキード提示案は30年の供用期間で他社より21億ドル低かった。一方でF-35の性能が評価され、支援体制等もその他競合各社より優れていた。連邦評議会はJSFの生存性に触れ、状況認識能力がセールスポイントでスイス空軍の航空警戒任務に適すと述べている。

 

「F-35Aが最高点を出した。革新的で強力なネットワーク機能で領空を防御し監視できる」(スイス連邦評議会)

 

「スイスに選定され誇らしく思い、今後同国政府、民間企業、空軍と協力しF-35を納入していく」とロッキード副社長兼F-35主管のブリジット・ローダーデイルが述べている。「今回の選定っでスイスは第15番目のF-35導入国となり、その他導入を決めたヨーロッパ諸国とともにグローバルな航空戦力、安全保障体制の強化に資することになる」

 

F-35選定を予告していたのはスイス放送企業SRFで性能評価では同機が最高点だったと先週明らかにしていた。SRFによればスイスは競合機種より多い機数を導入できるという。

 

ただし、政治的判断や産業界への考慮も選定に効果を与えている。選定過程を通じスイス政府は競合各社からスイス国防産業基盤への貢献を期待する旨明示していた。連邦評議会によればF-35はこうした波及効果でも最高点を出したという。エアバスは700ページに及ぶ経済波及効果に関する書類をスイス政府に提出し、タイフーン最終生産を同国内で行うと述べていた。

 

これに対しロッキードはF-35用キャノピー生産をスイスに提案し、整備拠点もスイス国内に設置し、ヨーロッパ各地のF-35キャノビー用に利用するとし、同時にサイバーセンター拠点もスイスに置くとした。

 

同社はF-35最終組み立てを4機分、エムメンの既存ルアグ工場で行うと甘言まで持ち出した。ただし、これを実行すると事業経費が「大きく増える」と認めている。

 

他方でボーイングはスーパーホーネットならホーネットから機種転換が容易だとし、スイスは「設置済み知的インフラ」を最高6割転用でき費用節減になると主張していた。

 

同社は今回の選定結果へ失望感を声明文で表明した。

 

「弊社としてはボーイングF/A-18ブロックIIIスーパーホーネットこそスイスに最適な選択と信じ、スイス空軍に他では得られない性能とライフサイクル価値を提供すると信じ、産業協力その他強力な支援体制を想定していました。今回の選定過程については明確な説明があるものと期待しています」

 

今回のスイスによる選定結果は米国内で順調に処理される見込みだ。F-35、F/A-18ともにスイス向け販売は2020年9月に事前承認ずみだ。■


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Lockheed's F-35 topples competition in Swiss fighter contest The F-35 beat out the Eurofighter

 

By: Valerie Insinna 


主張 中国共産党(パーティ)は100周年を迎えたが、パーティは終わりの時間が来る。

 

CCP BirthdayImage: Creative Commons

7月1日の創立100周年を迎え、中国共産党(CCP)が祝賀色に染まっている。この機会に映画、音楽、演劇、結婚式典に加えもちろん花火も打ち上げられ、ここぞとばかりの多彩な催しが展開している。

一方で内務省は「非合法」の非営利組織として宗教団体などの全国取り締まりを展開することで100周年の「良き環境」を実現している。

党の公式歴史を「歪める」あるいは「名誉を汚す」ものに待ち受ける結果を当局が警告している。インターネットを取り締まる中国サイバースペース管理局からは「歴史を冷笑するもの」を告発する専用ウェブサイトとホットラインが公表されており、「傑出した社会主義価値観の優秀性を否定する」ものをあぶりだせ、とある。

反対意見に厳しく臨む姿勢は社会を堅固に保ちつつ国民の忠誠心を強化する必要を認める中国首脳部の意識を反映している。

習近平は社会全般を管理するのを断念すれば共産党の統治は分解するとこれまでも警告しており、民間部門、学校、報道機関も例外ではないとしてきた。党の各種機関が全国並びに各地方で党史の学習会を開催している。中国軍でも百周年を利用し党と習近平への「絶対的忠誠心」を強化していると述べている。

一党独裁が70年続いても自由思想は根絶されていないことは明らかだ。

ここに関連するのが他国での共産党統治の実績を見てのCCPの歴史的使命だ。同党は1921年にマルクスレーニン主義を公式思想として創立された。1949年7月1日に共産党軍事組織が勝利に近づく中、毛沢東が歴史的演説「人民民主独裁体制について」を発表した。生命、自由、幸福の追求の命題の代わりに毛は「社会主義並び共産主義社会」では「階級、国家権力、複数政党を廃絶する」と公言し、私有企業の国有化、農業の共同化を「偉大な輝かしい社会主義国家」ロシアを念頭に推し進めると述べ、とくに「人民による民主独裁体制」による「強力な国家制度」に特に触れた。ここにCCPの創立時の価値観がある。

この価値観に中国国民多数はともかく欧米にも共鳴したものが多数出現したことに驚くしかない。知名度の高い層も加わっていた。だがこれはそもそも最初から間違っており、早くもこれを予知していたものもある。共産主義が逆に絶対的貧困を中国に生んだ。文化大革命で「数千万名がいわれのない罪状で迫害され、職業を追われ、精神を破壊され、身体的障害を受け、挙句の果ては殺害された」のである。毛の統治下での不自然な死亡例は15百万から80百万に上ったとの推計がある。これ自体は理解を超えたとてつもない規模だ。欧米の左翼陣営には毛沢東が共産主義の説く未来を信じ込んでいると映っていた。だが共産思想を現実のものにして不幸な結果や死を招いた。

毛が1976年に死亡すると中国は大変化に舵を切り、地方経済で自由売買市場や個人所有農地が出現した。毛の古くからの同志鄧小平は自身も文化大革命の犠牲となり、30年にわたる狂乱の時代から学んでいた。そこで、「中国の特色ある社会主義」と呼ぶ政策の実現をめざした。これは自由な流通、集団農園の解体、「責任ある体制」を農業、企業民営化、国際貿易、居留地移動の自由に求めるものだった。

その後30年で中国の変容ぶりは世界史上でもっとも傑出した出来事になった。10億人以上の国民が独裁体制から「コネ社会の資本主義」による生活に変わったのだ。制度は完璧とは言えないが、800百万人を貧困から脱出させたのは事実だ。

公式な思想はどうであれ、中国はマルクス主義国家とはとても言えない。ただし、レーニン主義は変わっていない。CCPは中国を鉄の統制で統治している。政治面で反対意見は許されず、司法は独立しておらず、報道の自由もない。習近平主席はさらに権威主義を強め、自らと取り巻きに毛時代を上回る権力集中を実現した。習近平は自身と党の権力を強大化しただけでなく、同時に党をイデオロギー面で強化している。党員資格の新方針では「CCP加入の条件に『マルクス主義ならびに中国の特色ある社会主義を信じること』を基本基準とする。このため党員は『政治面の要求内容を最上段に据える』ことを求めらえ、党の方針やイデオロギーを最優先事項としている」(Jude Blanchette and Evan S. Medeiros)

中国の経済改革は1976年に始まり、これまで貧困を大幅に減らし、経済成長を高め、中国に世界最大級の企業を生んだ。禁煙の中国は地域内のみならず世界規模でこれまでより大きな役割を果たすようになっている。だが中国が直面する課題は多い。経済成長の減速、急激な人口の高齢化、世界各地から示される敵意等だ。中国は過去二世紀の教訓に逆らおうとしている。教訓とは自由体制がより繁栄し安定するという事実だ。習主席が党による締め付けを強化しているが長期的には失敗する。中国共産も例外でなく、独裁体制が永続することはないのである。■

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The Chinese Communist Party Is 100 Years Old. But the ‘Party’ Won’t Last Forever.

ByDavid Boez

 

David Boaz is the executive vice president of the Cato Institute and has played a key role in the development of the Cato Institute and the libertarian movement. He is the author of The Libertarian Mind: A Manifesto for Freedom and the editor of The Libertarian Reader.

 

2021年7月1日木曜日

中露への抑止力発揮のため、米海軍も通常型潜水艦を整備し、日米共同戦隊を展開すべきだとするホームズ博士の持論をお聞きください。


https://www.reutersconnect.com/all?id=tag%3Areuters.com%2C2017%3Anewsml_RC1BE7450D00&share=true

 

海軍にはディーゼル電気推進式潜水艦部隊を整備すべき理由がある。SSKsで西太平洋での戦闘を抑止できる。米国の対応力を示せるからだ。抑止効果とは戦力そのものとあわせ、戦力を行使する意思を示すことで実現する。敵は相手の戦闘能力に打撃を与えられないと判断し顔面蒼白となる。端的に言って、弾力的な対応力が抑止効果が生む。開戦となれば、ディーゼル艦をたくみに利用することで米国ならびに同盟国なかんずく日本が戦闘を有利に進められる。

 

もう一度通常型潜水艦を整備すべき理由を列挙しよう。SSKsは連合軍部隊の中核を構成する。海上自衛隊と共通仕様の艦を採用し、両国共同部隊を編成し、戦隊を常時配置することで米国は日本防衛のリスクを負担する姿勢を示せる。日本も米国の姿勢から自信を深められる。両国の同盟関係が強化される。有事に米国が常に横にいてくれるとわかれば日本も安堵できる。米国が同盟国を信頼する意味は大きい。米国はアジア各地の基地なくしてアジアに戦略的プレゼンスを維持できない。そこで米海軍戦力の一部を多国籍部隊に編入することほど各国間の団結を示せるものはない。また各基地の利用が保証される。

 

さらに、戦略環境面でこうした艦は中国あるいはロシアの動きを第一列島線内で食い止める連合国の海洋戦略で大きな役割を果たす。原子力潜水艦支持派はディーゼル艦は海峡封鎖作戦や狭い海域での潜航には不適と主張している。逆に推進派はSSNsの利点を列挙している。たとえば制限なく潜航できる、高速移動できるなどだ。

 

だが、これは正しくない。SSKsがSSNsと同じである必要はない。今のままでも十分仕事ができるし、価格面で大量整備が可能だ。この点で原子力潜水艦派はディーゼル潜水艦のこれまで長い間にわたり達成してきた成果を否定している。米海軍太平洋艦隊の潜水艦戦隊は日本帝国海軍を第二次大戦中に苦しめ、列島線で活躍した。大戦中に水中戦が決定的な意味を持つと証明された。海上自衛隊もソ連、中国の水上艦航行に同様の戦術を冷戦期に展開した。歴史を否定してまでSSKsの効用を否定するのは説得力がない。

 

列島線の防衛で、日米の潜水艦部隊が高速水中速度と無限の潜航時間を有するSSNsで構成する理由はない。SSNsは大洋でこそ優れるものの、防御任務では過剰性能で高額投資になり、無駄な存在だ。米日潜水艦部隊は封鎖作戦に当たり、水上艦艇、島しょ部に展開するミサイル部隊、航空機、機雷敷設部隊と共同で任務遂行するはずだ。重要地点に配備する潜水艦は音を立てず列島線沿いにステルス性能を発揮し敵攻撃のチャンスを待つ。

 

ディーゼル艦ならこれが可能だ。連合軍は定期配備できる規模として潜水艦数を十分にする必要があり、戦闘損失を補う予備艦が必要だ。米日潜水艦部隊は十分な規模を維持しローテーションで琉球諸島への配備を維持する。ここに米潜水艦10隻余りが加われば、水上艦攻撃を黄海、東シナ海、オホーツク海でも実行する余裕が生まれる。こうした適正規模の戦力がSSNよりはるかに低予算で実現できる。低単価で大量調達が可能となる。隻数が多いほどよい。そうりゅうディーゼル艦の建造単価は最新の米ヴァージニア級SSNの32億ドルに対し631百万ドルなので、原子力潜水艦1隻の予算で4隻建造できる。ヴァージニア級3隻の予算があればディーゼル艦12隻が整備できる。

 

あるいは、SSN予算を使わなくても攻撃力が不足気味の沿海域戦闘艦をSSKに交換する手もある。最新のLCSの建造単価は646百万ドルでそうりゅう級に近い。LCSを断念しても、(実際に今年の予算で海軍は三隻のLCSを要求から外した)建造しないことで後悔は残らない。

 

だが、ディーゼル艦の利点は連合国の事情、戦略環境、予算事情に合致する以上のものがある。戦闘力を最も迅速に再整備できる側が戦闘に勝利をおさめることができる。海洋権力の大家アルフレッド・セイヤー・マハンやJ.C.ワイリーがこの主張に賛同するはずだ。

 

マハン、ワイリーはともに米国が大国間戦闘の緒戦で大きく劣勢に立たされると予言し、こうした戦闘こそトランプ政権下のペンタゴンが各軍に想定している種類だ。そうなれば、各軍は防衛産業各社とともに相当の戦力を整備しなければ中国あるいはロシアの戦闘初期における優位性を覆せなくなる。その後、米側は戦力を再整備し、しかも迅速にこれを進め、反撃に移る。米海軍潜水艦部隊は初期に損害を被った後で戦力を補充できるだろうか。SSN依存では不可能だ。米海軍は潜水艦建造を迅速に進め大量建造で戦闘力の立て直しを迫られる。

 

原子力推進機関含む艦建造は短時間かつ低予算で実現できない。年2隻のヴァージニア級建造で防衛産業の原子力関連製造能力が大きな負担を強いられているのは、オハイオ級の後継艦となる弾道ミサイル潜水艦の建造が別にあるからだ。そのためSSNの全体隻数は現状は増強できないままほぼ一定数に留まっている。平時に規模を維持できないとわかれば、実際に喪失が発生したらSSNの追加建造の余剰能力があるのか疑わしくなる。

 

そこで通常型推進方式に注目が集まる。SSKsは最初から大洋での任務を想定外にできる。通常型潜水艦を短期間で大量建造するインフラを確保する必要がある。米国内でディーゼル艦の建造は1950年代以降は皆無だ。そうなると日本からの調達という選択肢が出てくる。そうりゅう級の設計が成熟しており、建造所の技量も高い利点を享受できる。日本と並び米国でもディーゼル潜水艦を建造する選択肢もあろう。あるいはその両方になる可能性もある。

 

ということで、外交、戦略、予算、作戦、戦術の各面からディーゼル潜水艦を調達すれば、既存の原子力潜水艦部隊を支える存在になることがおわかりのはずだ。ぜひこの方向で進みたいものである。■

 

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China's Secret Fear: A U.S. Diesel-Submarine Fleet

by James Holmes

June 30, 2021  Topic: U.S. Navy  Blog Brand: The Reboot  Tags: SubmarinesMilitaryTechnologyWorldSSKSSNChinaJapan

 

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and author of “Visualize Chinese Sea Power,” in the current issue of the Naval Institute Proceedings. The views voiced here are his alone.

This piece first appeared in 2018 and is being reprinted due to reader interest.

Image: Creative Commons.