2021年8月4日水曜日

HMSクイーンエリザベス打撃群が南シナ海へ入り、中国がやたらと吠えている。対中包囲網がここまで現実になってしまい、今後の展開が面白くなってきた。

中国の歴史で習近平はむざむざチャンスをつぶした強圧的な指導者、毛沢東の再来を夢見る時代錯誤の人物と評されるかもしれません。同盟国がない中国がまさかこれだけ多くの国が自国に対抗してくるとは夢想さえしていなかったのではないでしょうか。中国が張子の虎だと露呈すれば面子を失ったCCPが何をするかわかりません。記事はオーストラリアのメディアが伝えたものです。

The HMS Queen Elizabeth has entered the South China Sea. Picture: UK MOD.

HMSクイーン・エリザベスが南シナ海入りした。 Picture: UK MOD.Source:Supplied

 

海軍の空母HMSクイーンエリザベスが南シナ海に入るや、中国は軍事演習を展開すると発表し、英空母の来訪は「植民地時代の発想」とし、中国が領有主張する島しょ環礁に侵入すれば「撃退」すると豪語している。

 

国家管理下の環球時報は論説で「中国は米国との覇権反覇権闘争を終わらせる。この地域外の各国には「事故による負傷」を避けるべく鼻を突っ込まないで、と伝えている。

 

北京の不安

 

中国が一方的に主張する領有権に真っ向から反対してきたのはこれまで米国のみだった。今度はロンドンも米国に並び一線を超えるのか世界が注目している。

 

環球時報は「中国領土の12カイリ以内に軍艦を進入させるのは中国の中核的権益に真っ向から挑戦することになり、予期外の事態になりかねない」と警告した。

 

中国は今後の展開を見通し、いつになく強硬な発言を続けている。

 

「中国のことわざに誰かを罰する際にはそいつの兄の面子を考えるべきとある。だが、中国はこの反対だ。中国はロンドンがワシントンの手下となり北京を挑発すれば罰せられると米国に告げているのだ」と中国軍事アナリストSong Zhongpinが述べている。

 

無害航行

 

北京は警告を続ける。「米国の同盟各国には特に慎重に中国のレッドラインに近づかないよう、事態を先に進めないよう忠告申し上げる。仮に各国艦艇が米軍同様に南シナ海で傍若無人な振る舞いに出れば、中国の主権、領土の保全のため防衛活動の対象になるのは必至だ」

 

北京にあるシンクタンク南シナ海調査協会は7月29日にHMSクイーン・エリザベスが随行艦と中国の設けた「九段線」を通過したと発表した。

 

中国は渤海、黄海、南シナ海で軍事演習を同時展開中と記事に対応して発表している。

 

オープンソース情報では中国の空母山東が南シナ海北方で活動中だ。

 

北京は今回の動きはロンドンのスタンドプレイだと非難している。

 

「人民解放軍は英艦艇がいかなる不穏な動きを示し、南シナ海航行を今後にむけた訓練として利用すれば即座に対応する準備を整えている」と環球時報は警告している。

 

南シナ海では軍事演習が同時並行で海南島、広東省付近で展開しており、空母山東もそこに姿を現している。

 

「中国領土の島しょ環礁へ侵入した米艦艇と同じ動きを英艦艇が示せば、PLAが同様に退去させる」

 

訓練機会

 

中国は南シナ海ほぼ全域を自国領土と主張しており、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシアの各国の主張と重なる。2016年に国際仲裁裁判所が「九段線」による領土主張に根拠はないと否定したが、北京は裁定結果を一蹴した。

 

その後、海軍、沿岸警備隊、漁船民兵により域内で強硬な主張を押し通し、人工島の武装を進めた。

 

一方で同国は西側諸国こそ域内平和を乱す主要な脅威だと主張している。

 

HMSクイーン・エリザベスを中心とする多国籍部隊には英海軍の護衛艦艇、支援艦に加え米海軍誘導ミサイル駆逐艦USSサリバンズ、オランダ王立海軍のフリゲート艦HNLMSエヴァーツェンが加わり、東南アジア巡航中にその他国の艦艇も順次加わる。

 

「空母と随行艦は南シナ海で演習を実施する、あるいは航行の自由作戦を中国が占拠する島しょ環礁部分で行うだろう。今回加わっているHMSディフェンダーが黒海で同じ趣旨の作戦を先月展開している」と中国メディアが報じている。「PLAは各艦の動きを注視し、不穏当な動きがあれば即座に対応する準備を取っており、今回の事態は英国の新鋭空母をまじかから観察しつつ演習の機会ととらえている」

 

いざというときの友邦国

 

「中国側は南シナ海を大国間の競合の舞台にしてはならないとかねてから主張している」と中国国防省報道官が香港のチャイナモーニングポストに語っているが、自国が構築した人工島の武装ぶりやベトナム、フィリピン、マレーシア各国の漁船へのいやがらせ、資源探査には触れていない。「南シナ海の軍事化は域外国が自国から遠隔地まで軍艦を派遣し武力誇示することがきっかけとなる」と述べている。

 

だが英国、米国、オランダは一様に空母任務部隊は国際海洋条約の定めた権利の行使との主張だ。

 

中国は英国が「いまだに植民地時代のまま」と述べている。「英国は海軍力で昔の夢再びと思っているのだろうが、同国の現状の実力ではグローバル規模の野心は支えられない」と環球時報は指摘している。

An F-35B Lightning Jet on the flight deck of HMS Queen Elizabeth during the replenishment. Picture: UK MOD.

HMSクイーンエリザベス艦上のF-35Bライトニング。Picture: UK MOD.Source:Supplied

 

こうした主張は時の経過の前に効力を失うと地政戦略評議会のビル・ヘイトン博士が解説している。「怠惰かつ不正確な論調だ」

 

旧植民地のマレーシア、シンガポールはすでに六十年前に独立していると指摘。ブルネイは1984年に独立した。「こうした各国さらに多くの国が英海軍の寄港を歓迎している。これは各国も域内の安全保障状況に懸念を深めているためだ。

 

「不確実な環境の中で各国は懸念を共有してくれる相手を求めるものであり、英国がその対象で、相互に支援しあう」

 

有事になれば

 

実際に山東とHMSクイーン・エリザベスが対峙する可能性は薄いと見るアナリストが多い。

 

中国と外国艦艇が対決した場面は2018年に発生した一例のみだ。中国駆逐艦旅游が米駆逐艦USSディケーターに無理やり航路を変更させた。

 

米国防長官ロイド・オースティンはHMSクイーンエリザベスが近づく中でシンガポールを訪問中だった。同長官は英大使とともに中国の強硬主張へ反論した。「中国が南シナ海の大部分を自国領と主張しているが国際法上では根拠がない」「こうした主張は域内各国の主権を踏みにじる。われら両国は域内で沿岸部を有する各国への支援を継続し国際法下で各国の権利を、守っていく」

 

北京には正式な同盟国は皆無だ。

 

そこでインド、日本、オーストラリア、米国は四か国条約を防衛協定に変更させようとしている。英主導の任務部隊が加われば冷戦時代を思わせる友好関係が域内で強まるだろう。

 

「同海域に展開する軍艦は中国にある程度の脅威となろうが、派遣の政治的な影響のほうが大きな脅威となる。オーストラリアやカナダといったその他西側諸国もこの流れに乗り、南シナ海や東シナ海へ艦船を派遣し、対中国包囲網に加わりかねない」とSongは見ている。

 

西太平洋に海軍の「常備部隊」を創設する構想が6月に出てきた。提案では冷戦時を思わせる各国混成部隊で、北大西洋での対ソ連対応がモデルとなっている。

 

「これが実現するのか注目だが、かりに実現しても中国は脅威に屈しない」とSongが述べている。■

 

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UK's HMS Queen Elizabeth in South China Sea sparks Beijing threats

Beijing’s threatens UK after HMS Queen Elizabeth enters South China Sea

A power struggle has erupted after an aircraft carrier challenged China’s South China Sea rule. Beijing says there will be consequences.

Jamie Seidel

AUGUST 2, 20213:27PM

 

Jamie Seidel is a freelance writer | @JamieSeidel


 

2021年8月3日火曜日

ドイツもインド太平洋に海軍艦艇を派遣。フリゲート艦バイエルンは本国を出港し、長距離航行を開始した。

 ドイツが派遣するのは一隻だけで寂しい気持ちもありますが、フリゲート艦とはいえなかなかの艦容を誇る艦のようです。各国と協調するといいつつ、中国とは微妙な一線を守ろうというドイツの姿勢が各国にどう受け止められるのでしょうか。

The German navy's Brandenburg-class frigate Bayern set sail for the Indo-Pacific on Aug. 2, 2021. (German navy photo)


 

イツ海軍はインド太平洋海域にフリゲート艦一隻を派遣し、開かれた海上交通路と国際法の順守へ向けたシグナルを送る。(ドイツ海軍報道発表より)

 

南シナ海へ派遣されるのはバイエルンで、ドイツ政府は昨年公表したインド太平洋ガイドラインを遵守する。同地区の戦略的重要性が増えていることを考慮している。

 

「より強力な防衛安全保障協力を他国と実現し、オーストラリア、日本、南朝鮮、シンガポールの各国との協力関係を強化していく。「世界の貿易量の9割超が海上輸送されており、特にインド太平洋を経由している」と同ガイドラインは特記している。こうした海上交通路や付随するサプライチェーン各種を安全に守り維持する必要がある。

 

「わが国の繁栄は世界各地の活動で実現している。アジアでの結果が直接影響してくる。わが国旗を掲げた艦艇を同海域に派遣することを嬉しく思う」とドイツ国防相アネグレ・クランプ-カレンバウアーが述べている。

今回派遣が決まったフリゲート艦バイエルンは21世紀の地政学的中心地への関与をこれまで以上に深めるドイツの意図を伝える手段になる。各国との協調を通じドイツ連邦共和国はルールに基づく国際秩序を守る動きに加わる意思を示す。

 

「世界の海洋は全世界のものだ」とドイツ海軍作戦部長カイ-アキム・シェーンバッハ大将は述べ、インド太平洋内の領土をめぐる対立に触れ、ドイツは大切な提携国の側に立つとした。ドイツは世界規模の経済繁栄とともに国際社会での権利を守る側に立ち、決して後ずさりしないとした。

 

同時にドイツは南シナ海での対決は選ばないとした。「通常の通商航路をいかなる国でも利用可能とする」と同大将は述べた。

 

フリゲート艦バイエルンが乗組員230名とともに2022年2月までの期限で派遣される。同艦は8月2日に母港ヴィルヘルムスハーフェンを出港する。同艦はNATOのシーガーディアン作戦と地中海で支援するほか、アフリカの角地区ではEUによるアタランタ海賊対策をそれぞれ支援し、北朝鮮国連制裁の監視にも加わる。

 

同時に友邦国等との合同演習も展開し、戦略的パートナー国のオーストラリア、日本、南朝鮮との協力も深める。

 

ブランデンブルク級フリゲート艦とは

German Navy picture

 

ブランデンブルグ級はF123級とも呼ばれ、フリゲート艦4隻を建造済みで対戦作戦(ASW)に主眼を置きながら対水上艦戦、対空戦闘(ASW)もこなす。艦名はブランデンブルグ(F215)、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン(F216)、バイエルン(F217)、メクレンブルク=フォアポンメルン(F218)があり、1994年から1996年にかけ就役している。

 

技術諸元Technical specifications

全長: 139 m (over all)

全幅: 16.7 m

喫水: 6.3 m

排水量: 4,900 t

速力: 29 knots

推進方式: Type CODOG

Sensors: 1 × 多機能レーダーSMART-S; 1 × 対空監視レーダーLW 08, 有効距離 260 km; 2 × 火器管制レーダー STIR 180; 1 × DSQS-23BZ 艦首ソナー; 1 × 映像赤外線追尾用v MSP 600; 1 x EK system FL 1800 S (電子偵察/電子戦用)

2 ×航法レーダー

兵装: 76mm主砲x1、27mmMLG海軍軽量機関銃x2,

12.7mm銃x4、RGM-84ハープーン発射機x2、垂直発射装備VLS Mk41対空ミサイルNSSM、ESSM兼用発射機x1、RIM-116RAM発射機x2、軽量魚雷Mk46用発射管x2、囮発射機x4

 

乗組員214名

 

German Navy To Deploy A Frigate In Indo-Pacific Region For The First Time Since 2016

Martin Manaranche  30 Jul 2021


アジア太平洋の重要位置にあるインドネシアへ米中の関心が強まる。非同盟主義の同国も中国を意識し軍備増強、西側との協力強化に向かうが、中国との関係も維持する姿勢ですっきりしない。

 

Business Insider記事からのご紹介です。

  • インド太平洋地区での影響力をめぐり米中両国が綱引きしている

  • 注目を集めるインドネシアは一方の陣営に組みすることに抵抗を示してきた

  • だが中国への懸念が高まる中でインドネシアは軍備増強に乗り出した


ンド太平洋で緊張が高まりを続けており、中国の経済成長と軍事力近代化に域内のみならず世界各国が懸念を強めている。


米中両国が域内で影響力を強めようと競合する中、両国から注目を集める国がある。歴史を通じ外交関係で一定の距離を保ってきたインドネシアだ。


人口270百万人のインドネシアは世界第四位、アジアでも三番目の大国だ。17千を超える島しょ国家で太平洋とインド洋を結ぶ位置にあり、重要なマラッカ海峡を抑える位置にある。


「これからの地政学でインドネシアの戦略的位置は重要性を強めていく」というのが戦略国際研究センターのアジア日本部門上級研究員マイケル・グリーンの見解だ。


中国、域内、さらに世界にとってインドネシアの重要性はどれだけ強調しても足りない。同国は大部分の問題で中立を維持しつつ、大幅な軍事力強化を目指している。


非同盟主義の伝統


インドネシアは超大国の一方の陣営にくみすることを避けてきた。オランダ植民地だったが1949年にスカルノ大統領の下で独立を勝ち取って以来、反帝国主義を貫いてきた。


インドネシアは非同盟運動を冷戦時に提唱し、1955年に第一回世界会議を主催した。1960年代に入り中国や共産主義ブロックへの傾斜を強めた。


これに対し米国西欧の支援を受けた軍部が1965年にインドネシア共産党員を粛正し、左翼陣営や少数派を活動停止させた。


この中で50万人から3百万人が1965年から1966年にかけ殺害されたといわれ、共産主義は今日も禁止されたままだ。ただし、インドネシアは西側に完全に組したわけではない。


グリーンは「インドネシアの対米関係の歴史は複雑で振り子のように行き来している」と表現。


インドネシアの西側との関係は20世紀後半に気まずくなった。オーストラリアがインドネシアの人権実績を非難し、米豪両国が東チモール独立運動を支援したためだ。


2000年代に入ると米軍の中東介入をインドネシアは否定的にとらえた。同国は世界最大のイスラム教徒を抱える国家である。


その後の関係修復の背景に安全保障面の協力の強化、特に対テロ作戦とのからみで続いたこと、2004年の地震と津波で130千人が犠牲となり米国が救援したことがある。


軍事力整備


インドネシア軍は大規模かつ比較的強力なことで知られる。


国内でイスラム教徒のテロリスト集団の抑え込みに成功しているのは西側にとって安堵すべき実績だが、より通常の形の敵への対応力整備を続けている。


今年初めに出てきた草案では2040年代中ごろまでに1千億ドルを防衛装備品に支出するとあり、インドネシアが中国の台頭を懸念している証拠だ。


中国とインドネシアには公式には領土問題はないとされるが、中国が周辺水域で活動を強めていることへ懸念が高まっており、特に南シナ海南部のナトゥナ海Natuna Seaが焦点だ。


インドネシアはFREMM型フリゲート艦6隻を発注しており、米海軍が導入を目指すコンステレーション級に近い。さらにイタリアのマエストラーレ級フリゲート艦二隻も調達する。


また新型双胴船形式の警備艇の評価も実施中で、戦車の砲塔を搭載しており「タンクボート」の名称をつけている。


潜水艦一隻の喪失事故が最近あったが、海軍は潜水艦を現行12隻から36隻に増やそうとしており、南朝鮮、フランス、ロシア、トルコの各国企業が提案を出しており、日本もここに加わりそうだ。


空軍力整備でも大きな計画がある。まずF-15EXの8機調達があり、ラファール36機をフランスからさらに、ユーロファイター15機の調達をもくろむ。南朝鮮とはKF-21戦闘機開発を共同で行い、48機調達の構想がある。


陸軍の装甲車両では新型中型戦車をトルコ支援の下で進めており、103両残るレパード2戦車と交代させる。チェコのパンダーII装甲兵員輸送車や国産のコモド装甲車両の代替車両にもなる。


最悪の事態に備える


装備品調達に加えインドネシアは各国協力も強化しようとしている。


3月には日本と協定を結び、日本製防衛装備品や技術のインドネシア移転が可能となり、日本との共同訓練実施にも道が開いた。


6月には米国との共同発表でインドネシア沿岸警備隊がバタム島に訓練施設を新設することになった。同島はマラッカ海峡、シンガポール海峡にともに近い位置にある。


一方で中国との緊密な関係も維持している。


中国海軍はジャワ海で沈没したインドネシア潜水艦の回収をする。一部には中国海軍には軍事面でねらいもあるといわれる。中国は同時にCOVID-19ワクチン数千万トンをインドネシアに送っている。インドネシアで感染と死亡例が増えている。


域内各国は中国が影響力を強め西側に対抗する動きを多様な視点でみつめている。ラオスやカンボジアは中国に傾いているが、インドなど中国との対立姿勢を強めている。


その中でインドネシアは最悪の事態に備え国内状況を注視している。


グリーンは「現時点のインドネシアはいささか身体麻痺の巨人といったところだ」とし、「どちらの陣営に組することなく、現政権は国内重視の姿勢のままだ」とする。


とはいえ、中国が南シナ海で強硬な行動を示す中で、インドネシアはこれまで以上に中国の脅威を意識しており、米国はじめ同盟側が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」の価値を実感している。グリーンは米中競合関係が今後強まる中でインドネシアの重要性が強まると見ている。


「インドネシアの地政学上の意味に見合った関心を集めていない。最重要地域で弱点となりかねない」(グリーン)■


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The US and China Both Competing for Influence With Indonesia

The US and China both have their eyes on a country at the heart of the Indo-Pacific

Benjamin Brimelow Jul 30, 2021, 9:21 PM


2021年8月2日月曜日

主張 第六世代機が登場している中でF-35を廃止すれば悲劇的な過ちになる

 

 

 

 

防問題に関心を持つ向きならF-22ラプター事業が大幅予算削減された様相外の進展を忘却している方はいないはずだ。対テロ戦たけなわの中、米軍はこれに踏み切ったが、米空軍に対抗する大国が着々と戦力を整備する中でこの選択は過誤であったと受け止められている。F-22は生産を187機に削減されたが、ステルス機への期待は前線指揮官の間に膨らむ一方だ。F-22削減の決断はここ二十年で米軍の戦略上の誤りで最大といわれる。F-35共用打撃戦闘機で同じ決定を口にする識者ならびに事情を知らされていない政治家が存在するのは事実だ。

 

過ちを繰り返せば代償は大きい

 

F-35でも同じ誤りを繰り返すのだろうか。F-35事業には不当かつ根拠のない批判に加え経費や機体維持に関し虚偽の懸念が投げかけられているのか。F-35の大幅削減を何とかして回避しようとする議会有力議員連に以前のF-22事例から大きな懸念が生まれている。

 

「F-35にも2004年当時のF-22と同じことがふりかかろうとしていると危惧する」と上院軍事員会の有力議員ジェイムズ・インホフェ議員(共、オクラホマ)が空軍上層部を招いた予算公聴会で発言していた。

 

F-35事業が大幅削減されれば何が起こるのか。F-35の稼働機数が減れば、さらに少ないF-22とともに深刻な戦略面の問題が生まれ、空軍は代りに第四世代機を大量投入し、ロシアや中国の航空戦力に対抗せざるを得なくなる。この両国は強力な防空体制を整備しており、自らの第五世代機があるのでF-15やF-16が大量撃墜されるのは避けられなくなる。また米軍が旧式機を長年稼働せざるを得なくなり、維持修理に多額経費が必要となる。

 

またF-35にはネットワーク機能があり、採用各国のF-35とネットワークを形成し、ミッションを実行できるが、この期待が大幅に後退する。おそらく姿を消す。つまるところ、編隊を組み、多数機を相互に統制しつつネットワーク機能を駆使する能力があるため、米国の同盟各国もF-35に資金を投入しているのだ。この機能を葬り去れば全体費用は減るどころか、上昇するのは必至だ。

 

F-35削減は誤った考え方

 

F-35事業の大幅削減に踏み切る懸念では一部に空軍が第六世代機の開発を急速に進めていることからF-35事業の縮小を想定する向きがある。ただし、この考え方は間違っている。現状ではF-35と次期戦闘機を併用することになっているからだ。空軍は両機種は相互補完性があると認識している。それぞれミッションが異なり、性能もことなる機種として運用されるはずだ。

 

第六世代機の構成、性能やミッション内容はほとんど不明だが、同機はF-22の後継機の位置づけとなり、F-35にとって代わるものではないと考えてよい証拠がそろっている。

 

F-22廃止が2030年から始まる予定が示されており、機種交代は明らかだ。数年前までF-22には数次にわたる性能改修が想定されていた。

 

第六世代機が飛行を開始しているがF-3削減の意見が生まれていないことが関心を呼ぶ。むしろ事態は反対で、両機種を併用し相互支援させる構想が出てきた。第六世代機が実現してもF-35のニーズは消えないということだ。

 

F-35が消え去ることはない

 

F-35を廃止した場合に米軍には相当数の別機材が必要となり、ロシアや中国の脅威を念頭に第六世代機が開発されているが、多国籍連合軍が大幅な予算を投入しているF-35には今後も輝かしい将来が控えている。F-22削減で生まれた悪影響を反面教師とし、F-35で繰り返せばロシアや中国が必死になって模倣しようとしている機体を米軍が投入できなくなる事態が生まれるだけと理解すべきだろう。■

 

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History Proves Gutting the F-35 Fighter Would Be a Tragic Mistake

by Kris Osborn

 

August 1, 2021  Topic: F-35 Stealth Fighter  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35 Stealth FighterF-35Stealth FightersU.S. MilitaryF-35 Costs

 

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master’s Degree in Comparative Literature from Columbia University.

Image: Flickr.


2021年8月1日日曜日

民間船舶襲撃の応酬を繰り返すイスラエル、イランは秘密戦争状態。死亡者が初めて発生した今回襲撃受けたタンカーは日本企業の所有。中東情勢に日本も関心を。

 

  •  

JOHAN VICTOR VIA AP

The M/T Mercer Street off Cape Town, South Africa, in 2016.

 

 

スラエル運行の石油タンカーがオマーン湾内で無人機から攻撃を受け乗組員2名が死亡した。M/TマーサーストリートMercer Street 船上で何があったのか不明だが、英国、ルーマニア国籍の二名が死亡したことでこれまでの商船攻撃がエスカレーションしているのを明白に示す事例になった。襲撃はイランあるいはイランの域内代理勢力によるものとの疑いがあり、イスラエルとイラン間の秘密戦の一環のようだ。

 

オンライン海上交通データを見ると、M/Tマーサーストリートはタンザニアのダルエスサラームを7月21日出港し、アラブ首長国連邦フジャイラに向け航行中の7月29日、オマーンのドゥクムから152カイリ地点で世界標準時午後6時ごろ攻撃を受けた。

 

 

排水量28,400トンの同船はリベリア船籍で日本企業が所有する石油タンカーで、実際の運用はゾディアックマリタイムZodiac Maritime(ロンドン本社)が行い、同社はイスラエル国籍の不動産海運富豪エイヤル・オフェールがオーナーだ。ジェルサレムポスト紙によれば襲撃時の同船は原油は搭載せずその他貨物を運んでいた。

 

ゾディアックマリタイムは当初「海賊の襲撃」と発表していたが、その後撤回している。英国海上貿易運用機関(UKMTO)は同地域で海上保安体制を監視しており、海賊による襲撃ではないと明確に述べていた。

 

事件の詳細は未確認のままだが、AP通信によれば匿名で米政府関係者が襲撃に無人機複数がかかわり、うち一機は「使い切り」無人機と述べている。同関係者は襲撃実行犯は現時点では不明とした。

 

これと別に海洋情報提供企業Dryad Globalから所属不明の飛行体が同タンカー周囲で火炎放射しUKMTOが告知を出したと述べている。その後同船で爆発が発生したとDryad Globalは伝えているが詳細に触れていない。

 

死亡した二名のうち、英国籍の犠牲者はAmbrey Ltd.社の保安要員で、同社は「完全な情報を基とする海上保安サービス」の提供企業としている。ルーマニア国籍の犠牲者は同船の船員だった。

 

UKMTOは調査が進行中だが域内の捜索救難機関ならびに連合国部隊が救援に向かっていると発表した。他方、ゾディアックマリタイム社は同船が「乗員が無事操船し14ノット未満で米海軍の護衛下で安全地帯に航行中」と発表した。

 

ゾディアックマリタイムではマーサーストリート以外に今月に入り船舶への襲撃が発生している。CSAVティンドール船上で火災事故がインド洋北方で7月3日に発生し、イスラエルあるいはイランが「正体不明の武器」で襲撃したと非難していた。4月にはイスラエル船籍貨物船ハイペリオンレイがやはり無人機によると思われる襲撃を受けている。その一カ月前には別のイスラエル船籍コンテナー船ローリがオマーン湾でミサイル攻撃を受けた。いずれもイランあるいは代理勢力が実行犯だとされた。

 

2月にはイスラエルがハイペリオンレイの姉妹船ヘリオスレイへの襲撃でイランを非難した。同船も同じ海域を航行中であったが、イランは逆にイスラエルが国旗を虚偽に掲げていたと非難した。

 

イランは2019年に外国籍タンカー複数への襲撃事件の首謀者とされ、潜水戦闘員あるいは小舟艇による襲撃だとされた。今回の報道で無人機が投入されたとあるが、マーサーストリート以外にも使用されたかは確認が取れていない。イランはこうした攻撃が可能な無人機数型式を保有しており、中東の代理勢力に技術を移転している。また、小舟艇から無人機を運用する技術を公開したこともある。

 

イランの三角翼無人機シャヘド-136が2019年にサウジアラビア石油施設襲撃に使われており、今回のマーサーストリート襲撃にも投入された可能性がある。ただし、これも未確認情報だ。いずれにせよ、マーサーストリート襲撃事件はイランの実行といわれ、イスラエル関連の海上輸送への襲撃がオマーン湾周辺で増えているここ数カ月の動きに呼応している。イスラエル船舶以外に、イラン船舶も攻撃を受けており、海上が舞台の報復合戦が進行中だとわかる。

 

目立つ事例としてはイランのM/Vサヴィズが4月に紅海で標的にされた。同船はイラン革命防衛隊がイエメンのフーシ反乱勢力支援のため使っていたといわれる。

 

こうした事例でイラン-イスラエル両国の緊張が高まっており、そこにイラン核開発合意問題が絡む。バイデン政権はトランプ大統領の同合意脱退を覆し、復帰をめざしているが、イスラエルは一貫して合意に反対姿勢でイラク、シリアで核施設の疑いのある地点へ先制攻撃を実行している。イランは4月のナタンツ核施設攻撃でもイスラエルを非難した。この際の攻撃の詳細も不明だが、一部報道ではサイバー攻撃、別報道では爆発物による襲撃だったとある。

 

こうしたオマーン湾周辺でのイスラエル、イラン所属船舶への襲撃事件多数の正確な詳細は不明な点が多く、両国対立を悪化させかねない。ただし、今回のマーサーストリート襲撃事件で死亡者が発生したことでエスカレーションが明白かつ深刻になことが明らかになり、双方がさらに強硬に反応してもおかしくない。今のところイスラエル、イラン双方から正式発言は出ていないが、今回の事案については今後の進展に応じ追加でお知らせしていきたい。■

 

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Fatal Attack On Tanker Off Oman Blamed On Suicide Drone: Report

BY THOMAS NEWDICK JULY 30, 2021

令和3年版防衛白書で自由で開かれたインド太平洋構想を打ち上げた安部前首相の功績が改めて注目される。台湾めぐり、西側の空気に変化。一つの中国原則に固執する中国へ日米は真剣対応する必要なし。

AP


 


 

本は安部前首相が提唱した積極的貢献策を継続し、域内平和と安定に役立てるとする菅首相の姿勢を最新の防衛白書で確認した。

 

「力が正義となる」動きを食い止めようと白書は広範な外交努力でルールに基づく秩序を守る日本の姿勢を強調している。2016年版白書で登場した「自由で開かれたインド太平洋」の実現をめざす三本柱に法の支配、経済面の繁栄、平和安定を掲げている。

 

最新版白書はワシントン、キャンベラが好意的に受け止めているが、北京は予想通り非難してきた。特に台湾に関するくだりで「台湾が日本の安全保障とともに国際社会の安定に重要」と明確に表現したことで反発を招いている。習近平は「国家再統一」を繰り返しており、米インド太平洋軍は今後六年以内に武力衝突が発生すると警告し日本にも警戒心が生まれていた。

 

台湾海峡から域内全体にかけての軍事力バランスが中国に優位に推移していることから白書では日本は「これまで以上の危機感を持って状況を注視すべきだ」としている。日本は台湾と友好関係を維持しているが、同国への大っぴらな支援は避けてきた。2021年版白書ではこの方針で変化が進みつつあるとしている。台湾支持派で知られる麻生太郎副総理が中国が台湾侵攻に踏み切れば「日米で台湾防衛に協力すべき」と発言したことが大きい。同発言は撤回されたものの、日米両国は「一つの中国」原則を形式的に口にしているに過ぎない。一方で東京の空気はワシントン同様にこれまで以上の台湾支持に傾いており、麻生以外に岸信夫防衛相含む政策決定層が台湾への共感を強めている。

 

白書では中国が日本へ向けた強い主張を向ける背景に軍事力増強を取り上げている。日本は尖閣諸島をめぐり東シナ海でまさにこの実例に直面している。白書は「中国は力により既成事実を一方的に変更しようとしており、尖閣諸島周辺海域が重大な懸念事項となっている」とした。典型的なグレイゾーン戦術として中国沿岸警備隊艦艇が日本領海侵入を繰り返している。白書は中国の海上警備法改正特に武器使用の許可へ懸念を表明している。

 

白書では安全保障上のその他懸念事項も列挙し、北朝鮮が核戦力整備を止めていないこともあるが、自然災害に関連して環境面の課題にも触れている。

 

白書は言葉を並べただけではない。日本が域内外交と安全保障でこれまで以上に前向きな役割を果たすのを支援すべく、日本の防衛技術の最新動向に触れており、特に宇宙、サイバー空間や電磁スペクトラムの新しいドメインに触れている。その背景に9年連続で増額となった防衛予算がある。

 

状況を一変する防衛技術に人工知能、極超音速兵器、量子コンピュータや5Gがあり、日本は各国と共同開発を進めている。白書では日本版トマホークと呼ばれるスタンドオフミサイルを攻撃手段として取り上げている。ただし、国内および国際法秩序の枠組みの中で先制攻撃には投入しないと明記している。

 

また白書は域内安全保障は「一国のみで対処できない」と認識している。防衛力と合わせ外交力を適正に活用することが域内各国を支援する日本の動きにカギとなる。米国との長年に及ぶ同盟関係では着々と強化が進んでおり、軍事力に加え外部への影響力、さらに米国も自由で開かれたインド太平洋原則を採択して日本を外交面で支援している。

 

オーストラリアも同原則を事実上支援する側で、同国政府は日本と「特別な戦略的パートナーシップ」の強化を進めている。在オーストラリア日本大使山上信吾は東シナ海問題でのオーストラリア支援を求めた。インドも日本が域内秩序の維持で頼りにする国で、四か国による安全保障対話を通じ提携関係の構築をめざす。

 

最新版白書への批判がさっそく北京から出ており、外交チャンネル、報道機関を利用し台湾に関する記述を問題視している。批判はさらに白書のデザインにも及び、表紙を騎乗侍にしたのは「好戦的」で軍国主義復活を匂わせるとまで主張。

 

とはいえ、域内での戦略競合状況が進み、日本は安全保障環境の悪化が進むと認識しており、白書は積極外交、国内防衛力整備、同盟国友邦国との協力強化を通じ国益を堅持しつつ法に基づく秩序を域内で実現していくとする菅政権の決意を明確に示している。■

 

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Japan Signals More Robust Security Posture in New Defence White Paper

By Thomas Wilkins & Daisuke Akimoto

July 30, 2021