2021年8月6日金曜日

「核を嗅ぎ分ける」特殊改装コンスタントフィーニクスが8月5日にバルト海上空で特異なフライトを展開した背景に核事故があったのか?

 An Air Force WC-135 Constant Phoenix aircraft.

USAF

空軍に1機しかないWC-135Wコンスタントフィーニクス「核嗅覚機」が本日8月5日バルト海上空を異例の形で飛行した。同機は通常は飛行中に集めた大気標本から放射線レベルの急上昇を探知するのが役目だが、核実験後や原子力事故後の情報収集や、放射能物質の拡散を追跡することもある。

このWC-135Wは機体番号61-2667でコールサインをジェイク21とし、RAFミルデンホール基地から離陸したのがフライト追跡サイトADS-B Exchangeで判明している。

ADS-B EXCHANGE

WC-135W コンスタントフィーニクス機体番号61-2667の本日のフライト経路をADS-B Exchangeデータで示した。

USAF

WC-135W コンスタントフィーニクス(61-2667)

同機はオランダ、ドイツ、ポーランド上空を通過してから北に転じバルト海上空に到達した。その後バルト海上空を一定のパターンで飛行してから、同じ航路で帰投した。オンラインのフライトデータを見るとバルト海上空を5千から6千フィートで飛行している。だが往復移動では20千から30千フィートだった。

ADS-B Exchangeのデータでは同機は7月28日にネブラスカのオファット空軍基地を出発し、ミルデンホールに7月31日到着している。英国に移動してから本日まで一回も飛行していない。

だがバルト海上空を飛んだコンスタントフィーニクスの目的がはっきりしない。The War Zoneは第16空軍の空軍技術応用センター(AFTAC)に照会し、詳しい情報を求めた。AFTACは機密性の高い組織でWC-135W機上の各種センサーを運用している。同センターの主たるミッション1963年の部分的核兵器実験禁止条約の関係者へ地上核実験が行われていない裏付けを提供することだが、他の核関連イベントも監視している。

ソーシャルメディアがさっそくとびつき、ロシアの原子力艦艇二隻が今回のフライトに関係していると主張する向きが出たが、関連があるか疑わしい。

今回のフライトのほぼ一週間前にロシア海軍のオスカーII級原子力誘導ミサイル潜水艦オレルがバルト海から北海への移動中に機関故障を起こしていた。

ROYAL DANISH NAVY THIRD SQUADRON VIA FACEBOOK ロシア海軍のオスカーII級原子力誘導ミサイル潜水艦オレルはデンマーク沖合で機関故障に見舞われた。

ロシア海軍も以前のソ連海軍同様に事故を多発させているが、原子力潜水艦オレルの原子炉に問題が発生し放射能漏れが発生した兆候はなく、同艦は自力で航行を続けたものの、推進力喪失の理由は不明だ。また61-2667機が英国に到着したのは同艦で故障が発生した後のことで、同機はその前からミルデンホールに向けて飛行中だった。

ロシアが建造した4隻の原子力砕氷貨物船のうち唯一供用中のセブモルプチがオンライン船舶追跡サイトではフィンランド湾内を航行していたのが判明している。2020年11月ロシア国営原子力企業ロサトムの北海航路局長ヴャチェスラフ・ルクシャは同船のプロペラ四基のひとつが破損したためサンクトペテルブルグの乾ドックに向かうと発表していた。破損の原因は不明だが、同船は今年に入りアンゴラ沖合を航行中だった。

KINBURN VIA WIKIMEDIA

セブモルブチは2020年2月にバルト海を航行していた

セブモルプチの現在の状況はわからず、プロペラ修理を終え公試中の可能性がある。だが、同船の原子炉が原因でトラブルが発生したとの報道は出ていない。61-2667機のフライトはフィンランド湾は対象としておらず、同地より南方海上の飛行経路をとっていた。

バルト海上空のフライトでは天候条件により放射性粒子を捉えるため、さらに北方や東方へ飛ぶことがある。ロシアは原子力推進の核巡航ミサイル、ブレヴェスニクをさらに北東に位置する白海でテストして物議をかもしたのが2019年のことで、開発は北極海のノヴァヤゼムリヤでのテストに変更された。

同地にはロシアの海軍基地数か所があり原子力潜水艦の母港として、民生用原子力発電所、核廃棄物処理場もあり、以前も放射能レベル急上昇の観測結果が得られている。昨年夏にも同じ現象が発生し、原子力発電所あるいは廃棄物処理施設での事故が疑われた。

コンスタントフィーニクス機は世界各地に派遣され空中放射線レベルに異常がないかをAFTACの部分核実験禁止条約に基づき観測していいる。AFTACからは2017年にコンスタントフィーニクスが北極海上空に派遣されたのもこの目的のためだったと説明が出ているが、当時は放射性ヨウ素131が大気中に高レベルで検出され、ロシア北西のコラ半島が発生地とわかった。ヨウ素131は核分裂反応の副産物で、濃度急上昇は核実験あるいは何らかの核事故の発生を示唆する。

61-2667機のフライトが通常の形だったのかはともかく、「核の嗅覚探知」能力が空軍で限られていることがあらためて明らかになった。前述のとおり、WC-135は一機しかなく、もう一機のWC-135C(62-3582)は昨年退役している。

両機とも1960年代の製造機をコンスタントフィーニクス仕様に改装されたもので、現在は運用維持が著しく困難になっている。62-3582では大きな問題がたびたび発生する中で廃止された。61-2667機もオーストラリアのRAAFアンバリー基地で今年初めに機械関係の故障で二カ月にわたり飛行不能状態になっていた。

空軍はKC-135Rの三機をWC-135Rに改装し、コンスタントフィーニクスミッションの実行能力拡張を企画しているが、追加機材がいつ運用可能になるか不明だ。ポッドに収集システムを搭載して別機材での運用もめざしており、無人機で同じ機能を実現する日が来そうだ。

とはいえ、本日の61-2667のバルト海上空飛行には興味が集まり、The War Zoneは追加情報が入り次第、情報を更新する。■

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


Curious Mission Flown Over The Baltic Sea By US Air Force Nuke Sniffing Plane

The Air Force only has one Constant Phoenix jet, which is used to collect air samples that could show evidence of nuclear testing or accidents.

BY JOSEPH TREVITHICK AUGUST 5, 2021



米陸軍がめざす次世代装備5種類をご紹介。冷戦時装備がこれから姿を消し、対中・ロ戦を想定した新型戦力に変身していくのか。

 

 

 

 

米陸軍は高威力の装備品数々を運用中だが、ハイテクのロシア軍や中国軍との対決に備え、さらに戦車からミサイルまで新型装備品の実戦化に取り組んでいる。

 

その結果、エイブラムズ戦車やアパッチヘリコプターなど冷戦時の装備品が徐々に姿を消していくことになる。こうした米軍事力の象徴の代わりに新世代装備品が主流となるはずだ。

 

今回は中でも注目の装備品をご紹介する。

 

1. 次世代戦闘車両 

 

陸軍装甲部隊ではM1エイブラムズ戦車、M2ブラドレイ歩兵戦闘車両が主役の座をつとめてきた。ともに改良を繰り返し、最新のM1A2ではセンサー性能と電子装備が1980年代製より向上しているとはいえ、ともに40年前の設計思想でフルダ渓谷でソ連戦車隊を撃破するべく作られた車両だ。対戦闘員の「小規模戦」がここ20年続き、装甲の厚さは地上部隊で重要性を失ったが、ロシアや中国が相手の「大規模戦」に備える中で戦車に改めて重要性が生まれている。

 

陸軍の次世代戦闘車両事業では21世紀の装甲車両として新型主力戦車、歩兵戦闘車両、自力推進砲、ロボット戦車まで想定する。防衛産業はすでに新型車両構想の売り込みを始めており、BAEはスウェーデン製CV90歩兵車両を提案している。どの車両を採用するにせよ、ここ40年の技術面の進展を反映した内容になるはずだ。アクティブ防御で対戦車ミサイルの効果を減じる、戦術情報ネットワーク化、無人装備も新型車両の機能の一部となるはずだ。またDARPAのX車両技術開発事業ではもっと未来的な発想で、想像図(下)は砂漠走行用バギーに見えるほどだ。

 

DARPA

 

2.機動性短距離防空装備 Maneuver-Short-Range Air Defense(MSHORAD)

 

米空軍の護衛を受け、タリバンなどローテク敵勢力に立ち向かった米陸軍の戦術防空体制は冷戦時のままだった。だが、無人機が普及し、ロシア、中国の航空戦力が脅威となると地上部隊に空はもはや安全な場所でなくなる。そこで、陸軍はつなぎ解決策としてスティンガー対空ミサイルをストライカー軽装甲車両に装備した。だが、陸軍は指向性エナジー兵器(レーザー)をストライカーに導入する計画を有する。これにより標的にもっと迅速に対応でき、しかも電力供給が続く限り弾薬切れになることがなくなる。

 

3. ロボット戦車 

 

SF小説の世界だったが、米陸軍は任意有人操縦戦闘車両の実現をめざす。ロボット試験車両が完成している。遠隔操縦武装車両M113兵員輸送車で、自律運用トラックの開発も進め、無人で補給品を運ぶ機能の実現を目指す。

 

4.  将来型垂直輸送機

 

冷戦時のM1戦車が姿を消すようにアパッチ、ブラックホークのヘリコプターも交代する。将来型垂直輸送機では新型ヘリコプターのファミリーとして攻撃偵察型の実用化もめざす。

 

5. 長距離火砲

 

空軍の航空支援を当たり前にとらえ、陸軍の野砲はロシアより遅れをとってしまった。ロシアが新型りゅう弾砲を導入しているが、大口径火砲として射程20マイルのM109A6パラディン155mm自走りゅう弾砲があるが、陸軍は千マイル有効な新型砲の実用化をめざす。実際の射程は数百マイル程度だろうが、従来より大幅な長距離火力を導入すれば敵部隊の動きを制することが可能となる。■

 

World War III: The U.S. Army's Future Weapons Will Be Crazy Advanced

by Michael Peck

 

August 4, 2021  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: RussiaChinaMilitaryTechnologyU.S. ArmyArmy

 

Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.

Image: Flickr


2021年8月5日木曜日

改オハイオ級SSGNは大量のトマホーク巡航ミサイルを敵地に放り込む最強の潜水艦、だが供用期間に限りがある。後継艦は....?

 

 

 

隻供用中のオハイオ級SSGN潜水艦は世界最強の巡航ミサイル搭載艦で接近阻止領域拒否をとる敵への対抗で強力な選択肢になる。

オハイオ級弾道ミサイル型潜水艦(SSBN)は核戦争で敵都市や軍事集積地の破壊を目的に建造されたが、より正確に言えば敵が開戦に踏み切るのを抑止するためだった。ただし、冷戦が終結すると米海軍は核抑止ミッションで同級18隻は必要ないと判断した。

 

海軍は最初に建造した4隻を廃艦予定だったが、かわりにトマホーク対地攻撃巡航ミサイル(TLAM)搭載艦に転用する大幅改修を各艦700-900百万ドルで行った。対象艦はオハイオ級誘導ミサイル潜水艦(SSGN)に変更され、通常弾頭による対地攻撃を任務とした。まず、オハイオ、フロリダが核燃料交換、大修理を受け同時に兵装転換作業を2003年に開始し、2006年に現役復帰した。続けてミシガン、ジョージアが2008年に改修を完了した。

 

オハイオ級SSGNはトライデント弾道ミサイルの発射管(直径88インチ)24本を活用し最大規模の通常攻撃能力を有する艦となった。発射管22本がトマホーク発射用のキャニスター運用に改装され、各7発を運用するのでトマホークは合計154発となった。

 

単価150万ドルのトマホークは千ポンド弾頭を最大1千マイル先の標的に向けGPS誘導で発射する。となると改オハイオ級は最大2億ドル相当の兵装を搭載することになる。

 

オハイオ級SSGNは多任務艦でもある。発射管で残る2本は特殊水中ロックに改装されネイヴィーSEAL60名を特殊作戦で発進させる。また、水中無人機(UUV)、SEAL搬送機(SDV)、小型潜水艇、ソナーブイ他の水中センサーを運用できる。

 

トライデント運用艦のように姿をひそめる必要がなく、2010年にオハイオ、フロリダ、ミシガンの各艦は中国のミサイルテストに対抗し、ディエゴガルシア、フィリピン、南朝鮮の沖合にほぼ同時に浮上し存在を誇示した。2011年のオデッセイ・ドーン作戦支援でUSSフロリダはリビア防空施設に93発のミサイルを発射したが、命中したのは3発のみだった。とはいえ反カダフィ勢力によるリビア上空の航空作戦に道を開き、オハイオ級ミサイル原潜で初の実戦となった。

 

では大型巡航ミサイル発射潜水艦の投入目的はなんだろうか。水上艦で長距離トマホーク攻撃すればいいのではないか。あるいは空母から航空機を発艦させれば、安価な精密誘導弾投下が実現する。端的に言えば、ステルスSSGNsは探知されずに敵沿岸へ接近でき、内陸部への攻撃、大規模攻撃を実施しつつ、水上艦や航空攻撃のように姿を露呈することはない。

 

新型長距離対艦ミサイルの例にロシアのカリブル巡航ミサイルがあり、陸上、空中、水上から発射が可能なため、大型艦艇の沿海域運用を困難にし、航空母艦やミサイル巡洋艦に影響が出る。空母搭載機材でも敵の対空母兵器を考慮し空母が敵国沿岸部から800マイル以内に近づけないと攻撃効果が減る。

 

これに対し原子力潜水艦の探知追尾が極めて困難なのはひとえに低ノイズのまま長時間潜航できるためだ。敵がオハイオ級SSGNを探知できるのはミサイル発射後で、その時点で潜水艦側は深く潜航し静寂を守り敵の報復を避ける。

 

ただし、オハイオSSGNの強大な火力が利用可能なのは残り10年程度に限られる。オハイオ級は全艦が新型コロンビア級弾道ミサイル潜水艦に交代する。通常型対地攻撃任務はヴァージニア級攻撃型潜水艦がヴァージニアペイロードモジュールを搭載してトマホーク50本を発射することで引き継ぐ。計算上はヴァージニア級4隻でオハイオ級一隻と同等の火力となるが、反面攻撃力を分散させることで実戦で有効性を発揮するはずだ。

 

だがそれまではオハイオ級SSGN各艦が世界最強の巡航ミサイル搭載艦の座を守り、接近阻止領域拒否体制を整備した敵へのけん制、対応で強力なツールのまま残る。■

 

Ohio-Class Submarines: How Joe Biden Could Order A Nuclear War

by Sebastien Roblin

July 30, 2021  Topic: military  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: MilitaryTechnologySubmarinesSubNavyU.S. NavyCruise MissileTomahawk Missile

 

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

This article was first published in January and in 2020. 

Image: U.S. sailors aboard the guided-missile submarine USS Georgia. Wikimedia Commons/U.S. Navy


原潜シーウルフは米海軍で最も機密性の高い任務についている。注目ワードは北極海だ。

 

 

 

 

2013年8月原子力攻撃型潜水艦USSシーウルフがワシントン州ブレマートンを出港し、1997年の就役から5回目あるいは6回目の任務についた。

 

一か月後にヨーロッパを担当する第六艦隊が公開した画像に米国ノルウェー大使がシーウルフがシーウルフをハーコンスヴェルン海軍基地で視察する様子があった。ワシントン州から数千マイル離れている。

 

シーウルフはノルウェーまでどう移動したのか。その際に取った移動経路から海軍の中でも機密性を重んじる潜水艦部隊の運用の一部がうかがい知れる。シーウルフは北極海経由でノルウェーに移動したのだ。

 

沈黙の部隊

 

米海軍は潜水艦の話題を好まない。潜水艦の最大の利点はステルスだ。海軍には70隻近くの潜水艦があるが、シーウルフと姉妹艦コネティカット及びジミー・カーターは最も機密性が高い。

 

隻数が最大のロサンジェルス級ならグーグル検索で海軍の発表文書や公開画像が見られる。だがシーウルフ級は皆無に近い。

 

同艦の公式ウェブサイトはアクセス不能となっている。シーウルフの外観写真が出たのは2009年が最後だ。

 

シーウルフ級が特別な艦であることが理由だ。新型、大型で高速かつ重武装で建造単価30億ドルのシーウルフ級は数億ドル相当の特殊装備を搭載し、ワシントン州に独立戦隊を編成している。

 

いったん任務に出ると数ヶ月にわたりまったく公表されず活動する。シーウルフ乗組員の妻も「予測不可能」と表現するほどだ。

 

受勲が連続していることから秘密任務が着実に成功していることが間接的にわかる。2007年にシーウルフ乗組員140名が戦時なら銅星章に相当する部隊勲功章を受け、2009年には銀星章相当の海軍部隊勲功章が授与された。

 

海軍での潜水艦部隊の仕事は情報収集、巡航ミサイルをテロリストやならず者国家に打ち込むこと、特殊部隊員を偵察強襲任務に送り込むことにある。だがシーウルフの任務は不明のままだ。

 

またシーウルフがどの海域に展開しているかも不明だ。太平洋艦隊に配属されるが、すぐ変更されてもおかしくない。

 

謎を解くピースを集める

 

判明している事実がある。2011年3月に姉妹艦コネティカットが北極海でテストに投入されたとの珍しい報道が出た。

 

コネティカットは新造ヴァージニア級ニューハンプシャーとアラスカのプルドーベイに向かい「ICEX」演習に加わった。1958年にUSSノーチラスが初めて北極点に到達して以後海軍が不定期に実施している演習だ。

 

海軍はコネティカットが「米海軍北極海潜水艦研究所、ワシントン大学応用物理教室とともに新装備を試行し北極海での水中運用訓練を行った」と発表した。

 

新装備品には「安全な航行用の高周波ソナーやレイセオン製のディープサイレン音響通信機」があると海軍は述べていた。

 

シーウルフは2009年9月から3年近く乾ドック入りしていた。受注企業は280百万ドルで作業した。シーウルフが太平洋に復帰したのは2012年4月で「これまでより性能が向上した」と当時の艦長ダン・パッカー中佐が述べている。

 

コネティカットでテストしたのと同様の装備をシーウルフが搭載している可能性がある。北極海は海軍にとって新しい重大な海域だ。氷が減少する中で新しい航行路が開かれ、他国海軍の動きが活発になってきた。

 

シーウルフの謎への反応

 

いずれにせよ、シーウルフが世界の頂上部分を経由し移動したのは明らかだ。ワシントン州を出港しノルウェーに数週間で到達するにはこれ以外の航路はない。

 

ではシーウルフは北極海でなにをしていたのか。訓練の可能性はある。氷の下での戦闘技法を磨いたのか。潜水艦乗組員にとって北極海行きは「戦闘システムを試し航法機能や通信機能の効果を見て厳しい環境での作戦実施となる」と当時の海軍作戦部長ゲーリー・ラフヘッド大将が述べていた。

 

伝統に則り静かに動くことにはそれなりの理由がある。2009年のICEXに対しロシアがどう反応したかを見てほしい。「外国潜水艦がロシアの海洋国境線近くで行動すれば当然の結果としてわが国が関心を示すことになる」とクレムリンは警告していた。

 

ロシア側も米潜水艦が何をしているのかを知りたがっているのだ。■

 

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Why Is the U.S. Navy So Secretive about Its Seawolf Submarine?

by David Axe 

August 4, 2021  Topic: Submarines  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: RussiaSubmarineMilitaryTechnologySeawolfNavy

 

David Axe served as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

This article first appeared on WarIsBoring in 2013.

Image: U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Kevin S. O'Brien


2021年8月4日水曜日

ベルが発表した高速VTOL機構想はローター折りたたみ機構のハイブリッド推進方式で大幅な高速飛行性能を実現し、米特殊部隊向け採用を狙う。

  • BELL_HSVTOL_CONCEPTS

 

BELL TEXTRON

 

ルが高速垂直離着陸機HSVTOLの構想を発表し、米特殊作戦部隊が関心を示している。同社のHSVTOL構想は「ヘリコプターのホバリング機能に戦闘機の速力、航続距離、生存性を組み合わせるのが狙い」と同社は発表。空軍で供用中のCV-22Bオスプレイ等ティルトローター各型の後継機になる可能性がある。

 

発表されたHSVTOL構想には三型式あり、一つは無人機仕様だ。各型は翼端の推進用ローターで垂直離陸するが、その後ローターは格納し抗力を減らし、ターボファンで高速水平飛行を行う。ベルはこの構想を特許申請している。

 

USTPO (TRADEMARK AND PATENT OFFICE)

初期のベルHSVTOL設計研究内容の特許申請より

 

 

今後登場する「変換型エンジン」がHSVTOLの動力となり、ターボシャフトからターボファンへモード変換して離陸用、巡航用でエンジンの使い分けが不要となる。翼端ナセルに空気取り入れ口が見当たらないことからハイブリッド電気推進がローター回転に使われるのだろう。ジェットエンジンは発電用に使い、ローターを回転させる仕組みのようだ。

 

ベルの構想図のうち二型式は有人操縦のようでコックピットへのアクセスドアがついているが、三番目の機体は無人機のようだ。各型式の推進系は共通のようだ。ただし、詳細面で各型式に違いがあるようで、エンジン用インテークの配置が異なり、テイルフィンにも違いがある。機体は低探知性のようである程度のステルス性能を盛り込んでおり、格納式ローターもこの一環だろう。

 

「ベルのHSVTOL技術は回転翼機の性能を飛躍的に伸ばす」と同社のイノベーション部門副社長ジェイソン・ハーストが述べている。「当社による技術投資でリスク低減が実現しデジタルエンジニアリングの応用で短期間でHSVTOLを開発できた。背景にこれまでの技術蓄積とあわせ国防総省下の諸研究機関との密接な協力がある」

 

同機の性能は明らかにされていないが、ベルは「新推進技術」としており、変換型エンジンに言及している。さらに、同社はHSVTOL設計構想の詳細面にも触れている。そのうちホバリング機能についてCV-22Bよりダウンウォッシュが減り、ジェット機並み巡航速度400ノット、滑走路不要、ホバリング維持時間の長さ、さらに各種ミッションに応じた柔軟な運用をうたっている。

 

ベルによればHSVTOLの機体自重は4千ポンドから100千ポンドまでとあり、今回発表の3型式以外に別の機体の開発を示している。比較するとCV-22Bは60,500ポンドである。三機並んだ想像図の左の機体はオスプレイを上回る大きさで、中間にはオスプレイ並みの大きさとなっている。三番目の無人機は逆に小型となっている。機体の大きさは自由に変更できる仕様のようだ。

 

ベル発表の想像図で興味を引くのは有人操縦仕様の二型式のうち大型機に輸送機同様のテイルフラッシュがついていることだ。小型版にはノーズアートが描かれ機体下にセンサータレットがつき、全体としてCV-22Bに通じる強襲輸送機の外観を呈している。無人機型は兵装搭載が可能で大型HSVTOL機の援護任務を想定しているようだ。

 

BELL

大型版有人HSVTOL構想の想像図を拡大してみた。米空軍標識がついている。機体上部に空気取入れ口がつき、テイルフラッシュは輸送機、給油機と同様のものだ。


BELL

有人機版のうち小型のものを拡大すると、シャークマウスのノーズアートが描かれセンサータレットが機体下に見える。

 

BELL

無人機版HSVTOLの想像図の拡大。

 

報道発表でベルは高速垂直上昇機の技術の系統にも触れており、X-14、X-22、XV-3、XV-15を同社がNASA、米陸軍、米空軍向けに開発してきた実績を強調している。現在のベルはボーイングと共同でV-22オスプレイティルトローター機を製造している。

 

ベルは今年4月に総額95万ドルでHSVTOL研究契約を空軍研究本部(AFRL)から交付されている。一か月後に空軍特殊作戦軍団の固定翼機開発統括ケン・キューブラー大佐は同軍団はベル構想含む各社の技術はHSVTOL要求水準を満たす可能性があると認めた。

 

インキュベータ機能を果たす空軍のAFWERXはHSVTOLの画期的な性能実現をベル以外の企業にも期待している。

 

AFWERXが各種コンセプトを期待し速力、航続距離、生存性、ペイロード、機体サイズで将来のHSVTOL要求内容の実現を求める一方で、ベルは機体サイズを各種提供する方向のようだ。HSVTOLは将来型垂直輸送機(FVL)より野心的な要求内容でありながら、実現までの時間軸は同じようだ。

 

一方でAFWERXはHSVTOLの「重要ミッション性能」を定義しており、特殊作戦部隊の投入、撤収や人員回収、医療搬送、戦術機動性を内容としているが、応用分野はさらに広がり、現在は各種固定翼機・回転翼機が行うミッションの肩代わりも想定している。

 

空軍特殊作戦軍団もCV-22Bの後継機種の企画を始めようとしており、オスプレイの時速280ノット以上をめざす。AFSOC司令官ジェイムズ・スライフル中将は「ジェット機並みの速力」が欲しいとかねてから述べており、ベル案のHSVTOL構想が同じ方向性を示している。


 

高速VTOLは迅速展開かつ高い生存性を実現し、通常の滑走路等インフラに依存せず、ペンタゴンが目指す分散型運用を実現する手段となる。とくに将来の同等の戦力を有する相手とのアジア太平洋作戦で活躍が期待される。

 

となると、中国も同様のねらいで開発を進めていてもおかしくないわけで、タスタービンと電気推進のハイブリッド機の戦闘用回転翼機が今年初めに姿を現している。ベル構想同様に中国も折りたたみ機構を採用し前方飛行時の抗力削減をめざしている。

 

高速VTOL飛行の実現には相当の技術課題が控える。とはいえ、米国以外でもこの性能の実現を目標とし、実現に真剣さが増してきたのは明らかだ。■

 

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Bell Unveils VTOL Aircraft Concepts That All Feature Fold-Away Rotors For Jet-Speed Flight

BY THOMAS NEWDICK AUGUST 2, 2021