2022年3月3日木曜日

ウクライナ戦争3月2日の状況。ロシア軍は補給支援活動など不備を露呈。ただし、克服をめざしつつさらに攻勢を強める予測。プーチンは苦境と感じていない。

 


Russian military vehicle burns in Ukraine

ウクライナ・ハリキフで炎上するロシア軍装甲兵員輸送車は放棄されている February 27, 2022. AP Photo/Marienko Andrew


  • ロシア軍はウクライナの思わぬ抵抗に手こずっているが、プーチンは消耗しきっていないとペンタゴンは見ている

  • ロシア軍のウクライナ侵攻が失速しているのは補給問題とあわせウクライナ側の抵抗が激しいため

  • 米関係者はロシア軍が状況に適応し、ウクライナへ圧力をかけ目標を達成すると見ている



シア軍は補給問題やウクライナの抵抗に苦しんでおり、ウクライナ全土への進軍が妨げられているが、モスクワに選択肢がないわけではないと、米国防高官は記者団に3月2日に語った。


水曜日時点で、ロシアはウクライナ周辺に配備した戦力の約82%を投入したようだ。これは、火曜日時点の80%を超えているものの「追加戦闘能力の豆乳として大規模」ではなかったと、同高官は述べた。


ウクライナの空では争いが続いている。モスクワの主張と裏腹に、ロシアはウクライナ全土の制空権を「獲得」していないという。「ウクライナの防空・ミサイル防衛能力は無傷で存続している」


ロシア軍はウクライナ都市複数に進攻しているが、大多数で進展がないように見える。ロシアは南部の都市ケルソンを占領できたが、戦闘開始以来、主要都市で占領できたたのは同市だけである。


ウクライナの抵抗は「効果的でかなり独創的」であり、ロシアは部隊への燃料・食料の供給に苦労している。


ロシア側は問題を認識しており、解決しようとしている。しかし、ロシア側は引き続きこれらの物流と維持の問題に悩まされている」と言うのがこちらの評価だと当局者は述べた。


ここ数日、首都キーフに進撃するロシア軍支援のため40マイルに及ぶ輸送隊が向かっているように見えたため、国際的な関心が集まった。この輸送部隊は停滞しているようだと同高官は述べ、米国はウクライナ軍が「場所と時間によっては」輸送船団を標的にしたとの「兆候」を得たと付け加えた。


「また、キーフ北側で士気に問題があり、作戦がうまくいかなかったと考えられる」と付け加えた。同高官は以前、ウクライナの他の場所で進撃が遅れている要因として、ロシアが「自国の航空機とパイロットで高いリスクを取る」ことに消極的だと指摘していた。


アナリストや専門家は、ロシアの軍隊投入に疑問を投げかけている。モスクワは、ウクライナ軍をすぐに制圧でき、抵抗に直面しないと誤って考えている、という指摘だ。


ロシアの小部隊は重要拠点の制圧に突進したが、ウクライナの軍や民間人の守備により動きが鈍くなったり、撃退されている。


CNAのロシア専門家で元CIA軍事アナリストのジェフリー・エドモンズJeffrey EdmondsはInsiderに対し、混乱の兆しを見せている部隊があり、後続の支援なく行われた空爆作戦や待ち伏せされた輸送隊など、「作戦上の不手際」が発生していると述べた。


米国防当局者は2日、ロシア軍が歩兵、装甲、砲兵、空軍を複合的に使って抵抗を制圧していないと指摘し、専門家はロシア軍のドクトリンからの逸脱を指摘している。


「この規模、複雑な作戦なら当然と思われる程度まで、複合戦力の統合が進んでいないと見える」と、同高官は述べた。


「空では対地支援の統合的な活動はあまり見られない」と同高官は付け加え、統合的なウクライナ軍の防空・ミサイル防衛能力の掃討や、地上軍移動に先立つ航空支援の欠如を指摘した。


同高官は、ウクライナの抵抗が効果的になっているのは、複数要因によるものとした。


ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は引き続きウクライナ軍を指揮中で、軍は「装備資源を非常によく結集している」と述べ、ウクライナ人の「戦う意志は非常に強い」と付け加えた。米国はじめとする各国の安全保障支援も継続しており、ウクライナ政府関係者はその活用を示唆している。


ロシアは依然として質的にも量的にも軍事的に優位で、抵抗を克服するべく強力で無差別火力を投入する多面的攻撃を仕掛けてくると予想される。数百人の民間人がすでに犠牲になっているとの報告もあり、ウクライナからはロシア軍の各種兵器が民間人を襲う映像も出てきた。


ロシア軍は「学ぶだろう。適応し、これまでの困難や不手際を乗り越えるはずだ。我々はその動きを予断なく見るべきだ」と米国政府高官は述べた。


準備した部隊の82%を投入しても、プーチン大統領が「消耗した」ことにはならない、と同高官は付け加えた。「それどころか、彼は選択肢を増やし続けている」し、「利用可能な戦闘能力に関して言えば、まだ極限状態ではない」とした。■


Russia's military is 'bedeviled' by its own problems and Ukrainian resistance, but the Pentagon says Putin isn't 'spent'

Christopher Woody 

https://www.businessinsider.com/russia-faces-own-military-problems-ukraine-resistance-but-isnt-spent-2022-3


ロシア語が由来のキエフではなく、キーフに変更しています。


ウクライナ危機を横目に世界の安全保障環境に対応能力不足を痛感する米軍は、内部改革により軍能力を引き上げる必要を認識。ただし、時間があるのか。

 

 

シアによるウクライナ侵攻を受け、欧州に兵力を投入する中、米軍は、即時性、深刻性、危険性で程度が異なっても、同時に複数の課題に対応が求められている。

 

ウクライナやアジアの紛争により安全保障環境が悪化している今、国防総省は官僚組織を整理すべき時期に来ており、2つの事実を直視するのが出発点だ。まず、国防総省は敵のスピードに呼応した革新と投資を行っていない。第二に、国防総省と上下両院議員多数は、長期的な競争力と引き換えに短期的なリスクを受け入れることには消極的だ。

 

前国防次官(政策担当)のミシェル・フローノワMichèle Flournoy は今週、議会で「(国防総)省全体のイノベーションへの刺激で一定の進展があったものの、ペースや規模は必要なレベルに至っていない」と述べたが、控えめに言っても、これが事実だろう。

 

新興・先端軍事技術全般で米国は遅れをとっており、競争優位性を失う危険性があると国防指導者は警告してる。空軍で初のソフトウェア担当官だったニコラス・チャリアンNicolas Chaillan は国防総省が全領域統合指揮統制(JADC2)で予算措置を欠き、米軍が「関連性のあるペースでタイムリーに能力を提供できる」よう機敏に行動する能力が阻害されているとして昨秋辞任した。

 

その後のインタビューでチャリアンは、「今後15年から20年は、中国に勝てない」と結論づけた。中国との戦いはすでに終わっている。国防総省の統合人工知能センターの責任者マイケル・グローエン中将Lt. Gen. Michael Groenは、軍の人工知能ツール活用は、今の所敵対国に勝っていると主張し、反論した。しかし、同中将は、革新と企業買収のペースが憂慮すべきものと認め、「軍内部で価値観の変化を起こす必要がある」と述べた。

 

国防総省の極超音速兵器開発計画も、中国やロシアに遅れをとっている。1月、米宇宙軍のデビッド・トンプソン大将Gen. David Thompson は、国防総省は「多くの面での遅れをきわめて迅速に取り戻さなければならない」と強調している。

 

中国は核兵器近代化を進めており、元統合参謀本部副議長のジョン・ハイテン大将Gen. John Hytenは「今ある(大陸間弾道ミサイル)サイロ400基の近代化に10~15年かかる」「ただ、中国はほぼその数を一晩で建設している」と警告している。

 

各軍が同様な問題に苦しんでいる。海軍では、海軍情報部隊の責任者であるケリー・エシュバック中将Vice Adm. Kelly Aeschbachが今月初め、「適応速度が不十分で心配」と述べ、海軍組織に「本当に革新的に変わるチャンス」が与えられていないと語った。

海兵隊は中国との戦略的競争に向け再編成の取り組みが評価されているが、戦闘開発・統合担当の新任のカーステン・ヘックル中将Lt. Gen. Karsten Hecklも警鐘を鳴らしている。「もし、今の対応が十分に速いと見る人がいれば、それはおかしい」と、彼は2月の会議で述べた。

 

フランク・ケンドール空軍長官Secretary of the Air Force Frank Kendallは、「現有のレガシーシステム維持にこだわると、十分に資源を有する戦略的な競合相手には勝てない」と警告している。ケンドール長官は、議会と協力し進むべき道を見出したいと前向きだ。

 

しかし、長官が相手とする議会は、期限から半年近く経っても連邦政府の通常予算を通過させられない議会だ。

 

目まぐるしく変わる安全保障の動きと、急変する敵の増強を前に、国防総省が、緩慢に動くのでは言い訳がつかない。

 

ハイテン大将は、成功が確実でない限り、高リスクや新しい取り組みを進めない文化が国防総省にあるのを憂慮している。同大将は、制服組に権限を与えることを第一の解決策とした。「賢いリスクを冒すのを許容しなければならない」と同大将は昨年秋述べた。

 

ケンドール長官もこの考え方に賛同しており、「中国やロシアの抑止には、必要なリソースと、現時点のリスクバランスを取ることで将来の大きなリスクを回避する意思がなければ、米国は1チームとして勝てない」と述べていた。

 

米国は同盟国やパートナーは、各地で戦略的競争相手に直面している。ロシアによるウクライナ侵攻は正当化できないが、欧州安全保障の秩序を乱しており、米軍は遅れを取ったり、鈍い反応を示す余地がなくなっていることを思い知らされている。■

 

How the Ukraine Crisis Could Make the US Military Stronger - 19FortyFive

ByMackenzie EaglenPublished2 days ago

 

 

Now a 1945 Contributing Editor, Mackenzie Eaglen is a resident fellow in the Marilyn Ware Center for Security Studies at the American Enterprise Institute. You can follow her on Twitter: @MEaglen.

More about Mackenzie Eaglen: While working at AEI, Ms. Eaglen served as a staff member on the National Defense Strategy Commission, a congressionally mandated bipartisan review group whose final report in November 2018, “Providing for the Common Defense,” included assessments and recommendations for the administration. Earlier, Ms. Eaglen served as a staff member on the 2014 congressionally mandated National Defense Panel, established to assess US defense interests and strategic objectives, and in 2010 on the congressionally mandated bipartisan Quadrennial Defense Review Independent Panel, which evaluated the Pentagon’s defense strategy. She is also one of the 12-member US Army War College Board of Visitors, which offers advice about program objectives and effectiveness.

 



2022年3月2日水曜日

放棄ロシア軍車両をトラクターで牽引し、ウクライナ軍に協力する農民...BTRの操作手順を公開するロシア人の勇気ある動き....ロシア軍がどんどん追い詰められていく

 

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Tractor Ukraine Russia

TWITTER SCREENCAP

 

本ブログではロシア語のキエフではなく、ウクライナ語に近いキーフと表記しています。メディア関係者も慣行にとらわれず早く変更していただきたいと思います

 

シアのウクライナ侵攻は6日目になったが、ウクライナの兵士や市民が困難な中、占領軍に立ち向かっているとの証言が相次いでいる。軍事面では、スネーク島の英雄的な無益な防衛や、キーフの幽霊と呼ばれる神話的な戦闘機エースなどのエピソードが目立つ。一般市民では、ひまわり女、ウクライナ戦車男、そして今回、放棄されたロシア軍用車両を徴用した一般市民が話題になっている。

 

 

こうした動画がソーシャルメディアに出回っている。一方的な結果になると予想されていた紛争で、ロシア軍が直面する予想外の事態を反映している。ウクライナ軍は戦場での成功に加え、広報キャンペーンを展開している。プロパガンダや士気高揚効果ねらいがあることは明らかだ。

 

ロシアの装甲車や航空機の損失が積み重なり、ウクライナ当局や親ウクライナのアカウントがソーシャルメディア上に公開されている。ビデオや写真には、ウクライナ軍のTB2ドローンが破壊したロシアの車両列、泥沼にはまり込んだ車両、ミサイルを装備したチームによって破壊された車両、侵略軍が直面する物流渋滞の一部として燃料切れで立ち往生した車両が写っている。すべて、紛争の強力なシンボルとなっているが、中でも驚かされるのは、ロシア軍の補給計画の欠如ぶりだ。

 

地上戦が急進展する中、ロシア軍の武器や車両がウクライナ住民の手に渡ることが増えており、中には自らの手で装甲車や戦闘車両を牽引する者も出てきたようだ。

 

背後の事情はほとんどわかっていないが、農業トラクターでウクライナ農民がロシア車両を牽引している。

 

しかし、民間人が自発的に行動しているのか、あるいはウクライナ軍や現地組織のため鹵獲車両や損傷車両を移動させているのかは不明だ。また、ウクライナ軍自身が鹵獲車両の移動に民間トラクターを利用し、軍用車両はより重要な業務に充てているのか。

 

ロシア軍とウクライナ軍の装備には共通点が多く、車両や装備品にも大まかな共通点があることが要注意だ。そのためウクライナは、下の写真にあるBTR-82Aをはじめ、鹵獲したロシア製装甲兵員輸送車を使用できる。

 

同時に共通性のため、徴用車両がロシア軍と誤認される危険性がある。一方、ウクライナ軍は以前から、ロシア軍が鹵獲したウクライナ車両を利用してウクライナ国内に潜入する可能性があると警告を発してきた。

 

VIA TWITTER

ウクライナ軍公式ツイッターより。ロシア軍がウクライナ国旗を掲げて内部に侵入する恐れがあると警告している。

 

 

時間が経てば、ロシア製の車両がどのように民間人の手に渡ったことが、どのような経緯で起こったのか、もう少し詳しくわかるといいのだが......。

とりあえず、確認できたものを紹介しよう。

 

 

 

ロシアのインフルエンサーでメカニックのNastya Tyman は、放置された運転可能な BTR シリーズ APCを偶然見つけた一般市民向けに基本の操作手順を説明するビデオを公開し、話題になっている。Tymanは昨年、祖国防衛の日にこのビデオを作ったが、2月27日に再投稿し、ウクライナ紛争で目撃されたすべての装甲車両に言及した導入部を作り直している

 

新バージョンのビデオでは「放棄されたBTRに出会った場合を想定し、起動方法を紹介します」と字幕があり、Tymanは嬉々として装甲車の操作方法を視聴者に教えている。侵略への抗議を間接的に伝える理由があるのか不明だ。

 

ウクライナ紛争は、特に市街地戦で、極端な残虐性と、シュールな場面が奇妙に混在している。戦闘の恐怖をリアルタイムで見られるのだから、ウクライナ人がロシア軍戦闘車両を牽引するシーンが反響を呼んだのも無理はない。

 

今後、さらに多くのロシア軍車両がキーフ攻撃に動員され、増援が予想される中、同様の事件が繰り返されることは必至だ。■

 

Ukrainians Citizens Are Taking It Upon Themselves To Capture Russian Military Vehicles

These actions are symbolic of the problems that have slowed the Russian advance and the will of average Ukrainians to resist the invasion.

BY THOMAS NEWDICK MARCH 1, 2022

 


トルコがボスポラス海峡等の軍艦通航を禁止すると通告。ロシア艦艇の通航を止め、ロシア-ウクライナ戦争のエスカレーションを回避するねらい。

 Montreux Convention

ロシア揚陸艦RFS Kaliningrad (102)ガダルダネス海峡を通行した。 February 8th. Photograph copyright Yörük Işık, with permission.


ルコ外相メブルト・カヴソグルMevlut Cavusogluがダルダネス、ボスポラス両海峡の軍艦通行を禁じると各国に発表した。

 

トルコ外相による重大発表は2月28日夜にトルコ内閣が検討した内容を受けたもので、同国はモントルー条約で両海峡の航行の管理権限を有している。


外相はトルコ政府から黒海に接するか問わずあらゆる国に向けロシア-ウクライナ戦が続く間は両海峡を通過する黒海への移動は認めないと発表した。同外相によればこれは初の規定の実施措置だという。


「トルコは今回の軍事衝突に中立であり、当事国の軍艦航行を規制する権限を有する。黒海内の母港への回航では海峡通過を認めるが、あくまでもモントルー条約に従う。黒海に面する、面しないを問わずあらゆる国に警告する。軍艦の通行は認められない」


同外相によればロシア政府からトルコがモントルー条約を遵守するのかとの問い合わせが来ていたという。


トルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンRecep Tayyip Erdoganは域内のエスカレーション回避の意味でモントルー条約の意義を認め、トルコが国際枠組み内で責務を果たすと強調した。背景には国連、NATO、EUが念頭にあり、ロシアによる侵攻は「受け入れがたい」と発言した。


「トルコは1936年モントルー条約に基づきトルコ海峡の権限を行使し、ロシア・ウクライナ『危機』をこれ以上エスカレートさせない」(エルドアン大統領)


2月27日のCNNトルコのインタビューで、カヴソグル外相は、「両国の対立を本格的な戦争とみなしている」と述べ、今回の決定を先に示唆していた。外相はモントルー条約第19条に言及し、戦時中のトルコによる海峡管理を強調した。


条約第19条は次の通り。

戦時下において、トルコが交戦国ではないとして、軍艦は、第 10 条から第 18 条に定める条件(トン数制限及び通過規則に関する条文)で、海峡の通過及び航行で完全な自由を享受するものとする。


但し、交戦国に属する軍艦は、この条約第25 条の適用から生ずる場合及び国際連盟規約の枠内で締結され、かつ、同規約第18 条の規定に従い登録及び公示されたトルコを拘束する相互援助条約により侵略の被害国に提供される援助の場合出ない場合は、海峡通過できない。


前項に規定する例外的な場合では、本条約第十条から第十八条に定める制限は、適用されない。


2.上記第2項に定める通航の禁止にかかわらず、交戦国に属する軍艦は、黒海沿岸国であるかを問わず、その基地から分離した場合には、同基地に復航できる。


交戦国に属する軍艦は、海峡において、捕獲、臨検及び捜索の権利の行使、又は敵対行為をしてはならない。


外相は19条に言及したが、条文は交戦国の軍艦を禁止措置の対象とする。その結果、トルコ政府は、第21条の権利行使を行ったと思われる。第21条は、トルコ政府が戦争の危険が差し迫っていると感じた場合、軍艦の通航は完全にトルコ政府の裁量によるものとし、海峡での拿捕、臨検捜索権の行使、あらゆる敵対行為を禁止する、と定めている。


第 21 条:トルコが急迫した戦争の危険にさらされていると認めた場合には、トルコは、本条約 第 20 条〔戦時において、交戦国であるトルコは、第 10 条から第 18 条までの規定を適用せず、軍艦の通航は、トルコ政府の裁量に全面的に委ねられる〕の規定を適用する権利を有する。


外相発表はトルコ政府による両海峡通過の取扱に関する公式発表と受け止められる。■


Turkey Closes The Dardanelles And Bosphorus To Warships

Tayfun Ozberk  28 Feb 2022

https://www.navalnews.com/naval-news/2022/02/turkey-closes-the-dardanelles-and-bosphorus-to-warships/

 

Posted by : Tayfun Ozberk

Tayfun Ozberk is a former naval officer who is expert in Above Water Warfare especially in Littoral Waters. He has a Bachelor Degree in Computer Science. After serving the Turkish Navy for 16 years, he started writing articles for several media. Tayfun also offers analysis services on global naval strategies. He's based in Mersin, Turkey.


2022年3月1日火曜日

ウクライナ上空の航空優勢を確保できないロシア。奮戦するウクライナ防空部隊。砂漠の嵐の再現を狙ったロシア軍が実力を露呈したのか。キエフという呼び方をやめましょう。


Fight of planes in the sky over the Kiev region, as a result a plane of the Russian army was hit.

首都圏上空に展開する空中戦でロシア機が命中弾を受けたPhoto by Aleksandr Gusev/SOPA Images/LightRocket via Getty Images


  • 米政府高官によればウクライナ上空の支配は決しておらず、モスクワ発表と食い違っている

  • ロシアが短時間でウクライナ防空能力を圧倒すると思われていたが、そのとおりになっていない

  • ウクライナはロシア戦闘機、へリコプター、輸送機を撃墜したと主張


ロシア発表と反対にウクライナ上空で両国軍が戦闘を展開しており、ロシア侵攻への対抗が続いていると米国防関係者は匿名条件で語った。


「ロシアは航空優勢を全土で確立できていない」「ウクライナ防空体制は健在で対空・対ミサイル防衛装備は有効に機能している」


「上空で勝敗が決まらない状態のまま、非常に迅速に変化しつづけている」と述べ、モスクワが今朝ロシアがウクライナ上空で「完全な航空優勢」を確保したとの発表と食い違っている。


ロシアがウクライナ侵攻を大規模に開始して5日目となった。各方面から進軍し、首都キーフをめざしている。ロシア軍はキーフ周辺やその他都市を空爆し、一般市民多数が地階や地下鉄構内に避難している。


2月28日にツイッター投稿された映像では上空の機体に地上防空部隊が交戦する様子が見られる。


別の映像では地対空ミサイルが上空の機体に向け発射されており、場所はキーフ上空のようだ。


ここ数日荷渡ウクライナ側からロシア戦闘機、ヘリコプター、さらに輸送機まで撃墜したとの発表が相次いでいる。ウクライナ軍は開戦直後からロシア固定翼機とヘリコプターそれぞれ5機、1機を撃墜したとしていたが、ロシアは否定していた。


ロシアがウクライナとの交戦で被害を受けたのを認めたのは最近になってのことで、それでもウクライナ側の損害のほうが大きいと主張している。


先週木曜日にウクライナ軍が発表した映像ではキーフ近郊の町ホストメル上空でヘリコプター1機が墜落し、ウクライナ軍は墜落後の機体残骸も示した。


ウクライナ最高位の軍人ワレリー・ザルジニーValeriy Zaluzhiny将軍からは2月25日にウクライナ軍がロシアのイリューシンIl-76機をキーフ近郊で撃墜したとの発表があったと報道されている。


Il-76は大型輸送機で空挺部隊の運用にも使われ、150名までの兵員を運搬できる。


ウクライナ軍はS-300ミサイル装備でヘリコプター、Su-25近接航空支援機各1機をそれぞれ撃墜したという。


ロシアはウクライナ防空力を開戦初期に排除すると見られていたが、今までのところ実現していないようだ。■


Ukraine's Skies Remain Contested, Says US Defense Official

Julie Coleman 


ご注意 これまでウクライナ首都をキエフとしてきましたが、キエフはロシア語のいいまわしであり、ウクライナ現地ではキーフKyivと呼ぶのが自然とのことなので当ブログでも今後呼び名を変えます。

 

ウクライナ侵攻の海上戦闘はどうなっているのか。 ロシア黒海艦隊を中心にこの数日の動きをまとめた記事をご紹介。

 

Russian Naval Activity in the vicinity of Snake Island (H I Sutton image)

 

ロシア-ウクライナ間の戦闘が4日目に入り、一向に衰える気配がない。「戦闘の霧」のため、全体像が見えてこない。世間の関心が市街地戦に向かいがちだが、これまで黒海で何が発生したか見てみることに意味がある。


シア軍はウクライナ戦に備え準備していた。国境地帯やベラルーシでの部隊増強が関心を呼んでいたが、重要だったのが黒海艦隊(BSF)の増強で、バルト海、北海、太平洋から艦艇が移動し、BSF配備中の艦艇も地中海に展開した。


報道でなかなか取り上げられない黒海に焦点をあててみよう。



黒海艦隊の役割


陸上空中に比べ、海上の緊張度は低い。2014年のクリミア半島侵攻でウクライナは海軍戦力の大部分を喪失したためだ。


侵攻一週間前にBSFがNOTAMを出し、ケルチ海峡Kerch Straitならびにクリミア半島南部西部の封鎖作戦の予行演習が展開された。その時点でBSFが黒海北部を統制下においたと言っても過言ではない。


2月24日、ロシアはウクライナ主要都市に大規模攻撃を開始した。ロシア国防省は投入したミサイルの種類を明らかにしていないが、BSF艦艇もカリブルミサイルを発射したと思われる。BSFのブヤン-M級海防艦、アドミラル・グロゴロヴィッチ級フリゲート艦、改キロ級潜水艦、プロジェクト22160哨戒艇が同ミサイルを搭載している。


スネーク島で何があったのか


ルーマニア国境付近のウクライナ領の小島「スネーク島」(ウクライナ語でズミイニ島)が海上戦闘で最も目立つ舞台となった。BSF旗艦スラバ級巡洋艦RFSモスクバ、プロジェクト22160哨戒艇が艦砲射撃した。なお、同島はオデッサの南方50カイリ。


守備隊13名は降伏を拒み、ロシア砲火により絶命した。同隊隊員は「ズミイニの英雄」と呼ばれている。ロシア艦艇は同島を占拠し、付近海域を哨戒している。


同島陥落の詳細が不明ながら、その位置がNATO加盟国ルーマニアに極めて近いことが重要で、ロシアのBAL/バスティオンP沿岸防衛ミサイルを配備されればA2/AD効果が増加する点も同様に重要だ。オデッサへの上陸作戦が実施されえれば、同島が補給拠点になる。


黒海での航行の自由

MILLENNIUM SPIRIT on fireMILLENNIUM SPIRIT on fire. Ukrained MoD picture.


黒海で航行の自由を妨げる事件が発生した。


ウクライナ国防省は2月25日発表で民間商船2隻がロシア軍の攻撃を受け、場所はオデッサ近郊とした。パナマ船籍のばら積み船NAMURA QUEEN (IMO: 9841299)とモルドバ船籍タンカーMILLENNIUM SPIRITでともにミサイル攻撃を受けたという。ウクライナ沿岸警備隊初め救難にあたった。モルドバ当局はミサイルをどちらが発射したか不明としたが、ウクライナ防衛省は両船ともロシア軍の行為と非難した。


2月26日、トルコの船舶追跡愛好家からロシア海軍がVHF16チャンネルを使い、「テロ対策作戦」を展開中のためオデッサおよびダニューブ付近の全船舶に直ちにポスポラスへの移動を求めたのを傍受したとツイッター投稿があった。


ウクライナは海峡封鎖をトルコに要請


Marmara Sea map showing the traffic routes to the Black Sea (Prepared by Tayfun Ozberk)



トルコではウクライナ大使が海峡封鎖によりBSFの増強を図るロシア艦艇の移動を止めるよう要請した。トルコはモントルー条約によりボスポラス海峡、ダルダネレス海峡の双方で民間商船、海軍艦艇の通行を管制している。トルコ外相メヴルト・キャブソグルMevlut Cavusogluからトルコは母港に戻るロシア艦艇の移動を差し止めることができないと声明が出た。


2月26日にウクライナ大統領ゼレンスキーがツイッターで再びトルコに要請し、「黒海に向かうロシア艦艇の移動を封じることでウクライナの軍事活動並びに人道支援に大きな効果が生まれるので極めて重要な課題だ」と述べた。トルコ側から返答がない。


マリウポル付近で揚陸作戦か


USNI Newsによればロシアはアゾフ海経由でウクライナへの揚陸作戦をマリウポル付近で実行した。ペンタゴン報道官ジョン・カービーは記者団に同作戦の実態は完全に把握できていないことを認め、ロシア上陸部隊の規模に触れなかった。


英国防省が情報開示でこの点に触れ、2月26日ツイッターでロシアはウクライナ南部メリトポルとマリウポルの間で揚陸作戦を実行したようだと伝えている。


だがマリウポル沿岸での上陸部隊の画像映像が皆無で、ウクライナ当局も情報開示していない。


揚陸作戦はあったのか、ウクライナ新型対艦ミサイルはどこに


ロシアBSFは開戦前予想どおりの動きを示した。BSFはウクライナへの海路、主要港への動きを抑え、援助物資の流れを差し止めながら、海上からのミサイル攻撃を戦略目標に向けた。揚陸作戦が合ったと観測されているが、無用なリスクを生むだけと見ている。BSFは何ら抵抗を同海域でうけていないためだ。


USNI記事はペンタゴン発表をもととし、アゾフ海沿岸での上陸作戦を伝えた。揚陸作戦は水上艦、航空機、特殊部隊等が加わる複雑な作戦となるのが一般だ。だがこうした展開があった、また部隊が衝突した証拠がない。記事が正しいとすれば、これだけ狭い地点に上陸しながら損害が皆無というのは実に驚くべきことだ。沿岸守備部隊の抵抗がない楽な展開だったのか。今後情報が入れば、実態がわかる。


最新情報ではオデッサ付近でも揚陸作戦が実行された可能性があるという。ロシアは揚陸作戦を一定の損失を覚悟の上で実施したはずだ。ロシア軍は開戦3日目に進軍が減速した。このためオデッサ付近の揚陸作戦が南方での新たな展開になりそうだ。


BSFの揚陸作戦能力、装備品を搭載するサヴァストポリからの距離を考慮すれば、ウクライナへの揚陸作戦はBSFに壊滅的結果を招きかねない。まず、セバストポリからオデッサは150カイリの距離で揚陸舟艇の往復に24-30時間を要する。その間にオデッサ上陸に成功したロシア部隊は増援なしで戦闘を迫られる。艦艇の援護射撃や空挺部隊の支援が必要だ。


もうひとつ驚くのはウクライナ軍沿岸配備部隊がネプチューン対艦ミサイルを使っていない点だ。同ミサイルの射程は300キロメートル近くあり、BSFの接近を阻止できるはずだ。ネプチューンミサイルがロシア艦艇の対空装備で撃破されたのか、部隊そのものがロシア空爆で壊滅したのか情報がない。とはいえ、同ミサイルが使用されていないことから運用可能な状態だったのか疑問が生まれる。ウクライナ報道では同ミサイル取得開始は2021年3月とあるのだが。


ネプチューンミサイルでウクライナがロシア艦艇を攻撃し無力化できれば、ロシア海軍の戦闘意欲にも影響が生まれる。艦艇喪失はその他装備の喪失と意味が違う。このため、同ミサイルを沿岸防備に投入することが大きな意味を有している。


フランス海軍の昨日発表では空母シャルル・ド・ゴールをNATO支援に提供し、艦載機が黒海を哨戒する。■



Russia-Ukraine conflict: What happened in the Black Sea so far? - Naval News

Tayfun Ozberk  27 Feb 2022

 

Tayfun Ozberk is a former naval officer who is expert in Above Water Warfare especially in Littoral Waters. He has a Bachelor Degree in Computer Science. After serving the Turkish Navy for 16 years, he started writing articles for several media. Tayfun also offers analysis services on global naval strategies. He's based in Mersin, Turkey.