2022年10月4日火曜日

リマンをウクライナ軍が奪回した戦術、戦略的な意義、ロシアのメンツに痛撃

 


 

 

ロシアによる「併合」後に、ウクライナはリマンを掌握。ロシアが宣言したドネツク、ルハンスク、ザポリジヤ、ケルソンの併合は、多くの理由で通用しなくなった。NATOやウクライナに併合を認められていないだけでなく、そもそもロシア軍は各地域を完全に掌握していたわけではない。

 ロシア軍はルハンスク州の大部分を支配中と主張するかもしれないが、隣のドネツク州では、ロシア軍はNATOが供給した武器を使うウクライナ軍に押し出されているのが現状だ。週末、ウクライナ軍がリマン市に駐留するロシア軍を包囲し、撤退させることに成功し、このことはさらに明白になった。

 

ボディバッグに再展開

ウクライナ軍は今週末、リマンでの勝利を祝い、撤退したロシア軍を嘲笑するツイートを出した。

 「イジュームム2.0」演習に成功したロシア『国防省』に感謝する」とある。

 「リマンに配備のロシア軍ほぼ全員は、遺体袋に入るか、ウクライナの捕虜になり、無事再配備された。聞いてみたい。もう一度やってみたいか?」

 このツイートは、同地域の部隊を「より有利な防衛線」に再配置したというロシアの主張に言及したものと思われ、ロシア軍がリマンをもはや維持できないことを暗黙のうちに認めている。

 

ストルテンベルグ、ウクライナのリマン奪取を祝う

ウクライナのリマン占領を受け、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ウクライナ軍を称え、ウクライナの領土防衛を支援するNATOの約束を再確認した。

 ストルテンベルグは、NBCの「ミート・ザ・プレス」のインタビューで、「我々は、ウクライナ軍が新しくリマンを占領したことを確認した」と述べた。

 NATOトップは、ロシアによるウクライナの4地域の併合を阻止する最善の方法は、NATO同盟国がウクライナ支援を継続することであり、ロシアは各地域を完全支配するできていない、と付け加えた。

 しかし、ストルテンベルグは、ウクライナのNATO加盟に積極的ではなく、加盟国30カ国が全会一致で合意した場合にのみ可能であると説明した。

 

 

専門家の意見

カールトン大学欧州・ロシア・ユーラシア研究所のマクミランロシア学講座のAssociate Professor J・ポール・グッド准教授J. Paul Goodeは、「戦争はまだ終わっていないと思うが、ウクライナがリマンを奪還したことは重要だ」と説明する。

 「ロシアの国内政治という点では、(9月30日の)演出された併合直後にリマンを失ったことは、クレムリンに不都合なことだ。ロシア報道機関はリマンの喪失をごまかそうとしたが、ロシアは新たに併合された領土を守ることができない印象を避けられなくなった」と指摘した。

 「リマン喪失は、チェチェンのラムザン・カディロフをはじめ、クレムリンの戦争処理に批判的なタカ派やナショナリストをさらに刺激するかもしれない。より微妙な点では、リマン喪失がウクライナ東部の占領インフラに打撃を与える可能性がある。特に、喪失が続くことでロシアの官僚や公共部門の労働者が占領地域で新たな仕事に就くことを思いとどまれば。最後に、このような損失が被占領地域を支えるロシアの信頼性に与えるダメージは過小評価すべきではない」。

 

ジャイルズ: ウクライナの勝利が本当に意味するもの 

紛争研究所のロシア専門家であるキール・ジャイルズKeir Gilesは、次のように説明した。「ウクライナ軍の継続的な前進は歓迎すべきニュースだが、占領地の継続的な解放の意義は、ウクライナ国内よりも戦場から離れた場所で大きくなる。今回の進攻は、目先の戦術的な成果よりも重要な2つの重要な影響をもたらすだろう。

 まず、ウクライナの秋季攻勢全体と同様に、戦争が静観できるものではないとキーウへの西側支援国に明確に示し、今年初めに躊躇と疑念を引き起こした長期膠着状態への懸念は見当違いだったということだ。ウクライナは少なくとも獲得した領域の一部からロシア軍を追い出せる状態にあるからだ。

 もうひとつの直接的な影響は、ロシアがウクライナ領土の一部を「併合した」と主張するのは茶番劇だと実証したことだ。プーチンがリマンのような町は永遠にロシア領だと主張した翌日に解放されたことで、ロシアの主張が無意味なもののを世界中に知らしめたのだ。

 ロシアは、占領地を失いつつある。一つの大きな帰結は、プーチンの空想と現実間のギャップを隠すことを不可能にして、物語のコントロールを保つことをさらに難しくし、戦争について自国の国民に伝えることだ」。■

 

Ukraine Wins Big at Lyman over Russia: What Does It Mean? - 19FortyFive

 

By Jack Buckby

 

Jack Buckby is a British author, counter-extremism researcher, and journalist based in New York. Reporting on the U.K., Europe, and the U.S., he works to analyze and understand left-wing and right-wing radicalization, and reports on Western governments’ approaches to the pressing issues of today. His books and research papers explore these themes and propose pragmatic solutions to our increasingly polarized society.

Note: This has been updated since posting to include expert commentary and analysis from two world-class scholars. 


2022年10月3日月曜日

第7艦隊が海軍海兵隊統合作戦構想を試行中

 2月に行われた合同演習「ノーブルフュージョン」で、前方展開水陸両用強襲揚陸艦「アメリカ」に乗り込む第7遠征打撃群司令官クリス・エングダール少将。(MC3 Matthew Cavenaile/Navy)

海軍と海兵隊は、インド太平洋地域における水陸両用部隊と危機対応部隊の指揮統制の合理化で協力し、新しい海上コンセプトと技術の実験のため任務部隊を創設した。

タスクフォース76/3は、太平洋における将来の海軍作戦がどうあるべきかの理解をめざす1年以上の活動に先立ち、海軍遠征打撃群7と第3海兵遠征旅団の幕僚を融合させた。

この動きは、2016年に米中央軍に統合スタッフが誕生し、今春、欧州の水陸両用作戦と偵察・対偵察演習のためにブルーグリーン部隊を統合するタスクフォース61海軍水陸両用軍ヨーロッパ/第2海兵師団が発足したのと同様だ。

「両軍の幕僚を統合することは、理にかなっている」と海軍のニュースリリースで、タスクフォース 76/3 の司令官デレク・トリンク Derek Trinque 少将は、「この地域に適したアイデアです」と述べた。「海軍=海兵隊チームの司令部は、インド太平洋の重要な海洋地形において、最も有能かつ最も準備の整った部隊を司令官に提供できます」。

トリンクとタスクフォース76/3副司令官のフリドリック・フリドリクソン海兵隊准将Marine Corps Brig. Gen. Fridrik Fridrikssonによると、タスクフォース76/3の目的は、人道的・災害対応から高強度紛争まで、あらゆる作戦に対応できるよう部隊を準備することにある。

「艦船から海岸へ、そして再び海岸へ、航空機の監視など、あらゆることを迅速に行うことができる」と、フリドリクソンは月曜日に記者団に語った。「これが私たちに期待されている実験です」。

 

 これまで第7遠征打撃群と第3海兵遠征旅団は、海上では一緒に展開するものの、作戦立案担当、情報部門、兵站部門、通信・IT部門など、独自の幕僚を持っていた。

 これがLスタッフ(沿岸作戦のL)として統合され、各軍の最高の人材で実践されることになった。

 トリンク少将は記者団に、「これまでは別々の視点で物事を捉え、別々の指揮系統に報告書を送っていたが、これからは才能をプールし、情報をよりよく活用する」と述べた。

 太平洋地域の海兵隊指導部は、「通信システム、兵站システム、作戦、あらゆる新兵器や技術など、あらゆるものを検討し、統合任務部隊の力を十分に発揮し、どのように活用するか」を確認したかったと、フリドリクソン准将は述べている。

 タスクフォースは10月1日、ノーブルフュージョン22.2演習の一環として、統合コンセプトを初めて試す機会を得る。さらに、第3海兵師団を支援し、10月3日にフィリピン近海でカマンダグ演習に参加するほか、今秋はその他演習や実戦的な作戦を展開する。

 トリンク少将は記者団に対し、「演習は多くのことを予見し、計画することができる場所だ」と語った。しかし、「確かに、実戦的な作戦となれば、別々に物事に当たるつもりはない。今回の活動の間、ずっと一緒にいるつもりだ。最終的には、より統合された海軍力が実現します」。

 タスクフォースの試行期間は、2023年夏までとされている。その後、海軍、海兵隊、国防総省の幹部が、得られた教訓と今後の進め方についてフィードバックを受けることになる。

 タスクフォースの設置は、時事問題に対応したものではなく、カルロス・デル・トロ海軍長官とマイケル・ギルデー海軍作戦部長からの海軍と海兵隊の即応性と統合を促進するよう指示に沿ったものだと、トリンクとフリドリクソン両名は述べている。

 「海軍と海兵隊のチームは、多様な能力を持っている」とトリンク少将は記者団に語った。「人道支援や災害対応から大規模戦闘に至るまで、能力を発揮するまで長いタイムラグが生じるのは許されない。必要となるときに備えて、準備をしておくのがわれわれの責任です」。

 この観点から、チームは陸上での指揮統制の拠点として統合沿岸戦センター(Integrated Littoral Warfare Center)を立ち上げた。トリンク、フリドリクソン両名と幕僚は、そこで指揮統制と通信システムを確立し、地域を監視し、必要に応じ戦力投入することになる。

 日本に拠点を置く第7遠征打撃群は、沖縄のホワイトビーチと佐世保にスタッフがおり、第7艦隊旗艦である揚陸指揮統制艦ブルーリッジと、水陸両用飛行隊11を含む。

 第3海兵遠征旅団は、沖縄のキャンプ・コートニーに本部を置き、太平洋における危機対応を行う空と陸の部隊で構成されている。■

 

Navy, Marine Corps test new naval integration concepts in 7th Fleet

By Diana Stancy Correll and Megan Eckstein

 Sep 28, 06:51 AM

 

 

Megan Eckstein is the naval warfare reporter at Defense News. She has covered military news since 2009, with a focus on U.S. Navy and Marine Corps operations, acquisition programs and budgets. She has reported from four geographic fleets and is happiest when she’s filing stories from a ship. Megan is a University of Maryland alumna.


エンジン換装B-52の風洞試験が完了。全機改修は2030年代中頃になる予定。

Boeing

 

ボーイングがロールス・ロイスF130エンジン用の

新型ナセルの風洞試験の様子を公開した

 

 

ーイングは、B-52民生エンジン換装プログラムで、風洞試験が完了したと発表し、ビデオを公開した。映像では、F130エンジンを搭載した機体の外観がこれまでで最も明確にわかる。2050年代、さらにその先まで同機運用を続けるため、待望のエンジン換装契約をロールス・ロイス昨年勝ち取っていた。

 ボーイングがTwitterに投稿した短い動画では、B-52の4%縮小モデルが同社内の遷音速風洞内で最大速度マッハ0.92でテストしているのがわかる。2基ずつのナセルで構成されるエンジンポッド4つに、ロールス・ロイスF130エンジンが合計8基搭載されていると確認できる。

 F130エンジンは、ボーイングのエンジニア、マイク・セルトマンMike Seltmanが映像で強調しているように、現行のプラット&ホイットニーTF33-PW-103エンジンに比べ、燃料効率とメンテナンス性が大幅に向上する。TF33は1985年で生産中止となっており、2030年以降にサポートが不可能になる。B-52Hでは、高バイパス比のターボファンを搭載するため、Spirit AeroSystems製の新しいナセルを採用した。

 「風洞試験の目的は、データを収集し、エラーデータベースを構築し、リスクを低減し、飛行試験につなげ、発注元のため実機を飛ばすことです」と、セルトマンはビデオで述べている。「新型エンジンは大型化したので、ナセルも大きくなり、翼に近くなり制御性で面白い現象が起こりました」。

 

 

B-52モデルのエンジンナセルがはっきりとわかるボーイング映像のスクリーンショット。 Credit: Boeing

B-52民生エンジン交換プログラムに関する空軍のプレゼンテーションのスライド。 Credit: U.S. Air Force

 

 

 プラット&ホイットニーTF33は、B-52の68年にわたる運航に貢献してきたが、維持費が高くなりすぎた。空軍規則で、TF33は毎6,000飛行時間でオーバーホールが義務付けられており、費用はエンジン1基あたり200万ドルにのぼる。2019年現在、B-52の飛行コストは1時間あたり7万ドルとなっており、ストラトフォートレスは空軍で最も運用コストがかかる航空機として定着している。

 そこで、空軍は2018年にB-52民生エンジン交換プログラムのコンペを開始し、ロールス・ロイス、プラット&ホイットニー、ジェネラル・エレクトリック・エイビエーションの3社が候補に挙がっていた。3年にわたる競合の末、ほぼ1年前、ロールス・ロイスは5億80万ドル(オプションすべて行使されれば26億ドルに達する可能性)の契約を獲得した。この契約と、「BUFF」のエンジン換装までの長く曲がりくねった道のりについては、The War Zoneが過去の記事で詳しくご紹介している。

 ロールス・ロイスは、B-52を設計・製造するボーイングに対し、「B-52H爆撃機に使用する608基民生エンジンと予備エンジン、関連サポート機器、民生エンジニアリングデータ(維持管理活動を含む)」を提供すると、発注時に公表された国防総省の契約通知書にある。ロールス・ロイスはインディアナポリス施設でF130エンジンを製造し、ボーイングが統合を担当する。

 

 

米空軍KC-135ストラトタンカーから燃料を受け取った米空軍第5爆撃航空団のB-52ストラトフォートレスは、主翼に並ぶ8つのナセルにTF33エンジンが搭載されているのが確認できる Credit: U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Trevor T. McBride

 

 

 製造されるF130は、現在76機あるB-52Hが搭載する8基のTF33エンジンと1対1交換となるが、予備も調達になるようだ。しかし、ロールスロイスが主張する、30%の燃費向上、航続距離の増加、現場での性能向上、信頼性向上、タンカー機の必要数の削減以外に、B-52H関連のF130で生まれるその他の性能指標は明らかにされていない。Air Force Magazineは3月、新型エンジンが飛行速度に悪影響を与えないと記していた。

 ロールス・ロイスF130は、現在ガルフストリームのビジネスジェット機GV/G550/G650だけでなく、空軍のVIP輸送機C-37、E-11 Battlefield Airborne Communications Node(BACN)などに搭載されているBR700エンジンの軍事転用型だ。ロールス・ロイスは、F130の搭載で、B-52H供用を通じ、「オンウイング」状態を維持できるとしている。

 

 

2021年11月18日、ネリス空軍基地で行われた米空軍兵器学校統合訓練で離陸する、バークスデール空軍基地第340兵器中隊に所属するB-52ストラトフォートレスCredit: U.S. Air Force photo by William R. Lewis

 

 B-52の民生エンジン交換プログラムが正式発表される以前から、B-52のエンジン換装として、民生仕様の高バイパス比ターボファンエンジン含む提案が出ていた。しかし、B-52の主翼に大型エンジンを組み込むのが困難なため、各提案は見送られた。8基から4基へ変更した場合、エンジンの地上高をどう確保するか、エンジンアウト時の推力の非対称性問題、主翼の変更、エンジン用パイロンの新設などが必要となる。

 

 

大型ハイバイパスターボファンエンジン4基を搭載したB-52を示すボーイングのコンセプトアート。 (Boeing Image)

 

 ボーイングも、維持費や燃料費で数十億ドル節約できる可能性があるとし、エンジン換装を推し進めてきた。長期間の節約で「元を取る」という、「創造的」な調達と融資のスキームを売り込んでいた。

 

 

アイダホ州マウンテンホーム空軍基地で2020年6月19日、飛行ラインでタキシングするロールスロイスBR700シリーズエンジン2基を搭載した米空軍C-37A。Credit: U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Andrew Kobialka

 

 B-52Hは新型ナセルとエンジンに加え各種アップグレードを受ける。目立つのは、状況認識と照準能力を強化する目的の新型AN/APG-79アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーで、電子攻撃や長距離通信にも使用される。同AESAは、F/A-18E/Fスーパーホーネットにも搭載されているが、BUFFの大きなレドームを最大限に活用するため、適切な装着と配列の拡張改造が必要となる。

 APG-79の実用化スケジュールは、エンジン交換プログラムのスケジュールと重なっており、B-52Hでの飛行試験が2025年開始され、初期運用能力は2027年に期待されるとThe Aviationistが報じている。このため、B-52Hでは、新型レーダーを搭載した機体が新型エンジン搭載に先駆けて飛行し、B-52JかB-52Kという2つの名称を獲得することになる、と同記事は説明している。

 

 

テストスタンドに置かれたB-52エンジンのナセルのコンピュータ・レンダリング。 Rolls Royce North America

 

 

 2022年3月時点で、試験用F130エンジン2基が製造済みで、ミシシッピ州のNASAジョン・C・ステニス宇宙センターにあるロールス・ロイス屋外ジェットエンジン試験設備で評価を受ける。2025年末までに、最初のF130エンジン搭載B-52H2機が納入され、地上試験と飛行試験が行われると空軍は予想。8機が、カリフォーニア州エドワーズ空軍基地のB-52テストフォースに加わり、次世代B-52の新機能を評価する。空軍は、2028年末までに改造を経て運用可能なB-52一号機を納入する予定で、2035年までに全機がエンジン換装される。

 B-52はさらに進化し、100年以上飛び続けそうだ。■

 

 

This Is What The B-52 Will Look Like With Its New Rolls-Royce Engines

 

BYEMMA HELFRICH| PUBLISHED SEP 27, 2022 2:27 PM

THE WAR ZONE


2022年10月2日日曜日

ウクライナ戦の最新状況 徴兵逃れのロシア市民が開戦時動員部隊の規模を上回る。ウクライナ戦とスター・ウォーズの関係など

Ukraine Situation Report: ‘Army’ Larger Than Russia’s Invasion Force Likely Fled Mobilization

Anadolu Agency via Getty Images


ロシアの30万人徴兵計画で市民が国外脱出している

国防省によれば、プーチン大統領が動員計画を発表し1週間で、7カ月前にウクライナに侵攻するため集結した全軍規模より多くのロシア人が自国から脱出した可能性が高い。

プーチン大統領が「部分動員」を発表して7日間で、招集を逃れようとするロシア人が相当数流出したと、英国国防省は戦争の最新の情報評価で述べている。「正確な数は不明だが、2022年2月にロシアが展開した侵攻部隊全体の規模を上回る可能性が高い」。

ロシア侵攻前の推定では、13万から19万人の兵力だった。中流階級、高学歴、多数民族のロシア人が、ロシアから逃げ出す流れに過剰に含まれている。英国国防省によれば、流出と動員される兵役年齢の男性ロシア人の数は、ロシア社会の「頭脳流出」を加速させる一因になっているという。

プーチンの部分動員は、ウクライナ前線の穴を少なくとも30万人の新兵で埋めようとている。訓練を受けず、装備も不十分な大量の徴兵を集めることの問題は、部隊が数日の訓練しか受けていない状態で前線に現れ始めたので、すぐに明らかになった。

下のビデオに映っているのは、将校も制服も武器も指示もなく、雪の降る野原に投げ出された徴用兵。

モスクワ、サンクトペテルブルク、その他の空港には、兵役年齢の男たちが群がり、飛行機の予約を争った。ロシアとヨーロッパの国境沿いには、徴兵を免れようとする車の長い列ができた。プーチンは、意図した形ではないにせよ、徴兵対象者を動員したのである。

プーチンは、徴兵制が万能でないのを認識しているようだ。最近のビデオ演説で、間違った種類の人々が、軍に徴用されていると述べた。

「われわれは誤りを正し、今後それを許さないようにしなければならない」。

ロシアの独立系民間社会調査会社レバダ・センターの新しい世論調査によると、ロシア人の56%が戦争に不安を感じている。これは、1カ月前の約36%から上昇している。動員はロシアで広範な抗議行動を引き起こしている。

ウクライナ軍は、ロシア軍内の士気の低さを利用している。ロシア人捕虜の精神健康を促進するため、定期的に家に電話をかけることを許可している。また、個々のロシア軍兵士が愛する人に戦争の現実について率直に話すことができるようにしており、紛争がどのように進行しているかについてのクレムリンのプロパガンダで兵士が従事する条件や状況を甘く見積もっているのを否定している。

ロシアはウクライナで負けている自軍を強化するため、北西部の国境地帯に展開していた部隊の大部分を再配備した。

ウクライナ東部で対峙する両軍の戦術的現実は、これ以上ないほど異なっている。ロシア軍は、南部のケルソンから北部のハリコフまで、ほぼ全戦線で守勢に立たされている。侵攻開始以来、深刻な兵站問題と補給不足に見舞われ、ウクライナの精密砲撃に追い回され、打ちのめされている。部隊の数は減り、最高装備の多くが損傷や破壊を受けている。代用品はたいてい性能も品質も劣っている。

その相手は、米国とNATOの同盟国の深い支持を受け、よく訓練され、規律正しく、装備も整った軍隊である。何よりも、彼らは自らの国土と自由のために戦っているのだ。ウクライナ軍は戦術的な主導権を握っている。ウクライナ国防省は、木曜日にソーシャルメディアに投稿した動画で、この違いを指摘した。

ウクライナの情報戦も攻め込んでいる。下のような動画は、世界に向け、士気を高ぶらせない軍隊を描いている。

プーチンは、自軍が進攻するウクライナ人から占領地を守りながら、さらに戦争をエスカレートさせる舞台を用意したのだ。

最新情報

複数メディアによると、モスクワは金曜日に式典で、ウクライナの4地域を正式に併合すると明らかにした。先週末、東部のルハンスクとドネツク、南部のザポリツィアとケルソンの4地域で併合に関し住民投票が行われたが、完全に腐敗していると全面的に非難された。式典の準備のため、ロシアから就任した4地域の指導者たちは水曜日に民間航空機でモスクワに向かった。

ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、NATO加盟国の指導者や国連事務総長と、住民投票は法的効力を持たない偽りの投票であると訴えた。

木曜日、ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相 Polish Prime Minister Mateusz Morawieckiは、「疑似国民投票は...ロシアのウクライナ軍事侵略の別の段階」と呼ぶ声明を発表した。

「ロシアは絶え間ない情報戦を続けており、それは戦争行為の一部である」とモラヴィエツキは述べた。「ロシアの情報製品や物語は、西側諸国の世論に浸透しつつある。これは、占領軍によって組織された疑似住民投票の記述方法にも見られる」。

コネチカット州の民主党議員リチャード・ブルメンタールSenator Richard Blumenthaとサウスカロライナ州の共和党議員リンゼイ・グラハムSenator Lindsey Grahamは、議事堂で共同記者会見を行い、プーチンの併合計画を非難した。

プーチンの動員計画でモスクワの戦力を救う可能性が低いと思われる今、プーチンの次の動きは誰にも分からない。しかし、ウクライナ軍情報部のバディム・スキビツキーVadym Skibitsky副部長によると、ロシアが主導権を取り戻し、キーウへの懲罰に戦術核兵器を使用する可能性は「非常に高い」と、ウクライナ当局は懸念している。

スキビツキーがガーディアン紙に語ったところによると、「彼らはおそらく、前線沿いで人員や設備が多数ある場所を標的にするだろう」。「彼らを阻止するためには、対空システムだけでなく、対ロケットシステムも必要だ」。

ロシアが核兵器を使用する可能性には国防総省も注目しているが、これまでのところ、国防総省は欧州での核態勢を変更する理由はないと見ている。リンゼー・グラハム上院議員は9月29日記者会見で、ウクライナで核兵器を使用すれば、ウクライナは加盟国ではないが、NATOへの攻撃となる、と述べた。

ウクライナ軍は、ドネツク州のライマン周辺の村数カ所を解放した。ウクライナは同市を包囲し、残存するロシア軍を完全に封鎖しようとしており、同市周辺の他の町を奪還するための戦闘が続いている。

親ロシア派メディアRybarは、ウクライナ軍がライマンを完全に包囲したのを示唆している。ライマンの戦術的状況を示す最新地図によると、残存ロシア軍は同地に閉じ込められている。

ロシア軍を東に押しやると同時に、ウクライナ軍は損失を免れている、一見放棄されたように見える戦車の一団を入手しており、北部ハリコフ周辺ではロシアのT-80戦車数両がウクライナ軍に編入された。

ウクライナ軍はさらに最新T-90M戦車2両と、対戦車誘導弾(ATGMS)やドローン攻撃から守るルーフケージを備えた旧式T-72B3も手に入れたが、戦力的にははほとんど効果がない。

下の動画のように、ロシアとウクライナの戦車が伝統的な戦車戦を行っているところもある。ロシア軍の戦車は、この決闘では勝っていない。紛争でロシア戦車を悩ませている壊滅的な弾薬爆発のように、弾丸が命中している。

ロシア軍はオルラン10無人航空機数機をウクライナ軍に奪われた。シュミー州で撮影された1機は撃墜されたようで、バラバラになっている。東部のもう1機は損傷がないように見えるので、電子戦で落とされたか、墜落しただけと思われるが、写真の兵士は携帯型防空システム(MANPADS)を持ってポーズをとっている。ウクライナ軍はこの紛争でロシア軍偵察用無人機を定期的に落としており、これがモスクワがイランから無人機を調達した一つの要因になっている。

トルコのエルドアン大統領は9月29日、プーチンと電話会談した。エルドアン大統領が発表した通話記録によると、この会話でエルドアン大統領は、ロシアとウクライナが交渉再開に合意すれば、紛争を調停すると申し出たという。

映画『スター・ウォーズ』でジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカーを演じた有名俳優マーク・ハミルは、ウクライナの「ドローン軍」に資金を調達する団体「United24」の大使としてゼレンスキーと仮想会談を行った。ハミルは、2月の敵対行為開始以来、ソーシャルメディア上でウクライナ支持を表明してきた。ウクライナとゼレンスキーは、スター・ウォーズの比喩やイメージをしばしば用いて、ウクライナを邪悪ではるかに強力な帝国に対抗する反乱軍として描いている。■

 

Ukraine Situation Report: 'Army' Larger Than Russia's Invasion Force Likely Fled Mobilization

 

BYDAN PARSONS| PUBLISHED SEP 29, 2022 8:11 PM

THE WAR ZONE

 

 


 

ロッキードがC-5を核戦争時の空中指揮指令機に売り込んでいた。現行のE-6の後継機種の検討が始まるが、時あたかも再び核戦争の危機が浮上してきた。

 

ロッキードはは米空軍にC-5がEC-135ドゥームズデイ機の後継機にする可能性を伝えていた

 

1970年の登場以来、ロッキードC-5ギャラクシーは、米空軍最大の貨物機として活躍してきた。1980年代後半に同社は、巨大機が空中司令部の任務を担う可能性を売り込んでいた。

ロッキードは、非公式にEC-5Bと呼んだ提案モデルのアートワークを2017年3月2日公開した。同社は同機を、大規模攻撃で地上施設が破壊される最悪のシナリオで核戦力に命令を出す、EC-135Cルッキング・グラス飛行指揮所の後継機にする意図があった。 

同社が1990年頃に提供した想像図のキャプションによると、「EC-5Bは現在および将来のすべての(指揮、制御、通信)ミッションエレクトロニクス、戦闘スタッフ、サポート要員、消耗品、車両、保守機器、予備品を収容できる」とある。

同機の構想は、1963年から就役していたルッキング・グラスの基本能力を引き継ぎ、改善したものだった。EC-135Cは、KC-135タンカー含むC-135シリーズの多様なバリエーションで、ボーイング707旅客機の親戚であった。

 

EC-135Cルッキング・グラス。, USAF

ロッキードは、最大の競合相手から契約を奪い取ろうと躍起だった。当時生産中のC-5Bを利用することで、ボーイング製品で実現できないメリットを提供しようとしたことは明らかだった。

EC-5Bコンセプトは、後部に空中給油ブームを装備している。長距離通信装置とともに、緊急時に限定的ながら空中給油機能を果たすため、EC-135C全機にもこの装置が搭載されていた。奇襲攻撃で支援機が吹き飛ばされた場合や、反撃に追加タンカーが必要になった場合、警戒態勢を維持するため重要になっていたかもしれない。

しかし、ボーイング機と異なり、ロッキード提案は、空でも地上でも機能を発揮できる機体の想定だった。KC-135は、輸送用で最大83,000ポンドの貨物を搭載できたが、C-5Bはその3倍以上の積載が可能だった。

その結果、貨物を搭載したEC-5Bは、「小規模で条件の悪い分散飛行場から長期間にわたり自律運用する生命維持装置」用のスペースを持つと、キャプションは述べている。つまり、航空機を安全な遠隔地に着陸させ、外部からの支援なしに作戦継続ができる。C-5の巨大なサイズは、核危機や核兵器による応酬の際に長時間加圧状態のまま運用でき、理論的には遠隔地の地上に待機できる利点がある。しかし、C-5の任務遂行能力達成率の低さは有名で、再び空へ舞い戻れるかは微妙だったろう。

結局、空軍はロッキード提案の超大型飛行指揮所の購入を受け入れなかった。1990年7月24日、空軍はルッキング・グラスの継続ミッションを中止し、EC-135C部隊を24時間警戒態勢で地上待機させた。

標準仕様のC-5B、米空軍 USAF

その後、国防総省は1998年に、米国戦略軍(STRATCOM)の任務拡大として、ボーイング707派生型の米海軍E-6Bマーキュリーに任務を引き継がせた。それまで海軍の航空司令機は、核攻撃で通信システムが破壊された場合に弾道ミサイル潜水艦への連絡を維持する任務のみ担当していた。この任務はTACAMO(Take Charge and Move Out)と呼ばれる。

国防総省は、707派生型がいよいよ寿命の終わりを迎えることを認識している。海軍は1989年にE-6A初号機を受領し、8年後に全機をB型に転換し始めた。ボーイング707派生型ではE-6が最後の機体となった。E-6Aは、通信機器含む各種システムとともに、ミサイル部隊に発射命令を出す空中発射制御システムも搭載している。

ボーイングが2003年に完了したE-6の最終アップグレードで、マーキュリーは2038年まで使用可能となった。空軍は、E-3空中警報管制システム(AWACS)、E-8統合監視目標攻撃レーダーシステム(JSTARS)レーダー機、OC-135B オープンスカイ監視機を2040年以前に更新したいとする。2018年までには、ボーイングの新型タンカーKC-46AがKC-135に交代しているはずだ

E-6Bは2003年以降に細かいアップデートを受けている。2014年、パトリック空軍基地に着陸したE-6Bは、新しい通信アンテナを収容するためと思われる追加ドームを装備していた。2017年2月7日には、3つの新しいアンテナ・レドームのセットをテストした後、カリフォーニア州のエドワーズ空軍基地を出発した機体があり、これがおそらく標準となる修正内容だろう。

 

E-6Bの最新改修では、外側のモールドラインが変更され、上下にコブがついた。 USAF

一般に新しい航空機の開発と試験には時間がかかる。E-6のような重要任務の特殊機材では特にそうだ。

 「2038年までわずか20年で、指揮統制機能の大型機を作るのなら、今すぐ企画を開始する必要があります」と、STRATCOMトップ、ジョン・ハイテン空軍大将John Hytenは、2017年3月8日に記者団に語っていた。「海軍が始めている。次期機材の定義で検討の開始を要請しました」。

ハイテン大将はまた、空軍が海軍と組んで、E-6Bのアップグレードや代替機材の最終的な姿を考えるの賢明だと示唆した。「空軍側の要求、つまり機のサイズや形状、能力、耐久性などと非常によく似た任務だ」と語った。

両軍とも、核爆発からサイバー攻撃まで、あらゆる脅威から安全な最先端の通信・防御装置を備えた機体を望んでいるのは間違いない。マーキュリー後継機には、飛行コストを抑えつつ耐久性を高めるため、これまで以上に燃費の良いエンジンも必須となる。

ロッキードは、他企業と提携して代替案の提供もできるが、このミッションに対応した機体を自社で製造していない。ギャラクシーの生産が終了して久しく、現在も飛行中の機体は、近代化改修ずみC-5Mは運用コストが高いことため、EC-5空中指揮所構想が実現することはないだろう。■

 

Lockheed Once Pitched the Massive C-5 as a Flying Command Center

BYJOSEPH TREVITHICK| UPDATED JUL 3, 2020 4:15 AM

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