2023年1月3日火曜日

中国の新鋭大型ISR無人機WZ-7が南西部に姿をあらわし、航空自衛隊がスクランブル発進を2日連続で実施。情報戦は続いている。

 

Japan MOD

 

ダイヤモンド翼の中国無人機「WZ-7 Soaring Dragon」がここに来て運用を拡大しているのは、今後の予兆と思われる

 

 

国のWZ-7偵察機が東シナ海上空に2日連続で現れ、日本の戦闘機が毎回スクランブル発進した。中国最新鋭の無人機「WZ-7」の迎撃を日本当局が発表したのは初めてで、同海域に展開した空母「遼寧」機動部隊と関係がありそうだ。結合翼というユニークな設計の同機は情報・監視・偵察(ISR)無人機としてRQ-4グローバルホークに匹敵する能力を提供し、広い地域で常連になる可能性は十分にある。

 1月1日、防衛省は、現地時間午前から午後にかけて、WZ-7(別名「Soaring Dragon」)1機が東シナ海で活動したと明らかにした。防衛省発表によると、偵察機は東シナ海上空に現れた後、沖縄本島と宮古島を隔てる宮古海峡を通過した。フィリピン海を通過した後、同機は先島諸島の南、さらに西に飛行し、その後、コースを反転し沖縄本島に向かった。

 

防衛省による1月2日出撃のWZ-7の飛行経路。前日のドローン飛行もほぼ同じ経路をたどった Japan Ministry of Defense

 

 

これに対し、日本の防衛省は、航空自衛隊の南西航空部隊の戦闘機がスクランブル発進したと確認した。未確認情報によると、F-15Jイーグル戦闘機が関与したという。 

過去2日間のドローンによる傍受に関連する島のおおよその位置。 Google Earth

 

 

本日、防衛省は別のWZ-7ドローンによる活動を発表した。同じ時間帯に、東シナ海からフィリピン海へほぼ同じ経路を飛行し、沖縄やその他の日本の離島に接近した。日本領土や日本の排他的経済水域にどれだけ接近したかは不明だが、WZ-7が国際空域を離脱した形跡はない。さらに西には、日本最西端の与那国島があり、台湾東海岸のすぐ近くであることも注目に値する。最近、日本が地対空ミサイル防衛部隊を同島に配備する計画を発表し、中国にとって関心が高まっていると思われる。

 一方、防衛省は、空母「遼寧」が1月1日に宮古海峡を通過したと明らかにした。フィリピン海から東シナ海に通過した艦隊は、人民解放軍海軍の055型駆逐艦「鞍山Anshan」と「無錫Wuxi」、052D型駆逐艦「成都Chengdu」、054A型フリゲート「左庄Zaozhuang」、901型高速戦闘支援艦「胡潤湖Hulunhu」を従えていた。防衛省によると、先週水曜日から土曜日にかけて、遼寧は延べ約20機の戦闘機の発進と回収、延べ約40機のヘリコプター離着陸を含む飛行作戦を実施した。また、空母戦闘機の活動に呼応して、航空自衛隊の戦闘機がスクランブル発進した。一方で12月17日から31日にかけて、PLAN空母は戦闘機とヘリコプター合計で約320回の離着艦を行ったと防衛省は明らかにしている。

 WZ-7は、菱形の主翼と垂直尾翼の基部で結合したデザインが特徴だ。2011年に技術実証機として登場して以来、デザインは大きく変化し、2013年末には垂直尾翼が斜めになった改良型として再登場した。貴州飛機工業公司Guizhou Aircraft Industry Corporationが生産するこのドローンは、2021年珠海航空ショーで一般公開された。

 

ソアリングイーグルの原型機 Chinese Internet

 

2022年11月に珠海で開催されたエアショー・チャイナで、高度に洗練され運用されるWZ-7。Infinty 0/Wikimedia Commons

 

WZ-7はジェットエンジン搭載で、推定航続距離は4,350マイル、実用最高高度は約6万フィート。滞空時間は不明で、少なくとも10時間と思われるが、通常の長時間ミッションでもそれよりもはるかに高くなる可能性がある。この曖昧さは、例えばRQ-4グローバルホークと比較すると、高高度・長時間飛行(HALE)のカテゴリーではやや劣ることを意味する。しかし、高高度性能と大きなセンサー積載量により、国際空域から地域の敵対国の深部を覗くのに十分適している。さらに大型で飛行性能も高いため、今後数年で増大する中国のHALEニーズに対応することになりそうだ。また、ステルス型も考えられる。

 WZ-7はPLANとPLAAFの両方が使用しており、PLAAFでは、チベット周辺でインド国境を窺う用途が目立つ。また、北朝鮮国境に近い戦略拠点である宜春屯基地Yishuntun Airbaseから飛行することもある。

 航空自衛隊はこれまでWZ-7を迎撃したことはないが、東シナ海や宮古海峡を飛行する中国の無人機に対応するため戦闘機をスクランブル発進させることはこれまでも多数ある。以前、TB-001とBZK-005という中高度・長時間滞空型(MALE)ドローンが活動を行っていた。

 中国の海上哨戒機や電子情報機も同様のルートを飛行しており、日本も2021年に空母「遼寧」部隊など、宮古海峡を通過する中国海軍の艦艇を監視している。

 同型ドローン対応の迎撃は、中国軍が進めている無人航空機能力の急速な発展を物語っている。東シナ海とフィリピン海、さらに西太平洋を結ぶ海上交通路として、同海域の戦略的意義は明白だ。

 しかし、WZ-7は、TB-001やBZK-005と比べ、能力が拡大している。サイズが大きいので、長時間、遠隔地まで、マルチセンサーによる情報収集が可能だ。また、高高度運用でセンサーの到達範囲も広がり、視線外の接続能力も向上している。これは、空母含む海軍の機動部隊のネットワーク構築にも活用できるかもしれない。

 全体として、WZ-7の性能とセンサーの適合性に関する具体的な詳細情報はまだ少ないが、同無人機は、非常に戦略的な宮古海峡周辺などで情報を収集する非常に効率的なプラットフォームを中国に提供している。先週、台湾の防空識別圏(ADIZ)に入った有人航空機ドローン計71機(台湾国防部発表)にWZ-7も入っていた。

 宮古海峡周辺でのWZ-7が、遼寧機動部隊の動きと関連している可能性は高いと思われるが、確証はない。新たな空母を建造し遠くへ兵力投射する全体的な能力を向上させるにつれて、空母運用を中心にPLANの外洋海軍への野心の高まりはますます大きくなっていくだろう。中国海軍の空母群が西方へ作戦を拡大すると、無人偵察機の活動も増加する可能性が高い。

 いずれにせよ、宮古島海峡通過の前後でWZ-7が待機していれば非常に有用な能力となる。例えば、日本や外国の軍艦の動きを監視したり、中国空母艦隊に対応する敵のレーダーや通信システムからの電子放射を収集し、カタログ化できる。さらに、高解像度のレーダーマップを作成し、目的の船舶の画像を収集することも可能だ。また、無人機に対する航空自衛隊の対応を監視し、対応時間や戦術、技術、手順などのデータを提供することも重要な要素となる。また、こうしたドローンは、下方の空母群に重要なデータ中継機能の提供もできる。

 今後、WZ-7が海峡上空や周辺に出現し続けるのか、最近の遼寧の動きと関連した一時的な活動なのか、興味深いところだ。中国メディアは、同空母が米軍の重要拠点グアムにこれまでで最も近づいたと報じている。そのため、WZ-7の投入はさらに太平洋の彼方で見られるかもしれない。

 いずれにせよ、この2日間のWZ-7の出現は、中国の無人機能力の変化のスピードと、人民解放軍全体が現在、非常に高度で異例なデザインの装備を提供している事実の証明だ。極めて戦略的なインド太平洋地域で緊張が高まり続ける中、特に中国が自国を遠く離れての軍事作戦を拡大し続ける中、WZ-7のような無人機の重要性は今後ますます高まっていくと思われる。■

 

Japanese Fighters Intercept China's High-Flying WZ-7 Drone For First Time

 

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED JAN 2, 2023 1:55 PM

THE WAR ZONE

 



2023年の展望② 中共はCOVID-19でつまづき、国内は今年大きな変動に包まれる。習近平体制が盤石と思ったら大間違い。

 2023年令和5年の干支は「癸卯」で何かが終りを迎える、何かが始まる予兆の年といわれます。昨年末の突然の北京のコロナ政策方針変換について、例によって国内メディアは表面のみ伝え、中国に取って触れられたくないものには口を封じているようですが、容赦ない西側メディアに北京は逆ギレしていますね。(Know Your Enemy最新記事を御覧ください)。いつも言っているように目に見える事象とは思考の結果で、中共のあまりにも異質な思考が今回の結果を招いていると言っても過言ではありません。自らを毛沢東にダブらせたい習近平ですが、任期途中での退陣あるいは消滅もありえ、偉大なる中華民族の夢が文字通り絵に描いた餅になりかねません。大陸は今年大きな変動の波につつまれるでしょう。

1945の記事で、中国ウォッチャーのゴードン・チャンが中共にとって都合の悪い観察を伝えています。

 

China's Xi JinpingChina's Xi Jinping

 

習近平はCOVID-19に屈した。

 

 

シンガポール経営大学のヘンリー・ガオHenry Gaoは、中国の支配者習近平が、世界で最も厳しい一連の疾病管理措置である「ダイナミック・ゼロ・コビット政策」を突然覆したのは、自身のプロパガンダを信じ、事態の処理への政権の能力を過大評価していたためと論じている。

 その余波は恐ろしいものになる。科学陣は今冬に中国で8億人が感染すると予測している。また、11億人の予想もある。オタワのマクドナルド・ローリエ研究所のチャールズ・バートンCharles Burtonが1945に語ったように、「病気と悲惨な死の大波が中国全土に広がっている」。

 ガオが考えるように、習近平は政策を誤ったのだろうか。

 実は習近平は何も「決断」していない。むしろ、習近平は病気に屈服しただけと見る方が正しい。

 なぜか。

 そもそも、習近平の政策は封じ込めに失敗していた。世界保健機関(WHO)は、現在の中国の患者数の「爆発的増加」は、ゼロCOVIDを放棄した結果ではないと考えており、リークされた中国の患者数は、国際機関の主張を支持する傾向にある。

 また、共産党と中国中央政府は、防疫体制を運営不能になっている。第一に、中国国民が10月末からの異常な抗議行動を通じ、今後3年の習近平の苛政を受け入れないと明らかにした。 

 第二に、「ゼロCOVID」実施のコストで大半は自治体が負担し、余裕がなくなった。首都北京でさえ、予算が底をついていた。

 第三に、習近平の政策は、中国経済を急速に、より深く収縮させた。ゼロCOVIDは極端な方法で実施され、生産と輸送の両方に大きな支障をきたし、工場も中国から逃げ出した。

 習近平のやり方が破滅的であることは明らかであったのに固執した。10月16日に開催された第20回共産党全国代表大会の冒頭、2時間近くに及ぶ演説「工作報告」で、方針を倍加させた。

 その結果、習近平は党内でも支持を失った。元英国外交官で『China Coup』の著者ロジャー・ガーサイドRoger Garsideは、「敵対勢力は彼に屈辱を与えた」と指摘する。

 習近平がわずか数週間前ほど強力でないのを示す兆候は他にもある。今月開催された中央経済工作会議で習近平の看板政策「共同富裕」計画が破棄されたようだ。

 習近平が共産党への支配力を失いつつある一方で、共産党は幹部への支配力を失いつつある。事例を紹介しよう。12月23日、米英のメディアは中国の国家衛生委員会の秘密審議を詳細に報じた。内容は衝撃的だった。議事録によると、12月20日に3700万人近くがこの病気に罹ったとある。今月最初の20日間で約2億4800万人がCOVIDに感染した。Bloomberg Newsは、この大流行を 「圧倒的に世界最大」と呼んだ。文書が流出し、オンラインで公開されている。驚くべき開示は、当局者があまりに嫌気がさして、自分たちの党の国家を弱体化させることにしたのを示唆している。

 中共はパニック状態にあるようだ。容赦ないプロパガンダは、不可能を可能にしようとしている。ゼロCOVID政策とその完全かつ突然の放棄の両方を、賢明なものとして描写している。ガーサイドは、「ゼロCOVIDシナリオは、今や変化した」と1945に語っている。

 では、明らかな結果から、中共はどのように逃れるのだろうか。

 ガーサイドも指摘するように、戦略は、災難を他人のせいにすることだ。「下級役人、ワクチン製造者、外国勢力」だ。12月下旬、「中国外務省は再び群狼モードに入り、党のゼロCOVID政策の終了に関する混乱した処理について『誇大広告と歪曲』として『西側』ニュース・メディアを攻撃した」と指摘した。

 党は、自らを歴史の必然的な力を代表した存在と信じこんでおり、自らの批判はできない。中国人民には党は常に無謬で、「偉大で、栄光があり、正しい」と言っている。このような考え方が、不合理で明らかに誤ったプロパガンダの語り口、「極端な偽り」を生んでいるとバートンは指摘する。「プロパガンダの機械は残業している」と著者に言った。

 「民主的であれ独裁的であれ、どの政治体制でも、トップリーダーの看板政策が放棄されたとき、変更を自分が決定したかのように見せかけ、権威を維持しようとする」とガーサイドは観察している。「習近平はそれをしていない」。

 つまり、習近平は失敗したのだ。その結果、中共上層部で激しい内紛が起きているようだ。

 中国は不安定な様相を呈している。■

 

The Chinese Communist Party Has Surrendered to COVID-19 - 19FortyFive

ByGordon Chang

 

 

A 19FortyFive Contributing Editor, Gordon G. Chang is the author of The Coming Collapse of China. Follow him on Twitter @GordonGChang.

In this article:CCP, China, Chinese Communist Party, COVID-19, featured, Gordon Chang, Xi Jinping

 


2023年1月2日月曜日

F-35は何がすごいのか、第四世代機とどこがちがうのか、パイロット3名に聞いてみた

 

 

F-35は25mm機関砲、第5世代ステルス、そして比類なき「センサー融合」を備えている。Warrior MavenのKris OsbornがF-35戦闘機パイロットにインタビューした。

 

 

F-35は25mm砲を搭載し、第5世代ステルス機として飛行し、まったく新しい世代の空対空・空対地兵器で攻撃するが、その最大の特徴は、よく言われる「センサー融合」あるのではないだろうか。

 

F-35の兵装

最近行ったF-35パイロット3名へのインタビューでも一貫して強調されていた。ロッキード・マーチンのF-35テストパイロット、クリス・"ワーム"・スピネリは、最大の特徴は 「データ統合」だと語っている。

 

F-35のデータ統合とは

「以前乗っていた第4世代のF-16と、F-35での数時間の飛行との最大の違いは、データ統合とデータ管理能力だ。F-35は非常に優れた状況認識能力を備え、これまで操縦したどのプラットフォームよりも優れています」とスピネリは言う。

 このような技術的プロセスの利点は確かに自明だが、「センサー融合」は見過ごされがちな戦術的ダイナミクスをもたらしてくれる。F-35は、パイロットを「真の戦術家」に変える。現在、ロッキード・マーティンで戦闘機飛行作戦主任(F-35テストパイロット)を務めるトニー・"ブリック"・ウィルソンは、F-35パイロットインタビューで、こう語ってくれた。

 「センサー融合で、パイロットの作業負荷が軽減され、パイロットに状況判断のバブルが生まれ、単なるパイロットではなく、センサー管理者でもなく、真の戦術員になるのです。パイロットに余裕があることで、生存率が高まり、殺傷能力も向上します」とウィルソンは言う。

  戦闘機は、高度、航行軌道、速度、時間的制約のあるデータおよび武器情報の収集と処理の必要性など、明確かつ管理可能な多くの変動要因に合わせて運用される。

 F-35は、次世代EW兵器群、アップグレードされた空対空攻撃ミサイル、長距離照準センサー、ミッションデータファイル、敵ターゲット「識別」用の脅威ライブラリで武装しています。センサーフュージョンはこれらすべてを「断捨離」すると、ロッキードマーチンでF-35生産・訓練パイロットを務めるモネッサ「サイレン」バルジザーはインタビューで話している。

 「ディスプレイの素晴らしいところは、見えるものと見えないものをコントロールできることで、必要なものをすべて表示できるので、味方や空対空、空対地の統計、航法ポイントなど、高度な情報を見ることができるのです。そのため、パイロットがどれだけすべてのデータを処理できるかが問題になります。なんといってもデータは大量で、常に動的だからです。機内のあらゆるセンサーから、常にリアルタイム情報が提供されます」とバルジザーは言う。

 

Monessa “Siren” Balzhiser

Monessa “Siren” Balzhiser

Lockheed Martin

 

F-35の 先進電子走査型アレイ 

F-35 Advanced Electronically Scanned Arrayは、敵を破壊するため、脅威となる物体を認識し、長距離赤外線ターゲットセンサーで描写し、搭載された脅威ライブラリデータベースがターゲットを明確に特定し、精密誘導兵器が攻撃を行う。

このプロセスの最後には、パイロットが迅速かつ果断に行動するための単純な「決定」が待つ。

 「意思決定者のパイロットにとって、ゲームを変える最大の違いは、F-35が機体のあらゆるセンサーを融合・統合していることです。F-35は、航空機の各種センサーを融合・統合し、全体像を描き出すのです。これは、第4世代のプラットフォームではできなかったことです」とスピネリは言う。

 融合プロセスは、高度なコンピューティングの副産物として意図された。空軍の元チーフ・サイエンティストは、数年前の在職中に、F-35のセンサー融合は実はAIの初期段階であると教えてくれた。高度なコンピュータアルゴリズムは、一連の自動化機能を実行し、多くの手続き的な分析作業は、人間の介入なく実行できる。

 これでパイロットの「認知的負担」を軽減し、人間の認知が必要なより重要な作業にパイロットを解放するだけでなく、受信データの別々のプールを相互比較し、結論を導き出すことができる。

 

F-35と AI

膨大なセンサーデータを収集受信し、膨大、あるいは無限に近い量の情報を数秒で解析し、問題解決し、衝撃を与え、各種変数を整理し、それらをどのように適合し、統合し、あるいは単に影響を及ぼすのかという観点から、AI対応システムを機能させることができる。

 例えば、速度や高度は、航法や照準に影響を与える。脅威データは、接近速度を決定し、特定の脅威に最適な武器を決定する。AIを搭載したコンピューティングは、これらの機能の多くを自律的に実行し、変数を既存の情報や過去の事例と比較して、意思決定者に推奨事項を提示する。

 

F-35とF/A-18、F-16、F-15EXとの比較

F-35の長期的なメンテナンスの課題、運用・維持コスト、ロジスティクスの複雑さなどに関する議論、論争、批判が渦巻く中、F-35とF/A-18、F-16、あるいは大規模改良されたF-15EXといった第4世代戦闘機とどの程度違うのかと、多くの人が考えるのではないだろうか?

 F-35の差と優位性は、長期的なコストに関する懸念を正当化できるのだろうか。

 もちろん、F-35の製造が進むにつれてコストは低下し、多くの第4世代戦闘機を必要とする任務をF-35がこなすようになれば、批判的な意見と異なる財務状況が出てくる。

ロッキードと国防総省は、コストについて取り組んでおり、大きな成功を収めていると言われている。第4世代戦闘機を大量に必要とする任務で投入する戦闘機の数が少なくて済むというコスト削減と合わせて、ロッキードと空軍が生産の合理化と高度化に取り組み、1機単価を大幅に引き下げることによって、予算が節約されている。

 しかし、純粋に性能だけで検証すればどうなるか。F-35はどのくらい優れているのか?

 これは、事情を知るべき立場の人に尋ねればよい。そこで、第4世代機とF-35の両方で操縦経験があるF-35パイロット3人に話を聞いた。各パイロットは、戦争シナリオでF-35運用がいかに異なるかを、ユニークかつ経験豊富な視点で語ってくれた。

 各パイロットのコメントは、センシング、データ融合、操縦性、ミッションインテリジェンスデータなど、重要なテーマで一致している。

 

視界外でのF-35 

F-35の女性パイロット、モネッサ・"サイレン"・バルジザー(ロッキード・マーチンのF-35生産・訓練パイロット)は、インタビューで次のように語ってくれた。「目視の範囲外での攻撃・破壊能力は、F-35ならではの大きな利点です。

 「F-35には素晴らしいレーダーがあり、敵に発見される前に目視範囲外から撃てる。これは第5世代戦闘機の大きな利点です」と彼女は言う。バルジザーは、これを「ファーストショット、ファーストキル」という言葉で表現した。

 視線距離を超え攻撃できることに加え、F-35は接近戦もこなす可能性があり、センサーは更新された位置情報を提供する。

 

F-35の戦術空域での優位性

F-35のテストパイロット、クリス・ワーム・スピネリは、空軍で24年間、F-22やF-16戦闘機に乗り、ロッキードに入社した。F-35の技術は、空対空戦闘で生死を分ける敵との位置関係を、パイロットにまったく新しい形で理解させてくれると、言う。

 「第4世代戦闘機の空対空戦闘では、敵機の追撃を生き残るために発射し、機動するす。私自身、ラプターF-22でF-16で戦った経験から言えるのは、見ることにとてもイライラするということです。正直なところ、(敵機を)見ることさえできないし、何が起こっているのかもわからない」とスピネリは語った。

 スピネリは、F-35は、航空戦で周囲の状況を知る必要のあるパイロットにとって、まったく異なる「戦術的空気」のイメージや「メンタル・モデル」を生み出すと語った。

 「第4世代機では、精神的にモデルを構築し、判断を下さなければならないのです。もちろん、空と地上の脅威やその他の脅威に関する脅威環境がどれほど密集しているかで、それは困難なものになります。これは、F-35と対照的です。F-35では、海外情報源からも情報を得て、自分の搭乗機でより大きな画像を見られます」とスピネリは言う。

 空での勝利では、元戦闘機パイロットのジョン・ボイド大佐提唱の「OODAループ」が、今も使われている。「観察、方向づけ、決断、行動」で、敵より速く決断の「ループ」サイクルを完了できるパイロットは.空中で敵を撃破できる。OODAループを高速化し、合理化し、指数関数的に改善することが、F-35の優位性を決定づける最重要の要素であることは間違いない。

 スピネリのF-35操縦の経験は、もちろん機体のセンサーデータ処理速度やデータフュージョンを活用したもので、ボイドのOODAループと完全にコンセプトが一致している。

 F-35は、「自分が持つ知識や情報だけで良いのですから、そこが大きな違いです。F-35は、状況に応じて正しい、あるいは適切な戦術的判断を下し、敵の攻撃に対し自分の攻撃が成功する確率が最も高いタイミングで実行できる意思決定を可能にします」とスピネリは語っている。

 

F-35のセンサー融合

スピネリの言う「戦術航空」のイメージは、F-35の搭載する各種センサーの情報「融合」で実現される。

 「センサー融合とは、一見バラバラで、無関係に見える情報を、パイロットのために分析し、1つのスクリーンにまとめることだ。基本的にパイロットは、統合画像を得るために異なるセンサーシステムを見て、分析し、比較する必要はなく、機内のコンピュータがそれを行う。

 「F-35のレーダー、電子戦(EW)システム、MADL(Multifunction Advanced Data Link)がすべて統合していることがF-35と従来のF-16やF-18との最大の違いです」とスピネリは述べている。

 興味深いことに、データ融合がコックピット内のノイズを低減し、パイロットが目前の緊急の課題に集中できるようにしてくれる。

 トニー・"ブリック"・ウィルソンは、元米海軍のF/A-18パイロットで、空母運用型のF-35Cにも長い間乗っており、第4世代と第5世代の航空機を比較できる。

 

F-35のコックピット通信とセンサー融合

「コックピット内が静かなのが大きな違いです。脅威の内容にもよりますが、飛行中に発生するエラーの多くは、通信の聞き間違いや、重要な情報の聞き逃しによるものです」。

 騒音や注意散漫の減少の一因は、各システムが集合的に、あるいは統合的に収集、整理、合理化されているためとウィルソンは説明する。

 「F-35では、センサ・スイートを常時携帯しています。しかし、センサー融合が多くの通信を必要としない形でパイロットに情報を提供するため、非常に静かです」とウィルソンは述べている。

 単純化しすぎるのは良くないが、敵ターゲットを見つけ、破壊する能力は、空戦での生死を左右する。この単純な方程式を考えると、パイロット3名は、F-35の最大の利点は、「センサー融合」 にあると同意している。

 「第4世代戦闘機との最大の違いは、電子戦から武器、レーダー、照準ポッド、各種センサーまで、さまざまなシステムを常に管理していることです。第4世代では、コックピットの中で全部を確認するのに100%集中していました...一方、私がF-35では、それがすべて自分のために行われているのです」と彼女は語ってくれた。■

 

What it is Like to Fly an F-35: Interviews with Three F-35 Pilots - Warrior Maven: Center for Military Modernization

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN - CENTER FOR MILITARY MODERNIZATION

DEC 24, 2022

 

 

Kris Osborn is the President of Warrior Maven and The Defense Editor of The National Interest --

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest and President of Warrior Maven -the Center for Military Modernization. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.


2023年1月1日日曜日

空母キラーDF-26弾道ミサイルに米海軍は防御手段を着々と整備している。これも一つのオフセットだ。

 


DF-26

Xinhua

 

 

DF-26は太平洋全域でアメリカ海軍艦艇を攻撃可能だ

 

 

 

中国の「空母キラー」ミサイルは、米海軍空母を中国沿岸に近づけない主要な兵器として、ここ何年話題になっている。

 

DF-26ミサイルとは

DF-26ミサイルは、中国が数回試射し、米空母を破壊する能力を示すことで、不吉な警告を発してきた、中国で最も強力な対艦ミサイルだ。全長46フィート、重量44,000ポンド。

 

ワシントンDCの戦略国際問題研究所は、「DF-26は『モジュール設計』で、ロケットに核弾頭と通常弾頭を搭載できる」と述べている。DF-26の射程は最大2500マイル、積載重量は4000ポンドで、衛星を利用すれば、理論上は西太平洋全域の米海軍艦艇を攻撃することが可能だ。「中国の内陸部から発射されても、DF-26は南シナ海をカバーする十分な射程距離を持っている」と、ある無名の軍事専門家は数年前グローバルタイムズに語っている。

 しかし、海軍高官コメントをよく読むと、この問題に議論の余地があるようだ。この種の脅威の深刻さを疑問視する人は皆無で、中国兵器を真剣に受け止めているのは明らかだが、空母打撃群の防御も着実に進歩していることを考えれば、脅威の表現の一部は「誇大表現」と評価されるかもしれない。

 「空母キラー」について問われた海軍高官は、脅威を否定するのではなく、米海軍の空母は「攻撃に必要であればどこででも活動できる」と明快に述べている。

 当然ながら、艦船防御の具体的内容は、安全保障上の理由で明らかにされていないが、海軍は、「層状」艦船防御技術が急速に成熟していると公に語っている。これには、攻撃用または防御用の艦載レーザーが含まれ、飛来するミサイルを追跡して「焼却」または「無効化」できる。新しい EW アプリケーションは、「ベアリングライン」を検出したり、ミサイルの誘導システムの電子署名を追跡しその軌道を「妨害」できる。

 海軍のHELIOS(High-Energy Laser with Optical-dazzler and Surveillance)は現在、アーレイ・バーク級フライトIIA駆逐艦に搭載されており、さらに陸上と海上でテストと評価中だ。

 また、現在、陸上および海上で試験と評価が行われている。これは、駆逐艦が、敵無人機を光速で正確に焼却、圧倒、燃やしたり、無力化する能力が運用されることを意味する。

 レーザーは静か、低コスト、拡張性があり、正確であるだけでなく、より重要なのは、光速で発射されることだ。新技術が海戦の領域に入り、戦術方程式が大きく変化するにつれ、海洋戦でスピードがますます重要度を増している。

 HELIOSのようなレーザーは、光学要素も充実し、センサーとしてターゲットを追跡し、監視任務の手助けも可能だ。また、レーザーは、艦載砲を補い、精密誘導技術で狭い目標エリアをピンポイントで狙えるため、場合によっては水上艦艇が敵陣に接近することも可能になる。

 ノースロップ・グラマンが主契約者の水上電子線改良事業Surface Electronic Warfare Improvement Program (SEWIP) Block 3では、インバウンド脅威を突き止め、妨害し、混乱させることにとどまらず、敵の通信ネットワーク、データリンク、レーダーシステム、その他の電子ソースに電子攻撃を加え、高度な攻撃的電子攻撃能力と将来は電子戦を情報作戦(IO)と統合する能力を追加することでEW用の技術機能を進化させた。SEWIPブロック3は現在、海軍のDDG-51級駆逐艦に搭載する設計で、今後数年で運用を開始する予定と、ノースロップ開発者は説明している。また、海軍の新型フリゲート艦も高度なEWシステムを搭載する設計だと、海軍関係者はWarriorに語っている。

 SEWIPブロック3の EWシステムは、アクティブ電子走査アレイ(AESA)の集合体16個を使用し、ターゲットとなる個別の「ペンシル」ビームを放射する。ノースロップ・グラマンで陸上・海上センサー担当副社長のマイク・ミーニーMike Meaneyは、SEWIP Block3開発の初期段階において、Warriorのインタビューに、「AESAの利点の1つは、重なり合った広いビーム送信ではなく、ペンシルビームを生成できること」と答えている。「ペンシルビームは狭く、焦点が合うため、軌道が速く進むにつれて、必要な場所だけにエナジーを投入できます」。将来のコンセプトは、IOとEWを合成し、情報収集技術をEW攻撃および防衛システムと接続することにある。そのためには、ソフトウェアの継続的なアップグレードと脅威の監視が必要だ。

 EW兵器は、狭い範囲の信号を発信することで、探知性を大幅に低下させる。当然ながら、電子放射が大きく広がれば、敵に発見されやすくなる。事実上、SEWIPシステムは、司令官が「見せたいものを敵に見せる」に限定することを可能にするとミーニーは説明する。

 こうした要素に加え、アップグレードされた「キネティック」ディフェンスや迎撃手段の包囲網で、襲い来る攻撃を排除する。海軍艦艇の迎撃ミサイルは、艦載レーダーや射撃管制装置と連動し、敵の対艦ミサイルや弾道ミサイル、さらに一部航空機を撃破する。艦船搭載型迎撃ミサイルは、駆逐艦や巡洋艦の垂直発射システムから発射され、「階層化」能力を有する。SM-3は最も射程の長い迎撃ミサイルで、長距離弾道ミサイルや最終段階に近づくICBMも追尾でき、特に射程を伸ばし誘導システムを改善した最新型SM-3 IIAで能力はさらに向上する。

 DF-26は、米海軍の迎撃ミサイルSM-6に弱い可能性がある。SM-6は、理論上、発射直後、中国のミサイルが上昇し加速中と、目標に向かって弧を描いて降下する終末期の2段階でDF-26を攻撃可能だ。SM-6のソフトウェアがアップグレードされ、「デュアルモード」シーカーが改良されたことを考慮すると、特に可能性が高くなる。これにより、ミサイルは飛行中にコース調整し、機動可能になり、中国の対艦ミサイルを追跡し破壊する能力を発揮する。

 また、SM-6は「NIFC-CA(Naval Integrated Fire Control - Counter Air)」海軍のネットワークシステムで、「レーダーの地平線の彼方」からやってくる巡航ミサイルの脅威の迎撃もできる。このシステムは、E-2DホークアイやF-35など空中ゲートウェイを「ノード」として使用し、艦載レーダーでは探知不能な距離から接近する脅威を探知し、脅威データをネットワーク送信、または受信し、司令部は遠隔地点からSM-6を発射して脅威を破壊する。このシステムの効果は証明済みで、海軍はNIFC-CAを攻撃用としても開発中である。同システムは、従来到達できなかった距離から移動目標を正確に発見し破壊する能力がある。

また、海軍艦艇は、ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile Block II)という迎撃兵器を搭載し、地表と平行して低空を飛行する巡航ミサイルを迎撃する「シースキミング」モードが可能である。SM-2、シーラム、ローリング・エアフレーム・ミサイル(RAM)は、接近した脅威を攻撃できるが、これらの中には大型対艦ミサイルの破壊能力がないものもある。しかし、敵の小型ボート、ドローン、ヘリコプター、軍艦、銃弾、ロケット弾、砲弾などを標的にできる可能性が高い。艦船防御に最も近いのは、近接武器システム(CIWS)と呼ばれるもので、ファランクス砲は、1秒間に数百の小型金属弾を発射し、エリアを抑圧、防御射撃で「ブランケット」することが可能だ。CIWSは1B型にアップグレードされており、飛来する航空脅威の破壊に加え、小型ボートや水上攻撃など水上脅威の排除も可能だ。■

 

Could the US Navy Destroy Attacking Chinese "Carrier-Killer" DF-26 Anti-Ship Missiles? - Warrior Maven: Center for Military Modernization

 

(Photo by Matt Cardy/Getty Images)

Video Above: Maj. Gen. Pringle Manned-Unmanned Teaming

By Kris Osborn - President & Editor-In-Chief, Warrior Maven

 

Kris Osborn is the President of Warrior Maven - the Center for Military Modernization. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

 

Kris Osborn, President, Center for Military Modernization

Kris Osborn, Warrior Maven - Center for Military Modernization

BY KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN - CENTER FOR MILITARY MODERNIZATION