2023年3月4日土曜日

NGADの実態が一枚のパッチからわかった...?ボーイングがNGADで主導的な立場になっているのか 新センチュリーシリーズでF-101へのオマージュが登場

 


ーイングのファントムワークス部門から出た風変わりなパッチが、空軍の次世代戦闘機のカーテンの裏側を初めて垣間見せてくれたのか...少なくとも可能性はある。

火曜日に、Aviation Week Defense and Spaceの編集者Steve Trimbleは、記事を投稿し、「Voodoo II」と書かれたパッチと「2-o-hunder」とあるパッチの画像2枚を添付した。素人目には、フリーマーケットやミリタリーサープラスストアに散乱している航空パッチとよく似ているが、トリンブルのユニークな経験則からすれば、パッチはかなり多くの情報を提供している。

「Aerospace DAILYは3つの事実を明らかにできる:ここにあるVoodoo IIパッチは合法で、パッチは本物のファントムワークスプロジェクトを表し、プロジェクトは過去4年以内に行われた」とトリンブルは書いている。「プロジェクトの性質も説明できる:Voodoo IIは、ファントムワークスが風洞試験した次世代戦闘機コンセプトの構成だ」。

 さて、トリンブル自身は、このパッチがファントムワークスが毎年行うラピッドプロトタイピングの一つに過ぎないかもしれないと警告しているが、Voodoo IIがそれ以上かもしれないという考えにも、妥当な論拠を述べている。実際、トリンブルの調査によれば、このパッチでアメリカの次期制空戦闘機NGADを初めて本格的に垣間見ることができるかもしれない。

 しかし、この可能性はどこまで信じていいのか、さらに、それが本当なら、NGADプログラムでどんな意味を持つのだろうか。


 Voodoo IIで判明していること


このパッチやNGADプログラムとの関係の可能性はすべて一人の記者から得ている。スティーブ・トリンブルだ。もし読者が航空オタクで、トリンブルの名前を知らなくても、ほぼ間違いなく本人の仕事を目にしているはずだ。防衛ジャーナリズムにおけるキャリアは数十年に及び、1997年にArmy Timesでスタートし、2000年にはMilitary.comの立ち上げに貢献した。2001年には、国際的に評価の高い Aviation Weekに加わり、Jane's Defence WeeklyやFlightGlobalといった他の有名な出版社でも執筆している。

 トリンブルは数々受賞しており、2022年には航空報道部門で最も優れた記者に贈られるDefence Media Awardを、ご存知の方も多いであろうもう一人の航空ジャーナリスト、つまり筆者と分け合うなど、その活動は多岐にわたる。

 トリンブルは非常に信頼できる情報源だが、絶対的ではない。彼は、このパッチとその潜在的な意味合いについて興味をそそる詳細を述べているが、あくまでも大きな「もしも」の話である。

 トリンブルによれば、Voodoo IIの開発は、ボーイングのファントムワークス(ロッキード・マーチンの有名なスカンクワークスに相当)で、過去4年間秘密裏に行われてきた。

 目的は、F-35やF-22のような第5世代戦闘機が4万時間の風洞テストを要するのに対し、4,000時間未満で飛行可能な第6世代戦闘機を開発することにあった。

 トリンブルによると、同社はその実現に成功した。

 しかし、Voodoo IIという名前はどうか。トリンブルは、1954年に初飛行したマクドネルF-101ブードゥーにちなんでおり、当時のいわゆる「センチュリーシリーズ」の2番目の戦闘機を示唆している。ウィル・ローパー前空軍次官補(調達・技術・物流担当)は、2019年に「デジタル・センチュリー・シリーズ」を立ち上げ、デジタルツールを用い、先進的な新型戦闘機の実戦投入のコストと時間を削減すると明言しており、説明は非常に理にかなっている。

 そのため、パッチは、オリジナルの「センチュリーシリーズ」のマクドネル(後にマクドネル・ダグラスとなり、1997年にボーイングと合併)を彷彿させるデジタルセンチュリーシリーズの先進戦闘機の配備を目的としたファントムワークスプログラムと考えても、大袈裟ではないようだ。


エリア51上空を飛行するボーイングのYF-118バード・オブ・プレイ(ウィキメディア・コモンズ)


ステルスで真っ先に思い浮かぶ会社ではないが、ボーイングの低視認性の実績は、競合他社よりも前にさかのぼる。ボーイングは、F-35と契約を争ったX-32を開発しただけでなく、90年代にはYF-118Gバード・オブ・プレイを製造・テストし、エリア51上空でのみ飛行するステルス技術実証機とした。しかし、同社の最も初期のステルス機の設計で、ほとんど忘れ去られている853-21型クワイエットバードは、F-117ナイトホークより10年半近くも前に存在していた。

 ファントムワークスは昨年、アリゾナ州メサに20万平方フィートの巨大な複合材製造施設を新設したが、今のところ、同施設で何を作るかはまだ明らかにされていない。このことは、フランク・ケンドール空軍長官がNGADプログラムは「事実上」エンジニアリングと製造の開発段階に入ったと述べたことと合わせ、ボーイングのブードゥーIIがNGAD契約を勝ち取り、すでに飛行している可能性があることを示唆している。

 しかし、これはトリンブルの憶測であり、事実と異なる可能性があることを再確認しておく必要がある。


センチュリーシリーズ」には、F-100スーパーセイバー、F-101ブードゥー、F-102デルタダガー、F-104スターファイター、F-105サンダーチーフ、F-106デルタダートといった戦闘機がある。


新生センチュリーシリーズ



初代センチュリーシリーズの各戦闘機は、画期的な航空機だった。1954年に就役したF-100から1959年就役のF-106まで、アメリカ初の超音速戦闘機、初めてマッハ2を達成し、初めてレーダー、武器、能力を考慮したシステムとして設計され、初めて核兵器を搭載した戦闘爆撃機もあった。各機は、今日のデジタル・センチュリー・シリーズのように、積極的な技術アプローチで生まれた。

 しかし、2つの戦闘機シリーズのつながりは別にある。1960年、ランド・コーポレーションは、リーランド・ジョンソンによる「センチュリー・シリーズ・ファイター」と題した研究を行った。ジョンソンは、初代センチュリーシリーズの戦闘機に顕著な特徴2点を指摘している。1つ目は、真に最先端技術を活用した戦闘機を実用化する際に内在する不確実性の高さで、これは今日のプログラムとほぼ同じだが、2つ目は、空軍と海軍が次世代航空支配プログラムで議論していることに直接つながるもので、ある戦闘機で開発した部品が「当初計画していなかった機体にうまく使用できることが多く非常に柔軟である」事実だ。

 ジョンソンは、センチュリーシリーズ戦闘機用に開発されたサブシステムが、しばしば他のシステムで高度な「適用性」を示したと説明し、場合によっては、技術的課題を克服したシステムが各種プラットフォームで活用できるようになるまで、サブシステムを独自に開発する方が理にかなうのを証明したと付け加えている。

 NGADは、新型の航空優勢戦闘機の実戦配備を目指すだけでなく、F/A-XXで開発中の海軍戦闘機まで視野に入れた取り組みであることを読者はご承知だろう。

 空軍と海軍は、それぞれのニーズに合わせた別の戦闘機を配備する意向だが、国防総省関係者は、全体コストを削減するだけでなく、将来の改良を合理化するため、モジュール式サブシステムを多数共有すると繰り返し述べている。


Image courtesy of Rodrigo Avella



NGADについて、どこまでわかっているのか?


 

 アメリカ空軍のNGADは、次世代の航空優勢戦闘機の開発をめざしている。目標は、今後数十年にわたり敵空域を支配できるプラットフォームを開発することだが、より直接的な意味では、伝説のF-22ラプターをしのぐ戦闘機の開発を意味する。

 空軍当局は1997年から飛行しているラプターが、能力向上の点で限界に近づいていると認めている。空軍当局は、ラプターとNGADのギャップを埋めるため約110億ドルを投じてアップグレードを続けているが、F-22は早ければ2030年には過酷空域で生存が不可能になると見ている。

 「この問題から逃れるためのF-22の近代化は不可能...」と、空軍将来装備担当の副参謀長S.クリントン・ハイノート中将は説明した。

 F-22の後継機として、「Air Superiority 2030」や「Penetrating Counter-Air」などが、2014年まで遡り、多様な呼称で行われてきたが、2018年には、プログラムの前提が、生産機に先立つ研究開発のに集中したコンセプトに煮詰まり、NGADの名称が誕生した。それ以来、この取り組みは秘密のベールに包まれたまま継続されており、空軍関係者はなかなか手の内を見せず時折最新情報を提供している。

 しかし、秘密主義にもかかわらず、NGADプログラムは全速力で進展している。2018年から2022年の間に、空軍はプログラム開発に25億ドルを投資したと報告されており、2025年までに90億ドルに増加する。

 世界最高峰の戦闘機の性能を超えるのは容易ではないが、NGADは斬新なアプローチをとっている。空軍は、1対1のドッグファイトでラプターに勝てる戦闘機を1型式導入するのではなく、高能力の搭乗型戦闘機とAI対応のドローンウィンマン群を組み合わせた「システムファミリー」導入を目指している。

 しかし、国防総省資料によると、このドローンウィングマンは、NGADの包括的目標の4分の1に過ぎないとある。残る3つは、先進的な推進システム、新複合材料、先進センサーだ。

 過去数年間に空軍や防衛関連企業が発表したレンダリング画像から、新型戦闘機は、垂直尾翼含む古典的な戦闘機の設計要素を省略していることもあり、現行ステルス機を上回るステルス性があると見られる。言い換えれば、NGADの有人型戦闘機は、現在のドッグファイターより、新鋭ステルス爆撃機とのほうが共通点が多いかもしれない。

 これは、アメリカの次期トップクラスの戦闘機において、ダイナミックなドッグファイト性能より、センサーリーチ、データフュージョン、高度な武器能力へのシフトが重視されるのを示唆しているのか。米国議会調査局が昨年作成したNGADプログラム報告書が、まさにそのように説明している。

 「B-21のような大型機は、戦闘機のような機動性はない。しかし、指向性エネルギー兵器を搭載し、その兵器のために大電力を生み出す複数エンジンを備えた大型機は、多くの空域で制空権を獲得すできる」。(「空軍次世代航空支配計画」議会調査局著、2022年6月23日)


(U.S. Air Force render)



NGADはドッグファイターでなくても、ホットロッドになる可能性はある


 新型機は推力偏向制御のF-22ラプターのようにダイナミックな航空ショーは行えないかもしれないが、だからといって新型戦闘機が性能面で劣るというわけではない。

 2020年、前述のウィル・ローパーは、空軍がNGAD戦闘機の「フルスケール飛行実証機」を飛行させていると世界に明らかにした。ローパーは詳しく説明しなかった、その航空機が「記録多数を破った」と付け加えていた。

 しかし、NGADや海軍のF/A-XXのようなプラットフォームが克服すべき課題を考えれば、記録の一部は候補になる。最たるものが、太平洋上での戦闘での「距離の暴力」への懸念だ。

 つまり、次に登場する戦闘機は、間違いなく戦闘半径が大幅に拡大されるはずだ。そのため、効率的な新型エンジンと、大きな機体、多くの燃料を貯蔵できる機体が必要となる。

 しかし、航空優勢戦闘機には長距離性能だけでは不十分で、高速で相手との距離を縮めることも必要だ。スーパークルーズは、燃料を消費するアフターバーナーを使わず超音速を維持する能力を指す。ラプターはマッハ1.5超でスーパークルーズすると言われているが、より長い距離で効果を発揮するために、NGADはそれ以上の速度を発揮できるようになりそうだ。また、高速機と相性の良い、超高度飛行も可能になるはずだ。

 そのため、ローパーが言及した記録は、このクラスの航空機の無給油航続距離、超低空飛行の持続速度、上昇限界、あるいは最高速度..もっと劇的な、空気取り入れ指揮航空機全般の記録であったのかもしれない。

 もちろん、供用中機材の記録とは大きな違いがある。史上最速のアメリカ軍戦闘機はF-15Cで、公開されている最高速度はマッハ2.5以上、上昇限界は65,000フィートだ(ただし、F-22がいずれかを上回っている可能性もある)。しかし、どのアメリカ機にも勝つということは、SR-71の最高速度マッハ3.2以上、使用高度85,000フィートを上回るということだ。

 それは...ありそうでなかった...しかし、楽しみではないか。


テキサス州バーグストローム空軍基地のマクドネルF-101A(S/N 53-2425)。(米空軍撮影)


Voodoo 初代機から何を読み取れるか


 もしボーイングがNGADをVoodoo IIと名付けたのであれば、決定はマーケティングを念頭に置いたもので、歴史的な言及をストーリーテリングのツールに使い、設計の強みや能力を強調することと思われる。では、ボーイングが宣伝材料として国防当局や議員の心に刻みつけたいと思うような、オリジナルのブードゥーの決定的な長所や能力は何だったのだろうか。

 F-101ブードゥーは、1948年に登場したマクドネルXF-88ブードゥー試作機を改良したものだ。当初は爆撃機護衛を目的としていたXF-88は、燃料貯蔵量を増やすため胴体を長くし、大型ターボジェットエンジンのためにエンジンハウジングとインテークを再設計するなど、大幅改良された。F-101ブードゥーは、爆撃機の護衛から核爆弾の運搬まで、さまざまな任務が期待できる「戦略戦闘機」に分類され、1954年9月に供用開始した。

 ブードゥーの2番目の生産型F-101Bは、内部のロータリーベイに非常に興味深い空対空兵器を搭載した2人乗りモデルで2発のAIM-4Aセミアクティブ・レーダー誘導ミサイルと2発のAIM-4B赤外線誘導兵器を搭載して飛行した。ミサイルが発射されると、ロータリーシステムが反転し、次のミサイルが発射位置に配置される。

 しかし、この装備は後にAIM-4C赤外線誘導ミサイル2発とAIR-2ジニー核ロケット2発に変更され、間違いなく、米国やその同盟国が実戦投入した中で最も非常識な空対空兵器となった。この核ロケットは、ソ連の爆撃機編隊を一度に破壊する狂気の装備だった。

 しかし、F-101Bが敵機に核ロケットを発射する能力ではなく、ボーイングはVoodooの画期的で記録を打ち立てるスピードスターとしての評判を利用している可能性が高いようだ。これは、NGAD飛行実証機がすでに「多くの記録を破った」というウィル・ローパーの主張にさらなる意味を持たせています。

初代のVoodooは、1957年にロサンゼルスからニューヨークを7時間以内で往復する大陸横断速度記録を樹立した。その約1ヵ月後、別のF-101Aがカリフォルニアのモハベ砂漠上空で1,207.6mph(時速1943.4km)の絶対世界速度新記録を樹立した。

 ボーイングのウェブページに掲載されているブードゥーの歴史的なスナップショットにあるように、新しいファントムワークスのパッチに直接言及されている「ワンオワンダー」というニックネームは、この素晴らしい高速性能と評判から生まれたものだ。



(Voodoo II patch image used with permission from Steve Trimble at Aviation Week)


ファントムワークスのパッチに話を戻すと


 そこで、オリジナルのセンチュリー・シリーズが今日のデジタル・センチュリー・シリーズにどう反映されているのか、また、F-101ブードゥーは「ワンオワンダー」というニックネームを持つ記録的なスピードの悪魔だという新しい理解を得た上で、スティーブ・トリンブルのファントムワークスパッチを再度見てみよう。

 パッチ上部には「ブードゥーII」の名がはっきり記されており、トリンブルはすでにボーイングのファントムワークスの第6世代戦闘機計画を連想した。また、下部に書かれた "two-o-hunder "は、初代のブードゥー、特に記録破りのスピードスターとしての評判にちなんだものだ。

 トリンブルは、このプログラムは過去4年間、つまりおよそ2019年から2023年まで(あるいは2018年から2022年まで)行われたとしており、2020年にはウィル・ローパーが、空軍がNGADプログラムの技術実証機を飛ばしていると明言し記録を更新していたと明かしていた。

 その元となったワンオワンダーの愛称は、F-101の最高速度がマッハ1以上であることを指して語られることが多く、時には最高速度が時速1,000マイル以上であることを指して語られることがある。そのため、Voodoo IIの「トゥー・オー・ハンダー」は、初代の2倍の速度を指している可能性がある。おそらくマッハ2以上のスーパークルーズ能力だろうが、より興味深い可能性として、最高速度が時速2000マイル、つまり適切な高度なら記録的なマッハ2.6だろう。

 デジタルセンチュリーシリーズにおけるブードゥーIIの役割は、センチュリーシリーズにおける初代ブードゥーと同じく、他の機体、特に海軍の次期F/A-XXに搭載されるサブシステムを搭載している可能性がある。ボーイングのファントムワークスは大規模な新しい複合材建設施設で作業を開始しており、複合材はNGAD開発の4大プロジェクトの1つだ。

 情報を総合すれば、ボーイングのブードゥーIIは、NGADプログラムで開発されるアメリカの次期制空戦闘機のベースになっている可能性が高いとことになる...しかし、はっきりさせておきたいが、まだ状況証拠に過ぎないだ。

 ボーイングがアメリカの最新戦闘機開発で主導権を握っている可能性は確かだが、解決したとは言い切れない。

 とはいえ、トリンブル自身の言葉を借りれば、「空軍のNGADプログラムの勝者の正体は、依然として謎のままだ。その間はVoodoo IIを思い出してください」。■


Voodoo II: Could a simple patch give us a sneak peek at NGAD? - Sandboxx

Alex Hollings | March 2, 2023




Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.


2023年3月3日金曜日

イランの核兵器取得が間近に迫ってきた。核交渉再開の目処は? イスラエルはどう反応する?

 

Image Credit: Creative Commons.

 

国防高官によると、イランは2週間以内に核爆弾1個分の核分裂性物質を製造できるとみられている。コリン・カール国防次官(政策担当)は下院軍事委員会で、ドナルド・トランプ前大統領が2015年の共同包括行動計画(JCPOA)から離脱して以来、テヘランの核能力達成への接近が急速に進んだと語った。

カールの警告は、イランが地下施設「フォードウ燃料濃縮工場」で兵器級に近いレベルまでウランを濃縮したとする国連の評価と一致する。同次官は発言の中で、核計画復活がイランの「目覚ましい」進展を解決する可能性があるとの考えをあらためて示した。

 しかし、長年にわたるウィーン核協議は2022年に行き詰まり、イランは条約上の義務に違反している。イランの核開発面の進展は憂慮すべきものだが、米政府関係者は、同政権が実際に爆弾を製造するのに必要な技術は保有していないと依然考えている。

イランが核爆弾製造に必要な濃縮ウランの量は?

核爆弾を作るには、ウラン粒子を純度90%まで濃縮する必要がある。今週、国際原子力機関(IAEA)は、イランの地下施設FFEPで濃縮されたウラン粒子が純度83%以上に達したことを確認した。

 低濃縮ウランは商業用原子力発電所の燃料生産に再利用できるが、高濃縮ウランは、遠心分離機で精製されると核用途に操作できるようになる。イラン・ウォッチによると、テヘランは遠心分離機の機種を改良し、兵器製造に必要な物質の濃度を高めている。

 政権は長年、核活動は純粋に「平和的」で民生目的と主張してきたが、イランの科学者は2015年のJCPOAに違反し、以前の濃縮よりはるかに高い純度60%までウランを濃縮していることを公にしている。


イランはIAEAの規制を公然と破ってきた

テヘランはIAEAの規制を拒否してきた歴史がある。昨夏、ウィーン核交渉が行われていたにもかかわらず、イランは核施設から20数台の監視カメラを撤去すると発表し、IAEAに打撃を与えた。国際的な監視機関である35カ国理事会は、イランが同機関の規則を露骨に無視したことを非難した。実は、イランはウィーン会談が始まった当初から、交渉に有利になるようにIAEAの映像を隠していたのだ。


核合意はまだ可能か?

イランの核開発の急速な拡大と査察官のアクセス不足は、イランが核の敷居を越えるまであと数日というカール次官の警告を裏付けている。昨年4月、ホワイトハウスはイランの核武装解除時期が数週間後に迫っていると発表し、同様にトランプ政権がJCPOAから離脱したのを非難した。

 バイデン大統領は選挙戦当時から核条約への再加入を唱えており、イランもそれを知っている。カールは今週、下院軍事委員会で、米国が「この問題を外交的に解決し、核計画に制約を戻すことができれば、他の選択肢より優れている」と述べ、同条約に対する政権のコミットメントを再確認した。

 しかし、今はJCPOAが氷漬けにされている。イランはウラン濃縮増強に加え、ウクライナ侵攻でクレムリンに致死的な無人機を供給したことで注目されている。

 IAEAによる最新の調査結果で、ウィーン交渉再開は先送りされそうだ


Is Iran Close To Building A Nuclear Weapon?

ByMaya Carlin

https://www.19fortyfive.com/2023/03/is-iran-close-to-building-a-nuclear-weapon/


Maya Carlin is a Middle East Defense Editor with 19FortyFive. She is also an analyst with the Center for Security Policy and a former Anna Sobol Levy Fellow at IDC Herzliya in Israel. She has by-lines in many publications, including The National Interest, Jerusalem Post, and Times of Israel.

In this article:IAEA, Iran, JCPOA, Middle East, Nuclear Weapons


2023年3月2日木曜日

E-3後継機としてE-7の製造契約を米空軍がボーイングに交付。就役は2027年予定。

 


U.S. Air Force


米空軍は、E-7Aウェッジテイル・レーダー機でまず2機の製造をボーイングと契約した



ーイングは、米空軍の次期空中早期警戒管制機(AEW&C)の開発に着手し、E-7ウェッジテイル・レーダー機の派生型を開発する契約を締結する。空軍は、31機ある707ベースのE-3 Sentry Airborne Warning And Control System (AWACS)の一部をE-7で置き換える予定だ。E-3各機は作戦準備のレベルを反映する空軍の指標である任務遂行率の低迷に悩まされている。

 ボーイングによると、12億ドルを超えない契約のもと、「E-7 空中早期警戒管制機(AEW&C)の米国向け新型機2機種の開発を開始する」そうだ。ここでは2つ異なるバージョンが開発されているような表現だが、実際には、米空軍標準のE-7を同じ仕様で製造した最初の2機が、運用に入る前に「生産代表試作機」として使用されることを指す。



アメリカ空軍塗装のE-7Aウェッジテールのコンセプトアートワーク。U.S. Air Force



「ラピッドプロトタイピングプログラムは、DAF(空軍省)の要求を満たすため、米国ベースのミッションシステムを機体に統合すると同時に、E-7Aを運用中の連合国や同盟国のとの相互運用性を確保する」と、空軍は声明で述べている。

 ボーイングはメディアリリースで、E-7は「最も困難な作戦環境でマルチドメイン認識を実現する、完全統合され、戦闘実績のある、柔軟なコマンド・コントロール・ノードを提供する」と述べている。E-7は、「オープンシステムアーキテクチャとアジャイルソフトウェア設計により、航空機の能力を進化させ、将来の脅威を先取りできます」と述べてる。

 ボーイングのE-7プログラム副社長兼ゼネラル・マネージャーのステュー・ボボリルは、「E-7は実績あるプラットフォーム」と述べている。「E-7は、米空軍の空中早期警戒管制の要件を短期間で満たすことができる唯一の先進的な航空機で、統合作戦の実施を可能にするものです」。


2022年1月20日、レッドフラッグ22-1のためにネリス空軍基地(ネバダ州)に着陸するオーストラリア空軍のE-7Aウェッジテイル。U.S. Air Force/William R. Lewis



今回の契約は、空軍がE-7を「老朽化してきたE-3の代替に必要な期間内に、国防省の戦術的戦闘管理、指揮統制、移動目標指示能力の要件を満たすことができる唯一のプラットフォーム」と判断して、期待されていたものだった。これは、空軍関係者を含め、ウェッジテール購入でさかんに議論されていたのをうけてのことだ。

 2022年4月のウェッジテイル調達決定は、その前の2月に空軍がE-3一部の後継機を探していることを正式発表した後だった。E-7の唯一の競合機はサーブのビズジェット機「グローバルアイ」で不採用となった。

 E-7の目玉は、ノースロップ・グラマンMESA(Multi-Role Electronically Scanned Array)センサーで、空中と海上の脅威を同時に360度カバーできる。E-3が採用している機械走査式レーダーより、少なくとも1世代進んだ電子走査式技術だ。

 空軍の2023年度予算要求によると、MESAの利点は「最新の電子スキャンアレイセンサーを有人プラットフォームに統合することによるキルチェーン効果の向上、信頼性/可用性の向上、運用コストの削減」という。電子スキャンアレイは、レーダービームのステアリング、セクターステアリング、ターゲット再訪問速度の高速化が可能で、E-3AWACSの機械スキャンレーダーでは不可能な、より強固な電子保護と現代の脅威の検出・追跡を可能にするとある。

 E-7は、長距離で各種目標を探知・追跡するだけでなく、先進的な戦闘管理システム(ABMS)機能を提供する。これは、中国など敵対国との将来の紛争において、より効果的な長距離「キルチェーン」を提供するペンタゴンの野心に欠かせない機能です。

 E-7はまた、確立ずみサプライチェーンの恩恵を受け、空軍は、E-3と比較して、メンテナンスおよびロジスティクス費用を大幅削減し、より健全な任務遂行能力が確保できると期待している。E-7は737-700 Next Generation(NG)をベースにしており、ボーイングは737 NGの商業生産を2020年に終了したものの、E-7や米海軍のP-8ポセイドンなど軍事派生機の顧客向けに生産を続けている。

 E-7はすでにオーストラリア、韓国、トルコの3カ国が運航しているため、認証プロセスが簡素化され、一部の主要同盟国との相互運用性も確保されることになる。また、E-7はイギリスも発注しており、作業は現在順調に進んでいる。

 アメリカ空軍向けの新型E-7については、2025年に生産を開始し、2027年までに最初の機体が運用を開始する予定と発表が出ている。空軍は、契約の対象となる最初の2機と同様に、2032年までにさらに24機のE-7を購入する計画だが、合計数は今後数年間の資金調達次第で決まる。

 E-7が就役するまで、現在のE-3フリートは継続的なアップグレードプログラムで生き延びなければならないが、一部であっても機体の代替は非常に歓迎される。

 Defense Newsによると、空軍のE-3の40%から45%が、最新の数字である2021年には飛行不能状態だった。最新のE-3Gの任務遂行率は、2020年の70.7%から2021年には60.7%へと10ポイント低下している。一方、E-3Bの任務遂行可能率は同期間に65.8%から55.8%に低下している。



2022年3月22日、アラスカ州エルメンドルフ・リチャードソン統合基地で、牽引されるE-3 AWACSを監視する第962航空整備隊所属の米空軍兵。 U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Andrew Britten



 1970年代後半に最初のバージョンが就役したE-3セントリーでは、生産終了して長いTF33エンジンを搭載したボーイング707の機体を使用しており、このことも稼働率低下の一因となっている。

 E-7が必要なのは、E-3後継機としてだけでなく、空軍と国防総省の監視・戦闘管理能力を抜本的に見直すためであることは明らかだ。実際、空軍は次期E-7を「すべての空中活動を探知、識別、追跡し、統合軍司令官に報告する主要な空中センサー」として機能させると述べている。

 しかし、長期的には、空軍は、空中監視と地上移動目標指示(GMTI)任務の両方に宇宙ベース資産を使用する考えを受け入れつつある。一方、E-7は、アメリカ空軍の空中早期警戒管制部隊の基幹となるべく、良いポジションについているようだ。■


Air Force Orders First E-7 Jets To Replace Aging E-3 Sentry

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED MAR 1, 2023 3:02 PM

THE WAR ZONE

https://www.thedrive.com/the-war-zone/air-force-orders-first-e-7-jets-to-replace-aging-e-3-sentry


2023年3月1日水曜日

モスクワまで100キロ地点にウクライナ無人機が到達していた....ウクライナが創造力を発揮してロシア領内への攻撃を増やしている模様

 Ukrainian Drone Gets Within 70 Miles Of Moscow

via Twitter / UKRJET

ウクライナ製UJ-22がロシアの首都付近に出現し、同国ではドローンによる攻撃事案が相次いで報告されている

クライナ製UJ-22ドローンがモスクワから70マイル以内に墜落した。ウクライナの無人航空機がロシアの首都に最も近づいたケースと思われる。この事件はまた、過去24時間ほどでウクライナ軍ドローンはロシアの標的を攻撃した、あるいは少なくとも攻撃しようとしている。

モスクワ広域行政区のアンドレイ・ボロビョフ知事は本日、この事件に関し声明を発表し、ドローンは「市民インフラ施設」を狙っていた可能性が高いと主張した。ドローンがどこに落ちたのか、なぜ落ちたのかは、明らかでない。

同機の残骸は、グバストヴォ村またはコロムナ市の近くにあるという矛盾した報告がある。グバストヴォはモスクワから約100キロ、コロムナは約110キロ離れている。いずれもコロメンスキー地区にあり、ウクライナ国境からそれぞれ最短で約276マイル(444.5km)、283マイル(455.5km)の距離にある。コロメンスキーには、ロシアの国営天然ガス会社ガスプロムのコンプレッサーステーションがある。同地域の関連パイプラインでのガス搬送にあたるステーションが、ターゲットとなる可能性が示唆されている。

グバストヴォとそのすぐ南にあるコロムナの地図と、モスクワとの相対的な近さを示す。 Google Maps

上の地図は、両地点と、さらに南にあるウクライナ国境との距離感を表している。 Google Maps

本稿執筆時点では、ウクライナ当局はモスクワ近郊の無人機事故について声明を発表していないが、これは予想外ではない。ウクライナ政府は通常、ロシア国内への攻撃を公式に認めない。

残骸の写真から、明らかにウクライナのUKRJETが製造したUJ-22だとわかる。固定三輪着陸装置を備えた無人機で、通常の滑走路に離着陸する設計だ。前部3枚羽根のプロペラ1枚を駆動する小型ガスエンジンを搭載し、メーカーのウェブサイトによると、最大航続距離は800km(497マイル強)、最長7時間上滞空できるという。これなら原理的には、ウクライナとロシアの国境付近の発射点から、モスクワ周辺まで手が届く。

もちろん、UJ-22の実際の航続距離や耐久性は、搭載ペイロードなどに依存する。また、UKRJETによると、搭載されている通信回線でオペレーターが直接コントロールできるのは、100kmまでだという。ドローンは、あらかじめ計画された飛行計画で指定場所まで、長距離飛行できる。最終目的地に近いオペレーターは、機体が十分な距離まで近づけば、コントロールできる。

UKRJETは迫撃砲弾を搭載するラックやロケット推進擲弾筒の弾頭を小型の空中投下型弾薬とするなど、UJ-22の武器オプションを示している。また、弾頭を内蔵することで、即席の神風機となる可能性もある。

展示されているUJ-22は、胴体中央部のラックに小型の空中投下型弾薬として再構成された迫撃砲弾4発が搭載されている。右下にはロケット弾の弾頭もあり、空中投下用に構成されている。UKRJET

モスクワ近郊に落下した機体が武装をしていたのか、あるいはペイロードを搭載していたのかは、これまでの残骸の様子からはすぐに明らかになっていない。ペイロードがなくても、UJ-22のような無人機をロシアの同地域に送り込めば、ウクライナ軍は相手の防空能力(比較的小さな目標を発見・追跡する能力、標準的な操作手順など)で貴重な知見を得たかもしれない。

また、1月にロシア軍はモスクワ市内のビル屋上や周辺にパンツィール防空システムを配備しており、攻撃への懸念が高まっていた。さらにS-400地対空ミサイル砲台もここ数カ月、市内に配備されたようだ。

UJ-22のペイロードが何であろうとなかろうと、また任務が何であろうと、モスクワから60マイルから70マイルの範囲に入った事実は重要な進展だ。無人機が首都モスクワのすぐ近くに現れたことは、ウクライナに宣伝効果を生み、ウラジーミル・プーチン大統領の紛争処理に国内から新たな批判を促す可能性がある。

さらに、ウクライナのドローンによるロシア国内での攻撃は目新しいものではないが、モスクワ近郊でのUJ-22事件は、最近顕著に増加している活動の一部のよう映る。今回の事件は、過去1日かそこらの間にロシア国内で起きたウクライナの無人機攻撃または無人機攻撃未遂のうちのひとつに過ぎない。

一晩中、ドローン数機がウクライナ国境に近いロシアの都市ベルゴロドに落下した。その後にネット上に出てきた写真やビデオには、これまで見たことのない神風ドローンのようなデザインが写っていた。

ロシア当局は、ウクライナのドローンが黒海沿岸のクラスノダール地方のトゥアプスの町にあるロスネフチの石油基地を攻撃したとも発表した。ロシア当局は、隣接するアディゲア地方で少なくとも1機のウクライナ製ドローンの残骸を回収したと発表したが、標的は不明である。現時点では、どの種類のドローンが各事件に関与していたかは不明だが、アディゲア州の残骸には何らかのジェットエンジンの部品が見られるようだ。

また、本日、ロシアのサンクトペテルブルク市周辺の空域が原因不明のまま一時閉鎖され、近隣のプルコヴォ空港の運用が停止した。未確認情報では、「未確認飛行物体」がきっかけとなり、戦闘機スクランブル発進につながったとの情報もある。

AP通信によると、ロシア国防省はその後、同地域での防空演習について声明を出したが、サンクトペテルブルク近辺で発生したとも、領空閉鎖を促したとも特に言及しなかった。

この記事執筆時点で、アゾフ海沿岸のイェイスクにあるロシア海軍航空基地で少なくとも1回の爆発とそれに続く火災が発生したという新たな報告が出た。イェイスクは、ロスネフチ基地を攻撃したと見られる事件が発生したクラスノダール地方にある基地でもある。ウクライナ製ドローンによるものではないかとの憶測も出ている。

これと別に、ロシア非常事態省は、今日、テレビとラジオの一部の番組を中断させた空襲警報は、「国内の一部地域のラジオ局やテレビチャンネルのサーバーがハッキングされたため」と非難していた。これについては、今のところ、独立した検証は行われていないようだ。

各事件がすべて関連しているか断言できないが、ウクライナによる大規模協調的な取り組みの一部の可能性があることは確かだ。ウクライナは少なくとも1年以上前から、各種ドローンを使ってロシア国内の空爆を定期的に行ってきた。

また、ウクライナ軍は米国と英国から、より長距離の標的を攻撃できる兵器システムを追加で受け取る予定になっていることも注目に値する。しかし、少なくとも米国政府は、こうした兵器がロシア領内への攻撃に使用されないことを理解した上で、ウクライナ軍に引き渡している。

ウクライナの軍事情報局副局長ヴァディム・スキビツキーは、今週初めに掲載されたインタビューの一部として、ドイツ新聞「ベルリン・モルゲンポスト」に、「南方のロシア戦線(占領下のクリミアとロシア本土の間)に楔を打ち込もうとすることが我々の戦略的軍事目標の1つだ」と語っている。「ロシア領内、例えばベルゴロド市周辺の武器庫や軍備を破壊する可能性もある」と。

ウクライナにとって、ロシア国内への攻撃回数を増やせることは、一般市民が戦争を身近に感じるための重要な手段にもなっている。こうした攻撃は、軍事だけでなく、国民の反戦感情や一般的な不満を煽ることにもつながるという明確な期待がある。

プーチン大統領は本日、ロシア連邦保安庁(FSB)本部で演説し、国境警備を強化する新たな措置をとるよう要求した。

ウクライナ紛争が2年目に突入した今、このような事態が起こっている。ウクライナ軍は昨年後半に築いた勢いを維持するものの、ロシア軍が同国東部で再び優勢になる状況を模索している。

今日モスクワ近郊に落ちたUJ-22は、最近報告された他の無人機と同様に、ロシア国内の標的を攻撃するウクライナの拡大作戦の始まりとなる可能性がある。■


Ukrainian Drone Gets Within 70 Miles Of Moscow | The Drive

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED FEB 28, 2023

THE WAR ZONE


中共に不都合な事実:人口減少社会に突入し、中国はこれから急変化し世界は対中国観の変更を余儀なくされる

 

World Economic Forum


国が人口減少を発表し、メディアが注目した。報道は、世界経済をリードする中国の野望を人口減少が脅かすかもしれないと推測した。報道の多くは、理由や原因を明確にしていないものの、的を得ている。人口動態の動向を詳細に検討し、その理由や原因を考えれば、中国の人口動態はここ数十年で最大の経済的出来事となり、中国の発展ペースを大幅に遅らせる。中国を経済的に巨大な存在としてきた認識は変更を迫られるだろう。



中国の公的統計機関が発表した数値は、表面的とはいえ十分印象的だ。前回の国勢調査から約85万人減少している。この数字から、国連の人口統計学者は、現在14億人の人口が、2050年に13億人になり、今世紀末には8億人程度に減少すると予測している。そして、この流れを止めるため中国ができることはほとんどない。さらに重要なことは、このトレンドが中国の経済的展望に及ぼす影響を緩和するため北京ができることも皆無に近いことだ。

 人口動態における決定的な経済要因は、総人口の動向より、労働年齢人口の深刻な不足だ。北京が過去45年間、数十年にわたり中国家庭に一人っ子政策を押し付けてきたため、中国は現在、巨大な退職世代に代わる若い労働者の深刻な不足に直面している。2010年以降、15歳から64歳までの生産年齢人口はほとんど伸びていない。しかし、定年退職を迎える高齢者人口は、2010年の総人口の9%から、直近で13%へと53%も増加している。その結果、退職者1人あたりを養える現役世代は、2000年の約6.5%、2010年の約5.5%から、現在は3.5%になった。そして、2030年までに2.3%を下回り、その後数年間はさらに下がる予想がある。

 このような状況の経済的な意味を把握するために、労働者3人の負担を考えてみよう。彼らは自分自身と扶養家族、そして退職者が必要とするすべてのものの3分の1を養わなければならない。少なくとも平均して、3人の労働者がこの必要性を担えるほど生産的であることはない。なぜなら、高齢化が進むと、輸出、機械、消費財など日常的な生産から、高齢者が必要とする医療や介護サービスに労働力が吸い上げられるからである。このような人手不足の深刻化は、中国のみならず他国経済が発展するために必要な投資、特に中国を有名にし、目覚しい成長に大きく貢献してきた大規模プロジェクトを行うため必要な余剰生産と富を奪う。

 さらに問題なのは、人口動態が財政的に与える悪影響だ。退職者の年金ニーズは、北京だけでなく、地方政府にも大規模借金を強いることになる。中国はすでに、米国を含むほとんどの国よりも多額の債務を負っている。最終的には、公的、私的な負債を合わせ約52兆ドルで、経済規模の3倍にも達する。 確かにワシントンの債務負担は北京より大きいが、それは北京がインフラ支出などに必要な借入を地方政府にオフロードしているため年金の負担はさらに増え、これまで中国の発展に大きな役割を果たしてきた成長促進プロジェクトが混同されるのは避けられない。

 このような弊害を補うため、北京ができることはほとんどない。数年前、当局は一人っ子政策の潜在的な経済的ダメージにようやく目を覚ました。法律を撤廃し、大家族を容認した。しかし、仮に中国人が自由な環境をすぐに利用しても、国内の生産年齢人口の相対的な規模に影響を与えるには15年から20年かかる。現状では、法律が施行されても出生率が上がることはない。また、労働年齢人口を増やすために、優秀な移民が殺到することもないだろう。それどころか、中国では移民流入よりも流出が多いのが常だ。

 そのため、労働者の生産性を向上させることが唯一の解決策となる。北京は人工知能(AI)やロボット工学の開発・導入に力を入れている。実際、中国はこれらの分野で世界のリーダー的存在になっている。やがて、これらのトレンドがアルゴリズムやコンピュータ、機械を労働に置き換え、限られた労働人口を今より生産的にするのは間違いない。また、AIやロボティクスが肉体労働の必要性を減らすことで、高年齢で働くのに役立つ。しかし、実現には多額の投資資金が必要で、労働人口に無理がある中国には困難だ。

 中国の成長ペースはすでに著しく鈍化している。情報筋は、昨年の実体経済成長はわずか2%と見積もっている。中国経済の歴史的な拡大ペースからすると、ここまでの急激な減速の責任は、金融引き締めにある。しかし、一過性の景気変動の裏側に、人口動態の弊害が再び現れるだろう。この現実の中でも中国は大きな経済規模を維持していくだろうが、絶対的な規模や成長のスピードでは、かつて言われた「力強い成長モメンタムに支えられた中国が経済を支配する」とする展望の実現はないだろう。■


China’s Economic Base Is Dwindling

by Milton Ezrati


February 25, 2023  Topic: China  Region: China  Tags: ChinaXi JinpingEconomicsDemographicsOne Child Policy

https://nationalinterest.org/feature/china%E2%80%99s-economic-base-dwindling-206248


Milton Ezrati is a contributing editor at The National Interest, an affiliate of the Center for the Study of Human Capital at the University at Buffalo (SUNY), and chief economist for Vested, the New York-based communications firm. His latest books are Thirty Tomorrows: The Next Three Decades of Globalization, Demographics, and How We Will Live and Bite-Sized Investing.


2023年2月28日火曜日

ウクライナ戦の最新状況(現地時間2月25日現在) ロシア軍の旧式T-62に旧式センサーを搭載、制裁措置が効いてきた

 Ukraine Situation Report: Russian Tanks Reverting To Cold War Thermal Sights

57th Kish Otaman Kost Hordiienko Motorized Brigade/wikicommons

ロシアの旧式T-62Mが旧式サーマルサイトを装備している

ソビエト軍にT-62が就役して約62年、ロシア軍がこの旧式戦車を再改良した。ウクライナ兵器追跡(@UAWeapons)のツイートにある「T-62M Obr. 2022」は、サーマルサイトを搭載しているようだ。

ロシアは昨年春から老朽T-62をウクライナに配備しており、10月には800両を「近代化」し使用すると発表した。

T-62Mは1983年に製造され、ソ連のアフガニスタン戦争でNATO情報機関が改良型を確認した。同戦車は、皮肉にもウクライナのハリコフにある有名なマリシェフ工場で製造され、装甲や火器管制システム、新しいディーゼルエンジンを搭載し大幅に改善された。また、9K116-2「シェクスナ」(NATO:AT-10 Stabber)対戦車誘導弾の発射機能を備える。

しかし、1PN96MT-02サーマルサイトは、もともと1980年代半ばに生産されたBTR-80装甲兵員輸送車の初期型がルーツだ。この旧型光学機器を搭載したロシア戦車は、T-62が初めてではない。@TankDiaryの1月下旬のツイートには、よりシンプルで古い照準器を装備したT-72Bが満載の列車が写っている。

フォーブスは今月初め、ロシアがT-80に劣悪な1PN96システムを装備していると報じた。T-62多数が保管場所から再稼働しなければならなかったことを考えると、改造は、高性能車両の戦場での損失と、電子機器の製造に影響を与えている制裁から生まれたと思われる。装甲車のセンサーなど多くのシステムは、戦前は西側諸国から輸入されていた。

T-72B、T-80BVM、T-90に搭載されている最新のソスナSosna-Uパノラマ光学系は1PN96より性能が優れるものの、フランス製のThales赤外線イメージャーに頼っている。侵攻作戦に関連する制裁措置により、戦闘で失われたソスナUの代替や、再稼働した戦車に取り付けるための追加製造ができないことは明らかだ。

昨年、ロシアのメドベージェフ前首相が戦車工場を視察し、防衛産業関係者を逮捕すると脅したのも、サプライチェーン問題が雪だるま式に大きくなっていたからだ。さらに、日を追うごとに、西側の近代的な戦車や装甲戦闘車両が、優れた光学系を備えてウクライナ側に到着する日が近づいてきている。現代の機甲戦は、誰が最初に撃つかで大きく左右されるため、目の良し悪しが決め手となる。

最新情報

英国国防省が土曜日に発表した情報では、2月15日以降、イラン製カミカゼドローンによる攻撃は小康状態だが、ロシアが在庫を補充すれば、静寂は終わると予想している。

ウクライナ東部では激しい戦闘が続いており、包囲されたバフムート市との間の重要な補給路にある集落、イワニフスケをロシア軍が襲撃しているとの報道があった。

1年前、ロシア軍はウクライナ北部のベラルーシ国境を越えて、チェルノブイリ原発の立ち入り禁止区域とその周辺に押し寄せた。今、ウクライナは首都とベラルーシの間に、2キロに及ぶ地雷と対戦車要塞を配した本格的な防衛線を敷いている。

ウクライナ参謀本部によると、南部でロシア軍はケルソンのすぐ南にあるドニエプル川デルタ地帯のコンカ島周辺から河川部隊を退避させたという。

クロアチアは、クロアチア空軍から退役した Mi-8MTV-1 12 機と Mi-8T "Hip" 2 機を、ウクライナに移送する準備を始めたと報じられた。Jutarnji誌の報道では、首都ザグレブ郊外のVelika Goricaにある航空技術センターでヘリコプターを準備する技術的作業が進行中であることを詳述している。ウクライナのMi-8/17型が前線近くの戦闘任務で超低空を飛行する姿が頻繁に目撃されている。

最後に、マリウポリへの最新の長距離攻撃で、ロシア装甲車を数台破壊し、数十人の死傷者を出した。ウクライナが戦線のはるか後方の目標の攻撃用に何を持っているのか、興味をそそられる。■


Ukraine Situation Report: Russian Tanks Reverting To Cold War Thermal Sights

BYSTETSON PAYNE|PUBLISHED FEB 25, 2023 7:58 PM

THE WAR ZONE