2017年10月31日火曜日

マッハ3無人スパイ機D-21の母機を務めたB-52



B-52 At Edwards AFB Sports Nose Art That Commemorates Its Past As “Mothership” In Top Secret D-21 Drone Test Program

エドワーズAFBのB-52についたノーズアートでトップシークレットD-21無人機テスト事業の母機であった履歴を誇示
Oct 27 2017

 

  1. 第419フライトテスト飛行隊のB-52にこのたび新しいノーズアートが付き、同機がトップシークレットのテスト事業に関与してきたことを表している。
  2. エドワーズ空軍基地で活動する第412試験飛行隊のB-52 #60-0036 の新しいノーズアートは有名な航空画家マイク・マチャットによるもので同機がトップシークレットの「タグボード」に50年前に関係してきたことを示している。
  3. ソ連上空の有人機飛行はフランシス・ゲイリー・パウワーズのU-2が撃墜された1960年5月1日の事件を受けて、ドワイト・アイゼンハウアー大統領が全面禁止した。当時は衛星による情報収集がまだ実用化されておらず中央情報局は無人機で衛星実用化までの空白を埋める決定をした。
  4. タグボードではD-21ラムジェット推進偵察無人機を使い、マッハ3飛行を目指した。D-21は空中発射方式で母機が必要だった。
  5. 当初はM-21(SR-71改装機)をD-21無人機を機体上部に乗せて使われた。スパイ飛行の後無人機は機体ハッチを開け写真装備一式を空中で(パラシュートで減速してJC-130Bで)あるいは地上で回収する構想だった。
  6. ただし公式発表では「四回目の飛行テストではD-21はM-21の飛行軌跡の中で『非対称型非起動』になり、母機にピッチが加わりマッハ3.25でD-21がM-21が衝突した。乗員ビル・パークとレイ・トリックはM-21から射出脱出したがトリックの飛行服が破れ着水後に死亡した」とある。
  7. この際の様子は随行したブラックバードが撮影している。この下を見てほしい。https://www.youtube.com/watch?v=GMyC2urCl_4
  8. この事故でM-21発進は見直され、ロッキード・マーティンはB-52Hから発進することにした。その機体が#0036だ。D-21プロジェクトにはシニアボウルのコードネームがついた。
パームデール(カリフォーニア州)の米空軍第42プラントにあるブラックバードエアパークに陳列してあるD-21無人偵察機。D-21はマッハ3のラムジェット推進方式で母機から発射した。(Courtesy photo by Danny Bazzell/Flight Test Historical Foundation)

  1. 「最初のB-52からのD-21発進は1968年6月16日に成功した。無人機は高度9万フィートで3千マイル飛行した。その後数回の飛行テスト後にCIAと空軍は四回の発射を実施したが、すべて失敗した。二回は成功したが、画像はD-21から回収に失敗した。別の二回は一回は高度防空地で喪失しもう一回は発射後に行方不明となった」
  2. D-21は1971年7月15日に中止され、試験用B-52母機は空軍の一般任務に復帰した。
  3. その機体#60-0036は2001年以降エドワーズで第419飛行試験飛行隊に配属され、テストベッドを務めている。
第419フライトテスト飛行隊がエドワーズ空軍基地のフライトラインに休んでいる。10月16日撮影。同機# 60-0036はタグボードの名称で始まった極秘テストに使用されていた。これにはD-21ラムジェット推進偵察無人機が使われマッハ3飛行を目指した。D-21は母機の主翼下から発進する想定だった。 (U.S. Air Force photo by Kenji Thuloweit)

  1. D-21無人機のマッハ3飛行がM-21あるいはB-52で50年前に行われていたが現在はどんな秘密テストが実施されているのだろうか。■

 

この記事を読んで急いで自分のとった写真ファイルを探しました。ありました中国航空博物館(北京市)に陳列されていたD-21の残がいの写真が下の通りです。文中にある高度防空地とは中国のことだったのですね。ちょっとピントが甘い写真ですがご容赦ください。





★★米海軍が通常型潜水艦建造に向かう可能性



この記事では通常型潜水艦の優位性がいまいち明確にとらえられていないと思うのですが、まず原子力潜水艦ありきの米海軍が考え方を変えたとしても通常型潜水艦建造の技術基盤がない米国が日本に協力を持ち掛けてくるはずなので潜水艦事業に大きな変化をもたらすのは必至でしょう。
そうりゅう級(あるいは後継艦)を米海軍が採用すれば日本の防衛産業にとっては画期的な事態となりますね。ただしこれは東アジアでの安全保障を見直したいという米国の一部の流れとは逆に日本との協力関係の強化になってしまうので、日本には好都合と言えるのですが、米国本流のの考え方にはなじまないでしょう。日本の地理的優位性を精一杯活用すべきでしょうね。

 


Is It Time for the U.S. Navy to Start Building Non-Nuclear Stealth Submarines?

米海軍は通常型潜水艦建造に踏み切るべき時に来たのか
October 29, 2017

  1. 米議会とトランプ政権がウォールストリートジャーナルのロシア海軍潜水艦の記事を読めば、米国も真剣に通常型潜水艦調達を検討すべきと言い出すのではないか。
  2. ジュリアン・E・バーンズ記者の記事ではロシアの通常型潜水艦とNATOの間で追跡劇が3か月続いたと暴露している。バーンズは「ロシアの攻撃型潜水艦クラスノダールKrasnodar,は5月末にリビア沿岸を離れ地中海を東に向かい、その後潜航し、シリアに巡航ミサイル数発を発射した」と伝えている。
  3. バーンズ記者はNATO部隊が同艦を一貫して追跡していたと明らかにした。まずオランダが北海で同艦を捕捉し英仏海峡まで追尾した。ジブラルタルからは米巡洋艦がP-8の支援で地中海で追尾した。
  4. モスクワは同艦がリビアに向かい演習参加すると発表していた。実際には到着する前に浮上し5月末にシリアに向け巡航ミサイルを発射している。問題は米空母打撃群が6月はじめに同じ地域に向かっており、対ISIS作戦の実施を始めようとしていたことだ。このためロシア潜水艦の位置確認は特に重要になった。米関係者は「潜水艦一隻でも空母のような主力艦に脅威になる」ためと説明している。
  5. バーンズは詳細に触れており、米海軍や同盟国が潜水艦を追尾する方法各種や潜水艦が追尾から逃れる戦術も書いている。ただし記事からは西側海軍部隊がロシア潜水艦追尾にどこまで成功したか不明だ。米海軍関係者は同艦の二回目ミサイル斉射の様子はフランス海軍フリゲートが把握し、米海軍も空中監視していたと述べている。NATOがこのロシア潜水艦の追尾に苦労したのなら、中国やロシアが米潜水艦の追尾はできないことは明らかだ。
  6. 記事から明らかなのは米国や同盟国は相当の努力を投入してクラスノダールを追尾したことだ。これは相当困難な仕事だ。米国は世界最高の対潜戦能力を有すると自負しており、同艦追尾に必要な前方配備基地や同盟諸国を有していることが重要だ。もし米およびNATOが潜水艦追尾可能ならロシアや中国では西側潜水艦の追尾は不可能となるはずだ。
  7. クラスノダールがとくに高性能通常型潜水艦でない点が要注意である。同艦はプロジェクト636.3ヴァルシャヴャンカVarshavyanka級潜水艦だ。ロシアは世界で最も静粛な潜水艦と自慢する636.3型はキロ級を改良し低価格が特徴だ。2009年にはヴィエトナムに同型艦6隻をわずか20億ドルで供給する契約に調印している。(価格には乗員訓練および予備部品を含む)対照的に米国は原子力潜水艦一隻で27億ドルを支払う。通常型で最大かつ最高性能と言われる日本のそうりゅう級は単価5億ドル超といわれる。つまり原子力潜水艦一隻の単価でディーゼル電気推進型潜水艦が5隻ないし7隻建造できる。
  8. 355隻艦隊を整備しようとする米国 には通常型潜水艦調達を真剣に検討し原子力潜水艦の補完機能を実現する必要がある。これは大きな変化となる。米海軍の最後の通常型潜水艦建造は1950年代で、1990年以降は運用していない。ここにきてディーゼル電気推進式潜水艦建造構想に勢いがついてきた。今年初めには議会の求めに応じ2030年代の海軍艦船構成を検討したMITREコーポレーションが通常型潜水艦の配備を求めた。
  9. 米海軍側がこの要望をはねつけ、通常型潜水艦では海中環境、補給面、性能面で制約があると反論したのは自然な反応といえる。だがこれに対しいずれも制約条件ではないとの主張が出てきた。ジェイムズ・ホームズJames Holmesが海中環境は潜水艦を米国配備した際にのみ制約となると主張。日本への前方配備なら米本土配備の原子力潜水艦に対して有利だと述べている。同様にホームズの指摘では補給面でも日本を利用すれば克服可能という。ディーゼル電気推進式潜水艦だけでなく海軍の他の艦艇にもメリットが生まれるという。
  10. 性能面で高性能ディーゼル電気推進式潜水艦は特に脆弱なわけではない。ホームズは日本のそうりゅう級は二週間に一度浮上するだけでいいという。原子力潜水艦並みの潜航期間は無理だが、ヴァージニア級攻撃型原子力潜水艦一隻の値段でそうりゅう級5隻を導入できると主張。単艦の性能で原子力潜水艦にかなわなくても数の威力でカバーできるとした。
  11. たしかに大洋なら原子力潜水艦の性能が活用でき、長期間展開能力、潜航深度で他の追随を許さない。一方で浅深度海域や閉鎖系海域のペルシア湾や南シナ海では大気非依存型推進(AIP)搭載の潜水艦が望ましい選択になる。この事から議会、トランプ政権に対し原子力潜水艦のみの調達方針を再考すべきと求めたい。■
Zachary Keck (@ZacharyKeck) is a former managing editor of the National Interest.
Image: A Russian made Iranian navy Kilo class submarine takes part in Iranian naval exercises in the Persian Gulf November 2, 2000. Iranian navy maneuvers on both sides of the strategic strait of Hormuz will continue until November 6, 2000.

中国第一線戦闘航空機の現況


今のところは質的に優れているとはいいがたい中国の空軍力ですが、数の力にものを言わせ消耗戦で勝てるとの指導原理なのでしょうか。パイロットなど人的資源に限界がないのも中国の強みですが、ご覧のように国産技術に頼らない=外国技術を導入するため手段を選ばないのも中国の技術発展の特徴で、その分西側はセキュリティを強めないと技術が流出してしまいます。ここが中国技術の弱点ともいえるのですが、今後どんな非常識な戦力が搭乗しないとも限りません。今後も注視の必要が大いにありますね。



China's Air Force: 1,700 Combat Aircraft Ready for War

中国空軍力の現況 1,700機が作戦投入可能
October 28, 2017

中国人民解放軍空軍(PLAAF)は姉妹部隊の海軍航空隊(PLANAF)とともに戦闘用機材約1,700機を運用する。ここでは戦闘機、爆撃機、攻撃機を戦闘機材と定義した。この規模を上回るのは3,400機を擁する米軍のみだ。さらに中国は西側が把握していない機種も多数運用している。中国機多数はロシアやアメリカの機種を真似たあるいはコピーしたものであり、実力は把握できない。

[J-6/Q-5] ソ連と中国は1950年代に最も親密だった。ソ連は技術多数を供与し、そのひとつにJ-6があり、超音速MiG-19のクローンだった。数千機が生産されたが大部分退役している。ただし空気取り入れ口を改装した南昌Q-5の150機はまだ現役で精密誘導爆弾搭載用に改装されている。
[J-7] だが中ソ友好関係は1960年代に醜い結末を迎える。1962年にソ連は新型MiG-21を和解の一部として供与した。中国は和解は斥けつつ機体は確保しリバースエンジニアリングで頑丈だが重量の増えた成都J-7にした。生産は文化大革命のため遅れたが、1978年から2013年にかけ各型合わせ数千機を生産し今も400機近くがPLAAFとPLANAFに残る。
J-7は1950年代の新鋭機で操縦性と速度を実現した。マッハ2とF-16と同等ながら燃料、武装ともに搭載量が少ないし、小さなノーズコーン内のレーダーは能力不足だ。それでも中国はJ-7の性能強化を続けた。J-7Gは2004年導入でイスラエル製ドップラーレーダー(探知距離37マイル)と改良型ミサイルを視界外距離で運用できる。またデジタル式の「グラスコックピット」も備える。
この機体では探知能力に優れた敵の第四世代機に苦戦するはずだが、理論的には数で敵を圧倒する可能性はある。J-7で中国は大量のパイロットを養成し新型機の登場までパイロットを維持できる。
[H-6] もう一つソ連のクローン機が西安H-6双発戦略爆撃機で原型は1950年代のTu-16バジャーだ。B-52と比較すれば低性能だが、空中給油対応のH-6Kが戦力となっており、大型長距離巡航ミサイルで艦船あるいは地上目標を中国本土から最高4千マイル地点で攻撃できる。H-6は核爆弾投下を想定していたがPLAAFはこの任務に関心はないようだ。西安は新型H-20戦略爆撃機を開発中といわれるが詳細は不明だ。
[J-8] 中国は1960年代中頃から国産戦闘ジェット機開発に乗り出し、瀋陽J-8が1979年に登場した。大型双発ターボジェット超音速迎撃機としてマッハ2.2を出すが近代的エイビオニクスと整備性が欠如している。ただしJ-8II(約150機供用中)はイスラエル製レーダー搭載で改良しF-4ファントムに匹敵する重装備になった。
[JH-7] 200機ほどが供用中の西安JH-7飛豹は1992年に供用開始した複座対艦戦闘攻撃機で20千ポンドの兵装を搭載し、最高速度はマッハ1.75だ。対空格闘戦には不向きだが長距離対艦ミサイル発射が主任務だ。
[J-10] 成都J-10猛龍は中国版のF-16ファイティングファルコンで高度の操縦性を誇る軽量多用途戦闘機でフライバイワイヤ方式エイビオニクスで空力学的に不安定な機体を制御する。ロシア製AL-31Fターボファンエンジンを搭載し、J-10B型が21世紀型エイビオニクスで赤外線捜索追跡装備やアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーの搭載で大きく改良された。AESAはF-16でも全機装備されていない。ただし、250機あるJ-10で深刻な事故数件が発生しており、フライバイワイヤ系の問題が原因と思われる。
[J-11/J-15/J-16]ソ連崩壊後のロシアは現金に飢えイデオロギー対立の暇はなく当時最新鋭のスホイSu-27戦闘機を求めてきた中国に応じてしまった。双発でF-15と比較される同機は航続距離とペイロードが優れる。この決断が運命を左右した。今日の中国戦闘機部隊ではSu-27を元にした機体が幅を利かせている。
Su-27で中国は国内生産ライセンス権を購入し瀋陽J-11を製造したが、その後高性能のJ-11BおよびDの生産に発展しロシアを動揺させた。
モスクワはそれでも改良型の対地対艦攻撃用のフランカーSu-30MKK、Su-30MK2を合計76機売却した。F-15Eストライクイーグルに匹敵する機体だ。中国はSu-30から瀋陽J-16紅鷹を生んだ。瀋陽J-15飛蛇は空母運用型で原型はロシアSu-33をウクライナから取得した。空母遼寧で20機が運用中だ。J-16Dはジャミングポッドを搭載した電子戦機で米海軍EA-18グラウラーに相当する。
中国製スホイ機は理論上は第四世代戦闘機のF-15やF-16に相当するが、国産WS-10ターボファンエンジンが制約で保守点検性が劣り推力も不足気味だ。エンジンが中国製軍用機の足かせで、2016年にSu-35を24機購入したのもAL-41Fターボファンエンジンが目当てと見られる。
[J-20/J-31]極めて短期間で中国はステルス戦闘機二型式を開発した。成都J-20が20機2017年にPLAAFで供用開始した。F-22ラプターは究極の制空戦闘機を目指したが、J-20は大型双発機で速力、航続距離、重武装に特化し操縦性は二の次にした点が違う。
J-20の主目的は対地対艦の奇襲攻撃だろう。レーダー断面積が大きいのは問題なので敵戦闘機と交戦を避けつつ脆弱な支援機材やAWACSレーダー機を撃破するのかもしれない。任務を限定したステルス戦闘機なら技術難易度が高いステルス機運用経験が浅い同国にはぴったりだろう。
小型自社開発の瀋陽J-31鶻鷹(別名FC-31)はF-35ライトニングそっくりで、ロッキード社コンピュータをハッキングした可能性がある。中国は空力特性を追求し垂直離着陸性能を省略したが、ライトニングのセンサーとデータ融合機能はないようだ。
J-31は今後就航する002型空母での供用を目指すようで、輸出向けには破格価格のF-35代替策となる。試作機のエンジンはロシア製だが国産WS-13ターボファンエンジンの生産が安定しないと機体生産は始まらないだろう。
[今後の展望]
PLAAFおよびPLANAFの機材のうち三分の一は旧式機で戦闘能力は敵側より劣るので大量の機数で攻撃を図るのだろう。28パーセントに戦略爆撃機と第三世代機が含まれる。残る38パーセントが第四世代機で理論上はF-15やF-16に匹敵する。ステルス機は1パーセント相当だ
ただし、機体性能がすべてではない。重要なのは訓練、組織運用原理や支援機であり、衛星偵察能力や空中給油機材、地上レーダーや空中指揮機材も重要だ。
例えば中国には空母を捜索する情報機材として航空機があり、攻撃用のミサイルもある。ただし、各要素をつなぎ合わせてキルチェーンを構成するのは容易ではない。2016年のRAND報告書では中国は現実を想定した訓練の不足に取り組み、地上部隊や海軍部隊tの共同運用の経験づくりに取り組んでいるとする。
ともかく中国は旧式機を新型機に全部更改することを急いでいないようだ。第四世代機やステルス機の問題を解決してから大々的に新型機を導入する構えのようだ。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: A "Guying" stealth fighter participates in a test flight in Shenyang, Liaoning province, October 31, 2012. China's second stealth fighter jet that was unveiled this week is part of a programme to transform China into the top regional military power, an expert on Asian security said on Friday. The fighter, the J-31, made its maiden flight on Wednesday in the northeast province of Liaoning at a facility of the Shenyang Aircraft Corp which built it, according to Chinese media. Picture taken October 31, 2012. REUTERS/Stringer

2017年10月30日月曜日

日本が防衛装備輸出に成功していない理由


注 記事は2年前のものでそうりゅう案件などまだ進行中のものですが、本質的に変化はないと判断しお目にかけることとします。その後も大きな成約が出てこないのは根本的な問題があるからでしょう。販売は苦労していますが、共同開発は英米両国と進んできたのは平和法案の通過も大きな推進力になったのでしょうか。当面日本製航空機が海外で採用される期待が薄いとしても官民挙げて努力をつづけてもらいたいものです。さらに外交政策にもこうした分野を反映してもらいたいものです。

 

The Trouble With Japan's Defense Exports

日本の防衛装備品輸出は何が問題なのか

Opening Japan’s defense industry to the international market is a significant step, but it won’t happen overnight.
日本の防衛産業で輸出解禁は大きな一歩だが成果は一夜にしてえられない。
The Trouble With Japan's Defense Exports
Visitors look at a model of JMSDF US-2 search-and-rescue amphibian plane during the MAST Asia 2015 defense exhibition and conference.
Image Credit: REUTERS/Toru Hanai

October 02, 2015


  1. 2014年4月1日、安倍晋三首相は日本の武器輸出自粛を撤廃し、「防衛装備品技術移転の三原則」を打ち出し、厳しい審査を経たのちに武器輸出を認め国際的な平和の実現と日本の安全保障に資することを条件とした。この動きは大きな関心を呼ばなかったが、日本の防衛政策上で大きな一歩であったと言える。
  2. 一年半後に防衛省(MOD)は1,800名態勢で防衛装備庁Acquisition, Technology, and Logistics Agency (ATLA)を発足させ、50名が輸出促進にあたっている。
  3. この歴史的と言える動きで新方針の背後の要素を考察し、今後の日本政府および防衛産業の方向性を見てみよう。日本政府は産業面とともに戦略面で期待するが、実際の運用に不明な点が多く日本製防衛装備に対する国際需要も高くないことから実現の難易度は高い。インド、オーストラリア向けでUS-2捜索救難飛行艇と潜水艦の大型案件があるが、これはともに特異例で今後の日本は小型装備品の輸出実現に向け努力を集中するだろう。
  4. では安倍首相に輸出禁止措置を解除させた原因としてジェフリー・ホーナンJeffrey Hornung笹川平和財団USA主任研究員によれば日本は①国産調達価格を下げる ②米国との協力強化 ③現状維持で利害を共通にする国に対して一層強い安全保障上のパートナーとなるの三点を目指しているという。
  5. 原価低減が重要なのは国産調達防衛装備の価格がとんでもなく高いためだ。研究開発費用が高いため、単価を下げるには大量販売する必要が生まれる。そうりゅう級潜水艦が好例でオーストラリア向け販売で日本が受注に成功するには単価を下げる必要があったが、そうりゅうの研究開発費は固定費でありすでに支出ずみだった。
  6. 禁輸措置の解除により価格面の変化がすぐに期待できるのだろうか。現実を見れば値下げの実現には10年単位といかずとも数年かかるのであり、一方で国際市場で日本製装備品にどこまで競争力があるのかという疑問も残る。
  7. Avascent International社長スティーブン・T・ガンヤードStephen T. Ganyardは日本製装備への需要が欠落しているため日本政府の思惑は実現困難だと指摘する。需要がないのは性能が理解されず、国際的に通用する装備が限られ、高価格のせいだと説明する。これまで日本の防衛産業の顧客は日本政府のみで業界に市場原理が欠落していた。日本の防衛産業は「世界に通用しないルールが大手を振る独自の世界」だという。
  8. 日本製防衛装備の値段を決めるのは日本政府であり、国際市場ではないため、効率を追求するメカニズムが不在とガンヤードは指摘。最大の皮肉はマレーシア、ヴィエトナム、インドネシア、フィリピン、タイ国など日本製装備を欲しい国は多いのに購入できる価格でない点だという。資金に余裕がある国は最良の選択ができる。例えばシンガポールだが、装備は米国から調達しており、日本製装備は優れているとは映らず、ましてや実戦の洗礼もない。そうなると短期では輸出解禁の効果は疑わしくなる。
  9. 日本の防衛産業に市場原理の導入が必要だろう。性能重視の姿勢を証明しつつである。武器輸出と共同生産は国内バランスを実現し国産産業基盤を強めつつ米国依存を減らし、次世代装備の研究開発費用を確保することになる。対外バランスの問題もある。
  10. 提案中の潜水艦技術に関する日本オーストラリア間の協力案件が古典的な例で日本が「負担共有」を米側に見せる効果がある。ここでは外部バランス(米国を日本の安全保障に関与させる)が内部バランス(日本独自の安全保障力を整備する)と組み合わさっている。
  11. 輸出は国内防衛産業の業務改善の刺激策になる。成果は日本だけで享受せず日本の同盟国協力国にも恩恵となる。米国が予算制約に苦しむ中で日本は防衛の価値がある同盟国であると自ら証明する必要があるのだ。この「証明」は地域の平和と安定の確保に尽力する米国を意識して日本が真剣さを示す両方向の努力となる。
  12. 大きな難関が残ったままだ。日本には防衛装備輸出を外交政策の一部とする経験が事実上存在せず、政治上のガイドラインは改訂したものの成文化も制度化も未着手だ。企業はあいまいさが残るうちは事業に飛びつかない。法制化は微妙な仕事で特にこの分野では想定外使用と第三者移譲が問題となる。
  13. 使用時の確認が頭の痛い問題になる可能性がある。ガンヤードが指摘するように日本の防衛産業が日本にとって「望ましくない」国家や非国家勢力に装備品を売却すれば大問題となる。ガンヤードはさらに「日本が求めているのは試験的な販売事例でこの方法が定着するかを見たいはずだ」という。ガイドラインの明確化以外に防衛生産増強のリスクを負担する覚悟も日本政府に必要だ。購入国に低金利貸付を提供するとか研究開発の交付金がある。
  14. ガーンヤードは日本企業へのコメントとして「強固な産業基盤の実現には企業合併が唯一の手段だ。日本が世界に通用する国防部門の競争力を実現するには合併、企業買収、国防関連の知財の購入しかない」と述べている。しかしここでも企業には動機が必要だ。防衛と関連がない海外企業を買収するのか(この場合はルールが明確にある)、あるいは防衛関連企業(将来は明確に予測できない)の選択を日本企業は迫られよう。国際的に活躍する防衛企業は資金投入の価値は十分ある。
  15. ビジネス上のリスクは財務関係だけでなく、企業の風評もある。日本の大企業は「死の商人」と呼ばれるのを嫌う。横浜の防衛産業展示会MASTは日本で初の防衛技術展示会で大事な一歩となった。ただし、日本企業ブースに銃器、ミサイル、その他の「あからさまに脅威を与える」装備は全く姿がなかったのが日本企業の考え方を物語っている。定評作りには大変大きな負担が必要なため日本政府はUS-2の販売促進で国内向けにはこれは非軍事装備の案件だと強調している。
  16. 日本はどこをめざすのか。ホーナンはUS-2のインド向け提案とそうりゅう潜水艦のオーストラリア向け提案はともに「例外」案件で、将来は小型かつすき間技術が輸出の中心と見ている。ミサイル追跡センサーが例だ。ATLAが輸出を促進すべく輸出や共同開発の架け橋になり、オーストラリアで三菱重工や川崎重工が展開した広報活動を上回る効果を上げることが期待される。
  17. 各種改革がどれだけ早く実行されるかは政治意思次第でさらに「武力を見せつける」中国や北朝鮮に依存する。日本の防衛産業の難題は変革の速度が遅く慎重すぎることだろう。■

防衛体制の今後、甘い期待の日本が米国に梯子を外される日



あくまでも現状の延長線を予期する日本側に対して米国はもっと先の選択肢を想定しているようです。都合よく考える日本側の論理(例 なぜ国境から遠く離れた地点の事態に日本が巻き込まれる必要があるのかとの一部野党主張)はどんどん現実からかい離していくとわかります。世界の(特に米中の)考え方を日本が正確に把握したうえで重大な決定をしていく必要があります。なかでも憲法改正特に第九条改正が待ったなしに思えるのです。日本のこれからの方向性は過去の延長線ではなく、あらたに設計する未来の設計図にあると思います。


Time to Let Japan Be a Regular Military Power

日本に軍事力整備を許す時が来た
American officials have forgotten the purpose of alliances: defense, not welfare. 米側は同盟関係の根本目的を忘れている。防衛であり、安泰ではない。
A Japanese Ground Self-Defense Force soldier takes part in an annual training session at Higashifuji training field in Gotemba, west of Tokyo, Japan August 24, 2017. REUTERS/Issei Kato
October 29, 2017


  1. 日本国民は安倍晋三首相を支持していない。首相には別の人物に務めてほしいと考えている。だが連立政権は衆議院選挙で三分の二議席を確保した。安倍首相はこの勝利をてこに防衛面での対米依存を終わらせることが可能だ。
  2. 第二次大戦終結後70余年たつが日本には先の戦争の負担がまだ残り世界における役割に制約が残っている。だが中国や北朝鮮の脅威が日本に向かい日本は積極的な外交防衛政策の採用を迫られている。しかるに米国が残した「平和憲法」がいまだに日本の手を縛っている。第九条が軍事力保有を禁じているのだ。
  3. 米国は大戦中のソ連との同盟関係の解消と中華人民共和国(PRC)の出現で態度を逆転し、日本の再武装化に理解を示すした。日本の政策決定層は憲法解釈により「自衛隊」(SDF)を創設した。現在も日本政府は憲法を変更せず戦争への強い嫌悪を示す国民とともに軍事支出に上限を課し、SDFの役割も変更していない。日本には都合いいことに米国が防衛してくれた。
  4. 日本の隣国は戦時中の日本軍の残虐な占領の記憶が残り、ワシントンが日本の完全軍備化を妨げたことを歓迎した。アメリカが「瓶のふた」の役目をしているといみじくも言ったのは海兵隊のヘンリー・スタックポール大将Marine Corps Gen. Henry Stackpoleである。日本に友邦国がないわけではく台湾がその例だが、韓国、フィリピン、中国、オーストラリアはおしなべて日本の安全保障面での役割拡大に警戒的だった。さらに二十年間の日本経済の不振でSDF予算の大幅増は困難だった。
  5. それでも日本は相当の実力のある軍事組織を整備している。予算支出は昨年は500億ドル近くになった。陸軍部隊は小規模ながら海軍空軍部隊は相当の能力があり近代装備を保有している。だが外部脅威は日本の支出規模を凌駕している。
  6. PRCは日本の四倍の軍事予算を使う。さらに核兵器も保有している。過去二回の対日戦では無力だったが、現在の軍事力は着実に伸びており、日本との差は開くばかりだ。東京のテンプル大学のジェフ・キングストンJeff Kingstonは「軍事競争では一方的に中国が有利だ」と解説している。チャイナデイリーUSA版は「好戦的な阿部」が軍事支出を増やしているが「日本にここまでの軍事装備は安全保障上不要だ」と述べている。
  7. 北朝鮮は別の課題だ。平壌の通常軍事力は朝鮮半島外に展開する能力は皆無に近いが、核兵器を整備中であり、化学生物兵器もある。ミサイルで日本を容易に標的にし米国同盟国も狙われる。
  8. 安全保障環境の悪化が日本に圧力となっている。安倍首相は2012年就任後から日本に強い役割を模索している。防衛予算増、新型兵器の導入、SDFの一層広い役割を提言し、自衛隊はイージスアショアミサイル防衛装備、トマホーク巡航ミサイル、F-35戦闘機を主な関心対象とする。
  9. 2014年には第九条の解釈変更で限定的ながら「集団的安全保障」に道を開き、攻撃を受けた米軍への防御が可能となった。日米防衛協力ガイドラインも翌年に変更している。
  10. こうした変更は論議を呼んだが内容は中途半端である。集団的安全保障は合憲と解釈されるようになったが、極めて狭い範囲での実施しか想定していない。道下徳成政策研究院大学院大学教授は新措置では日本自体の安全が危険にならないと米艦船の防御はできないと見ている。さらに日本政府は第九条改正を実現していない。このため軍事行動の選択肢は狭まったままだ。インディアナ大のアダム・P・リフAdam P. Liffは「憲法改正がないままだと一層大規模に第九条の解釈を変更しようとるか、日本の軍事力の海外展開は国内政治再編でもない限り実現不能のままだろう」と述べる。
  11. 安倍首相は北朝鮮への対抗を名目に変更を推し進めようとし、有権者の恐怖を利用した。選挙公約を念頭に安全保障関連で政策推進を一層強く加速するかもしれない。リフは「憲法第九条の解釈の変遷は戦略環境や国内政治の動静が大きく推進してきた」と述べている。小野寺五典防衛相は防衛装備品取得のガイドラインに手をつけ、巡航ミサイル等の新兵器導入を検討し敵基地攻撃能力の整備を検討するとの発言があった。政府は再び憲法改正の政治課題を俎上に載せそうだ。国内エリート層には核兵器取得の検討も見られる。
  12. ただしこうした変更に対する抵抗も熾烈だ。連立政権の相手公明党は安倍の動きに加わることに及び腰だ。財務省は巨額政府債務を軍事支出増の反対理由に挙げる。憲法改正に向けた首相の努力は支持率低下につながったが金正恩の無謀な動きで助けられた格好だ。国民も揺れ動いているがまだ時は熟していない。「日本国民はまだ決心していない」とMIT国際研究センターのリチャード・サムエルスRichard Samuelsは述べている。
  13. さらに憲法の制約を緩和する努力が不十分だ。政府が部隊構成や外交政策を変更すれば支出増とともにリスク増大も覚悟する必要がある。だが劇的な変化は可能性が低い。安倍政権は米国の安全保障の約束がこのまま続くのか確信を持てないようだ。だからといって日本が防衛責務を全部負担するつもりはない。一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの船橋洋一からは「米国の日本防衛への取り組みが弱体化する」可能性を上げてこの動きにくぎをさす。
  14. 対照的に安倍政権は従来以上のコミットメントを米国に求めている。匿名条件で外務省関係者は「戦略的環境は従来より厳しく、一緒にどう対応するのかを検討せざるを得ない」と述べている。つまりワシントンと一緒にいうのだ。「米国には防衛姿勢を再確認してもらいたい。核抑止力も含まれる」と小野寺防衛相は日米閣僚級会合で発言している。「北朝鮮の脅威を念頭に揺らぐことのない米国のコミットメントを抑止力強化に向けることを確認した」
  15. ワシントンも対応している。8月の日米安全保障協議委員会(いわゆる2+2)の共同声明では両国が「日米同盟のさらなる強化に向けた具体策とアクションの展開の意向を共有した」と述べ、「在日米軍の安定したプレゼンスの維持」を含むとした。同席したティラーソン国務長官からは両国が「日本防衛のため米国の大幅な抑止力が大きな意味を果たし、アジア太平洋地区での平和安定にも役立っている点を強調した」と解説していた。
  16. 米国の関与を深めようと日本は北朝鮮への国際社会の一層の対応を後押しした。河野太郎外相は北朝鮮が「非核化への姿勢を明白に示した」ことへの対応とし「対話はない」と発言。安倍首相は「北朝鮮に前例のない高いレベルの圧力をかけ同国の政策を変更させる」と主張し、各国は協調して北朝鮮への「物資、資金、人員、技術の流れを止めて核ミサイル開発を阻止する」べきと主張。さらに必要なのは「対話でなく、圧力」と、ワシントンが主張する「すべての選択肢」がテーブルにある、つまり戦争についても支持を表明した。
  17. このように強硬な政策を示す日本として国力相応の軍事力整備が適当になろう。しかし道下教授は「防衛とはリスクヘッジであり、完全な防衛体制を整備しようとすればとんでもなく大きな予算が必要となる」と懸念を示す。日本政府の視点からすれば米国に任せればいいのになぜ自分で支払う必要があるのかとなるだろう。
  18. 日本政府の戦略は日本には良いが米国にはそうはいかない。米政府関係者は米国民に負担をさせながら覇権をもて遊ぶ立場だがドナルド・トランプ大統領は違う見方をしている。二年前のトランプは中国の脅威について聞かれてこう答えている「もしこちらが一歩引けば、米国の同盟国は自国防衛を充実させるのではないか」「どうしてこちらが各国を守る必要があるのか」ただしそれ以降本人は前任者の路線に方向転換しており、本人が忌み嫌うバラク・オバマも例外でない。
  19. もちろん、米国が東アジアに駐留するのは米国自体の安全保障のためと説明する向きがあろう。ただしそれは第二次大戦終結時の話だ。冷戦は終了した。ロシアが旧ソ連に代わり、日本は経済復興を遂げた。日本には自国防衛能力は十分整備できるし、隣接国と協調すれば地域大の安全保障態勢が生まれる。
  20. 一部にはさらなる日本の役割を期待する向きがある。ディヴィッド・フェイスDavid Feith はウォールストリートジャーナルで在日米軍5万人は「ワシントンで一番価値のある地域内紛争抑止効果」と述べている。そのほかにも同様の主張をする向きがあるが支持は得られていない。米軍が予防するという戦争はどんなものなのか。
  21. 中国と日本は尖閣諸島をめぐり対立中だが今すぐ開戦する状況ではない。だが武力衝突が発生したらどうなうか。豊かな日本が発生抑止に動かないはずがない。沖縄駐留の海兵隊遠征軍は日中戦というより朝鮮半島対応を想定しており、韓国が補助する想定だ。さらに中国台湾間の衝突をワシントンは回避する必要がある。台北は良き友人だが核装備している大国との戦いに巻き込まれる価値はない。台湾防衛に携わるより台湾を武装させる方がよい。
  22. これ以外の可能性は米国が完全に距離を置くべき小規模武力衝突となる。ミャンマー、タイ、カンボジア、ヴィエトナム、インドネシア、マレーシア他で戦争・衝突・崩壊の組み合わせで事態が発生するかもしれない。各事案で犠牲者が発生し不安定化が生まれるだろうが、米国の根源的な利益が危険になる事態ではなく、軍事介入の正当化はできない。アメリカがすべての問題解決にかかわる必要はない。
  23. 日本は自国防衛を全面的に進めるべきだ。だが日本の通常防衛力のみに責任を期待するのでは不十分だ。米国は核の傘を再考すべきだ。日本防衛で米国は東京防衛のためロサンジェルスを犠牲にするリスクを負っている。北朝鮮が米本土を直撃する能力を整備しても米国は無謀な動きに対抗して行動するのみだ。
  24. 明らかに米国は報復力で攻撃を抑止しようとしている。もし歴史上に見られるように抑止力にほころびが出ると戦闘は米本土に及ぶだろう。日本の軍事力整備力を考えればこのリスクを取るのは健全でない。日本国民は核戦力整備には抵抗があろうが、わずかな危険の可能性で防衛支出は米国が自国民に費用負担させる間は最小限に抑えられる。存亡のため今以上の努力が必要と理解できれば、日本は今と違う路線を選択するだろう。
  25. 残念ながら米関係者は同盟関係の意義を忘れてしまっている。安泰ではなく防衛だ。ワシントンは米国防衛のために条約を結ぶべきであり、他国防衛が目的ではない。第二次大戦後の米国は友邦国を専制勢力から適度に防御してきた。この戦略自体は成功してきたが、もう過去の話だ。ワシントンは外交政策で調整を必要としており、軍事力も呼応させるべきだ。今や強力で成功している米国の同盟国が十分に機能できる。米国は各国と利害が一致する範囲で協力を続け、各国では対応できない脅威に目を光らせばよい。各国で可能な内容を米国が自分で実行する必要はない。
  26. 米関係者は日本政府にいちいち指示するのはやめるべきだ。日本国民は自国の権益を考えて国防外交政策を決定すべきであり、アメリカの要望を満足させるのが目的ではない。ワシントンは意向を伝えるだけでよいのでありもっと大事なのは望まないことを伝えるべきだ。つまり安全の保証ではなく、部隊配備せず、日本のために戦闘に入る約束も不要だ。
  27. 米国は70年余も世界の警官の役目をはたしてきた。世界はその間に大きく変化している。そのため米国の政策も日本関係含め変更すべきだ。安倍首相は日本防衛で対米依存を一層強化する姿勢のようだ。ワシントンは逆に安全保障で自立化を日本に諭すべきなのだ。■
Doug Bandow is a Senior Fellow at the Cato Institute. A former Special Assistant to President Ronald Reagan, he is the author of several books, including Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World (Cato Institute) and The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea (co-author, Palgrave/MacMillan).
Image: A Japanese Ground Self-Defense Force soldier takes part in an annual training session at Higashifuji training field in Gotemba, west of Tokyo, Japan August 24, 2017. REUTERS/Issei Kato​


「F-19」と謎の米軍部隊記章



なにかと極秘機材の話題が好きな当ブログですが、ノースロップの存在がいつもつきまとっていますね。それはそれで楽しいのですが、どうも噂の域を超えないようですね。しかし火のないところに煙はたたず、ということもあります。あと数年して機密解除される可能性がないとはかぎりません。



This USAF Intelligence Squadron's Insignia Appears to Show the "F-19 Specter"

米空軍情報隊記章に「F-19スペクター」がついている

It's officially a "generic" airplane, but it sure looks like someone got their inspiration from the fictitious design.

「一般機材」という公式説明だがどこでデザインを拾ってきたのか

DOD INSIGNIA
BY JOSEPH TREVITHICKOCTOBER 23, 2017

  1. 部隊記章には風変わりもの、ぱっとしないもの、問題になりかねないものがと同時に部隊の歴史や任務に関し重要かつ興味深い洞察を与えてくれるものがある。そのひとつに「F-19スペクター」ステルス戦闘機を題材にした記章がある。
  2. アラバマ州軍の第117情報隊の公式記章では衛星ビームが南北アメリカを照らし、F-19Aと思しき機体が信号波を発信する形にまとまっている。州軍航空隊の公式歴史管理局および米陸軍紋章記録所によればこの記章は1989年制定で、当時の第117偵察技術隊のものだ。
  3. 記章の公式説明は以下の通りだ。
「青と黄は空軍の色。青は空で空軍の活動場所で、黄は太陽であり、空軍人員に求められる優秀さを意味する。地球は世界規模での当飛行隊の運用技術を意味する。機体は飛行隊の有する空中監視偵察能力を体現している。衛星は偵察と情報を遠隔地から入手する技術の象徴だ」
  1. 州軍航空隊公式歴史部によると機体は「架空」のもので特定機材を意味する意図はないという。空軍の上位方針ではこれは正しい措置で時を超えても有効な記章にすべく、新機材導入があっても変更を不要にする措置だ。
  2. だがデザインが大衆の信じるF-19Aに酷似しているのは単なる偶然なのか。もちろんスペクターが実在する証拠でもない。事実はその反対だ。
  3. 話の全体像をご存じない方には1980年代に空軍が米軍の戦闘機公式呼称で「19」を飛ばしていることをお教えしたい。F-16はYF-17を破り採用され、その次にF-18が生まれF/A-18になった。
NORTHROP/LORAL
一番詳細なのがロラールのF-19スペクター・ステルス戦闘機の構想図だ。だがあきらかに作者の想像の産物であり、同社技術陣のインプットではない。
  1. だが1982年に空軍は機体呼称制度を使いノースロップ・グラマンのタイガーシャークをF-20と命名している。するとただちにF-19の存在を観測する動きが出て、想像の最大公約数が噂に上っていたステルス戦闘機だった。その6年後に同機はロッキードF-117ナイトホークとして登場したが、極秘機が別に存在すると信じられるようになった。
  2. だが正体は暴露されている。民間航空研究者のアンドレアス・パーシュは自身のdesignation-systems.netで公式文書を引用し、F-19が欠番になったのはノースロップの要請をおもんばかったためと解説している。タイガーシャークの国際販売をもくろんだ同社がF-20名称にこだわったのはMiG-19と混同を防ぐためでソ連が奇数の機体名称を採用していたからだ。
USAF
ノースロップF-20 タイガーシャーク
  1. 果たしてこの話題があったのか疑わしいが、米軍の航空機ミサイルの制式名称には例外が多く標準形と異なる例も多いし、順番でないものやマーケティングや政治配慮のために変えられた型式名がある。好例がC-130JハーキュリーズとC-27Jスパータンの関係で実際に両機はシステム上の共通項もエンジン含め多い。このため空軍はアルファベット8文字を飛ばしてA型のかわりにJにした。
  2. 別のステルス機が存在し途中で使われなくなった可能性は極秘の世界なら考えられる。戦場上空を飛行しながら探知されず奥地まで侵入できる機体が影のステルス機発達の歴史で存在したのかもしれないし、1990年代後半に現れたタシットブルー/BSAX実証機や同様のミッション内容を持つ無人機との間に存在するギャップを埋める機体なのかもしれない。だが同機が信じられているようなF-19の姿だったのか、そもそもF呼称がついていたのかも不明だ。
F-19 広告のひとつ

  1. 別の可能性として米空軍、情報機関、ノースロップが結託してF-20の呼称を採用させステルス機の存在で混乱させ関心をそらすため偽情報にしたという可能性もある。実際のF-117やB-2はスペクターの姿とは似ても似つかない。一般が欠番の「F-19」に関心をいだくならソ連軍情報部も明らかに興味を示すはずだ。
VIA HITECHWEB.GENEZIS.EU
この写真は空軍関係催事がラスベガスで1986年にあった際に展示されたものでノースロップ/ロラールの初期のATF設計案を表している。これに手を入れたデザインが各種広告でF-19として表れている。YF-23はステルス機としてもっと洗練されノースロップのAFT案となった。
  1. そこで第117偵察戦術飛行隊の記章だが内輪のジョークのようで同隊は記章制定時に機材を保有していなかった。当時の同隊の任務はSR-71ブラックバード、U-2ドラゴンレイディ、RF-4CファントムII各偵察機の撮影したフィルの処理、解析さらに画像情報の配信で、おそらく記章制定時に機密扱いではなかったF-19のイメージを採用するのが極秘機材と縁がある同隊に都合がよかったのではないか。
  2. 1989年はF-117公開から一年後だが、F-19の噂が航空機愛好家にまだ残っており、一般大衆も同様だった。1988年にマイクロプローズがF-19のコンピューターゲームを発売しており、ハズブロもGIジョーX-19ファントムを発表したのも同機を強く意識したものだ。
  3. 「謎の機体」のプラスチックモデルは数多く発売されている。当時最も人気のあった設計案を採用したものが多い。丸みを帯びた大きな主翼はノースロップ/ロラール広告の影響を受けており、機体が細いのはSR-71からヒントを受けたとメーカーのテスターTestorは説明していた。このテスター製品がレヴェルやイタレリからその後も販売され700千個も売れている。
  4. 第117情報隊は今日も当時同様の任務にあたっているが、情報解析には衛星画像や無人機からのフルモーション画像が使われている。湾岸戦争(1991年)以降主要作戦10ケを支援しており、ハリケーンカトリーナ(2005年)やディープウォーターホライゾンの原油漏出事故(2010年)も含まれる。
  5. 同隊は今日も同じ記章を使っている。ご紹介した背景事情以外の内容をご存知の場合はぜひEメールでお知らせいただきたい。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com


2017年10月29日日曜日

米朝開戦は不可避になったのか



朝鮮半島の非核化には核そのものを破壊するしかないのではないでしょうか。交渉に期待する向きには現実の受け入れは不可能でしょうね。トランプ大統領の訪韓を巡りレトリックが今後活発化すると思われますが、米軍の動きはわかるのですが、北朝鮮の動向は見えてきません。その中で韓国の動きがポイントになりそうです。トランプ訪韓への反対デモに参加する人たちの動きを米国も苛立たしく見ているはずです、ろうそくデモ参加者、沖縄の不法デモに参加した人たちとも重なり、北朝鮮に併合されてもいいと考えているのではないですか。北朝鮮の核がそのまま統一朝鮮の武力になると見ているとしたら情けない話ですね。


Why North Korea and America Could Be on the Road to War

北朝鮮と米国が戦争への道に向かう理由とは何か
October 28, 2017


  1. 米韓両国は北朝鮮に核兵器放棄を求めているが、ワシントンがどこまでの結果を求めているか見えてこない。平壌に核廃棄で得られる効果がなく、ワシントンも目の先に示すニンジンがほとんどない状態だ。
  2. ジェイムズ・マティス国防長官は10月27日非武装境界線(DMZ)で「この背後の抑圧的政権は国民を拘束し自由を否定し国民の福祉と尊厳をないがしろにして核兵器開発を進めることで破滅以外のなにものも招かない」と発言している。
  3. 「北朝鮮の挑発は地域のみならず世界平和にも脅威となっている。国連安全保障理事会の全会一致の非難をものともせず、進めている。ティラーソン国務長官が明示したようにわが方の目標は戦争ではなく完璧かつ検証できる形であともどりのない朝鮮半島の非核化である」
  4. 韓国国防相宋永武Song Young-Mooも平壌に交渉の席につくよう求めながら同時に金正恩政権に対し北朝鮮の好戦的な振舞いは看過できないと警告している。「北朝鮮が核、ミサイルを開発を続けているがその使用は絶対に許されるものではない」「仮に使用されれば韓米連合軍による強力かつ断固とした対応を目にすることになる。したがって北朝鮮には無謀な挑発をただちに中止し平和と対話への道に向かうよう切に願う」
  5. ただし交渉の余地があるのかはっきりしない。
  6. ホワイトハウスからはドナルド・トランプ大統領は核武装した北朝鮮が米国をICBMで直撃する事態は受け入れられないと声明を発表。
  7. 「大統領の北朝鮮に対する姿勢は極めて明瞭」と国家安全保障担当補佐官H・R・マクマスター中将は10月19日に国防民主制財団講演で述べている。「大統領は米国の体制そのものを脅かす核兵器は甘受できない。『現実を受け入れ封じ込めればよい』との意見もあるが、たしかに受け入れて封じ込めするのは受け入れられないことはない。そうなると軍事行動を除く形で解決策を求めていかねばならない」
  8. 北朝鮮の立場も同様に妥協の余地がない。10月11日、北朝鮮外相李容浩Ri Yong-hoはトランプを「戦争への導火線」に火をつけていると非難し、DPRKは決して核兵器を放棄しないと述べている。「最終目標への道程で最終地点はほぼ達成している。米国との力のバランスを確保できるようになる」「当方の核兵器は交渉の対象に絶対にさせない。米国がDPRKへの圧力を緩めない限りはだ」.
  9. 外交問題専門家の大部分が非核化した朝鮮半島の実現は非現実的かつ達成可能な目標ではないと述べる。より現実的な目標は核兵器、弾道ミサイルの実験凍結だろう。もし北朝鮮がICBM技術完成に近づき弾頭小型化まで完成させていれば平壌にいまさら中止する意味がない。
  10. 金正恩政権の視点では自らの存続のためには米本土直撃可能な武器こそが必要だ。北朝鮮はリビアのムアマール・カダフィ政権が2011年に米空軍力の前に屈した事実から学んでおり、大量破壊兵器の放棄と引き換えに安全の保証を求めるはずだ。
  11. 「金正恩は気が狂っているわけではない。また自らの存続のみを求める動きには合理性はあり、世界は核のカードを手にした同国を注視し、抑止効果も出てくるだろう」と国家情報長官のダン・コーツ上院議員Sen. Dan Coatsがアスペン安全保障フォーラムで7月に述べている。「リビアの核放棄、ウクライナの核放棄で学んだ教訓とはいったん核兵器を手に入れたら放棄することはありえないということだ」
  12. そうなると軍事行動(この場合は核戦争になりそう)以外では朝鮮半島の非核化はありえないだろう。選択肢は二者択一で、抑止か戦争かだ。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.