2018年11月29日木曜日

イージスアショアが日本に必要な理由

China Has Built ‘Great Wall of SAMs’ In Pacific: US Adm. Davidson 中国は太平洋に「SAMの長城」を構築した、とディヴィッドソン提督が発言

From militarized atolls in the South China Sea to a growing Chinese navy looking increasingly aggressive, the head of the Indo-Pacom command lays out his needs and concerns.南シナ海の軍事化、中国海軍の行動が一層無鉄砲さを増していることを念頭にインド太平洋方面司令官が警鐘を鳴らし行動を求めている


By PAUL MCLEARYon November 17, 2018

CSIS image
南シナ海フィアリークロス礁に中国が構築した航空施設 (CSIS image)
シナ海のサンゴ礁や環礁を強固な人工島拠点に変えた中国は対空、対艦ミサイルを持ち込み、「わずか三年前は砂しかなかった地点をSAMの長城に変えてしまった」と太平洋での米司令官が発言。
重要な通商航路で軍事化が進むことは米国のみならずアジア諸国の懸念事項だ。だが中国がますます米艦船に攻撃的になっているが米国や同盟国は国際水域と認識している。9月には両国艦船が衝突寸前の事態になった。いつの日か深刻な事故が発生すれば一気に戦闘にエスカレートする恐れがあると言われる。開戦となれば人工島上の基地は米艦船航空機への防衛網となり中国がめざすA2ADといわれる接近阻止領域拒否の手段となる。
中国で海軍艦艇の建造が続き、沿岸警備力が整備されつつある中で、隻数だけ見れば中国海軍は米海軍を凌ぐ存在になっている。ただし中国艦船の大部分は小型、短距離運用の沿岸用艦船だ。今回インド太平洋軍(INDOPACOM)司令官フィリップ・デイヴィッドソン海軍大将が恒例のハリファックス安全保障会議に登壇したため記者は対応案を聞いてみた。
「海軍の規模拡大が必要です」と大将は海軍上層部が現在の286隻を355隻体制に引き上げるべきと発言していることに触れた。中国海軍が拡大する中で「量的拡大は今後も課題」と記者に答えた。
フィル・デイヴィドソン大将
イージス・アショア導入を急ぐ理由とは
太平洋で中国に対応する艦船部隊の負担を軽減する方法の一つが弾道ミサイル防衛任務を現在のイージス巡洋艦・駆逐艦からイージスアショアに任せると提督は述べた。これは海軍作戦部長ジョン・リチャードソン大将や前任のジョナサン・グリナート大将の主張と同じだ。
また中国による地上配備ミサイルの拡充が今回トランプ政権が1987年INF条約から脱した理由となり、米国も同様のミサイル開発を可能にする狙いがある。
デイヴィッドソンは「海軍に行動の自由を復活させたい」とし弾道ミサイル防衛を陸上に移すことがその方法なのだという。そうなるとイージス巡洋艦・駆逐艦は垂直発射管にSM-3対弾道弾迎撃ミサイルのかわりに別のミサイルを搭載できる。たとえばトマホーク巡航ミサイル、LRASM対艦ミサイルで、防衛対象の都市の前後に展開するかわりに太平洋を自由に航行できる。
イージスシステムはもともと水上艦隊をソ連の大規模攻撃から防御する目的で作られた。中国の軍事力が台頭したことで再びこの脅威が復活し、海軍はイージス艦を当初の狙いにあてることとなった。「イージスシステムは海上での対艦弾道ミサイルに対応するなど高性能が期待できます。将来も水上展開する部隊の防御に必要な装備です」(デイヴィドソン提督)
日本はイージス・アショアを二地点に導入すると決めたが、「基本的に日本用のミサイル防衛装備である」とディヴィッドソンは説明。
Navy photo.
今年はじめに日本は20億ドルで地上配備イージス・アショアレーダーミサイル追尾拠点の構築をロッキード・マーティンに求めている。海上自衛隊は同様の能力を水上艦で運用中だ。ルーマニア、ポーランドで同装備が整備されている。
ただしイージス・アショアの稼働開始は2025年以降となる。イージス・アショアは水上艦とリンクされ北朝鮮ミサイル対応策の効果が向上する。
中国は航空母艦、潜水艦初め海軍艦艇を急速に建造しており、ついに昨年に世界最大の海軍国になったがデイヴィッドソン大将はロシアの太平洋地区での動きも注視している。
「ロシア軍事活動は大部分が世界の別の地域で展開されているが太平洋でも動きを強めており、外交活動の妨害を目指している」と述べ、最新弾道ミサイル潜水艦三隻を太平洋に配備していることを取り上げた。

太平洋のロシア軍事力の規模は比較的小さく、ロシアは太平洋で米国あるいは中国に対して海洋支配を巡り挑戦する構想は今のところない。■

2018年11月28日水曜日

F-35の英空母艦上テストは順調に行われたようだが....

Aerospace Daily & Defense Report

UK Hails Successful Initial F-35 Carrier Trials 初のF-35艦上運用テストを成功と英国が判定

Nov 22, 2018Tony Osborne | Aerospace Daily & Defense Report


Lockheed Martin


軍向けロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機の新型空母HMSクイーン・エリザベス艦上での初運用試験は期待以上の成果を上げたと軍上層部が述べている。
三回予定の開発テストで二回(DT-1 、DT-2)までが米東海岸で11月18日行われ、F-35は離陸202回、垂直着陸187回、垂直ローリング着艦(SRVL)を15回実施した。
フライト時間は計75時間を記録しテストパイロット4名は兵装投下54回もこなした。
日程は多忙で困難だったが結果から希望が見えてきた、とHMSクイーン・エリザベス艦長ニック・クック・プリースト大佐が所感を述べている。
「今回の運用は単なる固定翼機の艦上運用以上お意味がある。英海軍に航空戦力を復活させたことであり、同盟国にも意味がある」
DT-1は9月25日にはじまり英海軍テストパイロットのネイサン・グレイ中佐がF-35Bで同艦に初めて着艦した。DT-1ではSRVLも初実施し、10月半ばまで続き、その時点でHMSクイーン・エリザベスがニューヨークに到着した。
DT-2の目標は多様な天候条件と荒天下での海上運用で、F-35の機首を舷側に向けた着艦に初挑戦する。通常は機首は艦首に向けて着艦する。
テスト部隊の技術陣は艦と機体双方からデータを記録し天候条件、湿度、ピッチ-ロール角度、機体重量でそれぞれ上限を決定する。
同部隊は各種兵装を内部、外部に搭載し同艦が搭載する自動装填装置を活用している。
三回目のテストは2019年夏の予定でその後実戦テストが控える。■


これに対し原記事に以下のような厳しいコメントがついています。

記事の真意がわからない。ここまで遅延している同機だが英軍向けF-35Bの配備そのものが成功といえるのか。あるいはクイーン・エリザベスへのF-35B搭載が成功ということなのか。F-35Bは米海兵隊が先に運用開始しているが、実は真の意味で実戦能力を備えている状態ではない。過去三年間のAWST記事をご覧いただければおわかりと思う。英海軍艦船でF-35Bの運用ができる状態にあれば良いと思う。ただしこれは大いに疑わしい。同機各型は戦闘可能な状態に程遠くさらに数十億ドルもの追加資金投入、数年間かけないと作戦運用可能と認定されない状態にある。

2018年11月27日火曜日

★緊急記事 ウクライナで何が起きているのか



The Coming War over Ukraine? ウクライナ巡りロシアと開戦が近づいているのか

The danger of escalation is real and must be treated as such.エスカレーションの危険は現実であり準備が必要だ
November 26, 2018  Topic: Security  Region: Europe  Tags: UkraineSea Of AzovRussiaCrimeaWar

11月25日、ケルチ海峡でロシアがウクライナ海軍舟艇3隻を攻撃し拿捕した。ウクライナ海軍によればロシア側が先に攻撃を開始し、ウクライナ海軍に少なくとも六名の負傷者が発生したという。
同日にウクライナのポロシェンコ大統領と戦時内閣はウクライナに戒厳令を敷く決議を採択した。ウクライナ議会は本会議で11月26日に可決する見込みだ。
ロシアがケルチ海峡で強硬な態度に出たこと、ウクライナ側の対応が従来と異なることは両国の軍事衝突にエスカレートの危険が増えていることを示す。
ケルチ海峡は地理戦略上で大きな意味がある。東にロシア本土があり、西にはロシアが占拠するクリミア半島がある。同海峡はアゾフ海、黒海を結ぶ唯一の水路のため、アゾフ海沿岸に重要な意味を有する。ウクライナのマリウポリはロシア分離勢力が繰り返し占拠をねらう地点だ。
そのためウクライナ、ロシア両国が同海峡をめぐり2014年以降繰り返し衝突をしているのは不思議ではない。
ソ連崩壊でケルチ海峡は法律、政治両面で対立の対象となった。ウクライナが一方的に国境線を同海峡に敷いたのは1999年のことでアゾフ海の一部も国際水面と宣言した。
これに対しロシアは2003年に本土から両国がそれぞれ領土を主張するツツラ島につながる堤防を構築しはじめた。この事案をウクライナ指導層・専門家ともにロシアの侵略的態度の象徴としている。
ロシアはケルチ海峡の支配を更に追求し、クリミヤ半島まで手を伸ばしたため両国は2014年以前にも軍事衝突一歩手前になっていた。
2005年5月23日にロシア揚陸戦隊がクリミアのフェノドシヤ近くに上陸しようとし、ウクライナ国境警備隊に撃退される事案が発生している。この先例として1994年にウクライナ、ロシアが一触即発になったことがある。このときはロシアが黒海艦隊艦艇を拿捕している。各艦は高価な装備を搭載していた。
クリミア半島併合(2014年)に続きロシアはケルチ海峡をまたがる橋の建設を始めたためウクライナはアゾフ海がロシアの手に落ちることを恐れ、1982年国連海洋法条約違反としてロシアを訴えた。
ロシア、ウクライナ両国の軍事衝突がエスカレーションする危険は現実のものであり、危険度は上がってた。戦闘となった場合の結果は予測できない。
ロシアはこの可能性を気にかけず、ウクライナからシリアへ、更に米国が核装備近代化に向かうことを非難し、さらにロシアから西欧向け天然ガス供給に関心の的を移そうとしている。
更に主に国内向けにロシア国営メディアはウクライナ政府批判を続けている一方でケルチ橋完成をいわし、クリミアに経済奇跡が起こると祝賀ムードだ。
こうした態度が逆にウクライナの報復に火をつけている。ウクライナ側の不満のたねが数々あることは十分理解できる。クリミアは占拠されたままだし、西側諸国は報復措置がクリミア問題の解決でクリミア和平を獎めるのが狙いとすることで既成事実を実施的に認める格好だ。
時同じくしてロシア大統領ウラジミール・プーチンはクリミアに爆撃機、イスカンダルミサイルの配備を認めた。2014年を境にロシア国民のプーチン支持は経済実績と無関係になっており、大国としてのロシアの実績が中心になっている。この効果は減少しつつあるもののクリミア併合がプーチンの支持率を支えたのも事実だ。したがってウクライナ危機でロシアがおとなしく食い下がる事態は考えにくい。
同時にウクライナも軍備増強しながら地上戦の指揮命令系統を強化している。米国が対戦車ミサイルのジャヴェリンを供与したのは氷山の一角だ。このためウクライナが2014年のように引き下がる事態は考えにくい。首都キエフではウクライナ軍による新規事態の成立を期待する声が強い。
だがこの事態でもウクライナ国内政治は悪化の一方だ。2019年3月には大統領選挙を控える。最新の世論調査では現職のペトロ・ポロシェンコは対立候補ユーラ・ティモシェンコの後を追っている。ティモシェンコ候補はドンバス、クリミア、ロシアを選挙運動の中心にしポロシェンコを批判している。
ティモシェンコの選挙戦略、ミンスク和平合意の失速、ウクライナ経済の停滞、汚職の蔓延、さらにポロシェンコ自身が疑わしいビジネスに関与している疑いにより現職大統領の再選の可能性は狭まっている観がある。最大の希望は戦時大統領として強い指導者像を示すことだ。そこで戒厳令を敷くのはこの観測を強めるものだ。ウクライナのエリート層では激しい抗争が当たり前であり、ユーラ・ティモシェンコの実績に疑わしい点があることから楽観視できる状況ではない。
では西側諸国も内部事情を理解しながらもウクライナ、ロシア間の軍事対決のエスカレーション緩和には関心をほとんど寄せいていない。このまま続きそうだが、トランプのまわりの混乱、ブレグジット関連作業が中心の欧州となっているためだ。ちなみに英国はウクライナ大統領選挙投票日の2日前に正式に欧州から離脱することになる。
ウクライナを巡る戦闘勃発はすぐにも発生しないとしても危険性は現実のものだ。
Jonas J. Driedger is a German policy analyst at the European University Institute in Florence, Italy. He is also currently a visiting scholar at the Higher School of Economics in Moscow and partakes in the Alfa Fellowship Program. He specializes in foreign and security policy with a focus on Germany, the European Union and Russia. His analyses were published in The National Interest, Politico Europe, per Concordiam, EUObserver, and EurActiv. The views expressed in this article are solely his own.

Image: Reuters

第一次大戦事例から日中開戦の勝者を占う

What World War I Tells Us About a China-Japan War Today 

第一次大戦の先例から日中開戦の様相がわかる

"The Great War at sea presents an example worth emulating in certain respects and modifying or rejecting in others. Let’s devise forces capable of mounting a low-cost strategy, keep the alliance sturdy, and cultivate mariners, soldiers, and aviators who extract full value from their fighting machines. Do that and Tokyo may yet prevail."
第一次大戦時の海上対決にはそのまま適用できる要素の一方で事情が異なる要素もある。低費用戦略の実行にむけ戦力構築し、同盟関係を堅固に維持し、戦闘マシンの性能を最大限に引き出せるよう陸海空の隊員を育成しようではないか。これが実行できれば日本は優位に立てる


November 24, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaPLANMaritime InsurgencyMaritime MilitiaSouth China Sea
一次世界大戦の研究から現代のアジア地政学を理解し対処方法もわかる。

では第一次大戦が中国と日本の軍事バランスとどう関係するのか、また東アジアで戦火がひろがればどうなるのか。日本では中国人民解放軍(PLA)が自衛隊(JSDF)を圧倒するとの見方がこれまで主流だった。人口構成、経済力、国防予算等々すべて中国が優位だ。


大陸国家の中国で驚異的な経済成長と国防予算の拡大が長年続く一方、島嶼国の日本で経済が停滞している対照は否定できない。経済が好調なら軍事力増強に必要な材料が入手可能となる。逆に経済が不調だと軍事装備の整備が思うに任せない。中国は経済改革の結果を享受してきた。すべての点でPLAに有利な状況に見える。


だがそこまで単純ではない。戦闘では装備数が全てではない。逆だ。使える装備を組み合わせ戦術面で有利な状況を生み出す能力こそ重要であり、軍事装備は一国の兵力の一部にすぎない。地理条件も重要だ。このためクラウゼビッツは各指揮官に正しい戦力評価のためには戦闘部隊のもつ能力とともに状況把握を忠告している。ハードウェアの合計数は一部にすぎない。


この意味で地理は日本にも重要だ。日本はもうひとつの島嶼国家と似ており、大陸の強国に直面した状況が同じだ。この国は大陸に居座る侵略国に真っ向から対決した。それが世紀末の英国であった。英諸島は低地諸国、ドイツ、バルト諸国から大西洋に向かう航路を横切る形で位置している。強力な英海軍にとって北海、バルト海で北西ヨーロッパ諸国の海軍部隊を封鎖するのは港湾施設が多いフランスや地中海の封鎖に比べれば容易な仕事だった。


英海軍としては航路を2つ封鎖すれば事たりた。狭い英仏海峡では機雷を敷設し、小型魚雷艇を配備し、沿岸に砲兵をおけばよかった。これに対しスコットランドとノルウェーの間は広い。英海軍の拠点スコットランドのスカパ・フローからノルウェー沿岸まで250マイルの距離だ。英本国艦隊はドイツ大海艦隊に対抗して防衛線を広く設定する必要に迫られた。これで艦艇を集中して使うことになったが実効性ある戦略だった。


だが日英両国の類似はここまでだ。英国の海洋支配は以前から続いていた。日本が世界規模で海洋大国であるとはいえない。それでも英国が北海沖や英仏海峡で実施した封鎖作戦を日本が中国北部で踏襲することは可能だ。


日本本土および南西の琉球、尖閣諸島は台灣以北の中国本土港湾を取り囲んでいる。中国が「第一列島線」を抜けるため特定の海峡を通過する必要がある。島の形状だが不沈の砦になる。そこで島しょ部で防備を固め、戦闘艦艇あるいは軍用機で海峡を封鎖すれば中国本土に向かう海運空運を抑える事が可能だ。


中国の経済活動、軍事作戦にとって西太平洋からインド洋へのアクセス確保が不可欠だ。このアクセスをJSDFが制限すれば中国に深刻な事態となる。その結果、PLAの作戦活動も低下する。中国は封じ込め可能だが、帝政ドイツでは不可能だった。


最良の選択は小型舟艇や航空機を、有人無人問わず、大量運用し、列島線防衛の第一線としつつ対艦、対空ミサイルの地上配備だ。この実施にかかる費用はイージス艦建造よりずっと安い。大量装備できる。これは予算的に実行可能な戦略だ。日本は中国の国防予算規模・軍事力構成を逆手にとれる。海上自衛隊(JMSDF)に英海軍戦艦・巡洋艦艦隊による哨戒封鎖線の設定は不要だ。日本に必要なのは「戦隊」級艦艇である。


狭い英仏海峡での封鎖作戦はスコットランド-ノルウェー封鎖よりJSDFに参考になるはずだ。日本は安価にこれを実施できる。


英国にはUボートの封鎖線突破が別の問題だった。水上を進み英海軍封鎖艦艇をすり抜け大洋に移動し商船隊を沈めた。だがこの点でも現代の日本に有利な状況がある。海峡付近の海底地形から潜水艦の動きはある程度予測がつく。潜水艦は既知の移動経路をたどり大洋に移動する。また地形のため潜行深度にも制約がつき、封鎖線突破が困難となる。潜水艦の行動範囲が狭まるため対潜作戦は容易だ。


つまりJSMDFはじめ日本側は相手に対抗する規模の装備を展開せずに100年前の英海軍がと同じ封鎖作戦を効果的に行える。クラウゼビッツの言い方を借りれば、軍事力での優位性は中国にあるが、地理条件で日本が有利だ。両国が一対一で対戦すればどちらに軍配が下るかは明らかである。


だが東アジアで戦火が開けば一対一の戦いになるだろうか。ここからは第一次大戦の経験と離れる。今日の日本は海洋支配の大国ではなく、海洋覇権では米国という大国との同盟関係から多大の恩恵を受けている。日米両国の関係が続く限り片方に足りない戦力は他方が補う構造のままだ。


JSDFの戦力に米太平洋方面の軍事力が加われば戦力バランスの真の姿が見えてくる。


英米同盟が1914年時点で成立していたらどうなっていたか。米国はその時点で世界大国の座についていなかったが国力は増強中だった。その経済力、工業力は英国の支配力に陰りが見え始める間も着実に伸びていた。ドイツ皇帝とその一味がベルギー、フランス侵攻を思いとどまっていれば米国が別の大国として協約締結国になっていただろう。米国がヨーロッパの地政学を重視していれば平和が続いていたかもしれない。


だが米国ではアジアの政治状況を重視する姿勢がここ数十年続いている。日米安全保障条約は1950年代に生まれ、現在の条約は1960年改訂版であり、冷戦期、脱冷戦期もアジアの地政学競争で中国が台頭しても一貫して堅固に維持されている。日米安保はNATOを形成した北大西洋条約とならび同盟関係の黄金律とでも言うべき存在だ。


そこで有事に東アジアの軍事バランスが不明確になれば、日米同盟が地理上の優位性を発揮する。各種戦闘シナリオや予見で同盟両国に実戦で必要となる行動が可能なのかを検討しているところだが実戦に近くなればなるほど欠点が露呈される部隊構成を鍛え直し戦略を更新できるのだ。

英国が「輝かしい孤立」から抜け出し大国同士の戦闘に向かったのは100年前のことだ。これにより英国は一大方向転換を遂げドイツは英国の大陸政策理解の再検討を迫られた。日本はPLAに単独で対決する必要はないと理解しており、中国もこれを知っている。

そこで部隊の技量水準、戦意の問題が出てくる。戦争とはつまるところ人間の行為だ。第一次大戦でブラドレー・フィスク提督が海軍を戦闘マシンと位置づけた。(これは陸軍や空軍にもあてはまる) マシンの作動には高い技量を持つ使用者が不可欠だ。熟練整備員ならマシンの最大能力を引き出せる。だが中途半端で士気の低い要員がマシンを扱えば性能の一部しか使えない。対峙する両軍が同様の装備、センサー等を使っても一方が負ける。敗北を喫するのは訓練が足りない、戦略が不備がある、戦術や作戦で欠陥がある側だ。あるいは戦意が第一線部隊に不足しているなど人的要素がもろい側が敗北するのだ。

人的能力は把握が困難だが決定的要素である。中国が本格的外洋部隊を前回運用したのは600年前の明朝のことで、海洋戦闘では新参者といってよい。これに対し日本側には多大な実績がある。帝国海軍時代の羨ましいほどの記録だ。日本研究者のAlessio Patalanoは今日の海上自衛隊は第二次大戦時の帝国海軍は無視していると記している。逆に東郷平八郎提督が率いた明治時代の海軍が誕生後数十年で中国、ロシアを撃破した事実に注目している。これこそが伝統というものだろう。

日本には大国を屈服させた実績があり、しかも堂々とこれをやってのけたのだ。

そうなると日中戦争の結果を占うのは単純かつ明白だ。また良い結果となる。アジアでの意見対立を軍事力で制圧できる自信に疑いが残れば中国指導部も寛容さを示さざるを得ない。中国側に疑義や恐怖があれば日米同盟にとっては好結果だ。

第一次大戦時の海上対決にはそのまま適用できる要素の一方で事情が異なる要素もある。低費用戦略の実行にむけ戦力構築し、同盟関係を堅固に維持し、戦闘マシンの性能を最大限に引き出せるよう陸海空の隊員を育成しようではないか。これが実行できれば日本は優位に立てる。■

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific (second edition due out next month). The views voiced here are his alone.​
Image: Reuters.


今年は第一次大戦終結100周年ですのでいろいろな考察がでてきていますがホームズ教授が日中での有事を想定してくれました。参考になりましたでしょうか。日本としては賢く戦力を整備運用して中国に無駄な労力を払わせるわけですか。なんでも大きいこと、量が多いことを自慢したがる中国ですからやすやすとこの作戦にひっかかればいつかロシアのように経済が破綻してしまうかもしれません。そうなると中国にとって日本がますます目の上のたんこぶになるはずで、「見えない侵略」つまり日本を内部から崩壊させようとする工作も激化しそうです。国と国の関係に「純粋な友好」はありえず、敵と思って一定の実力を維持することで「敬意」が生まれるのではないでしょうか。このブログを御覧の皆さんには通じても「平和」愛好家の人には理解出来ない論理でしょうか。

2018年11月26日月曜日

イスラエル、F-15IA採用の最終決定はまだ

IDF: No decision on advanced F-15s as yet 

イスラエル国防軍:高性能版F-15導入は最終決定ではない

Yaakov Lappin, Tel Aviv and Jeremy Binnie - IHS Jane's Defence Weekly
22 November 2018

イスラエルは高性能版F-15の調達を検討中だが、最終決定はまだ下していない
Source: Boeing

スラエルは高性能版ボーイングF-15多任務戦闘機導入を最終決定していないとイスラエル国防軍(IDF)がJane'sに語った。

「あらゆる可能性をIDFはIAF(イスラエル空軍)、国防関連機関と検討中であり、結論は出ていない」とIDFが11月20日に声明を出した。

Ynet ニュースが11月19日にF-15IAの採用をIAFが決めたと報じていた。記事ではイスラエルが高性能F-15IAの調達を決定し同時にロッキード・マーティンF-35の50機購入もすすめるとしていた。

F-15IAとはF-15高性能版イーグルのイスラエル制式名称で、サウジアラビア向けF-15SAは生産中でカタールもF-15QAを発注している。カタール向け機材にはイスラエル企業エルビットの大型ディスプレイが搭載されている点が異なる。

YnetによればイスラエルがF-15IA導入を検討した際に米国が反対し、イスラエルのF-35発注が減るのを恐れたとある。同記事で言及した文書はリーバーマン国防相が決済したとありIAFはF-35三個飛行隊の整備をそのまま進める。一個飛行隊は25機構成だ。■

だそうですが、高性能版イーグル導入は既定の方針といってよいのではないでしょうか。中東でこぞって新型機導入が進む中で旧型機多数を抱え込む日米の空軍は指を加えてながめるしかないのでしょうか。それとも?

B-21調達は200機へ拡大の可能性、2030年代の米爆撃機構成を大胆に予測



Could the Air Force End Up with 200 New B-21 Stealth Bombers? 米空軍はB-21調達を200機まで拡大するのか

It could happen. Here's how. 可能性はある。その場合はこうなる
November 22, 2018  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz Tags: B-21B-52U.S. Air ForceChinaRussia
空軍はB-21レイダー・ステルス爆撃機の運用基地の準備に入った。だがB-21の調達規模はいまだはっきりしない。
選ばれたのはティンカー空軍基地(オクラホマ州)で同機の整備拠点となることが11月16日の空軍発表からわかる。
ジョージア州のロビンス空軍基地、ユタ州のヒル空軍基地もティンカー基地を支援する。エドワーズ空軍基地(カリフォーニア)がテスト拠点となる。
この発表に何ら驚くべき情報はない。ティンカーは航空補給施設の主要基地で一万名ほどの軍民関係者がB-1B、B-52、KC-135、E-3やE-6の重整備にあたっている。エドワーズはテスト機の基地として空軍現有機ほぼ全部を運用してきた。
「各基地の活用でB-21の開発、運用が大きく前進する。B-21は長距離性能があり敵防空網を突破し重要任務をこなして十分生存できる機体である」と空軍は述べており、レイダー初号機は2020年代中頃の就役とある。
とはいえ空軍にB-21が何機揃うのかは今も不明だ。ペンタゴンはノースロップ・グラマンのレイダー生産機数を時の経過につれて変更しており、2015年10月時点では80機から100機で総経費を200億ドル程度としていた。
だが空軍の2017年度予算要求では最低機数が100機に増えている。「今世紀通じて航空優勢確保の持続のため最低100機のB-21を調達したい」との説明だった。「最低100機の調達でライフサイクル運用コストが下がる。さらに今後の爆撃機部隊の適正規模を検討中だ」
その時点ではB-21導入でB-2、B-1Bを運用中のテキサス、サウスダコタ、ミズーリの各基地で廃棄する予定だった。「各基地の運用で影響を最小限にし、運用経費を削減しながら既存施設の再利用を最大限にしながらコストは下げられる」との説明だった。
2018年現在で空軍には1990年代製のノースロップ・グラマンB-2が20機、ロックウェルが1980年代に製造したB-1Bが63機ある。空軍は2030年時点でB-21を100機、ボーイングB-52Hと併用の方針だ。B-52は1960年代の機体だが改修を受けており76機が2018年現在稼働中だ。
だが爆撃飛行隊は増える。2018年現在は第一線爆撃飛行隊は計9ある。2018年9月に飛行隊を5つ増やすとの空軍発表があった。
「目標を裏付ける調達予定がともなっていないが、関係者は75機追加が必要と見ており、その時点で生産中の機材はB-21しかない」と議会調査部は2018年10月の報告書で指摘している。
あるいは空軍が旧型機の稼働期間を伸ばす可能性もあると議会調査部は指摘。「B-21調達を拡大する決定をするにあたり議会は費用対効果の比較で新型機導入と既存機の可動期間延長の比較検証を求めるだろう」
「この比較は容易ではない。というのもB-52は稼働期間を80年の想定で、軍用機でここまで長く運用した例がないためだ。B-52で防空網の進化に耐えられるのかは別にしても機齢80年の機体を整備し稼働させるのは難易度が高いだろう」
空軍が5個爆撃飛行隊を追加し、B-52Hを他機種と退役させればB-21は200機以上必要となり、事業規模は増大するはずだ。■
David Axe edits War Is Boring. He is the author of the new graphic novels MACHETE SQUAD and THE STAN.
B-21はもともとLRS-Bと呼ばれていたようにファミリー構成のBつまり爆撃機型のはずですから、残りの機体がどうなるのかが関心を呼ぶところです。格闘戦闘機にかわる制空機とでも言うべき重武装機や電子戦やISR機への進化も期待しているのですが、今の所爆撃機の話題ばかりですね。あるいはブラック事業で裏で別の機体が開発されているのか。いずれにせよ、B-21の実機を誰も見ていない状態なのですが、2020年代中頃の就役であれば意外に早く開発が進んでいるのでしょうか。あるいは既に初飛行しているのかもしれません。中国を意識して今回はペンタゴンも徹底した情報管理を行っているようですね。