2019年9月30日月曜日

冷戦時のソ連核攻撃計画の概要が情報公開されました。実施されていれば我々は存在していないかも。



This Was America's Secret Cold War Strategy to Nuke Russia Back to the Stone Ageこれがロシアを核攻撃で石器時代に戻す冷戦時の米秘密戦略構想だった

.
戦が熱核戦争になっていたら、米国とソ連は相互に破壊され尽くされていただろう。
今回初めてロシアのどの都市が標的になっていたのか、その理由が明らかになった。米政府が1950年代の戦略空軍(SAC)資料を機密解除し、米爆撃部隊とミサイルが共産圏を広く攻撃対象にしていたことが判明した。
「SACは東ドイツから中国まで都市1200箇所をリストアップし優先順位も決めていた」と今回情報開示を求めたNGO団体ナショナルセキュリテイアーカイブは解説。「モスクワ、レニングラードがそれぞれ第一位、第2位で、モスクワには179地点を爆心地に指定、レニングラードは145地点で人口高密度地点も含まれていた」
だが狙いは単なる破壊にあったわけではない。SACではソ連空軍力を一掃し爆撃機の発進阻止を優先していた。ICBMが実用化となる前の話で、米本土や西欧の爆撃を恐れていた。標的に指定された航空基地は1,100箇所で、Tu-16バジャーの基地がリスト上位にあった。ソ連の航空戦力が破壊されれば次はソ連工業力が次の標的となるはずだった。
だがその過程で多くの無関係な生命が犠牲になっていただろう。SACの標的リストは1956年の作成で1959年版の核攻撃案では一般都市も当然ながら含まれていた。
SACの戦争計画はソ連圏の都市工業の「系統的破壊」であからさまに都市部の「住民」を標的とし、北京、モスクワ、レニングラード、東ベルリン、ワルシャワがリストにあがっていたことが判明した。「意図的に民間人人口稠密部を標的とすることは今日では国際規範に反し、軍事施設への攻撃と都市部への攻撃は明確に区別されている」と研究者は述べている。
800ページにおよぶ文書には標的一覧と関連情報が載っている。SAC立案部門は1959年にB-52、B-47爆撃機の他RB-47偵察機、F-101援護戦闘機合計2,130機の動員を想定していた。また核搭載巡航ミサイル、爆撃機搭載ミサイルが376発あり、初期段階の中距離弾道ミサイルも使えた。1959年の研究ではミサイルは標的に命中する確率が低く(ICBMの実用化は1960年代以降のこと)、有人爆撃機が攻撃手段の中心だった。
SACにはソ連空軍力を早期に破壊するねらいがあり、水爆は地上爆発の設定だった。空中爆破だと熱、放射線ともに出力が増大するが、爆風でソ連の空軍機材や基地を破壊する狙いだった。ただし想定外の副作用もあっただろう。「地上爆風とともに放射性降下物が友軍や陣営内都市にも影響を与えることも考慮されたものの、空軍力除去がなんといっても最大の目標だった」とSAC検討内容にある。
ただしSACではソ連空軍力のインフラを広く解釈し、指揮命令所、産業集積地もその一部としていた。そのためモスクワは多数の軍事司令部、航空機ミサイル工場、核兵器研究機関、石油精製所があることから上位に来た。
核時代に入っていたのにSACの戦略には第二次大戦のドイツ、日本爆撃を思わさせる要素が多かった。ソ連空軍力とインフラを標的にするのは大戦中のB-17やB-29爆撃隊と同じ狙いで、1950年代のSACは当時の人員が中心となっていたせいだ。その中心はカーティス・リメイであった。ソ連は核の一次攻撃を受けても爆撃機や核兵器の大量生産を行う力を温存し、戦況は長期化する前提だったようである。ミサイルが信頼性に欠け、有人爆撃機しか信頼に足る手段がなかったというのは今日の無人機対有人機の論争を思わせるものがある。
SACの標的リストは機能しただろうか。それを試す機会が生まれなかったのは人類にとって幸運なことだった。■



2019年9月29日日曜日

★F-3はブラックウィドウの生まれ変わりになるとの観測が大...なのか




Japan's New Black Widow Stealth Fighter Could Look Like This  

日本の次期戦闘機はブラックウィドウの新型版になるのか

How does it compare to the F-22? F-22との比較ではどうなるのか
September 28, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-22 RaptorMilitaryTechnologyWorld
Key point: Old, but impressive technology. 時間が経過しても目を引く技術だ。

本が航空自衛隊向けのF-3制空ステルス戦闘機開発で共同開発相手を模索している。もっとも大きな注目を集めたのはロッキード・マーティン提案のF-22ラプターとF-35ライトニングIIのハイブリッド版だった。ただしF-3はF-22のライバルだったノースロップYF-23ブラック・ウィドウIIの復活になるとの見方が一部に根強い。ラプターの性能を凌駕していたと多くが認める機体だ。

1981年、ペンタゴンは高性能戦術戦闘機(ATF)競合でソ連のSu-27フランカーやMiG-29フルクラムにドッグファイトで勝てる次世代ステルス戦闘機を求めた。当時唯一のステルス機F-117ナイトホークには空対空装備も超音速飛行性能もなかったので、同構想は一気に高い次元をめざすものだった。米空軍はアフターバーナーを使わずに超音速飛行を持続するスーパークルーズの実現をATFで目指した。

1986年にはAFT競合はロッキード・マーティンとノースロップに絞られ、YF-22およびYF-23試作機をそれぞれ製造し、4年以内に完成させることになった。その時点で両社ともにステルス機の知見を一定程度持っていた。ロッキードはF-117、ノースロップはB-2ステルス爆撃機である。ノースロップはマクダネル・ダグラスを協力企業にしていた。

ロッキードYF-22は外観が目立っていたが、YF-23は別の世界の機体のように見え、ダイヤモンド形主翼でレーダー探知性を減らし、細長い機体は側面から見るとSR-71ブラックバードを想起させた。2枚の尾翼は50度の外側への傾斜が付き、フライ・バイ・ワイヤによる回転でヨー、ロール、ピッチを制御した。

ノースロップは試作型を2機製造し、暗灰色のPAV-1「スパイダー」が1990年6月に初飛行し、薄い灰色のPAV-2「グレイゴースト」が同年10月に進空した。一号機はプラット&ホイットニーF119をラプター同様に搭載し、二号機はジェネラル・エレクトリックYF120可変サイクルエンジンでターボジェットとターボファンの切替えで低空、高空での最適性能を目指した。空気取り入れ口はSダクトでレーダー断面積の削減を狙い、熱発生の低下のため排気は熱吸収タイルの通路に導いた。

YF-23両試作機のフライトテストは計65時間行った。両機とも空中給油を受けられ、兵装庫はAIM-120長距離ミサイル4本が入った。量産型には20mmヴァルカン砲一門が付き、兵装庫にさらに2本の短距離サイドワインダーミサイルを搭載の予定だった。YF-22、YF-23ともにレーダーはじめとする中核のエイビオニクスは搭載していない。


ただし、YF-23にはラプターが搭載したベクトル偏向エンジンがつかず、ラプターの操縦性が優れていた。YF-23が鈍重だったわけではない。迎え角60度から70度をベクトル偏向式エンジンがなくても実現したが、空軍は25度迎え角しかテストしていない。

実際にはYF-23が大部分の項目でラプターを凌駕したとの報道がある。超音速スーパークルーズの持続時間や航続距離も一部だ。さらにレーダー断面積が低かった。特に側面と後部で低く、レーダー探知距離を短くしていた。

当時の内幕に詳しい筋からはロッキード・マーティン側はYF-22の機動性をうまく訴えただけとの声がある。評価側はドッグファイトを旨とする戦闘機パイロットが大部分だった。別の声はYF-23の高価格とリスクへ懸念があったとする。ラプターも機体単価が150百万ドルと非常に高くなる予測があった。だがペンタゴンにノースロップのプロジェクト管理能力へ疑念があったのはB-2ステルス爆撃機で単価がうなぎのぼりになった事例のせいだ。あるいはロッキードに契約交付したのは同社存続を助けるためだったとの声もある。

皮肉にも、空軍が操縦性と長距離性能、ステルスを今の時点で評価したら、ステルス重視は間違いない。将来の空戦は視界外での戦いとなり、機動性より被探知性が死活的になる。さらに戦闘機が短距離しか飛行できないと前方配備基地での運用となり敵のミサイル攻撃の格好の標的となる。今日の米空軍は広大な太平洋地域での運用を強いられている。

空軍が目指す第6世代ステルス戦闘機事業には侵攻型制空戦闘機の名称がつき長距離性能を機動性より重視しているが、ロッキードからは偶然の一致かもしれないがYF-23構想に似た提案が出ている。

YF-23は中距離ステルス爆撃機としても提案されたが、空軍は長距離のB-21を2016年に採択した。PAV-1はオハイオ州デイトンの空軍博物館に、PAV-2はカリフォーニア州にある西部航空博物館に展示されている。

2018年、日本がF-3開発の共同開発先を求めたところ、ノースロップ・グラマンから意欲的な提案が出てきた。ノースロップとしてはYF-23の復活を目指したいところだが、日本製技術を取り入れた機体、エンジン構成となる可能性が高い。

理由としてノースロップの1980年代の原設計はそのまま使えず、とくにレーダー吸収剤の塗布が旧式化しており、新型のモジュラー化を採用したF-35と比べF-22の高費用化が問題になっている。エイビオニクスも完成の域に達しず終わっていた。航空自衛隊としては全くの新設計より既存で実証済みの機体構造を元に順次改良を加える方法を好むのではないか。つまり、三十年という時間が経過してブラックウィドウとラプターがふたたび相まみえる可能性があるということだ。■

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. This first appeared back in September of last year.

Image: Wikipedia.

2019年9月28日土曜日

装備品:JASSM、LRASM両巡航スタンドオフミサイルの調達規模拡大に走る米空軍の狙い

USAF aims to double long-term JASSM production up to 10,000 units 米空軍がJASSM生産を倍増し1万本調達を目指す


27 SEPTEMBER, 2019
 SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
 BY: GARRETT REIM
 LOS ANGELES
https://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-aims-to-double-long-term-jassm-production-up-to-461148/


国防総省(DoD)はロッキード・マーティン製統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM)の生産数を当初の4,900本から最高1万本に拡大する。

米空軍物資本部から生産拡大の意向が9月27日に示され供給先を求めている。調達規則によれば軍はロッキード・マーティンが唯一の供給者でも他の調達先を模索する努力が求められている。

USAFではロッキード・マーティン製の長距離対艦ミサイル(LRASM)の追加調達も求めており、当初の110本が400本にまで拡大する。JASSMの射程拡大版JASSM-ERが原型で、500カイリ (926km)の射程を有する。USAFと米海軍が共同開発した。

JASSMおよびLRASMはともに低視認性巡航ミサイルで亜音速で飛翔するが、射程距離が長く敵の防衛圏外から発射可能だ。

今回のUSAF公告は巡航ミサイルの長期調達へのDoDの関心度を表したものと言える。

2019年5月、需要拡大を見越してロッキード・マーティンは20千平米の巡航ミサイル生産工場をアラバマ州トロイで起工している。工場建屋が2021年に完成すると、2022年下半期からJASSM-ERの増産が実現すると同社は発表。

USAFではロット17でJASSMを360本生産するとしていた。ロット18ではJASSM-ER390本、ロット19ではJASSM-ER360本とJASSM40期を調達するとしており、その後ロット30まで最大550本ベースで続く。

LRASMの生産も2017年のロット1(23本生産)から拡大を続けており、ロット4では50本を調達したいとし、最大96本でロット8まで調達したいとUSAFは述べている。■

北朝鮮ミサイルの軌道を見失う事例が少なくとも2回発生した日本のミサイル防衛体制への懸念


Japan's Failed Twice to Track North Korean Missiles 日本が北朝鮮ミサイル追尾に2回失敗したのは問題だ

We've got a problem.
September 27, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaJapanMissilesICBMsJSDFRadarMissile Defense
Key point: 完璧なミサイル防衛は存在しないとはいえ、ミサイル追尾に失敗したことから実戦での迎撃がさらに困難になると危惧されている。

何が起こったのか。日本の防衛省筋がジャパンタイムズに海上、陸上のミサイル追尾装備が少なくとも2回にわたり北朝鮮が発射の短距離ミサイルの軌道追尾に失敗したと明かした。ともに今年5月以降の出来事と同紙が9月23日に報じた。
何が問題なのか。ミサイルはともに低高度かつ不規則軌道で探知を逃れており、日本国内では北朝鮮の技術水準へ懸念の声が高まっている。韓国軍は同じミサイルの追尾に成功している。日韓軍事情報共有協定が11月24日に失効することもあり、改めてリスクが意識されている。失効で情報交換が不可能になるわけではないが、従来より時間がかかり煩雑な手続きが必要となる。
背景。日本は低空飛翔ミサイルは自国への脅威とみなし、探知能力向上のため部隊配置を変更する。北朝鮮による短距離ミサイルテストは米国でほとんど関心を集めなかったが、日本周辺では大きな懸念の的だ。■
Japan: Radar Systems Reportedly Lost Track of North Korean Missiles is republished with the permission of Stratfor Worldview, a geopolitical intelligence and advisory firm.

2019年9月25日水曜日

空母の将来を脅かす5つの軍事技術

All of the Reasons America's Aircraft Carriers Are Doomed

September 22, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: Aircraft CarrierMilitaryTechnologyWorldNavy
母の攻略方法は知れ渡っている。あるいは攻撃を試みる方法というべきか。潜水艦発射の魚雷、巡航ミサイル、弾道ミサイルはいずれも空母に最悪の事態を与えかねない。もちろん、現在の空母は各種攻撃への防御手段を備えているが、攻撃と防御のバランスが確保されているかは残念ながら未知数である。
だがこれからはどうなるのか。30年後なら空母への攻撃方法が変わるのだろうか。空母建造者の頭を悩ませそうな5分野に触れてみたい。

水中無人機
空母にとって潜水艦が長きに渡り最も大きな脅威である。第二次大戦時には、ほぼすべての空母部隊で潜水艦による損失が発生した。冷戦時に米海軍はソ連潜水艦の存在を重要ととらえていた。対潜技術が進歩したとはいえ、潜水艦で最大の課題は空母の捕捉であり、攻撃射程内への接近である。しかも空母部隊の対潜機能の餌食になる前にこれを実施しなければならない。潜水艦には脱出経路を見つけることも重要だ。
無人潜水機は以上の問題をいくつか解決できる。接近を予期してほぼ無期限にわたり水中待機できるし、空母捕捉に成功して初めて移動すればよい。またロボット潜水艇には陸上に残した家族を心配する乗組員は皆無だ。武装がわずかでも事前設定した条件で自律運用する無人機は空母にとって厄介な存在になるだろう。

サイバー攻撃
空母は今でも頭が痛くなるほど複雑なシステムの塊だ。艦だけでなく航空団さらに護衛艦艇もある。フォード級空母ではさらに発展しており、ウェポンシステムの一部となりセンサーも同時にシステムを構成し数百、数千マイルの範囲を探査する。ネットワークはデジタル化し防御も厳重だが侵入不可能なわけではない。敵がフォード級のコンピューターシステムへ妨害や侵入してくるかもしれない。
サイバー攻撃を受ければ空母に大きな影響が生まれる。空母がセンサー能力を失えば、艦の運行のみならず航空団の運行もままならなくなる。逆に艦の位置を露呈し、攻撃手段の前に脆弱となる。極端に言えばサイバー攻撃で主幹システムが無力になれば艦は自衛できなくなる。

無人航空機
ピーター・シンガーとオーガスト・コール共著のGhost Fleet(邦題中国軍を駆逐せよ!ゴーストフリート出撃す)では米軍のUAV部隊が空母二隻(ロシアのクズネツォフ、中国の山東)を北太平洋の空母戦の最後に撃破する。無人機は前からあるし、巡航ミサイルとは自殺用の無人機と大差ない。一方で、航空機は1940年代から空母を沈めてきた。だが現在の有人機で空母を捕捉攻撃しようとすると新鋭防空装備の前に自殺行為となる。巡航ミサイルは射程が長いとはいえ、やはり防御突破で同じ問題に直面する。 .
自律運行型UAVにスタンドオフ兵器および近接距離兵器を併用すれば柔軟に防空網を圧倒できる。とくにパイロットの生存を心配しなくて良いとなれば可能性が高くなる。まず遠距離で兵器を放出してから十分に接近して空母に致命傷を与える。生命の危険を感じないロボットほど怖い存在はない。

極超音速兵器
中国、ロシア、米国が極超音速技術の開発に躍起となっており、弾道ミサイル同様の脅威となる予感がある。ただ弾道ミサイルと異なり、極超音速兵器は防御が極端に困難な飛翔経路を取ることが厄介だ。つまり弾道ミサイルや巡航ミサイルの威力と慣性を組み合わせて空母に甚大な被害を与える存在になる。弾道ミサイルには核兵器の運搬手段というイメージがあるが極超音速兵器は政治的には使いやすい兵器となろう。

軌道爆撃
空母はステルスになれない。航空機、潜水艦、水上艦艇が姿を隠すのと対照的だ。ただし空母には機動性という有益性がある。航空基地が固定されれば敵は常時その位置を把握できる。攻撃対防御の単純な戦術問題になる。空母は機動性を発揮して有利な立場を作る。
軌道爆撃システム(ニックネーム「神の杖」)はこの問題を解決する。衛星にタングステン棒や運動エナジー兵器を搭載すれば空母の位置を識別すれば即時に攻撃可能となる。ここではネットワーク間の通信といった問題は不要だ。神の杖は運動エナジーだけで水上艦に甚大な被害を与え、空母を撃沈するか、機能を奪う効果を与えるだろう。

空母は生き残れるのか
航空母艦は地政学上の影響力を生む手段だ。このため、そのを無力化を狙う国家が存在する。空母はほぼ一世紀にわたり、その目的を果たしてきた。USSフォレスタル以後の米海軍は超大型空母を運用しており、その役目は1950年代から変わっておらず、21世紀後半も変化はないと見られるが、どこかの時点で大きな変化があれば、空母の攻撃力は効果を失い、脆弱性の正当化もできなくなる。だが実際に米海軍の宝たる空母が一隻でも喪失しないとこれはわからないだろう。

Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is author of The Battleship Book.

2019年9月24日火曜日

開発中のMQ-25スティングレイ艦載無人給油機が初飛行に成功

Boeing MQ-25 Stingray Carrier-Based Aerial Refueling Drone flies for the first time



米海軍とボーイングがMQ-25Aスティングレイの試験機T1を9月19日に初飛行させた。MQ-25は契約交付から一年で初のテスト飛行にこぎつけたが、実用化となれば世界初の艦載無人機となる。(Photo: Boeing)

 


海軍とボーイングは2019年9月19日に発表を行い、MQ-25スティングレイ試験機がイリノイ州マスコウタのミッドアメリカ・セントルイス空港で初飛行に成功したと述べた。同空港はスコット空軍基地に隣接する。無人機は初の艦載自律無人機として空母航空団への投入をめざす。
テスト機はボーイングが所有し、T1の名称がついており、N234MQの民間機登録番号で二時間におよぶ自律飛行をボーイングのテストパイロットが地上局から監視する中で実施した。同機はFAA基準による自律タキシングと離陸をへて事前に準備ずみ空路を飛び基本飛行性能と地上局を交えた機体制御を実証したと声明文にある。
MQ-25が9月19日の初飛行で帰還してきた。ボーイング所有の同機はT1の名称で二時間のフライトをこなして着陸した。(Photo: Boeing)


海軍の無人機空母航空部門の事業主管チャド・リード大佐は「本日のフライトは海軍にとって大きな一歩となった。テスト機がMQ-25初号機の納入から二年先立って飛行したことから今後多くを学ぶ機会の最初の一歩となり、空母航空団の様相を一変する機材の実現に役立つ」
テスト機一号は初期開発段階に投入され、その後技術開発モデル(EDM)仕様のMQ-25を4機、805百万ドルで製造する契約が2018年8月に海洋加速化調達(MAA)として交付されており、目的はミッション実施に必須な性能を米海軍艦隊に可能な限り迅速に実現することに有る。
ボーイングによればT1には試験飛行用の耐空証明が連邦航空局から今月初めに出ており、テストは今後数年掛けて行い、初期段階の治験把握と主要装備の技術改良ならびにソフトウェアの整備に供するとある。EDM機材の登場は2021年度で初期作戦能力(IOC)獲得は2024年に予定されている。
MQ-25スティングレイは実用型空母運用UAVとして初の機体となり、空中給油能力および情報収集偵察監視(ISR)を提供する。同機は空母を離着艦するUAVとして二例目となる。ノースロップ・グラマンX-47Bペガサスが2013年に先例を作っているためだ。同機はUSSジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77) 、USSセオドア・ローズヴェルト(CVN-71) でc離着艦に成功している。スティングレイが空母航空団に編入されるとF/A-18Eスーパーホーネットの負担が軽減される。バディタンカーとなり僚機への給油任務に投入されているスーパーホーネットが本来の作戦運用に使えるようになる。

2019年9月23日月曜日

開戦となったら、イラン空軍にどれだけの戦力があるのか



How Well Would Iran's Air Force Actually Fare Against America?

Let's hope we never actually have to find out.
September 20, 2019  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyAir ForceIranAmericaUSATrump

界最大かつ最強の空軍部隊の一画だったがイランイスラム共和国空軍(IRIAF)の現況は過去の影にすぎない。戦闘を繰り返し、制裁を長年受けるうちイランのかつては誇り高き空軍部隊は老朽化ばかり進む各国機材の寄せ集めになっている。イラン空軍力は長きにわたりる衰退し、自国領空をかろうじて防衛できる能力しかなく、隣国はおろか米国に対抗すべくもない。
CIAがお膳立てした1953年のクーデタで王位についたシャー・イラン皇帝は頼りになる米同盟国だった。米国はイランを冷戦時の中東で重要な存在と捉え、日本・オーストラリアと同様の域内重要同盟国として親西欧反共体制に取り込んでいた。
そのイランは強力な軍事力整備を必要とし、シャーは大量の米製装備品を導入し、F-5A/Bフリーダムファイター・F-5E/FタイガーIIは179機、F-4はD型E型、RF-4E合計225機、C-130ハーキュリーズ56機、P-3オライオン哨戒機6機、KC-135ストラトタンカー6機を調達した。さらにF-14Aトムキャットを80機購入し、AIM-54フェニックスミサイルを搭載した。米国外でF-14を導入したのはイランのみである。シャー政権が倒れるまで77機が納入された。シャーからSR-71ブラックバード戦略偵察機の導入希望があったが米政府はやんわりと断っている。
これだけの威容を誇る空軍力は米国の意図にそう形で運用されるはずだったが1979年に革命政権が発足し、シャーは国外に追放され、アヤトラ・ホメイ二が権力を掌握した。神聖政治を掲げる新政権は軍部でパージをかけ親シャー勢力を駆逐したため、イラン軍の即応体制はとくに空で大きく低下した。1980年にサダム・フセインがイランを侵攻するとイラン軍の体制が危険なほど未整備であることを露呈してしまう。
イランはあわてて新体制で放逐されていた人員を呼び戻し、制空権の喪失だけは防げた。イラン、イラクの戦闘機部隊の空戦は1000回を超え、両国で数百機を喪失した。それでも新体制でイランは戦争を通じ本来可能だったはずの制空権掌握に失敗している。新政権は米国を「大悪魔国」とし、その後の制裁措置で部品確保もままならずIRIAFの戦闘能力を引き出せなかった。
1993年にはイランイラク戦争終結後5年になり、イラン空軍の人員は15千名と1976年の四分の一になり、ファントムIIで供用可能な機材は60機しかなく、179機あったF-5も60機のみになっていた。残りは撃墜されたか、飛行できない状態か、部品取りに使われていた。トムキャットでは60機が運用可能だった。C-130では20機が残るだけだった。1990年にはSu-24フェンサー攻撃機20機とMiG-29フルクラム30機をソ連から受領した。他に中国から成都F-7(MiG-21のコピー)を25機導入したものの戦中の喪失分の穴埋めには程遠かった。IRIAFは少数ながら戦中にイランへ亡命してきたイラク空軍機材も入手している。
イランは西側世界に敵意を示し核開発を継続したため制裁を受けている。Flight InternationalによればIRIAFの現在の主力機材は当時と変化ない。F-4ファントムII(42機)、F-5(24機)(自国開発のセゲ派生型含む)、MiG-29(20機)、F-7(17機)、Su-24(23機)、旧イラク空軍のミラージュF-1(9機)だ。イラン革命防衛隊空軍は別組織で10機のSu-25フロッグフット対地攻撃機を運用する。これもイラクが運用していた機材だ。
老朽化が進んでも、イラン空軍はISISを相手に相当数の攻撃を試みており、F-14がロシア爆撃機を援護し、シリア空爆を実施している。またイランのF-5、F-4、Su-24がイスラム国制圧に出撃している。こうした機材は30年から50年の機齢となっており、近代的な防空装備の前に簡単に駆逐される。老朽化のためか、2016年にはF-4、J-7、Su-24で4機が相次いで墜落している。
イランは軍用機製造の国産化をめざしたものの期待に沿わない結果が大部分だ。2007年にはセゲSaegheh戦闘機をF-5タイガーの尾翼を二枚にした形でイラン報道陣の前に盛大に披露し「高度の操縦性により以前よりもレーダー探知が困難になる」と内容に疑問が残る説明をしている。操縦性とステルス性は連関がないからだ。2016年にはカヘQaher313「ステルス戦闘機」を公開したが機材はパイロットの膝が見えるほどの小型機だ。その新型が2017年に登場し、機体は大型となったが、本当に空を飛べるのか疑問が残ったままだ。
イラン核開発が停止しても同国への武器禁輸措置は解除になっていない。2010年発効の通常兵器の同国への引き渡しを禁止する措置は国連安全保障理事会が承認すれば回避できる。また禁輸措置は2020年に失効する。イランロシア両国はSu-30戦闘爆撃機を48機イラン国内生産する協議をしており、一時は妥結すると見られていたが今は先に進んでいない。価格と技術移転でイランが強硬な要求をしているためで、制裁措置の延長を想定しているようだ。
長年に渡り冷遇されてきたIRIAFは今やかろうじて存続しているにすぎない。イラン空軍力の近代化の実施は核開発に関する国連の要求を受け入れることに大きくかかっている。仮にこれが実現しても中東各国のみならず、西側やイスラエルと強く対立しているイランには、ロシアを除けば装備輸出の商談がまとまる可能性は低い。敵視してきた各国との関係復活がない限り、イラン空軍の再興はない。その兆候はいまのところない。■

Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami. This first appeared in October 2017.

2019年9月22日日曜日

9月22日のヘッドラインニュース

サウジアラビア防空のため、米駆逐艦が現地到着

アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USSニッツェがペルシア湾北端に到着した。直近に発生した前例のない石油施設への大規模攻撃の再発に備えるもの。米軍はサウジアラビア、アラブ首長国連邦の防空体制強化のため新たな装備派遣等を検討中。攻撃を受けたアブカイク付近に展開するサウジアラビア防空体制は今回の襲撃への対応力不足を露呈している。


MQ-25A無人艦載給油機が初飛行に成功

9月19日、MQ-25Aスティングレイがイリノイ州ミッドアメリカ・セントルイス空港で初飛行に成功したと米海軍とボーイングが発表。契約交付から一年後の初飛行はタキシー、離陸含めFAA基準の自律運行で実施された。今後テストを繰り返し、初期作戦能力獲得を2024年に予定。


トライトン大型海上偵察機がグアムへ展開、太平洋の情勢をにらむ

MQ-4Cトライトン2機がグアムに移動し、インド太平洋での海上監視偵察機能を強化すると米海軍が発表。とくに中国が南シナ海で展開する「SAMの長城」に対抗する。MQ-4Cからフルモーション映像をP-8や地上局へ配信する効果は実証済み。とくにP-8は対潜対抗措置に専念しながらトライトンが高高度ISRを担当する。

サウジアラビアの米軍向け未払金が181百万ドルへ

イエメン空爆作戦でサウジアラビアが米軍が提供した空中級支援の対価を支払っていないことが明らかになった。トランプ大統領は同盟国にも応分の負担を求める主義で、現在模索中の対イラン多国間軍事組織でも米国が一手に費用負担することはないと強調。議会ではジャーナリストのカショギ氏殺害事件やイエメンでの民間人を狙った攻撃をめぐりサウジアラビアへの批判が高まっていることもあり、今回の見場以来事実の発覚で一気に態度が硬化しそうだ。


KC-46の稼働開始まで3年かかるとの航空機動軍団司令官の見解

技術問題が未解決のまま、新たな問題も発覚している同機の動向についてマリアン・ミラー大将は「このままでは戦闘地区に送り出せない」とし、KC-10エクステンダーやKC-135ストラトタンカーの退役を先送りしたいとする。KC-46では給油中の映像を伝えるシステムのソフトウェアの不具合等が見つかっている。