2021年3月31日水曜日

スエズ運河巨大船事故で露呈。海上交通閉塞戦術が今日でも有効な点について、安全保障上の関心が必要だ。

 

 

大コンテナ船がスエズ運河を閉塞した今回の事件から海上交通の脆弱性があらためて示された。問題のエヴァー・ギヴィングは誤って通航をストップさせたようだが、軍事部門は今回のような通航封鎖が意図的に行われた場合を想定すべきだ。

 

「閉塞船」戦術には長い歴史がある。英軍は両大戦でこれを使い、南北戦争で北軍も採用した。歴史上では1,000年前の記録がある。古代の話だと笑っていられない。21世紀でも実施例がある。ロシアがウクライナ海軍をクリミアで2014年封鎖した事例だ。老朽船二隻を沈め港湾入り口をふさいだため、ウクライナ艦艇は外海に出られず、陸上から捕獲された。

 

世界各地の港湾で船舶は限られた水路を航行している。水路の幅は大型コンテナ船より狭い。攻撃勢力が船員を買収し意図的に沈没させる、座礁させる、狭い地点に衝突させればどうなるか。閉塞船を除去するのに数日、数週間要すれば、敵対側は軍事的に有利となり、優位性をそのまま維持できよう。動きの取れなくなった艦艇、潜水艦はミサイル攻撃の格好の標的となる。

 

こうした事態を回避するには船舶を交通難所に近づけなければよいが、巨大な民間船舶が通行量の多い水路を航行しており、時には軍港近くを常時移動しているのが現状だ。悪意ある動きの排除は困難だ。巨大船は停止するのも容易でない。今回スエズ運河をふさいだ船は20万トンだった。エンパイアステートビル並みの全長があり、フットボール競技場15個分の面積がある。このような一隻が狭い水路で固定施設に衝突する、別の船に衝突する、座礁する、あるいは爆発物を作動して自沈したら....

 

悪意ある行為でこの戦術を使えば、解除は困難になる。時限爆弾や仕掛け爆弾が船内いたるところにあればどうなるか。ひとつ爆発すれば別の爆弾探知に時間がかかり、解除作業は大幅に遅れる。貨物艙に電子妨害装置を隠せば、サルベージ作業の交信に障害が生まれる。船舶の制御系にマルウェアがあれば、各システムが障害を受ける。そこにミサイル攻撃があれば、問題船の除去はさらに遅れ、艦艇は軍港から出られないままとなる。

 

閉塞船戦術の効果をさらに高める新技術がある。2013年のRANDレポートは無人船舶による攻撃の可能性を指摘している。高い技術は不要だ。老朽船を使えばよい。自律運航技術が向上しており、海軍研究本部のロボット装備制御センシング制御アーキテクチャCARACaSは低コストで無人船舶を実現できる。船舶からセンサー情報や映像を衛星経由で送れば遠隔操作が可能となる。ただし、この場合は通信妨害で機能を阻害できるが、無人自律船舶は妨害手段に比較的強い。

 

この手段は米軍立案部門に費用対効果が高い選択肢となる。安価な老朽船舶で高額な潜水艦、水上艦の動きを止められる。すでに海軍は敵軍港近くを通行する民生海上運航の現状を観察しており、老朽船を実際に購入し CARACaSを装着して通航の難所近くに移動させる案を検討している。出動可能な敵潜水艦や水上艦の数を減らせば、米海軍の対応も容易になる。さらに開戦前なら、事故を装って犯行の意図を隠せる。

 

反対に米国は敵対勢力が閉塞船で米海軍艦艇、同盟国艦艇の動きを封じる戦術に警戒する必要がある。これは海軍だけの問題ではない。各軍の作戦は海上輸送に依存している。米陸軍が海軍以上の輸送船舶を保有しているのはその証左である。米軍は各地の港湾、水路を民生船舶と共有している。閉塞船攻撃を防ぐため、各軍は沿岸警備隊あわせ民間部門との連携を強め、障害物の早期除去能力を実現すべきだ。同様に海外でも連携を深めるべきだ。

 

今回の事件で巨大船一隻で運河通航を不能にし、貿易全般に大きな負担を発生できることが実感された。ロシアがクリミアで示したように老朽艦一隻で大きな効果が生まれる。海上交通のもろさに無人船舶の利用、電子戦術、サイバー攻撃が加われば、同様の戦術を採用する動きにつながり、効果はさらに拡大しかねない。■

 

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The Suez Grounding Was an Accident. The Next Blocked Chokepoint Might Not Be

GETTY IMAGES

Military planners must bear in mind the tactic of blockships.

BY SCOTT SAVITZ

SENIOR ENGINEER, RAND

MARCH 30, 2021 12:51 PM ET

 

Scott Savitz is a senior engineer at the nonprofit, nonpartisan RAND Corporation.


2021年3月30日火曜日

注目の機体 ロシアの新型大型無人機オホートニクは真のステルス機ではない模様。ロシアの航空技術水準を反映しているのか、次に登場する本格的ステルスUAVへの第一歩なのか。

 Okhotnik

ロシアのステルス機技術がまだ西側よりも遅れているのは明らかですが、スパイ活動などで急速に拡充しないとも限らず、今回のなんちゃってステルス機を笑い飛ばすことはできないようです。

 

 

シアのオホートニク大型無人機が飛行テストを完了した。RIAノーボスチ国営通信社が昨年末伝えていた。

 

テストに詳しい筋の話としてRIAは「アシュルクにあるロシア航空宇宙軍の戦闘訓練投入センターの軍用飛行場でオホートニクは各種機能試験とならび誘導空対空ミサイルの発射シミュレーションを試した」と伝えた。

 

この筋によればミサイル発射シミュレーションは「実際のミサイルと全く同じ構造だが推進機構、弾頭は外してある」とし、レーダーと赤外線追尾装置はついているという。テストの全体期間は不明だが、RIAの取材源はテストは最近完了したと述べている。

 

オホートニクとはロシア語で「狩人」の意味で、大型無人単発機で全翼機の形状で偵察、情報収集以外に航空戦闘も行う想定だ。

 

空対空戦でオホートニクを「忠実なるウィングマン」として投入し、有人機より前方を飛行させ、敵勢力の優勢な空域に対応する構想で、集めた戦闘空域の情報を有人機に伝え、敵の空対空ミサイルや地対空ミサイルをひきつけ有人機を防御する。忠実なるウィングマンとして有人機の指令を受け、敵機や地上標的への攻撃も可能だ。

 

上記RIAノーボスチ記事ではオホートニクはミサイル誘導装置、エイビオニクスをSu-57戦闘機と共有したとある。

 

オホートニクはレーダー断面積削減に優れているとロシア筋は主張するが、同機が真のステルス無人機なのかは疑問だ。全翼機形状ではあるものの、オホートニクのステルス性能を大きく妨げているのが機体表面上のアンテナ数点、空気取り入れ口、突出部などだ。

 

オホートニクのステルス塗装がこうした不利な形状を補う可能性があるが、真のステルス機に進化する前に相当の再設計が必要となろう。

 

将来の空中戦闘で無人装備が重要になるのは明らかで、無人機の進歩が著しく、ロシアもこの分野に注力しているが、米国が戦闘対応無人機と友人ステルス戦闘機の併用の実用化で急速に進展を示している。■

 

 

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Okhotnik: The Russian Stealth Drone the U.S. Military Hates

March 29, 2021  Topic: Okhotnik  Blog Brand: The Reboot  Tags: OkhotnikDroneStealthRussiaRussian MilitaryMilitary

by Caleb Larson

 

 

Caleb Larson is a defense writer with the National Interest. He holds a Master of Public Policy and covers U.S. and Russian security, European defense issues, and German politics and culture.


2021年3月29日月曜日

映画ハワイマレー沖海戦のカラー版を見ました。リンクを貼っておきます。


フィルムやミニチュア作成材料含む戦時中の物資不足の中、よくここまでの
映像ができたものだと感心します。プリンスオブウェールズ撃沈の場面も
海軍報道部からの要求で無理やり作らされたようですが、時間の制約(真珠湾攻撃一周年記念として公開日が設定されていた)でやや手抜きの観があるのは仕方ないでしょう。

真珠湾攻撃シーンでは水柱が高すぎるとの批評があるようですが、
当時の国民には高い水柱が先に刷り込まれていたので、このサイズになったようです。

エンディングで唐突に戦艦等の洋上行動シーンが現れ、占領時にオリジナルが喪失したためともいわれていましたが、実は最初から戦意高揚のため意図的に挿入されていたようです。

出演者にはその後戦線で命を落とした方もいるようです。
また、撮影時点で当時の主力空母4隻がすべて喪失しており、
戦局の進展という現実と映画作成のテンポがかみあっていないことがわかります。

ともあれ、当時の精神がうかがわれる作品ですね。

中国の主力戦車ZTZ-96,,ZTZ-99の実力とは。西側、ロシアの戦車と比較する。

 

国軍の戦車部隊で目立つのは装備の設計年次が西側、ロシアと比べると比較的新しいことだ。現在供用中の装備は1970年代後半から1980年代初頭が中心だが、中でもZTZ-96、ZTZ-99は1980年代末に開発が始まり、供用開始は1990年代末から2000年代初頭だ。

 

だが、中国の設計内容はその間の技術進歩を取り入れているのだろうか。

 

ZTZ-96は中国初の近代主力戦車で、一号車は1999年に部隊編入された。

 

ZTZ-88の105mm主砲は125mmZPT98平滑砲に取り替えられた。これ自体がソ連/ロシア製2A46Mのコピーだ。火器管制装置(FCS)は輸入したマルコーニ製が原型で、レーザー測距器 (LRF)、主砲安定装置、光学安定機能を付与した。しかし、1999年製としては780hpでは出力不足は否めない

 

全体として良好とはいうものの、装甲に問題がある。装甲は複合材としては旧型で現在のロシアあるいは西側の設計と比較すると効果が低い。米陸軍のM829A2砲弾はロシア戦車コンタクト-5爆発反応装甲(ERA)を貫通すべく開発された。標準仕様のZTZ-96はERAを搭載しない。 

 

このため装甲を改良したZTZ-96Aが2009年に登場し、同じ車台に装甲を追加し、ERAも搭載した。ZTZ-96Aは砲塔形状がZTZ-96と異なる。砲塔部分はZTZ-99から流用している。

 

FCSと砲塔の制御も小幅改良を受けているが、とくに重要な内容ではない。レーザー警報受信機を砲塔後部に追加し、防御性を高めた。熱画像装置も新たに追加した。

 

こうした改良でZTZ-96Aの車重に780hpエンジンでは出力不足になった。中国は2014年の戦車競技会でZTZ-96Aでは1000hpのロシアT-72B3に追随できないことを思い知らされた。

 

このためZTZ-96B改修はエンジンに中心をおき、1130hpに強化された。また新型FCS、車内環境の改良、遠隔武装運用能力が付与された。その他の改良内容もあるが、ZTZ-96Bの改修はまだ日が浅く、不明点が多い。

 

こうした改良はあるものの、ZTZ-96Bは相当前の設計をもとにしている。ZTZ-96BはZTZ-99と並行開発され、ZTZ-96はつなぎ的存在になったが、ZTZ-99はエイブラムズ、レパード2、T-80に競合可能な装備として当初から設計された。

 

ZTZ-99の初期設計は1998年ごろ決定され、1999年の軍事パレードで初めて姿を現した。初期生産型の砲塔は平たんでZTZ-96同様の125mm主砲を搭載した。

 

基本形 ZTZ-99 (9910) は車長専用の視認装置がつき、M1A1、レパード2A、T-72Bでもこれはついていない。エンジンは1200hpで、T-72B3を上回る。

 

ただし、このまま生産に移されなかったのは、装甲で欠陥が見つかったためだ。開発をやり直した。小幅改良した型式をZTZ-99フェイズ-Iとして2008年に生産開始した。開発はその後も続きフェイズ-IIとして、砲塔部分に角度がつき、ERAモジュールが車体についた。

 

さらに設計変更を受けたのがZTZ-99Aでエンジンは1500hpとなった。車体形状も変更され、M1エイブラムズに似た鋭角がついた。砲塔も再設計され、装甲が厚くなった。また近代型戦車の各特徴を採用し、車長、銃手ともに熱画像を利用できるようになり、敵戦車攻撃能力、レーザー警報受信機を搭載した。

 

ではZTZ-96、ZTZ-99各型の実力はどの程度なのか。ZTZ-96Bは装甲の古さで各国の第一線主力戦車と比べ威力が劣るだろう。ERAを導入しても大きな向上はない。125mm主砲と新型火器管制装置により敵への攻撃能力は向上しているが、簡単に撃破されそうだ。

 

ZTZ-99Aは別だ。装甲の改良、ネットワーク機能、センサー能力の付与で、手ごわい敵になりそうだ。ただし、中国製の熱画像装置の性能は不明だ。最新の米M1A2Cの熱画像装置は第三世代といわれ、探知識別能力と探知距離が向上し、中国製装備の性能を超え、エイブラムズが有利になる。

 

中国はロシア/ソ連方式の回転式装弾装置を搭載し、敵弾命中の際は乗員に危険な事態になりそうだ。ZTZ-99Aに自動装弾機能が採用されていないのに驚かされる。第三世代戦車の多くが採用しており、日本の90式、10式、韓国のK2戦車も例外ではない。自動装弾装置の大きな意義は安全性だ。機構の複雑さと費用から中国が採用しなかった可能性がある。

 

結論としてZTZ-99Aは旧型の米戦車に、ロシア戦車の場合は大部分の車両に脅威となりそうだが、米ロ新鋭車両には勝てないと思われる。砲塔部分、車体部分を基本形のまま製造を続けていることから、中国は戦車に求められる水準を把握しきれていないことがわかり、ZTZ-99Aは完成度が高い車両ではない。これは最新の米ロ製戦車との比較の話だ。

 

M1A2Dやアルマータ戦車はZTZ-99Aを上回る水準のようだ。中国軍首脳部が別の戦車設計を優先している証はなく、ZTZ-99Aが当面の開発で中心になっているようだ。■

 

 

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China’s ZTZ-99A: How Dangerous Is This Tank?

March 27, 2021  Topic: Tanks  Region: China  Blog Brand: The Reboot  Tags: Russian TanksTanksChinaUnited StatesMilitary

by Charlie Gao

 

 

Some details taken from The Technical Development of China's Tanks from the Type 59 to the Type 88 Main Battle Tank by Wu Zheren and Hu Xiaofang.

Charlie Gao studied Political and Computer Science at Grinnell College and is a frequent commentator on defense and national security issues. This article first appeared in 2018.

Image: Wikipedia.


2021年3月28日日曜日

新型ICBM開発を中止し、ウィルス開発を進めよ、との民主党議員の頭の構造はどうなっているんだろうか。日本の「民主党」議員も同じなのでしょうか。どこかおかしいと思いませんか。

 

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空軍グローバル打撃軍団の弾頭非搭載ICBMミニットマンIIIが2021年2月23日にカリフォーニア州ヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げられた。(Brittany E. N. Murphy/U.S. Space Force)

 

議員2名が新型大陸弾道ミサイルの開発を中止し、関連予算をコロナウィルス予防に流用すべきと主張し、地上配備戦略抑止力(GBSD)整備事業の削減を求める法案を3月26日提出した。

 

「ミサイルよりも治療へ予算投入する法案」を提案したのはエドワード・マーキー上院議員(民、マサチューセッツ)、ロー・カンナ下院議員(民、カリフォーニア)でパンデミック対策にGBSD予算を利用する動きがさらに出る可能性がある。

 

法案が可決されれば米政府はICBM法案でGBSD事業の2022年度支出が不能となり、同時に国家核安全保障庁によるW87-1核弾頭改修事業も執行できなくなる。

 

代わりにGBSD事業の10億ドルを国立アレジー伝染病研究機関に投入し、将来のパンデミック予防用コロナウィルスワクチン研究にあてる。W87-1改修事業予算は疾病管理予防センターの伝染病研究に流用する。

 

法案ではミニットマンIIIミサイルの供用期間を2050年まで延長する研究を科学アカデミーも求める。

 

「米国は陸上配備型大量破壊兵器の新型よりも広範な予防効果を生むワクチン開発に予算投入すべきだ」とマーキー上院議員は発言。「ICBM法で明確にしたように偶発戦争を惹起しかねない冷戦時の核兵器体制を段階的に減らし、抑止効果を保持し同盟国を安心させつつ、浮いた予算を現実に今あるコロナウィルス他伝染病の危機に振り向けるべきだ」

 

GBSDはノースロップ・グラマンが開発中で、現行のLGM-30GミニットマンIIIに代わるICBMを133億ドルで実現する事業だ。調達コストは930億ドルから960億ドルに上る予測がある。

 

カンナ下院議員はミニットマンIIIの供用期間を延長するのが新型ICBM開発より財政的に健全な選択肢だと主張する。「現在の課題を見れば、大規模予算を防衛産業に投入し、有効な核抑止力整備につながらないミサイルを生産するのは選択肢として最悪だ」と述べている。

 

しかし、米戦略司令部STRATCOMならびに空軍関係者からは大陸間弾道ミサイル装備を核の三本柱として近代化する目的ではGBSD事業が唯一の費用対効果の高い手段であるとの説明が繰り返し出ている。

 

「ミニットマンIIIの寿命延長は不可能」とSTRATCOM司令官チャールズ・リチャード海軍大将は1月に発言している。「費用対効果が高い形でミニットマンIIIの供用期間延長を実現できる局面は通り過ぎている。今手を打たないと機能全体を喪失することになる」

 

法案に賛同しているのは、上下両院の以下の各議員。Sens. Chris Van Hollen, D-Md.; Bernie Sanders, I-Vt.; and Jeff Merkley, D-Ore.; as well as Reps. Earl Blumenauer, D-Ore.; Steve Cohen, D-Tenn.; Jesus Garcia, D-Ill.; Raul M. Grijalva, D-Ariz.; Jared Huffman, D-Calif.; Sheila Jackson Lee, D-Texas; Pramila Jayapal, D-Wash.; Barbara Lee, D-Calif.; James McGovern, D-Mass.; Eleanor Holmes Norton, D-D.C.; Ilhan Omar, D-Minn.; Mark Pocan, D-Wis.; and Ayanna Pressley, D-Mass。

 

ただし、同法案には強い反対が立ちふさがりそうだ。

 

2020年に下院軍事委員会に、GBSDから10億ドルを引きはがし、将来のコロナウィルス大量流行対策にあてる提案がやはりカンナ議員から提出されていた。アダム・スミス委員長(民、ワシントン)が賛同したが、民主党同僚議員の賛意が得られず、44対12で否決された。

 

今月初めマーキー、カンナ両議員はジョー・バイデン大統領に書簡を送り、トランプ時代の核兵器事業、低出力潜水艦発射型W76-2弾頭、海上発射型巡航ミサイルの両事業の開発、導入を中止するよう求めた。■




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A new bill would defund new ICBMs to pay for coronavirus vaccine research

By: Valerie Insinna 

 

2021年3月27日土曜日

極超音速ミサイルの導入で、やっとズムワルト級の活用方法が見つかった模様。西太平洋前方配備で同級駆逐艦の日本配備も今後大いにあり得るので今後の動向に注目だ。

 


 

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駆逐艦ズムワルト、メイポートハーバー海軍基地へ帰投中。 (U.S. Navy photo by MC2 Timothy Schumaker)

 

海軍は三隻保有するステルス駆逐艦ズムワルト級を改修し、極超音速ミサイル運用能力を付与したいとする。追加予算投入が必要となるが、西太平洋での中国対応を想定し実施する。

 

3月18日付で海軍からズムワルト級のミサイル垂直発射装置に入らない極超音速の運用法で提案を業界に求める公告が出た。ミサイル及び関連ソフトウェアの情報提供も求める。

 

具体的に海軍が求めているのは「高性能ペイロードモジュール」で迅速打撃ミサイルを「三本まとめる構造」で搭載する企画案だ。

 

ズムワルト級の今後に詳しい筋二名の説明では、使用不能状態だった高性能主砲装備にかわり、ペイロードモジュールで極超音速ミサイルを運用するのだという。高性能主砲装備は水平線越え射撃で海兵隊の揚陸作戦を支援する構想で、同級の存在意義とされていた。改修により、DDG-1000級各艦の主任務はインド太平洋での強力な通常抑止力提供にやっと決まることになる。

 

水上艦艇による迅速打撃戦力が実現すれば、中国は犠牲なく戦域の掌握が困難になり状況は複雑になると元潜水艦勤務で現在はハドソン研究所主任研究員のブライアン・クラークは解説する。「これは通常型弾道ミサイル搭載の潜水艦で機能する構想だと思っていた」

 

ただし、実現の条件は艦艇が対象戦域内にあり、あらかじめ定めた目標にミサイル発射が可能であることだ。ミサイル発射が迅速に行え、かつ中国領土内の目標に命中する可能性が高いことも条件だ。潜水艦もこの任務を実施できるが、ズムワルトは水上艦なので追尾が容易となり、強力な通常抑止手段となるが、潜水艦は視認されずこの効果が認識されないとクラークは指摘する。

 

「位置が判明するのでエスカレーションは低い範囲でおさまる。SSBN投入だとエスカレーションが高くなる。水上艦で透明性が高まり、相手にメッセージを示せるが、潜水艦ではこうはいかない」

 

「西太平洋に一隻配備し各種作戦に投入すれば、本気度が伝わり、わずかにエスカレーションしても、南シナ海にも一隻展開すればよい。中国本土内部の標的にも脅威となる」

 

ズムワルトの当初構想では敵沿岸に探知されずに接近し、射程80カイリの艦砲で海兵隊上陸作戦を支援するはずだった。

 

だが、同上ミッションの実行は非現実的と判明し、建造費高騰で28隻建造予定が7隻に、さらに3隻に削られた。

 

期待されていた長距離対地攻撃では高性能砲弾の調達は2016年に中止された。建造規模の縮小で一回の射撃費用が80万ドルになったためだ。

 

2018年には高コストとあわせ射程が想定より短くなると海軍は発表した。当時の調達トップ将官ビル・マーツ中将は議会で、「これだけの高コストでも想定した効果が得られない。そこで主砲装備開発を艦の整備から切り離すこととする」と述べた。

 

その後、ズムワルトを対水上艦攻撃手段に転じる構想が生まれ、今回の迅速打撃極超音速ミサイルを搭載する案に発展した。通常迅速打撃ミサイルの直径が最小でも30インチで、現行のVLS発射装置で対応可能な直径が28インチのため新たなペイロードモジュールが必要となる。

 

三隻保有しているので、一隻を海上哨戒に、一隻を出動準備、さらに一隻を保守管理に常時投入する運用が想定できる。つまり、ズムワルト級はほぼ常時展開できる。

 

元駆逐艦艦長のブライアン・マグラスは国防専門コンサルタント会社The FerryBridge Groupを経営し、海軍は南シナ海に通常抑止力を常時展開すべきと主張する。「予算を使い時間をかけても、特別な戦力を整備すべきだ」

 

The destroyer Michael Monsoor. (U.S. Navy photo courtesy of Bath Iron Works)

駆逐艦マイケル・マンソー (U.S. Navy photo courtesy of Bath Iron Works)

 

 

これをマグラスは「海洋優勢駆逐艦」構想と呼び、ズムワルトの当初の装備品を撤去し、水上艦艇の標準装備となったイージス戦闘システムに換装し、「南シナ海用指揮統制艦」にすべきと主張する。

 

マグラス構想ではズムワルト級は中国内陸部まで射程におさめるだけでなく、無人装備の指揮統制任務にも投入する。USNI Newsは今週月曜日にズムワルト級は今後の演習で無人装備制御機能を試すと伝えていた。

 

また同艦に中高度長時間滞空無人航空装備を搭載し、監視標的捕捉機能を実施すべきとマグラスは主張する。

 

「三隻を西太平洋で前方配備し、常時一隻を任務につけ、将官級の指揮官幕僚を乗せ、独自に中高度長時間滞空UAVを搭載し、通常型迅速打撃戦力とイージス戦闘システムを搭載する。

 

「これで西太平洋での米側の本気度が伝わり、抑止力が生まれる。またステルス艦体にも意味がある。これこそがDDG-1000の将来像だろう」

 

クラークは代償として現在多用されているアーレイ・バーク級駆逐艦と同じ運用は無理とする。「航行の自由作戦に投入できても、対潜戦は対応不能だ。海洋安全保障全般にも投入できない」

 

海軍が同艦の運用構想を説明できれば、議会は追加予算を認め、改修に道が開くとクラークは見る。

 

「議会が海軍に求めているのは任務内容を明確かつ内容が理屈にあっている説明だ。当初想定は接近阻止領域拒否の登場で非現実的になり、海軍は同級の活用方法で首尾一貫した説明してこなかった。このため議会からどう活用するのか説明を求められている格好だ」

 

通常迅速打撃ミサイルの登場で、海軍はついにこの説明が可能になったようだ。■

 

 

What should become of the Zumwalt class? The US Navy has some big ideas.

By: David B. Larter 


2021年3月26日金曜日

ペンタゴンが進める小型原子炉構想は、第一線で膨大な給電を実現し、移動輸送が可能となる。実現すれば、常識を破る作戦が可能となるのか。

   

国防総省は小型かつ運搬可能な原子炉の実用化を目指している。(U.S. Government Accountability Office)

 

ンタゴンは第一線での使用を視野に入れた小型、運搬可能型の軍用原子炉開発で民間企業二社を選定した。

 

戦略装備開発室がBWXTアドバンスト・テクノロジーズX-エナジーを選定し、プロジェクト・ペレを継続し、1-5メガワット級の出力を最短3年発揮できる原子炉の実現を目指す。想定する原子炉は移動後三日以内に稼働開始し、撤収は七日間で完了する仕様だ。

 

両社はウェスティングハウス・ガヴァメントサービシズと2020年3月に15百万ドルで予備契約の交付を受け設計業務を開始していた。最終設計が2022年に戦略装備開発室に提示され、国防総省はシステムテストを進めるか判断する。

 

「各社が提示してくる設計案に大いに期待している」とプロジェクト・ペレ主管ジェフ・ワックスマンは語っている。「2022年初頭までに二社の技術設計案が成熟化し実際の製造、テストに向け適正度を判断する」

 

ペンタゴンはこれまで長く、原子力に注目し、エナジー費用の削減とあわせ、現地の配電網に依存する脆弱性を減らしたいと考えてきた。国防総省の報道発表では「年間30テレワット時の発電能力が実現すれば、一日当たり10百万ガロンの燃料消費を節約できる」としている。

 

原子力エナジー研究所の2018年10月の報告書では軍事施設の9割で原子力発電を導入する効果が生まれる年間40MWe(メガワット電気容量)以下の需要があるという。

 

バイデン政権はペンタゴンでも代替エナジー手段の普及を求めるとみられ、ロイド・オースティン国防長官は国防総省あげて二酸化炭素排出量を減らし、気候変動への影響を減らしたいと述べている。軍用原子力発電の採用には国防関係者のみならず議会内にも根強い原子力へのタブー視が立ちはだかる。

 

小型原子炉の実用化を狙う国防総省にはプロジェクト・ペレ以外に国防次官(調達担当)の部局も同様の構想を検討している。2019年の国防認可法に組み込まれ、パイロット事業で小型原子炉として2-10MWe級の出力を実現し、エナジー省の試験施設で2023年を目標にテストを開始したいとする。■

 

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Portable nuclear reactor project moves forward at Pentagon

 

By: Aaron Mehta


核、ミサイルより怖い北朝鮮崩壊に備えよ。崩壊プロセスは既に始まっている。

  


もが憎悪する「隠者の王国」たる北朝鮮の行方は現時点では見えない。北朝鮮、またの名を朝鮮民主主義人民共和国は究極のパンドラの箱であり、歴代大統領にとって最悪の悪夢だ。化学兵器、生物兵器、ミサイルで世界に脅威を与え、今や米国も照準に入れてきた。北朝鮮は世界の注目をどうしたら集められるか熟知しており、北東アジアを核兵器実験で振り回してきた。

 

北朝鮮の核装備は大きな話題だというものの、世界はもっと大事な話題に気づいていない。いつの日か、国内騒擾で、あるいは経済破綻で、または戦争で北朝鮮が崩壊したらどうなるか。肥満体の悪漢金正恩が率いる同国を正常の国家に転換させ、洗脳され奴隷同様の扱いを受ける国民数千万に通常の生活を与えるため、資金投入が数兆ドル規模必要だろう。

 

2013年にRANDコーポレーションの報告書がこの問題を取り上げており、ここにきて再度取り上げるのが妥当と判断する。著者ブルース・ベネットは背筋も凍るシナリオを展開し、米国が同盟国とともに備えてるべき事態に触れている。以下、同報告書から5点をとりあげ、論評を加えたい。

 

1. 北朝鮮はどんな形態で崩壊するのか

 

「金正恩体制はどんな状況で崩壊するのか。二つの形があり得る。政権崩壊と統治体制の崩壊だ。政権崩壊では金一族が放逐され新指導者が北朝鮮を支配する。軍内部から指導者が出る可能性が高い。この場合は、国内統治の仕組み、組織はおおむね機能し続けるが、一時的にせよ現体制放逐で混乱が生じるだろう。新指導者は政府内で粛清を断行し、旧政府色の強い関係者を追放し忠実を誓う者に交代させるだろう」

 

だが、次のシナリオはもっと怖い。

 

「もうひとつの崩壊は統治体制の崩壊だ。この場合、金一族の支配は機能不全となるか、放逐される。その後を継ぐ個人・集団が登場しないと、中央政府が成立しない。可能性がもっとも高いのは派閥の登場で、それぞれ国内を部分的に支配しようとするが、支配地域でも統制力が弱い状況が生まれる。中央政府機能の大部分が喪失し、統制が利かなくなる。

 

「政権崩壊が統治体制崩壊につながる可能性に要注意だ。崩壊は過程であり結果でもある。北朝鮮はともに未経験だ。とはいえ、崩壊の過程がすでに始まった兆しがある。このため金政権は『崩壊あるいは消失しつつある独裁体制』に区分するのが最も妥当だ」」

 

2. 内戦勃発

 

「北朝鮮国内の内戦でWMDを使うと韓国への影響は避けられず、深刻な被害が発生する。統制が取れなくなった部隊が重火器や特殊部隊で韓国を報復的に攻撃し、核兵器や化学兵器も投入するかもしれない。絶望的になり韓国攻撃に踏み切る内部勢力があらわれかねない。韓国都市部への弾道ミサイル攻撃で核弾頭や化学兵器を投入すれば韓国国内広範囲に被害が広がる。物的損害で韓国の経済と社会は大きく影響を受ける。この結果、韓国は再統一に一層困難を感じる。韓国の視点から最悪の結果は朝鮮半島全域が不安定地域になることで、犯罪行為や騒擾状態が蔓延すれば、韓国の統治機能も損なわれ、対応不能となる」

 

3. 介入で状況は悪化する

 

「中国が介入すれば再統一はさらに遠のく。韓国、米国、中国の各国部隊が進駐し、米韓軍と中国軍で武力衝突が発生する。その結果、朝鮮半島再統一に暗雲が立ちはだかる」

 

4. 大飢餓

 

「北朝鮮は今でさえ食料供給が十分でない。統治体制が崩壊すれば同国は飢餓に突入するのは確実だ。食品価格は急上昇し、資金に余裕があるものが食料を確保しようと必死になる。食料が消えれば、軍その他武装組織が食料強奪を図り、ただでさえ少ない備蓄がさらに減る。人道援助機関も治安状況の悪化で活動を減少し、関係者の安全が確保できなくなれば活動停止する。今でさえ乏しい国民向け食品供給が飢餓線以下になる」

 

5.国土再建、再統一のコストが膨れ上がる

 

「再統一費用は現時点でも巨額になるとの見方が一般的だ。財政コストだけでも数兆ドル規模になる。とくに崩壊後に再統一した場合の直近五年間があるが、その後も数十年間にわたり巨額資金が必要となる」

「韓国政府の年間予算は2,500億ドル程度だが、再統一費用が2兆ドル(軍事作戦に5,000億ドル、南北で発生した損害の復旧に5,000億ドル、北国内の経済開発に1兆ドル)とすると、政府予算8年分に相当する。再統一費用を10年間負担すれば、韓国政府は予算を急増する必要があり、増税は避けられず、韓国国民は不満をためる。ただし、この試算には人道援助や衛生状態の対策費は入っていない」

 

こうしてみると、北朝鮮がはらむ危険は核兵器にとどまらないのは明白だ。北朝鮮崩壊、または再統一が現実になれば米国やアジア域内同盟国には大きな負担と課題となる。歴史は独裁体制の永続はありえないことを示す。このため、DPRK関連報道ではミサイルや核兵器の見出しに振り回されず、上記報告書 https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR331.html

を読むべきだ。■

 

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The Real North Korea Problem Isn't Missiles or Nukes (But a Collapse)

March 7, 2017  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: WorldU.S.North KoreaMilitaryTechnologyKim Jong-un

by Harry J. Kazianis 

 

Harry Kazianis is Director of Defense Studies at the Center for the National Interest and Executive Editor of The National Interest. 

This was first published in January 2016 and is being reposted due to reader interest. 

Image Credit: Creative Commons.