2022年6月30日木曜日

イスラエルを軸にした中東湾岸の取り組みは歴史を塗り替えるか。イランの脅威を前にゆるやかな集団安全保障体制が生まれる可能性が出てきた。

 

Elta Systems



ニー・ガンツBenny Gantzイスラエル国防相が中東防空同盟Middle East Air Defense Alliance(MEAD)と呼ばれる新しい地域共同防空ネットワークの存在を6月20日発表したが、参加国、協定の規模など詳細はほとんど明らかにしていない。



イランのミサイルやドローンの脅威に対抗するため、イスラエル製センサーを自国領土に設置する希望がある国々と協議を続けているようだ。


イスラエルとサウジアラビア、カタール、エジプト、アラブ首長国連邦、バーレーン、ヨルダンを結ぶ同協定の策定を支援する原動力は米中央軍CENTCOMだった。イスラエルは現在、エジプト、ヨルダン、UAE、バーレーンと外交関係を結んでいるが、サウジアラビアとカタールとは国交がない。


ウォール・ストリート・ジャーナルによると、このグループの最初の公式会合はエジプトのリゾート地シャルムエルシェイクで行われた。イスラエル国防軍の参謀長アビブ・コハヴィ中将 Lt. Gen. Aviv Kohaviがサウジ軍参謀長ファイヤド・ビン・ハメド・アル・ルワイリ大将Gen. Fayyadh bin Hamed Al Ruwailiと出席したという。(米中央軍の広報担当者はWSJに対し、「地域協力を強化し、わが軍と地域のパートナーを守るための統合的な防空・ミサイル防衛アーキテクチャを開発する確固たる約束を維持している」とだけ述べた)。


イスラエルの防衛関係者によると、協定は作業部会がまとめる途中だが、一般的なアイデアは、参加国が配備するすべての早期警戒センサーをつなぐ統一通信システムを構築するねらいがあるという。このシステムはCENTCOMが監督し、武装UAVや弾道ミサイル、巡航ミサイルなどの空からの脅威をリアルタイムで早期警告できるようになる。


協定が正式になれば、イスラエル製の長距離早期警戒レーダーを購入する国も出るだろう。イスラエル軍との関係が歴史的に緊張してきた各国に、イスラエルの防衛技術が入り込むわけで、状況によっては、イランの脅威よりもセンサーでエルサレムに送られるデータを気にする国もあらわれるかもしれない。(検討中のセンサーの種類は不明だが、情報筋によれば、イスラエルのEltaが開発した長距離システムが選択肢の一つだという)。


Breaking Defenseは、サウジアラビアとUAEがイスラエル製の防空装備に暫定的ながら関心を寄せていると伝えたが、おそらくこのネットワークに統合されるのだろう。


具体的には、イエメンの一部でありながらUAEの実効支配下にあるソコトラ島 Socotra Islandをセンサー設置場所として利用する可能性が取りざたされているが、何も決定していないと情報筋がBreaking Defenseに語っている。


ソコトラ島は、魅力的なポイントだ。2020年、The Middle East Monitorは、UAEとイスラエルが同島にスパイ基地を設置する案を策定していると報じた。その後、情報筋は、詳細を明かさず、イスラエルが同島に「何らかのプレゼンス」を持っているのを確認した。


来月、イスラエルとサウジアラビアを公式訪問するジョー・バイデン大統領にとって、新しく結成された連合は、この地域に到着した際の論点になると予想される。イスラエル紙Haaretzは今月初め、バイデン大統領の訪問中にサウジアラビアが連合加盟を公にすることを望む声があることを報じた。


中東メディア研究所の報告によれば、「バイデンはまた、2015年核合意への復帰に向けて、停滞しているイランとの交渉が再開される可能性について湾岸諸国の懸念を和らげようとするようだ」。さらに、アラブの報道では、バイデンと各国指導者は、イランを筆頭とする安全保障上の共通の脅威に立ち向かうため、イスラエル含む地域各国間でNATOに似た軍事同盟の形成について話し合うと予想があるという。


NATO加盟国は、加盟国が攻撃された場合、互いに助け合うことを義務付けられており、中東では政治的利害が絡み合っているため、事実上不可能だが、地域大国が防衛関係を強化する必要があるとの結論に達したのは明らかだ。防空連合は出発点に過ぎないかもしれない。■


Gulf states willing to host Israeli sensors for air-defense network: Sources


By   ARIE EGOZI

on June 29, 2022 at 3:03 PM


ウクライナ戦の最新状況「現地時間6月29日現在) 焦点はリシチャンスクに。ウクライナ軍には厳しい状況が続く

 シアのウクライナ侵攻が始まり126日目の水曜日、ウクライナ軍はリシチャンスク周辺でロシアの攻勢を鈍らせようとしている。

リシチャンスクをめぐる戦い  

週末にセベロドネツクを占領して以来、ロシア軍は隣のリシチャンスクに向かい前進している。戦闘は主に市の南部と南西部の郊外で行われている。ロシア軍の進攻はウクライナ軍を局所的に包囲しようとしており、ウクライナ軍はロシア軍にできるだけ大きな犠牲を与えながら、再び秩序ある撤退を選択する可能性を示唆している。


The situation in the Donbas where the Russian forces are advancing toward Lysychansk. (ISW)

南方戦線では、ケルソン近郊でウクライナ軍の反攻が続いている。火曜日には、ウクライナ軍がケルソン北部の集落2つを奪還したと報じられた。南部でのウクライナ攻勢は、ドンバスでのロシア軍攻勢と類似している。前進は遅く、慎重で、敵の防御陣地に阻まれている。ロシア軍は南部で防衛を行い、兵員と装備の強化を続けている。

北側のハリコフ近辺では、両陣営は依然として陣取り合戦を続けており、大きな収穫はない。ロシア軍は主に、ドンバス地方を南下するロシア軍への補給線から、ウクライナ軍を砲撃圏外に追いやろうとしている。

ロシア軍の損失

ウクライナ軍は毎日、ロシア軍の死傷者数を発表している。これらの数字は公式の数字であり、個別に検証されたものではない。

しかし、西側の情報機関の評価と独立した報道は、ウクライナの主張する犠牲者の数をある程度裏付けている。例えば、オープンソースの情報研究ページ「オリックス」は、約800台のロシア戦車を破壊または捕獲したことを視覚的に検証しており、この評価は英国国防省によって確認されている。


The battlefield as of June 29. (UK MoD)


ウクライナの主その他張のほとんどについても、同様に独立した検証が存在する。米国防総省は、ロシア軍が1,000両以上の戦車、数十機の戦闘機やヘリコプターを含むあらゆる種類の戦闘車両数千台を失ったことを認めた。


さらに、西側情報機関の関係者を引用した最近の報道では、ロシア軍はこれまでの戦争で最大2万人の死者を出したという。


実際の数字を確認するのは、現地にいない限り非常に難しい。しかし、戦争の霧やその他の要因を調整した後、西側の公式数字はウクライナの主張とかなり近いという。


水曜日時点で、ウクライナ国防省は以下のロシア軍損失を主張している。


  • 戦死35,450(負傷者、捕虜は約3倍)

  • 装甲兵員輸送車3,720

  • 車両と燃料タンク2,598

  • 戦車1,572

  • 大砲781

  • 戦術的無人航空機 640

  • 戦闘機、攻撃機、輸送機 217

  • 多連装ロケットシステム(MLRS)246

  • 攻撃・輸送用ヘリコプター185機

  • 撃墜した巡航ミサイル142発

  • 対空砲台103

  • 架橋など特殊装備ム61

  • ボートおよびカッター14

  • 移動式イスカンダル弾道ミサイル4

A Russian separatist in Ukraine. (Wikimedia Commons)


ここ数週間、ドンバスで継続的な圧力と攻撃作戦にもかかわらず、ロシアの死傷者の割合は鈍化している。このことは2つのことを示唆している。1つ目は、ロシア軍の指揮官が攻撃作戦に慎重になっており、目的を達成するために複合兵器をフル活用していること、2つ目は、ウクライナ軍の戦闘力や弾薬が不足していることである。最近の現地からの報告によると、この2つの要因はいずれも事実であり、戦いの疲労が双方に追いついてきているようだ。

先月はスロビャンスク、クリビヤリ、ザポリジャの3地区で激しい戦闘が続いたため、ロシア軍の死傷者が最も多かった。日が経つにつれ、激しい戦闘はスロビャンスクの南東にあるバフムト方面、ウクライナの重要な町セベロドネツク、ライマン周辺に多く移行していった。

その後、欧州最大級の原子力発電所があるケルソンとザポリジヤ周辺でのウクライナ軍の反攻により、最も多くの犠牲者が出た場所は再び西へ移動した。

水曜日、ウクライナ軍は、ロシア軍が進攻したリシチャンスクを後方から遮断しようとし、バフムート付近で最も大きな犠牲を出した。

ロシア軍の東部での新たな攻勢は、ドネツクとルハンスクの親ロシア派の離脱地域を完全に支配し、これらの地域と占領下のクリミアの間に陸上回廊を作り維持することが目的であるとしている。■

Your tactical update on Ukraine (June 29) - Sandboxx

Stavros Atlamazoglou | June 29, 2022

NATOサミットであきらかになったこと。欧州米軍プレゼンスの強化。中国への警戒。二カ国加盟手続きの開始。安全保障はグローバルにリンクしていることを証明。

 


「ステップアップする。ステップアップしている」「NATOがこれまで以上に必要とされ、これまで同様に重要であることを証明している」(ジョー・バイデン大統領)



NATOは、スウェーデンとフィンランドに加盟の道を開き、新しい戦略的概念を同盟に導入し、米国がヨーロッパでのプレゼンスを劇的に変化させる様子を目にしている。


ほんの数カ月前まで、不可能とは言わないまでも、あり得ないと思われていたことが次々と起こっている。なんといっても、ロシアによる2月のウクライナ侵攻が、同盟の刷新に拍車をかけている。マドリード・サミットで各国首脳はこれを強調した。


「プーチン大統領がヨーロッパの平和を打ち砕き、ルールに基づく秩序の根幹を攻撃している今、米国と同盟国は歩み寄ろうとしている」。ジョー・バイデン米国大統領はサミットで「我々は歩み寄る」と述べた。「NATOはかつてないほど必要とされており、かつてないほど重要であることを証明している。


米国は本日、ポーランドに第5軍団本部前方司令部、陸軍駐屯地司令部、現地支援大隊からなる常駐部隊を創設することを皮切りに、大陸全体で兵力を増強すると発表した。国防総省は声明で、これを「NATOの東側における初の米軍部隊常駐」とし、「機甲旅団戦闘チーム、戦闘航空旅団、師団司令部」を含むポーランドでのローテーション部隊への支援を継続する。


国防次官補(国際安全保障担当)のセレステ・ワランダー Celeste Wallander は記者会見で、ポーランドへの移転について「安全保障環境の変化と、米国が東側諸国への存在、訓練、活動、支援を、二国間およびNATO戦闘群(前方8カ国にある戦闘群)を通じ維持する長期能力が必要だという認識からの重大決定だ」と述べた。


その他の戦力態勢の変更は以下の通り。

  • ルーマニア: 米国は旅団戦闘チームのローテーションを派遣し、「2022年1月の態勢と比較して、東側陣地に旅団を追加維持する」予定。

  • バルト海沿岸地域: エストニア、ラトビア、リトアニアは長年、自国への常駐を希望していたが、米国はポーランドのような常駐は確約はしなかったものの、ローテーション配備を「強化」すると約束した。

  • スペイン: ロタに駐留する米駆逐艦を6隻に増やす。

  • 英国: レイケンヒース空軍基地に F-35 を 2 個飛行隊配備する。

  • ドイツ: 米国は「防空砲兵旅団司令部、短距離防空大隊、戦闘維持支援大隊司令部、工兵旅団司令部、計約625人を前方駐留させる」。焦点は、必要に応じヨーロッパ各地の防空施設を移動させることで、ロシアの脅威に迅速対応することが目的。

  • イタリア: 米国は短距離防空砲台を前方配備させ、総人員は約65人。ドイツに駐留する大隊の下部組織となる。



国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は記者会見で、欧州に常設部隊を増やさないとする決定を擁護しつつ、「米国のプレゼンスは持続するが、何年も何年も同じ旅団戦闘チームや他の航空機飛行隊になるとは限らない」と述べた。「侵攻前より高いレベルでヨーロッパにローテーション配備できるようにする」と述べた。


ヨーロッパでの戦力増強が、アメリカが長年主張してきた太平洋への軸足転換に影響を与えるかは、時間が経たなければ答えられない問題だ。アメリカン・エンタープライズ研究所の太平洋専門家エリック・セイヤーズEric Sayersはツイッターで、「ウクライナ支援には賛成だが、アジアで何も新しいことをしないままヨーロッパ全体の配備を強化するのは、アジアは二の次、三の次という見方を強める」と指摘している。


「ヨーロッパでコミットメントをすれば、必ず資源は流れていく」とセイヤーは続ける。「アジアでは、口では立派なことを言っても、実行に移すだけの証拠がほとんどない。このことが、認識ギャップをさらに大きくしている。日本やオーストラリアは頭を悩ませている」。


戦略概念では、中国が最初の話題

本日発表されたNATOの新戦略コンセプトは、マドリード・サミットの方向性を示し、この種の文書の多くと同様、詳細より政策姿勢に重きを置いている。しかし、イェンス・ストルテンベルグ事務総長Secretary General Jens Stoltenbergが「冷戦終結後、集団防衛による抑止力について最大の見直しを行う」としたこの文書には、注目すべき点がある。


同文書は、ロシアによる2014年のウクライナ侵攻とクリミア併合の前だった2010年以来の正式な更新で、初めて中国に言及し、北京の「野心と強圧的政策」は「我々の利益、安全、価値への挑戦」と警告している。


中国の「悪意あるハイブリッドおよびサイバー作戦、対立的なレトリックと偽情報は同盟国を標的にし、同盟国の安全保障に危害を加える」と文書は続けている。「中国は主要な技術・産業分野、重要なインフラ、戦略物資、サプライチェーンで支配をめざしている。経済的な影響力を利用し、戦略的な依存関係を築き、影響力を強化する。宇宙、サイバー、海洋の各領域を含め、ルールに基づく国際秩序を破壊しようと努めている」。


さらに、特筆すべきは、「中華人民共和国とロシア連邦間の戦略的パートナーシップ深化と、ルールに基づく国際秩序を弱体化させようとする相互補強の試みは、我々の価値と利益に反する」と警告していることだ。「我々は、同盟として責任を持ち協力し、中国が欧州・大西洋の安全保障にもたらす体系的な課題に対処し、NATOが同盟国の防衛と安全を保証する能力の持続を確保する」。


カービー報道官は、正式文書の発表に先立ち、「明らかに、同盟は同様に、ロシアと中国の成長し、急成長する関係に懸念を抱いてきた。中国の不公正な貿易慣行、強制労働の使用、知的財産の窃盗、インド太平洋地域のみならず世界各地でのいじめや強制的な活動に対する懸念が高まっているのだ」と述べた。


当然ながら、同コンセプトはロシアに強硬路線をとっている。2010年文書では「NATOとロシアの真の戦略的パートナーシップ」を目指すとしていたが、今回のコンセプトでは、ロシアを「同盟国の安全保障と欧州大西洋地域の平和と安定に対する最も重大かつ直接的な脅威」と呼んでいる。


さらに、同コンセプトは、NATOの核兵器に対するコミットメントから一歩も引いていない。「核兵器が存在する限り、NATOは核同盟であり続ける。NATOの目標は、すべての人により安全な世界とし、核兵器のない世界のための安全保障環境を作り出すのが目標」と書かれている。


新規加盟国

また、同コンセプトでは、「同盟に加盟しようとする国の安全保障は、同盟の安全保障と密接に関係する。各国の独立、主権、領土の完全性を強く支持する」とも記している。


これは、加盟希望国にはNATO正式加盟国と同じ第5条による保護が与えられないかもしれないが、同盟指導部はNATOプロセスを始めたものの完全に受け入れられない国を見捨てないという明確なシグナルだ。


つまり、スウェーデンとフィンランドだ。両国は、NATOとロシアの間の一線に何年も乗った後、5月に加盟申請し、両国指導者は、同盟への参加はウクライナ侵攻の直接的な結果と述べている。しかしトルコは、3カ国間で合意に達する火曜日まで、加盟申請の開始を留保した。


その結果、NATOは本日、スウェーデンとフィンランドを加盟希望国として正式に受け入れ、30カ国すべての承認が必要な新規加盟プロセスを開始した。米国は、プロセスが迅速に進むと期待している。NATO新加盟国を加えることは、米国上院が超党派で合意できる唯一の案件かもしれない。


2カ国を同盟に加えることは、「NATOの門戸が開かれていることを示す。プーチン大統領がNATOの扉を閉ざすことに成功していないことを示す」とストルテンベルグは述べた。「彼は、自分が望むことの反対を手に入れている。彼はNATOの縮小を望んでいる。プーチン大統領は、フィンランドとスウェーデンが同盟に加わることで、より大規模なNATOを手に入れようとしているのだ」。■


US increasing troop presence in Europe, while new NATO strategy eyes China - Breaking Defense

By   AARON MEHTA

on June 29, 2022 at 12:26 PM


2022年6月29日水曜日

米陸軍が久しぶりに調達する軽戦車(といっても38トン)をジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズが受注成功。どんな仕様なのか

 


A General Dynamics Land Systems (GDLS) Mobile Protected Firepower (MPF) light tank prototype.

US Army

 

 

米陸軍が久しぶりに軽戦車を採用した。これは機動防護火力車両として知られ、軽歩兵に装甲火力支援を提供する

 

戦以来初めて、米陸軍は新型軽戦車を取得し、実戦配備するこ。本日、ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズが機動性保護火力(MPF)プログラムMobile Protected Firepower programの競作に勝利し、最大11億4000万ドルの契約を交付すると陸軍が発表した。

 

 

 

今回のMPF契約は、96台の初期低速生産発注に対応するもの。陸軍は、MPFの初期ロット26台で、2023年12月に一号車を引き渡し、2025年までに最初の部隊が完全装備できるよう期待している。陸軍は合計504両の新型軽戦車を購入する計画で、大部分が2035年末までに納入される。この数字に、ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)が試験用に供給ずみの試作車が含まれているかどうかは不明。

General Dynamics Land Systems (GDLS)のMPF(Mobile Protected Firepower)プログラム競作への参加車両 GDLS

 

GDLSのMPFは、この秋ワシントンDCで開催される米国陸軍協会の年次総会で正式名称が発表される予定ですが、同社のグリフィン IIがベースになっています。主武装は105mm砲で、デモ車両の120mm砲と異なり、M1エイブラムス戦車を流用した砲塔に搭載される。火器管制システムは、M1A2のSEPv3(System Enhanced Package Version 3)を流用している。

 

グリフィンIIは、オーストリア・スペインのASCOD装甲車シリーズから派生したもので、英国陸軍で問題となったエイジャックス歩兵戦闘車のベースにもなっている。また、GDLSは、ブラッドレー戦闘車の後継車両を目指す陸軍のOMFV(Optionally Manned Fighting Vehicle)計画に、グリフィンIIIを候補として提示している。

 

陸軍の調達・兵站・技術担当ダグ・ブッシュ次官補Doug Bushは、「MPFプログラムは、兵士のタッチポイントを利用した競争的で迅速なプロトタイプ完成という陸軍の要求に正面から応えたものです」と声明で述べています。「MPFは、調達部門と要求部門が協力して、4年弱で(中間層取得ラピッドプロトタイピング)フェーズを完了し、このシステムを生産に移行させた、ベンチマークとなるプログラムだ。

 

陸軍の地上戦闘システム担当プログラム主幹グレン・ディーン陸軍准将Brig. Gen. Glenn Deanは、Breaking Defenseによると、本日早朝のラウンドテーブルで、「我々が意図していた全てを達成した」と記者団に語った。「競合2社は競争力がありました」。

 

MPFプログラムは2015年始まり、陸軍は2018年にGDLSとBAE Systemsの二社にしぼりこんだ。BAE Systemsのエントリーは、1980年代に別プログラムで陸軍向けに開発されたが1996年にキャンセルされたM8ビューフォード Armored Gun System(AGS)軽戦車をベースにしていた。

 

BAE SystemsのMPF試作車  BAE Systems

 

 

M8は、ベトナム戦争時代に製造された最後の軽戦車M551A1シェリダンの後継として開発され、主武装に152mm砲とミサイルランチャーという複雑すぎる装備としていた。1997年に最後のM551A1が現役を退いたが、大規模訓練で敵の模擬車両として使用されるため、2003年まで少数のシェリダンが残されていた。

 

テスト中のM8 ビューフォード Armored Gun System (AGS) during testing. US Army

 

M551A1シェリダンが1990年砂漠の嵐作戦でサウジアラビアに展開した US Army

 

BAE Systemsは、初期のプロトタイプを陸軍に納入するのに大変苦労したと伝えられている。Janes' は、今年3月に 同社がMPF競合から脱落したと伝えていた。

 

陸軍の現在の計画では、新型MPFの大部分は4個大隊に分散配置される。各部隊は、現在、軽戦術車(ハンヴィーから統合軽戦術車(JLTV)に置き換えられつつある)しか持たない陸軍の歩兵旅団戦闘チーム(IBCT)に装甲火力を追加し、50口径M2機関銃、40mmMk19自動擲弾筒、TOW対戦車ミサイルで機動火力支援を行う。

 

訓練でTOWミサイルで武装した陸軍ハンビー。 US Army

 

 

Breaking Defenseによると、「答えは名前の中にある」と、次世代戦闘車両クロスファンクショナルチームのディレクター、ロス・コフマン陸軍少将Maj. Gen. Ross Coffmanは、これらの車両の主要な任務は何かという質問に対して、記者団に語ったという。「軽歩兵部隊に機動性と保護された火力を与え、...戦場の障害物(軽装甲車や要塞など)を除去し、歩兵の男女が確実に目標に到達できるようにします」。

 

これらの車両がどのように配備され、採用されるかは、まだわからないようだ。MPFの設計では、軽量とは相対的なもので、約38トン*とされる。歩兵戦闘車M2A4ブラッドレーより2トンほど軽いだけで、M551A1より20トンも重い。もちろん、70トン超の陸軍の最新型M1戦車に比べれば、大幅に軽いのだが。

 

*注 10式戦車は44トンといわれる。

 

陸軍は当初、MPFを、空輸だけでなく空中投下も可能なシェリダンの後継車両として説明していた。その後、新型MPFの戦場へのパラシュート降下可能の要件は取り下げられた。空軍のC-17AグローブマスターIII貨物機1機で、前方地点の滑走路に飛ばす場合、一度に2機搭載できる。

 

陸軍空挺部隊で新型軽戦車を受け取る部隊は不明である。しかし、本日公開された前回のテストでは、MPFが第82空挺師団の旗を掲げている写真が掲載されている(下写真)。

 

US Army

 

今回のMPF選定は、ロシアのウクライナ侵攻を契機に、戦車や重装甲車両の将来像が改めて議論される中で行われた。MPFプログラム自体は、2014年にロシアがウクライナのクリミア地方を占領し、その後同国東部のドンバス地方で分離主義者を支援したのを受けて、陸軍、さらに米軍全体がより通常戦への備えを強化する方向へ、幅広くシフトする一環で浮上したものだ。

 

とはいえ、M551A1が戦闘任務から引退し四半世紀が経ち、直接の後継車両がないまま、陸軍は新型軽戦車の調達を開始した。■

 

The Army Just Selected Its First Light Tank In Decades | The Drive

 

 

BYJOSEPH TREVITHICKJUN 28, 2022 9:08 PM

THE WAR ZONE

 



現実のマーベリックは朝鮮戦争でソ連MiG4機を撃墜したものの、政治影響を考慮して秘匿されてきた....


  • あなたの知らない戦史シリーズ(7)

  •  

Royce Williams

朝鮮戦争で、ロイス・ウィリアムズ海軍大尉はソ連戦闘機7機と正面から戦い、生き残っただけでなく、撃墜数機を確認し戦場を後にした。 (Task & Purpose photo composite/Wikimedia Commons/U.S. Navy via Twitter).

 

ありえないドッグファイトは何十年も隠蔽されてきたが、伝説になっている。

 

 

鮮戦争中の1952年11月18日、ロイス・ウィリアムズ海軍大尉は、所属する飛行隊VF-781の他の3人のパイロットと、日本海の荒れた空に空母USSオリスカニーから発進した。朝鮮戦争で海軍は25万回以上の出撃を行ったが、冷戦時代の緊迫した政治環境のため数十年間隠蔽されてきた戦闘は空中戦の偉業となった。

 

この作戦でウィリアムズは、当時最新鋭のジェット戦闘機でソ連空軍のパイロット7名と対戦し、3機撃墜を確認、1機撃墜確実が後に撃墜確認された。ウィリアムズは海軍の要請でこの事件を伏せていたが、現在、当日の行動に対し名誉勲章授与の取り組みが進められている。『トップガン マーベリック』が興行収入記録を更新し話題になっているが、これは実在したマーベリックと、ありえないようなドッグファイトの物語である。

 

オリスカニーは任務部隊77の一員として、北朝鮮の兵站センターを攻撃していた。その日の標的は、中国、北朝鮮、そして当時のソビエト連邦の国境が交わる鴨緑江に沿った会寧(フェリオン)市だった。そのため、各国領空を侵犯する可能性があり、危険な爆撃任務となった。

 

ウィリアムズはこの日2回目の任務で、グラマンF9F-5パンサーで戦闘空中哨戒として飛行していた。

 

The real-life Maverick who took on 7 Soviet jets in a classified Korean War dogfight

1952年7月4日、北朝鮮沖で作戦中のタスクフォース77の艦艇の上を飛ぶアメリカ海軍グラマンF9F-2パンサー(戦闘機隊24(VF-24)「コルセア」所属)。(Wikimedia Commons)

 

「雲を抜けると互いにランデブーし始めた」。 ウィリアムズはタスク&パーパスのインタビューで、「その時、戦闘情報センターから北からボギーが来ていると聞いた」。と回想している。

 

高度12,000フィート以上で雲の上に出たウィリアムズは、上空に7つの飛行機雲を発見した。MiG-15だった。

 

アメリカ空軍のF-86に匹敵するMiGは、速度、機動性、上昇率、兵器でパンサーを凌駕していた。海軍は初期こそMiG撃墜数機を達成していたが、任務は地上攻撃中心へと切り替わっていた。ウィリアムズは1944年から海軍の戦闘機パイロット訓練を受けていたが、朝鮮半島でのパンサーの主要任務は空対地戦闘だった。

 

空中戦は朝鮮半島の西半分に限定され、空軍のF-86セイバーが 「MiGアレイ」と呼ばれる中国からの進入路をパトロールするのが一般的だった。これが、ウィリアムズにとって、相手がソ連から発進した機体であることを示す一つの指標となった。

 

ウィリアムズは機銃のテストを兼ね素早くバースト射撃したが、その瞬間、フライトリーダーが燃料ポンプの警告灯点滅を報告し、艦隊へ戻っていった。交戦が始まる前、7機のMiGs対2機のパンサーになった。

 

ウィリアムズと僚機が26,000フィートを超えて上昇すると、ミグは2つの編隊に分かれ、うちの4機がウィリアムズの10時方向から海急降下して射撃してきた。ウィリアムズは旋回し、ミグ編隊に向かって引き寄せ、グループの「最後尾のチャーリー」に短いバーストで射撃した。これがウィリアムズのこの日最初のキルとなった。

 

2機のMiG編隊が高度を上げ、攻撃飛行に入ると、ウィリアムズは1機の後方につき、2機目をダウンさせた。パンサーはMiGより弾薬搭載量が少ないため、ウィリアムズは慎重に狙いを定める必要があった。

 

「その瞬間、仕事をする戦闘機パイロットになっていた。持っているものを撃つだけだった」。

 

残る5機のソ連機は、順番に上昇し、ウィリアムズに向かいパスした。ウィリアムズはパンサーを限界までひねって、ソ連機が自分の照準の前を通過する際に交戦したり、急旋回で真正面から向き合ったりするしかできなかった。

 

ウィリアムズが別のミグに発砲すると、ミグはバンクして戦闘から離脱した。そのソ連機の僚機がウィリアムズの方を向くと、ウィリアムズはロングバーストを放ち、2機は接近したまま通過し、ソ連機は海に墜落した。

 

30分以上の空戦で、ウィリアムズは少なくとも3機を撃墜し、4機目は大きく損傷した。しかし、ウィリアムズの機も、深刻な損害を被った。

 

「旋回中に37ミリ砲で撃たれ油圧が効かなくなった」。

 

弾薬もなく、飛ぶのもやっとの機体で、ウィリアムズは機体を操りながら、オリスカニーに戻っていった。

 

低空飛行していたウィリアムズは、脱出も考えたが、飛行を続けることにした。

 

「あの天候では、捜索発見されるまで生き残れないと思ったからだ」。

 

ウィリアムズが海軍の任務部隊に近づくと、敵機と間違え発砲してきた。パンサーの通常の着艦速度が105ノット(時速約120マイル)だが、ウィリアムズは機体を170ノット以下にできず、接近が危ぶまれた。しかし、なんとか着艦に成功した。

 

The real-life Maverick who took on 7 Soviet jets in a classified Korean War dogfight1952年11月18日、ソ連のMiG-15戦闘機7機との戦闘でF9F-5パンサーが受けた損傷 (Photo courtesy of U.S. Naval Institute)

 

空母艦上で、ウィリアムズのパンサーに263個の穴が数えられたが、彼は二度とそれを見ることはなかった。機体は甲板から海へ突き落とされ、ガンカメラ映像は分析のため持ち去られたようだ。

 

このことから、接敵が国家安全保障に関わるものであるのが分かる。ソ連志願パイロットが飛行していることが知られていたが、ウィリアムズはソ連空軍と交戦したのである。さらに、ウィリアムズの飛行隊は、国家安全保障局の情報で、ソ連軍機の存在を知っていた。

 

ウィリアムズは、極東海軍司令官ロバート・ブリスコ海軍大将から、3機あるいは4機のミグを撃墜したことは確認できたが、この作戦について誰にも話すなと告げられた。

 

ウィリアムズはそれを実行した。ベトナムでの110回の任務を含む23年間のキャリアを通じ、ウィリアムズ唯一の公式記録は、撃墜1機と銀星章であった。その日、ウィリアムズと飛んだ他のパイロット2人も、敵機を撃墜したことで表彰された。

 

それから40年後、ソビエト連邦の崩壊とともに、モスクワから当日の交戦を確認する記録が出てきた。このドッグファイトは、ロシアの歴史家イゴール・セイドフが2014年に出版した本「Red Devils Over the Yalu」が取り上げている。

 

現在、ウィリアムズに名誉勲章を授与する運動が長く続いている。退役軍人スティーブ・ルワンドウスキーは、この行動を支持する100人近い海軍、海兵隊、陸軍の将校の署名を集め、米国在郷軍人会や殊勲十字章協会の決議も集めている。

 

しかし、この事件は公式には起こっていないことになっているため、公式書類を見つけるのは困難な作業だ。とはいえ、本物のマーベリックを探すなら、そこにいる。■

 

The real-life Maverick who took on 7 Soviet jets in a classified Korean War dogfight


BY MAX HAUPTMAN | PUBLISHED JUN 24, 2022 10:45 AM

 

Max Hauptman

Max Hauptman has been covering breaking news at Task & Purpose since December 2021. He previously worked at The Washington Post as a Military Veterans in Journalism Fellow, as well as covering local news in New England. Contact the author here.