2025年1月31日金曜日

航空自衛隊の訓練機にテキストロンT-6を選定(Breaking Defense)―長く続いた国産練習機の流れは休止符を打たれました。国内防衛産業の疲弊ぶりを示しているのか、それともビジネス上の判断だったのかは後年明らかになります

 T-6A Texan II

テキサス州ラフリン空軍基地を離陸するT-6AテキサンII。 June. 10, 2024. (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Harrison Sullivan)



日本の空軍は、インド太平洋でT-6を飛ばすニュージーランド空軍、タイ空軍、ベトナム防空空軍に加わる


本は、パイロット訓練用航空機の近代化の一環として、テキストロンT-6を購入すると、同社ががプレスリリースで発表した。

 テキストロンの火曜日の発表では、航空自衛隊(JASDF)がビーチクラフトT-6テキサンIIを何機購入するかは明らかにしていないが、包括的な地上訓練システム、教官パイロットと航空機整備士の訓練、長期的な後方支援と維持支援も契約に含まれているという。ビーチクラフトT-6テキサンIIは、日本の基本練習機であった富士/スバルT-7の後継機となる。

 条約上の同盟国として、この地域で急増する中国軍に直面する日本の立場を考えれば、驚くことではないが、この動きはアメリカ製兵器を購入する日本の強い傾向を示している。

 2025年度の日本の防衛予算には「新型戦闘機のパイロットを効率的かつ効果的に訓練するため、統合運用を目的とした新型初等訓練機と地上訓練設備を取得する」プロジェクトについての論点が含まれていた。  予算には、費用や取得する航空機の数は含まれていなかった。本誌は日本の防衛省にコメントを求めている。

 ビーチクラフトT-6は14カ国で1000機以上が就役している。 インド太平洋地域では、航空自衛隊は、T-6を飛ばすニュージーランド空軍、タイ空軍、ベトナム防空空軍に加わることになる。

 テキストロンは、契約締結は「2025年中の見込み」と述べた。■



Japan picks Textron T-6 for JASDF training fleet

Japan's air force will join the Royal New Zealand Air Force, the Royal Thai Air Force, and the Vietnam Air Defense Air Force flying T-6s in the Indo-Pacific.

By   Colin Clark

on January 29, 2025 at 6:14 PM


https://breakingdefense.com/2025/01/japan-picks-textron-t-6-for-jasdf-training-fleet/


米空軍も大統領の命令に従いDEIプログラムを閉鎖(Air & Space Forces Magazine)―こうした記事をこれから追加するターミナル5(仮称)に掲載していきます

 



軍は、連邦政府機関からDEIを根絶せよとのドナルド・トランプ大統領による大号令に従い、ダイバーシティ&インクルージョンの事務局や委員会の閉鎖を開始したが、このプロセスは一朝一夕には完了しないと、関係者が本誌に語った。

 トランプ大統領は、多様性、平等、インクルージョン、アクセシビリティ(DEIA)事務所の閉鎖を命じ、人事管理局はDEIA事務所に対し、1月22日午後5時までにすべての取り組みを停止するよう指示した。

 1月23日正午までに、すべての機関は「この覚書を実施するためにとられたすべての措置」について報告することになっていた。ただし実施するためのプログラムや対外的なコミュニケーションは特定されておらず、進行中のプロジェクトもある。

 ゲイリー・A・アシュワース空軍長官代理は、空軍首脳に宛てたメモの中で、「空軍障壁分析作業部会(DAFBAWGs)を直ちに解散せよ」と指示した。このメモはソーシャルメディアで回覧され本誌は本物であることを確認できた。

 空軍障壁分析作業部会には、政策を分析し「機会均等に対する潜在的な障壁」を特定する役割を担うチームが含まれていた。その中には、巻き毛によるカミソリ負けで悩む黒人飛行士の剃毛免除の拡大や、女性飛行士専用の防護服の提唱などがある。

 同作業部会のソーシャルメディアページは、空軍の多様性・包摂オフィス、空軍戦闘司令部の組織文化オフィス、空軍資材司令部のDEIAプログラム、空軍アカデミーの多様性・包摂マイナーのウェブページや公式リリースと同様に閲覧不可能となった。

 国防総省全体では、国防長官の多様性・公平性・包括性推進室のウェブサイトも、国防機会均等管理研究所のウェブサイトとともに、同様に削除された。

 国防総省、空軍省、そして6つ以上の米空軍組織の関係者は、本誌からの問い合わせに対し、すべて同じ回答をしている: 「国防総省は、大統領による大統領令に概説されているすべての指令を完全に実行し、実施する」。

 今回の措置は、空軍省が2023年に17ページにわたる「多様性、公平性、包括性、アクセシビリティ(DEIA)戦略計画」を発表して2年も経たないうちに実施された。「空軍省の多様性とインクルージョンの努力は、科学、ビジネスのベストプラクティス、議会の命令、データに焦点を当てた政策の見直しと評価、そして毎日一緒に働いている飛行士とガーディアンの生きた経験によってもたらされている」。

 すべてのDEIAプログラムと役職を後退させることは、大規模な事業となる。ダイバーシティに関する空軍の政策は、ダイバーシティのトレーニングとアウトリーチを義務付けたAFI 36-7001を発表した2012年までさかのぼる。これらの規制は、トランプ大統領の最初の任期中にもなくなったわけではなく、彼が大統領だった2019年、空軍はAFIを更新・拡大し、新たな役割と具体的な要件を定義していた:

  • 副参謀長と主要司令部の代表からなる、より大規模な「空軍幹部ダイバーシティ&インクルージョン会議」;

  • 空軍ダイバーシティ&インクルージョン担当チーフの新設;

  • 主要司令部に対し、「組織全体で多様性と包摂を明確に支援するプログラムと実践を実施する」よう指示。上級指導部に助言する多様性と包摂の責任者を任命することも検討する;

  • 基礎軍事訓練、専門軍事教育、新司令官や将校のための新任教育プログラムにおける新しい訓練プログラム。

 空軍省は2021年、バイデン大統領就任の9日前に多様性・包摂局を立ち上げた。主要司令部がこれに続き、多様性と包摂の担当官や執行委員会を任命した。しかし、2024会計年度の国防授権法により、新たな将校職の設置は阻止され、欠員採用も凍結された。

 DEIプログラムを廃止すれば、財政を節約すできる。バイデン政権の2025年度予算要求には、「軍部、OSDの多様性・公平性・包括性推進室、国防機会均等管理研究所にまたがる......DEIA専用活動」に1億6200万ドルが含まれていた。

 リクルートなどの空軍プログラムへの影響はまだ不明確である。米空軍のリクルーターは、軍社会との直接的なつながりに欠ける不特定多数のグループにアプローチすることに取り組んできた。2021年に開始されたAim High Flight Academyや2018年に開始されたAFRS Detachment 1のようなプログラムは、長い間白人男性が支配していた分野に女性やマイノリティを引き込むことで、潜在的なパイロットのプールを拡大する企画だった。

 退役したエド・トーマス・Jr.空軍新兵部隊長は、空軍が提供するすべてをより多くの人々に知ってもらうことは理にかなっていると述べた。 「我々は、あらゆる階層のアメリカ人を惹きつけなければならないが、選抜するときは、能力に基づいている」と本誌取材に語った。「結局のところ、空軍は実力に基づくシステムであり、我々の生活と国家の安全保障は空軍が実力に基づく組織であるかどうかにかかっている」。

 トーマスは、人材獲得競争が熾烈を極めている現在、そうすることで人材プールを可能な限り広く保つことができ、採用係はどこにでも候補者を求めるだろう、と述べた。

 AFI36-7001が指示する訓練コースは、カリキュラムの置き換えに時間がかかるかもしれない。 例えば、空軍の基礎訓練では、AFI36-7001は7週間半にわたって3時間の多様性訓練を「最適な指導時間」として定めた。その時間が現在どのように使われているかはまだ明らかではない。また、DEIプログラミングのための1時間のトレーニングが航空士官学校のプログラムに含まれているかどうかも不明である。

 これらのコースの追跡と報告を担当する航空教育訓練司令部は、その訓練が取り消されたかどうかについては明言していない。空軍基礎訓練を監督する第37訓練飛行隊と、航空士官学校とその他の専門軍事教育プログラムを監督する航空大学校は、いずれも他の空軍機関から提供されたのと同じ声明で回答した。

 また、DEIプログラムの前身である空軍の機会均等(EEO)プログラムや、差別に関する苦情を調査することもある監察官室の将来も不明だ。DEIはEEOと同義ではないが、両者の重複は避けられない。

 元空軍検事長のドン・クリステンセン退役大佐は、機会均等プログラムへの潜在的な影響について懸念を表明した。「差別が存在することも、ハラスメントが存在することも、調査結果からもわかっている。人種による差別待遇が存在する可能性があることを認識しなければならない......そして、そこから目を離せば、差別が横行し、基本的にそれを見る人がいなくなる危険性がある」。

 DEIに関する大統領令やメモは、実力に基づく機会を重視する意図を強調しているが、差別事例には触れていない。DEIプログラムでは、個々のケースと異なる制度的差別を特定しようとすることもあった。■


Air Force Shuts Down DEI Programs, Following President’s Orders

Jan. 23, 2025 | By Chris Gordon, Greg Hadley and David Roza


https://www.airandspaceforces.com/air-force-dei-programs-trump-executive-order/


グレイウルフ旅団、NTC派遣での実弾射撃訓練に備える(Defence Blog)―これが現代の騎兵隊の姿です

 Photo by Josefina Garcia


1騎兵師団第3機甲旅団戦闘チーム(グレイウルフ)が1月13日に実弾演習(CALFEX)を開始すると、大砲の轟音とAH-64アパッチ・ヘリコプターの鼓動が空気を震わせた。

 ジャック・マウンテン多目的射撃場(テキサス州)で実施されたこの演習は、今春に予定されているナショナル・トレーニング・センター(NTC)へのローテーションに備える同旅団にとって重要な節目となった。

 第7機動広報分遣隊のプレスリリースによると、訓練は、高強度の戦闘シナリオで模擬訓練施設への多面的な攻撃を伴うものだという。航空攻撃、騎乗歩兵、戦車、ブラッドレー戦闘車、戦闘工兵、重砲、兵站支援を組み込んだ演習は、旅団全レベルでの連携と結束を強調した。

 多くの指導者や兵士にとって、この訓練は入隊以来初めて一緒に訓練する機会となった。第12騎兵連隊第1大隊長のエリック・ミラー中佐がこのような包括的な演習に伴う課題と成長を強調している。

 「分隊、小隊、中隊、すべてのインフラとサポート要件を含むようになると、初めての経験で摩擦が生じる」。「裏を返せば、こうした摩擦は、チームが自分たちを理解し、学び、証明し、自信を深めていく中で、最もやりがいのあるものでもある」。

 演習では、クルーはテーブル6含む砲撃資格テーブルを通じてスキルを磨くことができた。この表は、騎乗・非騎乗を問わず、与えられた武器システムを安全かつ効果的に操作し、戦闘における正確性と即応性を確保するための訓練である。

 「この訓練は、分隊、小隊、中隊が6ヶ月間取り組んできた成果を確認するものです」とミラーは付け加えた。

 演習は、戦闘能力を高めるだけでなく、追加的な資源や訓練要素を統合するプラットフォームとしても機能した。航空隊員も地上部隊に加わり、電子戦シナリオも今後の演習で導入される予定だ。

 組織外部の各種資源を引き入れることができる。ナショナル・トレーニング・センターで遭遇する可能性のある問題群を作り出すには、実に良い方法だ。

 第3工兵大隊の作戦将校ジェームズ・ホッブス少佐にとって、今回の訓練はチームワークと準備の重要性を強調している。「ここでチームワークを発揮するのは素晴らしいこと」とホッブスは言う。

 グレイウルフ旅団はナショナル・トレーニング・センターへの配備を今春予定しており、今回のCALFEXは即応態勢を強化する重要な機会だと受け止められた。訓練はフォート・カバゾス(テキサス州)で2月3日まで続けられ、戦術と連携に磨きをかける時間が各部隊に十分にある。

 グレイウルフ旅団が統合と適応性に重点を置いているのは、戦闘即応性を維持するコミットメントを強調したものであり、現代戦の難題に立ち向かえるようにするものである。■


Colton Jones

Colton Jones is the deputy editor of Defence Blog. He is a US-based journalist, writer and publisher who specializes in the defense industry in North America and Europe. He has written about emerging technology in military magazines and elsewhere. He is a former Air Force airmen and served at the Ramstein Air Base in Germany.


Greywolf brigade gears up for NTC deployment with live fire drills

ByColton Jones

Jan 24, 2025

Modified date: Jan 24, 2025


https://defence-blog.com/greywolf-brigade-gears-up-for-ntc-deployment-with-live-fire-drills/


ディープシークのAIブレイクスルーは AIにおける中国の "スプートニクの瞬間"になったのか?(19fortyfive)―こちらのほうが理解しやすい内容と思います。

DeepSeek AI. Image Credit: Creative Commons.



工知能の進歩がトランプ大統領の二回目の就任早々、大きな話題となっている。先週、トランプ大統領はStargateと呼ばれる新しいプロジェクトを発表し、OpenAIオラクルソフトバンクがホワイトハウスのイベントで、AIインフラに1億ドル(おそらく長期的には5億ドル)を投資すると発表した。

 その直後、トランプ大統領の盟友イーロン・マスクがこのプロジェクトを公の場で非難し、「彼らは実際には資金を持っていない」とXで主張した。この投稿は、大統領顧問から通常は見られない類のもので、トランプのホワイトハウス・スタッフを怒らせたと言われている。

 そして今、アメリカのハイテク企業にとって最も順調だったAI計画を脅かす、もうひとつの重要なAIの開発があった。

ディープシーク

 DeepSeekは中国の人工知能ベンチャー企業で、同社のチャットボット「R1」が米国のアプリストアに今週登場した。TikTokの禁止をめぐる騒動から間もなく、別の中国製アプリがアップルとグーグルのアプリストアのトップに躍り出たわけだ。

 「DeepSeek-R1は現在稼働中で、オープンソースであり、OpenAIのModel o1に匹敵する。 ウェブ、アプリ、APIで利用可能」と同社のウェブサイトは述べている。


DeepSeekはアメリカのライバルとどう違うのか?

「米国ハイテク業界が心配しているのは、中国のスタートアップがわずかなコストで生成AIの最前線にいる米国企業に追いついたという考えだ。 もしそれが本当なら、米国のハイテク企業がAIのさらなる進化に必要なデータセンターやコンピューターチップに費やすと言う巨額の資金に疑問を投げかけることになる。

このソフトウェアはオープンソースであり、アメリカのライバル企業よりはるかに安いと言われている。


深い反落

R1の登場は、月曜日にハイテク株を暴落させるのに十分だった。ロイター通信によると、AIチップのリーディング・カンパニーであるエヌビディアは月曜日に17%下落し、1日の時価総額5930億ドルの損失は史上最大規模となった。エヌビディアは火曜日の取引開始早々、その価値の一部を取り戻した。

 なぜ大きく売られたのか? ディープシークは、ニューヨーク・タイムズによると、"少数の二流品のAIチップを使って、わずかなコストでアメリカの主要なAIモデルの性能に匹敵する......巧みなエンジニアリングにより生の計算能力を代用した "と主張している。

 さらに、ディープシークが登場する前は、AI技術に関して中国がシリコンバレーのリードに挑戦するところまで来ているとは考えられていなかった。

 AIの理想的なケースは、誰もがポケットの中に魔法のランプを持っていて、そのランプには無限の願いを叶えてくれる精霊がいる。そのようなケースは、人類の繁栄にとって非常に良いことだが、株式市場の評価にとっては最悪だ。エヌビディアのチップは何のために必要なのか? もし精霊が無料なら、401(k)は何のために必要なのか? 良いニュースと悪いニュースのようなものだ。


スプートニクの瞬間

ディープシークの登場は、人工知能をめぐる議論に新たな局面をもたらした: 新冷戦だ。 1957年にソ連が初の人工宇宙衛星を打ち上げた宇宙開発競争の重要な瞬間である。 AIが今後数年で何をもたらすかについてのあらゆる心配の上に、今、地政学に関連する問題にひっかかっている。

 これらの疑問はすべて、どのように解決するかという点で答えから非常に遠いものだろう。しかし、アメリカのハイテク企業が怯えているのは確かだ。■


About the Author: Stephen Silver 

Stephen Silver is an award-winning journalist, essayist and film critic, and contributor to the Philadelphia Inquirer, the Jewish Telegraphic Agency, Broad Street Review and Splice Today. The co-founder of the Philadelphia Film Critics Circle, Stephen lives in suburban Philadelphia with his wife and two sons. For over a decade, Stephen has authored thousands of articles that focus on politics, technology, and the economy. Follow him on X (formerly Twitter) at @StephenSilver, and subscribe to his Substack newsletter


DeepSeek’s AI Breakthrough: China’s “Sputnik Moment” in AI?

By

Stephen Silver


https://www.19fortyfive.com/2025/01/deepseeks-ai-breakthrough-chinas-sputnik-moment-in-ai/


 

ディープシークはAIの未来をどう変えたか、国家安全保障にとっての意味とは(Defense One)―この記事何回見直しても頭にすっと入ってこないのですが...もっとうまく説明してもらえないものでしょうか

 


中国の躍進は、効率的なツールを米国企業が構築する機会となる。米軍にとっても助けとなるだろう


国のDeepSeekが、米国の著名なツールで必要とするコンピューティングパワーのほんの一部で済む生成型AIへのアプローチを詳細に説明して数日がたち、国防総省によるAIの購入と利用方法から、外国勢力がプライバシーを含む米国の生活を混乱させる可能性まで、AIと国家安全保障に関する世界的な議論が変化を示している。

 DeepSeekによる発表で、ホワイトハウス、ウォール街、シリコンバレーから一斉に悲鳴が出た。ワシントンD.C.では、トランプ大統領がこれを「中国と競争するために、我々の産業がレーザーのように焦点を絞る必要があるという警鐘」と呼んだ。ホワイトハウスの報道官、カロライン・リービットは、国家安全保障会議が現在このアプリを検討中であると述べた。海軍はすでにこれを禁止している。ウォール街では、チップメーカーNvidiaの株価が急落した。DeepSeekの米国における最も近い競合企業であるOpenAIは不正を訴え、このアプリは本質的に自社のモデルを蒸留したものと主張している。

 もし読者が、米国は「戦略的競争を激化させている中国とのAI競争に勝たなければならない」という、2021年にエリック・シュミット元グーグル会長とロバート・ワーク元国防副長官が書いた内容に同意するなら、DeepSeekは重要な存在となる。

 なぜDeepSeekがそれほど重要なのか? 第一に、他のモデルよりもはるかにオープンソースであることが挙げられる。しかし、決定的な技術革新は、巨大モデルから高度な推論能力を抽出して、より小さく効率的なモデルに変換した能力だ。DeepSeekモデルは、より大きなオープンソースの代替モデルより優れた性能を発揮し、コンパクトなAIパフォーマンスの新たな基準(少なくとも非常に公的な基準)を設定している。

 DeepSeekは、推論能力の開発に強化学習を大いに活用しており、OpenAIなど競合他社が初期段階で一般的に使用する教師ありの微調整を回避した。このアプローチは、米国を拠点とするAI大手企業が採用するハイブリッドトレーニング戦略から意図的に乖離したものだ。

 論文で説明されているベンチマーク結果によると、DeepSeekのモデルは推論を多用するタスクにおいて非常に高い競争力を発揮し、数学やコーディングなどの分野で常にトップクラスのパフォーマンスを達成している。しかし、この研究では、推論を多用しないタスクや事実照会精度の面で脆弱性が浮き彫りになっており、この点ではOpenAIの最も進化した製品には及ばない。

 DeepSeekが大規模なコンピューティングリソースを使用せずベンチマーク結果を達成している(または本質的にはOpenAIをコピーしていない)ことを独自に検証した者はまだないが、米国によるマイクロチップの高度な管理により、中国で利用できるリソースは制限されよう。

 AIモデルの評価も行うScale AIのCEOアレックス・ワンは、CNBCのインタビューでDeepSeekをOpenAIと同等と表現した。また、同氏は中国が輸出規制にもかかわらず、NvidiaのH100チップを約5万個入手したと述べた。

 Nvidiaの広報担当者はこの主張に直接言及せず、Defense Oneに対し、「DeepSeekは優れたAIの進歩であり、テスト時間スケーリングの完璧な例です」と述べた。テスト時間スケーリングとは、モデルが新しい結果を生成するためにデータを取得している際に、コンピューティング能力を向上させる技術である。この余剰の演算能力により、モデルはさまざまな選択肢を検討し、回答の改善ができ、その結果、トレーニング(演算)回数を減らしてより良い回答に到達することができる。 モデルはその後、演算エネルギーをより効果的に集中させることができる。 これはある意味、運動に近い。最初は運動でエネルギーが消耗しますが、長期的にはエネルギーを蓄え、より効果的に使用する能力を身体に備えることとなる。

 「DeepSeekの研究は、広く利用可能なモデルと輸出管理に完全に準拠した演算を活用し、その手法を用いて新しいモデルがどのように作成できるかを示しています。推論には膨大な数のNVIDIA製GPUと高性能なネットワーク接続が必要です。現在、私たちは3つのスケーリング法則を持っています。事前トレーニングと事後トレーニング、そして継続する新しいテストタイム・スケーリングです」とNvidiaの広報担当者は語った。

 この開発は、AIの優位性を構築する方法についての議論に根本的な変化をもたらす。OpenAIのような企業が膨大なデータセット、非常に大規模なモデル、そして拡大を続けるコンピューターリソースに基づいて成果を達成する一方で、AIの次の段階では、より少ないコンピューターリソースで済む小規模なモデルが主流になる可能性が高い。

 これは、トランプ大統領の就任式に出席した大手テクノロジー企業を含む大手エンタープライズクラウドプロバイダーにとっては、悪い兆しとなるかもしれない。多くの企業は、リソースを大量消費する生成型AI製品に大きな需要を見込んでおり、代替アプローチを排除してきた。しかし、AIの構築方法に関する議論の変化は、強力なツールを必要とする軍に朗報となる可能性がある。また、国防総省が最高のAI能力を獲得しながら、同時に支出を抑える課題にも役立つ可能性がある。

人工知能が示すより小さな未来

OpenAIや大手クラウドプロバイダーとは全く異なる道を模索していたAI研究者たちは、DeepSeekの画期的な成果に驚いていない。

 データサイエンティストのドリュー・ブルーニグは本誌に対し、「DeepSeekの成功から得られる教訓があるとすれば、それは『進歩への道が単純に支出増である場合には用心すべきだ』ということだ。この道ではイノベーションは育たず、劣る競合他社は創造性を発揮し、制約の範囲内で作業せざるを得なくなり、最終的には...彼らが勝利するでしょう。支出はイノベーションではありません」。

 最近のブログ投稿で、ブルーニグは合成データが高性能モデルの生成に必要となる生データと演算能力を削減できることを説明した。「この戦術は、大規模モデルと同等の効果を小規模モデルにもたらします」と彼は述べた。

 AIスタートアップ企業Useful SensorsのCEOであるPete Wardenは、本誌に対し、「DeepSeekは、より大きなモデルに多くの費用をかけることがAIの改善につながる唯一のアプローチではないことを示しています。TinyMLは、トレーニングにかかる費用がより少ない小さなモデルを使用することで、規模に関わらず大きな影響を与えるアプリケーションを構築できるという考えがベースです」と語った。

 しかし、スタンフォード大学のAI研究者リトウィク・グプタは、同僚数名とともに大きな成果を生み出す小型AIモデルの構築に関する画期的な論文を執筆しており、DeepSeekに関する多くの誇張された報道は、その実態を正しく理解していないと警告している。グプタは、6710億のパラメータを持つ「依然として大きなモデル」と表現している。

 「しかし、DeepSeek-R1チームがファーストパーティの『蒸留』バージョンのモデルを提供していることが注目に値します」と、グプタは本誌に語った。「DeepSeekが行ったのは、15億から70億のパラメータを持つLlamaとQwenの小型バージョンを取り出し、DeepSeek-R1の出力で訓練したことです。これにより、『R1のような』モデルをラップトップやスマートフォンなど小型デバイスで動作させることが可能になります」。

 DeepSeekの性能は、可能性を示す限りにおいて、国防総省が業界との協議で有利な立場を得ることを可能にし、また、国防総省はより多くの競合企業を見つけることが可能になるだろう。

 「国防総省がDeepSeekとQwenのアメリカ製オープンソース版を採用しても驚きません」とグプタは言う。「国防総省は、本来はクラウドのみで提供されるサービスについて、特別なオンプレミス版を要求する権限を常に持っています。彼らがOpenAIとClaudeに同様の要求をしたとしても私は驚きません」。

 AI Now Instituteの主任AI科学者Heidy Khlaafは、兵器システムと国家安全保障におけるAIの安全性に研究の焦点を当てている。フラーフはこの画期的な技術が現実なら、生成型AIの使用が、潜在的には小規模メーカーを含むより小規模なプレイヤーにも開放される可能性があると本誌に述べた。しかし、そのようなモデルは戦闘には適さないという。

 「一般的に、LLMや基礎モデルは、信頼性と正確性が求められるアプリケーションではエラーが発生しやすいことから、安全が重視される作業には適しません。しかし、DeepSeekの規模と能力により、これまでアクセスできなかった小規模事業者でも基礎モデルが利用できるようになります。これには、基礎モデルを安全が重視されない方法で使用することに関心を持つ自動車メーカーも含まれるでしょう」。

 バークレーにある政治におけるセキュリティセンターでテクノロジーとサイバーセキュリティのポートフォリオを統括するアンドリュー・レッディングは、本誌に対し、「DeepSeekの性能は、AI研究者が計算量を減らしながらモデルを開発できるようになった経緯を追っている私たちにとっては、まったく驚くことではありません」と語った。

 米国企業は、この画期的な成果を、異なる方向でのイノベーションを追求する好機と捉えるべきであるとレッディングは述べた。「中国の研究者が直面しているコンピューティング上の課題(NVIDIA GPUの輸出規制)は、コンピューティング能力が制限されている米国の研究者が直面している課題と、それほど違いはありません」。

 米軍はすでに、戦闘員に可能な限り近い場所でコンピューティングパワーを確保するために、エッジ機能に多額の資金を投じている。小型モデルの性能における画期的な進歩は、エッジコンピューティングへの投資が価値を増していることを示すものだと、レディングは述べた。 

 「軍事的な文脈において、クローズドモデルとオープンモデルのどちらを使用するかという点は非常に興味深い問題です」と、述べ、前者の利点は、政府ネットワーク内で簡単に移動でき、政府/軍事データを利用できることだが、敵対国が訓練データやモデルの重み付けなどにアクセスする明白なリスクがあります。

 しかし、DeepSeekの発表から得られる最も重要な教訓は、米国と中国の競争での意味ではなく、個人や公共機関、そしてテクノロジー業界のプレイヤーがますます少数のグループに絞られていくことを懐疑的に見る人々にとっての意味であるのかもしれない。大手企業が提供するツールに頼らず、自分で生成型AIツールを構築し、自分で管理するデータを使用したい人にとっては、これは朗報となる。

 「インターネットは、歴史的に分散型サービスとして発展してきました」とグプタは述べた。「もし、誰もが自分だけの『パーソナルAI』を持ちたいとすれば、小規模モデルを個人のデバイス上で実行する必要が出てくる。プライバシーを最優先するモデルを持つAppleのような企業が、オフラインで非接続mpアルゴリズムを推進し続けることを期待したい」。

 しかし、フラーフは、精製モデルを大規模モデルに置き換えることは、個人情報の公開が民間人と同様に軍にも影響を及ぼし、敵対的な標的設定や強制などで脆弱性を生み出すため、軍隊にもプライバシーリスクをもたらす可能性があると警告している。

 そして、アメリカ人の個人情報の広範な公開は、それ自体が国家の脆弱性であり、軍指導者が指摘しているように、紛争時に敵対者に利用される可能性がある。個人が自身のデータをより適切に保護できる改革を行わない限り、DeepSeekのような強力な小型モデルが蔓延することで、悪い傾向がさらに悪化する可能性がある。 

 「DeepSeekは、大規模モデルが常に高い性能を発揮するという考え方に異議を唱えるものです。AIモデルを大規模に構築することに伴うセキュリティとプライバシーの脆弱性という観点で重要な意味を持ちます」(フラーフ)。

 個人のプライバシーに関しては、「蒸留技術により、より大きなモデルの特性の多くを維持したまま、小さなモデルに圧縮することが可能になります。基礎モデルを訓練するため自らのデータを提供した市民にとっては、DeepSeekの蒸留モデルにもプライバシーの問題がすべて引き継がれることになります。それが、機密データでAIモデルを訓練することが国家安全保障上のリスクをもたらす可能性があると警告している理由です」。


How DeepSeek changed the future of AI—and what that means for national security

China’s breakthrough is an opportunity for American companies to build more efficient tools. That will also help the U.S. military.


BY PATRICK TUCKER

https://www.defenseone.com/technology/2025/01/how-deepseek-changed-future-aiand-what-means-national-security/402594/?oref=d1-featured-river-top


紅海での戦闘は米海軍にとって対中戦への教訓となった(The War Zone)―米海軍に大きな教訓を与え、準備がさらに実用的になりますが、他方でPLANには実戦経験がまだありません

 


DDG missile firing. (U.S. Navy)  

(U.S. Navy)



15ヶ月にわたる紅海での戦闘は、海軍のシステム、プラットフォーム、人員に現実世界のストレス・テストの機会となった


海軍の水上艦艇は、過去15か月間、イエメンのイラン支援フーシ派反政府勢力が米軍および同盟国の艦船、ならびに紅海とその周辺海域の商業船舶に向けて発射したミサイルや無人機数百発を迎撃してきた。これは、第二次世界大戦以来、海軍の軍艦が経験した最も激烈な戦闘の持続事案となったが、海軍は引き続き、太平洋での紛争への備えを優先している。ここで疑問が生じる。脅威の筆頭に中国を挙げる海軍にとって、紅海での戦闘からどのような教訓が得られるのだろうか?

 本誌は現役および退役士官連に接触し、この疑問の答えを探った。彼らは、紅海は中国との戦争に備える艦隊にとって、弾薬を消耗し、防衛産業基盤の不足をさらに露呈させる状況で、最高のストレス・テストとなったと語っている。

 「こうした教訓や紅海での経験で得たものはすべて、ハイエンド戦闘に向けた信じられないほど貴重なウォームアップとなった」と、匿名を条件に本誌に語った現役の水上戦闘士官(SWO)は述べた。 


201014-N-RG171-0085 ATLANTIC OCEAN (Oct 14, 2020) The Arleigh Burke-class guided-missile destroyer USS Donald Cook (DDG 75) launches a SM-2 missile during Exercise Joint Warrior, Oct. 14, 2020. Exercise Joint Warrior 20-2 is a U.K.-hosted, multilateral training exercise designed to provide NATO and allied forces with a unique multi-warfare environment to prepare for global operations. U.S. Naval Forces Europe-Africa/U.S. Sixth Fleet headquartered in Naples, Italy, conducts the full spectrum of joint and naval operations, often in concert with allied and interagency partners, in order to advance U.S. national interests and security and stability in Europe and Africa. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Will Hardy/Released)

2020年の演習で駆逐艦ドナルド・クックDDG-75がSM-2ミサイルを発射した。(米海軍)


アナリストは、中国はフーシ派とは全く異なる敵対者であり、中国との戦争はフーシ派のキャンペーンよりはるかに恐ろしく、激しいものになるだろうという明白な事実を認めた。しかし、敵対者の舞台、地理、能力は異なるとはいえ、紅海は主要な経験の場であり、試練の場となっている。

 中国への備えという観点がなくとも、海軍は紅海において疑いようのない勝利をいくつか収めている。アメリカの軍艦が攻撃を受けたことはなく、乗組員はフーシ派の攻撃に対処し、その攻撃は時に灰色の船体に穴を開ける寸前まで接近した。海軍首脳部は、戦闘開始当初よりもはるかに迅速に艦船のレーダーを調整し、フィードバックを提供し、戦術を更新できるようになったと述べている。交戦データの分析だけでも、40日以上かかっていたものがわずか1~2日で済むようになった。これは太平洋での戦闘において決定的な利点となり得る大きな進歩である。1年前、本誌は、この前例のない量の現実世界の経験と、その結果として生み出された数多くの交戦から得られたデータが持つ潜在的な影響力について、また、そこから得られた教訓が米海軍だけでなく中国にも有利に働く可能性について詳しく説明した。

 匿名を条件に自身の考えを本誌に語った退役艦長によると、紅海での成功にもかかわらず、水上艦隊は謙虚さを保つべきだという。

 「我々は、自らの成功に油断することなく、気を引き締めていなければならない。我々は、低レベルの敵に対してハイレベルの戦いを挑んでいるのです。太平洋戦における兵器、戦術、戦略的影響は、かなり異なり、より困難なものとなる可能性があります」。

 海軍が紅海のような沿岸環境での戦闘から学んだ教訓は、南シナ海やルソン海峡での潜在的な沿岸紛争にも適用できる。交戦区域は、公海での戦争よりはるかに飽和状態になるだろう。しかし、太平洋の広大な海域での外洋戦もも、重要な教訓は適用可能だと現役SWOは言う。

 「沿岸域にいる場合、砲火を追跡し迎撃するまでの時間は短くなります」と同SWOは述べた。「沿岸域の時間軸で実行できるのなら、外洋での時間軸でも実行できます」

 紅海における環境摩擦や戦場の霧を克服することは、中国との紛争に備えた良い予行演習にもなると彼は述べた。

 「地理やフーシ派の進化の過程から、我々は多くの洞察を得ることができ、それはそのまま中国とのハイエンドな戦闘に備えることにつながります」と現役SWOは語った。

 また、北京はより高度な無人機や対艦ミサイル、その他の兵器を異なる方法で使用する可能性があるものの、それらの脅威に対処する紅海での経験は依然として有効であると、現役SWOは語った。

 「ミサイルは、それがどこから発射されたものであっても標的とされるでしょう」と彼は言いました。「それはあなた方を標的とし、運動性の多くの側面は、より高性能なミサイルにも引き継がれるでしょう」。

 紅海での戦闘は沿岸での閉鎖的なものだったが、中国との大洋での戦闘では無人機が使用されるだろうと、現役SWOは見ている。また、高度な無人システムを搭載し発射するために建造中の中国の水陸両用艦についても言及した。本誌は昨年秋、中国の076型水陸両用艦と無人機発射用の電磁カタパルトを報告している。小型無人機はこのようなインフラを必要とせず、ほぼあらゆる艦艇から大量に発射することが可能だ。

 戦時中のミサイル消費の体験は、中国との戦争にも当てはまる紅海での主な収穫だと、退役した前方展開艦船の艦長で、シンクタンク戦略・予算評価センター(Center for Strategic and Budgetary Assessments)の現シニアフェローであるJan van Tolは述べている。

 調達と製造に長い時間を要する高価な地対空(SAM)ミサイルが、比較的安価なフーシ派の空中攻撃用無人機を撃墜するため定期的に使用されていると彼は指摘している。

 しかし、誘導ミサイルの消費率は「中国との戦闘でははるかに悪化する」とヴァン・トルは述べた。事態をさらに悪化させているのは、フーシ派が頼りにするイラン由来のミサイルよりも、中国軍の兵器の方が洗練されている事実であり、これにより、中国との交戦1回あたりのアメリカのSAMの消費数が増える可能性が高い。

 中国は、フーシ派よりはるかに多くの多様な艦船攻撃ミサイルを保有している。中国は、広範囲にわたる領土主張の正当性を主張し、紛争時には広大な地域への敵対勢力のアクセスを拒否するために、短距離、中距離、中間距離の艦船攻撃弾道ミサイルを開発している。もし北京が台湾侵攻を試みる場合、米国の水上戦闘艦や空母が東シナ海や南シナ海に近づかないよう、さまざまな兵器に頼ることになるだろう。これはすべて、中国人民解放軍の過剰な接近阻止・領域拒否戦略の一部であり、現在、太平洋における戦争の様相を大きく左右している。


A very general look at some of the breadth of conventionally-armed long-range missile options China has and the ranges they can reach. DOD

中国が保有する通常兵器による長距離ミサイルの選択肢の幅広さと、その射程距離について、非常に大まかに見たもの。(国防総省)


「PLAの空襲密度は、フーシ派の攻撃よりはるかに高くなるため、海軍艦艇はすぐにSAMをすべて使い果たすでしょう」とヴァン・トールドは述べ、さらに、米国の垂直発射システム(VLS)ミサイルセルの一部にはSAM以外の兵器が搭載されており、米国の軍艦は戦闘から離れた再装備場所まで退避する必要があると付け加えた。

 海軍は、艦船が戦闘から離脱し、再装填のために数日から数週間も離れた場所に退避することを軽減しようとしている。そのために、昨年秋に初めて実演された海上VLS再装填能力(Transferrable Reloading At-sea Method、TRAM)が利用された。


Sailors aboard Ticonderoga-class cruiser USS Chosin (CG 65) use the Transferrable Reload At-sea Method, or TRAM (gray machine at left), to grasp a missile canister (white, center) over the ship's forward MK 41 Vertical Launching System (VLS) during the first at-sea demonstration of TRAM off the coast of San Diego on Oct. 9. The canister traveled across cables from Military Sealift Command’s Lewis and Clark-class dry cargo and ammunition ship USNS Washington Chambers (T-AKE 11) to USS Chosin, where TRAM tilted it into a vertical position and lowered it into a VLS cell. (U.S. Navy photo by Eric Osborne)

10月、巡洋艦USSチョシン(CG-65)の乗組員が、艦載のMK 41垂直発射システム(VLS)上のミサイルキャニスターを把握するために、艦載VLS再装填能力(TRAM)を使用している。(米海軍)


中国との激しい戦争では、地対空ミサイル等の兵器はすぐに消耗してしまうだろう。また、アメリカの防衛産業基盤は「必要量に比べて相対的に増産能力が低い」とヴァン・トルは述べた。

 紅海での事案は、海軍兵器の生産量を増やす必要性を強く印象づけた、とヴァン・トルは語った。平時において、あらゆる種類の精密誘導兵器の生産量を増やす努力をしておくことは、中国との戦争で需要が急増して大きな問題へと発展する可能性のある、部品下請け業者のボトルネックやその他の問題を特定するのに役立つ。軍の指導者たちは、紅海やその他の地域で発射されたミサイルが、中国との戦争にも使用できる備蓄を食いつぶしていることを警告している。

 「国防産業基盤へ投資し、ボトルネックを緩和することが重要だ」と彼は述べた。「これは、1939年から1941年にかけて、真珠湾攻撃前の軍需動員において米国が直面した生産上の困難な問題に類似しています。実際には、1930年代後半にフランスと英国が軍備に莫大な需要を生み出したことがきっかけでした。もし、同盟国への供給中に問題を処理する『先行者利益』がなければ、1943年から1944年にかけての膨大な生産は不可能だったでしょう」 。

 前出の現役SWOによると、物資供給の懸念は残るものの、紅海は海軍の防空兵器が戦闘で実際に機能することを証明する貴重な現実の証拠となったという。

 「中国とのさらに高度な戦いに直面することになるでしょう」と彼は言う。「その戦いに向けて前線に立つことになる水兵やオペレーター、海兵隊員、その他の人々にとって、システムへの信頼は極めて重要です。5インチ砲弾であろうと、その他兵器であろうと、航空機からレールから発射されるミサイルであろうと、です」。

 退役海兵隊大佐であり、シンクタンク戦略国際問題研究所の上級顧問マーク・カンシャンは、軍事史には、戦闘の熱狂の中で失敗したように見えた兵器システムの例が数多くあると本誌に語った。カンシャンは、第二次世界大戦中の海軍の欠陥Mk 14魚雷をその典型例として挙げた。

 「現実世界の作戦はシミュレーションではないため、常に戦闘準備態勢が強化されます。すべて実行され、最終的に具体的な結果がもたらされます。最高の訓練でも、このような状況を再現することはできません」と指摘した。

 また、海軍は中国からの多領域攻撃にも直面することになるだろう。フーシ派が主に航空兵器や、時には水上ドローンを軍艦に発射しているのとは異なり、中国軍は海底、宇宙、サイバー領域でも攻撃を仕掛けてくると、ファン・トルは述べた。「1つの領域に集中する贅沢はできなくなるでしょう」た。

 詳細は明らかにされていないが、現役SWOは、海軍の電子戦(EW)能力も紅海での実戦経験から恩恵を受けていると指摘した。

 「運動戦闘の左側にとどまるためRFスペクトルを活用することは、常に我々が考えていることです」と彼は述べた。「電子は無償で、電気を作っている限り生成できます。その点については、検出から交戦に至るキルチェーンの全側面で教訓を多数得ることができました」。

 退役した水上戦闘士官(SWO)で、海軍での30年間のキャリアの3分の2を海上で過ごしたブラッドリー・マーティンによると、紅海での作戦は、中国との戦争が勃発した場合の作戦の激しさに匹敵するものではないものの、システムがどう機能するか、また、どのような計画、訓練、手順を強化する必要があるかについて、海軍に貴重な現実的な洞察をもたらしたと指摘している。

 海軍が紅海から得た教訓のひとつは、敵の武器交戦圏付近における空母航空団の周期的な運用に関する厳しい現実であると、今はシンクタンクRANDの上級政策アナリストである同氏は述べた。このような作戦の危険性は、先月、フーシ派による米空母ハリー・S・トルーマン(CVN-75)への継続的な攻撃中に、巡洋艦ゲティスバーグ(CG-64)がF/A-18スーパーホーネットを誤射し撃墜させた事故で浮き彫りになった。海軍は事故の詳細をほとんど公表していないが、少なくとも3つの調査が事故の経緯を解明するために進められている。

 「相当な数の地上軍備を持つ敵からの攻撃に対処することは、重要な体験」でもあるとマーティンは付け加えた。

 フーシ派の兵器はイラン経由で供給されており、海軍は2023年10月以来、同派の対艦巡航ミサイル(ASCM)、対艦弾道ミサイル(ASBM)、空中攻撃用ドローン400基以上を破壊したことが明らかになっている。

 しかし、紅海での貴重な教訓を得た一方で、「準備態勢は間違いなく疲弊している」とマーティンは見ている。

 イランとフーシ派による弾道ミサイル攻撃からイスラエルを守る米国海軍の役割、そしてそれを達成するためのイスラエルの防衛インフラとの連携は、将来の戦いにおける台湾防衛にも直接関連していると現役のSWOは述べた。

 文化的に、紅海での戦いは水上艦隊を「平時」の体制から引きずり出し、中国との戦争がどのようなものかを体験させることになると、ヴァン・トルは述べた。海軍特殊部隊(Navy SEALs)や一部の航空機乗組員を除けば、艦隊は何十年もの間、攻撃された深刻な脅威に直面したことがなく、そのため「厳しい現実的な訓練」が妨げられてきた。「安全第一」の文化は平時における海軍にとっては適切かつ必要であるが、本格的な実戦準備には役立たない、と彼は言う。

 「しかし、これはある程度変化したように思える。艦船が紅海に展開する際、乗組員は攻撃を受ける可能性があることを理解していた」とヴァン・トルは言う。「真剣に艦を守らなければならないという現実的な可能性は、精神を集中させるのに非常に役立つ。この考え方や心理の変化は本当に重要であり、起こりつつあるようです」。


231019-N-GF955-1030 RED SEA (Oct. 19, 2023) Sailors assigned to the Arleigh Burke-class guided-missile destroyer USS Carney (DDG 64) stand watch in the ship’s Combat Information Center during an operation to defeat a combination of Houthi missiles and unmanned aerial vehicles, Oct. 19. Carney is deployed to the U.S. 5th Fleet area of operations to help ensure maritime security and stability in the Middle East region. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Aaron Lau)

2023年10月、海軍駆逐艦USSカーニー(DDG-64)の戦闘情報センターで当直に立つ水兵。(米海軍)


紅海での経験は、戦時下において、艦艇の当直チームが高度な戦術訓練と熟練度を維持することの重要性をさらに強調するものとなった、と彼は付け加えた。中国との戦争は比較的短い予告期間で始まるため、このような訓練は配備前の準備に限定することはできない。

 「同様に、ダメージコントロールの訓練や資材の準備についても言えることです」とヴァン・トルは述べた。「これまで紅海で活動してきた艦船は、防御面で素晴らしい働きを見せており、命中弾は受けていません。しかし、フーシ派でさえ攻撃に運が味方する可能性はあります。中国人民解放軍の脅威ははるかに強力であり、命中弾を受ける確率ははるかに高くなるでしょう」。

 現下の紛争は、常時交戦の脅威下における乗組員のストレスという観点から、次の戦争に向けた重要な教訓を水上艦隊に与えた。前出の現役SWOによると、水上艦隊は、乗組員の健康状態を監視する方法を追加し、必要な乗組員が速やかに支援を受けられるようにしているという。

 「これは見過ごすことできない重要な側面です」と彼は言う。「戦闘状況における水兵たちの投資です。多くの取り組みが成果を上げているのを私たちは見てきました。そして、そのことについてより良いデータを得ています」。

 また、米海軍大学校の海事戦略論の教授ジェームズ・ホームズによると、紅海での作戦は、フーシ派が発射したある種のミサイル(中国が将来の戦闘で使用する可能性がある)の不明点を解明し、米国艦艇がそれらを撃破できることを証明するのに役立った。フーシ派は初めて対艦弾道ミサイルを発射した勢力となり、海軍は現在、そのような兵器を排除できることを示した。

 「同じことは、本質的に同じ目的を果たす『神風ドローン』にも言える」と、ホームズは本誌に電子メールで語った。「次なる大きな脅威の正体を明らかにすることは、大きな貢献となる。私たちは恐れてはならない」 。

 同時に、海軍は紅海での戦果から「慢心」すべきではないとホームズは言う。

 「最高の戦略思想家カール・フォン・クラウゼヴィッツは、戦争における成功はせいぜい60対40の割合と示唆しています」とホームズは語った。「我々も負ける可能性があり、実際、中国に有利な状況であると思います。一方の軍のほんの一部が、他方の軍全体と対峙した場合、どちらが勝つでしょうか?我々は一部であり、中国の人民解放軍は全体です。紅海ではそうではありませんでした」。

 それでもホームズは、紅海での出来事は、中国との戦争が勃発した場合に水上艦隊が直面する可能性のある状況の一端を垣間見せてくれたと述べた。

 「切実に必要な兵器を消費しており、是正すべき物質的な側面があります。しかし同時に、戦争は人間同士の戦いです。我々は、いずれ必要となるかもしれないことを行うために、自国民を準備させています。我々が彼らに手段を与えれば、その手段を操る者は仕事をこなすことができます」と、ホームズは語った。

 中国軍との戦闘の可能性に備える海軍の準備は加速しており、海軍は、人民解放軍よりも弱いとはいえ、現実の敵と対峙することで間違いなく恩恵を受けている。紅海での衝突は、イスラエルとハマスの停戦合意を受けてフーシ派が攻撃を停止すると発表したことで、終結に向かっているかもしれない。しかし、どのような結末を迎えるにせよ、水上艦隊は数十年ぶりに継続的な戦闘を経験し、その過程で平時の慣習から脱却した。この過程は、貴重な経験と大量のデータをもたらし、はるかに強力な敵と対峙する水上艦隊の準備状況を冷静に評価する機会となった。■


What Red Sea Battles Have Taught The Navy About A Future China Fight

The past 15 months in the Red Sea have provided the Navy with a real-world stress test of its systems, platforms and people.

Geoff Ziezulewicz

https://www.twz.com/news-features/what-red-sea-battles-have-taught-the-navy-about-a-future-china-fight