2017年6月30日金曜日

★★PLAN最新鋭055型駆逐艦の性能、運用想定、その意義



China's First Home-grown Missile Destroyer Launched In ShanghaiVCG—VCG VIA GETTY IMAGES

駆逐艦、巡洋艦という従来の区分が意味がなくなってきたのでしょうか。なんでも盛り込むと大型艦になります。同時に大型艦の艦容が十分に威圧的になる意味もあります。性能よりも面子を重視した中華価値観の表れなのかもしれませんが、軽視は許されないでしょう。

China's Type 055 Super Destroyer Is A Reality Check For The US And Its Allies

中国の055型駆逐艦は米国、同盟国を現実に直面させる


This is one impressive ship that underlines China's changing weapons development capabilities and its emerging greater naval strategy in the region and beyond. 

中国の兵器開発状況の変化を示す艦であり中国の海軍戦略が周辺海域から外部へ伸びるあらわれだ


 BY TYLER ROGOWAYJUNE 28, 2017
  1. 中国が055型駆逐艦一号艦を本日進水させた。中国で最高水準の水上戦闘艦で公表された写真を見ると中国がここまでの偉容の艦を建造したのを見て驚く向きも多いはずだ。055型は海のJ-20ステルス戦闘機といったところで中国の急速な水上戦闘力開発能力のみならず中国の海洋戦略が現実のものになってきたことを如実に示すものだ。
  2. 中国海軍にとって055型は米タイコンデロガ級巡洋艦とズムワルト級駆逐艦の中間といったところだろう。艦体と性能はタイコンデロガ級に近いが搭載技術は中国水上艦の将来を開く点であることがズムワルト級に近い。055型の外装はステルス性がありセンサー搭載マストが一体型になっているのはアーレイ・バーク級とズムワルト級の中間といってよい。
  3. 055型は駆逐艦というより巡洋艦と言ってよい。全長590フィート排水量は10千トンから12千トンの間で、アーレイ・バーク級の最新型より全長で81フィート、排水量で2,500トンほど多く、タイコンデロガ級巡洋艦に近い。武装もタイコンデロガ級と同様に垂直発射管は128セルあり、アーレイ・バーク級の96セルより多い。このセルに陸地攻撃型(YJ-18)と対艦攻撃型(YJ-12)のミサイルさらに対潜ロケット(CY型)を搭載する。タイコンデロガ級と同様に広域防空能力と対空ミサイルが同艦の主要任務で、高性能センサー類一式は過剰といってよい装備だ。
  4. この新型艦はデュアルバンド方式レーダーを搭載し、DDG-1000ズムワルト級で搭載予定だった装備と類似している。なお、USSジェラルド・R・フォードに同レーダーが導入される。アクティブフェイズアレイレーダーを二組搭載し、一つは大型Sバンドで艦橋に、もう一つは小型Xバンドを一体型マスト内部に搭載する。Sバンドを長距離の捜索追尾に使い、高感度Xバンドを小型ステルス機や高速飛行目標の追尾に使うが有効距離は短くなる。それぞれの特性を生かしながら冗長性も持たせる。中国海軍でここまでの高性能レーダー装備を有する艦は他にない。
  5. 海軍用のHQ-9長距離対空ミサイルが搭載されそうだ。またHQ-16中距離SAMや四発搭載のDK-10Aもありうる。DK-10AはPL-12空対空ミサイルが原型で、米海軍のRIM-162発展型シースパロウミサイル(ESSM)に近い役割を果たすのだろう。将来的に大気圏高高度で極超音速機の迎撃能力や中国の弾道ミサイル迎撃ミサイルも搭載するだろう。ここにデュアルバンドレーダー、高性能戦闘指揮機能、大量のVLSが加わると大きな意味が生まれる。
  6. 対潜能力でも従来の中国艦の水準を上回り、ヘリコプター二機を運用し(Z-18のASW仕様機が導入されそうだ)、後部格納庫があり飛行甲板も延長している。えい航式深度可変ソナーで潜水艦を狩るだろう。魚雷とロケット推進式魚雷で水中目標を破壊するはずだ。
  7. H/PJ-38 130mm主砲一門と H/PJ-11 30mm近接対応兵器システム(CIWS)が主要兵装だ。米RIM-116回転式ミサイルに相当する「FL-3000N」を艦橋後部に搭載するのではないか。これに30mmCIWSを組み合わせ強力な近接防御能力が実現し、海面すれすれを飛ぶ飛行物体や小舟艇への守りが固まる。
  8. 055型には統合発電配電系統が搭載され、タービン発電で推進力を得る構想とすると従来の中国艦より先を行くことになる。同時に電子戦能力でも人民解放軍海軍PLANで最高性能のミッションっシステムになる。
055型の完成想像図 果壳军事-WIKICOMMONS  .
  1. 055型は多用途能力があるが、主任務は中国版の空母打撃群の掩護でこの点でもタイコンデロガ級巡洋艦と同様だ。戦闘群の指揮統制機能も含み、055型は従来のPLAN艦艇に欠けていた要素を埋める存在となる。052D型駆逐艦が以前は戦闘力で最大の艦だったが055型と比べると相当見劣りがする。
  2. PLANが最低でも四隻の空母運用を目指す中で055型も4隻建造する理由は明白だ。空母戦闘群に一隻ずつ配備し、空母が外洋に出ない場合は遠隔地に出没させ威力を示威するのだろう。また高機能の戦闘能力と指揮統制機能をPLAN部隊に提供するだろう。055型はさらに4隻建造される可能性もある。
  3. そうなると新型055型駆逐艦は米国や域内有力国と互角の戦闘能力を目指す中国に大きな一歩となる。ただし米海軍と同等の威力を有しているとは限らない。多くの面で米海軍の水準に達していない。中国の建艦技術に問題があるといわれ、米艦の水準と比較すれば品質面で劣る。搭載センサーと兵装の一体化、ミサイルの信頼性、またミサイルの全般的性能に疑問が残る。
  4. ただそれが本質的な問題ではない。大事なのは中国が将来の海軍兵力投射能力整備を目指し、空母二隻を建造中で今回空母と行動を共にする艦を作ったことだ。二種類の艦が就役すれば今よりも大胆かつはるかに遠隔地への航行をめざす海軍戦略の中核となる。米海軍は恐れる必要はないが、域内有力国のインドや日本にとっては意味がちがってくる。055型や空母は南シナ海、台湾海峡、インド洋さらに東シナ海で長期間にらみを利かす存在となる。
中国は軍艦の推進式の意義を正しく理解しているようではないか AP
  1. 055型は同時にいわば「後追い」モードで技術ギャップを埋めるのに必死な敵対勢力ではなくなったことを示している。中国では技術国産化が進んでおり、ときには技術リスクも恐れず(例 デュアルバンドレーダー艦載化で米国に先行)挑戦している。そのため中国軍は支援に回るアン業界とともに防衛装備のコンセプトで模倣しているように見えるが、実はハードウェアや兵装の統合化でその傾向は強くなっている。
  2. この変化がさらに進めば米国や同盟国が中国の軍事力整備に対応せざるを得なくなる状況となる。これまでの中国の軍事技術開発は米国やロシアの過去装備を後追いしているような状況だったが、今や予測自体が難しくなっており懸念をそれだけ生む状況になったといえる。■

米国が台湾向け大型武器販売を承認



US clears arms deal for Taiwan worth up to $1.3B

台湾向け武器販売13億ドルを米政府が承認

By: Aaron Mehta, June 29, 2017 (Photo Credit: Sam Yeh/AFP via Getty Images)

WASHINGTON — 米国務省は6月29日総額13億ドルにのぼる台湾向け大規模武器販売を承認した。
  1. 今回の販売はトランプ政権が北朝鮮への核兵器能力廃棄に向けた圧力を中国に期待する中で実現した。
  2. 今回の売却内容には台湾政府が求めてきた装備7種が含まれる。

  • 早期警戒レーダー監視活動へ技術支援(4億ドル)
  • AGM-154C共用スタンドオフ兵器(JSOW) (1.855億ドル)
  • AGM-88高速対放射線対応HARMミサイル (1.475億ドル)
  • MK 48 6AT大型魚雷 (2.50億ドル)
  • MK 46 からMK-54魚雷の性能改修 (1.75億ドル)
  • SM-2 ミサイル用部品 (1.25億ドル)
  • AN/SLQ-32A電子戦(EW) 艦載装備改修 (0.8億ドル)  

  1. 海外軍事装備販売案件のため今回の合意内容でも議会承認がまず必要でその後個別装備ごとに協議が控える。その結果、実際の販売内容に変化が生じ総額も13億ドルを下回る場合もある。
  2. 米政府関係者からは今回の売却の背景について武器販売は「一つの中国」原則に反するものではないと述べている。中国は台湾を主権国家として認めていない。
  3. 「台湾の防衛力があってこそ海峡間関係の改善を目指す対話に本土が真剣になる。その関連で台湾向け装備売却は平和と安定を維持するのに役立つものであり、台湾海峡のみならず広くアジア太平洋地区に資するものだ。海峡間の更なる発展が海峡両岸住民が受け入れられる形で今後も進むことを支援していく」と同関係者は語っている。」■

FY18国防予算:上院が7,000億ドル支出案を発表しました


次年度予算を巡る話題です。トランプ政権になり特色がでてくるはずですが、上下両院と行政府がそれぞれの主張と根拠を示しながら最終案が生まれるのは時間がかかりますが健全な内容が期待できますね。予算管理法による支出キャップが厄介な存在ですね。

Senate unveils $700 billion defense authorization plan

米上院が総額7000億ドルの国防支出認可法案を発表
By: Leo Shane III, June 28, 2017 (Photo Credit: Rick Bowmer/AP)

WASHINGTON —米上院で総額7,000億ドルの国防支出認可法案が6月28日上程され下院の予算関係議員、ホワイトハウスと協議を経て国防立案計画の正しい姿に収れんするはずだ。
  1. 上院案ではその他筋の提案より国防基礎予算は大きいが、兵員数を減らし、昇給幅が小さい特徴で、大統領府の要求より航空機で54機、艦船5隻多い内容になっている。
  2. 上院軍事委員会からは声明で「米軍即応体制の改善に必要な措置であり、将来の課題をにらんだ米軍再建、兵力近代化にも必要」と述べている。委員長ジョン・マケイン上院議員(共、アリゾナ)は案は「六年間におよぶ国防予算カットを受けた我が国の軍事力再構築の出発点になる」と述べた。
  3. その他の予算支出案と同様に上院案も議会が2018年度に求める支出キャップとどう折り合いをつけるかに中心をおいている。
  4. 国防予算の基礎部分では5,490億ドルのキャップが来年度に設定されており、上院案ではこれを6,400億ドルとし下院案の6,210億ドル、大統領府の6,030億ドルを上回る。
  5. 上下両院の共和党国防関連議員はペンタゴンとともに軍事支出では今後数年の予算案で相当の増額が必要と主張し、この10年間で軍事活動が緩慢となっていた中で戦力再建が必要とする。これに対して民主党議員は上下両院で非国防関連で支出増を軍事力拡張に合わせるべきと主張しており議論は袋小路に入りそうだ。
  6. 同案は来月に上院本会議で審議にはいるが、隊員の給与は1月に2.1パーセント引き上げる内容でホワイトハウス案と同率だが予想より低い。
  7. 下院案は2.4パーセント増で民間部門の給与上昇率に合わせているので200百万ドルの差額が生まれ、ペンタゴンはこれを訓練や近代化に支出したいとする。
  8. 上院は下院案より戦力増強幅を小さく想定しているのが特徴だ。上院は大統領府提案より現役隊員5千名を上乗せしている。(下院は10千名増としている)また陸軍州軍・予備役でも1千名(下院は7千名増)、海兵隊員1千名増としている。
  9. かわりに上院では装備調達に予算を多く割り当てる。大統領府提案より31億ドル多くし共用打撃戦闘機を24機調達し、4億ドルでKC-46A給油機を二機追加し、12億ドル追加しMC-130Jを12機追加調達する。
  10. 海軍には739百万ドル追加でF/A-18スーパーホーネット10機、10億ドル追加でP-8Aポセイドン6機の調達増を認める。■

化学攻撃の警戒? シリア沖に米情報収集機材多数が飛行していた



アサドと呼び捨てにしているところが面白いですね。シリア政府軍は再度化学攻撃を実施してしまったのか、しようとしているのかいずれにせよ米国は実施をさせないよう圧力をかけているのでしょう。米政府がシリアに警告したのが6月26日でしたので迅速に機材を展開させたことになります。

U.S. Intelligence Gathering Aircraft Amass Off Syria As Assad Visits Russian Detachment Near Latakia

米情報収集機材がシリア沖を飛行しアサドのロシア部隊訪問時に対応していた

 Jun 27 2017 - By David Cenciotti

 

米RC-135リヴェットジョイント他偵察機がシリア沖合の国際空域を飛んでいた。一方でWC-135「核嗅覚探知機」は黒海に向け飛行した。

ホワイトハウスはシリアが化学攻撃の実施に踏み切ることを強く警告しており、アサドがラタキア付近のフメイミム空軍基地を訪問したことが異例とも言える米スパイ機材のシリア付近飛行の高まりの理由と説明している。

情報収集活動が活発になっているのはシリア西岸の沖合でふたたび先に気付いたのは航空機スポッター、航空バンドやADS-Bを見る愛好家だった。それによるとRC-135複数と米海軍P-8ポセイドン一機も見つけたという。

その報告でRC-135Uコンバットセント一機、RC-135Vリヴェットジョイント一機、P-8ポセイドン一機が6月27日に確認されており、ちょうどそのころアサドがロシア軍スホイ機のコックピットで記念写真をとっているころだった。

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リヴェットジョイントは米空軍のSIGINT情報収集機材であり、「敵の」無新通信を傍受し場所を特定したあと情報を戦術データリンクで他の機材に発信するの役割がある。コンバットセントは敵のレーダー信号の技術情報を収集するのが役割。P-8は米海軍が多用途監視偵察機としても運用中で敵の通信信号を探知する能力がある。言い換えれば最重要ISR(情報収集監視偵察)機材三機種をレバノン、シリア近辺で飛ばしたことになる。同時刻に各機が同じ場所を飛んだのは単なる偶然だろうか。あるいはもっと可能性があるのは何か特別な対象の情報を収集していたのか。

もう一つ興味を引く動きがシリア関連で見られた。WC-135コンスタント・ファニックス「核嗅覚探知機」が無線交信コールサイン「ランド90」を使いRAFミルデンホール基地から離陸し、6月26日に黒海方面に向かっている。通常は大気中の放射性物質の採取用に使われる同機は「事前計画展開」した可能性があり、同機には化学物質を探知する装置があり、攻撃実施後に風下で数日後数週間後に化学物質の拡散を探知できるのではといわれる。

これも偶然なのだろうか。
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Nuke sniffer - 33,000ft heading over Romania...

🇺🇸 USAF WC135C 62-3582 LANDO90


2017年6月29日木曜日

米韓関係は本当に揺らいでいるのか、初の米韓首脳会談に注目



文在寅大統領といえば左翼で政策に不安のある人物との見方が日本では大統領選挙前に強く、現在も良い評価はなかなか出ていないのですが、以下の米分析では盧泰愚元大統領時代の残滓はあるものの結構現実的な見方をしていると決して低く評価していません。果たしてこの評価が正しいのか今週の米韓首脳会談で明らかになります。その行方は日本の安全保障にも重要な影響があるので軽視できませんね。ソウルから過激な主張しか聞こえてこないのは北朝鮮勢力による言論操作なのでしょうか。だとすると過激な発言に日本が過激に対応すれば北朝鮮の思うつぼになるのでは。沖縄の反対運動の背後にも不純な動機を感じるのは当方だけでしょうか。


People watch a TV broadcast of a news report on North Korea firing what appeared to be several land-to-ship missiles off its east coast, at a railway station in Seoul, South Korea, June 8, 2017. REUTERS/Kim Hong-Ji


Is the U.S.-South Korea Alliance in Trouble?

米韓同盟関係は揺らいでいるのか


June 26, 2017
  1. 韓国保守勢力とオバマ政権が接近した時代を経て、ドナルド・トランプ、文在寅両大統領の間の緊張で米韓関係が揺るがしかねず以前のジョージ・W・ブッシュ=盧泰愚両政権の関係に似るとの観測に米側が備えている。ただこの見方が見逃しているのは文大統領が直面する制約のため軌道を外すことはないはず点だ。韓国国民が息をのみ見守るのはトランプ大統領の不確実性により米韓関係が危機に陥る可能性の方だ。
  2. 文は盧政権の首席補佐官を務めたことがあり、大統領選挙で盧の戦術を借用している。THAADミサイル配備の一時停止措置を国内手続きと環境基準を理由に発表したのも米国側に10年前のとげとげしい米韓関係の記憶を呼び戻してしまった。
  3. ただ文在寅大統領が直面する現実は盧大統領時代に本人が主席補佐官として経験した当時の国内国際情勢と大きく異なる。まず国内では政権政党は少数党であり、一方で韓国民の米韓同盟関係(THAADミサイル防衛装備の配備含む)への支持は高い。一方で文の政策課題は主に国内汚職追放と経済平等の追求であり、そのため外交方針は現実的かつ分別をわきまえた路線とする必要があり、米国との同盟関係を基礎にすべきことは明らかだ。
  4. 次に金正恩下の北朝鮮は父金正日時代と異なる。文は選挙期間中に繰り返し北との対話と経済関係刷新を訴えたが大統領選挙からわずか四日で北がミサイル実験をし、目を覚ます効果があった。北朝鮮が非核交渉の席を蹴って久しく文政権による民間交流の再開にも応じていない。北朝鮮軍部は韓国体制の転覆に注力しており対話には関心がない。
  5. さらに国際関係でも変化が生まれている。文が提唱する南北朝鮮間の経済交流再活性化はトランプ政権がめざす圧力強化に反するどころか国連による制裁措置にも違反する可能性がある。また、文政権がめざす対中関係修復では米国を弱体化させTHAAD配備を中止させるべく圧力をかけている中国が障害になっている。
  6. 最近の国際環境で韓国が直面している制約とリスクの中で文は対米関係で現実主義と協力姿勢を賢明にも示している。訪米を控え文は各種米報道機関の取材でトランプ政権との相違点を極力出さないように動いている。自身の対北朝鮮外交姿勢はトランプ政権の「最大の圧力と関与」と共通していると主張している。
  7. 米国が提唱する制裁と圧力を目指した政策に協調姿勢を示した文は開城工業団地など南北朝鮮経済協力の再開では控えめな姿勢に終始した。文は実施には北朝鮮が核廃絶の姿勢を示すのが条件だとし、米学生オットー・ウォームビアの死去は北朝鮮に責任があると怒りを示し、さらに金正恩は「非合理性の塊の指導者かつ極めて危険な人物」だと6月20日にワシントンポスト取材で答えている。こうした現実的な発言が文から出ているのは自身の政治の師廬武鉉と対照的だ。
  8. だがTHAADを巡る決定で文はトランプ大統領を怒らせたとの報道があるが、環境評価の結果が出てもミサイル装備受入の決定が覆ることはないと韓国側は保証している。同様にトランプは韓国の防衛・通商政策はタダ乗りだと長年にわたり発言しており、その考えがいつ表面に出てきてもおかしくない。文は韓国の国防体制を強化するとしソウル南部に在韓米軍基地を新設する事業も続けると確約しているのだが。米韓協議では在韓米軍の駐留費用負担で韓国の負担を増やす点が重要でその他に米韓自由貿易協定の見直し協議もありうる。
  9. 韓国にとって最大の恐怖は文とトランプ間の相性がうまく行かない場合で韓国存続の基盤たる安全保障が消えることだ。実際には両国間には共通目的で深く結ばれた仕組みがあり半島情勢や地域内の不安定に対応するべく安全保障上の同盟関係があるのだが。
Scott Snyder is Senior Fellow for Korea Studies at the Council on Foreign Relations. He is the author of the forthcoming book, South Korea at the Crossroads: Autonomy and Alliance in an Era of Rival Powers (Columbia University Press, 2018).
Image: People watch a TV broadcast of a news report on North Korea firing what appeared to be several land-to-ship missiles off its east coast, at a railway station in Seoul, South Korea, June 8, 2017. REUTERS/Kim Hong-Ji ​

北朝鮮より厄介な中国のミサイルから日本は防衛できるのか



ここでいうミサイル防衛は米軍基地の防衛のことであり、中国ミサイルが正確無比ではないはずなので当然付随被害が人口稠密のわが国土で発生することは避けられないのです。日本政府は真実を伝えるべきです。イージスアショアを選択した日本はTHAADを投入する予定はないので、米軍次第ということでしょうね。韓国がTHAADは要らないというのであれば日本が受け入れることも可能でしょうか。(ありえないと思いたいですが)

Chinese Missiles Can Wipe Out US Bases In Japan: Aegis, THAAD Can Stop Em

中国ミサイルで在日米軍基地は全滅する。阻止にはイージスとTHAADが必要だ。


By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 28, 2017 at 3:07 PM

eng.chinamil.com.cnDF-15B 短距離弾道ミサイル(SRBM)、PLAロケット軍の演習にて。
WASHINGTON: 中国が奇襲攻撃に出れば在日米軍の基地は全滅すると海軍士官二名が結論を出した。だがミサイル防衛装備を増強すれば沖縄以北の大部分の目標は防御可能だ。トーマス・シュガート、ハビエル・ゴンザレスの両中佐がシミュレーションから述べている。陸軍のTHAADや海軍のイージスを増強すれば中国も先制攻撃には動きにくくなるはずだ。
このシナリオは非現実的とは言えない。1949年以来の中国の実績と指導原理を見れば奇襲攻撃を多用する傾向が明白だ。韓国を1950年に、インドは1962年、ベトナムは1974年1979年それぞれ突如攻撃している。中国は攻撃を防衛措置であり、主権や中核的国益が脅かされたためと毎回正当化してきた。ただし南シナ海全域における中国の領有主張など中核的国益は非常に広く定義されており、純粋に政治的かつ非暴力の挑発行為への軍の投入は正当な対応とされている。
米国との危機状況では先制攻撃の誘惑が特に大きくなる。もしアメリカが事前に警戒態勢を敷けば、航空機・艦船は基地から出動し、防衛体制が機能する。しかし大量奇襲攻撃を陸上配備弾道ミサイルで行い、さらに巡航ミサイルや空爆を実施すれば航空機艦船を基地で破壊できる。格好の標的だ。このような通常兵力による大規模攻勢が中国のロケット軍(旧称第二砲兵隊)の大目的である。ロケット軍は2016年に独立組織となった。商用衛星の画像情報を見ると中国のミサイル試射場があるゴビ砂漠で航空基地や実寸大の艦船の外観を横須賀軍港に停泊しているのと同じ形で配置し試射しているのがわかる。シュガート、ゴンザレス両中佐は新アメリカ安全保障センター主催の会合で発表してた。
両名は自主的に研究を開始しており、シミュレーションに一般入手情報のみを使った。シュガートはCNASで海軍から派遣され研究員で、ゴンザレスはジョンズ・ホプキンス大応用物理学研究所に籍を置いている。それでも相当の情報を集めている。
在日米軍の基地に関する公開情報から標的を特定しつつ中国の指導原理から優先順位を付けた両名は500か所を選び出した。航空基地、港湾、指揮命令所、通信基地、燃料貯蔵所、他軍事作戦実施上に必要なインフラだ。中国にはそのすべてを破壊するのに十分な装備がある。

CSBA graphic中国兵器の到達範囲 (CSBA graphic)
中国には推定1,200発の短距離弾道ミサイル(SRBM)があり沖縄を狙う。沖縄は米軍最大の拠点であり中国から近い。一方、中距離弾道ミサイル(MRBM)200-300発なら日本のあらゆる地点を攻撃できる。ミサイル発射後15分で目標に到達する。その後、第二波として爆撃機や巡航ミサイルが一次攻撃が撃ち逃した地点の攻撃にやってくる。特殊硬化弾頭で強化施設も破壊できるし、滑走路を穴だらけにして航空機運用を不可能とする。
日本にはペイトリオットミサイルやイージス搭載艦船があり、北朝鮮からの攻撃を念頭に置いているがシュガート・ゴンザレス両名によれば中国の大量攻撃の前には圧倒されてしまうという。仮に防衛体制が完璧に作動してもすぐに迎撃弾が尽きてしまう。レーザー、レイルガン、他の新手段が有望と言われるが、現時点では配備できる状態ではない。そこで両名は現時点で利用可能なミサイル防衛手段だけに注目した。
そうなると中国の全面攻撃を食い止める手段はあるのだろうか。ペイトリオット部隊をあと二個追加し、イージス艦もあと二隻そしてTHAADを5部隊導入するのだという。米陸軍のTHAADで超高空で長距離で迎撃させる。■


カタール断交措置で米軍は本国からミルクを基地に搬入している


ちょっと捕捉しておくとミルクを運ぶ(milk run)というのは楽な任務という慣用表現なのですね。カタールには乳牛もいないのでしょうね。1万人も食欲旺盛な米軍人がいれば空母二隻分ぐらいですか相当な量の食事提供になるのでしょうね。しかし献立の多くでミルクが下材料になっているとは知りませんでした。またそんなに保存がきくミルクがあるとも知りませんでしたので勉強になりました。

US Squadron Makes Milk Run to Al Udeid Amid Qatar Dispute

カタールをめぐる混乱の中、米軍飛行隊がアル・ウデイドにミルクを搬入

Senior Airman Steven Engels, 379th Expeditionary Aircraft Maintenance Squadron crew chief, marshals a C-130 Hercules on the flight line June 28, 2016, at Al Udeid Air Base, Qatar. (U.S. Air Force photo/Senior Airman Janelle Patiño)
第379遠征航空機整備隊のクルーチーフ、スティーブン・エンゲルスがC-130をフライトラインで誘導中。2016年6月28日、カタールのアル・ウデイド航空基地にて。 (U.S. Air Force photo/Senior Airman Janelle Patiño)
 Military.com | 27 Jun 2017 | by Oriana Pawlyk

  1. SOUTHWEST ASIA -- 米空軍にカタールのアル・ウデイド航空基地にミルク運搬を文字通り任務とする部隊がある。カタールはテロ活動支援を理由に地域内で摩擦を生んでいる。
  2. 今月になり中東九カ国がカタールと国交を途絶した。この措置で基地へのミルク供給に問題が生まれた。同基地はおよそ10千名におよぶ米軍隊員が駐留し不朽の決意作戦の実施で重要拠点である。ペンタゴンはイラク-シリア・イスラム国(ISIS)の打倒を目指している。
  3. 第380遠征部隊支援飛行隊は基地の食事提供を担当し、今回の措置に対応しておよそ一か月分の超高温処理ミルクを基地内に運んだ。
  4. UHT(超殺菌)ミルクは開封しなければ数か月保存できる。ミルクは調理の多くで不可欠な存在でカタール駐留米軍の規模を考えると補給路確保が喫緊の課題だった。
  5. 同飛行隊は大この二週間で型コンテナー13個分のミルクを搬入したとキム・ジェニングス中佐(同隊指揮官)がMilitary.comに述べているが、利用した機材の種類は明かしていない。
  6. 380隊は国防兵站局の補給経路を利用して米本国からミルクを輸送でき幸運だった。他の基地で新規に補給体制を確保すると数か月かかるという。
  7. ジェニングス中佐によればアル・ウデイドはミルク以外の食材は要請していないが、カタール国内の食材補給は今回の措置で機能停止していた。■
-- Oriana Pawlyk can be reached at oriana.pawlyk@military.com. Follow her on Twitter at @Oriana0214.

2017年6月28日水曜日

★レーザー兵器開発の最新動向:アパッチでヘリコプター搭載実験



The U.S. Military Just Attached a Laser Weapon to an Apache Gunship
ここまで小型化が進んできたのかということですが、肝心のヘリコプターレーザーポッドの効果は不明です。機内の発電機を使ったのか高性能蓄電池を使ったのかもわかりません。とはいえ、技術がここまで来ているということと将来の姿が見えてきたということでご紹介します。

The U.S. Military Just Attached a Laser Weapon to an Apache Gunship

アパッチガンシップにレーザー兵器搭載

Raytheon tests helicopter-borne laser pod

レイセオンがヘリコプター搭載レーザーポッドを実験

 June 26, 2017 Robert Beckhusen

  1. 米軍のレーザー兵器開発の中心は海上、陸上、固定翼機でレーザーで目標を焼くには相当の電力が必要となっているのが制約条件だ。
  2. だがヘリコプターでも作動できる。レイセオンが高エネルギ―レーザー兵器をAH-64アパッチヘリコプターガンシップに搭載し試験を行っている。
  3. レイセオンはレーザ―兵器システムとして初の「完全統合」型ができたと述べている。つまりレイセオンの複合スペクトラル目標捕捉システムのセンサーをヘリコプターから運用し「各種の飛行条件、高度、速度」で試したのだという。
  4. テストには米特殊作戦司令部(SOCOM)が加わり、ホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ)で行われた。目的は各種標的にレーザーでどこまで対応できるかの検分だった。同社とSOCOMはアパッチの機体振動、回転翼が生むダウンウオッシュで砂が混じる中でレーザーが機能するかをチェックした。
  5. レイセオンが公開した写真ではレーザーを収めた灰白色ポッドがアパッチ左側パイロンの下に見える。同装置は「一次二次目標すべてを達成」し「予想通りの作動をした」と同社は発表。
レーザーを搭載したAH-64アパッチ。ホワイトサンズミサイル試射場で。Raytheon photo

  1. 米陸軍のアパッチは1986年供用開始し、30mm機銃、70mmロケット砲、AGM-144ヘルファイヤ対戦車ミサイルと強力な武装を搭載する。
  2. ただしこの武装では過剰威力になる標的もある。敵司令部に電力供給する発電機だけを破壊したい場合、単価115千ドルのヘルファイヤミサイルよりレーザーが効率が良い。敵無線送信塔や軽車両の攻撃でも同様だ。
  3. 利点は単価にとどまらない。レーザー光線は光速かつ完璧に正確に数マイル先から発射できる。ただし、発射装置がヘリコプターの振動を克服できる前提だ。
  4. AH-64アパッチにレーザーを搭載し空中目標にも対処できる。2015年にボーイングから2キロワットレーザー兵器で無人機を焦がす構想が発表された。同社はアパッチに搭載する想定も出しているが、米空軍がイラン無人機をシリア上空でつぎつぎとF-15で排除している。
  5. とはいえ、実戦レベルのレーザーを搭載したアパッチはまだ先のことで、今回のホワイトサンズ事例は実験にすぎない。艦上搭載レーザーの効果をまず見ることになりそうだ。33キロワット出力のXN-1 LaWSが揚陸輸送艦USSポンスに搭載されている。これでも比較的小出力のレーザーで、艦船の発電機は相当の出力容量がありXN-1の二倍三倍程度の兵器を運用できる。
  6. 艦船と同様に航空機からレーザー発射した場合には大気によるレーザー劣化の問題があるが、ペンタゴンはレ―ザ―実用化に大規模な予算拠出をしている。
  7. 米空軍特殊作戦軍団は実験レーザー兵器をAC-130ガンシップに搭載する準備中だ。「AC-130機内に余裕があり高周波エネルギー兵器で地上の人間を殺害せずに妨害できる日が来ますよ」とAFSCOのブラドレー・ハイトホールド中将は述べている。■

2017年6月27日火曜日

E-4、E-6、C-32の後継機種統一に向かう米空軍はKC-46派生型調達に向かいそう



先にお伝えした竜巻被害を受けたためE-4Bで供用可能な機材が半減したのを逆手にとって後継機材の検討が早まるかもということですね。ただし候補は767で想定ずみのようなのでボーイングは民間向け引き渡しが終了している同機生産ラインを楽に維持できそうですね。なおボーイングの機種別受注引き渡し状態は
をご参照ください。
C-32A USAF

Pentagon May Replace Its Doomsday Planes And "Air Force Two" With One New Type

ペンタゴンは審判の日機材と「エアフォースツー」を統一する検討中

Consolidating the E-4B NAOC and E-6B Mercury missions into one common aircraft while also sharing platform commonality with a C-32A replacement makes a ton of sense.

E-4BとE-6Bマーキュリー後継機を統合し、C-32A後継機とも共通性を持たせれば大きな効果が生まれそう

 BY TYLER ROGOWAYJUNE 24, 2017

  1. 米空軍が四機あるE-4B国家空中作戦指揮指令所 National Airborne Operations Center(NAOC)機材とC-32A六機の老朽化から後継機検討に入っている。後者は副大統領を乗せた場合のコールサインが「エアフォースツー」となり、その他高位の政府関係者や外交使節団が使うことが多い。
  2. トランプ大統領の新年度予算案で6百万ドルが新型エアフォースツー整備プロジェクト用に確保され、後継機の検討が期待されている。E-4Bのミッション、E-6Bマーキュリーのミッション内容を検討し単一機材に統合できないか検討も始まっている。さらにこの機材をC-32A後継機にするのは一見不可能に見えるが実現はあり得る。
  3. 機体統一を念頭にするとC-32より大型機材だがE-4Bよりは小型になりそうだ。以前はE-4Bのミッションを継承するには747以上の大型機が必要とされていたが、現在は電子機器・通信機器の小型化が著しく小型機でも使えると分かっている。
  4. 役割が全く違うがE-4BとC-32Aはともに政府機能、指揮命令機能の継続に欠かせない。そのため通信用アレイや指揮統制のインターフェイスや高出力の発電容量や防御装備が共通化されている。両機種とも電磁パルス対策を強化している。それぞれのミッションを同じ機材でこなせば開発調達費用で相当の節約効果が生まれるはずだ。
  5. E-4Bの開発は1970年代中頃で747-200が原型だ。すでに民間航空で運航経費、整備費用の高さで姿を消した機材だ。C-32Aはより新しい機材で1990年代後半から2000年代初頭に調達され、ヘッズアップディスプレイ等新しい装備が導入されている。とはいえ、両機種とも耐用年数上では末期に近づいており、ここにきて重大な故障も発生している。
オファットAFBを離陸するE-4B
USAF
  1. E-4BのNAOCミッションとE-6Bミッションを統一する検討が始まっており、残存可能空中作戦センターSurvivable Airborne Operations Center(SAOC)の名称がついているがE-4B後継機がE-6B後継機にもなるのだろう。両機種のミッション内容で重複部分が多いことから統合の意味が出てくる。
  2. 現在のE-4Bの主なミッションは国家最高指導部すなわち大統領および国防長官の搭乗用に待機することで大規模戦闘状態の発生に備えている。機内から米軍の指揮統制特に高高度から核兵器の三本柱の運用が中心だ。同時に移動指揮通信司令部の役割がFEMA用に期待され、国防長官の外国訪問時には専用機となる。
  3. E-6B部隊は程度こそ低いが自然災害時に国家最高指導部を乗せる想定もあるが、もともと空中司令部でありTACAMOミッションとして核兵器運用の機材だ。E-4Bでこの機能の一部は果たせるので二機種を維持運用する必要があるのかと思うのが自然だ。
最近改修を受けたE-6Bは707生産ラインの最終号機だ
USAF

  1. 運用問題もある。E-4Bは4機しかなく通常一機が保守点検中で別の一機が緊急時に備え待機する。二機が予備機材となり国防長官の海外訪問に使われることもある。各機にも定期点検が必要であり、予備機が二機を下回ることも珍しくない。
  2. E-6Bはこれよりは新しい機材で1990年代初頭から配備が始まった。ボーイング707派生型の最後の機体で就役開始の段階でも最新機材ではなかったが、米海軍が運用中のE-6B合計16機には相当の耐用年数が残っており、DoDがE-4Bを先に退役させる可能性は高い。同機の運航経費が軍の機材中最高水準のためだ。新型機がE-6Bと交代するのは2020年代末から2030年代で、海軍は定期的に改修を受ければ現行機材はそれまで十分飛行可能と述べている。
E-4BがKC-135Rから空中給油を受けている
 USAF

  1. そうなるとC-32A、E-4BさらにE-6Bの後継機種はどんな機材になるのだろうか。
  2. 現時点ではKC-46ペガサスの派生型が一番可能性が高いように見える。同機の大きさはC-32、E-6BとE-4Bの中間でペンタゴンが調達中だ。さらにKC-46は軍用仕様でE-4B、E-6B、C-32A各機の後継機に必要となる機体構造強化も可能だ。
  3. ただし767も787と比較すれば旧式でトラブルを心配する向きもあるが、787を軍用化するリスクは相当あり、政府機能を継続させ指揮統制、さらに核兵器使用の命令を実施できるかは疑問だ。言い換えると787を原型に新型サブシステムや機体構造を強化して「終末の日」機材にすると時間も費用も相当掛かると覚悟する必要がある。
エドワーズAFBで巨大無音響施設でテスト中のKC-46。民間仕様機材を軍用化するのは想像以上に大変だ。 USAF
  1. 737MAX 10 も低コストで候補になるが、米空軍他が757以下の小型機を受け入れるか大いに疑問である。Defense.comによれば米空軍の予算要求ではC-32A後継機では明らかにKC-46派生型を想定しており737等の小型機より優先しているのは以下の説明の通りだ。
  2. 「C-32A後継機はVC-25A予備機としてC-32で露呈している性能ギャップの多くを埋める強力な機体であるべきだ...後継機では航続距離、収容力、国家指導部用の通信機能強化、執務室の強化が必要」
  3. もう一つの選択肢が777で、この場合はC-32AやE-6Bよりはるかに大型機になる。さらに777は現在米空軍が運用する機材ではなく、軍用仕様に改造されたこともない。短距離滑走路での運用能力が問題となり、ペンタゴンも運用支援の仕組みを一新する必要が生まれる。ただし空軍が運用機種数を減らそうとしている中で逆行する選択は考えにくい。
  4. E-4B後継機導入に関してはオファットAFBでE-4B二機が竜巻で損傷を受け加速する可能性が出てきたことに注目すべきだろう。竜巻は2017年6月17日に同基地を襲った。ボーイングと空軍が機体の損傷度合いを評価中だが修理費用が高額と判定された場合は機齢も考慮して後継機種探しが大幅に加速されるだろう。あるいは損傷にもよるが、被害機を予備部品取り用に使い、残る二機のE-4BとVC-25の即応体制を維持する可能性もある。共通して747-200が原型なのでこれは可能だ。
警戒待機中のE-4B USAF

  1. C-32A、E-4B、E-6Bともそれぞれ重要なミッションを実施しており、機材が統一され、特に背中にこぶのついたE-4Bが消えるのは悲しい。「E-46」がNAOC、TACAMO、空中司令部、FEMA緊急支援、国防長官移動用に使われ政府高官の移動用にも投入されるだろうが、「VC-46」があれば後者は不要だろう。
  2. VC-46が少数機あれば大統領移動時の「エアフォースワン」ミッションにも投入され、耐用年数が切れかけてきたVC-25A二機の代用にもなる。空軍は747-8i原型の新型機を発注中だが、国内移動で大統領が小型のVC-46Aを好む場合もあろう。それでも現行のC-32Aより相当大きい。
  3. 現状では大統領がC-32Aを使うのは目的地空港が747運用できない場合やVC-25Aが使えない場合に限定されている。エアフォースワン後継機問題の検討でこの点はすでに指摘済みだがC-32A後継機がワイドボデイになればホワイトハウスも大統領移動の在り方を変えて予算節約になるのではないか。■
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フィッツジェラルド衝突事故で米海軍法務部の調査体制が整う



Navy Names Former Destroyer Commander to Lead USS Fitzgerald Collision Investigation

米海軍がUSSフィッツジェラルド衝突事故調査の統括官に駆逐艦艦長経験者を任命

 By: Sam LaGrone
June 23, 2017 1:26 PM • Updated: June 23, 2017 1:48 PM

商船との衝突後横須賀基地に戻るUSSフィッツジェラルド(DDG 62)。 US Navy Photo

  1. 経験豊かな水上戦士官がUSSフィッツジェラルド(DDG-62)と商船間で発生した衝突事故で米海軍側調査を率いると米第七艦隊が6月23日発表した。
  2. ブライアン・フォート少将が海軍法務部調査 Manual of the Judge Advocate General (JAGMAN)を6月17日に発生したフィッツジェラルド-フィリピン船籍コンテナー船ACXクリスタル間の衝突事故調査を統括する。フォート少将はUSSゴンザレス(DDG-66)の元艦長で26駆逐艦群で司令を務めた。
  3. 少将の責務は捜査官を指揮しデータを集め、乗員から事情聴取し詳細事実を見聞することで7名の生命を奪った事故でどちらに責があったのかを明らかにすることにある。

ブライアン・P・フォート少将 US Navy Photo


  1. 米第七艦隊司令官ジョセフ・オーコイン中将は衝突事故の捜査には将官を責任者に充てると述べていた。
  2. 事故調査では米海軍の他、米沿岸警備隊、日本側当局、保険会社が動いているが、JAGMAN調査は数少ない公表結果となりで注目を集めはずだ。並行して米海軍も安全面から調査中だが結果は公表されないとみられる。
  3. 「JAGMAN調査の目的は事故を発生させた原因をつきとめ、航法、海上、地上における過失にとどまらず運用方針、組織、訓練、機材、指揮統制等の面から何がおかしかったのかを解明することにある。またどちらの側に過失があったのかを突き止め責任を追及する」とロブ・「ブッチ」・ブラックネル海事軍事法廷弁護士はUSNI Newsに解説してくれた。
  4. 「JAGMANの調査所見から軍関係者や民間従業員への刑事措置や契約廃棄につながることがある。安全調査とはそもそも違う。安全調査では何がまずかったのか、原因は何かを調べるだけだ」
  5. フォート少将は今年初めに将官に昇進し、現在海軍ハワイ管区兼海軍水上部隊中部太平洋の司令官を務めている。
  6. 一方、フィッツジェラルド-クリスタル衝突事故の原因調査では海軍調査官が入手した事実を口外せず詳細情報がほとんど出ていない。ただし日本側からクリスタル乗員が衝突に気付いていなかった可能性が浮上したと述べている。クリスタルは事故当時オートパイロット機能で航行していた。これはUSNI Newsがすでに伝えている通りだ。
  7. 海軍による調査で駆逐艦側の乗員、艦長ブライス・ベンソン中佐の過失の有無が判明し、是正措置や懲罰が必要となれば提言するはずだ。
  8. 事故当時ベンソン艦長は居室にいたことが複数筋から示されている。海軍からは現時点で責任の所在は明確に示されていないが、同様の事案では乗組員を喪失した艦船の艦長が責任追及されるのが常である。■