2017年9月30日土曜日

★★ロッキードが極超音速技術の完成に近づいている模様、SR-72との関連へ注目



Aerospace Daily & Defense Report

Amid SR-72 Rumors, Skunk Works Ramps Up Hypersonics

SR-72の噂と関連か、スカンクワークスの極超音速技術が加速中

Sep 27, 2017Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report

SR-72: Lockheed Martin
FORT WORTH, Texas—ロッキード・マーティンが極超音速技術開発を加速化しており、初の実証機を目撃したとの報告もあり、スカンクワークスが進めるSR-72高速機開発との連関が注目される。
  1. 「詳細は言えませんが、スカンクワークスのあるカリフォーニア州パームデールで超高速飛行実現の動きを倍増しています」とロッキード・マーティンで航空力学執行副社長オーランド・カバルホOrlando CarvalhoがSAE 国際航空技術学会で語っている。「端的に申し上げれば米国は極超音速革命まであと一歩まで来ています」
  2. Darpaと米空軍研究実験部門が共同で進める推進滑空兵器および極超音速空気取り入れ式兵器コンセプト研究に言及して、カバルホは「この十年で研究は大幅に進み、極超音速技術で状況が一変する意味があることが明らかになってきました。今後も研究テストを進め、極超音速飛行の実現にDarpaとのプロジェクト二件を活用します。国家安全保障ではスピードが肝心です」
  3. SR-72への言及はなかったが、同社が極超音速機として退役済みの高速SR-71ブラックバードの後継機を提案中であることは広く知られており、カバルホの前向きな発言はロブ・ワイスRob Weiss(ロッキード・マーティンの高性能開発事業体執行副社長兼総支配人)の発言に重なる。6月にワイスはAviation Weekに選択的に有人操縦となるSR-72の前身となる飛行研究用機体(FRV)が予定通り進行中と暗に述べていた。
  4. スカンクワークスはFRV開発を来年から始めるといわれ、初飛行予定は2020年だ。FRVはF-22ほどの機体サイズで推進力はフルスケールのコンバインドサイクルエンジン一基だ。しかし実証機に先立ち、ロッキードは各種技術の地上・飛行テスト中と見られる。
  5. Aviation Weekによればそのうち一つの実証では小型無人機を使い、米空軍パームデール基地の第42工場での飛行が目撃されている。同地にスカンクワークスも本拠を置いている。この機体は7月末某日早朝に着陸しT-38二機がエスコートしていたという。ロッキード・マーティンはこの目撃報告に対するコメントを拒否している。
  6. 同社はこれまでも次の段階としてフルスケール双発のSR-72を開発すると述べていた。SR-71より機体が長くなる同機は2020年代後半のフライトテスト開始を目指している。
  7. 「極超音速はステルスと似ています。根本を一変する技術となり、ブラックバードの二倍三倍の速力が各種機材で実現します」とカバルホは述べている。「作戦上の残存性と威力が究極の抑止力となります。保安上の理由により今回はスピードはマッハ5を超えるとだけ述べておきます」■

実はこちらの方が怖い:崩壊後の北朝鮮をどうするか



北朝鮮の現体制が永続するはずなく、考えられる事態を想定してあらかじめ対処方法を考えておくということですか。日本ではミサイルが飛翔するだけでもうてんやわんやでとても先を見通せない反応が出ていますが、冷静な思考(反射反応ではありません)が必要ですね。しかしどっちに転んでも大変な負担が必要となる北朝鮮はガンのようなもので迅速に対処したほうがいいのでしょうね。体制崩壊には軟着陸はないとすれば、強硬策が必要なのではないでしょうか。洗脳されている国民を解放する方法がないとISIS以上に危険な戦闘員になりそうです。また核武装した韓国を出現させないためにも北朝鮮の核兵器、製造能力はすべて撤去しなければなりません。

 

What is Worse Than a War with North Korea? A Sudden Collapse

北朝鮮との開戦より怖いのは同国が突如崩壊することだ
September 29, 2017


北朝鮮で言及されていない恐怖がある。民主人民共和国(DPRK)と自称する同国は究極のパンドラの箱であり、歴代の米大統領の悪夢でもある。核兵器、化学兵器、生物兵器にさらに米本土まで狙うミサイルが加わった。平壌は毎回新しい段階に入ることを心得ているようでおかげで北東アジアでは緊張が高まっている。

だが北朝鮮が核兵器で威嚇する中、もっと大きな話題を世界は見逃している。北朝鮮が民衆蜂起、経済崩壊あるいは戦闘で解体されたらどうなるのか。肥満不良少年ともいうべき金正恩が首脳となる同国が崩壊すれば数兆ドル単位が正常復帰に必要となるが、洗脳、飢餓、奴隷扱いを受けた数百万名はここに入っていない。
RANDコーポレーションが2013年に優れた研究成果を発表されており、図書並みのボリュームでこの問題に取り組んでおり、上記が現実となった場合の背筋の凍る内容を紹介している。バラバラになったピースを元通りにできるのか、ワシントンはじめ同盟諸国はどんな準備をすべきなのかを展開している。この報告書から論点五つを抽出し、北朝鮮問題の本質に触れたい。

1.「崩壊の種類」とは

「金正恩体制はどんな状況で崩壊するのか。以下の二つのいずれかだろう。政権が崩壊すると金一族はその座を追われ、新たな指導者が北朝鮮の統治者となる。おそらく軍部出身者だろう。この場合は全国統治組織はほとんど無傷だが、金正恩放逐で一時的に機能が停止するはずだ。新指導者は旧政府の上層部大部分を粛清し、忠実な部下を登用する」

次のシナリオはもっと怖い。
「別の形の崩壊は政府の崩壊だ。この場合は金一族の支配が機能を失しなうか放逐され、その後を引き継ぐ人物あるいは集団があらわれない。可能性が一番高いのは派閥が生まれ、それぞれ支配権獲得を目指すが、成功しても全国統治には及ばず、中央政府機能は失われる。
「政権崩壊は政府機能崩壊につながることに注意が必要だ。崩壊は過程であり結果でもある。北朝鮮は政権崩壊を経験していないが、崩壊過程はすでにはじまっている。金正恩体制は『専制統治の失敗例』として記憶されることになろう」

2. 内戦勃発の可能性
「北朝鮮国内の内戦がWMD投入まで進めばROK(韓国)にも深刻な被害が及ぶ。生き残れないと悟れば派閥勢力が意図的に韓国を攻撃する可能性がある。ROK都市への弾道ミサイル攻撃に核弾頭、生物化学兵器を併用すれば韓国全域が被害を受ける。物理的な損害以外ににROKの社会経済が大損害に直面する。ROKの視点から見れば、最悪の可能性は朝鮮半島全域の不安定化で、ROK自体も巻き込まれ、治安が崩壊するとROKも封じ込め対策は実施不可能となる」

3.もっと悪いのは中国の介入
「さらに中国の介入の可能性がある。実施されれば朝鮮統一を中国が否定することになる。韓国軍、米軍、中国軍が前進すると米韓連合軍と中国軍で武力衝突が発生する可能性が生まれる。つまり中国が統一を阻害するだけでなく戦闘を発生させ統一はさらに遠のく」

4. 大規模な飢餓

「北朝鮮は今でさえ国民への食糧供給に苦労しているので、政府崩壊で全国的飢餓に一気に突入するはずだ。崩壊後の国内で資金に余裕ある層は金の力で食料確保に走るが食品価格はうなぎのぼりとなるはずだ。食料品は姿を消し、軍など武力で食料強奪に出る勢力が発生すれば一層食料在庫は厳しくなる。人道援助団体も北朝鮮向け活動を減少せざるを得なくなるほど治安状態は悪化する。崩壊後の食糧供給は飢餓水準をさらに下回る」

5. 南との統一、国土再建費用はとてつもない規模へ
「朝鮮半島統一の費用は高くなるとわかっているが、金融面では数兆ドルとなり、かつ大部分は崩壊から5年以内に必要となるが、その後数十年単位でも費用が発生する」
報告書ではさらに詳細に触れている。
「費用を積算すると韓国政府予算で毎年2,500億ドル必要となる。統一に2兆ドル(うち軍事作戦で5,000億ドル、ROK国内の戦災復興に5,000億ドル、北の経済開発に1兆ドル)かかり、ROK政府の年間予算の8倍に相当する。統一費用を10年間継続負担すると同国政府予算が飛躍的に増えるため税負担率を二倍にしないと対応できず、ROK市民に歓迎されないだろう」
北朝鮮が核兵器以外でも危険であるのは明らかだ。北朝鮮崩壊あるいは南との統合は米国のみならずアジア内の同盟諸国にとり難題だがいずれ避けて通れなくなるのは過去を見れば明らかだ。独裁体制は永遠に続かない。DPRKの核実験に代表されるニュース見出しに踊らされることなく、この報告書に目を通した方がよい。■
This first appeared in early 2016.
Image: Reuters.


★中国ステルス機J-20の正式配備を発表



J-20が本当に威力のある機体なのか色々疑問が出ていますが、大きければいいというのが中国の価値感なのでエンジンの性能不足を補うための巨大化も正当化できるのでしょう。CSBAあたりが提唱している戦闘機の大型機材化の先陣を切る機体なのかもしれません。あるいは言われるような米軍支援機材の攻撃にくわえ、ミサイルで第一撃を加えた後に侵入して巡航ミサイルを発射して離脱するプラットフォームなのかもしれません。西側と用兵思想が違うので類推は危険だと思います。

China’s J-20 stealth fighter jet is in service

By: Mike Yeo    1 day ago

中国人民解放軍空軍のKJ-2000早期警戒機が成都J-10多用途戦闘機と天安門上空を軍事パレードの一環で飛行した。2015年9月3日。中国国防省はJ-20ステルス戦闘機の配備を正式発表した。(Greg Baker/AFP/Getty Images)

MELBOURNE, Australia — 成都J-20を正式に空軍に就役させたと中国国防省が発表した。
国防省報道官Wu Qianが9月28日発表したものでフライトテストも計画通り実施中という。低率生産段階中で、人民解放軍空軍(PLAAF)に6機が引き渡し済みで2016年末から甘粛省定西空軍基地Dingxin Airbaseの第176航空旅団で運用テストを行っている。
J-20はPLAAF内では第四世代機(西側の第五世代にほぼ相当)とされ、中長距離戦闘機としてステルス性能を備えるが、ステルスは前面に限定される。
J-20のレーダー断面積(RCS)を台湾の中山科学研究院の電子システム研究部が行っており、上記評価と同じ結果が出ている。だが評価はJ-20の基本形状についてのみが対象で、レーダー波吸収材などその他のRCS削減策の考察は含まれていない。
PLAAFのJ-20パイロットから同機のセンサー融合機能に触れる発言が出ているが詳細は不明だ。ステルス性の確保のため装備は機内に格納されるが、PL-12長距離空対空ミサイルを最大6発の他、機体左右の小型兵装庫にも短距離空対空ミサイル各1発を搭載する。■


2017年9月28日木曜日

次期エアフォースワンに空中給油能力は本当に必要なのか


これはいけません。途中で仕様が変われば価格が上昇し納期も遅れます。政治が介入すると話がややこしくなります。本当に危機状態になれば現在ならE-4Bを使うのではないでしょうか。(同機も耐用年数が切れつつありますが)なんとか現行機とスムーズに交代してもらいたいものです。なお、日本政府向け次期政府専用機777は素手完成してワシントン州で飛行テストしているようです。

Congress Questions Air Force One’s Lack of Refueling Capability 次期エアフォースワンに空中給油能力の欠如を議会が疑問視

Air Force One is taxied into position on the flight line at Offutt Air Force Base, Neb., Jan. 13, 2015. (USSTRATCOM photo by U.S. Air Force Staff Sgt. Jonathan Lovelady)
POSTED BY: ORIANA PAWLYK SEPTEMBER 26, 2017


  1. 次期エアフォースワンの設計陣は再度製図台に戻ることになるかもしれない。議員連が9月26日に同機に空中給油装備がないことを問題にしたからだ。
  2. トム・コットン上院議員Sen. Tom Cotton(共、アーカンソー)がジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長に空軍が空中給油能力の導入を断念した理由を問いただし、核戦争の場合には長距離飛行能力が必須だと疑問を呈した。
  3. 「理解に苦しむのは空軍が次期エアフォースワンに空中給油能力がないと発表したことだ。一体どうしてなのか」コットン議員はダンフォード大将に質問を乗員軍事委員会で問いただした。
  4. 「決定を下したのは空軍ではなく、ホワイトハウスと思います。その背景には予算上の配慮があったのだと思います」とダンフォード大将は答えている。
  5. さらに「たしかに制約条件になりますがそれに応じた計画立案をするしかありません」と加えた。
  6. 次期エアフォースワン、別名大統領専用機更新事業Presidential Aircraft Recapitalization program(PAR)に空中給油装備がついてないと初めて報じたのはDefenseOneで今月初めのことだった。関係者では空中給油能力について意見が分かれている、たしかに有益であるが費用が追加されるからだ。さらに大統領が搭乗して実際に使った実績はない。ジョージ・W・ブッシュ前大統領でさえも9月11日のテロ攻撃後、8時間にわたり空中待機していたが使っていない。
  7. PAR関連の最新コメントは空軍がボーイングに総額600百万ドルで契約交付した直後に出ている。
  8. 8月に空軍は民間向け747-8二機をボーイングから買い上げることで案をかためた。二機は倒産したロシアのエアライン、トランスアエロ向けの機材だとこれもDefenseOneが報じていた。
  9. 空軍はボーイングの要請により二機の価格を公表していない。将来の747販売に悪影響がでるためだと同社は説明している。
  10. ボーイングは2016年1月から新エアフォースワンのリスク低減検討を開始しており、2015年1月の基本契約交付から初めて大きな進展があることをうかがわせていた。
  11. 次期エアフォースワンは昨年12月に大統領選に勝利したドナルド・トランプから金額規模が高すぎると批判を受けていた。
  12. 昨年12月6日のツィートでトランプは「はっちゅを取り消せ」と述べていた。12月16日にもペンシルヴェイニアのスピーチで取り上げている。
  13. 「42億ドルの値段の機体には飛んでもらいたくない。実現しては困る。発注したのは私ではないことを忘れてないでほしい」と述べ、「だがボーイングとかけあって値下げをさせる...ずっとずっと低く」とも述べていた。.
  14. ボーイングはこれまで170百万ドルを開発費用として受け取っており、技術検討をしてきた。
  15. コットン議員は空中給油装備の採用を再検討すべきと訴えた。■

2017年9月27日水曜日

★北朝鮮に米軍機を撃墜する能力はあるのか....どうもありそうだ、要注意



報道機関に何度言ってもわかってもらえないようですが再び書きます。機体名称は正しく表記してください。B1Bという機体は存在しません。B-1Bです。同様にF35やF15という表記もアウトです。記事にあるようにB61だと核爆弾になります。わかっていてそう書くのであれば確信犯ですね。また報道しない自由のように勝手に表記を変えることが許されるとマスメディアは思っているのでしょうか。今回の危機をきっかけに正しく機材名称を伝える努力をしてもらいたいものです。


Could North Korea Really Shoot Down a U.S. F-15 or B-1 Bomber?

北朝鮮は本当に米F-15やB-1爆撃機を撃墜する能力があるのか


September 25, 2017


  1. 北朝鮮はドナルド・トランプ大統領のツイッターを平壌への宣戦布告と受け取っている。そこで金正恩政権は報復に乗り出すとし、朝鮮半島周辺の国際空域を飛行する米空軍爆撃機を攻撃するとまで述べている。
  2. 「全世界は我が国に宣戦布告したのは米国の側だと明瞭に認識しているはずだ」と北朝鮮外相リ・ヨンホがニューヨークで報道陣に語っている。「米国が宣戦布告した以上、こちらには対抗策の権利があり、米戦略爆撃機がたとえ我が国領空を侵害しなくてもこれを撃破できる」
  3. リ外相は9月23日のトランプのツィートを言及しており、北朝鮮が近い将来に存在しなくなると述べていた。「北朝鮮外相がU.N.で演説するのを聞いた。リトル・ロケットマンの発言と重なり、両者とも長く生きれれないだろう」とトランプは述べていた。
  4. 平壌が米爆撃機が朝鮮半島付近を飛行するのを斬首攻撃の前触れと受け止める可能性はある。実際に先週末に米国はロックウェルインターナショナルB-1Bランサー戦略爆撃機を北朝鮮東海岸国際空域内でで飛行させている。
  5. 「軍事境界線からここまで北に飛んだ軍用機は21世紀で初のことでDPRKの無謀な行動を当方が真剣に受け止めていることの裏付けだ」とペンタゴン主任報道官デイナ・ホワイトDana Whiteが述べている。「今回のミッションは米国の決意のあらわれであり大統領には軍事オプション多数があり脅威に打ち勝てることの明白なメッセージだ。北朝鮮の軍事兵器開発は深刻な脅威とアジア太平洋に受け止められており、国際社会全般でも同様だ。軍事力を広範に投入してでも米本土と同盟国を防衛する準備ができている」
  6. 国務省とホワイトハウスはトランプのツィートは宣戦布告ではないと述べている。「北朝鮮に宣戦布告した事実はない」とホワイトハウス報道官サラ・サンダースSarah Sandersが報道陣に述べている。「正直に言ってそのような主張は馬鹿げている」
  7. それでもトランプの発言は平壌が真剣に受け止め、金政権が米爆撃機あるいは偵察機を撃墜する試みに出る可能性が指摘されエチル。だが、実は平壌にはその手段はごく限られている。
  8. 北朝鮮空軍には近代的な機体はごく少数しかなく、それでもソ連時代のミコヤンMiG-29フルクラム、MiG-23フロッガーの初期型だけが米軍用機の脅威になるとみられる。両機種ともB-1B、ボーイングB-52あるいはノースロップ・グラマンB-2スピリットステルス爆撃機の付近に近寄る前に米戦闘機により撃破されるだろう。北朝鮮空軍にとって唯一の撃墜可能性は米あるいは同盟国戦闘機の援護がないときだけである。
  9. 地対空ミサイルなら撃墜のチャンスは高いだろう。もし米軍機が接近した場合に限られる。北朝鮮防空網の装備品の大半は旧ソ連時代のものであるが一部驚くほど高性能の国産兵器も投入している。
  10. 「ソ連時代のSAMとしてS-75、S-125、S-200それにクヴァダットがあります」とワシリ・カシンVasily Kashin(高等経済研究院付属欧州国際問題研究総合センター主任研究員)がThe National Interestに今年早々語っていた。「S-75を国産化し、一部で大規模性能向上を実施しています。さらに2010年代から国産新鋭SAMシステムとしてKN-06と米韓で呼ぶ装備を実戦配備しています」
  11. KN-06SAM部隊の編制規模は不明だが、同装備はロシアS-300の初期型と同等の性能があるという驚くべき存在だ。「同ミサイルが何発整備されているのかは誰も知りません。KN-06にはフェイズドアレイレーダーがつきミサイル誘導装置経由で標的を追跡する性能があり、S-300Pと同等の性能があるはずですが射程が延長されています」
  12. カシンはアジア問題の専門家として韓国でKN-06のテスト成功の記事が出ていると指摘した。同ミサイルの射程は150kmと推定されている。KN-06が無視されがちな理由として情報はあるのだが西側アナリストが総じて北朝鮮工業力を低評価していることがある。
  13. だが北朝鮮の脅かしを無視してはならない。平壌は米軍機を撃墜した実績がある。1969年4月15日、ニクソン政権の時代に米海軍のロッキードEC-121ウォーニングスター偵察機が撃墜され31名の乗員が命を奪われた。ニクソン大統領は報復しなかったが一時核攻撃で北朝鮮の挑発に応えようかと検討していた。
  14. 「大佐からEC-121が100マイル沖合で撃墜されたと聞いて、大佐は攻撃の準備をするよう命令した」と当時米空軍マクダネル・ダグラスF-4ファントムIIのパイロットでクンサン基地に一次的に派遣されていたブルース・チャールズBruce Charlesが当時を回想する。乗機のF-4には330キロトンのB61千宿熱核爆弾一発が搭載され離陸準備を整えていた。「警戒体制を解く命令が来たのは夕方ごろだったがは大佐は今日はないようだが明日はわからないと述べていた」
  15. 1994年12月18日に北朝鮮は非武装の米陸軍所属OH-58カイオワ偵察ヘリコプターを非武装境界線上空で撃墜し、パイロット一名が死亡、もう一名が捕虜となった。クリントン政権は報復でよい選択肢がないとわかり、自制を選んだ。
  16. だが北朝鮮は米海軍艦船にも攻撃をしかけている。1968年1月23日、米海軍の観測船USSプエブロを拿捕し、水兵1名を殺害し83名を捕虜とした。同艦は今も北朝鮮国内に残るが乗員は同年12月23日に釈放された。リンドン・B・ジョンソン大統領は報復措置も検討し、核攻撃もその一つだったが最終的に引き下がった。
  17. 現政権がどんな反応を示すか不明だが状況は一層不安定になってきているようだ。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.


2017年9月26日火曜日

ロッキードの最新レーザー兵器アテナに注目


ロッキードは神話がお好きなようですね、イージスの次はアテナですか(英語発音ではシーになるのですかねそれは良いとしてレーザー兵器の開発が加速化してきたようです。特にドローン対策としてまず実用化されそうですね。

Lockheed’s ATHENA Laser Brings Down Drones

ロッキードのアテナレーザーが無人機連続撃墜に成功


(An Outlaw drone falls out of the sky after ATHENA's laser blast. Photo courtesy of Lockheed Martin).
POSTED BY: ORIANA PAWLYK SEPTEMBER 21, 2017

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  1. 米軍がレーザー兵器開発に動いている。ロッキード・マーティンの最新の装備である高性能テスト高密度エネルギー装備Advanced Test High Energy Asset、略称アテナATHENAはまもなく実用化となるはずだ。
  2. 世界最大の防衛企業である同社は試作型のテストをし、アウトロー無人機(全長10.8フィート)5機を米陸軍のホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ)で撃墜した。同社が発表した。
  3. 公表されたビデオ画像ではアウトロー無人機が一機また一機と墜落する様子がわかる。発射したのはファイバーレーザーで高性能ビーム制御技術を使っている。
  4. 「ホワイトサンズでのテストで当社の装備の威力を実証できました。静止目標で示した威力を再度発揮しました」とキィオーキ・ジャクソン(同社の最高技術責任者)が述べている。「技術を成熟化させつつあり、システム全体の効率を高めるのが目標でレーザー兵器として完成に近づいていますが効果的な防御策として長距離で高性能脅威に対応できるようになります」と同社広報資料で述べている。
  5. 同社は米陸軍の宇宙ミサイル防衛軍団と共同でアテナ(ギリシア神話で戦争の女神でもある)の開発を進めている。
  6. 同兵器はロッキードが全額自社費用で開発しており、同社の30キロワット高性能レーザー実証事業 (ALADIN)を利用して、「効率と威力が向上し、これまでより高い出力レベルが実現します」と同社は述べている。装備には小型ターボ発電機(ロールズロイス製)も使っている。
  7. 軍はミッション事後評価を行うと追加している。収集データを使い「さらにシステムを向上させ、モデル予測精度を引き上げ、将来のレーザーシステム開発に役立てる」と同社発表資料にある。■

ビデオは次のリンクからどうぞ

フィッツジェラルド修理の工期は1年超、マケインはやや短期で完了か

あれあれ修理費用を米海軍が工面するということは事故は民間側の過失はなかったと判断しているのでしょうか。一方でお伝えしているようなサイバーテロの可能性もあり別途海軍が慎重に調査しているそうですが、イージス艦のローテーションも当面大変になり色々これから疲労が増えそうな気配ですね。

USS Fitzgerald Repair Will Take More Than a Year; USS John S. McCain Fix Could Be Shorter

USSフィッツジェラルドの修理工期は1年超、USSジョン・S・マケイン修理はそれより短くて完了か

USS フィッツジェラルド (DDG-62) が横須賀艦隊拠点基地(FLEACT)4番乾ドックに入っていた。July 11, 2017. US Navy Photo

 By: Sam LaGrone
September 20, 2017 5:48 PM • Updated: September 21, 2017 7:16 AM
THE PENTAGON – 損傷を受けた誘導ミサイル駆逐艦USSフィッツジェラルド(DDG-62) の修理には一年以上の工期となるが、USSジョン・S・マケイン (DDG-56) はそこまでかからない見込みと海軍長官リチャード・V・スペンサーRichard V. Spencer が発表した。
  1. スペンサー長官は報道陣を前に両艦の修理は高い優先事項で合わせて17名が商船との衝突で失われていると指摘。
  2. 「フィッツジェラルドは一年以上かかる。マケインの調査結果は出ていないが、もっと早く修理できるとよいと思う。同艦の場合は戦闘システムが損傷をうけていないからだ」「いうまでもなくマケインとフィッツはなるべく早く復帰させたい」
  3. 両艦は前方配備戦力として日本に駆逐艦戦隊15の一部となっていた。7隻で構成する同戦隊DESRONはレーガン空母打撃群の支援に加え弾道ミサイル防衛の一部として米国の同盟国や域内の装備を守っている。
  4. スペンサー長官の示した工期見積もりは上院軍事委員会委員長ジョン・マケイン(共、アリゾナ)が修理費用は合計6億ドルとの見解を示した翌日のものだ。海軍関係者もUSNI Newsの初期見積もりを確認したが両艦の詳細調査により金額は前後するという。
  5. 海軍筋はUSNI NewsにACXクリスタルと日本沖で6月17日に衝突したフィッツジェラルドの修理費用は容易に500百万ドルを突破すると述べていた。
  6. フィッツジェラルドは重量運搬船で搬送しハンティントン・インガルス工業のガルフコースト造船所で修理を受ける。
  7. 海軍が損傷した同艦の戦闘システムをベイスライン9標準に引き上げBMDミッションと対空対巡航ミサイル防衛を同時に実行する能力を付与する予定なのかまだ不明だ。
  8. フィッツジェラルドの就役は1995年で2019会計年度に中間リフレッシュ工事を艦体、機械エンジニアリング系に行う予定だったがベイスライン9改修は予定がなかったとUSNI Newsが入手した誘導ミサイル駆逐艦近代化改修工事予定一覧からわかる。
  9. 8月にUSNI Newsが請求した修理工事の追加情報は海軍海洋システムズ本部に提出したが返答がない。
  10. 他方、マケインは横須賀海軍基地に向けシンガポールから移動の予定で日本で追加修理評価を受けてから海軍は同艦の修理場所を決める。
  11. スペンサー長官によれば修理費用の捻出方法はまだ決まっていないという。
  12. 「予算の想定外の出費のため議会にかけあわなくてはならないだろう」(スペンサー長官)■

2017年9月24日日曜日

★AC-130Jは究極のガンシップになる、だがまだ実戦投入できず



AFSOCは対テロ戦にずっと従事して16年間戦っているわけですか。米国にとって最長の戦いになっていますね。空軍の中に陸軍があるようなものなのでしょうか。すごいです。レーザーが果たしてうたい文句通りの効果を発揮するのかシリア等で実証する役目もありますね。



The U.S. Air Force's 'Ultimate Battle Plane' Is Nearly Ready for Combat

米空軍の「究極の戦闘航空機」は戦闘投入まであと一歩


September 22, 2017


  1. 米空軍のAC-130Jゴーストライダーは次世代ガンシップで「究極の戦闘航空機」とか「銃搭載の爆弾トラック」とも呼ばれ9月末には何も知らない地上の敵に一斉射撃の雨を降らせるよういなると米空軍特殊作戦軍団AFSOCが9月19日に発表している。
  2. 「IOC初期作戦能力獲得を今月AC-Jでおこなう」とマーシャル・ウェッブ中将Lt. Gen Marshall Webbが空軍協会の年次カンファレンスで報道陣に発表している。「これは完全装備のガンシップだ」
  3. 改装を受けたC-130JはAC-130Hスペクターの後継機として発注されていた強力な近接航空支援機材で30mm GAU-23/A自動機関砲x1および精密誘導弾薬としてGBU-39小口径爆弾、AGM-176グリフィンミサイルを搭載する。兵装システムを制御するのが精密攻撃パッケージPrecision Strike Package (PSP)でAC-130WスティンガーIIで2009年から運用テストをしていたものでGPS誘導機能や新型火器管制インターフェースがあるとMilitary.comが伝えている。
  4. だが何と言ってもゴーストライダーの最大の特徴は105mm M102榴弾砲の威力で毎分10発の50ポンド弾を恐るべき正確さで発射する。105ミリ砲の追加装備はAFSOC内部の議論を経て2015年1月に確認されたゴーストライダーの追加装備は次世代空中戦艦の必要装備とされた。
  5. ただAFSOCの予定通りとなれば105mm砲はゴーストライダーの最大の武器にはならない。AFSOCは2017年4月時点で指向性エネルギー・レーザーシステムで敵の電子装備を破壊し重要インフラを使用不能にする技術開発を進めていた。「爆発を発生せず、また機体のエンジン音を聞くまでもなく、敵の標的は使用不能となります」とウェッブ中将はNational Defense 誌にCAS任務でのレーザー兵器の可能性について語っている。「敵は通信手段を失い、脱出用車両も使えず、電力も失い、報復手段もなくなるのです」
  6. ゴーストライダーは現時点で10機あり空軍は2021年度までに全37機体制にすべくロッキードに発注中だ。だがIOCを取得したものの同機はまだ数年は実戦投入されず、最短で2025年にならないと完全な作戦能力を獲得しない。
  7. ではなぜゴーストライダーを現時点で投入しないのか。ウェッブ中将は訓練の遅れが特殊作戦への需要の高まりと高い作戦テンポで発生しているとアフガニスタン、イラク、シリアを念頭に発言している。だが作戦テンポは今後さらに高くなりそうだ。ウェッブ中将が報道陣にかたったことによればAFSOC部隊の配備実績はDoDがこれまで経験したことのない水準にあり、14,461名の隊員の中には10回以上実戦に投入されているものもいるとAir Force Timesが伝えている。
  8. 「課題はいかに現在の戦況で戦うかで、アフガニスタン、イラク、シリアにはガンシップも派遣しており、一部機材を新たなウェポンシステムに転換もしている」とウェッブ中将は9月19日に報道陣に語っている。「他の部隊のようなぜいたくな環境にはないのが当軍団の実態だ」
  9. ただ時が来ればゴーストライダーは完全に準備が整い本来の性能を発揮し雨のように砲弾を発射しアメリカの敵を打破するはずだ。AFSOCも16年間休むことなく外地で戦闘をつづけているが、ウェッブ中将のひとことが同軍団の姿勢を表している。「われわれはただ待っているわけにはいかない」■
Jared Keller is a senior editor at Task & Purpose and contributing editor at Pacific Standard. Follow Jared Keller on Twitter @JaredBKeller.
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Image: U.S. Air Force

2017年9月23日土曜日

米空軍がスコーピオンに関心示す、軽攻撃機実証に続き軽ISR機材になるのか


スコーピオンにやっと出番が来るのか、当初は関心さえ示さなかった米空軍もさすがにここにきて時間当たり運航費用が数千ドルですむ同機の経済性を無視できなくなったのでしょうか。でもあれやこれやと大型化してせっかくの経済性が犠牲になっては元も子もありません。あ、まだ採用されたわけではないので心配は不要ですね。それにしても次世代軽攻撃機の実証結果はいつわかるのでしょうか。ここでもスコーピオンの優勢が期待されますね。

テキストロンのスコーピオン、テスト飛行中 (Darin LaCrone/Textron Airland)

Light ISR: The Air Force’s next experiment?

米空軍は軽量ISR機材の実証も行うのか。

By: Valerie Insinna    7 hours ago

NATIONAL HARBOR, Md. — 米空軍が安価な既存機材を軽量情報収集監視偵察(ISR)機材として空軍が進める軽攻撃機材検討と並行して機能実証の機会を設けるべきかの検討をしていることが分かった。
空軍は軽攻撃機候補四機種の実証を8月にホローマン空軍基地(ニューメキシコ)で行ったばかりだ。この実証ではテキストロンのスコーピオンがマイク・ホームズ大将Gen. Mike Holmes航空戦闘軍団司令官の注目を集めたのはモジュラー機体設計で広範なセンサー装備を搭載できるからだ。
ホームズ大将は同様にISR機能に絞った実証ができないか検討していると述べている。
「機内に相当の格納部分がある機材が多い中でセンサー多数を搭載する余地があるスコーピオンは興味をそそる対象」と9月18日の空軍協会主催年次総会で語っている。
「推力がもう少しあれば冷却能力が増える。この機体をペイロード実験に使えないか提案しており、今後の実験も期待したい」
ただし軽量ISR機の実証実験は正式決定ではないがホームズ大将によれば空軍上層部は既存機材でも航空優勢で心配のない空域を偵察任務をMQ-9リーパーのような機材より低コストで実施できるのかを検討しているのだという。
米空軍がこの実験を実施すると決めれば、他の企業にも参加の扉が開くはずとアーノルド・バンチ中将Lt. Gen. Arnold Bunch(調達部門トップ)は述べている。■

金正恩の除去という可能性について


 

元記事の執筆時期が今年春なのでまだ中国に対する期待にナイーブなところもありますが、ここにきて言葉の応酬がエスカレートしているのは新たな制裁措置特に原油供給のカットが相当北朝鮮に利いているせいと筆者はみています。軍事行動は双方とも制御できなくなる事態が一番怖く、それでも平壌が本当に水爆を太平洋上空で爆発させれば(民間航空は途絶しますね)もう後戻りできなくなります。年末までに何らかの動きが出るかもしれません。

Kim Jong Un: What If America Just Assassinated North Korea's Dangerous Dictator?

金正恩を米国が暗殺したらどうなるか

September 21, 2017

  1. サリンガスの画像がホワイトハウスのシチュエーションルームに現れるやトランプ大統領は国家安全保障会議に翌日までに具体的選択肢の提示を求めた。ジェイムズ・マティス国防長官、安全保障担当補佐官H・R・マクマスターならびに参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード大将はその通りに行動した。主要スタッフと数回の会議を経てトランプ大統領は米海軍に59発の巡航ミサイルをアサド政権の空軍基地に発射する命令を出した。そこがガス攻撃の出発地だった。
  2. 同時にNSCは北朝鮮政策で最終修正中だった。作業は数か月にわたり進行していた。シリアの化学兵器攻撃への対応と異なり、トランプ大統領は安全保障関連スタッフにはるかに長い時間を与え、同時に柔軟対応の余地を認めた。政策検討が始まる前にウォールストリートジャーナルは3月に国家安全保障担当副補佐官K・T・マクファーランドが「主流からはずれる発想数案」も含めるよう指示したと伝えている。
  3. 今は通常とは違うその中身は皆が知っている。核兵器の韓国再持ち込みから金正恩および最高位司令官陣の暗殺までだ。「20年間の外交と制裁を行って結局北朝鮮の事業を止められなかった」と検討に加わった情報機関高官がNBCニュースに語っている。構想から見えるトランプ政権のメッセージはこうだ。北朝鮮はあまりにも長く問題でありすぎた。今こそエスタブリッシュメント層をゆすって新代替策を出させる時だ。
  4. 海外指導者の暗殺がアメリカの国家安全保障の政策手段であった時期が存在する。冷戦時代に米国への支持が不足する指導者あるいはソ連と仲の良い指導者は除去対象だった。キューバのフィデル・カストロ、コンゴのパトリス・ルムンバ、ドミニカ共和国のラファエル・トルヒーヨ、グアテマラのジャコボ・アルベンスはみなCIAの殺害リストに載っており、リビアのムアマル・アル-カダフィも国際テロ活動を支援したため頻繁に標的になった。1986年にロナルド・レーガン大統領はカダフィの居住区の空爆許可を与え、本人が住宅内にいることが期待された。だが三か月に及ぶ国家安全保障関連の官僚制への取材でニューヨークタイムズマガジンは「リビア空爆の第一の目標はカダフィ暗殺であった」と結論付けた。
  5. ただし冷戦は終わって25年だ。海外政治指導者の殺害はかつてはテーブル上に選択肢としてあったが、今や人気のない軽蔑対象の手段になり下がった。ジェラルド・フォード大統領時代から米国政策は暗殺の陰謀には加担しない姿勢を維持している。フォード大統領の大統領令が明白にこれを語っている。「米国政府に働くものは何人も政治的暗殺に加担、加担を共謀してならない」 レーガン大統領もその精神を守りさらに拡大したという人もあるが大統領令12333では「米政府に仕える何者も暗殺に加担、加担の共謀をしてはならない」と制限している。
  6. 金正恩並びに北朝鮮指導部の排除につながる政策を模索すると41年間の米政策から大きく離脱することになる。もちろん政策とは変更されてしかるべきであり大統領令や行政令も修正改正は可能だ。さらに米大統領に海外指導者の殺害命令を禁じる法的根拠もない。米国憲法第18条第1116節で米国市民が海外指導者の殺害を企てると訴追対象になるがこれは犯罪が米国内で実行された際あるいは指導者が「我が国以外の国で」標的となった場合の想定だ。もしトランプ大統領に現行の大統領令を改正するつもりがあるのなら、政権が金正恩を堂々と標的にしても刑法の適用は受けないだろう。
  7. だが金本人や北朝鮮の核ミサイル計画を統括する将軍数名を暗殺することが本当に良い政策なのか疑問がある。トップを除去して悪い人物を排除すれば残る悪者全員が震え上がり、行動を変えて突然政府が人権の守護者となり民主政権に変貌すると考えがちだ。以前に経験がある。イラクでの軍事作戦開始の数日前にワシントンが巡航ミサイル数発をサダム・フセインに打ち込むとイラク政治指導層はこれで本格戦は回避できたと信じ込んでいた。その仮定がうまく作用したのかは誰にもわからない。サダムが攻撃を生き延びたからだ。バース党幹部が翌日に連合軍に降伏したのはよかったが、戦争はまだ続いてもおかしくなかった。
  8. 北朝鮮は2003年のイラクと全く状況が異なる。金正恩の権力基盤は強固で自らの地位に危険と感じれば叔父、異母兄弟でも躊躇せず排除してきた。イラク軍の士気は低下し第一湾岸戦争とその後の制裁措置で質的にも低下したが、北朝鮮は核保有国で弾道ミサイルを整備しその水準は韓国に並び今や域内米軍基地も標的に入れている。金正恩を殺害し政権が急変すると考えるのは未実証の発想であり失敗したときの代償は高い。人的情報取集活動でも北朝鮮はブラックホールであり、米情報機関も金正恩の後を引き継ぐ男女(金正恩の妹がいる)がどんな人物なのか予測に困っているほどだ。国家主席を暗殺すれば戦争行為となり、平壌で冷静な考えの人物が報復を叫ぶ一派を抑えておけるのか誰にもわからない。
  9. 金正恩を地下6フィートに追いやる(死んでもらう)ことは国家安全保障会議の作成した選択肢の一つでトランプ大統領に検討のため提出されるはずだ。トランプの国家安全保障関連補佐官の主流の考えから相当外れており大統領には真剣に検討しないよう求めるかもしれない。北京の反応は素早く頑固だろう。日本、韓国とともに北朝鮮には何とか予測可能な形で行動してもらいたいと考えるはずだ。だがソウル、東京はそれぞれトップ数名を暗殺して目的が達成できたと見るのだろうか。
  10. ひとつの期待は政治の力で中国をどこまで米国寄りの協力国にできるかだが高望みは禁物だろう。
Daniel DePetris is a fellow at Defense Priorities.
This first appeared in April.