2020年8月31日月曜日

これもおかしい。タイが中国から通常型潜水艦を調達して海賊対策に投入??

  

タイは2015年にS26Tディーゼル電気推進式潜水艦三隻の導入を決めた。写真はS26Tの原型元級の前身宋級。(SteKrueBe/WikiMedia Commons)

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イが潜水艦二隻を中国から追加導入の意向を示したことで、同国内に波紋が広がっている。最大野党はコロナウィルスで経済が打撃を受ける中で調達を進めていいのかと懸念を示している。

 

潜水艦の有効性に疑問を呈す批判派に対し、王立タイ海軍は8月31日記者会見を開き、導入の正統性を訴えた。

 

タイは2015年にS26Tディーゼル電気推進潜水艦三隻の導入を決めた。同型は中国の039型元級の輸出版だ。一号艦を390百万ドルで2017年に調印し、引き渡しを2024年に想定する。

 

議会小委員会は残る2隻の調達を717百万ドルでめざす政府原案を議長の一票という僅差で承認している。

 

報道機関向け説明会で調達を正当化しようと海軍参謀総長シティポン・マスカセム大将Adm. Sittiporn Maskasemは国防戦略の一環で潜水艦多数が必要と述べた。続いてプレゼンテーションでは周辺国で潜水艦導入が続き、実際に稼働開始しているため今回の調達が必要と説明した。

 

だがシンガポールのS・ラジャラトナム国際研究所の研究員コリン・コーCollin Kohは「そもそも潜水艦が同国の防衛やになぜ必要なのか説得力は低い」と述べ、「お隣に負けてはと見栄を張る」ことが導入の唯一の理由だとツイッターで解説していた。他国と同等の装備品を買わないと出遅れるとの恐れて正当化しようというのだ。

 

潜水艦が抑止効果を生み、実戦で威力を発揮することはコーも認めるが、タイ海軍の説明に疑問点が残ると指摘する。そのひとつが海賊対策に投入する、不法漁業者取締り用、さらに人道援助任務災害救難に投入するというものだ。

 

国際観光客に大きく依存するタイ経済はCOVID-19で旅行そのものができず制限されて大打撃を受けている。最も楽観的な予測でも今年タイへ入国の旅行客は8百万人に過ぎず、2019年実績の19百万人に遠く及ばない。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Thai submarine purchase hits rough seas By: Mike Yeo 

2020年8月30日日曜日

AIが空軍F-16トップパイロットに圧勝----DARPAのシミュレーションドッグファイトで

 


ヘロンシステムズのAIパイロットが空軍F-16教官パイロット「バンガー」を撃墜した瞬間。

 

DARPAのドッグファイト・シミュレーションコンテストでヘロンシステムズHeron SystemsのAI「パイロット」が空軍のF-16のトップパイロットに5対0で圧勝した。

 

「大きな一歩になった」とDARPAのジャスティン・モックが今回の試行結果を評した。

 

空軍の現役パイロットが操縦桿をAIへ譲るまではまだ道が遠いが、今回DARPAが主催した三日間に及ぶアルファドッグファイトで単純な一対一の空戦シナリオならAIシステムズで十分な操縦が可能と実証できた。わずか一年間の開発でAIエージェントがここまでの成果を見せたことが驚きだ。昨年9月に8チームがそれぞれAI開発を開始していた。

 

ヘロンは女性やマイノリティが中心の小企業でメリーランドとヴァージニアに拠点を置く。人工知能エージェント開発を業務とし、同社は競合各社を抑える出来栄えを示した。敗れたチームにはロッキード・マーティンもあり、同社は二位になった。

 

ヘロン社の開発チームがYouTubeのライブストリームで質疑応答に応じた。「一回目トライアルの一週間前時点でも、開発したエージェントではうまく操縦できなかった。そこでテコ入れして結果、一位になれた」と同社でプロジェクトを共同指揮したベン・ベルが述べている。チームは今年後半にAI学習機能の強化内容を公表するとも述べた。

 

トライアルはDARPAの航空戦闘進化(ACE)事業でリスク低減策をめざし、生身のパイロットとマシンパイロットで戦闘機材を共有しつつミッション成功を最大限にすることをめざしている。ACE構想でパイロットは自機の操縦に専念するだけでなく指示に従う無人機編隊の統制まで行う。「ACEによりパイロットはこれまでより広範囲のミッションをこなす。一方で搭乗する機体は無人装備とチームを組み、個別戦術任務をこなす」とACE事業のウェブサイトに説明がある。

 

ヘロンシステムズのAIはシミュレーション演習で終始活発に交戦し、AIパイロットは空軍現役パイロットが操縦するF-16を撃墜した。このパイロットはコールサイン「バンガー」でネリスAFBのウェポンズスクールの生え抜きである。AIは「超人的な照準能力」をシミュレーションで示したとモックは説明。

 

今回のトライアルでAIパイロットの能力が「決定的」になったわけではないものの、モックは「限定された空域での結果ではあるもののAIが十分機能することが分かった」と述べた。

 

DARPAは今回使用したシミュレーターによるシミュレーションをネリス基地に持ち込み、他の空軍パイロットでAIパイロットに勝てるかを試す予定だ。次の段階はAIパイロットで空中戦以外のミッションもこなせるかを試すことになる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

AI Slays Top F-16 Pilot In DARPA Dogfight Simulation


"It's a giant leap," said DARPA's Justin (call sign "Glock") Mock.

By   THERESA HITCHENS

on August 20, 2020 at 6:03 PM


Ottoのセレラ 500Lは航空業界を一変させる画期的な小型機になる。軍用型も有望。(T1T2共通記事)

 ットーエイビエーション Otto Aviation から発表のセレラCelera500Lは画期的な機体になる可能性を秘めており、無人機版や軍用機として情報収集監視偵察任務につく発展も考えらえる。弾丸形状の同機をThe War Zoneがいち早く報じたのは2017年だったが、以来同社の動向を注意深く追ってきた。

 

セレラ500Lの初めての発表は同社販促用ウェブサイトの立ち上げと同日になった。報道資料は初飛行の詳細や日時に触れていないが、これまで31回の飛行を実施したとある。

 

2019年6月、民間機登録N818WMとして南カリフォーニアロジスティクス空港でタクシーする同機の姿が見られており、初飛行が近い様子だった。

 

「イノベーションにより問題解決に成功した。当社の目標は米国内のあらゆる都市間を一気に飛行可能でいながらスピード、コスト両面で民間航空便に匹敵する水準となるプライベート機を実現することだ」とオットーエイビエーションの会長兼最高技術責任者ウィリアム・オットー・シニアが記している。「個人客や家族でセレラ500Lを民間航空運賃並みの料金でチャーターしながら、プライベート機の利便性が実現する。民間航空に十分対抗できる料金でプライベート移動できれば大きな市場需要が生まれると見ている」

 

「セレラ500Lにより航空業界、旅行業界でここ50年で最大の変化が実現する。当社の機材は旅客輸送以外にも貨物空輸や軍用用途にも投入できる。セレラ500Lの市販の準備ができた」

 

OTTO AVIATION

 

OTTO AVIATION

OTTO AVIATION

 

オットーエイビエーションによればセレラ500Lの最大巡航速度は450マイル、航続距離は4,500マイルだ。また燃料消費効率が高く、1ガロンで18から25マイル飛ぶと同社は述べる。セレラ500Lと同等のビジネスジェット機では6名搭乗でガロン当たり2から3マイルなのでオットー社の経済性は際立つし、環境にもそれだけやさしいことになる。またセレラ500Lの一時間当たり運航経費は328ドルという信じられないほどの低水準だと同社は言う

 

OTTO AVIATION

 

画期的な性能を実現したのが層流効率を考慮した機体形状だ。同程度の大きさの他機より抗力は59パーセント低い。搭載するライクリン・エアクラフトエンジン・ディベロップメントRaikhlin Aircraft Engine Developments(RED)製A03 V12ピストンエンジンも大きな要素で、多段階ターボチャージャーを搭載しジェット燃料A1以外にケロシンやバイオディーゼルでの運転も可能だ。

 

REDは同エンジンは燃料消費をて抑えながら信頼性は同程度の出力のピストンエンジンよりはるかに高いとしている。「セレラ500Lの空力特性では離陸時や巡航飛行時に大馬力は不要なので効率重視のエンジンを採用した」とオットーのウェブサイトにある。

 

セレラ500Lにオットーは保有する特許7点を応用しており、その一つとして排気システムに熱交換器をつけ推力を追加した。空力的に洗練された機体形状のため、失速しても操縦に支障はなく安全性も確保している。

 

また涙滴型の機体で客室内に余裕が生まれたのも同程度の機体サイズの競合各機への優位性となる。長期間フライトでも快適さが確保されており、航続距離が4,500マイルでいながら離陸滑走路も3,300フィートで十分なためセレラ500Lは事実上米国内のあらゆる空港から途中燃料給油なしで移動可能としている。

OTTO AVIATION

 

まず民間、商用用途の実現を目指すが、オットーでは同機の長距離性能や燃料効率の高さを生かし軍用支援用途にも投入可能とみている。人員輸送貨物輸送に加え情報収集監視偵察(ISR)ミッションも視野に入る。無人機版に各種センサーを搭載すれば長時間監視や通信中継用機材として対象地点に長時間滞空し、高高度から戦場をカバーできる。また、対象地点を変更してもジェット機並みのスピードで移動可能だ。

 

オットーエイビエーションではセレラ500Lの発展型としてハイブリッド推進あるいは全電動推進で効率をさらに高める機体も提案しており、拡大型のセレラ1000Lも提案している。

OTTO AVIATION

セレラ500Lの無人機版想像図

 

OTTO AVIATION

拡大型セレラ1000Lと500Lの機体サイズ比較

 


同社は外部投資先を確保し、FAA型式認証取得のうえで受注対応する。

 

目標はFAA型式証明を2023年までに取得し、量産型セレラ500Lの製造を開始し、2025年までに発注元へ納入開始することだ。

 

謎の機体として追跡してきたが、オットーエイビエーションのセレラとして姿を現したことに興奮を抑えきれない。同機には今までにない性能と期待が詰まっており、航空業界、航空輸送を一変させる可能性を秘めている。構想を飛行可能な機材として実現したオットーエイビエーションの大きな成果となった。多大な資源と相当の高リスクがある中でこれを実現したからだ。セレラがどんな発展をするか今後も見守りたい。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

The Potentially Revolutionary Celera 500L Aircraft Officially Breaks Cover

Otto Aviation aims to disrupt the aviation landscape with a design that flies at jet speeds, but uses a fraction of the gas, and has more range.

BY JOSEPH TREVITHICK AND TYLER ROGOWAYAUGUST 26, 2020

Contact the authors: Joe@thedrive.com and Tyler@thedrive.com


2020年8月29日土曜日

ミサイルテスト翌日、航行の自由作戦を実施した米海軍は毅然たる態度を中国に示した

 国軍が南シナ海でミサイルテストを実行したが、米海軍ははやくも翌日に誘導ミサイル駆逐艦で航行の自由作戦(FONOP)をパラセル諸島(中国、台湾、ヴィエトナムがそれぞれ領有を主張)で展開した。USSマスティン(DDG-89)が同地域を航行したと第七艦隊が8月27日に発表。

 

「航行の自由作戦は国際法が定めた海洋の権利、自由、合法的な活用を護持するのが目的であり、中国が設けた無害航行への制限という非合法措置に対抗するもの。台湾、ヴィエトナムも中国の主張するパラセル諸島を取り巻く境界線に反対している」と米海軍はUSNI Newsに語った。

 

中国はヴィエトナム沿岸から東部にひろがる島嶼のつながりに基地を数か所構築し、同地区は自国領海と主張し外国艦船の進入は許可が必要としている。

 

米海軍発表文には「該当三カ国はいずれも軍艦の『無害通航』でも許可または事前通告が必要としている」とある。「許可や事前通告を一方的に求めることは国際法上認められていない。事前通告なしで無害航行を実行することで米国は中国、台湾、ヴィエトナムの非合法要求に挑戦した形だ」

 

USSマスティンが現地を通行した前日に中国は近くにミサイルを着弾させていた。複数筋の報道ではDF-21D、DF-26Bが発射されたとあり、中国が狙う抑止力の中核となる装備だ。

 

「こうした演習も2002年南シナ海当事国宣言でうたった事態を複雑にするような行為を回避するとPRCが応じた姿勢に自ら反するものだ」との声明文をペンタゴンは発表している。

 

米中間のかけひきが忙しくなった週としては控えめな表現といえる。中国の発射テストに先立ち、U-2偵察機が「飛行禁止地帯」のある渤海上空に展開した。中国は人民解放軍(PLA)が飛行禁止地帯と通告したのは中国軍が実弾演習を同地区で展開していたためと説明。

 

中国政府は同機の飛行を「むき出しの挑発行為」と非難し、人民解違法軍海軍(PLAN)が演習を展開中の上空を飛行したとした。

 

「侵入されたため中国の演習訓練が大きく邪魔された。中米間の航空海上安全行動ルールに反するものであり、国際慣行にも違反する」と中国国防省報道官Wu Qianが声明文を発表した。「米軍による行為は意図を誤解されかねずもっと重大な事態に発展していたかもしれない」

Such accidents have occurred with tragic results, unfortunately.実際に事故が深刻な事態になった例があった。

 

2001年4月に、米海軍のEP-3スパイ機が中国のJ-10戦闘機と空中衝突し、中国人民解放軍空軍(PLAAF)のパイロットが死亡し、米軍機は海南島への緊急着陸を迫られた。米軍機搭乗員24名は11日間の身柄拘束を受け、米国政府は事態に関し謝罪せざるを得なくなった。

 

今月では先にUSSマスティンが台湾海峡を通過航行しており、海軍は「通常」かつ「国際法に則った」行為と発表していた。同艦は海上自衛隊艦船と東シナ海で共同演習を先に行っていた。

 

今年に入り台湾海峡通航は10回目となったが、これでおわりそうにない。■

 

この記事は以下を再構成したものです

 

U.S. Navy in South China Sea After China Tests Two 'Aircraft-Carrier Killer' Missiles

August 28, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaA2/adDF-21DDF-26DF-26BMilitaryTechnology


by Peter Suciu


Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.


日本初の防衛装備輸出はフィリピン向け防空レーダー。安倍総理辞任発表日に成約という皮肉な事実に注目

 

 

利害が対立するスプラトリー諸島内フィアリークロス礁に集結した中国漁船(AFP/WESTCOM)

 

本初の防衛装備品輸出が成約した。対象はフィリピン向けの固定式及び移動式防空監視レーダーで南シナ海含む地点をカバーする。

 

8月28日にフィリピン国防相デルフィン・ロレンザナが首都マニラで購入契約書にサインし、三菱電機が固定式長距離対空監視レーダー三基、移動式対空監視レーダー一基を納入する。

 

同日のフィリピン国防省発表はレーダー型式に触れていないが、三菱電機のJ/FPS-3アクティブ電子スキャンアレイレーダーが固定基地に、J/TPS-P14移動式レーダーと配備されるとの報道が出ていた。

 

同省は今回の導入はホライゾン2対空監視レーダーシステム構築の一環であり、納入は2022年からとも発表している。

 

ともに米国の同盟国の両国間で成約した意義は大きい。日本による防衛装備の完成品輸出は2014年の輸出制限緩和以来初めてとなる。日本は当時から各地で輸出を目指してきたが、成約は皆無だった。それ以前の日本からの輸出は部品のみだった。

 

輸出制限緩和は安倍晋三首相が進めた防衛姿勢の変化および国内防衛産業の振興策の一環でもある。背景には急速に軍事力を整備しつつ強硬な姿勢を鮮明にした中国がある。安倍首相は8月28日に健康問題を理由に辞任発表した。

 

三菱電機はホライゾン2対空レーダー調達の採用認定を3月に受けていた。レーダーは政府間契約で総額103.5百万ドルで導入される。

 

導入するレーダーは南シナ海南方のほか、戦略的に重要なベンハムライズBenham Riseでも空中監視に使用される。後者はフィリピン中央部ルソン島から東150マイルにある海中プラトーで、天然資源が豊富である。■

 

Japan secures first-ever major defense export with Philippine radar order

By: Mike Yeo


2020年8月27日木曜日

南シナ海に弾道ミサイルを撃ち込んだ中国の狙いは明白だが、軽挙妄動としかいいようがない

 国人民解放軍ロケット軍が弾道ミサイルを南シナ海北端に続けて打ち込んだ。発射地点は中国本土の別々の箇所で、対艦攻撃を模した演習なのはまちがいない。オンライン飛行追跡ソフトでは米空軍のRC-135コブラボールスパイ機が同地域を飛行中だったことが判明している。

 サウスチャイナモーニングポスト紙が2020年8月26日に中国軍がDF-26B、DF-21D各一発を発射したと報道した。米国国防関係者は人民解放軍ロケット軍(PLARF)は弾道ミサイル4本を発射したと評価しているが、正確なミサイルの型式を断定する情報がない。DF-21DはMRBM(射程621マイルから1,864マイル)だが、DF-26Bは中距離弾道ミサイル(IRBM)で射程も1,864マイルから3,417マイルと長い。

 

DF-21D、DF-26ともに複数弾頭を搭載し、空母のような大型で比較的低速の目標に命中させるよう飛翔制御できるとみられる。中国メディアではDF-21Dを「空母キラー」と呼んでいる。

 

IMAGINECHINA VIA AP

DF-21D medium-range ballistic missiles.

 

IMAGINECHINA VIA AP

DF-26 intermediate-range ballistic missiles.

 

 

サウスチャイナモーニングポストはDF-26Bを青海省から、DF-21Dは浙江省から発射したと報じている。各ミサイルは紛糾中のパラセル諸島と海南島間の海域に到達した。

 

すべては中国が8月25日にNOTAMとして通達した内容と合致する。両発射地点は南シナ海へMRBMとして到達可能な射程範囲だが、実際に発射されたのがMRBMだったとはかぎらない。

 

ミサイルの発射本数ならびに型式で情報が錯そうしてるが米空軍はRC-135Sを同海域に送り、弾頭の着水状況を観察したはずだ。コブラボールは現在三機しかなく、今回の機体は登録番号62-4128がつく。

 

同機は嘉手納航空基地を離陸し、きついUターンをして基地に戻った。この飛行パターンはコブラボールの弾道ミサイル弾頭の画像、映像、電子偵察でよくあるパターンで、同機は弾道ミサイル発射時点の監視も可能だ。

 

南シナ海に向け発射されたミサイルの本数、型式がどうであれ、発射そのもが米軍に対するメッセージであることは明らかだ。長距離対艦弾道ミサイルは中国の接近阻止領域拒否能力をさらに向上させる装備だ。

 

今回の発射は中国の海軍演習とともに、米軍活動が増えてきたことへの対応であり、米側の同盟国のオーストラリア、日本、台湾もここにきて活動を増強している。7月には米海軍のニミッツ級空母、一番間のUSSニミッツがUSSロナルド・レーガンと南シナ海で訓練を展開し、ここ数年で初の同海域での演習となった。

 

中国も似たような演習を行っている。PLARFは昨年DF-26数本DF-21D数本を南シナ海に向け発射したが、落下地点は今回よりはるか南方でスプラトリー諸島に近かった。中国軍は黄海、渤海でも演習を展開している。東シナ海での演習が最近終わったばかりだ。すべての演習は人民解放軍が太平洋各地で展開した演習につながるものだ。

 

南シナ海と隣接地区に関し中国軍の演習への米軍による航空情報収集監視偵察ミッションが増加している。中国側は昨日もU-2Sドラゴンレイディー情報収集機が演習海域北端上空を飛行したと公式に非難した。同海域では中国艦が実弾演習をしていた。

 

Planet Labsが公表の8月25日の衛星画像に黄海でのミサイル発射らしきものが見えるが、水上艦か潜水艦からの発射のようだ。こうした行動を米側が情報収集の対象としていることは疑いない。

 

こうした行動の背景に米中間での地政学的対立があり、南シナ海医以外に香港の民主勢力への弾圧、台湾が中国と一層の距離をとろうとしていること、貿易問題さらにCOVID-19への対処がある。

 

8月26日、米政府は中国企業24社を制裁対象とすると発表したが、各社は人民解放軍の戦力増強とつながり、南シナ海の人工島構築に関与している。さきだって7月に米トランプ政権は中国の広範囲に及ぶ南シナ海での主張は非合法とする政策方向を正式に採択していた。

 

総体として、中国軍が最精鋭の戦略装備の能力を南シナ海でためし、米側に見せつけたのは驚くべきことではない。■

 

この記事は以下を再構成したものです

 

China Tests Long-Range Anti-Ship Ballistic Missiles As U.S. Spy Plane Watches It All

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The launches were clearly meant to send a message to the United States, which has been closely observing Chinese naval activity across the Pacific.

BY JOSEPH TREVITHICKAUGUST 26, 2020

 

 


2020年8月24日月曜日

F-35フル生産が2021年3月に実現する

 Two U.S. Air Force F-35A Lightning IIs, assigned to the 4th Fighter Squadron from Hill Air Force Base, Utah, conduct flight training operations over the Utah Test and Training Range on Feb 14, 2018. (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Andrew Lee)

ヒル空軍基地(ユタ州)の第4戦闘飛行隊所属の米空軍F-35AライトニングII編隊がユタテスト訓練場で飛行訓練を展開した。Feb 14, 2018. (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Andrew Lee)



ンタゴンの調達トップが8月20日、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機は来年3月までにフル生産に入ると明言した。これまで数々の遅延が発生してきた同機生産だが、一番新しいところではCOVID-19による工場一部立ち入り制限でも予定が狂わされている。


「3月の目標達成は確実とみている」と調達維持担当国防次官エレン・ロードが述べた。


Ellen Lord, undersecretary for AT&L > Defense Contract Management ...



ロードは来週にペンタゴンの運用テスト評価部長ロバート・ベーラーとパタクセント海軍航空基地へ向かい、共用シミュレーション環境(JSE)内でフライト運用テストを行う。


F-35のフル生産はこれまで「JSE内で挫折」してきた。同機はペンタゴン史上で最高の3,980億ドルが投じられている。

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2021年3月の目標はBloombergが先に報じており、疾病管理予防センターの「安全な作業環境だと確認する」ガイドラインのため先送りされてきたものだ。


F-35は2019年10月現在で440機以上が世界各地に納入されている。フル生産の許可が下りれば、ロッキードは年間160機までの生産が可能となる。

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Military.comでは昨年9月に、共用シミュレーション環境のためF-35の初期作戦能力テスト評価 (IOT&E)が遅れていると報じてきた。


「JSEが適切にテストを完了すれば」IOT&Eは進展するとDoD報道官空軍中佐マイク・アンドリュースがその時点で声明文を発表していた。「敵の最新鋭機や高密度防空体制といった現実的なシナリオでF-35のIOT&Eを進めるためJSEは必要だ」■


この記事は以下を再構成したものです


 

F-35 Will Finally Go into Full Production Next March, Acquisitions Chief Says

21 Aug 2020

Military.com | By Richard Sisk


2020年8月23日日曜日

理解に苦しむ韓国の原子力潜水艦取得構想は「愚行」に終わるのか

 

 

国国防部が8月10日に発表した「2021-25年度中期国防事業」では作戦統帥権移転後に備えた国防力増強を主張している。北朝鮮の核脅威に対応し各種装備品で能力向上を図るとあるが、もっとも目を引く、かつ物議を醸しだしそうなのが原子力推進潜水艦(SSNs)取得の可能性だ。

 

韓国国防省は4千トン級の次期潜水艦で推進方式を特定していないが、ディーゼル電気推進や大気非依存型推進ではなく原子力推進にするとの明言が高官から出ている。文在寅大統領は2017年大統領選挙運動中に韓国にSSNsが「今の時期に」必要と訴えていた。今回の国防省発表は米韓ミサイルガイドライン改訂の直後に行われた。韓国がSSNs建造に向かうと仮定すると、朝鮮半島を取り巻く安全保障面でジレンマが生まれるが、一方で規模は小さいものの北朝鮮脅威に対する抑止力になる。

 

原子力推進潜水艦が追加されれば数の上の劣性を覆せると主張する向きがある。韓国は潜水艦18隻を供用中だが北朝鮮は70隻近くある。韓国でSSNs保有の声が強くなったのは北朝鮮が潜水艦発射方式弾道ミサイル(SLBMs)の初発射に2015年成功したのがきっかけだ。昨年は金正恩が新造潜水艦を視察したニュースを国営通信が配信した。記事では新型艦の詳細に触れていないが、専門家は北朝鮮が核弾頭付きSLBMの発射技術を磨いていると分析する。北朝鮮の潜水艦戦力は急成長している。SLBM発射テストもその後数回実施している。2010年の天安事件が示すように、北朝鮮には被害を与える意思も能力もある。そのため、北朝鮮が海上で展開する脅威へ対抗戦略が必要となる。ただし、本稿では原子力推進潜水艦の導入でこの課題はすべて解決できないと主張したい。

 

まず、黄海では4千トン級潜水艦が安全に作戦実施できない。平均深度は日本海の1,500メートルに対し、黄海は50メートルしかない。さらに海底に膨大な量の廃棄物があり、潜水艦のプロペラが破損する恐れもある。そもそも原子力潜水艦を導入するのは北朝鮮潜水艦を長時間追尾する目的のはずだ。だが、水中環境が不利だと大型艦では北朝鮮の超小型潜水艇をうまく追尾できない。しかも北朝鮮は沿岸近くで運用するはずだ。2010年に天安を攻撃した潜水艦は130トンの小型艦で白翎島の海岸近くだった。実際に北朝鮮の潜水艦は東沿岸のシンポでの建造が多くなっている。

 

次に原子力推進潜水艦は通常動力艦より騒音が大きい。気づかれずに行動できてこそ潜水艦は実力を発揮し、脅威になる。韓国海軍の演習では潜水艦探知の成功率は25パーセント未満とわかっている。探知を逃れるカギは騒音をどこまで抑え、かつすぐれた操艦ができるかにかかる。だが、小型原子炉はディーゼル電気推進艦以上の騒音を発生するので敵の探知に引っかかる可能性が高い。

 

最後に北朝鮮潜水艦全隻を同時追尾するのは不可能に近い。これは原子力潜水艦で航続距離が伸びても同じことだ。例として2015年に北は潜水艦50隻を同時に出動させた。通常は韓国情報部が衛星画像で基地内の北朝鮮潜水艦の動向を把握している。出港が判明すれば警告を出す。しかし、潜水艦多数の同時出港から混乱が生じ、心理的影響は絶大だった。そうなると数が意味を持ってくる。ただし、上記の海洋面の制約条件のため、少数かつ高価な原子力潜水艦をいかに効率よく運用しても数のギャップを埋めることはできない。

 

こうした戦術面での制約条件に加え、原子力潜水艦の導入で安全保障上のジレンマが地域内に生まれ、朝鮮半島の安全保障が低下する恐れがある。

 

現時点で原子力潜水艦を運用するのは六か国にすぎない。うち、五カ国は国連安全保障理事国であり、核兵器保有も国際的に認知されている。残る、インドは核不拡散条約 (NPT)を批准していない。

 

逆に韓国は同条約に加盟している。韓国が原子力潜水艦を建造すれば、世界で合意形成済みの不拡散原則に反する。国際社会の反発以外に韓国は「米韓核協力合意」で定めた制約を克服する必要にも迫られる。

 

同合意では濃縮ウランの軍事利用を禁じている。2015年改定で韓国も20パーセントまで濃縮ができるようになったが、軍事利用は厳しく禁止されている。米国は不拡散原則を中核的な国益とみており、韓国が原子力潜水艦を建造すれば米国の反対は目に見えている。韓国は2003年に原子力潜水艦建造を極秘に進めようとしたが、構想が明るみに出ると国際原子力エナジー機関、米国双方から注目されてしまった。さらに同地域では中国も重要な国であり、韓国の原子力潜水艦建造に敏感に反応するはずだ。

 

2016年に韓国が米THAAD装備の導入を決定するや、中国は報復経済措置をとり、韓国とのビジネスや中国旅行客の訪韓を制限した。この結果、韓国はいわゆる「三無」政策を迫られた。THAADの追加配備はなし、米韓日三カ国軍事同盟は成立させない、米主導ミサイル防衛ネットワークに加入しない、という内容だ。米中間の競合が強まる中で、原子力潜水艦建造に走れば、安全保障面の懸念を招き、さらに不利な条件が韓国に課せられるだろう。

 

National Interestではザカリー・ケック、ヘンリー・ソコルスキの両名が韓国原子力潜水艦の費用対効果を分析し、「愚行」と断言していた。両名は原子力潜水艦一隻の建造単価70から90億ドルはP-8Aポセイドン哨戒機他ミサイル防衛に投入する方が費用対効果が高いと主張していた。原子力潜水艦建造の単価は張保皐 Jangbogo-III級SSKなら三隻、あるいは小型のSon Won-II級なら9隻に相当するとの分析もある。

 

原子力潜水艦の建造費用が効果を大きく上回るのは戦術面の理由以外に周辺国の示す対応がある。そうなると韓国にとっては敵潜水艦探知に役立つ哨戒機に投資する方が賢明だ。また無人水中機にも投資し、今後の技術成長に期待する方がよい。

 

文政権が目指すのは戦略装備品を整備し北朝鮮を抑え込み戦時統帥権移転に静かに備えることである。文大統領は戦時統帥権移転を2022年までに実現すると公約している。そのため、韓国の独自継戦能力評価に基づく三段階移転条件を満たそうとしている。ただし、ここで疑問となるのは「もし北朝鮮が米韓両軍の膨大な戦力でも抑止できないのなら、韓国の原子力潜水艦一隻で抑止効果が期待できるはずがない」(マイケル・ペック)との見方だ。単純な答えは米国の「核の傘」が北朝鮮を抑え込んでいるというものだ。核の脅威には先制攻撃を受けても核反撃能力を残存させ報復能力を維持して対抗できる。文大統領が原子力潜水艦があれば一次攻撃を生き残れない核兵器がなくても北朝鮮へ抑止効果が生まれると見ていると仮定しよう。そうならケック、ソコルスキがいう「愚行」が戦略面で生まれる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Time for South Korea to Build Nuclear Submarines?

August 22, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: Korea Watch  Tags: NuclearSubmarinesKoreaMilitaryTechnologyNuclear Submarines

by Sanghoon Kim


Sanghoon Kim is a Research Fellow with the Political and Security Affairs team at the National Bureau of Asian Research (NBR). He is also a graduate student at Korea University, majoring in international security, and had served in the Republic of Korea Navy as an officer for three years.