2020年9月8日火曜日

MQ-9後継機は全く違う機体になる兆候。登場は2030年以降だが、最新技術で中国、ロシアへ対抗する

 

MQ-9 Reaper

Air National Guard photo by Tech. Sgt. Neil Ballecer

 

 

ェネラルアトミックスのMQ-9リーパーは中東で延べ数百万時間も投入されてきた。だがペンタゴンはこれからは互角戦力を持つ敵が相手の厳しい戦闘と考え、後継機に全く別の戦闘環境を想定している。

 

 リーパーは先行登場したMQ-1プレデターを拡大し、ペイロードを増加させ、「ハンターキラー」として攻撃のみならず情報収集偵察監視任務まで実施している。ただし、関係者はこうした任務を別の機体に任せる時が来ていると見る。

 トランプ政権の2021年度予算要求にその意向が反映され、MQ-9新規調達をゼロとし、後継機開発を求めたが、議会はこれを突っ返した。

 

ローパー次官補の考え方

 米空軍で調達を取り仕切るウィル・ローパー次官補は「MQ-9を廃止してハイエンド戦に対応させる転換を図った」と7月に記者会見で話していた。空軍は後継機をMQ-Nextと呼ぶ。

 空軍は2012年にも後継機をMQ-Xとして実現を狙ったものの中止した経緯があり、今回が二回目のトライとなる。ペンタゴンがロシアや中国といった高度戦闘能力を有する敵相手に重点を移しつつある背景が今回の違いだ。

 空軍は業界に情報提供(RFI)を6月に求め、7月締切までに大手防衛産業数社が回答している。

 一方でローパーは機体価格も重要視する。

 「MQ-9のミッション以上の可能性を模索している。ただし空軍省予算内で実現するためには機体価格が重要要素だ」空軍省にはその他高額案件があり予算の余裕がない。第五世代戦闘機、新型ステルス爆撃機、地上配備核抑止力の近代化、宇宙装備や全ドメインの指揮統制機能などだ。

 野球のたとえを使い、ローパー次官補は次期機材は多彩な用途をこなす選手にしたいと述べた。ローパーの考える機体はISRデータを収集し同時に空対空兵装も搭載する。

 「ハイエンド戦でも敵戦闘機がやすやすと侵入できない哨戒線を作れる無人機が実現できないか。同じ機体を呼び戻し重要装備、機体や基地の防御にあてられないか」

 期待される任務をこなすためには一機種では足りなくなるかもしれないとローパーは見る。

 「ファミリー構成のシステム装備品にしてもよい」といい、産業界にはハイエンドの敵相手に戦うため独創的な発想を期待したいという。

 自律運航度を高めるのも一つの解決策で、機体価格を下げる効果も期待できるとローパーはみている。

 「MQ-9一機運航するだけでも多数の人員が必要だ」「当時の技術で設計されているからだが、いまや自動化の範囲が拡大している」

 「機体価格を下げるため可能な限り自動化させる必要がある」

人工知能に制御させ、運航コストを下げる技術解決もあるという。

「ISRの時間当たり経費は下がる。アルゴリズムで元の映像を迅速処理し遠隔地の操作員に送り、標的を識別できる」とローパーはミッチェル航空宇宙研究所開催のイベントで発言していた。.

 一方でどこまで残存性を求め、どこまで消耗品としてあきらめるべきかも重要な検討要素だ。

「低価格の機体を多数製造すれば補給活動が課題となる。他方で防御力が高い機体にすれば、敵は重要装備を投入しても阻止に動くだろう」

 ただし消耗前提の機体への移行は容易ではないという。「出撃すれば必ず帰還できる機体を作ってきた。帰還が期待できない機体を作るとなると用兵部門にも製造部門にも全く違う考え方となる」

 ローパー次官補はRFIへの業界対応に独創的な発想を期待している。

 空軍がもくろむのは2030年の納入開始で初期作戦能力の獲得は2031年とRFIにある。

 「デジタルエンジニアリングでは、10年は永遠に近い。この10年で数十年に相当する効果を期待したい。2030年までに完成できないのなら、システムの何かがおかしいことになる。10年間をまるまる開発に使っていいわけがない」

 

ジェネラルアトミックスの意気込み

 ジェネラルアトミックスはRFIに回答ずみで、MQ-9の知見を応用して成果を上げたいと同社広報が語っている。

 「当社が提案する先進技術はオープンアーキテクチャ、人工知能、自律運航、モジュラー構造さらに相互運用への対応でシステム効率を最大限に実現します」「当社の先端技術でライフサイクルコストを下げつつ第一線部隊で高性能無人装備を通じ、共通性と相互作戦能力を実現すると見ています」

 同社はすでに各種システムのファミリー構成を想定していると同社広報は続けた。次期機材では自動化の幅を広げるが、一部はMQ-9ですでに実現しているという。

 「離着陸の自動化や遠隔地上走行さらに運搬式機体制御装置を使い、離着陸地点に人員配置が不要になりました。また地上制御装置は一人で対応可能としつつ、最大6機の同時制御が一人で可能となりました」

 リーパーの自動化ツールを全部そのまま使えば、人員経費を50パーセントが減り、1500人分の人員余裕が生まれると同社は述べている。

 

各社競合になるのか

 業界筋はジェネラルアトミックス以外にロッキード・マーティンボーイングノースロップ・グラマンの参入があるとみている。

 まず、ロッキード・マーティン広報はRFIに対応し、スカンクワークスによる高度技術開発成果を反映していくと述べている。

 ボーイング、ノースロップ・グラマン両社はRFIを提出するか口を濁している。

 MQ-Nextはジェネラルアトミックスにとり重要事業となる。というのもMQ-9が同社の主力製品だからだとフィル・フィネガン(Teal Group)が解説する。同社はヴァージニア州フェアファックスに本拠を置く航空宇宙防衛市場を分析する企業だ。

 「同社は後継機の採用を狙い全力をあげてくるだろう」と述べ、同社はリーパーの収益で維持されており、採用されないと存続が危うくなるという。

 一方でマーケティングコンサルティング企業のフォアキャストインターナショナルで上席防衛アナリストのラリー・ディッカーソンは MQ-Next受注失敗でジェネラルアトミックスの運命が決まる話にならないと見る。

「リーパーは今後も軍に残り、長期にわたり機体整備や支援の業務が同社に残るはずだ」というのだ。

 

変化に消極的な態度の議会

 他方で空軍がMQ-9後継機づくりに前向きなのと対照的に議会に熱気が見られない。下院版の2021年度国防予算歳出案が7月に可決されたが、MQ-9の16機を344百万ドルで調達する内容が盛り込まれており、生産ラインを維持するとある。本稿執筆時点では最終法案は通過していない。

 「空軍の2021年度予算要求にはMQ-9生産の終了がうたわれており、作戦要求に対して機材数が余剰なのを理由にしている」と下院歳出委員会国防小委員会が解説。「当委員会はこの提案を認めず、逆にMQ-9の追加調達16機分が妥当と提言する」

 議会には空軍が十分に計画せずに後継機調達に飛びつく現状に懸念する向きがある。同上小委員会は空軍に対しMQ-9後継機報告書を2022年度予算要求案の前に提出するよう求めている。

 「報告書では次期装備の望ましい性能水準、経費ならびに大日程を開発、配備の実現に関連で示すとともに開かれた競作を確保し、国家防衛戦略構想の目標をどのように実現できるのか説明を求める」との内容が法案に付随している。

 ローパーは新型機の有用性を議会に納得させるのは空軍の仕事だと強調している。

 「いろいろ使える選手を育てて多様なミッションに投入するためこれまでの調達方法ではうまく行かない。議会には大きな転回点と理解してもらいたいし、今後議論を進めていく」

 フィネガンもMQ-9生産終了を認めたくない議員の心情がMQ-Nextで支障になると注意している。

 「議会にとって気に入らないのは生産ライン閉鎖です。そのため事業を止めるのは極めて難しい話なのです」

 

無人機輸出条件緩和の影響は

 他方で、トランプ政権から7月にUAS輸出規定をミサイル技術規制制度(MTCR)との絡みで緩和する発表があった。これでリーパー並びにMQ-Next双方に影響が生まれそうだ。新分類では「カテゴリー1」装備品は最高速度が時速800キロとなる。改定後は米企業に商談の可能性が増えるとみる向きが多い。

 ジェネラルアトミックスでは規制緩和でMQ-9輸出が増えるとみているものの障壁も残っているとディッカーソンが指摘している。MTCR変更がMQ-Nextの販売にどう作用するかはだれにもわからないという。

 「どのシステムを選択するかにかかってきます。米国はこの装備品は簡単に他国に使わせたくないはずです」■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

MQ-NEXT: Air Force Sets Sight on Reaper Drone Replacement

By Yasmin Tadjdeh

 

— Additional reporting by Mandy Mayfield

Topics: Air Power, Air Force News


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