2020年10月12日月曜日

ジョン・ウェインがもちこんだ戦争映画企画を海兵隊が握りつぶした理由

 


John Wayne (1907-1979), Wikipedia

 

説の映画俳優ジョン・ウェインは西部劇全盛期に長いキャリアを維持し今も有名だ。代名詞のカウボーイハットとウィンチェスターモデル1892レバーアクションライフルは語り草になっている。だがデビュー作は第一次大戦が題材のドラマFour Sonsで、「戦争もの」十数作にも出演している。「コレヒドール戦記」、「硫黄島の砂」、「危険な道」、「史上最大の作戦」、「グリーンベレー」などだ。

 

「グリーンベレー」でウェインは監督も担当し、「ヴィエトナム戦をカウボーイ対インディアンの視点で描いた作品」(映画評論家ロジャー・エバート)との批評もあったものの、米軍の全面協力を得た唯一の作品として特筆すべき存在だ。ウェインは生涯を通じ共和党支持だったが民主党のリンドン・ジョンソン大統領や国防総省を説得し、装備品を提供させた。

 

同作は興業面で成功作になったが、批評家の不評を買い、同時にヴィエトナム戦中の軍を肯定する視点を打ち出すのにも失敗した。ジョン・ウェインは軍に好意的な関心を当てようとし、1954年に朝鮮戦争が題材の作品を製作しようとしたことがある。この年は朝鮮半島での「警察行動」が正式な休戦条約の無いまま終了した翌年であるが、米海兵隊が企画をボツにしたのだった。


1940年代から1960年代末まで国防総省はハリウッドの戦争映画製作に支援を惜しまず、軍の姿を「正確かつ正しく伝える」よう期待してきた。

 

 

海兵隊新聞はウェイン企画が実現しなかったのは「海兵隊の広報活動に決定的打撃を与える可能性」を海兵隊が恐れたためとする。

 


1954年8月の海兵隊新聞はウェインがペンタゴン広報のドナルド・バルーチに送った書簡で映画Giveaway Hillへの軍の支援を要請したと伝えた。朝鮮戦争で激戦となったが記憶されなかったVegas前哨基地の戦いのシナリオで1953年3月、休戦のわずか4か月前に国連軍が中国軍と戦った話だ。

 

現地では主要抵抗線(MLR)付近の前哨基地三か所にはネヴァダ州都市名がつき、ヴェガス、リノ、カーソンの各地点に第一海兵師団が配備された。

 

中国軍が3月26日に奇襲攻撃すると、リノ、ヴェガスを防御する海兵隊は兵力で圧倒されてしまう。海兵隊員ほぼ全員が死亡あるいは捕虜となった。国連軍の反攻はヴェガスでは成功したが、戦闘4日後でもリノは中国軍が占拠したままだった。そこで国連軍はその一帯を共産軍に「くれてやる」Giveawayことにした、というのが同作の題材だった。

 

ウェインは製作陣と出演俳優に第一海兵師団への訪問許可と装備品の提供を求めた。これまでの軍の関係から要請はすぐにも実現すると思われた。しかし、海兵隊のフランク・ワーシグ准将がシナリオを読み重大な懸念をバルーチに伝えてきた。題名からして好意的でない一般の反応を巻き起こしそうだった。

 

ラテン系海兵隊員が差別される筋書きにも海兵隊が難色を示し、ウェインが変更を受け入れたくなかったのか、あるいは単に製作意欲を失ったのか不明だが、同作は結局製作されることはなかった。


海兵隊が「硫黄島の砂」制作にあたりウェイン他に基礎訓練体験を許した。同作の撮影では製作元のリパブリック映画にキャンプペンドルトンで無条件撮影を許し、一個大隊をまるまるエキストラで出演させたのと好対照な結果になった。

 

ウェインは六年後にもうひとつの不名誉な「最後の砦」の戦闘を描く「アラモ」に製作監督も兼ね主演した。同作はウェイン自身の個人的なこだわりを反映したものだったのだろうか。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

The U.S. Marine Corps Actually Killed a John Wayne Movie

October 7, 2020  Topic: History  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: Marine CorpsMilitaryJohn WayneHistoryGuns

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com. 


0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントをどうぞ。