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中国が米海軍空母などの艦艇実寸大ミサイル標的を砂漠に構築。弾道対艦ミサイルの精度を上げるためか。中国は真剣だ。

 

2021年10月20日の衛星画像で米空母を模した標的がタクラマカン砂漠に見つかった。 H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

国軍が米空母の形を模した標的をタクラマカン砂漠に構築しており、標的演習場を新たに構築したのが衛星画像で判明した。画像はMaxar社が提供した。

 

米空母の実寸大輪郭に加えアーレイ・バーク級駆逐艦の輪郭少なくとも二つが演習場に見つかった。場所は 新疆ウイグルのRuoqiang若羌にあり、中国がいわゆる空母キラーのDF-21D対艦弾道ミサイル試射に以前使った演習地に近い。

 

タクラマカン砂漠で見つかった米駆逐艦を模した標的。H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

空母標的は平面で空母のアイランドは構築されていないようで、航空機用エレベーター、兵装など詳細は省略されている。レーダーを使えば周りの砂漠からこの標的が浮き出るはずだ。

 

さらに標的二つがあり、空母標的より詳細に構築されている。柱数本があり、おそらく計器測定用だろう。レーダー反射をシミュレートするものかもしれない。

 

また同演習場内にはレイルが敷かれており、10月9日のMaxar衛星画像を見ると全長75メートルの標的に各種計装をつけて幅6メートルのレイル二本で移動させている様子がわかった。

 

同地区はこれまでも弾道ミサイル試験に使われていると地理空間情報提供企業AllSource Analysisが解説している。

 

「米艦艇を模した実物大標的に加え、レイル移動式の標的もあることから標的捕捉、照準のテスト用だろう」と同社は見ており、模型のすぐ近くに兵器が命中した形跡がないという。「艦艇を模した標的に各種センサーもついていることから、この演習場は今後各種試験に使う意図が見られる」

 

衛星画像履歴を見ると空母標的は2019年3月から4月の間に構築されていたことがわかる。その後、工事が続いたが2019年12月に解体された。その場所が今年9月再び工事が始まり10月初めにおおむね完成した。


Ruoqiang施設内に見つかった移動式標的のクローズアップ写真。 H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

 

人民解放軍ロケット軍(PLARF)は対艦弾道ミサイル数種類の開発を進めており、陸上配備型のCSS-5 Mod 5 (DF-21D) の射程は800カイリ超といわれる。同ミサイルは飛翔制御可能な再突入体(MaRV)で艦艇を狙う。大型のCSS-18 (DF-26)は射程2千カイリ。

 

「PLARFは2019年7月に初の実弾発射を南シナ海に向け実施し、DF-21D対艦弾道ミサイル6発をスプラトリー諸島北側に発射した」とペンタゴンは中国軍事力報告で述べている。また長距離対応の対艦弾道ミサイルが2016年に出現している。

 

「多任務対応のDF-26は通常弾頭を短時間で核弾頭に変更が可能で精密対地攻撃のほか、対艦攻撃に使え、中国本土から西太平洋、インド洋、南シナ海を標的に収める。2020年、PRCは南シナ海上を移動する標的に対艦弾道ミサイル数本を発射したが、公式にはこれを認めていない」(報告書)

 

2021年11月5日に Capella Space が開口合成レーダーで米空母の輪郭を模した標的を撮影した。H I Sutton Illustration for USNI News

 

陸上配備型ミサイルに加え、PLANのH-6爆撃機に大型対艦弾道ミサイルを搭載している。2018年に初めて視認されたのがCH-AS-X-13で空中発射ミサイルとして最大の大きさがあり、極超音速弾頭の装着も可能な大きさだ。

 

さらに055型レンハイ級大型駆逐艦からの発射も考えられる。同艦は誘導ミサイル巡洋艦とも区分され、対艦ミサイルの発射が可能とペンタゴン報告書は述べている。

 

中国は以前も砂漠地方に空母標的を構築している。2003年に空母の大きさに近いコンクリート板が敷設され標的にしていた。同移設はShuangchengziミサイル試射場にあり、何度もミサイルの命中を受け、都度修理を受けていた。今回の新施設はそこから600マイル離れた場所にあり、もっと進んだ施設になっている。標的は実際の艦艇に極めて近い大きさになっている。

    DoD Graphic

 

新施設にどのミサイルを使うのか不明だが、施設が巧妙に作られていることからPLAが米海軍部隊の中国本土接近を阻止する手段の開発を進めているのは明らかで、空母部隊がその狙いであることはあきらかだ。

 

ペンタゴンは恒例の報告書を先週公開しており、PLARFの主任務に西太平洋に展開する米空母部隊の活動を制約することがあると記述している。■

 

China Builds Missile Targets Shaped Like US Aircraft Carrier, Destroyers in Remote Desert - USNI News

By: H I Sutton and Sam LaGrone

November 7, 2021 11:12 AM • Updated: November 7, 2021 12:58 PM

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