中国には、競合相手から設計や技術、さらには航空機全体を借用(あるいは盗用)してきた長い実績があり、中国初のステルス戦闘機成都J-20マイティドラゴンも例外ではない。
J-20は、アメリカ以外で初のステルス戦闘機となり、1983年から34年間続いたアンクルサムの低視認性機独占を終わらせた。J-20が就役すると、アメリカとロシアで、ステルス戦闘機の設計を中華人民共和国が盗んで就役を早めたと非難する声が多く聞かれた。
しかし、J-20は他の第5世代戦闘機とすべて
同じには見えない。J-20が独創的なデザインではないためだろう。J-20は少なくとも三種類の戦闘機計画から要素を盗んでいる。
戦闘機設計盗用の実績
成都J-20
中国の急速な軍拡と近代化は、大規模な経済的、政治的努力の結果として実現した。縁故採用や腐敗が蔓延していた中国軍だが、今や770隻以上の艦船と高性能ミサイルシステムを保有し、多くは南シナ海全域の領有権の防衛に充てられ、太平洋で軍事大国の1つになった。中国が非常に短期間で多く達成したのは否定できない。
また、中国の防衛構想を詳しく見てみると、急速な進歩は、貿易パートナーや友好国含むあらゆる方面から技術上の秘密を抜き取る、極めて大規模なスパイ組織のおかげなのは明らかだ。中国の軍事航空分野ほど、「窃盗による進歩」を生かした分野はない。
例を挙げると、成都J-10は、1980年代に中国がイスラエルから購入した情報がもとで、原型ラヴィ戦闘機は米F-16をベースにしていた。
瀋陽 J-10 (Wikimedia Commons)
瀋陽J-11とJ-16は、いずれも中国が1989年に購入したソ連のSu-27をベースにしている。ソ連は中国に売りたくなかったのだが、当時の絶望的な経済状況から手を出さざるを得なかった。
瀋陽J-11 (Wikimedia Commons)
中国の現在の主力空母艦載戦闘機である瀋陽J-15も、ロシアのSu-33をベースにしているが、ロシアから入手したのではない。モスクワが設計図提供を拒否したため、北京はウクライナからこの戦闘機の試作機(当時はT-10K-3と呼ばれていた)を購入し、それをリバースエンジニアリングした。
瀋陽J-15
他の例もある。中国は、地球上最強の軍事大国と競合し、追い越すためには、迅速に能力を同水準にする必要があると理解し、費用対効果が最も高い方法は、空母打撃群の戦術であれ、制空戦闘機の設計であれ、ゼロから始めるのではなく、すべて盗むことだ。
成都J-20は米国以外で初のステルス戦闘機
成都J-20マイティドラゴンは、中国初の第5世代戦闘機で、ルーツは1990年代後半に始まったJ-XX計画に遡る。F-22ラプターの初飛行から約11年後の2008年に、成都のプロジェクト718が初のステルス戦闘機として前進することが決まったが、設計は2014年に大幅修正を受け、2017年に「戦闘準備完了」宣言で生産開始された。
単座の双発戦闘機は、F-22の44インチにわずか及ばない42フィート強の翼幅と、F-22の62インチよりかなり長い69フィート7インチの全長だ。中国は、WS-15と呼ばれる第5世代エンジン(推力44,000ポンド)の導入に苦労している。その結果、現在のJ-20は、ロシア製AL-31(推力33,000ポンド)か、最近は中国独自のWS-10Cを搭載している。
成都 J-20 (Wikimedia Commons)
最高速度はマッハ2、航続距離は1,100海里、運用最高高度は6万6,000フィートである。中・長距離ミサイルを4発搭載でき、胴体の左右の小型の補助ベイに短距離空対空ミサイルを2発搭載できる。
J-20はしばしばアメリカの制空戦闘機F-22ラプターと比較されるが、技術的に言えば、異なる役割で設計されている。ラプターは空戦の支配が目的だが、J-20はF-35のように敵地深部まで飛び地上目標の攻撃を狙った。しかしその後、中国は空戦能力の差を埋めるために、よりダイナミックなドッグファイターとするために推力偏向制御など新しいシステムを組み込んだ。
ロシアは中国製戦闘機の公開直後、J-20とMiG1.44の類似性を指摘した
MiG 1.44 試作機
1991年にソ連が崩壊した後も、ロシアは米国が開発中のF-22ラプターに匹敵する空戦能力を有する戦闘機を目指し、研究を続けた。最終的にスホーイのPAK FAが勝利し、Su-57フェロンにつながったものの、ロシアは少なくともその他二形式のステルス戦闘機を検討していた。前方掃射翼のSu-47ベルクト、ミコヤンのMFIプログラムのMiG1.44試作機(MiG 1.42量産戦闘機を意図)だ。このうち、
MiG1.44は1999年に公開されたが、実は開発は1980年代から始まっていた。1994年にはMiG1.44試作機が地上試験を行ったが、当時のミコヤンの財政難から、それ以上の成熟化は不可能だった。結局、2000年2月に飛行した。
Su-47の後方翼ほど劇的ではないが、MiG1.44はカナードを主翼前に配置し、中国のマイティドラゴンと非常によく似たレイアウトなど、ロシアの伝統的な戦闘機デザインを逸脱している。ロシアが類似性に気づいていないはずがない。
2016年10月、中国は珠海航空ショーでJ-20を正式発表したが、数日後に、ロシア国営メディアが成都を罵倒していた。中でもよく引用されたのが、ロシアの「祖国の工廠」誌の副編集長ドミトリー・ドロスデンコDmitry Drozdenkoの発言だ。
「この機体はロシアのMiG1.44が原型だ。同機はPAK FAに対抗するため作られ、2000年初飛行した」とスプートニクで語った。「中国機は非常によく似ている。公式には発表されていないが、J-20はサルートが開発したAL-31Fエンジンを使用しており、中国が5億ドルで購入した」。
成都J-20 上, MiG 1.44 下
クレムリン系メディアのタス通信も、ヴィクトル・リトフキンViktor Litovkinの記事を掲載し、追随した。
「中国は最高モデルをコピーできる。方法を知っている。しかし、コピーとは常にオリジナルより少し悪いものであることを忘れてはならない」。「中国のJ-20と国産MiG1.44を比較するのは自然だ。2機の外観は非常によく似ている。内部のレイアウトでは、疑問が生じる。計器や機器がどれだけ正確にコピーされているのか」。
注目したのはロシアだけではなかった。ロンドンの国際戦略研究所の航空戦の専門家、ダグラス・バリーDouglas Barrieも当時、J-20とMiG1.44の著しい類似性を重視していた。
「J-20の後端は1.44に酷似しており、デルタカナードを備えた全体的なレイアウトも同様だ」。「偶然の一致なら、目を見張るものがありますね。ロシアが技術支援を行ったかもしれないが、証明するものは何もない。しかし、中国は10年半にわたり、防衛調達の多くをロシアに頼ってきた」。
MiG 1.44 (上) 、 J-20 (下)
ミコヤンは、J-20の公式発表のかなり以前から、中国のステルス戦闘機開発への支援を否定してきた。2010年に中国の新型戦闘機の画像が公開されると、ロシア企業は攻勢に転じ、ロシアメディアで「中国にいかなる装備も納入していないし、これまでも納入したことはない」と表明した。もちろん、この発言は明らかな誤りだった。ミコヤンは過去数年間、成都J-7となったMiG-21のキットや部品、完成機を中国に公然と販売していた。
また、ミコヤンは1990年代後半に経営難に陥り、1999年にMiG1.44の公開前に経営陣が交代しているが、設計移転が行われた可能性がある。特にMiG1.44の開発が見送られた後、資金繰りに窮していたのであれば、中国に資金を求めるのは理にかなったことだろう。
2011年8月、トーマス・グローブは、ロイターでロシア防衛産業内の関係者にインタビューし、ミコヤンは確かにJ-20開発に協力したが、合法的だったかは分からないと聞き出した。「彼らはミコヤンに関連する文書にアクセスしたようで、国防省のステルス戦闘機入札で飛ばした機体だ」。
グローブはさらに、ロシアのアナリスト、アディル・ムカシェフに会い、この話を裏付けた。「中国はミコヤンの尾翼を含む部品の技術を金で買ったのだ」。
J-20は三形式ステルス戦闘機の要素を取り入れた機体だ
J-20とMiG1.44は非常によく似ているが、明らかな違いもある。しかし、それは中国のオリジナリティを示すものではなく、盗んだデザイン要素を混ぜ合わせた可能性がある。
J-20の全体的なデザインはMiG1.44の影響を強く受けているかもしれないが、レーダー探知を破るアプローチは、ロッキード・マーチンのF-22ラプターやF-35統合打撃戦闘機の設計を明確に借用している。そして、中国がMiGから設計や材料を手に入れたかでは不確実性が残るが、中国が米ステルス戦闘機設計にアクセスしたことについては疑問の余地はない。
2014年8月、カナダ在住の中国人、スー・ビン(スティーブン・スーとも名乗っていた)は、中国政府のためボーイングやロッキード・マーチンといったアメリカの航空会社から63万以上のファイルを盗み出すハッキング活動をしたとして逮捕された。証拠として提出された本人のメールによると、「我々(中国)がアメリカのレベルに急速に追いつけるような...(そして)巨人の肩に簡単に立てるような」F-22とF-35の「青写真」も、このハッキング活動で盗んだという。
F-22 ラプターの機首前方部分 (上), J-20 野堂部分 (下)
J-20は遠目にはMiG1.44に似ているが、近づくとF-22やF-35との類似性が顕著になる。J-20の前部胴体、特に角ばった機首はF-22のDNAをはっきりと示しており、両側の大きなエアインテークはF-35と強いデザイン上の共通点がある。全体として、J-20はロッキード・マーティンの低視認性設計アプローチを活用し、全体形状はミコヤン・ミグ1.44計画からインスピレーションを得ていないにしろ、影響を受けているように見える。
F-35 (上), J-20 (下)
もちろん、ステルス機の開発では、機能によっていくつかの類似点が生まれることがあるが、ステルス機は、一部アナリストがいうほど限定的なものではない。しかし、生産に至らなかったステルス戦闘機、ノースロップYF-23やボーイングX-32を見れば、低視認性を実現する方法は1つだけではないことがよくわかる。
ノースロップYF-23はF-22を上回るステルス性能があったといわれる (Wikimedia Commons)
中国の歴史的な粘り強さは、外国の航空機デザインを盗み、吸収することにあり、J-20はMiG1.44、F-22、F-35のコピーだけではない可能性が高いように思える。むしろ、中国エンジニアが各種要素から好きなものを選び、空白を埋めただけで、実際には3型式の組み合わせになっている。
もちろん、われわれにできることは、証拠から結論を出し、新たな証拠が出てきたときには立場を変えることだ。J-31は現在、生産に向け進展しており、ロッキードの失われたいとこに酷似している...これが、今後の会話になるのは間違いない。■
Stolen stealth fighter: Why China's J-20 has both US and Russian DNA - Sandboxx
Alex Hollings | June 30, 2022
Alex Hollings
Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.
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