2023年6月4日日曜日

NGAD有人機版戦闘機開発を受注するのはどこか。ボーイング、ロッキード、ノースロップ各社の動向、優位性について

 



フランク・ケンドール空軍長官によれば、次期ステルス戦闘機で少なくとも2社が空軍に協力している



世代航空優勢計画(NGAD)で開発中の新型戦闘機のデザインを空軍がまもなく決定する予定であることが最近明らかになり、同計画が実際にどの程度進んでいるのか知りたいと思う向きが増えている。


NGADの技術実証機がすでに飛行しているばかりか、記録を更新したことを空軍当局が公表して、すでに3年近くが経過している。


しかし新型有人ステルス戦闘機の最終設計が決定していないことは明らかだ。そして、空軍は、最終案の採用をめぐり2社以上が競争していることを明らかにしている。


NGADプログラムに関するこれまでの発表では、全米最大かつ最も成功している航空宇宙防衛請負3社(ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップグラマン)すべてがNGAD契約を積極的に追求していることがすでに明らかになっていたが、ケンドール空軍長官の最新の発言は、3社のうち2社が積極的に役割を果たしていることを示している。


「ライトパターソン空軍基地に出向き、非常に有能な政府エンジニアが請負業2社のうちの1つと直接仕事をしているのを見た」。ケンドール長官は月曜日、「設計担当チームが2社と直接やりとりしていた」と語った。


しかし、最終的に誰がトップに立つのか、という疑問は残る。


ロッキード・マーティンのF-35ライトニングIIは、ジョイント・ストライク・ファイターとして知られ、現在世界で最も技術的に進んだ戦術機だ。ステルス技術とセンサーを融合したオンボードコンピューターにより、この戦闘機は紛争空域でほぼ無傷で活動できる。さらに、F-35はデータを収集し、そのすべてを扱いやすいパイロット・インターフェースに集約する。このような高度な状況認識能力により、F-35はあらゆる戦闘シナリオで強力な脅威となるだけでなく、並行して飛行する旧型ジェット機の殺傷能力を高めることも知られている。


F-35の初飛行の1年前に就役したF-22ラプターは、これほど高度なセンサー融合認識は提供しないが、計算能力不足を力技で補う。F-35の性能は、F-15イーグルのような冷戦時代のホットロッドと比較すれば低調とされるが、F-22は比類のない速度と曲芸的な操縦性を提供する。さらに、中国やロシアのステルス戦闘機の数千倍とも言われる最小のレーダーリターン、空対空戦闘に特別に設計された先進のエイビオニクスシステムが、F-22を今日のトップクラスの航空優勢戦闘機にしている。


中国の成都J-20マイティドラゴンとロシアのスホーイSu-57フェロンは、技術的には新しい第5世代プラットフォームだが、ロッキード・マーティンの有名なスカンクワークスから生まれた2機は、現在戦闘機の技術、能力、そしてF-35の場合は生産能力の最高峰を代表している。米国と国際的なパートナーに納入されたF-35はすでに1,000機以上あり、現在飛んでいるF-35の数は、世界中のその他ステルス航空機の合計数よりも多い。


しかし、F-22が戦闘機の性能の基準を設定し、F-35が戦闘機技術の水準を引き上げた一方で、次世代航空支配プログラムで誕生する航空機は、両者が提供する能力を凌駕すると期待されている。新型戦闘機は、1997年に初飛行したF-22のように、就航後はまったく新しい世代の戦闘機の基礎となることが期待されています。


空軍は、F-35調達の大失敗を避けるため積極的に努力している。


F-35は、その技術力の高さ、国際競争力の高さから、欧米の戦闘機に何度も勝利しているにもかかわらず、一部では「失敗作」の評価もある。その背景には、F-35開発に費やされた膨大な研究開発費、度重なる生産の挫折と遅延、そして高騰する運用コストへの懸念がある。こうした正当な懸念は、空戦演習におけるF-35の実際の性能について、誇張され、センセーショナルで、しばしば誤った報道でさらに悪化している。


F-35の戦闘能力への懸念は根拠がないものかもしれないが、その膨大なコスト(現在、供用期間全体で1兆7000億ドル超と予測されている)に対する不満は、現実に基づいている。サンドボックス・ニュースでは、F-35の取得プロセスがいかに問題であったかを過去の記事で詳しく取り上げてきたが、要約すると、ロッキード・マーティンは、今後数十年にわたり戦闘機の開発、生産、維持を事実上独占し、コストを最小化するインセンティブがほとんど機能せず、テスト完了前に生産開始する空軍の短絡的判断のため、F-35のコストはみるみる高騰していった。


ロッキード・マーティンへの発注契約について、ケンドール長官は 「不正 」と表現するほどだ。「政府が必要な知的財産を所有できるようにする。また、オープンシステムを採用したモジュール設計にすることで、プラットフォーム・インテグレーターとして誰を選んでも、新規サプライヤーを取り込めるようにします。そして、プログラムの将来について、これまでよりもはるかに厳格な政府による管理を行う」と、ケンドールは月曜日に述べている。


NGAD戦闘機について、わかっていること


ロドリゴ・アベラによる原画


NGAD計画から生まれる有人戦闘機プラットフォームに大きな注目が集まっているが、戦闘機は全体取り組みの一要素にすぎない。空軍によると、NGADは先進的な有人戦闘機と、パイロットと一緒に飛行し指示を受けるAI対応ドローンを含むシステムファミリーとなる。


しかし、空軍や防衛関連企業が発表した公式レンダリング画像は、いずれも垂直尾翼が小さい(あるいはない)洗練されたデザインで、この新型戦闘機が操縦性よりステルス性に重きを置くことを示唆している。


最先端ステルス機としてNGAD戦闘機はかなり高価になることが予想され、1機あたり2億ドル以上になる可能性が高いため、空軍は現在わずか200機の調達を目指している。限定生産がF-22ラプターで深刻な問題となったが、NGADはまったく異なる運用を想定している。ドローン多数により、NGAD戦闘機1機がレガシー戦闘機数機の役割を果たすことができ、少ないパイロットで戦闘機多数を運用可能となる。


空軍は少なくとも1,000機のドローンウィングマンを購入する意向で、200機のNGAD戦闘機に2機ずつ、そして将来的には300機のブロック4仕様のF-35に2機ずつ配備する予定だ。


NGADの3大コンペティター

ロドリゴ・アヴェラによるオリジナルアートワーク


一般が知らないだけで、この取り組みにすでに名前を連ねている巨大な防衛企業が3つある。


2022年8月、米空軍は、次世代ステルス戦闘機の動力源となるアダプティブサイクルエンジンシステムの継続開発について、それぞれ10億ドル近い契約5点を締結した。うちの2社、プラット&ホイットニージェネラル・エレクトリックは、有名なエンジン設計会社で、新型機のエンジンを開発で真っ向から競争することになる。両社はまた、非常に有望なアダプティブサイクルエンジンの取り組みが進行中であることを公言しています。GEのXA100エンジンは、F-35の現行プラット&ホイットニーF135パワープラントより推力で20%、航続距離が30%、滞空時間が最大50%長くなると言う。


しかし、この次世代適応推進プログラムの下で9億7500万ドルの契約を受ける他の3社は、機体設計に関連する ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンだ。


この3社の契約は、NGAPプログラムと、それが将来のNGAD計画にどのように適合するかについて、多くの興味深い疑問を投げかけている。各企業が新しいエンジンの開発・生産に乗り出す可能性もあるが、これらの契約で、3社が新しい適応型サイクルエンジンをNGAD戦闘機の設計に統合する作業を継続する可能性がはるかに高い。そうだとすれば、3社はNGADの設計にすでに非常に積極的に取り組んでいるように見える。


ロッキード・マーティン

ロッキード・マーティン


ロッキード・マーティンは、すでに2つのステルス戦闘機の設計で勝利を収めているだけでなく、両機種は新型競合機が実用化されても、現在も支配的であることから、このレースでトップランナーである可能性は十分にある。ロッキード・マーティンの伝説的なスカンクワークス部門は、世界初のステルス機F-117ナイトホークや、空飛ぶU-2スパイ機、史上最速のジェット機SR-71ブラックバードなど、これまでに空を飛んだうちでもっとも画期的な軍事航空機を手がけてきた。

1999年には、F-22ラプターをベースに無尾翼のデルタ翼機X-44マンタを開発し、制御面の除去を補うため3次元推力ベクトル制御に依存する航空機の実現可能性をテストした。現在もMantaのコンセプトと第6世代戦闘機のレンダリング画像との類似性を否定することはできない。ロッキード・マーティンは2012年にジャーナリスト向けカレンダーを発表し、1991年にF-22と先進戦術戦闘機の契約を争ったノースロップ・グラマンのYF-23からデザイン要素を借りたような、別の先進戦闘機のデザインを示していた。


そのデザインは、2017年に公開されたビデオを含む、その後に公開されたプロモーション資料で再び表面化したが、同じ年の後半にロッキード・マーティンは、異なるデザインの最初のレンダリングを公開した。


2017年に公開されたロッキード・マーティンの第6世代戦闘機レンダリング画像


そのデザインは、つい昨年、LMXTタンカー機のプロモーションで公開されたグラフィックなど、ロッキード・マーティンが公開した最近のレンダリングにも受け継がれているようだ:

ロッキード・マーティン


そして2021年10月、ロッキード・マーティンのヘレンデールのレーダークロス・セクション(RCS)測定施設のトレーラーに置かれた、非常に珍しいステルスデザインの画像が浮上し、同社の第6世代戦闘機プログラムについて新たな疑問が投げかけられた。



しかし、ロッキード・マーティンは明らかに低視認性に優れているにもかかわらず、F-22とF-35双方で発生した信じられないほどのコスト超過のため同社は新型戦闘機の契約を獲得するチャンスを損なうかもしれない。また、空軍は、アメリカの元請け会社が競争を続けるための資金を確保することに懸念を抱いており、空軍当局者や議員には、アメリカの次期ステルス戦闘機を別の会社に求めるようになるかもしれない。


ノースロップ・グラマン

B-21レイダー(ノースロップグラマン)


ロッキード・マーティンはステルス戦闘機の分野で世界をリードしているが、低視認性航空機の分野で豊富な経験を持つのは同社だけではない。世界初の重装備ステルス爆撃機B-2スピリットと、後継機B-21レイダーを開発したノースロップ・グラマンも、NGADの輪に手を入れている。


ノースロップ・グラマンのステルス爆撃機の成功にもかかわらず、同社はステルス戦闘機でも素晴らしい血統を持っている。1991年の先進戦術戦闘機コンペティションに参加したYF-23は、航空界で神話的な地位を獲得している。多くの証言によれば、YF-23はフライオフでYF-22と同等かそれ以上の能力を発揮したが、その前の数年間、注目を集めた論争により、当時ノースロップの予算と納期への信頼は極めて低かった。


YF-23は、最終的にラプターが素晴らしい性能を発揮したにもかかわらず、コンペティションでの堅実な性能の結果、航空界で最も偉大なWhat-ifの1つと見なされることがよくある。


ノースロップ・グラマンはまた、長年にわたり、新しいステルス戦闘機の実戦投入への関心をほのめかしてきた。2016年、同社はスーパーボウルで広告を発表し、無尾翼ステルス戦闘機の新しいレンダリングを、その他の先進的な航空機コンセプトとあわせ紹介していた。



2021年、ノースロップ・グラマンは、新しい航空機コンセプトのレンダリングを示す別の広告を発表した。今回は、格納庫内の非常に珍しい航空機デザインを含んでいた。このレンダリングは、ノースロップが単にアートのためのアートではなく、実際に自社の第6世代戦闘機のコンセプトを垣間見せているのではないかと多くが推測するきっかけとなった。今年に入って公開された新広告で、ノースロップは同じ機体を別のアングルで再び見せていた。



昨年、ノースロップ・グラマンCEOキャシー・ウォーデンは、投資アナリストとの電話会談で、B-21での成功がNGAD契約獲得に有利に働くと感じていると公言していた。


「第6世代航空機を考えるとき、弊社はその最初の機体であるB-21の製造過程にあり、素晴らしい知見を得ることができました」。


また、2022年発表の米議会調査局の報告書もB-21レイダーを引き合いに出して、新型戦闘機が、空中で軽快に飛行する前世代の戦闘機よりステルス爆撃機と共通する可能性があると議論していた。「B-21のような大型機は、戦闘機のような操縦はできないかもしれないが、指向性エナジー兵器を搭載し、大出力電力を生み出す複数エンジンを備えた大きな航空機は、多くの空域で敵の飛行を不可能にする。そうすれば、航空優勢を獲得できる」。(空軍次世代航空支配計画  議会調査局、2022年6月23日)


ノースロップ・グラマンがすでにB-21レイダーの極めて有利な契約を獲得している事実がNGAD契約獲得の妨げになる可能性もある。もしノースロップ・グラマンが受注すれば、海軍のF/A-XXプラットフォームが受注されるまで最新鋭戦闘機と爆撃機を1社で製造することになるのからだ。


ボーイング

ボーイングX-32(米空軍撮影)


ボーイングは、ステルスでば真っ先に思い浮かぶ会社ではないかもしれないが、実は信じられないかもしれないが、ステルス機ではロッキードより昔に遡るルーツがある。ボーイングのハヴ・ブルーがF-117ナイホークにつながる10年以上前に、ボーイングはすでに、ある基準では世界初の真のステルスプラットフォームとみなされる、ほとんど忘れられたモデル853-21クワイエットバードの試験を行っていた。


クワイエット・バードは1962年、推測と確認という古き良き手法で開発が始めらた。(ロッキードのスカンクワークスのデニス・オーバーホルサーが、ピョートル・ウフィムツェフの研究成果を用いて、実際に航空機を製作せずレーダーリターンを計算する方法を考案するよりもずっと前のこと。)


ボーイングは、レーダーリターンをできるだけ小さくするために、設計形状や建設材料を実験したが、最終的に米軍は興味を示さず、クワイエットバードの技術は、AGM-86空中発射巡航ミサイルに採用された。


1997年、ボーイングはマクドネル・ダグラスと合併し、低視認性の信頼性を再獲得した。マクドネル・ダグラスは、同社ステルス戦闘機の提案がATFコンペティションで飛行もせず見送られたことに不満を抱き、ロッキードのスカンクワークスからアラン・ウィーチマンを雇い、新たにファントムワークスで低視認性への取り組みを指揮させた。


エリア51上空を飛行するボーイングのバード・オブ・プレイ


ウィーチマンの指揮下、ファントムワークスはYF-118Gバード・オブ・プレイ・ステルス技術実証機を開発し、エリア51の極秘区域内で飛行させた。同じ時期に、マクドネル・ダグラスとボーイングは、NASAと協力してX-36 Tailless Fighter Agility Research Aircraft(垂直尾翼のないステルス機を飛ばす方法を開発することを目的とした、28%スケールの技術実証機)に取り組んでいた。


飛行試験中のボーイングX-36。(ボーイング社撮影)


2000年には、ボーイングX-32プロトタイプが空を飛び、ロッキード・マーティンのX-35とジョイント・ストライク・ファイターのコンペティションに臨んだものの敗退した。しかし、2025年にF/A-18スーパーホーネットの生産が終了する予想の中、ボーイングがステルス戦闘機の設計コンセプトを継続していることは、ほぼ間違いないと思われる。


2013年、ボーイングは第6世代戦闘機デザインの新しいレンダリングを初めて公開したが、その画像はNGADプログラムではなく、海軍が開発中の新しいステルス戦闘機、F/A-XX関連だった。このデザインは、他の第6世代戦闘機コンセプトと似ているが、主翼の前方にカナードが追加されていた。

2013年のボーイングF/A-XXのレンダリング画像


そして2016年11月、ボーイングは次世代戦闘機コンセプトの新しいレンダーを発表した。今回のレンダリングは以前のものと非常によく似ていたが、以前あったカナードが消えた。



では、NGAD契約はどこが獲得するのか?

米空軍によると、NGAD契約の競合はまだ非常に激しいという。本格的な技術実証機の飛行など、水面下で大規模な作業が行われているが、競争はまだごく初期の段階であることは明らかだ。


空軍の広報担当者は今週初め、「まだ提案は受けていないが、将来的に複数提案を期待している」と述べた。「NGADプラットフォームのソース選択に関わる企業名や提案者の数を提供することはできません。調達戦略は、2024年交付を意図したエンジニアリングおよび製造開発契約を考慮しています」。


NGADの主契約者として最終的に1社が選ばれるものの、他の大手防衛企業もその最終的な製造・運用に関わることはほぼ確実であることも非常に重要な点だ。例えばF-35の場合、ロッキード・マーティンが受注したとはいえ、実際にはノースロップ・グラマンが機体中央部や強力なAN/APG-81レーダーアレイなど、かなりの部分を生産している。


NGADプログラムから生まれる戦闘機が、上記のレンダリング画像のようになる保証はないが、ひとつだけ明らかなことがある: 新型戦闘機は今まで見たことのない役割を果たす機体になる。■



Which will be the company that will build America’s next stealth fighter? - Sandboxx

Alex Hollings | June 2, 2023


Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.


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