2025年5月27日火曜日

米海軍が「ステルス型ディーゼル潜水艦」を建造する可能性(19fortyfive) — 米国が絶対と思ってきた技術体系が崩れつつあり、こつこつと技術を培ってきた日本に注目が集まるのは必至でしょう

Taigei-Class Submarine. Image Credit: Creative Commons.

たいげい級潜水艦。画像提供:クリエイティブ・コモンズ。

動力潜水艦技術で先駆的かつ長年支配的な地位を占めてきた米海軍が安価なディーゼル電気潜水艦(SSK)を建造する可能性はあるのだろうか。

-この転換は、グローバルな紛争環境の変容により、小型で静かで機動性の高いSSKが、大型で高価な核動力潜水艦より浅海域作戦に適していることため着目されている。

Virginia-class Submarine

建造中の米海軍ヴァージニア級潜水艦

-空気非依存推進システム(AIP)の進展により、従来型潜水艦は原子力潜水艦にしか不可能だった長時間潜水持続能力とステルス性を実現できるようになり、特殊作戦などの任務に適した選択肢となっている

-市販品(COTS)コンポーネントの導入で、ディーゼル電気式潜水艦はコスト効率が高く、任務に特化したオプションとなる可能性がある。

ディーゼル潜水艦は米国海軍の選択肢になるか?

米海軍は原子力潜水艦を世界に先駆けて実用化した。最初の原子力潜水艦は、1954年に就役し、1955年に海上公試した「USSノーティラス(SSN-571)」だ。翌年、同艦は、第二次世界大戦中に使用された対潜戦術が、この新技術を搭載した潜水艦に対して脅威となるかどうかを判断するため試験演習を実施した。

結論として、日本海軍の潜水艦やナチス・ドイツのUボートに対して使用されたあらゆる方法は、原子力潜水艦に対しては無効であることが判明した。原子力潜水艦は浮上する必要がなく、より深く潜航でき、捜索区域を最短時間で掃討することができた。当時、これらに対抗する手段は存在しなかった。

そう考えると、米海軍が今日、小型で航続距離が短いディーゼル潜水艦の設計と建造を検討するのは直感に反する。

ディーゼル潜水艦から脱却し、米国の例に倣った国もあらわれ、それらすべての国は、原子力推進艦の数を維持・拡大し続けている。

閉鎖的なクラブ

原子力潜水艦は伝統的に、真の超大国海軍の象徴と見なされてきた。

ディーゼル動力潜水艦に依存せざるを得なかった国々は、第二級の海軍と見なされてきた。「核クラブ」に属することは、常に最も目立つ軍事的ステータスシンボルだった。

予想通り、原子力潜水艦に最も多く支出している国は米国で、今後10年間で世界シェアの44.1%を占めると予測されている。

潜水艦の最新トレンド

2034年までに世界中で支出される予定の資源を分析すると、2つの傾向が浮き彫りになる:

米国は今後10年間で、次の4カ国を合わせたよりも多くの資金を原子力潜水艦に投入する。長年同様の傾向が続いており、米国は潜水艦戦において他のすべての国に対して明確な優位性を維持している。

2つ目は、米国が自国の艦隊規模を決定する際の基準として常に「ペースメーカー脅威」として位置付ける中華人民共和国(PRC)とロシアにもかかわらず、オーストラリアは、このランキングに含む次の3カ国よりも、新たな三カ国間AUKUS潜水艦プログラムに資金を投入する。

オーストラリア海軍(RAN)はまずヴァージニア級SSNを調達し、その後イギリス海軍の支援を受けAUKUS-SSNの新艦隊を建造する。

では、なぜ米国は超排他的な核保有国クラブの創設メンバーでありながら、ディーゼル潜水艦の建造を検討するのか?

ディーゼル潜水艦の利点

米国海軍が、はるかに安価なディーゼル電気潜水艦の設計と取得を積極的に検討する理由は、非常に現実的なものだ。

2017年から2018年ごろ、米国海軍の一部では、核動力艦隊をディーゼル電気潜水艦で置き換えることの利点を検討していた。地域ごとの安全保障状況の変化と技術進歩が、これらの検討に影響を与えた。

複数地域における紛争の形態と場所の変化が要因の一つだ。沿岸水域で活動し戦闘を行う必要がある場合、原子力潜水艦が常に最適な選択肢とは限らない。短距離・浅海域の戦闘では、過剰な火力は国家にとってコスト面でも負担が大きすぎる可能性がある。

小型で静音性が高く、機動性に優れた対潜戦ディーゼル推進潜水艦(SSK)は、これらの地域での作戦により適している。

浅海域では距離が短いため、原子力潜水艦の高速度は不要だ。

AIPディーゼル潜水艦

もう 1 つの問題は、空気非依存推進 (AIP) システムの能力の向上により、かつては原子力潜水艦しかできなかったような、浮上することなくステルスで活動できる潜水艦が可能になったことだ。 つまり、これまで原子力潜水艦しかできなかった特殊作戦任務に、より小型のディーゼル潜水艦を投入できるようになったということだ。

最後に、他の多くの兵器システムと同様に、コンピュータシステムおよびデータネットワーク技術の開発は、ついに潜水艦のような厳しい設計パラメータを持つシステムでも、市販の部品(COTS)を装備できる段階に達した。

これにより、ディーゼル潜水艦の使用がさらに合理的かつ費用対効果の高いものとなり、任務に合わせカスタマイズも可能になった。将来、小型のプラットフォームが海底戦争でより大きな役割を果たすようになることが期待されている。■

Smart Bombs: Military, Defense and National Security

The U.S. Navy Could Build Powerful ‘Stealth Diesel Submarines’

By

Reuben Johnson

https://www.19fortyfive.com/2025/05/the-u-s-navy-could-build-powerful-stealth-diesel-submarines/?_gl=1*4zwnl6*_ga*MjAyMjA1NDM0NS4xNzQ4MjkxOTU1*_up*MQ..


著者について:

ルーベン・F・ジョンソンは、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻の生存者であり、外国軍事問題の専門家として、ワルシャワのFundacja im. カズミェルザ・プワスキ財団の外国軍事問題専門家です。彼は、国防技術と兵器システム設計の分野で、ペンタゴン、複数のNATO加盟国政府、オーストラリア政府のコンサルタントを務めてきました。過去30年間、ロシア、ウクライナ、ポーランド、ブラジル、中華人民共和国、オーストラリアで居住し、報道してきました。



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