Image: Wikimedia Commons.
戦闘技術の発展で視界外戦闘(BVR)が中心の戦闘形態となる中、ドッグファイトの頻度は劇的に減少してきた。
空中機動戦闘(ACM)、通称「ドッグファイト」は、機動・位置取り・タイミングを駆使して空の優位を争う、消えゆく技である。ACMの成功は、基本的に幾何学とエナジー管理にかかっている。パイロットの成功は、高度、速度、迎え角を管理する能力、そして相手の次の動きを予測する能力にかかっている。
ドッグファイトは戦闘機を使ったチェスの試合である
ドッグファイトで「勝利」する方法は、敵の背後に入り、機首を標的に向けることである。この位置こそが、航空機の武器システムを効果的に展開できる位置である。この位置は「追撃曲線」と呼ばれ、これを活用する3つの選択肢がある:リード、ピュア、ラグだ。リード追撃では、攻撃機は防御機の進路より前方を目指し、コーナーをカットして素早く接近する。ピュア追撃では、機首を相手の現在位置に直接向ける。ラグ追撃では、機首を相手よりわずかに後方に置き、接近速度を犠牲にして制御性を確保する。
もう一つの重要なACM原則が「旋回円」の概念である。最大性能で旋回する航空機はすべて空中に円を描く。この円は速度、旋回率、半径によって定義される。より小さな円を描ける、あるいは相手の円内での機動が可能なパイロットが位置的優位を得る。これはすぐにチェスのような駆け引きとなり、各機は自らの円を狭めようとするか、相手に円を広げさせようとする。そのためには、オーバーシュートや閉じ込めを避けるため、スロットルと角度の精密かつ継続的な調整が必要となる。
ドッグファイト中のパイロットはエナジーを温存しなければならない
ACMにおいて幾何学に匹敵する重要性を持つのがエナジー管理である。航空機の「エナジー状態」とは高度(位置エネルギー)と速度(運動エネルギー)を指す。高エナジー状態のパイロットは上昇、急降下、加速を選択できるが、低エナジー状態では選択肢が制限される。ACM中の航空機は「エナジー優位性」、すなわち機動で優位に立つか離脱するための十分な速度と高度を保持したいと考える。
エナジーと幾何学は、ACMの二大典型スタイル「エナジー戦闘」対「角度戦闘」を特徴づける。強力な推力を持つ航空機で戦う戦闘機は、高度と速度を交換する垂直機動で高速を維持し、敵に急降下攻撃を仕掛ける。歴史的・現代的な例にはメッサーシュミットBf 109、ノースロップF-104スターファイター、マクドネル・ダグラスF-15イーグルがある。
一方、角度戦闘機はより機敏なジェット機に搭載され、わずかな旋回率の差が優位性を決する旋回勝負で真価を発揮する。歴史的・現代的な例としては、スーパーマリン スピットファイア、ノースアメリカン F-86 セイバー、ジェネラル・ダイナミクス F-16 ファイティング・ファルコンなどが挙げられる。
高性能航空機レーダーがドッグファイトを終わらせたのか?
現代の戦闘技術は、長距離航空機レーダーなどの技術で可能となった視界外戦闘(BVR)が主要な戦闘形態となるにつれ、ドッグファイトの頻度を劇的に減少させた。しかし、万一に備え、現代のパイロットは依然として空中戦闘(ACM)の訓練を受けている。そしてそのような状況下では、幾何学とエナジーに関する不変の真理が作用し、パイロットはエナジー管理を行い、幾何学を凌駕する思考を駆使し、可能な限り攻勢を仕掛けざるを得なくなる。
複葉機から現代の第五世代戦闘機に至る100年にわたる革新にもかかわらず、空中戦闘の基本原理は変わっていない。ソッピィズ・キャメルであれロッキード・マーティン F-22 ラプターであれ、パイロットは相手の動きを予測し、エナジーを管理し、一瞬のタイミングで行動を実行しなければならないのだ。■
Aerial “Dogfighting” Is on Its Last Legs
August 28, 2025
By: Harrison Kass
https://nationalinterest.org/blog/buzz/aerial-dogfighting-on-last-legs-hk-082825
著者について:ハリソン・カッスハリソン・カッスは、ザ・ナショナル・インタレストのシニア防衛・国家安全保障担当ライターである。カッスは弁護士であり、元政治候補者で、米国空軍にパイロット候補生として入隊したが、後に医学的理由で除隊した。軍事戦略、航空宇宙、グローバル安全保障問題に焦点を当てている。オレゴン大学で法学博士号(JD)を、ニューヨーク大学でグローバルジャーナリズムと国際関係学の修士号を取得している。
0 件のコメント:
コメントを投稿
コメントをどうぞ。