米陸軍がタイフォンミサイルシステムを日本に初配備(TWZ)
タイフォンはトマホーク巡航ミサイルとSM-6ミサイルの迅速な展開手段を提供し、最大1,000マイル(約1,600キロ)離れた目標を脅威に晒す能力をもたらす
2024年にフィリピンへ先行配備されたタイフォン兵器システム。米陸軍
米陸軍のミサイルシステム「タイフォン」が初めて日本に配備された。これは中国に対する明確なメッセージと見られている。トマホーク巡航ミサイルとSM-6多目的ミサイルを発射可能な同システムは、インド太平洋地域における米軍の活動で存在感を増しており、7月にはオーストラリアで初の射撃訓練が実施された。
タイフォンシステムは年次演習「レゾリュート・ドラゴン」の一環として日本に展開され、山口県にある岩国海兵隊航空基地でメディアに公開された。約1万4000人の日本軍と5200人の米軍が参加する今年のレゾリュート・ドラゴンは過去最大規模で、2週間にわたって実施される。
タイフォンを運用する第3多領域任務部隊(3MDTF)のウェイド・ジャーマン大佐は、岩国基地で同システムの能力を説明した。
「複数のシステムと異なる種類の弾薬を併用することで、敵にジレンマを創出できる」とジャーマン大佐は述べた。「展開の迅速さにより、必要時に即座に前線配置が可能だ」。
タイフォンはレゾリュート・ドラゴン終了後、日本を離れる予定だが、その後の行き先は不明である。今夏早々にオーストラリアで行われたタリスマン・セイバー25演習では、3MDTFのタイフォン砲兵隊が海上目標の撃沈に成功している。また、過去に報じた通り、同システムはフィリピンにも展開された実績がある。
第3多領域任務部隊(3MDTF)は、2025年7月16日に行われたタリスマン・セイバー25演習において、米国本土外で初のタイフォン実弾射撃訓練を実施した。米陸軍写真:ペルラ・アルファロ軍曹
タイフォン砲兵隊(別名:中距離能力(MRC))は、4基の発射装置、トレーラー式移動指揮所、その他の補助車両・装備で構成される。
4基のタイフォン発射機とトレーラー式指揮所からなる完全なバッテリー構成。米陸軍
完全なタイフォンシステムの構成要素を詳細に示した米陸軍ブリーフィング資料。米陸軍
危機や緊急事態発生時に前線地域へ迅速に展開できる能力がタイフォンの重要な特徴である。同システムは米空軍C-17輸送機による空輸が可能であり、同機は短距離離着陸能力と悪路対応能力に優れているため、より遠隔で過酷な地域への展開が実現する。将来に向けて陸軍はシステムの移動性向上を検討しており、小型化バージョンへの関心が示されているが、具体的な実現方法に関する詳細は依然乏しいままだ。
2024年4月7日、フィリピンにおいて米軍要員がC-17A輸送機からタイフォンシステム関連トレーラー発射装置を降ろす様子。米陸軍
同システムが発射可能な現行型トマホーク長距離巡航ミサイルは陸上攻撃能力と対艦能力を併せ持つ。トマホークは半径約1,000マイル(約1,600km)圏内のあらゆる目標を脅威下に置くことが可能であり、広大な太平洋戦域において特に有用である。トマホークは日本にとっても特に関連性が高い。日本は同ミサイルを発注済みであり、大規模な軍事拡充の一環として独自の通常戦力による長距離攻撃能力の開発に着手している。
タイフォンは主に防空兵器であるSM-6も使用するが、タイフォンに統合されることで、主に陸上および海上目標に対する短距離弾道ミサイルとしての運用を想定している。したがってSM-6は極めて柔軟な地対地兵器で、弾道ミサイルに類似した特性が迎撃を困難にしている。
米陸軍のタイフォン発射装置が、以前の試験でSM-6ミサイルを発射する様子。米陸軍
対艦兵器として、タイフォンは特にインド太平洋地域で極めて重要な能力をもたらす。中国との将来の大規模紛争において、米国はインド太平洋の広大な海域を横断する対艦攻撃を仕掛けざるを得ないだろう。一方、中国人民解放軍海軍(PLAN)は既に膨大な戦闘艦隊にさらに大型かつより近代的な水上戦闘艦を投入している。
しかし陸軍はタイフォンを「戦略的」兵器システムとも位置付けており、防空資産や指揮統制拠点といった高価値目標への使用も想定している。
この能力のため、タイフォンは北京にとって脅威兵器になっている。タイフォンで岩国からトマホークミサイルで中国東海岸やロシアの一部地域を攻撃可能だ。
米軍にとって岩国は「第一列島線」の一部である。これは東アジア大陸対岸の島嶼群で定義される境界線で、日本列島の南端から南シナ海まで延びている。米軍と同盟国はこの列島を利用し、中国の海空軍力を封じ込め、軍事計画を複雑化させることが可能だ。
さらに西太平洋へ延びる第二列島線は、日本からニューギニアを結ぶラインで、グアムやマリアナ諸島の米領島嶼を含む。
第一・第二列島線の地理的境界を示す国防総省の地図。米国防総省
タイフォンは射程と破壊力に加え、高い機動性と応答性を備える。迅速な展開が可能で、展開後は道路移動が可能なため生存性が向上する。インド太平洋地域へのタイフォン配備は、紛争初期段階で広範な標的を脅威に晒すため、中国軍にとって顕著な課題となるだろう。
中国とロシアの当局者は、先月この配備が発表された際から反対の声を上げていた。
8月下旬、中国外務省の郭家坤報道官は「中国は米国がアジア諸国にタイフォン中距離能力ミサイルシステムを配備することに一貫して反対している」と述べ、この配備が地域の戦略的安全保障に対する脅威となると主張した。
ロシア外務省は声明で「東京当局が訓練活動の強化やワシントンとの軍事技術協力を含む軍事化加速路線を一貫して追求している実態を認識している」と表明。マリア・ザハロワ報道官はタイフォン配備を容認した日本に決定を見直すよう促した。
過去であれば、このような配備はワシントンと東京の双方当局にとって挑発的すぎると見なされたかもしれない。しかし、これまでのタイフォン配備規模に基づけば、中国に対する重大な戦略的脅威とは程遠い。
とはいえ、最終的に北京が日本におけるタイフォン配備に対応するか否かは、同システムを恒久配備を含む形で地域に拡大する陸軍の計画を変えることはない。
より広範には、陸軍は長距離精密火力(LRPF)構想を通じて、同地域における中国軍への対抗能力強化を図っている。タイフォンに加え、この構想にはダークイーグル極超音速ミサイルや精密打撃ミサイル(PrSM)といった将来の通常戦力長距離打撃能力も含まれる。
米陸軍に納入された最初のダークイーグル発射機の一つ。非活性ミサイルキャニスターを装填済み。米陸軍
「レゾリュート・ドラゴン」演習におけるタイフォンの日本展開は一時的なものだが、その登場は同軍が同地域における陸上・海上目標双方を攻撃可能な打撃能力に注力していることを強く示唆している。このことは、インド太平洋地域におけるこの柔軟なシステムの重要性が増していることを裏付けている。■
Army Deploys Typhon Missile System To Japan For The First Time
Typhon brings the means to rapidly deploy Tomahawk cruise missiles and SM-6 missiles, giving the ability to put targets at risk up to 1,000 miles away.
Published Sep 15, 2025 11:52 AM EDT
https://www.twz.com/land/army-deploys-typhon-missile-system-to-japan-for-the-first-time
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