今回のイラン戦争停戦はホルムズ海峡での航行の自由を回復させるプロセスの一環なのか。しかし、米海軍に実力で海峡を制圧する能力はない
米海軍にホルムズ海峡を再開させる手段がない
19fortyfive

ミサイル駆逐艦「ニッツェ」(DDG94)が、水上戦高度戦術訓練(SWATT)演習中にMK-45 5インチ砲を発射。ニッツェは、空母打撃群(CSG)10を支援する駆逐艦隊(DESRON)26に所属。SWATTは海軍水上・機雷戦開発センター(SMWDC)が主導しており、参加部隊の戦闘能力、殺傷力、相互運用性を高めることを目的としている。(米海軍写真:3等通信兵ブライアン・ヴァレック)
米軍はホルムズ海峡の通過に可能にできるかもしれないが、保険会社、海運業者、エナジー市場に「安全」を信じさせることはできない
今年のイースターの朝、世界は第47代米国大統領による衝撃的なトゥルース・ソーシャル投稿で目覚めた。そのメッセージは、ここ1ヶ月間トランプ大統領と対立してきたイラン政府に向けられたもので、不吉にも次のように宣言していた。「火曜日は、イランにおいて『発電所の日』[原文ママ]であり、『橋の日』でもある。これほどのものはないだろう!!!このクソッタレな海峡を開けろ、この狂った野郎どもめ。さもなくば地獄で暮らすことになるぞ――見とれ!アッラーに栄光あれ。ドナルド・J・トランプ大統領。」
ホルムズ海峡の戦略的背景
これは、米軍および少なくとも2つのイスラエル特殊部隊が、イラン・イスラム共和国の深部で敢行した大胆な襲撃に続くものである。
この襲撃で先週後半にF-15ストライク・イーグルが撃墜された墜落した米軍パイロット2名が救出され、激しい銃撃戦の結果、約4億ドル相当の軍事装備が破壊された。
敵地深くに侵入し、墜落した2名の米空軍兵士を救出するという、極めて危険な任務を遂行した米軍に対し、すべての米国人が称賛すべきであることは確かだ。しかし現実には、その任務も、イランに関する大統領のもう一つの懸念事項であるイスラム共和国の核兵器開発疑惑も、ホワイトハウスが主張するほど、国家の戦略的・経済的利益にとって決定的に重要なものではない。
最も差し迫った問題は、イランによるホルムズ海峡の封鎖が続いていることである。
この封鎖は世界経済を不安定化させている。なぜなら、オマーン、アラブ首長国連邦(UAE)、イランの海岸線に挟まれたこの狭い水路を通って、全石油・天然ガスの約20%が輸送されているからだ。
この封鎖は、世界のエナジー市場を混乱させただけでなく、影響を及ぼしている。肥料など多くの農業用前駆物質がホルムズ海峡を通過するため、国際的な農業分野や世界のハイテク産業にも影響が及んでいる。
現在、西側諸国の経済を牽引している人工知能(AI)ブームの基盤となる半導体の製造に不可欠な元素であるヘリウムの供給が、戦争の影響で遮断されている。
トランプ大統領は以前、ホルムズ海峡の再開にほとんど関心がないと主張していたが、イランのムッラーたちに向けた罵詈雑言に満ちた脅迫的なメッセージは、ホルムズ海峡の封鎖が米国の経済的繁栄と国家安全保障にどれほど大きな脅威をもたらすかを浮き彫りにしている。
トランプが日曜日の朝、閉鎖について激怒して投稿した事実は、ホルムズ海峡が国際問題、あるいは少なくとも欧州の問題であるというホワイトハウスの主張を打ち消している。
トランプの痛ましい気づき
トランプは、ホルムズ海峡を強制的に再開させるために軍事力を行使する必要があることに気づき始めているのだ。
そうでなければ、イランはこの狭い水路に対して望まれない支配を主張し続けるだろう。
実際、すでに多くの国が、自国の貨物船やコンテナ船が海峡を通過できるよう、イスラム共和国に賄賂を贈っているようだ――そして彼らは、その賄賂(イランはこれを通行料と呼んでいる)を、中国人民元のような代替通貨で支払っている。
この状況が続くと、米国は中東における支配的な地位を失い、敵国も同盟国も米ドルの主要な準備通貨としての役割を弱体化させ始め、米国主導の世界秩序からの転換は止められなくなるだろう。
トランプは間もなく、この新たなパラダイムを受け入れるか、武力によって緊張をエスカレートさせるかの選択を迫られることになる。彼がホルムズ海峡におけるイランの支配を受け入れる可能性は低いため、おそらく緊張をエスカレートさせるだろう。
海峡の再開は軍事的には可能だが、迅速かつ容易で、リスクの低い作戦にはならないだろう。真の問題は、単に米海軍艦艇を海峡を通過させることだけではない。商船会社、保険会社、エナジー取引業者にリスクが低減したと確信させるほど安全な環境を作り出し、それによって全体的なコストを削減することにある。
ガーディアンの最近の報道によると、軍事的に見てトランプ大統領は2つの厳しい選択肢に直面している。イランのハルグ島などの領土を占領するか、あるいは海峡内で大規模な海軍による護衛作戦を展開するかだ。現実問題として、たとえ限定的な上陸作戦であっても事態は急速にエスカレートする可能性がある。なぜなら、占領した地盤を維持しようとすれば、上陸部隊は、この戦争を通じてその殺傷力を証明してきたイランのミサイル、ドローン、ロケット弾にさらされることになるからだ。
ホルムズ海峡がすぐ再開されない理由
忘れてはならないのは、米海軍の掃海能力が著しく不足しており、海峡通行を確保するために、消極的な欧州やアジアの同盟国に軍隊の派遣を頼らざるを得ない点だ。欧州諸国やインド、あるいは日本が限られた海軍艦艇をイランの攻撃で失うリスクを冒すだろうか。テヘランに中国元で賄賂を支払えば、自国の物資を海峡を通じて自由に流通させ続けることができるのだから。
紛争の初期段階において、トランプ大統領は海峡の再開は「単純な軍事作戦」に過ぎないと推測していた。しかし『ディフェンス・ニュース』がインタビューした軍事専門家数名は、正反対の見解を示した。封鎖されたホルムズ海峡を突破し、開通状態を維持しようとする米国の性急な取り組みを複雑にする5つの主要な問題が存在する。
この地域の地理的条件はイランに有利に働いている。
ホルムズ海峡は狭い水路で、イランはこの水路の北岸に位置している。
イランは海岸線を多数のミサイル、ドローン、機雷、そして海峡の密集した航路を混乱させるために迅速に展開可能な小型艇で要塞化している。
したがって、たとえイランの能力が「残存」しているだけだとしても、海運(および米海軍)にとってあまりにも重大な脅威で、これを「単純な軍事作戦」と見なすことはできない。
ホルムズ海峡で容易に解決できない5つの課題
機雷は、この水路を航行するあらゆる船舶にとって重大な脅威となる。機雷は今日では極めて高度化しており、作動して被害をもたらす前に検知は非常に困難である。たった1発の機雷による被弾、あるいは単に機雷の存在が信憑性を持って疑われるだけでも、保険会社や荷主がこの重要な水路の利用を躊躇させることになる。イランが(実際には行わずに)海峡に機雷を敷設たと主張することだけで外国の軍用・民間船を遠ざけ、ひいては世界経済を不安定化させる事が可能だ。
護衛任務は貿易再開と別物だ。確かに、米海軍は多大な犠牲を払って数隻の船を通すことはできるだろう。しかし、だからといって世界のエナジー市場がこの航路が安全に再開されたと信じるわけではない。市場の存続と価格の適正化には、信頼が不可欠である。さらに、米海軍の護衛艦は、イランが配備するであろう8万8000機以上のシャヘド型ドローン、数千発の高度なミサイル、さらには極超音速兵器(機雷は言うまでもない)による損傷や破壊の脅威にさらされる。
同盟国なし、支援なし。トランプ大統領が「これは単なる米国の問題ではない」と述べるのは正しい(もっとも、米国とイスラエルがこの事態を引き起こす一因となったと主張するのも妥当ではあるが)。率直に言えば、米海軍には、世界的な価格を下げるためにホルムズ海峡を開放し続けるという長期的な取り組みを維持する余力はない。米国の同盟国の大半は、米国よりはるかにホルムズ海峡に依存しているにもかかわらず、そのような任務のために自国の艦船を危険にさらしたくない。
作戦は拡大するだろう。米海軍が護衛任務を開始すれば、必然的に機雷掃海へと移行する必要が生じる。その結果、米軍はホルムズ海峡で米海軍艦艇や民間船を脅かすイランの疑わしい発射基地に対する攻撃を行わざるを得なくなる。つまり、「船舶の保護」から、狭いホルムズ海峡における国際航路へのテロ行為能力を継続的に弱体化させるため、イスラム共和国に対する全面戦争へ急速に転換することになるのだ。そしてイランは、繰り返し実証してきたように、米イスラエル連合による政権への空爆という圧力下にあっても、戦闘能力を維持し続ける能力を持っている。
基本的に、軍事的にホルムズ海峡を再開する上で最も容易な部分は、作戦を開始することだ。困難なのは、海峡が開放されており、かつ安全に航行できることを世界の貿易関係者に納得させることである。
もし米海軍、あるいは主要な同盟国と共に米海軍が海峡の再開に介入すれば、彼らは瞬く間に、はるかに大規模な軍事紛争に巻き込まれることになるだろう。特に、米国が海上の支配権を確立するためイラン沿岸への地上部隊の上陸を試みる場合、その可能性は極めて高い。
何事も起こり得るが現実的なのだろうか?
つまり、海峡の再開通は可能だが、その状態を維持し、海峡が十分に安全であると企業を説得して世界的な価格を下げることは、より困難な課題である。
米国は単独では成し遂げられず、同盟国の支援に頼れる可能性も低い。特に、同盟国にとって、自国の商品を海峡を通過させるために、米ドル以外の中国元やその他の通貨でテヘランに賄賂を贈る方が、簡単で安上がりだからだ。
もしイラン戦争が続けば、特に筆者が懸念するようにトランプが事態をエスカレートさせれば、ホルムズ海峡の再開はあり得ないだろう。なぜなら、荷主も保険会社も、自社の貨物が交戦の巻き添えになるリスクを冒そうとはしないからだ。
米海軍、ひいては米国の納税者が負担するコストは極めて高くなり、その結果、テヘランではなくワシントンで、今年11月に政権交代が起きることになる可能性が高い。
これこそがトランプ大統領が自らに課した賭けであり、いかなる政治指導者にとっても乗り越えられないほど大きなものだ。
トランプが今すぐ戦争を終わらせない限り、ホルムズ海峡が実質的に再開されることは決してないだろう。■
著者について:ブランドン・J・ワイチャート
ブランドン・J・ワイチャートは、19FortyFive.comのシニア国家安全保障編集者である。最近、ワイチャートはEmerald.TVの「NatSec Guy」セクションの編集長に就任した。以前は『ザ・ナショナル・インタレスト』誌のシニア国家安全保障編集者を務めていた。ワイチャートはiHeartRadioの『The National Security Hour』のホストを務めており、毎週水曜日の東部時間午後8時に国家安全保障政策について論じている。また、Rumbleでは「National Security Talk」という関連番組もホストしている。ワイチャートは、地政学的な問題について、様々な政府機関や民間組織に定期的に助言を行っている。彼の執筆記事は、『Popular Mechanics』、『National Review』、『MSN』、『The American Spectator』など、数多くの出版物に掲載されている。著書には『Winning Space: How America Remains a Superpower』、『Biohacked: China’s Race to Control Life』、『The Shadow War: Iran’s Quest for Supremacy』などがある。ワイチャート氏の最新著書『A Disaster of Our Own Making: How the West Lost Ukraine』は、書店で購入可能だ。Twitter/X @WeTheBrandonでフォローできる。
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