2025年9月12日金曜日

プーチンはウクライナの領土を求めていない。ウクライナ自体を消し去りたいのだ(National Security Journal)

 

ウクライナに戦争終結の選択権はない。プーチンと西側にある

ーバード大学ダグラス・ディロン政治学教授、グラハム・アリソンが語る時は、たとえ論旨が間違っていても耳を傾けるのが賢明だ。

そして『The National Interest』誌に最近掲載された記事は、彼がどれほど誤った見解を示すかを如実に示している。

論旨は明快だ:ウクライナは、平和と引き換えに自らが支配するドネツク州の一部を譲渡することを検討すべきだという。「ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が今直面している問題は、戦争を早期に終結させる選択肢(それに伴うあらゆる責任を伴う)を受け入れるか、それとも戦い続け、より多くの戦士、市民、領土を失うリスクを冒すかである」。

選択がそこまで単純であればいいのだが。

ロシアの非合法な大統領、ウラジーミル・プーチンは、ウクライナの降伏と非軍事化されたロシア語圏のモスクワの属国化以外には一切受け入れないと明言している。彼の子分たちも同様の主張を繰り返している。

ウクライナ戦争の真の目的

つまりプーチンの戦争は、領土問題などではないし、最初からそうではなかった。ロシアが領土を十分に有していることは周知の事実だ。むしろこの戦争は、民主的で親欧米的なウクライナのアイデンティティとその担い手であるウクライナ人という存在そのものが、ロシアにとって容認できないという本質的な問題なのである。プーチンにはウクライナは必要でもなく、欲してもいない。ただウクライナ人がいなくなった状態を望んでいるのだ。

戦争を「早期に」終結させることは不可能だ。なぜならプーチンは、ウクライナ「問題」が最終的に解決されるまで戦争を終える意思がないからだ。

アリソンは次に、ロシア占領地域をアメリカ北東部の地図に重ね合わせ、その範囲がニューイングランドからニューヨーク南部まで及ぶことを指摘する。別の地図では、ウクライナが支配するドネツク州をデラウェア州に重ね、その意図は、このような細長い領土のために戦う価値はないという点にある。

領土の罠

すべてを領土問題に還元することで、アリソンは自ら設けた罠に陥る。結局のところ、その土地には少なくとも216,000人のウクライナ人が住んでいるのだ。

ロシア占領を歓迎する者もいれば、いかなる代償を払ってでも平和を受け入れる者もいるだろう。しかし多くの人々は、ロシアによるウクライナ人(すなわち彼ら自身)へのジェノサイド政策の可能性に確実に絶望するだろう。

アリソンは彼ら全員をプーチンの支配下に強制的に置けと勧めているのか?それは虐殺の容認であり、モスクワ・北京・平壌以外の政策立案者にとって選択肢になり得ない。

それともウクライナ人の強制退去を勧めているのか?それは民族浄化の容認だ。

これらがウクライナが直面する選択肢である。

結局のところ、アリソンの分析の問題点は、平和の是非をウクライナの選択として位置づけていることだ。しかしウクライナが攻撃されることを選んだわけではないのと同様に、単に「平和を選ぶ」ことで平和を実現することもできない。

残念ながら、選択権はプーチンと西側にある。プーチンは将軍たちに電話一本で戦争を終結させられる。そして西側諸国は、クレムリンがロシアにとって戦争が勝ち目がないと悟るまで、ウクライナを支持し続けることを明確にすることで、プーチンにその電話を早めさせることもできる。

これらの結果のいずれかが実現するまで、ウクライナに残った選択は生き延びることだけである。■


Putin Doesn’t Want Ukraine’s Land. He Wants to Erase Ukraine

By

Alexander Motyl

https://nationalsecurityjournal.org/putin-doesnt-want-ukraines-land-he-wants-to-erase-ukraine/

著者について:アレクサンダー・モティル博士(ラトガース大学)

アレクサンダー・モティル博士は、政治学教授としてラトガース大学ニューアーク校に在籍している。ウクライナ、ロシア、ソ連、ならびにナショナリズム、革命、帝国、理論の専門家であり、著書としてノンフィクション10冊を出版。主な著作に『帝国の終焉』(2009年)、『帝国の道』(2004年)、『帝国の終焉:帝国の衰退、崩壊、復興』(2001年)、 『革命、国家、帝国:概念的限界と理論的可能性』(1999年)、『独立のジレンマ:全体主義後のウクライナ』(1993年)、『右派への転換:ウクライナ民族主義の思想的起源と発展、1919-1929年』(1980年)などがある。また、15冊の編集者であり、その中には『ナショナリズム百科事典』(2000年)や『ホロドモール読本』(2012年)が含まれる。さらに、学術誌や政策誌、新聞の論説ページ、雑誌に数十本の寄稿を行っている。また、週刊ブログ「ウクライナのオレンジ・ブルース」も執筆している。


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