Australian Government Okays F-35 Purchase
Nov 25, 2009
1. オーストラリア政府はF-35共用打撃戦闘機を14機をとりあえず購入する決定を下し、今後数ヵ年かけて運用舞台を拡大する検討する公約は見直さないこととなった。
2. 同国は30億ドルを同機開発の分担金とし、初号機を2014年に受領しテストと訓練に使う。この機材は米国内で運用となる。この分担金で必要な支援施設も導入する。
3. 同国は2012年に次の決断として最低72機のF-35を導入して実働部隊に採用すべきかを決定する。計画によると導入が決まれば稼動開始は2018年となる。
4. 「2012年までにはコスト見積もりがより現実的になり、当初導入予定の機数、必要な支援資材その他の費用含め、米国、わが国、他の共同開発国向けで合計1,000機を超える同機のデータが判明するだろう。これにより、わが国の国防計画全体の中でJSF取得の計画内容の精度が上がることが期待される。」(国防相フォークナー上院議員)
5. オーストラリアはF-35を100機購入する意向を示していた。これはまだ可能性にすぎず、今後の決定次第であり、現有のF/A-18F部隊の動向にも左右される。
6. オーストラリア空軍が配備するのは通常型離着陸性能機版。
7. 2012年に再度見直しをする際には同国航空宇宙産業へのJSF開発関連での効果も考慮する予定。国内企業25社が2億ドル相当の業務量を確保していると発表をしている。生産が本格化した際の事業量が次の話題となろう。「オーストラリア企業が相応の価値のある業務を受注することが重要で、ロッキード・マーティン他JSF関連ではオーストラリア産業への考慮があってしかるべきだ」(国防関連人材・物資・技術担当大臣)
軍事航空、ISR、 無人機、サイバー、宇宙、安全保障、最新技術....防衛産業、軍事航空、軍用機、防衛関連宇宙開発等の最新技術動向を海外メディアからご紹介します。民間航空のニュースは「ターミナル1」をご覧ください。航空事故関連はT4へどうぞ。無断転載を禁じます。YouTubeでご利用の際はあらかじめご連絡ください。
2009年11月30日月曜日
2009年11月29日日曜日
X-47Bの開発も難航しているようです

UCAS-D Flight Slips, Sea Trials On Track
Nov 25, 2009
1. 米海軍向けのノースロップ・グラマンX-47B無人戦闘航空システム実証機(UCAS-D)の初飛行は2010年第一四半期へ延期となった。これはエドワーズ空軍基地(カリフォルニア州)での地上点検で推進器の音響特性、エンジン始動の進行手順で問題が発見されたため、調整と追加テストが必要となったため。
2. 低速度によるタクシーテストは12月以降の予定と海軍が文書で本日発表しており、海上公試を空母運用型のUCAS-Dで実施する予定は2012年のままで変更なし。より詳細な情報は海軍から発表されていない。
3. ノースロップ・グラマンはコメントを出していない。同社の関係者はプレス取材は一時的に中止となっている。
4. テスト飛行は今月の予定であった。今夏には関係者は実証機をパタクセントリバー海軍基地(メリーランド州)まで全区間あるいは一部区間飛行させると楽観的であったにもかかわらず、現在は初飛行の日程を数週間延期してまでもその後に問題が見つかることのないように慎重に点検すべきと考え方が変わってきている。
コメント うーん、すべてのプロジェクトが遅延しているように見えます。よほど不都合な事実が判明したのでしょうね。海軍の現役パイロットは無人機の導入には及び腰のようですが。プロジェクト管理手法では追いつかないほど技術が複雑になっているのでしょうか。一見不可能と見えたポラリスミサイルを見事開発するのに大きな力となったPERT-CPMのような画期的なツールはもうでてこないのでしょうか。
2009年11月27日金曜日
F-35の開発も難航しています

More JSF Test Planes, Software Work Needed
aviationweek.com Nov 24, 2009
1. ペンタゴンは総額3,000億ドルのF-35共用打撃戦闘機(JSF)開発で飛行試験用機材とソフトウェア技術者の増加を検討中。同機の実戦配備の遅れを回避する手段としている。
2. 合同評価チームによりF-35開発では少なくとも160億ドルのコスト超過が発生しており、想定していた飛行試験の日程は実現不可能とも判明した。
3. ペンタゴン調達部門のトップ、アシュトン・カーター(次官補)は記者団に対し11月23日、テスト機数を増やすことで「時間を圧縮して」テストを実施できると語った。別の可能性はソフトウェア技術者陣を増やすことで、交代制をとることで同機の運用、ミッションの実施に必要となる多数のコードで発生する問題を「事前回避し、解決する」ことだ。
4. これを実施するとコストはさらに上昇するが、カーターの言い分ではこれは「投資」であり、長期的には開発計画が安定化すると見ている。日程計画を実現することが各国の開発パートナーに同機の購入意欲を持続させることになる。
5. カーターはさらに各種の問題を「今後数週間で」分類し、2011年度予算で追加支出を求めるのだという。
6. 過去にペンタゴンは飛行試験中のF-35を2機テストから外し、ロッキード・マーティンのモデル検討とシミュレーション技術により設計の確認が可能と言う理由であった。今回テスト機材を増やすことがモデルおよびシミュレーションだけで懸案となっている問題の解決には不十分と判断されているのかは明らかではない。
7. カーターもプラットアンドホイットニー製F135エンジンのコスト上昇が大きな課題だと認めている。
8. 独立製造工程検討チームがカーターの下に編成されており、ロッキード社のF-35組立てライン(テキサス州フォートワース)で作業効率が向上し、製造単価の引き下げが今後可能なのかを検証する予定。
9. しかし、政府およびロッキード社ですでに上昇してしまったコストの負担が必要であるとカーターは見る。最終的な開発費用の全貌はまだ見えてこないが、カーターのチームでオプションを検討している。ロッキードCEOのボブ・スティーブンスと同社のJSF開発部門トップはカーターと会見し、11月22 日に問題点を検討した。「政府だけで日程の遅れのコストを全部負担するのは困る。開発に伴うリスクは相互負担すべきだ」(カーター)
10. カーターはペンタゴンの意見に固執し、GE/ロールスロイス製F136エンジンを代替選択肢とするとF-35開発にはマイナス効果しかないと主張。エンジンが二種類になることで競合効果を示す費用モデルはまだないとし、新たなエンジン開発、製造コストの追加分を上回る節減効果はないと見る。さらに、代替エンジン開発費用をJSF開発費用から支出したことで同機開発の進展を「阻害してきた」とも発言した。
コメント: F-35開発も相当の混乱が生じているようです。近年の新型機開発がことごとくつまずいているのはなぜでしょうか。プロジェクト管理手法とその実施に相当の進展が必要なのでは。それはともかく、同機開発には導入を想定して費用負担までしている各国の利害もからみ、開発の遅れは大きな影響を防衛政策に及ぼすでしょう。そこに40機程度とはいえ、後発で日本が導入に手を上げれば、ここぞとばかりに日本への追加負担を求めてくることは必至です。それよりも同機の性能が本当に保証されているのかが問題ですね。私見ですが、F-35は日本にとっては必要のない機体と思いますがいかがでしょう。
2009年11月26日木曜日
F-15サイレント・イーグルはどうなっているのか

中国の第五世代戦闘機の話題の次にはF-15を安価にステルス機に改造するボーイングの話題ですが、初出は今年6月の記事です。これが今出てくる裏を考える必要がありますが、封印したF-22の復活への期待なのか、機数では相手にならない西側ステルス機部隊の補完を同盟国に期待するのか、よくわかりません。どちらにせよF-35単体ではF-22の代わりにならないのは自明の理なので、日本としてもサイレントイーグル含めたステルス機の部隊編成を今後真剣に考えることになるのでしょうね。まずは本当にSEが飛ぶのをみることにしましょう。
Boeing Studies Stealth Eagle Options
aviationweek.com Jun 11, 2009
1. ボーイングはF-15SEサイレントイーグルのレーダー断面積(RCS)削減レベルの可能性について米政府関係機関による輸出許可申請の前に自社検討を進めている。
2. 「どこまで下げられるかの問題ではなく、どこまで下げるのが許されるのか問題であり、この管理は米国政府がしています。政府次第で削減レベルも変わります」(ブラッド・ジョーンズ ボーイング社F-15発展型開発担当者)
3.社内データがもととなり、政府との協議で前面ステルス性をどこまで認めることができ、F-15SEへの関心示す各国への輸出が可能となるかが決まる。研究では新造サイレントイーグルと既存F-15の改修の各例。
4.RCS削減の大きな対策は現在のF-15が搭載するコンフォーマル燃料タンクをコンフォーマル兵装庫に置き換えることで空対空あるいは空対地武装を機内に格納する。
5.「機体各部でRCS削減対策を検討していきます。部署ごとに使う技術を使い分けます」(ジョーンズ)
6.ボーイングはRCS削減策の検討を極力早く終了して政府と許認可について協議したい意向。購入希望国からの最初の企画提案提出の申し入れは2010年中ごろから2011年に韓国から発出されると同社は想定している。
7.また同社内でF-15SEの兵装庫の設計検討も進行中で、電動・油圧または圧縮空気により、あるいは組み合わせにより扉開閉と武装の投下を迅速に行うことが検討されている。
8.社内検討の結果、国際分業の可能性が浮上し、開発期間が延びる可能性があるとジョーンズは見ている。導入に関心を示す各国の中には兵装庫に別の装備として側面監視レーダーやブロードバンドの電子戦ジャマー装置を格納したい意向もある。
9.F-15SEの開発発表は今年3月に海外国が導入意向を示したためであったが、それ以来ボーイングは既存機改装のオプションでも検討を進めており、コンフォーマル燃料タンク撤去後の航続距離についても検討がされている。
10.改装後のF-15Eは当初のまっすぐな垂直尾翼のままで、220から240海里の戦闘行動半径の減少となる。一方、新造F-15SEでの減少は180から200マイルとなるのは新設計の傾斜尾翼およびデジタル式のフライバイワイヤと電子戦(EW)装備が装着されるため。
11.「コンフォーマル燃料タンクの廃止で燃料等裁量は1500ガロン減りますが、デジタルEWではこれまでの三つのシステムがひとつにまとまり、その分燃料を搭載できるのです。最終的に950ガロン減ることになります。」(ジョーンズ)
12.デジタル式フライバイワイヤにより機械式飛行制御機器が不要となり、重量と搭載スペースが節約となる。一方、傾斜垂直尾翼により機体後部の揚力が増える分だけ、機首のバラストを減らすことが可能となる。これが400から500ポンドに相当する。
13.ジョーンズによるとボーイングはサイレントイーグル実証機を2010年初めあるいは年央に飛行させる予定で、海外顧客から提案企画書の要求が出る前に性能を見せたいとしている。「海外の顧客は低リスクを志向していますので、まず当社による飛行試験を見てから提案要求が出てくるでしょう」(ジョーンズ)
2009年11月25日水曜日
中国の新型戦闘機開発の行方

中国が第五世代機を本当に開発しているのか、それよりも第四世代機の多数配備の方が脅威だというのが以下の記事の趣旨です。それにしてもF-22の少数配備で今後20年間は一機一機をアップグレードして使っていく米空軍に雲霞のような中国機と対峙していけば結果は明らかですね。結論はF-22の生産再開、性能向上だと思うのですが。(写真は中国のJ-11)
China Promises New, Advanced Fighter
aviationweek.com Nov 24, 2009
1. 中国には第五世代戦闘機生産の資源も技術も確保されていると米空軍および情報機関関係者は見ているが、中国航空宇宙産業には西側最新鋭機と同等の性能を実現する中核的技術が不足しているのも事実。
2.ただ中国の技術陣がシステム工学、集積の能力を入手しており、高性能機を大規模に生産し、配備することが可能なのかは不明。
3.人民解放軍空軍(Plaaf)が新型機体は米海軍情報部が1997年にJ-XXの名称を与えており、さらにステルス性を追求した設計になっている可能性がある。双発でデルタカナードをもつ機体の概念設計が存在することがすでに知られている。
4.今後10年間に中国がF-22クラスの機体を前線配備する可能性は低いが、新型機の開発は進んでおり、初飛行の期日は近づいていると、中国の航空宇宙工業関係者ならびに米国情報機関筋は見ている。
5.その見方をする米国情報関係者は長年にわたる中国空軍力のアナリストであり、中国による高度技術の利用方法を次のように要約している。「合法的あるいは非合法すれすれ、あるいはスパイ行為による技術獲得のいずれかで中国はわがほうのステルス機の構造および素材についてほとんどのデータを入手していると見て間違いがない。また公開特許制度からも恩恵を受けている。またわがほうの制度を利用して軍事、警察、公共、民間商用データからも幅広く情報を収集している。」
6.もはや最新鋭とはいえないF-22やB-2の設計も別の要因だ。中国側の研究員にはこれまで20年間の時間が与えられており、各機の技術的特長を追求することができた。
7.「米国、日本、ロシア、ヨーロッパ各国から中国は必要なデータを集める手段を確立しています。生産工程の技術的リードと集積度ではまだ当方が勝っていますが、一方でISO 9000/9001/9002 他の標準化により技術文書が以前よりも容易に入手腕切るようになってきているのも事実です」(前述米情報機関関係者)
8.中国のJ-10攻撃戦闘機はF-16と類似性能があり、中国製設計としてはこれまでのところ最高の例と考えられている。第一線配備は2006年に開始されており、その他の中国軍用機は民間機の複合材機体の生産技術をボーイング向け旅客機生産に従事したことから応用している。
9.J-10の原型はイスラエル製ラビ戦闘機から多くを得ており、この点でイスラエルが中国にとって重要な技術提供国であることを示している。また、ロシアからも支援を受けている。
10.ロシアのSu-27フランカーをもとにJ-11Bを開発しており、エイビオニクス、火器管制、エンジンは自国製に換装している。そのJ-11Bの発展型がJ-XXにつながる。
11.J-11BはPL-12中距離アクティブレーダー誘導ミサイルを搭載する。同機の開発は中国の国産誘導兵器技術の基礎が拡充していることを意味する。
12.「目下のところ中国の軍拡競争相手はインドで、中国がリードしています」(前述米情報機関関係者)
13.この二国間競争で米国に直接の影響はないが、少なくともペンタゴンの計画立案者に中国が大規模な軍事力整備を加速している一方、米国は限定戦争あるいは対ゲリラ戦型の紛争に対応した技術開発と予算支出が中心になっていることを自覚させている。
14.「私見ですが、わがほうは何十億ドルも無駄に支出して、低速低高度飛行のMC-12(偵察機)、MQ-1/9(無人機)。C-27J(軽輸送機)を整備しています。また世界最高クラスには達しない、最大公約数的なF-35JSFを導入しようとしています。」(米情報機関関係者)
15.F-22に詳しい戦闘経験豊かなパイロットによると海外国による最先端戦闘機が大量に生産されると米国ステルス機部隊にとって重大な脅威となるという。
16.「相手方の機体が第四世代機としてもF-22が187機しかないので、最終的にはわがほうのステルス機部隊が先に消耗してしまいます。中国機は各8基のミサイルしか搭載しませんが、F-35と同数の戦闘機を配備すればいいのであって、ラプターと同じ性能は必要ではないのです」(航空宇宙産業関係者)
17.中国にとってF-35と同等の性能を持つ戦闘機を今後10年間で開発するのは決して不可能な課題ではない。「莫大な資源を投入すれば可能です。ただし、今のところ中国の機体はロシアやイスラエル技術の延長線上のものばかりで純国産設計が出現していません。まだレーダー開発技術能力や複数の技術の統合経験は不足しています。これが課題でしょう」(米空軍高官)
18.「画期的な技術の改良は可能としても、大きな目標水準そのものを変更するのは運用上はたいした利点にはなりません」(上記米空軍高官) ステルス性能ではF-22が全方位で-40 dBsm、F-35で-30dBsmの要求性能であった。J-10が中国のステルス技術の飛躍台になる可能性はまずない。
19.「J-10を基本としていると中国の設計は困難になるでしょう。レーダー断面積を大幅に削減するには機体表面の塗装コーティングだけでは不十分です。J-10には空力学的特徴もありますが、ステルス性の獲得にはマイナスになります。中国も設計変更や塗装コーティング剤の変更で実現を図るでしょうが、運用上の利点が生まれるのかは疑問です。
20.「複合材の利用技術で向上を図るでしょうし、ステルス性を実現するコーティング材料はすでに広く知られており、利用も可能です。機体設計がいっそう洗練されて登場したときがひとつの転換点となるでしょうね。」(米空軍高官)
2009年11月24日火曜日
A400Mの前途は依然として多難
A400M Engines Run In Prep For First Flight
aviationweek.com Nov 23, 2009
1. エアバス・ミリタリーはA400M輸送機の初飛行の準備を進めている。同機搭載のTP400Dターボプロップエンジン4基のパワーオンテストは予定よりも数日前に実施が完了している。
2. ただし、予定外の損失を生んでいる同機の開発状況から生産契約の再交渉を巡る同機発注各国との議論は平行線のままでエアバス・ミリタリーはこの点で進展をしていない。11月19日に同機の購入の中核となる各国の高位国防関係者がベルリンに集まり、同機開発の今後の進め方を議論した。フランスが各国に働きかけて追加金融支援と技術供与を進めようとしているが、ドイツは現行の条件をそのまま進めるべきと主張している。さらにドイツの新任国防相グッテンバーグはエアバス・ミリタリーの親会社EADSからの支援の可能性を期待している。
3. 同会議は年末までは同計画を進めるという合意以外にはほとんど成果を生まず閉幕した。次回会議は12月にドイツが主催する。話し合で進展がないまま、将来の契約内容が不明のままA400Mは飛行テストに入ることになる。また、エアバス・ミリタリーは現行の契約内容のままでは同機の開発は継続できないとしている。
4. 11月18日にセビリア(スペイン)で同機のエンジン各基は低出力設定のままパワーオンテストを開始した。推力は今後増加させる予定。エアバス・ミリタリーによるとテスト終了後のエンジンカウル点検では高温排気あるいは液の漏れはみつかっていないという。同機の補助動力ユニットを使ってエンジン回転が開始された。同機のエンジンにはヨーロッパ航空安全庁からの飛行承認が下りている。
2009年11月19日木曜日
中国の第五世代戦闘機開発は予想外に早い

PLAAF to Fly 5th Generation Fighter
aviationweek.com Nov 15, 2009
1. 中国人民解放軍空軍(PLAAF)によると同国製第五世代戦闘機の試作機の初飛行が迫っているとのことで、同機は今後10年以内に第一線配備となるという。これは米国情報機関の予想よりも相当早い。事実とすればロッキード・マーティンF-22Aの生産打ち切りによりF-35生産を優先するという根拠が誤りだったことになる。
2. PLAAFは先週設立60周年を迎えたばかり。その特集番組でHe Weirong空軍副参謀長が同機開発計画を公式に認めている。第五世代戦闘機開発は「熱烈に進め」られており、初飛行はまもなく、空軍への納入は2010年までに完了するという。
3. 同機の開発は第611研究所(成都)で行われ、試作機製作は成都航空機の第132工場となるという。成都航空機の第五世代機設計は国内の他社設計案との競作を勝ち残ったものと思われる。ライバルの瀋陽の第601研究所も開発に参加することになるだろう。
4. 北京の情報筋は成都J-10の主任設計技師Yang Weiが昇格し北京のAVIC本部に異動しており、成都航空機の設計案の選定に手を貸したという。
5. これまで判明していた中国の航空機エンジン開発では黎明航空機発動機のWS-10Aの発展型WS-10Gが推力15,800kgあると見られている。その他筋によると搭載しているのはWS-15型(定格推力15,000kg)であるという。中国では政府筋が発表するまでは開発計画を言及することはまったくない。また発表した開発日程は実現を保証される。未知の技術的な支障がない限り、中国の第五世代戦闘機開発は競合する米国のF-35やロシアのT-50/PAK-FAよりも早く実現する可能性がある。
2009年11月8日日曜日
陸上配備型SM-3の運用は海軍に任せようとする陸軍

General Wants Navy To Lead Land SM-3
aviationweek.com Nov 6, 2009
1. ネブラスカ州オマハ----資材調達に限界がある陸軍予算を理由に、米陸軍は米海軍に陸上配備型SM-3ブロックIBによる弾道ミサイル迎撃の運用を託すことが望ましいと考えていると発言。SM-3をヨーロッパに配備しイランによる攻撃への対抗手段とすることが構想されている。
2. 陸軍にはアフガニスタン、イラクでの戦闘任務がありミサイル防衛へ割ける優先順位は低い。
3. そこで陸軍は海軍に主導的な立場を期待するわけだ。
4. ペンタゴンの計画では2015年までにヨーロッパにSM-3ブロックIBを配備する。そのあと、SM-3ブロックIIBを直径21インチのブースター(IA 、IBはともに13.5インチ)を利用して開発し、ヨーロッパに配備する。その際の管制・センサー系の構成は未定。イージス艦で使用のシステムあるいは陸軍の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)で使用中のシステムが候補に挙がっている。
5. 本来であれば陸上配備型のSM-3配備では陸軍が中心となるはずだ。陸軍にはミサイル防衛システムの海外展開で10年間の経験があり、ペイトリオット、PAC3、THAADを運用してきた。しかし、陸軍が展開中のその他の作戦に予算を割り当てる必要があるのが実情だ。
6. 陸軍および海軍からの資料情報を元にペンタゴンが検討をしており、結論はまもなく出るものと予想される。
2009年11月3日火曜日
JSOW-ER対艦ミサイル

Raytheon Tests JSOW-ER As Anti-Ship Weapon
aviationweek.com Nov 2, 2009
1. ハープーン対艦ミサイルの後継モデルとして米海軍の検討対象となるJSOW-ER(共用スタンドオフウェポン)の動力付き射程延長型ミサイルの初めての試射・自由飛行がレイセオンにより実施された。
2. テストは10月1日でハミルトンスタンダード製TJ150ターボジェットの装着具合の実証となり、BLU-111弾頭部分は空にされ燃料タンクとした。
3. テストミサイルは海軍のF/A-18よりポイント・マグー(カリフォルニア州)の太平洋ミサイル試射場上空で投下され、主翼を展開しエンジンに点火後260マイル(約416キロメートル)以上飛行した、とレイセオンは発表。
4. レイセオンの当初目標は150海里(約270キロメートル)で今回のテストでは250海里(約450キロメートル)の達成を目標とした。弾頭部分を小型西、その後部に燃料タンクを装着することでJSOW-ERは300海里の飛行が可能となると同社は見ている。
5. テストでは三次元参照点を経由しながら水平飛行をした。レイセオンは推進装置をつけていないJSOW C-1(現在開発中)に続き四年以内に実戦化可能と見ている。
6. 射程延長型にもC型の画像処理赤外線シーカー(陸上の静止目標用)とC-1の持つ移動海上目標用のデータリンクを搭載する。
7. JSOW-ERは単なる実験プログラムではない、とマット・ウィンター大佐(海軍精密攻撃兵器開発主査)は強調するが、この先1月から開始となる対艦戦用兵器の比較検証候補のひとつとなる。検証作業は18ヶ月から24ヶ月の予定で採用装備は2014年度から整備となる。
8. 現有のハープーンの維持については予算は2025年まで予定済みで、新型ミサイルが投入されるまでの性能ギャップを埋めるための改修作業が行われる。(ウィンター大佐) JSOW以外の検討対象はハープーン改良型、ロッキード・マーティンの共用空対地スタンドオフミサイル、ボーイングのスタンドオフ陸上攻撃ミサイル射程延長型、コングスバーグの共用打撃ミサイルであるという。
9. 比較検証作業では空中発射、艦上発射、潜水艦発射の各種対艦兵器が対象となるが、レイセオンが提案するJSOW-ERは空中発射型のみ。
テストの記録はここを参照してください。
http://www.raytheon.com/media/jsow-er-11-09/#/resources/
2009年11月1日日曜日
みょうこうがSM-3発射実験に成功
SM-3 Scores Hit In Japanese Test
aviationweek.com Oct 29, 2009
1. 海上自衛隊のイージス護衛艦みょうこうが太平洋上で発射したSM-3ブロックIAが中距離射程能力の標的の破壊に10月27日に成功したことが米政府関係者とロッキード・マーティン社から判明した。
2. ミサイル防衛庁(MDA)によると発射されたミサイルは現地時間午後6時4分に目標を迎撃した。目標はみょうこう艦上から捕捉・追跡された。また迎撃の解もみょうこうで得たもの。迎撃の場所は宇宙空間上でおおよそ太平洋上100マイル。
3. 米海軍のレイク・エリーとポール・ハミルトンも目標の捕捉・追跡に成功し、交戦のシミュレーションを実施したとMDAが発表。
4. 今回の迎撃実施は前回2008年11月20日に失敗して以降初の試み。
5. 昨年の失敗以降の改良点について尋ねられたロッキード・マーティン関係者は回答を保留し、MDAへ質問するように記者に求めた。
6. みょうこうは本国帰還の前にSM-3ブロックIAの追加発射を予定している。
7. 一方レイク・エリーには次世代イージス弾道ミサイル防衛兵装システムBMD4.0.1を搭載しており、目標識別能力が向上している。最近のテストではミサイル目標に加え、発射後の破片を追跡するのに成功しており、来週には「非常に複雑な」分離し機の目標補足に挑戦する。BMD4.0.1には高度な能力を持つ情報処理プロセッサーが使われており、実用化は2011年となる見込み。
8. 今回の実験成功はヨーロッパのミサイル防衛をイージスシステム中心に変更する方針の是非を握るもののため関係者は安堵している。イージスを沿岸部に配備することも構想されており、2015年に実戦化の予定だ。
9. 陸上配備型のイージスシステムの方が運営は容易となる。通信は保全強化型のケーブルで可能であり追跡・捕捉は揺れる洋上ではなく大地の上からとなるため。
10. MDA はロッキード・マーティンに10億ドル相当の契約を交付しており、イージス弾道ミサイル防衛の開発継続をさせる。艦上型イージスの改良が今後の陸上配備型に有益な結果となる。同社のムーアズタウン(ニュージャージー州)で設計、開発、製造、テスト、納入が行われ、米海軍ならびに同盟国海軍向けのイージス BMD能力向上が実施される。
2009年10月24日土曜日
KC-X 応酬するボーイングとEADSノースロップグラマン連合
Boeing, Airbus Chiefs Exchange Tanker Barbs
aviationweek.com Oct 22, 2009
1.ボーイング経営トップは同社が不公平な優位性を米空軍KC-X空中給油機契約競争で受け手いるとの見解を否定するとともに逆に競争相手のEADS-ノースロップ・グラマン連合こそ政府補助金を受けた機体を使っていると非難した。
2.EADSとノースロップ・グラマンは当初は350億ドルの給油機契約を2008年初めに獲得したものの、米会計検査院がペンタゴンによる選定基準に疑義を呈したため契約ヶ成立しなかった経緯がある。今回は同連合からA330ベースの価格詳細情報がボーイングに漏れていた野ではないかとの疑惑が発表された。
3.「当方にとっては無視できない話題です。と言うのも双方ともに同じような機体を提案しているからです」とEADSのCEOルイ・ギャロワがワシントンでの10月20日記者会見席上発言している。「ボーイングにとっては当方の価格構成がわかることが好都合でしょう。当方も同じことが言えます」
4.これに対しボーイング会長兼CEOのジェイムズ・マクナーニは10月21日にボーイングの「いわゆる優位性」について反論した。「今回の競争では相手方から当社の情報がないという抗議ヶありそこから情報が出ている感じがする。相手方のいわんとしていることが理解できない」と第③四半期営業報告の発表席上発言している。
5.マクナーニは世界貿易機構によりヨーロッパ各国政府が不正にエアバス開発の補助金を支給していたとの指摘があったことを取り上げている。逆にヨーロッパ側からはボーイングが米政府からの援助を受けているとの反論に対する裁定は2010年に出るものと予想されている。
6.「公正な競争とはいえない。なぜなら今回の裁定内容で事実上エアバスの各機種が補助金を受けて開発されたことが判明したためで、A330もそのうちのひとつだ」とマクナーニは続ける。「これにより相手方は当社以上のリスクを引き受けることができるようになっている。このことは当社が詳しく調査したいと思っている」
7.マクナーニの発言は同社の統合防衛システム部門(軍用機関連)の売り上げが年換算3%増加し87億ドルになったとの説明の席上であったもの。営業利益は4%増の885百万ドルとなった。この増加から同社の軍用航空機ビジネスの強さがうかがえる。売り上げが7%増加し、利益は25%増。これによりネットワーク関連および宇宙システム分野の9%減を補う形になっている。ネットワーク・宇宙分野の減は情報収集・保安システム、ミサイル防衛・戦闘管理システムの発注量が減少したことによるもの。
aviationweek.com Oct 22, 2009
1.ボーイング経営トップは同社が不公平な優位性を米空軍KC-X空中給油機契約競争で受け手いるとの見解を否定するとともに逆に競争相手のEADS-ノースロップ・グラマン連合こそ政府補助金を受けた機体を使っていると非難した。
2.EADSとノースロップ・グラマンは当初は350億ドルの給油機契約を2008年初めに獲得したものの、米会計検査院がペンタゴンによる選定基準に疑義を呈したため契約ヶ成立しなかった経緯がある。今回は同連合からA330ベースの価格詳細情報がボーイングに漏れていた野ではないかとの疑惑が発表された。
3.「当方にとっては無視できない話題です。と言うのも双方ともに同じような機体を提案しているからです」とEADSのCEOルイ・ギャロワがワシントンでの10月20日記者会見席上発言している。「ボーイングにとっては当方の価格構成がわかることが好都合でしょう。当方も同じことが言えます」
4.これに対しボーイング会長兼CEOのジェイムズ・マクナーニは10月21日にボーイングの「いわゆる優位性」について反論した。「今回の競争では相手方から当社の情報がないという抗議ヶありそこから情報が出ている感じがする。相手方のいわんとしていることが理解できない」と第③四半期営業報告の発表席上発言している。
5.マクナーニは世界貿易機構によりヨーロッパ各国政府が不正にエアバス開発の補助金を支給していたとの指摘があったことを取り上げている。逆にヨーロッパ側からはボーイングが米政府からの援助を受けているとの反論に対する裁定は2010年に出るものと予想されている。
6.「公正な競争とはいえない。なぜなら今回の裁定内容で事実上エアバスの各機種が補助金を受けて開発されたことが判明したためで、A330もそのうちのひとつだ」とマクナーニは続ける。「これにより相手方は当社以上のリスクを引き受けることができるようになっている。このことは当社が詳しく調査したいと思っている」
7.マクナーニの発言は同社の統合防衛システム部門(軍用機関連)の売り上げが年換算3%増加し87億ドルになったとの説明の席上であったもの。営業利益は4%増の885百万ドルとなった。この増加から同社の軍用航空機ビジネスの強さがうかがえる。売り上げが7%増加し、利益は25%増。これによりネットワーク関連および宇宙システム分野の9%減を補う形になっている。ネットワーク・宇宙分野の減は情報収集・保安システム、ミサイル防衛・戦闘管理システムの発注量が減少したことによるもの。
F-35 韓国に甘い誘惑を送るロッキード
Lockheed Dangles F-35 Work For S. Korea
aviationweek.com Oct 21, 2009
1. 韓国がF-35発注に踏み切った場合、同機部品製造に韓国企業が参入することができるとロッキードマーティンは発表。
2. 生産ペースが上がり、日産一機になると、決定済みのメーカーに加えサプライヤーを追加する必要がある。
3. F-35用の部品製造は韓国航空宇宙産業には仕事量は増えても国産戦闘機設計では進歩する可能性にはつながらない。ボーイングはF-15SEへの韓国の参加を提案しており、こちらでは技術力向上が期待されている。
4. コリアンエアの子会社コリアンエアアエロスペースはF-35生産の分担に関心を持っているものと見られる。
5. F-35ブロック2とブロック3のソフトウェア作成では生産分担の可能性があるとロッキードは見ている。
6. 一方、韓国は同国F-X IIIの要求性能を持つ機体合計60機を求めている。それとは別に国産KF-Xを2020年配備を前提としたより高い性能水準の発揮に提案されている。来月にも同計画の今後が決定される見込みで、実現すれば韓国航空宇宙の技術水準を押し上げる効果が期待されるが、F-35購入に対して費用対効果の点で疑問が呈されているのも事実。さらに、KF-Xの要求性能水準は半ステルス性まで格下げされている。
aviationweek.com Oct 21, 2009
1. 韓国がF-35発注に踏み切った場合、同機部品製造に韓国企業が参入することができるとロッキードマーティンは発表。
2. 生産ペースが上がり、日産一機になると、決定済みのメーカーに加えサプライヤーを追加する必要がある。
3. F-35用の部品製造は韓国航空宇宙産業には仕事量は増えても国産戦闘機設計では進歩する可能性にはつながらない。ボーイングはF-15SEへの韓国の参加を提案しており、こちらでは技術力向上が期待されている。
4. コリアンエアの子会社コリアンエアアエロスペースはF-35生産の分担に関心を持っているものと見られる。
5. F-35ブロック2とブロック3のソフトウェア作成では生産分担の可能性があるとロッキードは見ている。
6. 一方、韓国は同国F-X IIIの要求性能を持つ機体合計60機を求めている。それとは別に国産KF-Xを2020年配備を前提としたより高い性能水準の発揮に提案されている。来月にも同計画の今後が決定される見込みで、実現すれば韓国航空宇宙の技術水準を押し上げる効果が期待されるが、F-35購入に対して費用対効果の点で疑問が呈されているのも事実。さらに、KF-Xの要求性能水準は半ステルス性まで格下げされている。
2009年10月21日水曜日
インドが陸上配備型E-2Dを検討中


India Mulls Land-Based E-2D
aviationweek.com Oct 19, 2009
インド海軍は将来の空母設計を再評価中で米海軍の電磁航空機発艦システム(Emals)(ジェネラルアトミックスが開発中)への関心を示している。
Emalsではリニアモーターを使い、加速を得る。インドは短離陸垂直着陸(Stovl)のシーハリアーを現有の空母ヴィラートから運用しているが、同艦は退役が近づいている。インド海軍はロシアの空母アドミラル・ゴルシコフの改装をずっと待っており、最新の引渡し予定は2012年でイタリアのフィンキャンティエリの協力で空母整備を進めている。
「カタパルト技術が向上すれば、蒸気の代わりに電気を動力とする通常型空母の建造が有望だ」とインド海軍参謀総長(前)スレッシュ・メータ提督は語る。防衛対象の海岸線が7,500キロメートルにも及ぶ同国には空母が最低5隻必要だという。
より現実的に今日の警戒・軍事力投入のニーズに応えるため、インドはノースロップ・グラマンE-2Dアドバンスト・ホークアイの評価をしている。米国政府からは8月に輸出許可が下りたことで検討が進んでいる。
インドの要望はE-2D合計6機の購入で、監視警戒飛行および対テロ巡視任務に投入するもの。
インドからは2008年に情報開示の請求があり、本年8月に米海軍から技術情報のプレゼンテーションが行われた。インド海軍の空母ではカタパルト発艦ができないため、陸上型のE-2Dがノースロップ・グラマンに求められている。
陸上基地からの運用以外にインド海軍には選択肢はない。ゴルシコフ用にはMiG-29K戦闘機が配備されるが、カタパルトではなくスキージャンプで発艦させる。
高高度からの監視偵察能力の増強を進めるインドはボーイングP-8I 長距離海上偵察機を発注済で老朽化進むツボレフTu-142Mを取り替える。
またインドは長年にわたり空中早期警戒能力および戦闘管理能力を有する機体の取得に関心を示してきた。E-2Dにはロッキード・マーティン製AN/APY-9レーダーが搭載されており、監視対象面積が現在よりも300%増加させることができる。
一方、E-2Dについて連続飛行能力が低い、機内が窮屈、運用コストが高い、米海軍の通信機器専用に設計された機体だとの批判もある。「インド側には8時間の飛行が可能と説明しましたが、E-2CとE-2Dは外観こそ同じですがまったく違う機体です」(米海軍)
ノースロップ・グラマンはヒンドゥスタンエアロノーテイクスと追加燃料を収容する改造主翼開発の覚書を締結している。
E-2Cの場合のライフサイクル分析手法による飛行時間あたり費用は3,000ドルを下回ると米海軍は説明。
米海軍・NATO諸国とデータリンクを介して共同作戦ができる能力も同機を採用した場合の利点だ。
米各軍はEmalsの採用で現在の大型蒸気カタパルトを取り替えたいと考えている。機体の重量、速度が増大する傾向から発艦時の運動エネルギー水準も大きくなり、蒸気カタパルトの性能限界を超える予想。Emalsには供給電力を増加させる必要があるが、高エネルギー密度のフライホイールを使えば蒸気発生器の低密度を置き換えることができる。また、米海軍の装備はインド海軍には規模が大きすぎるとしても、発艦間隔を長くすれば必要となる動力を抑える解決も可能だ。
2009年10月19日月曜日
インド、ロシア軍事協力の最新状況


Russia And India Discuss Decade Of Defense Ties
aviationweek.com Oct 16, 2009
ロシア・インド間軍事協力協議が開催され、両国間の防衛協力の円滑化が中心議題の通常の会議に見えるが、 ロシアから見るとインドは通常の軍備装備市場の域を脱している。
米、独、仏、英各国がインドの国防支出の中から自国装備購入のシェアを高めようと必死であり、その例として調達機数126機の中型多用途戦闘航空機(MMRCA)があり、その他にもロシアも競争に加わるべき計画が目白押しだ。
今回の協議ではロシア国防相アナトリ・セルジューコフとインド国防相A.K.アンソニーが議長となり、特に二つの議題が最重要課題となった。ひとつがロシアで改装中の空母ヴィクラマディティヤ(旧名称アドミラル・ゴルシコフ)の引渡し価格であり、もうひとつは今後の両国の防衛産業協力の枠組みの合意だ。
その他にはロシアのT-90S戦車の国内生産が計画から遅れていること、さらに重要な新規開発計画として第五世代戦闘機(FGFA)の共同設計・開発問題のほか、多用途輸送機(ATA)の共同開発がある。
インド海軍向けのMiG-29K艦載機の引渡しが来月開始の予定で、同機の艦上運用試験がロシア海軍の空母アドミラル・クズネトフで最近実施されている。空母ゴルシコフの改装は日程から遅れており、予算も超過しているが、インド国内の政治的関心も高まっている。これがこじれないことがロシアの利益にもなるのは、乗員の訓練他で国防産業協力が拡大する可能性が出るためだ。
2011年から2020年の期間にインドはロシアの第五世代戦闘機スホイPAK FAの取得をめざし、同時に現有のSu-30MKI の性能向上も実施する。多用途輸送機開発はインド首相のロシア訪問(2007年)に合意したものだが両国で開発状況を再検討しており、このために合弁企業を設立し、両国軍の要望にこたえる15トンから20トンの機体の設計、開発、生産を行う。このため両国はまもなく協定書に調印する見込み。
誘導ミサイル関連ではSu-30MKI用の空対地ミサイルとして3M-55 ヤコント (SS-N-26) の派生型ブラーモスの導入が協議内容に含まれており、加えてブラーモスから超音速性能の兵器開発が検討されている。ブラーモスはラムジェット動力で速度はマッハ2.0から2.5の範囲で、仮称ブラーモスIIは更なる高速でマッハ6をめざし動力はスクラムジェットとなろう。
インドを重要な顧客と見るロシアの姿勢はKh-38 空対地ミサイルをMMRCA候補機としてのMiG-35 商談に抱き合わせで提供することにあらわれている。同ミサイルはロシア空軍にも配備がはじまったばかり。同じくMiG-29Kの商談にもこのミサイルがセットになっている。
インド国内ではブラーモスIIミサイルの共同開発はすでに合意済みとの報道があり、その推移に多大の関心が寄せられている。ただし、この報道には確証がない。
今回の両国 政府間協議は第9回目で各年持ち回りで開催されている。■
(写真左から インド海軍のMiG-29K、ロシアとインドが共同開発しているブラーモスミサイル)
2009年10月15日木曜日
アフガニスタン派遣で明らかになった英国軍の補給体制の弱点




U.K. Logistics And Support Concerns
Oct 13, 2009
英国によるアフガニスタン国内での作戦展開では補給および予備部品供給の問題があることが下院予算委員会で浮き彫りになった。 同委員会の報告書が国防省による戦闘部隊への補給・支援活動の実績が明らかにしている。
「国防省は重要装備を迅速に『緊急作戦要望』(UOR)要領にのっとり移送し、現場で発生した脅威に対応使用としたが、結果は不十分な初期対応または継続展開に限界があることがしばしば発生した」としている。
国防省はUOR調達手順に準拠して比較的早く戦闘部隊用の装備品を調達している。このことを念頭に同報告書が提起しているのは「国防省の現行装備調達活動とのバランスはどうなのかと言う疑問」である。
報告書では国防力見直しの一部として国防省が装備品整備計画が現在進行中ならびに将来発生しうる作戦に直結した能力水準のバランスが取れた装備を実現しているかを根本的に見直すべき、としている。
また報告書ではアフガニスタンで「マスティフ戦闘装甲車両はきわめて高い性能を示している」一方で、「予備部品の不足が発生している」としている。また「ベクター車両の信頼性は低いと判明した」としている。
さらに報告書では国防省が「イラク、アフガニスタン双方でサプライチェーンの目標水準を実現できていないが、補給対象の各部隊の平均待ち時間は短縮されている」としている。
ヘリコプターに関しては予備部品が問題としており、アグスタウェストランド・マーリンとWAH-64アパッチで顕著なのは「機体部品の共食いが必要となっており、結果本国内でのヘリコプター利用を減じている」という。
そこで戦闘作戦の支援が必要なのは認識しつつ、同委員会は「本国と海外の双方でヘリ運用の支援を実現するために民間企業へ奨励策を与え、予備部品の確保を改善する方策を検討すべき」とまとめている。■
写真 アグスタウェストランド・マーリンヘリ、WAH-66アパッチヘリ、マスティフの原型米製クーガー装甲車両(大きいです)、ぱっとしない外観のヴェクター
クーガー戦闘装甲車両(総重量17トン)を英国版にしたのがマスティフです。
2009年10月14日水曜日
米陸軍航空兵力の将来像


U.S. Army Aviation Plots Its Future
aviationweek.com Oct 12, 2009
米陸軍航空部隊のトップはコマンチに計上した146億ドルを再配分し、各種装備の近代化に支出している。コマンチヘリの開発は2004年に中止。ただ、この資金はまもなく枯渇する見込みで陸軍は財源の確保の戦略を練っている。
「陸軍航空隊の業績は好調」とウィリアム・クロスビー准将(航空部門計画責任者)は評価する。運用稼働率が高いまま維持されていることで「予算は順調についてきましたが、予算規模そのものが縮小傾向で、自己評価も謙虚にならなければなりません」
陸軍航空部隊の将来像を現実的に理解する作業は完了している。陸軍参謀副総長J.D.サーマン中将主宰の航空部隊研究報告IIは参謀総長の承認を得て 12番目の戦闘航空旅団の創設を内容に含み、装備の再編成を今後12から18ヶ月かけて実施する。また、無人航空機の利用方法を今後も模索する。
さらに4億ドルで訓練体系を改善してフォート・ラッカー(アラバマ州)でのヘリコプターパイロット養成を現状の1,200名から1,400名に増強する。一時は高等訓練機への移行に800名の訓練生が順番待ちになっていたこともあり、今回の予算措置でこれを緩和できる。アパッチ、ブラックホークの新型機導入で2012年までに解消の見込み。
コマンチの開発中止以降に陸軍航空部隊が予算不足に直面する事態は発生していない。逆に航空関連予算は40%増加している(会計検査院(GAO))。ただ陸軍もこのまま推移するとは見ていない。
GAOはまさしくその方向で、陸軍に対し2010年度陸軍航空近代化計画に予算の不確実性を取り込むべきと提言し予算削減の場合の対処方針の検討を勧めている。GAOは同時に共用将来型戦域空輸ヘリ開発を進めるべきと希望しており、空軍が短距離離発着に傾いて同計画が頓挫しかけている事を憂慮している。
陸軍の当面の予定は2010年までに現有システムの改良、新規開発、民生機種・装備の調達(例 UH-72Aラコタ軽量多用途ヘリ(LUH)の購入)を進めること。またUH-72については陸軍はEADS製の同機合計345機を導入する予定でこのうち210機は州軍に配備される。LUHの導入が進むとその分ブラックホークを戦闘に送ることができるとニール・サーグッド大佐(多用途ヘリ責任者)は語る。戦場でのブラックホークの需要は高い。
陸軍はLUHが順調に導入されているので、他軍あるいは海外でもラコタの導入が実現しコスト効果が大であると陸軍は強調できるだろう。米海軍は5機を総額30百万ドルで購入し、パタクセントリバーの海軍テストパイロットスクールに配備する。サーグッド大佐によると他に数カ国が関心を示し、海外軍事販売制度による導入を検討しているとのことだ。
ウォルター・デイビス准将(陸軍航空部長)は陸軍がこれまでの試練に対し計画的に潜在的な問題点を整理しながら当たってきたことを強調し、過去のコマンチ・近年の陸軍偵察ヘリコプター(ARH)の計画中止以降は変化があり、それは「戦闘で需要の高い能力を優先して維持すること」だという。意味するところはARH導入で廃棄される予定だったOH-58Dカイオワ・ウォリアーの老朽化進む部隊を維持・改良していくことだという。
同時に装甲偵察または空域観測のニーズにこたえる開発計画を策定することもある。この要求を実現するためには当初想定の単独のプラットフォームから複数の機種に変化しつつあるという。無人機を取り入れるのか、あるいは全部有人機となるかもしれない。
クロスビー准将は陸軍は今後19ヶ月以内に考えられる選択肢の検討を完了し、来年4月あるいは5月には最初の考察結果を発表し、予算編成の決定を支援する材料を提供したいという。「来春発表の当初資料で陸軍は計画の策定が楽になるでしょう。必要とする内容と実際に投入できる内容の比較対照ができるはずです。」■
(写真上 UH-72Aの原型はBk117です。 下 ステルスヘリとして開発されたものの取りやめになってしまったRAH-66コマンチ)
2009年10月13日火曜日
ユーロ・ホーク
Northrop Grumman Unveils Euro Hawk
aviationweek.com Oct 12, 2009
ノースロップ・グラマンはユーロ・ホーク一号機の受領テストを開始する。同機はRQ-4グローバル・ホーク無人機(UAV)の派生型でカリフォルニア州パームデールで10月8日にロールアウトした。
初の国際型UAVとなる同機はこれまでの機体と通信傍受(SIGINT)用のポッド6基を主翼に装着している点が異なっており、飛行制御ソフトの改修が必要。現在その最終作業が進行中で、タクシーテストの開始予定は来年2月。
初飛行の予定は3月。同機の所有権はドイツで、ノースロップ・グラマンは国務省に同機のフェリー飛行をエドワーズ空軍基地まで初飛行の際に行う外交上の許可を申請中。エドワーズで同機は六ヶ月にわたり性能限界を引き上げる作業を受けてからドイツに移送される。
ノースロップ・グラマンは飛行ルートを検討中。現在はカナダの領空を通過する大圏コースで直行する予定。これまでの大西洋横断飛行が西海岸からある場合はフロリダ経由だったが、航路短縮で飛行時間は約6時間短くなるという。
同機はEADSのマンチン工場へ来年9月か10月に移送されダミーのペイロードを正式なSIGINT装置に取り替える。その後のテスト等を経てドイツ空軍への引渡しは2011年となり、当初6ヶ月は作戦運用コンセプトの開発に使われる。続いて生産型ユーロ・ホーク4機の生産が2012年末までに完了する見込み。
ユーロ・ホークの生産は米空軍向け機体のロット12とロット13の一部とする計画をノースロップ・グラマンは考えている。同社が期待するのは初の海外型となったユーロ・ホークをきっかけに「大規模な」海外市場が形成されること。ドイツ・NATO向け以外に同機に関心を寄せているのはオーストラリア、スペイン、韓国、日本であり、それ以外にもあると同社は見ている。
2009年10月12日月曜日
アフガニスタン空軍部隊の再建



USAF Mentors Pass Skills To Afghan Pilots
aviationweek.com Oct 9, 2009
カブール空港から北数百メートルの荒廃したビルの陰に老朽化したMiG-21戦闘機が一機たたずんでいる。コンクリートの隙間から生えた雑草が同機を取り囲んでいる。そこから非舗装道路を少し行くと米国により最近補修された施設が二つあり、そこでアフガン国民軍航空部隊向けの教導訓練が行われている。MiGを片付けて、記念モニュメントにする計画がある。その他にもソ連時代の影響がUSAF指導員、アフガン教官、および訓練生により払拭されつつある。訓練生の多くは高年齢のパイロットで1990年代にソ連が支援した政権が崩壊したした際に国外へ脱出していたものもあり、国土の大部分を支配する部族の下で、あるいは北部同盟あるいはタリバンの下で飛行したものと経歴は様々だ。
カブール航空隊訓練センターではアフガン人機付長、消火部隊員、整備部隊員向けの講習に加え、英語とコンピュータ研修を実施している。講習に当たるのはアフガンの民間人が大部分でアメリカ人が支援している。米空軍中佐ビル・シェッド(第738空軍派遣顧問団の指揮官)によるとアフガン人教官の登用が大切なのだという。「アフガン人が関与して実施してる形を重視しています。訓練の進展は時間がかかり、忍耐も必要」だという。アフガニスタンで運用されているのはアントンフAn-26/32 輸送機、Mi-17輸送ヘリおよびMi-35 攻撃ヘリだ。
滑走路の反対側に新設の兵舎、食堂および航空隊司令部がきれいに並んでいる。その中にはMi-17ヘリのパイロット37名が教習を受けるシミュレーターも設置されている。ただし、稼働時間は一日一時間だけだ。米空軍中佐ジェイムズ・ドゥービンによると「シミュレーターを本当は一日16時間から18時間稼動させたいのですが、そうなると操作員がもっと必要になる」とのこと。
同じことはアフガニスタン駐留の米軍将校の全員から聞こえた。この国のあちこちを数週間かけて訪問して、すべてが不足していること、人員・機材の不足、いつも変更され骨抜きの交戦規則で空軍力の使用が制限されていることから戦闘行為に混乱した状態が存在していることが明らかになった。
ただひとつ希望が見えるのは生まれたばかりのアフガン航空隊の能力だと米空軍関係者が見ている。アフガン人パイロットの任務の大部分は貨物輸送で、人員輸送のほか人道援助物資のほか、アフガン陸軍兵員の医療輸送も行っている。「戦闘地域での輸送効率がいっそう重要になっています」とドゥービン中佐がキャンプKAIA(カブール空港内NATO施設)で語った。回転翼機については「医療輸送、対地攻撃、情報収集・偵察・監視を中心としています」とのことだが、これらのミッションにパイロットを配備している。
アフガン軍にはMi-35攻撃ヘリもあり、戦闘に投入するよう求める圧力も多い。同機の初期戦闘能力は8月に確立されており、「限定的ながら戦闘運用が可能なクルーが三組できました」とドゥービンが言う。言及している作戦には示威飛行、武装護衛作戦および事前策定によるアフガン陸軍向け近接航空支援がある。アフガン人パイロットはアフガン派遣国際治安援助部隊を支援することはない。また医療輸送も対象はアフガン人に限定される。戦闘が可能な状況でもクルーが武器を使用することはない。能力はあるのに、限定的な任務しか与えられず、実際に攻撃をする場面がないのだ。
今後二か月内にヘリ9機が増強され、訓練向けにそのうち二機が使われる。ドゥービン中佐他がアフガン人パイロットが経験あることを主張しているが、米空軍の指導教官の見方では今後の課題は言語理解力だという。アフガニスタン政府は同国航空業務の公用語は英語と決定している。
コメント: イラク空軍の再建への努力については先日お伝えしましたが、今回はアフガニスタンです。状況はもっと悪いことがこの記事から伺えます。その中でアフガニスタンに対するコミットメントを深めようとする日本外交には大きな試練となりそうですね。洋上給油というリスクが低い選択を取りやめ、あえて同国内に乗り込もうという日本の選択は楽ではありませんが、米国、NATO加盟国とやっと同じレベルに(中身は知りませんが)立つことができるのでしょうね。くりかえしますが、前途は多難です。
2009年10月10日土曜日
雨に弱いF-22

久しぶりにF-22の話題です。購入の道をほぼ閉ざされた日本にはもはや未練はないのかもしれませんが、もし導入していたらと考えると次の報道には考えさせられてしまいます。今後何十年も使う機体ですからこれくらいのトラブルはトラブルとはとらえずひたすら熟成を図るのでしょうか。
Air Force Timesより
F-22 problems linked to rain in Guam
By Erik Holmes - Staff writer
Posted : Monday Oct 5, 2009 11:53:34 EDT
雨とラプターは相性が悪い。アンダーセン空軍基地(グアム)の高温多湿環境でアラスカから移動してきたラプターがつぎつぎに故障を起こしている。グアムの雨季は7月から12月。同機の冷却システムに水分が入りショート、機能作動不良となっている。新型機の場合はメンテナンス上のトラブルはよくあるが、「この機体をいろいろな環境の中で使う際に避けて通れない習熟上の問題です」と太平洋空軍広報責任者のエドワード・トーマス大佐は語る。「F-15やF-16 の導入時にも小さなトラブルがあったものです」
基地の整備部隊がF-22の故障は解決しており、問題箇所に防水コーティングを施す対策を講じたという。
当地のF-22はエルメンドーフ空軍基地(アラスカ)の第525戦闘機部隊からの派遣で5月から4ヶ月の駐留。全機予定通り原隊に戻っている。アンダーセン基地へのラプターの配備はこれが三回目でいずれもエルメンドーフから移動している。
今回の事例はグアムの戦略的意義には「全然影響がない」もので、同地の防衛体制に支障は与えなかった。(同大佐)今後はグアム以外の場所にも配備される予定。
2009年10月9日金曜日
厳しい米軍各部隊のヘリ運用事情



Aging U.S. Rotary Fleet Gets Upgrades
aviationweek. com 10 月8日
予算が厳しい中、アメリカの各軍は現有回転翼機の改修、改造で前線部隊の要望に応えようとしている。陸軍航空部隊の運用責任者ウィリアム・クロスビー准将は「これはヘリコプター戦争というべきものだ。予算制約の中、厳しい運用環境におかれている」という。新型機の導入のめどが立たない中、各軍は現有機材の保守点検に中心をおきつつある。クロスビー准将によれば、飛行時間の拡大、砂塵・高温・高地が組み合わさって磨耗損傷が機体に目立ってきたことを指摘する。陸軍の補給部門から航空ミサイル司令部へ今後の機材装備計画の検討が依頼された。今月は重整備計画の最初の報告書の締切があり、その後数ヶ月をかけて分析をし、装備計画を作っていく。
クロスビー准将は「機材は改修後は10年間の耐用年数を持たせたいところです。ではどうそれを実現するか。要は事前に行動をとることです。故障が発生してから’さあどうしよう’と考える事態にはなりたくありません」
【陸軍では①ブラックホーク】各軍の中で一番多くのヘリを運行するのが陸軍だとニール・サーグッド大佐(多用途ヘリ計画主査)は語り、現時点で350機のブラックホークが飛行している事実を指摘する。80年代製のUH-60A型が新型のL型、M型と一緒に飛んでいる。A型とL型はともに改修を受けており、M型の新造機を最初に配備するのはアフガニスタンになるとサーグッド大佐は語る。
陸軍の考えるUH-60の必要機数は合計1,931機。だが現有機数は1,750機。このためA型は全機L型仕様に改装を受けている。この作業に290日かかる。さらにM型への改修でフライバイワイヤー、完全デジタル管理のエンジン(Fadec)と共用エイビオニクス計器システム(CAAS)のコックピットに換装されるが、まだ改装工程の開発に2年間必要だ。性能向上を求める声は大きく、陸軍はM型の性能水準を既存機に取り入れていくことになる。サーグッド大佐は「まだ進行中ですが、性能向上内容の他型機への展開の検討をしているところです」という。
【陸軍②チヌーク】ボーイングは砂漠の嵐作戦以降のイラクでの教訓を取り入れていると、ジャック・ドハーティー(同社H-47チヌーク計画主査)は語る。その結果チヌークはアフガニスタン、イラクでの作戦により適合しているという。砂塵による腐食対策としてエンジンを守るフィルターに加え空気中の粒子の分離機(EAPS)がある。チヌークは本国で保守点検を受けるが、ドハーティによると「EAPSから大量の砂が出てくるので驚くことがあります。そのための装置なのですがアフガニスタンの砂の半分を本国に持ち帰っているのではないかと言う向きもあるくらいです」という。チヌークの旧型であるD型にも陸軍からのフィードバックでボーイングが改修をしている。「前線の使用部隊の声をいつも聞いています。陸軍と共同で改修が効果があるのかを見極めています」
クロスビー准将によれば陸軍の回転翼機向け業務計画は大部分が既存機体の改修あるいは稼動期間の延長であるという。同准将はチヌークの新しいF型、基本性能型のUH-60M、OH-58Dカイオワの前線配備を言及している。先にはUH-60のM型内容改修とアパッチのブロックIII改修が控えている。
「気になるのは現有機体を通常の4倍から5倍のペースで運行していることです」(同准将)
【海軍】海軍では艦隊からのフィードバックはより早く、内容も多い。これは運営管理モデルが確立しているためとスティーブン・イーストバーグ海軍少将(対潜・上陸・特殊航空作戦計画主任)は語る。「艦隊の最前線で教訓がまだ新しいうちに、われわれはその内容を理解したいのです」という。10年前は海軍は新開発を無抵抗に受け入れていたという。「熱心に新型機の開発に没頭していました」それがこの10年ほどで生産工程を重視するとともに特に最近は運用支援に中心が移ってきたという。「一種のヘリコプタールネッサンスとでもいうべきでしょう。20年前、40年前の技術でいろいろ進展があります。ハードウェア、ソフトウェア両面で新型を現場に提供する過程にあります」
海軍の最新鋭シーホーク対潜・水上艦艇用機はMH-60Rの開発は順調に推移したとディーン・ピータース大佐(H-60開発主任)は評価する。空母ジョン・ステニス艦上で同型19機の部隊が編成された。
【海兵隊】海兵隊で最優先なのはH-1の改修で、UH-1Y、AH-1Zコブラが含まれる。両機種ともまずキャンプ・ペンドルトン(カリフォルニア州)に導入され、UH-1Yは11月にアフガニスタンに投入される予定とジョージ・トラウトマン中将(海兵隊航空部隊副司令官)は説明する。初回の配備において「Y型はエンジン出力が大きく増加し、ペイロードと性能も向上したのでパイロット、乗組員が燃料、搭載兵器、輸送人員で運用上の妥協をする必要が一切なしに運用できましたし、アデン湾の海賊対策でも同じです。」(同大佐)
ハリー・ヒューソン大佐(海兵隊H-1改修事業主査)によると以前のAH-1W とUH-1Nは今でも前線に配備されているが、運用を継続するには多大の注意を必要とするという。トラウトマン大佐はUH-1Nは今でも有用な機体であるものの「三十年間の稼動で空輸能力が減少し、アフガニスタンのような高温の高地環境では課題が多い」とのこと。
海兵隊はV-22オスプレーの保守点検と信頼度の向上で多大の努力を進めている。トラウトマン大佐は同機の信頼性が低いことを9月の会議で取り上げている。ただ同機の優秀性に着目すべきと度大佐は考える。8月には前線配備の各機種で稼働率が向上したという。「機種ごとに目標値が違う」が。CH- 46Eで85%、CH-53Eで75%だったという。
CH-53E型とD型の改修内容は広範囲である一方、海兵隊は新型のCH-53K重量物運搬ヘリの投入を心待ちにしている。エンジン信頼性改善プログラム(ERIP)により同機のT64エンジンの三つの機種 -413、-416(CH-53D)、-419(CH-53E改修後)それぞれで稼動時間が増大している。リック・マルドーン海軍大佐(CH-53計画主査)はこの改修結果は劇的に大きいとみる。CH-53の砂漠地帯での重点検までの稼動時間合計はわずか150時間という。ERIPの結果、これが650時間になり、マルドーン大佐の目標は1,100時間という。
【まとめ】「手元にある機体を維持することが中心です。最優先事項は各機を飛行可能にし続けることにつきます」(マルドーン) この発言は各軍で共有できる内容だろう。
コメント イラク、とくにアフガニスタンでのヘリの酷使が伺える内容ですが、生産が追いつかなくなると今後の各軍のヘリ部隊編成が大変なことになりますね。また稼働率、稼働時間の低さには注意が必要です。予算が厳しいとはいえ、これからはproactive が合言葉となり、先に手を打つメンテナンスが中心となりそうですね。
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